説明

放電ランプ

【課題】電球形蛍光ランプなどの放電ランプにおいて発光管の近傍に発光体を備え、この発光体を点灯から一定期間だけ点灯させることで良好な光束立ち上がり特性を得ることを実現しつつ、発光体が発光管より先に寿命が尽きてしまうことを防止し、ランプ(発光管)寿命末期まで光束立ち上がり良好な特性を維持する。
【解決手段】放電ランプの消灯(OFF)から再点灯(ON)までの期間が、コンデンサC11の自然放電が完了するまでの期間(T1)より短いほど、補助電球30の点灯時間を通常の時間(T0)と比べてより短い時間とする(T1>T4>T2,T0>T5>T3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギー時代を迎え、照明分野においても、従来一般的に使用されてきた白熱電球に替わり、蛍光ランプの使用が浸透しつつある。蛍光ランプの中でも、高いランプ効率を有し、白熱電球用のソケットを利用して装着可能な電球形蛍光ランプが普及してきている。
電球形蛍光ランプは、ホルダーに取り付けられた発光管と、当該発光管を点灯駆動するための回路部品を実装したプリント板とを有し、このプリント板がケース内に収納された構造を有する。なお、ケースの一端部には、E型などの口金が取り付けられている。
【0003】
発光管は、屈曲ガラス管の管両端部にフィラメントコイル電極が封止され、屈曲ガラス管の内壁には蛍光体層が形成されている。そして、発光管の内部には、253.7nm紫外放射物質としての水銀Hgが封入され、緩衝ガスとしてアルゴンArネオンNeなどの希ガスが封入されている。
ところで、発光管に封入された水銀からの放射紫外線は、管内の水銀蒸気圧に依存しており、水銀蒸気圧が低い状態下の始動では光束の立ち上がりが遅い。
【0004】
このような問題の解決を図るために、発光管に隣接させてフィラメント電球を補助的に配し、始動時の一定期間だけフィラメント電球を点灯させるという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。フィラメント電球から発せられる光束により、始動時のランプ全体としての光束を底上げし、立ち上がり特性の向上を図っている。
【特許文献1】特開2000-164174号公報
【特許文献2】特開平3-74002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発光管が一度点灯し光束が立上り安定した後、一旦消灯させ再度点灯させる場合、消灯時間が短いと発光管はすぐに安定時に近い光束まで立ち上るので発光体を点灯させる必要がなく、省エネの観点からも好ましくない。さらに発光体を点灯させる必要のない場合に点灯させると発光体の寿命を短縮させてしまうという問題がある。
フィラメント電球が寿命などの原因により点灯しなくなった場合には、発光管だけが点灯することとなる。
【0006】
このような場合、発光管は点灯するので一応使用を継続することが可能であるものの、光束立ち上がり特性が悪化し、製品仕様とは異なった点灯状態が生じることとなる。
このため、製品仕様の保証という観点から、フィラメント電球の寿命が先に尽きてしまうという状態を回避する必要がある。
また、電球形蛍光ランプが中々点灯しないことにユーザが気づき、ユーザの使用感を損なってしまうことも考え得る。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、電球形蛍光ランプなどの放電ランプにおいて、発光管の近傍にフィラメント電球などの発光体を備え、点灯時に発光体を一定期間だけ点灯させることで良好な光束立ち上がり特性を得ることを実現しつつ、発光体を長寿命化することで、ランプとして良好な特性を寿命末期まで維持できる放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る放電ランプは、放電により発光する発光管と、前記発光管の近傍に配置され、前記発光管よりも高い光束立ち上がり特性を有する発光体と、前記発光管及び前記発光体を点灯させる点灯ユニットと、を備える放電ランプであって、前記点灯ユニットは、前記発光体を、前記発光管の点灯に合わせて所定時間だけ点灯させるとともに、前記発光管が前回消灯から一定期間内に再点灯された場合には、消灯から再点灯までの時間が短いほど、前記所定時間を短く変更するタイマー回路を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明に係る放電ランプでは、消灯から一定期間内に点灯された場合には、発光体を点灯させる所定時間を短くするため、発光体の総点灯時間を短縮することができる。このため、発光体が発光管より先に寿命を迎える可能性を低減することができ、発光体による光束立ち上がり特性の向上の効果を、ランプ(発光管)の寿命末期まで享受することが可能となる。
【0010】
(2)また、前記タイマー回路は、コンデンサと抵抗とを含むCR時定数を用いた回路であって、前記発光管の点灯または消灯に合わせて、前記コンデンサをそれぞれ充電または放電させるとしても構わない。
(3)また、前記発光体は、フィラメント電球であるとしても構わない。
(4)また、前記発光管は、内方に空間を有する状態で、仮想軸廻りを螺旋状に旋回する旋回部を有する二重螺旋形状を有し、前記発光体は、前記発光管の前記内方の空間に挿入されているとしても構わない。
【0011】
(5)また、前記発光管は、透光性のグローブで覆われているとしても構わない。
(6)また、前記タイマー回路が正常に動作しないときに前記発光体の熱により溶断して前記点灯ユニットへの通電を遮断する温度ヒューズを備えるとしても構わない。
(7)また、本発明に係る放電ランプは、放電により発光する発光管と、前記発光管の近傍に配置され、前記発光管よりも高い光束立ち上がり特性を有する発光体と、前記発光管及び前記発光体を点灯させる点灯ユニットと、を備える放電ランプであって、前記点灯ユニットは、前記発光体を、前記発光管の点灯に合わせて所定時間だけ点灯させ、前記発光管がその消灯から一定期間内に再点灯された場合には、前記所定時間の発光体の点灯を禁止するタイマー回路を含むことを特徴とする。
【0012】
(8)また、本発明に係る放電ランプは、放電により発光する発光管と、前記発光管の近傍に配置され、前記発光管よりも高い光束立ち上がり特性を有する発光体と、前記発光管及び前記発光体を点灯させる点灯ユニットと、を備える放電ランプであって、前記点灯ユニットは、前記発光体を、前記発光管の点灯に合わせて点灯させる点灯回路を含み、前記点灯回路は、前記発光管の前回消灯から再点灯までの時間に応じて、前記発光体への入力電力を変更することを特徴とする。
【0013】
(9)また、本発明に係る放電ランプは、放電により発光する発光管と、前記発光管の近傍に配置され、前記発光管よりも高い光束立ち上がり特性を有する発光体と、前記発光管及び前記発光体を点灯させる点灯ユニットと、を備える放電ランプであって、前記点灯ユニットは、前記発光体を、前記発光管の点灯に合わせて点灯させる点灯回路を含み、前記点灯回路は、前記発光管の前回消灯から再点灯までの時間に応じて、前記発光体の点灯態様を異ならせることを特徴とする。
【0014】
「点灯態様を異ならせる」とは、例えば、点灯時間の長さ、点灯のための投入電力の大きさなどを変更する例が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下、記載する寸法などの具体的なランプ仕様は一例であって、これに限定されるわけではない。
1.電球形蛍光ランプの構成
図1は、実施の形態に係る電球形蛍光ランプ1の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、放電ランプの一種である電球形蛍光ランプ1は、二重螺旋形状の発光管10、この発光管10をその端部で保持するホルダー20、発光管10における旋回内の円筒形状の空間に配置された補助電球30、発光管10及び補助電球30を点灯駆動するための点灯ユニット40、点灯ユニット40に係る動作回路部品を実装するプリント板70を備える。
【0016】
発光管10は、例えば、定格電力9Wであり白熱電球60Wの代替として用いられる。仮想軸CL廻りを旋回する2つの旋回部を有する二重螺旋形状をしている。螺旋形状部分の管外径は7.5mm、螺旋に旋回している旋回部分どうしの隙間(巻層の隙間)は2.0mm、旋回回数(巻層数)は約6回、仮想軸CL方向から見たときの環外径は32.5mm、管全長は60mmである。
【0017】
発光管10は、その管の両端内部それぞれにフィラメントコイル電極(電極間距離530mm)が設けられ、管内には波長253.7nm紫外線放射物質としての単体の水銀Hgが3.0mg封入され、またアルゴンAr、クリプトンKrの混合ガス(Ar80%+Kr20%)の混合ガスが550Paの封入圧で封入されている。
なお、封入する水銀は、完全に単体でなくとも亜鉛水銀やスズ水銀などの略単体の形態であってもよい。
【0018】
発光管10の放電空間における電極の近傍には、図示しない補助アマルガムが配設されている。補助アマルガムは、ランプ始動時に水銀を放出することで光束立ち上がり特性を改善する。補助アマルガムの形成金属体には、インジウムInメッキされたステンレスメッシュ切片を用いている。
補助電球30は、円筒状をしたガラスバルブ31、ガラスバルブ内に収納されたタングステン製のフィラメントコイル32を備えたフィラメント電球である。このフィラメントコイル32は、一対のステムリード線33,34に支持されている。
【0019】
また、補助電球30は、定格電力20W(発光管10の2倍)であって、旋回する発光管10の内方に挿入されている。すなわち、補助電球30のガラスバルブ31の外壁は、発光管10の外壁に対して近接している。ガラスバルブ31は、旋回する発光管10内側の、旋回軸(仮想軸CL)を中心とした空間内に配されているとも言い得る。
なお、ガラスバルブ31内には、クリプトンKr-窒素Nの混合ガスが80KPa封入されている。ガラスバルブ31は、管外径16mm、管長40mmである。
【0020】
この補助電球30は、発光管10よりも高い(早い)光束立ち上がり特性を有し、ランプ1始動時の一定期間だけ点灯されることで、ランプ1の立ち上がり特性を向上させる。
発光管10および補助電球30は、ホルダーに20設けられた挿入穴にそれぞれ挿入され、ホルダー20の裏面側でシリコーン樹脂などを用いて固定されている。
点灯ユニット40は、シリーズインバータ方式などに基づくインバータ回路から構成されており、回路効率は約90%である。従って、発光管10への管入力は10×0.9=約9Wとなる。
【0021】
ホルダー20により固定されたプリント板70は、ガラス・エポキシ樹脂製(耐熱温度約150℃)であって、略円形状をしており外径は約38mmである。
また、プリント板70の2つある外層面のうち、一方の部品面(component side,補助電球30側の面とは反対側となる。)には点灯ユニット40に係る動作回路部品の大半が実装されている。他方のはんだ面(solder side)は、部品面の部品を固定し電気的に接続するはんだ付けが施されている。
【0022】
点灯ユニット40に係る動作回路部品は、ホルダー20の図1中下方向に展開されており、この動作回路部品はケース50により覆われている。
ケース50の下側端部には、口金60が取り付けられている。
発光管10の頂点部分には、凸部10aが形成されている。
この凸部10aは、透明性のシリコーン樹脂からなる熱伝導性媒体82を介してグローブ80と結合されている。この凸部10aは、発光管10の発光時の最冷点箇所となる。
【0023】
また、グローブ80は透光性を有しており、その内表面には、炭酸カルシウムを主成分としてた拡散膜が塗布されている。
2.回路構成
図2は、実施の形態に係る電球形蛍光ランプ1の回路構成を示す図である。
図2に示すように、電球形蛍光ランプ1の点灯ユニット40は、商用電源から電力供給を受けて発光管10、補助電球30を点灯させるものであり、整流器41、平滑器42、安定器43、予熱回路44、タイマー回路46,温度ヒューズ71を含んでいる。
【0024】
商用電源側から発光管10に向けた電力経路上において、商用電源から供給される交流電流を整流する整流器41、電流中の脈動分を減少させる平滑器42、発光管10の点灯を制御する安定器43の順に接続されている。
タイマー回路46は、補助電球30を一定期間だけ点灯させる回路であり、素子として、抵抗R11〜R15、コンデンサ(キャパシタ)C11,C12、ツェナーダイオードZD,トランジスタ素子Q3,Q4を含んでいる。
【0025】
タイマー回路46の動作の概要は次の通りである。
(1)電球形蛍光ランプ1への電源がオンとされると(ランプ始動となると)、抵抗R12、抵抗R14の分圧によりコンデンサC12が瞬時に充電されトランジスタQ3のGS(ゲート・ソース)閾値に達しトランジスタQ3がオンになり補助電球30が点灯する。また、抵抗R11を通って、コンデンサC11の充電が開始される。
【0026】
(2)コンデンサC11の充電電圧がツェナーダイオードZDがしきい値電圧に到達すると、トランジスタ素子Q4のBE(ベース・エミッタ)間が通電する。
(3)トランジスタ素子Q4のBE間の通電によりトランジスタ素子Q4のオンになると、トランジスタ素子Q3のGS(ゲート・ソース)間が短絡して補助電球30が消灯する。
【0027】
このように、コンデンサC11の充放電により、補助電球30の点灯−消灯制御が行われる。図3(a)〜(c)に、コンデンサC11電位の経時的な変化のグラフを示す。
図3(a)に示すように、電球形蛍光ランプ1の始動(ON)から約60秒後に、コンデンサC11の充電が完了し、補助電球30が消灯される(補助電球off)。
そして、電球形蛍光ランプ1が消灯されると(OFF)、自然放電によりコンデンサC11の電位が低下し、消灯から期間T1経過後に電位はほぼゼロとなる。
【0028】
図3(b)に示すように、電球形蛍光ランプ1が消灯され(OFF)、自然放電が完了する期間T1より短い期間T2経過後、再度点灯(ON)された場合には、コンデンサC11の電位V2から充電再開されるため、充電期間は60秒より短い期間T3となる。そして、補助電球30の点灯-消灯の期間もT3となる。
図3(c)に示すように、電球形蛍光ランプ1が消灯され(OFF)、期間T4(>T2)経過後に、再度点灯された場合は、補助電球30の点灯-消灯の期間は期間T5(>T3)となる。
【0029】
このように、電球形蛍光ランプ1の消灯から一定期間T1内に再点灯された場合には、補助電球30の点灯期間は通常の設定期間である60秒よりも短くなる。しかも、一定期間T1内で消灯−再点灯の期間が短いほど、補助電球30の点灯期間が短縮される。
消灯から再点灯までの期間が短い場合には、前回点灯による熱が発光管10内に残り管内の水銀蒸気圧が高いため、光束立ち上がり特性が通常より良好な傾向にある。
【0030】
このような場合には、補助電球30により発光管10の光束を補完する必要性は低下する。
このため、消灯から再点灯までの期間が短い場合に、補助電球30の点灯時間を通常より短くすることで、補助電球30の総点灯時間を短縮し、補助電球30が発光管10より先に寿命が尽きるのを抑制することが可能となる。
【0031】
図4に、消灯から再点灯までの期間(インターバル)と、補助電球の点灯時間との関係のグラフを示す。
図4中、t6は、再点灯時の発光管10の光束立ち上がり特性(例えば、管内の水銀蒸気圧の変化特性や、管内温度が室温に冷却されるまでの所要時間などに依存する。)に基づいて決定することができ、t6を60秒〜300秒とする。
【0032】
なお、補助電球の点灯-消灯期間は、C11の容量、R11の抵抗値、印加電圧などを変更することで適宜調整することができる。
具体的に述べると、コンデンサC11の残留電荷は、発光管の消灯から再点灯までの時間の長短に依存するので、例えばC11の容量を変更することで、補助電球の点灯-消灯期間を調整することができる。
3.光束立ち上がり
上述の電球形蛍光ランプ1の、補助電球30を備えることによる光束立ち上がり特性向上の効果について説明する。
【0033】
図5に、周囲温度5℃における補助電球の有無が光束立ち上がりに与える影響を調べた結果のグラフを示す。
A線は、補助電球30を備えない従来の電球形蛍光ランプの光束遷移であり、始動時には定常状態の約10%の光束しか得られていない。
B線は、実施の形態に係る電球形蛍光ランプ1の光束遷移である。始動時に定常状態の約35%もの光束が得られており、立ち上がり特性が向上している。
【0034】
なお、B線においては60秒の時点で約65%から約50%へと光束が急に落ち込んでいるのは、補助電球30を消灯したためである。しかし、補助電球30を消灯した場合においても、A線で示す従来の電球形蛍光ランプよりは高い割合の光束が得られている。
また、ランプ始動時において、定常状態の25%程度の光束が得られれば、ランプを使用するユーザに違和感を与えることはないと考えられる。
【0035】
C線は、実施の形態に係る電球形蛍光ランプ1と、補助アマルガムを備えない以外の構成は同じランプの光束遷移である。B線とC線とを比べると、補助アマルガムによる光束立ち上がり特性の向上の効果がわかる。
このように始動時において、立ち上がり特性が遅い発光管10の光束を、特性が早い補助電球30の光束で補うことで、電球形蛍光ランプ1全体としては、良好な光束立ち上がり特性を得ることができる。
【0036】
もっとも、上述のように回路部品の不良などにより、タイマー回路が正常に動作せず、補助電球30が設定時間を超えて延々と点灯を継続するような事態が想定される。
本実施の形態では、プリント板70上に温度ヒューズ71を設け、溶断時には点灯ユニットにおける通電を遮断することで、タイマー回路が動作しない場合に生じ得る不具合を防止する。次に、この温度ヒューズ71を中心に点灯ユニット40の外観構成について説明する。
4.点灯ユニット
図6は点灯ユニット40の斜視図である。
【0037】
円板状をしたプリント板70の部品面70a上には、点灯ユニット40に係る動作回路部品が実装されている。
動作回路部品としては、主に安定器43を構成する分品であるパワーIC74、平滑コンデンサ75,76、共振コンデンサ77、限流用のチョークコイル78を含む。
パワーIC74は、左右に複数本(図4中では、左右4本ずつ描いている。)のICピン74pを有している。
【0038】
部品面70a上には、このパワーIC74とチョークコイル78とに挟まれるようにして、絶縁性を有するシリコンチューブ72に覆われた温度ヒューズ71(例えば、溶断温度141℃)が配されている。
温度ヒューズ71は、ICピン74p(図4中では、右側のICピン74pはシリコンチューブ72に遮られて見えなくなっている。)に近接して配置されている。
【0039】
そして、ICピン74pは、プリント板70を貫通しているため、温度ヒューズが配置された部品面70a側とは反対側のはんだ面70b上の熱を、部品面70a側に伝達させ易い。
このような配置関係にあるため、補助電球30→ICピン74p→温度ヒューズ71というICピン74pを介した熱伝達の経路を確立することができる。
【0040】
また、温度ヒューズ71は、プリント板70の略中央に実装されたチョークコイル78にも隣接して配置されている。
チョークコイル78は、点灯ユニット40における発熱体であるため、温度ヒューズ71をチョークコイル78に隣接させることで、温度ヒューズ71の検知性を高めることができる。
5.温度ヒューズ
実施の形態に係る温度ヒューズ71の配置位置や溶断温度は、プリント板70の温度測定から導いて決定されたものである。次に、この温度測定について説明する。
【0041】
図7(a)は点灯ユニット40を、プリント板70をはんだ面70b側から見た平面図である。
図7(a)に示すように、本温度測定においては、電球形蛍光ランプ1を実際の灯具に取り付けて点灯し、プリント板70のチョークコイル78が配置された中央部分C点(Center)、周縁部分V点(Verge,板周縁から5mm内側の箇所)の2点における温度測定を行った。
【0042】
この測定では、
ケースA:補助電球30を点灯−消灯(点消灯時間は約30秒と設定)するタイマー回路46を正常に動作させ、補助電球30は点灯開始から約30秒だけ点灯させた場合、
ケースB:タイマー回路46を敢えて動作させずに、補助電球30を延々と点灯させた場合、
の2つケースA,ケースBについて30分点灯後の温度を測定した。なお、ケースBでは、温度ヒューズ71を載せるとヒューズが溶断して温度測定ができないおそれがあるため、プリント板70から温度ヒューズ71を除去した。
【0043】
図7(b)に測定結果の表を示す。
この表からわかるように、タイマー回路46が正常に動作したケースAの温度はC点で120℃、V点で110℃と低く、30分点灯後も正常な点灯が維持されている。
これに対して、タイマー回路46を動作させないケースBの温度は、C点で166℃、V点で145℃と異常に高温となった。
【0044】
一般に、プリント板におけるトラッキング現象は、基板温度が160℃以上になると発生し出すことが知られており、ケースBでは特に中央のC点の温度が高く危険である。トラッキング現象とは絶縁部が劣化し絶縁破壊し、絶縁部に電流が流れる経路が形成させる現象をいう。
この温度測定結果から、温度ヒューズ71を配置する好適な位置は、高温になりやすいプリント板70の略中央部分であると言える。
【0045】
プリント板70の「略中央部分」とは、例えば、チョークコイル78などの高温になりやすい部品が集まっている部分であり、例えば、円形をしたプリント板の半径の、約70%の半径以下の同心円部分をいう。
そして、C点の温度は、ケースAで120℃、ケースBで166℃であったため、温度ヒューズ71の溶断温度は、120℃と166℃との間に設定すれば、トラッキング現象の発生を未然に確実に防止しつつ、タイマー回路が正常に動作する場合に不必要に溶断させないようにすることができる。この観点から実施の形態では溶断温度を141℃に設定している。
6.その他
(1)上述の実施の形態では、タイマー回路46は、CR時定数を用いたものを例として説明したが、タイマー回路としても次のような例も考えられる。
【0046】
A,タイマー回路としてPTC素子を用いる。その場合例えば、点灯及び消灯時に変化するPTC素子の抵抗値に着目して計時を行うことができる。
B,IC回路による標準部品としてのタイマー回路を用いる。
また、実施の形態では、電球形蛍光ランプ1の消灯から再点灯までの時間が短くなるほど、補助電球30の点灯時間を短くするとして説明したが、短縮はリニア(線形的)でなくとも消灯−再点灯間の時間に応じて段階的に短縮するとしても構わない。
【0047】
また、特に消灯-再点灯間の時間間隔が特に短い場合には、補助電球30を点灯すらしないとしても構わない。点灯しないことで、補助電球30の総点灯時間に加えて点灯回数を減らすことができ、より長寿命とすることができる。
図8に、消灯から再点灯までの期間(インターバル)と、補助電球の点灯時間との関係のグラフを示す。
【0048】
図8中において、t9は例えば、数秒程度である。この程度の間隔であれば、発光管10の管内の水銀蒸気圧はほとんど低下しておらず、実用上問題のない早い光束立ち上がり特性を得ることができるからである。
(2)上述の実施の形態では、始動時において、発光管10の光束を補助する補助電球30としてフィラメント電球を例に挙げて説明したが、フィラメント電球に限らず光束を補助できる発光体を用いても基本的には同様に光束立ち上がり特性の向上が得られる。具体的には、発光体として、クリプトン電球、KTクリプトン電球、さらに、高輝度LEDなどを用いることもできる。
【0049】
もっとも、補助電球としては、フィラメント電球のように発熱しやすい電球を採用することが好ましい。係る補助電球を発光管に接近して配置することで、熱伝導により発光管内を暖めて水銀蒸気圧を上昇させ、発光管自体の光束立ち上がりを改善するという優位な効果が得られるからである。
(3)上述の実施の形態では、グローブを有するタイプの電球形蛍光ランプ1について説明したが、グローブ無しのタイプであっても構わない。
【0050】
図9は、電球形蛍光ランプ5の構成を示す模式図である。
電球形蛍光ランプ5は、グローブ80(図1)無しのタイプである。発光管15の旋回における内方に補助電球30を配し、点灯ユニット40及び温度ヒューズ71として上記同様の構成を採用することで、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(4)上述の実施の形態では、二重螺旋形状の発光管を有する電球形蛍光ランプ1を例に挙げて説明したが、本発明は、U字管などの屈曲管形状、円管形状、直管形状の発光管を有するランプに適用することが可能である。
【0051】
もっとも、二重螺旋形状の発光管のように放電路長が長い(例えば、500mm以上)ランプは、外気温の低い状態での光束立ち上がりの遅れが顕在化しやすいため、本発明を好適に利用することができる。
(5)上述の実施の形態では、プリント基板70を横置き(仮想軸CLと略直交する方向に配置)していたが、これに限らず縦置き(仮想軸CLと略平行な方向に配置)しても構わない。
(6)上述の実施の形態では、補助電球30をランプ1の始動(ランプ1の電源オン時とほぼ同時である。)と同時に点灯するとして説明したが、ランプ1の始動に合わせて補助電球30を点灯させれば良く、始動より例えば数秒程度だけ遅延させて点灯開始するようにしても構わない。
【0052】
この程度の遅延なら、ユーザが光束立ち上がり遅れに気付きにくく実用上問題ないと考えられるからである。
(7)上述の実施の形態では、発光管10の消灯ー再点灯間の時間に応じて、補助電球30の点灯時間の長短を変更するとしたが、これに限らず、例えば、消灯−再点灯間の時間が応じて補助電球30への入力電力を変更するとしても構わない。
【0053】
例えば、消灯から再点灯までの時間が数十秒程度と短い場合には、補助電球30への入力電力を通常20Wの半分の10Wと設定する。入力電力を小さくすることで、補助電球30のフィラメントコイルの損耗などを抑制し、補助電球30を長寿命化できる。
上述のように消灯直後は、発光管10の管内が暖まっているため、光束立ち上がりの遅れが目立つこともない。
(8)本発明は、実施の形態に係る電球形蛍光ランプ1を備える照明装置として実施可能である。なお、照明装置とは、放電ランプと各種器具とが組み合わされ構成されたものを指す。そして、各種器具とは、例えば、反射鏡、かさ、カバーや密閉器具などを指す。
(9)実施の形態の構成と、上述の(1)〜(8)の構成を組み合わせて実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る放電ランプは、光束立ち上がりの良好な特性が寿命末期まで維持されるため、各種放電ランプに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】電球形蛍光ランプ1の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】電球形蛍光ランプ1の回路構成を示す図である。
【図3】(a)〜(c)は、コンデンサC11電位の経時的な変化を示すグラフを含む図である。
【図4】消灯から再点灯までの期間(インターバル)と、補助電球の点灯時間との関係のグラフを示す図である。
【図5】補助電球の有無が光束立ち上がりに与える影響を調べた結果のグラフを示す図である。
【図6】点灯ユニット40の斜視図である。
【図7】(a)は、点灯ユニット40を、プリント板70をはんだ面70b側(チョークコイル78などの動作回路部品が実装された部品面70aとは反対側の面)から見た平面図である。(b)は、温度測定結果の表を示す図である。
【図8】消灯から再点灯までの期間(インターバル)と、補助電球の点灯時間との関係のグラフを示す図である。
【図9】電球形蛍光ランプ5の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1,5 電球形蛍光ランプ
10 発光管
30 補助電球
40 点灯ユニット
46 タイマー回路
60 口金
70 プリント板
70a プリント板の部品面
71 温度ヒューズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電により発光する発光管と、前記発光管の近傍に配置され、前記発光管よりも高い光束立ち上がり特性を有する発光体と、前記発光管及び前記発光体を点灯させる点灯ユニットと、を備える放電ランプであって、
前記点灯ユニットは、前記発光体を、前記発光管の点灯に合わせて所定時間だけ点灯させるとともに、
前記発光管が前回消灯から一定期間内に再点灯された場合には、消灯から再点灯までの時間が短いほど、前記所定時間を短く変更するタイマー回路を含む
ことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記タイマー回路は、コンデンサと抵抗とを含むCR時定数を用いた回路であって、
前記発光管の点灯または消灯に合わせて、前記コンデンサをそれぞれ充電または放電させる
ことを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記発光体は、フィラメント電球である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記発光管は、内方に空間を有する状態で、仮想軸廻りを螺旋状に旋回する旋回部を有する二重螺旋形状を有し、
前記発光体は、前記発光管の前記内方の空間に挿入されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記発光管は、透光性のグローブで覆われている
ことを特徴とする請求項4に記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記タイマー回路が正常に動作しないときに前記発光体の熱により溶断して前記点灯ユニットへの通電を遮断する温度ヒューズを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項7】
放電により発光する発光管と、前記発光管の近傍に配置され、前記発光管よりも高い光束立ち上がり特性を有する発光体と、前記発光管及び前記発光体を点灯させる点灯ユニットと、を備える放電ランプであって、
前記点灯ユニットは、前記発光体を、前記発光管の点灯に合わせて所定時間だけ点灯させ、
前記発光管がその消灯から一定期間内に再点灯された場合には、前記所定時間の発光体の点灯を禁止するタイマー回路を含むことを特徴とする放電ランプ。
【請求項8】
放電により発光する発光管と、前記発光管の近傍に配置され、前記発光管よりも高い光束立ち上がり特性を有する発光体と、前記発光管及び前記発光体を点灯させる点灯ユニットと、を備える放電ランプであって、
前記点灯ユニットは、前記発光体を、前記発光管の点灯に合わせて点灯させる点灯回路を含み、
前記点灯回路は、前記発光管の前回消灯から再点灯までの時間に応じて、前記発光体への入力電力を変更することを特徴とする放電ランプ。
【請求項9】
放電により発光する発光管と、前記発光管の近傍に配置され、前記発光管よりも高い光束立ち上がり特性を有する発光体と、前記発光管及び前記発光体を点灯させる点灯ユニットと、を備える放電ランプであって、
前記点灯ユニットは、前記発光体を、前記発光管の点灯に合わせて点灯させる点灯回路を含み、
前記点灯回路は、前記発光管の前回消灯から再点灯までの時間に応じて、前記発光体の点灯態様を異ならせることを特徴とする放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−164071(P2009−164071A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3038(P2008−3038)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】