説明

放送用アンテナシステム

【課題】隣り合う放送エリアの電波同士が干渉するのを抑制することができる放送用アンテナシステムを提供する。
【解決手段】放送用アンテナシステムは、放送電波を送信する複数のアンテナ素子群1a〜1cを有するアレイアンテナ1と、このアレイアンテナ1に接続され、前記アンテナ素子群1a〜1c間の位相差を調整することによりアレイアンテナ1のビームチルト角を変更可能な移相器2と、この移相器2に給電する給電ケーブル3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送用アンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送電波を送信する放送用アンテナとして、従来から複数のアンテナ素子を有するアンテナユニットが用いられている。このアンテナユニットは、近年、例えば携帯電話端末に映像配信を行うマルチメディア放送を送信するアンテナとして用いるために、ビル等の屋上や小鉄塔に設置されることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−135892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マルチメディア放送では、放送エリアが隣り合う2つの放送局が同一チャンネルを用いるため、各放送エリアの電波同士が干渉し合うという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、隣り合う放送エリアの電波同士が干渉するのを抑制することができる放送用アンテナシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の放送用アンテナシステムは、放送電波を送信する複数のアンテナ素子群を有するアレイアンテナと、前記アレイアンテナに接続され、前記アンテナ素子群間の位相差を調整することにより前記アレイアンテナのビームチルト角を変更可能な移相器と、前記移相器に給電する給電ケーブルと、を備えていることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、移相器により放送電波を送信する複数のアンテナ素子群間の位相差を調整することで、アレイアンテナのビームチルト角を変更することができる。これにより、隣り合う放送エリアの電波同士が干渉するのを抑制することができる。
【0007】
(2)前記放送用アンテナシステムは、前記複数のアンテナ素子群として、上側に配置されかつ前記移相器に接続された上段アンテナ素子群と、下側に配置されかつ前記移相器に接続された下段アンテナ素子群と、前記上段アンテナ素子群と下段アンテナ素子群との間に配置された中段アンテナ素子群とを含み、前記給電ケーブルから給電される入力部と、前記上段アンテナ素子群及び下段アンテナ素子群にそれぞれ給電すべく前記移相器に電力を出力する第一出力部と、前記中段アンテナ素子群に電力を出力する第二出力部とを有する分配部をさらに備え、前記第一出力部は、当該第一出力部と前記第二出力部との分配点から前記移相器までの間のインピーダンスが一定となるように、前記移相器に接続されていることが好ましい。
この場合、分配部の第一出力部は、当該第一出力部と第二出力部との分配点から移相器までの間のインピーダンスが一定となるように、移相器に接続されているため、第一出力部と移相器との間にインピーダンスを変換するトランスを別途設ける必要がないため、低コスト化及び省スペース化を図ることができる。
【0008】
(3)前記放送用アンテナシステムは、前記上段アンテナ素子群と中段アンテナ素子群と下段アンテナ素子群との電力分配比を非等分配とすべく、前記第二出力部と前記中段アンテナ素子群との間のインピーダンスを変換するトランスをさらに備えていることが好ましい。
この場合、前記電力分配比を非等分配とする際に、第二出力部側のインピーダンスを変換しているため、第一出力部側の移相器を設計変更する必要がない。これにより、放送用アンテナシステムの設計を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、隣り合う放送エリアの電波同士が干渉するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る放送用アンテナシステムの概略構成図である。
【図2】図1の放送用アンテナシステムにおける移相器の一部を示す斜視図である。
【図3】可動結合導体の出力側可動部及び出力側導体を有する出力側の結合部の断面図である。
【図4】可動結合導体の入力側可動部及び入力側導体を有する入力側の結合部の断面図である。
【図5】出力側可動部と出力側導体との結合部の等価回路図である。
【図6】分配部の等価回路図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る放送用アンテナシステムの概略構成図である。
【図8】図7の放送用アンテナシステムにおける移相器の一部を示す斜視図である。
【図9】本発明の第三の実施形態に係る放送用アンテナシステムの概略構成図である。
【図10】図9の分配部付近の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の放送用アンテナシステムの実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第一の実施形態〕
図1は本発明の第一の実施形態に係る放送用アンテナシステムの概略構成図である。この放送用アンテナシステムは、例えば携帯電話端末に映像配信を行うマルチメディア放送の放送電波を送信するものであり、その放送電波を送信する複数のアンテナ素子群1a〜1cを有するアレイアンテナ1と、このアレイアンテナ1に接続された移相器2と、この移相器2に給電する給電ケーブル3と、この給電ケーブル3から給電される電力を分配する分配部4とを備えている。
【0012】
前記アレイアンテナ1は、前記複数のアンテナ素子群として、上側に配置された上段アンテナ素子群1aと、下側に配置された下段アンテナ素子群1cと、前記上段アンテナ素子群1aと下段アンテナ素子群1cとの間に配置された中段アンテナ素子群1bとを有している。各アンテナ素子群1a〜1cは、それぞれ単一又は複数のアンテナ素子(図示省略)から構成されている。また、上段アンテナ素子群1a及び下段アンテナ素子群1cはそれぞれ給電線5a,5cを介して前記移相器2に接続され、中段アンテナ素子群1bは給電線5bを介して分配部4に接続されている。給電ケーブル3及び給電線5a〜5cは同軸ケーブル又は同軸直管からなる。
【0013】
〔移相器〕
図2は移相器2の一部を示す斜視図である。移相器2は、各アンテナ素子群1a〜1c間の位相差を調整することによりアレイアンテナ1のビームチルト角を変更可能なものである。本実施形態の移相器2は、給電信号を電力分配するとともに、分配された信号の位相差を連続的に変えることができる分配移相器である。
【0014】
移相器2は、金属製の筐体2a(図1参照)と、この筐体2a内に収納された移相器本体2bとを備えている。この移相器本体2bは、両端部が出力端21a,21bとなる出力側導体21と、この出力側導体21と離れて設けられ給電信号が入力される入力側導体22と、入力側導体22に入力された給電信号を出力側導体21の両出力端21a,21bへと分配して伝達するための可動結合導体23とを備えている。このように、本実施形態の移相器2は、一つの移相器2によって二つの出力端21a,21bを有する二分配型の分配位相器であって、両出力端21a,21bへの電力分配比が1:1となるように、入力側導体22に給電された電力を等分配するようになっている。
【0015】
出力側導体21は、中心線Cを中心とした半径rの円弧形状(又は一部が開いた円環形状であってもよい)のストリップ線路である。出力側導体21の出力端21a,21bには、前記給電線5a,5cがそれぞれ接続されており、各出力端21a,21bら出力された電力は、給電線5a,5cを介して上段アンテナ素子群1a及び下段アンテナ素子群1cに給電されるようになっている(図1参照)。
【0016】
入力側導体22は、前記中心線C上に設けられた導体であり、当該中心線Cを中心とした円形を有している。なお、図2の入力側導体22は、中心線C方向に並んだ二枚の第一入力導体部22aと第二入力導体部22bとを有している。第一入力導体部22aと第二入力導体部22bとは、後述する導体軸24に並列接続されている。
【0017】
可動結合導体23は、絶縁体25a,25bを介して入力側導体22と結合されている入力側可動部23aと、絶縁体26a,26bを介して出力側導体21と結合されている出力側可動部23cと、入力側可動部23aと出力側可動部23cとを連結し両者を電気的に接続している直線形状の線路部23bとを有している。この線路部23bは、前記中心線Cから半径r方向に延びている導体であり、一端部に前記入力側可動部23aが接続され、他端部に前記出力側可動部23cが接続されている。
【0018】
図2において、出力側可動部23cは、出力側導体21と同じ半径rを有する円弧形状に構成されている。出力側可動部23cは、出力側導体21の長手方向に沿って、線路部23bから一方の出力端21a側に延びている第一の部分23c1と、線路部23bから他方の出力端21b側に延びている第二の部分23c2とを有している。そして、等価的に、第一及び第二の部分23c1,23c2の間(出力側可動部23cの中央部)で、線路部23bと出力側導体21とが接続された構成としている。
図3は可動結合導体23の出力側可動部23c及び出力側導体21を有する出力側の結合部Qの断面図である。出力側可動部23cは、出力側導体21の一部を間に配置した状態で当該一部の(上下)両側に設けられている第一出力可動部23c3と第二出力可動部23c4とを有している。第一出力可動部23c3と第二出力可動部23c4とは線路部23bに並列接続されている。本実施形態では、第一出力可動部23c3及び第二出力可動部23c4が線路部23bから(上下)対称となるように分岐している。そして、可動結合導体23の厚さ方向中心と、出力側導体21の厚さ方向中心とが、同一平面上にある。
【0019】
図4は可動結合導体23の入力側可動部23a及び入力側導体22を有する入力側の結合部Pの断面図である。入力側可動部23aは、前記中心線Cを中心とする回転対称形の導体であり、前記第一入力導体部22a及び第二入力導体部22bと輪郭形状を同じとする円環形状である。
また、前記中心線Cを軸線として金属製の前記導体軸24が設けられている。第一入力導体部22aと第二入力導体部22bとは、この導体軸24の端部に接続されていて、第一入力導体部22aと第二入力導体部22bとは当該導体軸24の端部に電気的に並列接続された状態にある。
【0020】
導体軸24は、入力側導体22(第一入力導体部22a及び第二入力導体部22b)と接続された状態にあり、前記給電ケーブル3から分配部4(図1参照)を介して給電信号が入力される入力端24aを有している。そして、可動結合導体23の入力側可動部23aは、中心線C周りに回動可能となるように、絶縁体25a,25bを介して前記導体軸24に取り付けられている。したがって、入力側可動部23aが中心線C周りに回動することで、前記出力側可動部23cは出力側導体21に沿って移動する構成となる。
【0021】
入力側導体22側のインピーダンスは例えば25Ωとなるように設定され、出力側導体21のインピーダンスは50Ω(入力側の二倍)となるように(例えば導体の幅が)設定されている。可動結合導体23の線路部23bから出力側導体21を見たインピーダンスは、インピーダンス50Ωの出力側導体21が二つ並列に接続された構成となるので25Ωとなる。したがって、出入力側でインピーダンスは一致している。
【0022】
以上の構成により、導体軸24から入力側導体22に入力された給電信号は、絶縁体25a,25bを介して可動結合導体23の入力側可動部23aに伝わり、可動結合導体23の線路部23bを伝搬し、可動結合導体23の出力側可動部23c(図3参照)から絶縁体26a,26bを介して出力側導体21に流れ、当該給電信号は出力側導体21の両端部の出力端21a,21bへと分配される。
そして、可動結合導体23を中心線C回りに回動させることで、入力側導体22から出力側導体21の出力端21a,21bに至る線路長が変化し、この線路長の変化によって、出力端21a,21bへと分配される給電信号の位相差を変化させることができる。
また、移相器2は、プリント基板を用いずに出力側導体21及び入力側導体22を構成しているため、大電力を使用する場合でも誘電体損が少なく、発熱量を低減することができる。このため、本実施形態の移相器2は、大電力(約1kW)を使用して放送電波を送信するアレイアンテナ1に用いられるのに適している。
【0023】
さらに、図3に示すように、可動結合導体23における出力側可動部23cの第一出力可動部23c3と第二出力可動部23c4とが線路部23bに並列接続され、第一出力可動部23c3と第二出力可動部23c4との間に出力側導体21が配置されているので、出力側導体21と出力側可動部23cとが、第一出力可動部23c3と第二出力可動部23c4との対向方向(図2の中心線C方向となる)に、相対的に位置変化することで、例えば、第一出力可動部23c3と出力側導体21との間隔A1が小さくなって両者間における静電容量が増加しても、第二出力可動部23c4と出力側導体21との間隔B1が大きくなって両者間における静電容量は減少する。
すなわち、図5の出力側可動部23cと出力側導体21との結合部Qの等価回路図に示しているように、結合部Qは、コンデンサC1,C2が並列接続されたモデルと等価であり、一方のコンデンサC1においてある値だけ静電容量が増加しても、他方のコンデンサC2において当該ある値だけ静電容量が減少すれば、回路全体として静電容量は変化しない(静電容量の変化が抑えられる)。したがって、出力側可動部23cと出力側導体21とが図2の中心線C方向に相対的に変位しても、当該変位によって、移相器2の特性の変化を小さく抑えることができる。
【0024】
さらに、図4に示すように、入力側導体22の第一入力導体部22aと第二入力導体部22bとが導体軸24に並列接続され、第一入力導体部22aと第二入力導体部22bとの間に可動結合導体23の入力側可動部23aが配置されているので、入力側導体22と入力側可動部23aとが、第一入力導体部22aと第二入力導体部22bとの対向方向に(図2の中心線C方向に)、相対的に位置変化することで、例えば、第一入力導体部22aと入力側可動部23aとの間隔A2が変化して両者間における静電容量が増加しても、第二入力導体部22bと入力側可動部23aとの間隔B2の静電容量は減少することで、(図5と同様に)全体としての変化は小さい。したがって、可動結合導体23の入力側可動部23aと入力側導体22とが中心線C方向に相対的に変位しても、移相器2の特性の変化を抑えることができる。
【0025】
〔分配部〕
図1において、分配部4は、給電ケーブル3から給電される電力を、移相器2と中段アンテナ素子群1bとに二分配するものである。具体的には、分配部4は、給電ケーブル3から給電される入力部41と、上段アンテナ素子群1a及び下段アンテナ素子群1cにそれぞれ給電すべく移相器2に電力を出力する第一出力部42と、中段アンテナ素子群1bに電力を出力する第二出力部43とを有している。
【0026】
本実施形態の分配部4では、第一出力部42と第二出力部43との電力分配比が2:1に設定されている。これにより、第一出力部42から移相器2に給電された電力は、上述のように移相器2の出力端21aと出力端21bとに等分配されるため、上段アンテナ素子群1aと中段アンテナ素子群1bと下段アンテナ素子群1cとの電力分配比が1:1:1となり、各アンテナ素子群1a〜1cに等分配される。
【0027】
図6は分配部4の等価回路図である。分配部4は、インピーダンスを変換するトランス45を有している。このトランス45は、入力部41から、第一出力部42と第二出力部43との分配点44までの間に配置され、第一出力部42と第二出力部43との電力分配比を上述のように2:1とするために、第一出力部42側のインピーダンスZ42及び第二出力部43側のインピーダンスZ43がそれぞれ25Ω及び50Ωとなるように変換するものである。具体的には、本実施形態では、入力部41側におけるインピーダンスZ41が50Ωであるため、分配点44におけるインピーダンスZ44が16.7Ω(=Z42×Z43/(Z42+Z43))となるように、トランス45によりインピーダンスを変換する。
【0028】
第一出力部42は、前記分配点44から移相器2の入力端24aまでの間のインピーダンスが一定となるように移相器2に接続されている。すなわち、第一出力部42は、インピーダンスを変換するトランスを介さずに、移相器2の入力端24aに直接接続されている。第二出力部43は、給電線5bを介して中段アンテナ素子群1bに接続されている。
【0029】
以上、本実施形態の放送用アンテナシステムによれば、放送電波を送信する複数のアンテナ素子群1a〜1cを有するアレイアンテナ1に移相器2を接続したので、この移相器2により放送電波を送信する複数のアンテナ素子群1a〜1c間の位相差を調整することで、アレイアンテナ1のビームチルト角を変更することができる。これにより、隣り合う放送エリアの電波同士が干渉するのを抑制することができる。
【0030】
また、分配部4の第一出力部42は、当該第一出力部42と第二出力部43との分配点44から移相器2までの間のインピーダンスが一定となるように、移相器2に接続されているため、第一出力部42と移相器2との間にインピーダンスを変換するトランスを別途設ける必要がない。したがって、放送用アンテナシステムの低コスト化及び省スペース化を図ることができる。
【0031】
〔第二の実施形態〕
図7は本発明の第二の実施形態に係る放送用アンテナシステムの概略構成図であり、図8は、その放送用アンテナシステムにおける移相器の一部を示す斜視図である。図8の移相器2は、一箇所の入力側導体22に対して、出力側導体21が複数本(二本)設けられていて、この出力側導体21の数に対応して、可動結合導体23は同数(二つ)の出力側可動部23cを有している。
【0032】
図8の形態が、図2の形態と異なる点は、中心線Cを中心として半径r方向と同じ側に、複数の出力側導体21及び複数の出力側可動部23cがそれぞれ設けられている点である。つまり、中心線Cから放射方向に複数の出力側導体21(出力側可動部23c)が相互に離れて配置されている。全ての出力側導体21及び全ての出力側可動部23cの形状は、一つの中心線Cを中心とした円弧又は一部が開いた環状である。これにより、一つの可動結合導体23を移動させることで、四つの出力端21a,21b,21c,21dそれぞれにおいて、信号の位相を連続的に変化させることができる。そして、この場合には、一つの移相器2によって四つの出力端21a,21b,21c,21dを有する四分配型の移相器2が得られる。
【0033】
図7において、本実施形態の放送用アンテナシステムのアレイアンテナ1が、図1の形態と異なる点は、上段アンテナ素子群1a及び下段アンテナ素子群1cが、それぞれ複数のアンテナ素子群1a1,1a2及び1c1,1c2により構成されている点である。アンテナ素子群1a1,1a2は、給電線5a1,5a2を介して移相器2の出力端21a,21bにそれぞれ接続されている。また、アンテナ素子群1c1,1c2は、給電線5c1,5c2を介して移相器2の出力端21c,21dにそれぞれ接続されている。給電線5a1,5a2及び5c1,5c2は同軸ケーブルからなる。
【0034】
本実施形態の分配部4は、第一出力部42と第二出力部43との電力分配比が4:1に設定されている。具体的には、第一出力部42側のインピーダンスZ42及び第二出力部43側のインピーダンスZ43をそれぞれ12.5Ω及び50Ωとするために、トランス45により分配点44におけるインピーダンスZ44を10Ω(=Z42×Z43/(Z42+Z43))に変換する(図6参照)。これにより、第一出力部42から移相器2に給電された電力は、移相器2の各出力端21a〜21dに等分配されるため、各アンテナ素子群1a1,1a2,1b,1c1,1c2への電力分配比が1:1:1:1:1となり、各アンテナ素子群1a1,1a2,1b,1c1,1c2に等分配される。
【0035】
以上、本実施形態の放送用アンテナシステムにおいても、移相器2により放送電波を送信する複数のアンテナ素子群1a〜1c間の位相差を調整することで、アレイアンテナ1のビームチルト角を変更することができるため、隣り合う放送エリアの電波同士が干渉するのを抑制することができる。
【0036】
〔第三の実施形態〕
図9は本発明の第三の実施形態に係る放送用アンテナシステムの概略構成図であり、図10は図9の分配部4付近の等価回路図である。本実施形態の放送用アンテナシステムが、図1の形態と異なる点は、分配部4の第二出力部43と中段アンテナ素子群1b側の給電線5bとの間にインピーダンスを変換するトランス8が配置されている点である。このトランス8は、上段アンテナ素子群1aと中段アンテナ素子群1bと下段アンテナ素子群1cとの電力分配比を非等分配とすべく、第二出力部43と中段アンテナ素子群1bとの間のインピーダンスを変換するものである。
【0037】
例えば、上段アンテナ素子群1aと中段アンテナ素子群1bと下段アンテナ素子群1cとの電力分配比を0.75:1:0.75とする場合には、移相器2と中段アンテナ素子群1bとの電力分配比が1.5:1となるように、まず分配部4のトランス45によりインピーダンスを変換する。具体的には、移相器2(第一出力部42側のインピーダンスZ42を前記電力分配比が等分配される場合と同じ25Ωとし、中段アンテナ素子群1b(第二出力部43)側のインピーダンスZ43を37.5Ω(=1.5×Z42)とするために、分配点44(図10参照)におけるインピーダンスZ44が15Ω(=Z42×Z43/(Z42+Z43))となるように、トランス45によりインピーダンスを変換する。
【0038】
第二出力部43側では、さらに、当該第二出力部43と給電線5bとの間に配置されたトランス8によりインピーダンスを変換する。具体的には、第二出力部43から出力された電力を、給電線5bを介して中段アンテナ素子群1bに給電するために、第二出力部43側のインピーダンスZ43を37.5Ωから50Ωとなるように、トランス8によりインピーダンスを変換する。このように、各アンテナ素子群1a〜1cの電力分配比を非等分配とすることにより、アレイアンテナ1におけるメインビームの両側方向のサイドローブを抑制することができる。
【0039】
以上、本実施形態の放送用アンテナシステムにおいても、移相器2により放送電波を送信する複数のアンテナ素子群1a〜1c間の位相差を調整することで、アレイアンテナ1のビームチルト角を変更することができるため、隣り合う放送エリアの電波同士が干渉するのを抑制することができる。
また、上段アンテナ素子群1aと中段アンテナ素子群1bと下段アンテナ素子群1cとの電力分配比を非等分配とする際に、トランス8により分配部4の第二出力部43側のインピーダンスを変換しているため、第一出力部42側の移相器2を設計変更する必要がない。これにより、放送用アンテナシステムの設計を容易に行うことができる。
【0040】
[その他の変形例]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0041】
例えば、上記実施形態では、二分配型及び四分配型の移相器2について説明したが、2n分配型(nは1以上の自然数)の移相器であればよい。
また、移相器2の入力側の結合部P及び出力側の結合部Qは、上記実施形態に示すC結合以外の構成であってもよい。
さらに、第一及び第二の実施形態では、上段アンテナ素子群1aと中段アンテナ素子群1bと下段アンテナ素子群1cとの電力分配比を等分配としているが、非等分配としてもよい。その際、第三の実施形態に示すように中段アンテナ素子群1bに接続する側のインピーダンスを変更してもよいが、それ以外に移相器2に接続する側のインピーダンスを変更してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 アレイアンテナ
1a 上段アンテナ素子群
1b 中段アンテナ素子群
1c 下段アンテナ素子群
2 移相器
3 給電ケーブル
4 分配部
8 トランス
41 入力部
42 第一出力部
43 第二出力部
44 分配点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送電波を送信する複数のアンテナ素子群を有するアレイアンテナと、
前記アレイアンテナに接続され、前記アンテナ素子群間の位相差を調整することにより前記アレイアンテナのビームチルト角を変更可能な移相器と、
前記移相器に給電する給電ケーブルと、を備えていることを特徴とする放送用アンテナシステム。
【請求項2】
前記複数のアンテナ素子群として、上側に配置されかつ前記移相器に接続された上段アンテナ素子群と、下側に配置されかつ前記移相器に接続された下段アンテナ素子群と、前記上段アンテナ素子群と下段アンテナ素子群との間に配置された中段アンテナ素子群とを含み、
前記給電ケーブルから給電される入力部と、前記上段アンテナ素子群及び下段アンテナ素子群にそれぞれ給電すべく前記移相器に電力を出力する第一出力部と、前記中段アンテナ素子群に電力を出力する第二出力部とを有する分配部をさらに備え、
前記第一出力部は、当該第一出力部と前記第二出力部との分配点から前記移相器までの間のインピーダンスが一定となるように、前記移相器に接続されている請求項1に記載の放送用アンテナシステム。
【請求項3】
前記上段アンテナ素子群と中段アンテナ素子群と下段アンテナ素子群との電力分配比を非等分配とすべく、前記第二出力部と前記中段アンテナ素子群との間のインピーダンスを変換するトランスをさらに備えている請求項2に記載の放送用アンテナシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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