説明

放電ロール装置

【課題】ベアリングの電食を防止する。
【解決手段】アースした架台上にベアリングを介して回転放電ロールを支持すると共に前記回転放電ロールのシャフトの表面に摺接しうるブラシを前記架台に絶縁して支持し、前記回転放電ロールの表面に空隙を挟んで放電電極を対向配置し、高周波トランスの二次巻線のアース側端子と前記ブラシとを接続し、前記高周波トランスの二次巻線の高圧側端子と前記放電電極とを接続し、前記アース側端子をインダクタを介してアースする。
【効果】ベアリングに流れる高周波電流が減少し、電食が防止される。人が触れうる架台はアースされているため、安全性も保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電ロール装置に関し、さらに詳しくは、ベアリングの電食を防止すると共に安全性を確保した放電ロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架台上にベアリングを介して回転ロールを支持すると共に回転ロールの表面に摺接しうるブラシを架台に通電可能に設置し、架台と回転ロールとを同電位にすることにより、ベアリングに電流が流れないようにしたベアリングの電食防止装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−44302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電食防止装置では、電流がブラシを通る回路に流れ、ベアリングを通る回路には流れないとしている。
しかし、通常のベアリングは鋼製であり、ベアリングを通る回路の抵抗値も低いため、実際にはベアリングを通る回路にも電流が流れ、ベアリングの電食を起こす可能性があった。
そこで、この発明の目的は、より確実にベアリングの電食を防止しうると共に安全性を確保した放電ロール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、アースした架台(401)上にベアリング(331)を介して回転放電ロール(311)を支持すると共に前記回転放電ロール(311)またはそのシャフト(312)の表面に摺接しうるブラシ(321)を前記架台(401)に絶縁して支持し、前記回転放電ロール(311)の表面に空隙を挟んで放電電極(301)を対向配置し、高周波トランス(200)の二次巻線(201)のアース側端子(212)と前記ブラシ(321)とを接続し、前記高周波トランス(200)の二次巻線(201)の高圧側端子(211)と前記放電電極(301)とを接続し、さらに前記アース側端子(212)をインダクタ(221)を介してアースしたことを特徴とする放電ロール装置(1,2)を提供する。
上記第1の観点による放電ロール装置(1,2)では、高周波トランス(200)の二次巻線(201)から見たとき、ブラシ(321)を通る回路にはインダクタ(221)が介在しないが、ベアリング(331)を通る回路にはインダクタ(221)が介在するため、インピーダンスの低いブラシ(321)を通る回路に高周波電流が流れ、インピーダンスの高いベアリング(331)を通る回路には高周波電流がほとんど流れなくなる。このため、より確実にベアリングの電食を防止できる。他方、人が触れやすい架台(401)はアースされており、高周波トランス(200)の二次巻線(201)のアース側端子(212)も直流的にアースされているため、安全性も保たれる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の放電ロール装置によれば、ベアリングを通る回路には高周波電流がほとんど流れなくなるため、ベアリングの電食を防止できる。また、人が触れやすい架台(401)はアースされており、安全性も保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1に係る放電ロール装置を示す構成説明図である。
【図2】実施例2に係る放電ロール装置を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0009】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る放電ロール装置1を示す構成説明図である。
この放電ロール装置1は、回転放電ロール311と、アースした金属製の架台401と、回転放電ロール311を架台401上に回転可能に支持するための金属製のベアリング331と、回転放電ロール311の金属製のシャフト312の表面に摺接しうるブラシ321と、架台401にブラシ321を絶縁して支持するための絶縁物製のホルダ322と、回転放電ロール311の表面に空隙を挟んで対向配置された放電電極301と、高周波電源100と、昇圧用の高周波トランス200と、高周波電流制限用のインダクタ221とを具備している。
【0010】
インダクタ221のインダクタンスは、例えば数mHである。
【0011】
高周波トランス200の二次巻線201の高圧側端子211は、放電電極301に接続されている。
高周波トランス200の二次巻線201のアース側端子212は、ブラシ321に接続されると共に、インダクタ221を介して架台401に接続されている。
【0012】
コロナ放電が回転放電ロール311と放電電極301の間の空隙に発生し、この空隙を通過する高分子フィルムFがコロナ放電処理される。
【0013】
高周波トランス200の二次巻線201から見たとき、高圧側端子211→放電電極301→回転放電ロール311→シャフト312→ブラシ321→アース側端子212となる回路は、シャフト312からアース側端子212までのインピーダンスが低い。他方、高圧側端子211→放電電極301→回転放電ロール311→シャフト312→ベアリング331→架台401→インダクタ221→アース側端子212となる回路は、インダクタ221が介在するため、シャフト312からアース側端子212までのインピーダンスが高い。そこで、高周波(例えば10kHz〜数10kHz)の放電電流は、インピーダンスの低いブラシ321を通る回路に流れ、インピーダンスの高いベアリング331を通る回路にはほとんど流れなくなる。このため、ベアリング331の電食が防止される。
【0014】
実施例1の放電ロール装置1によれば次の効果が得られる。
(1)高周波電流がベアリング331にはほとんど流れなくなるため、ベアリング331の電食を防止できる。
(2)人が触れやすい架台401はアースされており、高周波トランス200の二次巻線201のアース側端子212も直流的にアースされているため、安全性も高い。
【0015】
−実施例2−
図2は、実施例2に係る放電ロール装置2を示す構成説明図である。
この放電ロール装置2は、インダクタ221を介して高周波トランス200の二次巻線201のアース側端子212をアースしたもので、これ以外の構成は実施例1に係る放電ロール装置1と同様である。
【0016】
−実施例3−
回転放電ロール311の表面にブラシ321が摺接するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の放電ロール装置は、例えば高分子フィルムのコロナ放電処理装置に利用できる。
【符号の説明】
【0018】
1,2 放電ロール装置
200 高周波トランス
201 二次巻線
211 高圧側端子
212 アース側端子
221 インダクタ
311 回転放電ロール
312 シャフト
321 ブラシ
322 ホルダ
331 ベアリング
401 架台
F 高分子フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アースした架台(401)上にベアリング(331)を介して回転放電ロール(311)を支持すると共に前記回転放電ロール(311)またはそのシャフト(312)の表面に摺接しうるブラシ(321)を前記架台(401)に絶縁して支持し、前記回転放電ロール(311)の表面に空隙を挟んで放電電極(301)を対向配置し、高周波トランス(200)の二次巻線(201)のアース側端子(212)と前記ブラシ(321)とを接続し、前記高周波トランス(200)の二次巻線(201)の高圧側端子(211)と前記放電電極(301)とを接続し、さらに前記アース側端子(212)をインダクタ(221)を介してアースしたことを特徴とする放電ロール装置(1,2)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−191776(P2012−191776A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53904(P2011−53904)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】