説明

放電ランプの電極の長さを設計する方法および放電ランプ

本発明は、放電ランプ(1)の電極(9,10)の長さを形成する方法に関する。放電ランプ(1)において、充填材料(7,8)が放電ランプ(1)のランプバルブ(2)の放電空間(6)内に封入され、放電ランプ(1)の動作時に少なくとも1つの第1の充填材料(8)が気化した電極材料と化合され、この化合によって電極材料のための蓄積材料(15)が形成され、この蓄積材料(15)への温度作用に依存して、蓄積材料(15)に含まれる電極材料が再び解放されて前記電極(9,10)の先端に移動され、先端に堆積され、電極(9,10)が延長される。さらに本発明は、放電ランプに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプの電極の長さを設計する方法ならびに放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプの寿命にわたり、電極の緩慢なバーンバックが生じる。これによって点弧電圧および動作電圧が上昇し、また輝度が低下する。ランプの点弧電圧がランプの駆動装置の点弧電圧を上回ると、もはやランプを点弧することができない。動作電圧が、駆動装置によって供給される電圧を上回ると、ランプは駆動中に消える。輝度が低下することによって光源のエタンデュ(Etendue)が高まり、したがって所定の光学系によって利用できる光量が低下する。これによって特定の用途でのランプの利用可能時間が短くなる。
【0003】
発明の開示
本発明の課題は、そのような電極のバーンバックに起因して放電ランプが不所望に消えることを阻止でき、また寿命を延長することができる、方法ならびに放電ランプを提供することである。
【0004】
この課題は、請求項1に記載されている特徴を有する方法および請求項18に記載されている特徴を有する放電ランプによって解決される。
【0005】
放電ランプの電極の長さを設計する本発明による方法では、充填材料が放電ランプのランプバルブの放電空間内に封入されている。少なくとも1つの第1の充填材料は放電ランプの動作時に、その動作時に気化した電極材料と化合し、気化した電極材料と第1の充填材料とのこの化合によって、電極材料のための蓄積材料がランプバルブ内に形成される。形成された蓄積材料への温度の作用に依存して、蓄積材料に含まれる電極材料がその後再び遊離され、電極の先端に移動し、この先端において電極材料が放電ランプの動作時に電極の長さを延長するために堆積する。したがってこの方法により、放電ランプの動作時に電極の長さを要求に応じて調節することができ、したがって不所望な過度に大きい電極のバーンバックを阻止することができる。これによって電極を別個に可逆的にランプの動作時に自立的に再び延長することができるので、放電ランプの2つの電極間の過度に大きい電極間隔を阻止することができる。これによって、過度に大きい電極のバーンバックに起因して、またそれにより生じる2つの電極間の過度に大きい間隔に起因して、ランプが動作時に消えることも阻止することができる。
【0006】
有利には、電極の長さの変更を放電ランプの動作時に自動的に制御して実施することができる。したがってこの構成によって、自立的に過度に大きい電極のバーンバックを識別し、また殊に、再び必要とされる電極の延長を自動的に開始して実施する、自己制御系を形成することができる。
【0007】
殊に有利には、形成される蓄積材料に含まれる電極材料の遊離が放電ランプの動作時に要求に応じて実施される。この場合、要求に応じた制御をランプのユーザによって、したがって人間によって開始することができる。しかしながら、自立的な制御によるこの種の監視および自立的な実施は、必要とされる電極長さの延長の識別に依存して実施することもできる。殊に、この関係において、パラメータとして電圧を使用することができる。例えば、この電圧は電極の間隔が大きくなるに連れ、したがって不所望な電極のバーンバックが生じたときに上昇し、その際に電圧が所定の電圧閾値または事前に規定された電圧閾値を上回ると、その時点における電圧によって、電極のバーンバックが危険な領域に達しており、放電ランプの動作にとって不利であることを識別でき、これによって、蓄積材料の形成、および/または、殊に蓄積材料に含まれる電極材料の遊離を自動的に制御して実施することができ、またこの遊離された電極材料を電極の先端へと自動的に移動させ、この電極材料を先端に堆積させることができる。放電ランプの動作時の電極長さの必要な延長を有利には調量によって行うことができるので、蓄積材料の成長期間も量的な遊離も別個に調節することができる。電極を延長するための期間も、蓄積材料から遊離された電極材料の付加もこれによって状況に応じて変更することができる。
【0008】
有利には、充填材料として少なくとも1つの希ガスおよび金属ハロゲン化物および/または水銀を使用することができ、また第1の充填材料として付加的なハロゲンまたはハロゲン化物を使用することができる。
【0009】
有利には、付加的にハロゲンとして臭素またはヨウ素が放電空間内に封入される。
【0010】
殊に有利には、蓄積材料が放電ランプの動作時の電極の先端の温度に調整される隔離温度を有する。ハロゲンのこの種の仕様によって、ハロゲンと電極材料の相応の化合物は過度に低い温度では解離せず、したがって蓄積された電極材料が不所望に遊離されないことを保証することができる。殊に、この種の温度調節によって非常に有利には、遊離された電極材料も殊に有利に電極の先端に移動され、その先端において電極を延長するために堆積されることを達成できる。
【0011】
有利には、第1の充填材料は、動作時に電極の付加的で自動的な長さの変更が行われない場合に比べて少なくとも100%高い濃度で封入される。この関係において殊に有利には、著しく多い量の付加的なハロゲンがランプに供給される。ハロゲンは気化した電極材料、殊にタングステンおよび酸素とランプ動作中に化合する。タングステンハロゲン化物およびタングステンオキシハロゲン化物は放電容器内の非常に熱い個所において分解するので、タングステンは最終的に再び電極へと移動され、放電容器の壁には沈殿しない。この過程によって有利には、放電容器の黒化は生じないことを達成できる。
【0012】
タングステンハロゲン化物は例えばWBr4またはWI4でよい。タングステンオキシハロゲン化物は例えばWO2Br2またはWO22でよい。
【0013】
これに比べてハロゲンがさらに多く調量される場合には、付加的な有利な作用が得られる。この場合には、電極の先端の周囲において結晶が成長し、この結晶が次第に溶解する。したがって、電極材料、殊にタングステンが電極の先端へと移動し、それにより2つの電極間の電極間隔が狭まる。電極のバーンバックをこれによって自己制御で補償調整することができる。
【0014】
前述の作用を殊に有利なやり方で、さらに個別的に状況に応じて制御できるようにするために、ランプバルブないし放電容器がコールドトラップと共に構成されている場合には有利である。
【0015】
この「冷たい」個所における温度が十分に低い場合には、その個所において所期の量の蓄積材料、殊にタングステンハロゲン化物およびタングステンオキシハロゲン化物が濃縮され、したがって循環プロセスから除外される。したがって電極の先端への電極材料、殊にタングステンの移動は緩慢にされ、電極のバーンバックによって補償ないし過補償される。
【0016】
電極間隔が狭くされる場合、状況に応じて、蓄積材料が濃縮されて蓄積される局所的な個所の温度が高められ、それによりこの蓄積材料が再び気化する。これによって、蓄積材料に含まれる電極材料が再び遊離され、電極の先端へと移動する。放電容器の雰囲気中の付加的な第1の充填材料、殊にハロゲンまたはハロゲン化物によって電極の先端へと材料が所望のように移動する。
【0017】
有利には、ランプバルブ内、したがって放電空間内の所定の温度条件および圧力条件において、第1の充填材料とは異なる充填材料の構成要素が蓄積材料の形態の電極材料と共に濃縮されないように充填材料が構成されている。この関係において、充填物として希ガスが殊に有利である。
【0018】
有利には、蓄積材料を制御して形成するためにランプバルブの冷却が局所的に行われ、それによって蓄積材料の濃縮を所期のように特定の個所において保証することができる。
【0019】
有利にはこの関係において、蓄積材料の要求に応じた形成、および/または、電極の要求に応じた延長に依存して冷却が自動的に調節される。これによって、冷却を時間に関しても強度に関しても個別に調節して変更することができる。これによって達成できる蓄積材料の量およびその局所的な堆積、また蓄積された電極材料を遊離するための要求に応じた気化を厳密で精確に行うことができる。
【0020】
有利には、ランプバルブの局所的な冷却によって蓄積材料が濃縮され、固体材料としてランプバルブ内の特定の個所に堆積する。殊に、濃縮された蓄積材料のランプバルブ内の堆積が局所的に正確に行われるように冷却が実施される。
【0021】
殊に、濃縮された蓄積材料の堆積は電極の影領域において実施される。この関係において電極の影領域とは、濃縮された蓄積材料において光の散乱および吸収が妨害されるほどにランプの光放射に影響を及ぼさない領域を表す。
【0022】
したがって有利には、電極間隔の制御は制御可能なコールドトラップによって行われる。したがって有利には、放電空間に供給される付加的な第1の充填材料、殊にハロゲンまたはハロゲン化物は、タングステンまたはタングステンオキシハロゲン化物として非常に熱い電極の先端の近傍においてのみ分解されるように選択される。有利には、ハロゲン化物が沈殿することができる領域において放電容器が冷却される。
【0023】
殊に、外部からランプバルブへと流し込まれる空気流および/または液体流によって冷却を行うことができる。これによって簡単で局所的な冷却を実現することができ、このような冷却は手間を掛けずに準備でき、また使用することができる。さらにはこれによって冷却の十分な効果が実現され、また冷却位置を相応に局所的に精確に決定することができる。
【0024】
ランプバルブないし放電容器は基本的な構造形態によっても、いわば統合されたコールドトラップを有することができる。コールドトラップを例えば能動的に加熱することができるか、集熱装置を取り付けることができる。殊に、この種の集熱装置においても自己制御式の加熱を実現することができる。この関係において、例えば集熱装置として、濃縮された蓄積材料が収容されている蓄積領域にわたって少なくとも部分的に被せられているか、蓄積領域を少なくとも部分的に包囲するヒートバルブを設けることができる。有利には放電容器の延長部として、また殊に放電容器の胴状の中間部として放電容器に配置されている蓄積領域において、この集熱装置を被せることができる。集熱装置の内壁および/または外壁はコーティングされており、殊に熱放射を反射する材料でもってコーティングされている。殊に、これによって例えば鏡面化部を設けることができるので、集熱装置はいわば熱貯蔵部として使用される。これによって、殊に延長部として構成されている蓄積領域の要求に応じた加熱を達成することができ、またこれによって、そこに含まれる蓄積材料の加熱を精確に要求に応じて実現することができる。
【0025】
有利には、蓄積材料から電極材料を遊離するために、ランプバルブは蓄積材料の解離温度以上の温度で局所的に加熱される。これによって、その個所ではランプの動作時の解離温度よりも実質的に高い、もしくは少なくとも近似している、放電ランプの動作時の温度が生じているので、蓄積材料は気化し、電極材料が電極の先端へと移動する。
【0026】
有利には、ランプバルブの胴状の中間部に配置されており、コールドトラップとして構成されている管状の延長部内で蓄積材料が濃縮される。殊に、蓄積材料から電極材料を遊離するためにこの延長部が外部から加熱される。この関係において簡単な加熱装置を設けることができるか、例えば上述のような集熱装置を使用することができる。
【0027】
しかしながら、コールドトラップの温度をランプバルブの位置によって調整することもできる。この関係において、開始位置として延長部が差し当たり下方に向かって配向されている位置を設けることができる。延長部が上方に向かって配向され、開始位置よりも高い位置にあるようにランプバルブを回転させることによって、やはり加熱の物理的な効果を利用することができる。何故ならば、上側の位置では下側の位置よりも温度が高いからである。
【0028】
本発明による方法によって、電極のバーンバックを補償し、殊に状況および需要に応じて別個に補償することができる。したがって、殊に、バーンバックが終わった後に所望の長さを生じさせることができる。したがって点弧電圧が低減され、また光源の焦点調節能力が改善される。それとともにランプの寿命も延長することができる。
【0029】
本発明による放電ランプは胴状の中間部を有するランプバルブを含み、この中間部内に放電ランプが形成されている。放電空間内には少なくとも1つの長い電極、殊に2つの電極が延在しており、また放電空間内には充填材料が封入されている。充填材料は少なくとも1つの第1の充填材料を有し、この第1の充填材料は放電ランプの動作時に気化した電極材料と化学的に化合し、この化合によって電極材料のための蓄積材料をランプバルブ内に形成することができる。蓄積材料への温度の影響に依存して、蓄積材料に含まれる電極材料を再び遊離することができ、この遊離された電極材料は電極を延長するために、また電極に堆積するために電極の先端に移動する。これによって、不所望な電極のバーンバック、またそれと結び付いた動作時の放電ランプへの不所望な影響を阻止することができる。殊に、これによってランプの寿命も延長することができる。
【0030】
有利には、放電ランプはその動作時に放電空間において気体状の材料から蓄積材料を濃縮するためのコールドトラップを有する。有利には、コールドトラップはランプバルブに外部から局所的に空気を流し込む冷却ファンを有する。コールドトラップが液状の媒体でもってランプバルブを外部から冷却する装置を有していてもよい。同様に、コールドトラップが、放電容器の中間部に配置されている、殊に管状の延長部を有することができる。この延長部においては、隣接する放電空間に比べて温度が低いことに基づき、状況に応じて蓄積材料を濃縮することができる。有利には、濃縮された蓄積材料をこの蓄積材料に含まれる電極材料の要求に応じた遊離のために特別に加熱することができる。
【0031】
殊に、第1の充填材料はハロゲンまたはハロゲン化物である。この関係において、第1の充填材料、殊にハロゲンまたはハロゲン化物の量が、動作時に電極の長さの付加的で自動的な変更が行われない場合の第1の充填材料の量よりも多い、殊に実質的に多い、殊に有利には少なくとも100%多い場合には非常に有利である。この特別な第1の充填材料の量をそのように非常に多くすることによって、蓄積材料の形成の作用、またそれに続く蓄積材料の加熱による遊離を殊に効果的に、また電極の長さの延長に関して行うことができる。
【0032】
殊に、蓄積材料は放電ランプの動作時の電極先端の温度に近いか、それよりも低い解離温度を有する。この仕様によって殊に有利には、蓄積材料から充填材料を遊離させた後に、この充填材料を殊に有利には自動的に電極の先端の方向へと移動させ、先端に堆積させることができる。
【0033】
この関係において、以下では制御可能な電極の成長の経過をもう一度説明する。ランプ動作中に電極材料が気化される。第1の充填材料は電極材料と化合し、蓄積材料となる。蓄積材料としては2つのケースが考えられる。
【0034】
第1のケースでは、蓄積材料が熱い電極の先端の近傍に生じ、先端部において電極材料と第1の充填材料に分解され、電極材料が先端に堆積する。これによって電極の先端に材料が移動する。第2のケースでは、蓄積材料が放電容器内で十分に冷たい個所に位置し、その個所において濃縮される。これによって蓄積材料が凝固する。結合した第1の充填材料は放電容器の雰囲気から離れ、材料の移動に関与することはできない。
【0035】
濃縮される量を調整可能なコールドトラップを介して制御することができる。したがって材料の移動も制御することができる。
【0036】
ハロゲン(Br,I)またはハロゲン化物(=ハロゲン化号物)WBr4,WO2Br2,HBrなどを第1の充填材料として使用することができる。
【0037】
第1の充填材料がランプの動作時に分解し、1つの構成要素、例えばハロゲンBrのみが電極材料と化合して蓄積材料になってもよい。この場合、第1の充填材料(HBr)は可能な限り再びこの化合物には戻らない(ハロゲンを放電容器からガラスを介して拡散させることができる)。
【0038】
第1の充填材料(WBr4)は空間温度において気体であってもよいが、これは必ずしも必要ではない。
【0039】
リフレクタランプの場合、電極の間隔を可能な限り一定に維持することは殊に有利である。何故ならば、アーク長が拡大すると光の焦点調節能力が劣化するからである。例えば数百時間の点弧期間の経過後の動作時における電極間隔を再び初期値に戻せるということは、このランプがその用途においてさらに光を発することを意味する。
【0040】
さらには制御回路によって正確な電極間隔を所期のように調節することができる。電流の短時間の上昇またはAC駆動ランプにおける整流の省略によって電極間隔を大きくすることができる。コールドトラップの制御によっても電極を僅かに成長させることができる。
【0041】
別の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0042】
以下では、本発明の実施例を概略的な図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による放電ランプの第1の実施例を示す。
【図2】本発明による放電ランプの第2の実施例を示す。
【図3】本発明による放電ランプの第3の実施例を示す。
【図4】本発明による放電ランプの第4の実施例を示す。
【図5】本発明による放電ランプの第5の実施例を示す。
【図6a】コールドトラップに関する本発明による放電ランプの第1の位置を示す。
【図6b】コールドトラップに関する本発明による放電ランプの第2の位置を示す。
【0044】
発明の有利な実施形態
図面において、同一の構成要素または同じ機能を有する構成要素には同じ参照記号が付されている。
【0045】
図1に、ランプバルブ2の形態の放電容器を有する放電ランプ1が概略的に示されている。ランプバルブ2は2つのバルブネック3および4を有し、これらのバルブネック3,4は放電容器2の胴状の中間部5から対向して延在している。胴状の中間部5の内部には放電空間6が形成されている。放電空間6内には充填材料7が封入されている。この充填材料7には希ガスおよび/または金属ハロゲン化物および/または水銀が含まれる。さらに充填材料7は、この実施例においては付加的なハロゲンまたはハロゲン化物である第1の充填材料8を含む。
【0046】
この実施例において、放電ランプ1はキセノンショートアーク高圧放電ランプ(XBO)として構成されている。しかしながら放電ランプを他のタイプの放電ランプとして構成することもできる。この実施例では、第1の充填材料8としてハロゲン臭素が使用されており、このハロゲン臭素をHBrの形態で、例えば4000ppmの濃度で放電空間6内に封入することができる。この関係において、第1の充填材料8として他のハロゲンを封入することができ、さらには異なる濃度が予定されていてもよい。
【0047】
また放電ランプ1は2つのロッド状の電極9および10を有し、これらの電極9,10はそれぞれバルブネック3ないし4を介して放電空間6の内部に向かって延在している。電極9および10の先端11および12は相互に対向しているが、相互に間隔をおいて配置されている。
【0048】
この実施例において2つの電極9および10は、電極材料としての高純度タングステンから構成されている。
【0049】
さらに放電ランプ1はコールドトラップを有する。図1において、このコールドトラップは別個の冷却ファン13として構成されている。冷却ファン13により冷却空気流14を形成することができ、この冷却空気流14は局所的且つ特殊に外部から放電容器2の特定の個所へと流すことができる。
【0050】
電極9ないし10の特定の長さを設計するために、放電ランプ1の動作時に蓄積材料15が形成され、この蓄積材料15は第1の充填材料8と、この第1の充填材料8と共に気化する電極材料、すなわちタングステンとによって形成される。ランプ動作中にハロゲン臭素は気化したタングステンおよび酸素と化合する。それにより生じるタングステンハロゲン化物ないしタングステンオキシハロゲン化物はコールドトラップ13および冷却空気流14によって冷却され、それにより濃縮される。この実施例では、冷却空気流14を特定の個所に局所的に流すことによって、固体材料としての蓄積材料15の濃縮および堆積が電極10の影領域16において行われる。したがってこの実施例では、影領域16は電極先端12のほぼ裏側に存在し、且つ、電極12がバルブネック4に合流する領域における中間部5の内壁領域の可能な限り近くに形成されている領域として定義される。これによって、放電ランプ全体1の光放射がその特定の個所において局所的に堆積された蓄積材料15によって損なわれることはない。何故ならば、光の散乱および吸収はこの蓄積材料15によっては妨げられないからである。
【0051】
図示されている実施形態において、第1の充填材料8は、放電ランプ1の動作時のこの種の自立的な調整および制御による電極の長さ調節が行われない場合に比べて多く、殊に実質的に多く調量されている。
【0052】
このようにハロゲンをより多く調量することによって、電極9および10の先端11ないし12の周囲に結晶が成長し、この結晶が次第に溶解するという付加的な作用が得られる。したがって、電極9および10の先端11ないし12へとタングステンが移動し、それにより電極の間隔が狭くなる。
【0053】
この関係において、電極の長さが不所望に延長されることを阻止できるようにするために、図1による実施例では、冷却空気流14を局所的に固有にランプバルブ2へと流すコールドトラップを構成することによって、電極の長さの調節を制御することができる。したがって、特定の個所、この実施例では影領域16内の特定の個所の相応の冷却が達成されることによって、十分に冷たいこの個所では蓄積材料、殊にタングステンハロゲン化物ないしタングステンオキシハロゲン化物が濃縮され、したがってこの蓄積材料は循環プロセスから除外される。したがって電極9および10の先端11および12へのタングステンの移動は緩慢になり、一時的に故意に電極9および10のバーンバックによって補償ないし過補償される。
【0054】
電極の間隔が狭くなり、電極のバーンバックがそれ以上進行すべきではなくなると、タングステンハロゲン化物ないしタングステンオキシハロゲン化物15が濃縮されている個所の温度が高められ、それによりこの蓄積材料15は影領域16において気化する。蓄積材料は電極9,10の先端11,12においてその構成要素、すなわちタングステン、ハロゲンまた場合によっては酸素に分解される。タングステンは電極9,10に堆積する。すなわち、電極9,10の先端11,12の方向へとタングステンが移動する。
【0055】
このことは、ランプ内の所定の温度条件および圧力条件では充填材料の他の構成要素は濃縮されない場合には殊に好適である。この関係において、充填物として希ガスが殊に有利である。さらには、第1の充填材料、すなわちハロゲンが放電ランプ内の温度に合わせられており、それによりタングステンが有利に電極の先端11および12に移動する場合には殊に有利である。この関係において、第1の充填材料8のハロゲンおよび電極9,10の材料から形成されるハロゲン化物である蓄積材料15の解離温度が放電ランプの動作時の電極9,10の先端11,12の温度に調整され、それらの温度が少なくとも非常に近似している場合には殊に有利である。何故ならば、その場合には、遊離された電極材料が蓄積材料15から所期のように先端11および12へと自動的で有利に移動することができ、先端11および12における堆積が有利に行われるからである。
【0056】
したがって、電極の長さの変更を状況および要求に応じて自動的に制御して調節することができる。この関係において、放電ランプの動作時の冷却空気流14を形成するためのファン13をユーザによって起動および停止することができる。この関係において、有利にはファンの起動および停止が電子制御部によって自動的に行われる。この関係において、1つまたは複数の物理的な動作パラメータに依存して、このファン13の制御を行うことができる。この関係において、電極9と電極10との間の電圧をこの種の設計パラメータとして使用することが有利であると分かった。この動作パラメータによって、電極間隔の所望の範囲または不所望な範囲に達しているか否か、またはそれらの領域から離れているか否かを非常に正確に確認することができる。この関係において、一方では要求に応じた冷却を行うことができ、他方では蓄積材料15の所望の加熱を行うことができる。
【0057】
図2には、別の実施例が概略的に示されている。この実施形態では、冷却のために気体状または液体状の媒体を外部からランプバルブ2の特定の個所へと流すコールドトラップ17が実現されている。ここでもまた、蓄積媒体が影領域16において濃縮されるように局所的な冷却が行われている。この関係において、コールドトラップ17は液体または気体を流すことができるチューブまたは管を有する。
【0058】
図には、別の実施例が概略的に示されている。この関係において、熱伝性の層からの熱がランプバルブないし放電容器2から放熱され、その後方において気体または液体によって冷却が行われるコールドトラップ18が実現されている。この関係において熱伝性の層19はバルブネック4に取り付けられている。この図から見て取れるように、熱伝性の層19はランプバルブの一方の側では胴状の中間部5まで延在しているので、この実施例でもまた、影領域16における蓄積媒体15の濃縮が行われる。
【0059】
図4には、コールドトラップ20が実現されている別の実施例が示されている。コールドトラップ20はこの関係においては胴状の中間部5における延長部21として構成されている。延長部21は管状に構成されており、側方において中間部5から傾斜して下方に向かって延在している。ここでもまた、放電空間6内のその他の領域に比べて温度が低いことに基づき蓄積材料を濃縮させることができ、この蓄積材料は続いて延長部21内に収容される。蓄積材料15内の電極材料を遊離するために能動的な加熱装置22が設けられており、この加熱装置22を例えば延長部21の外面に取り付けることができる。加熱装置22の起動および停止を電子的に制御することができる。この加熱装置22によってコールドトラップ20の温度を調整することができ、したがって凝縮物を気体にすることができる。
【0060】
別の実施例が図5に概略的に示されている。この実施例においては、コールドトラップを表す延長部21が形成されている。さらには、延長部21を少なくとも部分的に包囲する加熱装置23が設けられている。この関係において加熱装置23は被せ嵌め可能なカバーであり、このカバーの内壁および/または外壁はコーティングされている。コーティングは殊に鏡面化部として構成されているので、熱反射によって内部に熱を保つことができ、蓄積材料15が加熱される。これによってもコールドトラップ21の温度を調整することができ、したがって凝縮物を気化させることができる。
【0061】
別の実現形態が図6a,6bに示されている。この構成では、左側の図(図6a)によって示されている放電容器2の開始位置において延長部21が下方に配向されて位置決めされている。これによって、温度条件に基づき、固体材料としての蓄積材料の延長部21内での濃縮および堆積を達成することができる。電極材料を気化させ、解離によって電極材料を電極9の先端11および12に堆積させるために蓄積材料15が再び気化されると、放電容器2が上に向かって、殊に180°回転され、それにより延長部21が上方に配向されて配置されており、したがって熱力学的な条件に基づき、右側の図6bに示されているこの最終位置において加熱が行われる。これによっても蓄積材料15の気化を達成することができる。
【0062】
実施例の個々の特徴または複数の特徴を他の実施例と組み合わせることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプ(1)の電極(9,10)の長さを設計する方法であって、
前記放電ランプ(1)において、充填材料(7,8)を前記放電ランプ(1)のランプバルブ(2)の放電空間(6)内に封入し、前記放電ランプ(1)の動作時に少なくとも1つの第1の充填材料(8)を気化した電極材料と化合させ、該化合によって前記電極材料のための蓄積材料(15)を形成し、該蓄積材料(15)への温度作用に依存して、前記蓄積材料(15)に含まれる前記電極材料を再び遊離させて前記電極(9,10)の先端に移動させ、前記先端に堆積させ、前記電極(9,10)を延長することを特徴とする、放電ランプ(1)の電極(9,10)の長さを設計する方法。
【請求項2】
前記電極(9,10)の長さの変更を前記放電ランプ(1)の動作時に自動的な制御下で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
形成された前記蓄積材料(15)に含まれる電極材料の遊離を前記放電ランプ(1)の動作時に要求に応じた制御下で実施する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
充填材料(7,8)として少なくとも1つの希ガスおよび金属ハロゲン化物および/または水銀を封入し、第1の充填材料として付加的なハロゲン(8)またはハロゲン化物(8)を封入する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記付加的なハロゲン(8)は臭素であるか、または、前記ハロゲン化物(8)は臭素を有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
例えば前記電極材料と共にハロゲン(8)またはハロゲン化物(8)を含む前記蓄積材料(15)は、放電ランプ(1)の動作時の前記電極(9,10)の温度に調整される解離温度を有する、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
第1の充填材料(8)を、動作時に前記電極(9,10)の付加的で自動的な長さの変更が行われない場合に比べて少なくとも100%多い量で封入する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記蓄積材料(15)を制御下で形成するために、前記ランプバルブ(2)の冷却(13,14,17,18,19,20)を局所的に実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記冷却を前記蓄積材料(15)の要求に応じた形成、および/または、電極(9,10)の要求に応じた延長に依存して自動的に調節する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ランプバルブ(2)を局所的に冷却することによって前記蓄積材料(15)を濃縮し、固体材料として前記ランプバルブ(2)内に局所的に堆積させる、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記冷却を局所的に実施し、濃縮された前記蓄積材料(15)をランプバルブ内に局所的に堆積させる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
濃縮された前記蓄積材料(15)の堆積を前記電極(9,10)の影領域において行う、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
外部から前記ランプバルブ(2)へと流し込まれる空気流(14)および/または液体流によって前記冷却を行う、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記蓄積材料(15)から前記電極材料を遊離するために、前記ランプバルブ(2)を前記蓄積材料(15)の解離温度以上の温度で局所的に加熱する、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ランプバルブ(2)の胴状の中間部に配置されており、コールドトラップ(20)として構成されている延長部(21)内で前記蓄積材料(15)を濃縮する、請求項8から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記蓄積材料(15)から前記電極材料を遊離するために前記延長部(21)を外部から加熱する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記延長部(21)および該延長部(21)内に堆積された前記蓄積材料(15)を加熱するために前記ランプバルブ(2)を回転させ、前記延長部を下方に向けられた開始位置から上方に向けられた最終位置に移動させる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
内部に少なくとも1つの長い電極(9,10)が延在しており、且つ、充填材料(7,8)が封入されている放電空間(6)を有するランプバルブ(2)を備えた放電ランプにおいて、
前記充填材料(7,8)は少なくとも1つの第1の充填材料(8)を有し、該第1の充填材料(8)は前記放電ランプ(1)の動作時に気化した電極材料と化学的に化合し、該化合によって前記電極材料のための蓄積材料(15)が前記ランプバルブ(2)内に形成され、該蓄積材料(15)への温度作用に依存して、前記蓄積材料(15)に含まれる前記電極材料が再び遊離され、遊離された該電極材料が電極(9,10)の延長のため、および前記電極(9,10)の先端(11,12)における堆積のために前記電極(9,10)の先端(11,12)に移動することを特徴とする、放電ランプ。
【請求項19】
前記放電空間(6)内の気体状の材料から蓄積材料(15)を濃縮するためのコールドトラップ(13,14,17,18,19,20)を有する、請求項18記載の放電ランプ。
【請求項20】
前記コールドトラップ(13,14,17,18,19,20)は、外部から前記ランプバルブ(2)に局所的に空気を流し込む冷却ファン(13)を有する、請求項18記載の放電ランプ。
【請求項21】
前記コールドトラップ(13,14,17,18,19,20)は、外部から前記ランプバルブ(2)を液状の媒体でもって冷却する装置(17)を有する、請求項18記載の放電ランプ。
【請求項22】
前記コールドトラップ(13,14,17,18,19,20)は前記中間部(5)に配置されている延長部(21)を有し、該延長部(21)においては、隣接する放電空間(6)に比べて温度が低いことに基づき、前記蓄積材料(15)が濃縮される、請求項19から21までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項23】
濃縮された前記蓄積材料(15)は、該蓄積材料(15)に含まれる電極材料を要求に応じて遊離させるために、別個に加熱される、請求項18から22までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項24】
前記第1の充填材料(8)はハロゲンまたはハロゲン化物である、請求項18から23までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項25】
前記第1の充填材料(8)の量は、動作時に前記電極(9,10)の長さの付加的で自動的な変更が行われない場合の第1の充填材料の量よりも多い、殊に実質的に多い、殊に有利には少なくとも100%多い、請求項18から24までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項26】
例えば前記第1の充填材料(8)と前記電極材料との構成要素からなる前記蓄積材料(15)は、放電ランプ(1)の動作時の電極の先端(11,12)の温度に近い、または低い解離温度を有する、請求項18から25までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項27】
放電ランプはリフレクタランプとして構成されている、請求項18から26までのいずれか1項記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a−6b】
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【公表番号】特表2011−517014(P2011−517014A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500050(P2011−500050)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053265
【国際公開番号】WO2009/115119
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(504458493)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (168)
【氏名又は名称原語表記】Osram Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】