説明

放電灯点灯装置、およびそれを用いた鉄道車両

【課題】リプルの少ない直流電源を使用した場合でも、昇圧チョッパ回路を確実に起動、動作させることができる放電灯点灯装置、およびそれを用いた鉄道車両を提供する。
【解決手段】昇圧チョッパ回路1は、インダクタL1を流れるインダクタ電流がオン閾値以下になったときにスイッチング素子Q1をオンし、オフ閾値以上になったときにスイッチング素子Q1をオフすることで、直流電源E1から入力された直流電圧を昇圧して、平滑用のコンデンサC1を介して出力し、インバータ回路2は昇圧チョッパ回路1の出力を高周波電力に変換し、負荷回路3は、インバータ回路2が出力する高周波電力を共振インダクタLrおよび共振コンデンサCrからなる共振回路を介して放電灯Laに供給しており、直流電源E1の+側電圧と昇圧チョッパ回路1のインダクタL1の入力端との間には抵抗Raを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置、およびそれを用いた鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の放電灯を点灯させる放電灯点灯装置として図8に示すような構成があり、放電灯点灯装置に入力された直流電源E11の直流電圧は、昇圧チョッパ回路11で昇圧された後、インバータ回路12に入力され、インバータ回路12で高周波電力に変換されて放電灯Laに供給される。
【0003】
昇圧チョッパ回路11は、直流電源E11の両端間に接続されたインダクタL11とFETからなるスイッチング素子Q11と電流検出用の抵抗R11との直列回路と、スイッチング素子Q11と抵抗R11との両端間に接続されたダイオードD11とコンデンサC11の直列回路と、スイッチング素子Q11のオン・オフを制御するチョッパ制御回路K11と、インダクタL11に磁気結合した電流検出巻線N11とで構成され、チョッパ制御回路K11が、スイッチング素子Q11をオン・オフ制御することで、ダイオードD11を介してコンデンサC11で平滑された昇圧電圧がインバータ回路12へ出力される。
【0004】
チョッパ制御回路K11は、例えば力率改善用ICで構成され、回路起動時に制御電源が投入されると、スイッチング素子Q11をオンさせる初回のオン信号を強制出力する。スイッチング素子Q11がオンすると、直流電源E11から、インダクタL11、スイッチング素子Q11、抵抗R11を介して電流が流れ、スイッチング素子Q11のオン時にインダクタL11を流れる電流(以後、インダクタ電流と称す)を抵抗R11の両端電圧で検出し、この抵抗R11の両端電圧がオフ閾値以上となった場合、チョッパ制御回路K11はスイッチング素子Q11をオフさせるオフ信号を出力する。スイッチング素子Q11がオフすると、インダクタL11に逆起電力が発生し、直流電源E11およびインダクタL11からダイオードD11を介してコンデンサC11に充電電流が流れ、コンデンサC11の両端間には昇圧された電圧が発生する。そして、インダクタ電流が徐々に減少するのであるが、スイッチング素子Q11のオフ時のインダクタ電流を電流検出巻線N11の両端電圧で検出し、この電流検出巻線N11の両端電圧がオン閾値以下になり、インダクタ電流≒0となるゼロ電流が検出されると、チョッパ制御回路K11はスイッチング素子Q11をオンさせるオン信号を出力し、以後上記発振動作を継続する。なお、オフ閾値>オン閾値である。
【0005】
また、電源によって、商用電源を全波整流したリプルの大きい電源を用いる交流電源用と、商用電源を整流後に平滑した電源や電池等のようにリプルの少ない電源を用いる直流電源用とがあり、特に直流電源用では、コスト面で有利であること、負荷変動に強いこと、過去から使用されて回路技術の蓄積、実績があること等から、インバータ回路として定電流プッシュプルインバータを用いたものが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−153532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の放電灯点灯装置の昇圧チョッパ回路11では、直流電源E11として、商用電源を全波整流した電源を用いた場合、脈流があるためにチョッパ動作の安定性(特に起動時の安定性)が確保されている。これは、コンデンサC11には容量の大きい電解コンデンサが用いられており、コンデンサ電圧Vcは略一定となるが、インダクタL11の電源側の電圧は、上記脈流によって変動し、インダクタL11の両端には、図9に示すように、電源周期に応じて変動する電位差VLが発生するため、起動時、あるいは起動後の急激な負荷変動によってチョッパ動作が停止した状態でも、電流検出巻線N11には十分な電圧が発生し、ゼロ電流検出が可能となり、再びスイッチング素子Q11をオンして、発振動作の継続が可能となる。
【0007】
しかし、直流電源E11として、商用電源を整流後に平滑した電源や電池等のようにリプルの少ない直流電圧を供給する電源を用いた場合、インダクタL11両端の電位差には脈流による変動が発生せず、起動時、あるいは起動後にチョッパ動作が停止した状態では、昇圧チョッパ回路11の入出力電圧の差が小さくなり、インダクタL11の両端には十分な電位差が発生せず、電流検出巻線N11にも十分な電圧が発生しなくなる。ここで、チョッパ制御回路K11による上記ゼロ電流検出は、電流検出巻線N11の両端電圧が、一旦、リセット電圧(オン閾値<リセット電圧<オフ閾値)を超えた後、オン閾値以下になった場合に可能となるため、電流検出巻線N11に十分な電圧が発生していない状態では、電流検出巻線N11の両端電圧が上記リセット電圧を超えないためにゼロ電流検出が不可能となり、再びスイッチング素子Q11をオンすることができなくなって、発振動作が停止してしまう。
【0008】
特に、起動時の電源投入直後には、スイッチング素子Q11をオンさせる初回のオン信号は強制出力されるが、初回のオン動作のみで充電されるコンデンサC11の電圧は、入力電圧に比べて十分に昇圧されていないので、インダクタL11の両端には十分な電位差が発生せず、電流検出巻線N11にも十分な電圧が発生せず、したがってゼロ電流検出が不可能となり、発振動作の継続が困難であった。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、リプルの少ない直流電源を使用した場合でも、昇圧チョッパ回路を確実に起動、動作させることができる放電灯点灯装置、およびそれを用いた鉄道車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、直流電源の両端間に接続されたインダクタとスイッチング素子との直列回路と、直流電源からインダクタを介して発生する電圧を平滑する平滑回路と、インダクタを流れる電流を検出する電流検出回路と、スイッチング素子のオン・オフを制御するチョッパ制御回路とで構成され、チョッパ制御回路が、電流検出回路で検出した電流が第1の閾値以下になったときにスイッチング素子をオンし、第2の閾値以上になったときにスイッチング素子をオフすることで、直流電源から入力された直流電圧を昇圧して平滑回路を通して出力する昇圧チョッパ回路と、昇圧チョッパ回路の出力を高周波電力に変換するインバータ回路と、共振インダクタおよび共振コンデンサからなる共振回路を具備し、インバータ回路が出力する高周波電力を当該共振回路を介して放電灯に供給する負荷回路と、直流電源と昇圧チョッパ回路のインダクタとの間に接続されたインピーダンス要素とを備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、インピーダンス要素で電圧降下が発生し、インダクタの入力端の電圧が低下するので、起動時、あるいは起動後の急激な負荷変動によってチョッパ動作が停止した状態でも、インダクタの両端にはインピーダンス要素によって十分な電位差が発生する。したがって、リプルの少ない直流電圧を供給する直流電源を用いて、起動時、あるいは起動後にチョッパ動作が停止した状態となっても、電流検出回路はインダクタ電流の変化を検出できるので、再びスイッチング素子を駆動して、発振動作の継続が可能となり、リプルの少ない直流電源を使用した場合でも、昇圧チョッパ回路を確実に起動、動作させることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記インピーダンス要素は、抵抗成分で構成されることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、リプルの少ない直流電源を使用した場合でも、昇圧チョッパ回路を確実に起動、動作させることができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記インピーダンス要素の両端間を短絡・開放する手段を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、不要なときにはインピーダンス要素への通電をオン・オフすることができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3において、前記インピーダンス要素の両端間を短絡・開放する手段は、制御端子に駆動電圧が印加されることでオンするスイッチング素子であり、前記昇圧チョッパ回路のインダクタに磁気結合した駆動巻線の一端をインダクタの入力側に接続し、駆動巻線の他端を整流素子および時定数回路を介して当該スイッチング素子の制御端子に接続することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、電源投入直後はスイッチング素子がオフしているので、インピーダンス要素に電流が流れて、昇圧チョッパ回路を確実に起動させることができ、時間が経過してスイッチング素子がオンすると、インピーダンス要素には電流が流れなくなり、インピーダンス要素での損失を低減させることができる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1において、前記インピーダンス要素は、抵抗成分およびインダクタンス成分を有し、前記昇圧チョッパ回路のインダクタの入力側において前記直流電源の両端間にフィルタコンデンサを設けたことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、リプルの少ない直流電源を使用した場合でも、昇圧チョッパ回路を確実に起動、動作させることができる。さらに、インダクタンス成分およびフィルタコンデンサによってフィルタ回路を構成するので、昇圧チョッパ回路で発生したノイズ(発振ノイズ等)の直流電源側への伝播を抑制でき、さらに、インピーダンス要素をフィルタ回路に兼用させることで、構成の簡略化を図ることができる。
【0020】
請求項6の発明は、放電灯と、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置を備える鉄道車両において、放電灯点灯装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置であることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、リプルの少ない直流電源を使用した場合でも、昇圧チョッパ回路を確実に起動、動作させることができる鉄道車両を提供できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明では、リプルの少ない直流電源を使用した場合でも、昇圧チョッパ回路を確実に起動、動作させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(実施形態1)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図1に示すように、商用電源を整流した後に平滑した電源や電池等のようにリプルの少ない直流電圧を供給する直流電源E1を入力としており、直流電源E1の電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路1と、昇圧チョッパ回路1の出力を高周波電力に変換するインバータ回路2と、インバータ回路2が出力する高周波電力を共振回路を介して放電灯Laに供給する負荷回路3と、直流電源E1と昇圧チョッパ回路2との間に接続されたインピーダンス要素たる抵抗Raとを備える。
【0025】
昇圧チョッパ回路1は、抵抗Raを介して直流電源E1の両端間に接続されたインダクタL1とFETからなるスイッチング素子Q1と電流検出用の抵抗R1との直列回路と、スイッチング素子Q1と抵抗R1との両端間に接続されたダイオードD1とコンデンサC1の直列回路と、スイッチング素子Q1のオン・オフを制御するチョッパ制御回路K1と、インダクタL1に磁気結合した電流検出巻線Nsとで構成され、チョッパ制御回路K1が、スイッチング素子Q1をオン・オフ制御することで、ダイオードD1を介してコンデンサC1で平滑された昇圧電圧がインバータ回路2へ出力される。
【0026】
インバータ回路2は、コンデンサC1の両端間に接続した一対のFETからなるスイッチング素子Q2,Q3の直列回路と、インバータ制御回路K2とを備え、ハイサイド側のスイッチング素子Q2およびローサイド側のスイッチング素子Q3が、インバータ制御回路K2によって交互にオン・オフ制御されることで、スイッチング素子Q3の両端から高周波電力を供給するハーフリッジインバータを構成している。なお、インバータ制御回路K2によるスイッチング素子Q2,Q3のオン・オフ制御は、カレントトランス等を用いた自励式、ドライバICを用いた他励式のいずれでもよい。
【0027】
負荷回路3は、スイッチング素子Q3の両端間に直列接続した共振インダクタLrと共振コンデンサCrとからなる共振回路で構成され、コンデンサCrには放電灯Laが並列接続されており、放電灯Laには、上記共振回路を介してインバータ回路2からの高周波電力が供給されて、点灯動作が行われる。
【0028】
昇圧チョッパ回路1のチョッパ制御回路K1は、例えば力率改善用ICで構成され、回路起動時に制御電源が投入されると、スイッチング素子Q1をオンさせる初回のオン信号を強制出力する。スイッチング素子Q1がオンすると、直流電源E1から、インダクタL1、スイッチング素子Q1、抵抗R1を介して電流が流れ、スイッチング素子Q1のオン時にインダクタL1を流れる電流(以後、インダクタ電流と称す)を抵抗R1の両端電圧で検出し、この抵抗R1の両端電圧がオフ閾値以上となった場合、チョッパ制御回路K1はスイッチング素子Q1をオフさせるオフ信号を出力する。スイッチング素子Q1がオフすると、インダクタL1に逆起電力が発生し、直流電源E1およびインダクタL1からダイオードD1を介してコンデンサC1に充電電流が流れ、コンデンサC1の両端間には昇圧された電圧が発生する。そして、インダクタ電流が徐々に減少するのであるが、スイッチング素子Q1のオフ時のインダクタ電流を電流検出巻線Nsの両端電圧で検出し、この電流検出巻線Nsの両端電圧がオン閾値以下になり、インダクタ電流≒0となるゼロ電流が検出されると、チョッパ制御回路K1はスイッチング素子Q1をオンさせるオン信号を出力し、以後上記発振動作を継続する。ここで、電流検出巻線Nsによる上記ゼロ電流検出は、電流検出巻線Nsの両端電圧が、一旦、リセット電圧(オン閾値<リセット電圧<オフ閾値)を超えた後、オン閾値以下になった場合に可能となる。
【0029】
なお、チョッパ制御回路K1に用いる力率改善用ICとしては、オンセミコンダクター社のMC33262や、STマイクロエレクトロニクス社のL6561等の汎用ICがある。また、放電灯点灯装置毎の特性(力率改善機能等)に合わせて製作したカスタムICでもよく、チョッパ制御回路K1とインバータ制御回路K2とをワンパッケージに組み込んだものでもよい。また、チョッパ制御回路K1に力率改善用ICを用いることで、チョッパ動作の制御が容易となり、部品点数の削減や、昇圧チョッパ回路1を様々な装置に流用することが可能となる。
【0030】
そして、本実施形態では、直流電源E1の+側電圧と昇圧チョッパ回路1のインダクタL1の入力端との間に抵抗Raを接続しており、スイッチング素子Q1のオフ期間中にインダクタL1を介してコンデンサC1を充電しているときには、抵抗Raで電圧降下が発生し、インダクタL1の入力端の電圧が低下するので、起動時、あるいは起動後の急激な負荷変動によってチョッパ動作が停止した状態でも、インダクタL1の両端には抵抗Raによって十分な電位差が発生する。したがって、リプルの少ない直流電圧を供給する直流電源E1を用いた放電灯点灯装置において、起動時、あるいは起動後にチョッパ動作が停止した状態となっても、電流検出巻線Nsには十分な電圧が発生し、ゼロ電流検出が可能となり、再びスイッチング素子Q1をオンして、発振動作の継続が可能となり、昇圧チョッパ回路1を確実に起動、動作させることができる。
【0031】
また、ハーフブリッジインバータからなるインバータ回路2と、共振回路を有する負荷回路3とを用いて、放電灯Laをインバータ回路2の出力に絶縁することなく接続することで、プッシュプルインバータのように放電灯を絶縁する構成に比べて、放電灯Laの状態モニターが容易になり、放電灯の寿命末期等の不具合を確実に検出して、寿命末期時の異常加熱等の不具合を回避でき、安全性が向上する。なお、インバータ回路2の構成はフルブリッジインバータであってもよい。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図2に示すように、インピーダンス要素として、実施形態1の抵抗RaをサーミスタThに置き換えたものであり、サーミスタThには、温度が上昇するにつれて抵抗値が低下する、いわゆる温度に対して負特性を有するNTC(NegativeTemperature Coefficient)タイプのものを用いる。
【0033】
そして、直流電源E1の+側電圧と昇圧チョッパ回路1のインダクタL1の入力端との間に接続されたサーミスタThを備えることによって、スイッチング素子Q1のオフ期間中にインダクタL1を介してコンデンサC1を充電しているときには、サーミスタThで電圧降下が発生し、インダクタL1の入力端の電圧が低下するので、起動時、あるいは起動後の急激な負荷変動によってチョッパ動作が停止した状態でも、インダクタL1の両端にはサーミスタThによって十分な電位差が発生する。したがって、リプルの少ない直流電圧を供給する直流電源E1を用いた放電灯点灯装置において、起動時、あるいは起動後にチョッパ動作が停止した状態となっても、電流検出巻線Nsには十分な電圧が発生し、ゼロ電流検出が可能となり、再びスイッチング素子Q1をオンして、発振動作の継続が可能となり、昇圧チョッパ回路1を確実に起動、動作させることができる。
【0034】
また、電源投入直後は、サーミスタThの抵抗値が大きく、時間が経過するにつれてサーミスタThの温度が上昇して、抵抗値が低下するので、サーミスタThでの損失も徐々に低減する。
【0035】
また、本実施形態の放電灯点灯装置を停止させた直後に、再起動させる場合、サーミスタTh1の温度が十分に下がっていない状態では、サーミスタThによる電圧降下が十分でなく、インダクタL1の両端に発生する電位差が小さくなることが考えられるが、放電灯点灯装置を鉄道車両に用いる場合、起動、停止を頻繁に繰り返すことはなく、本実施形態の放電灯点灯装置を鉄道車両に用いることに問題はない。
【0036】
なお、他の構成は実施形態1と同様であり、同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0037】
(実施形態3)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図3に示すように、インピーダンス要素として、実施形態1の抵抗Raの代わりに、入力段に設けたフィルタ回路4のインダクタLfで兼用したものであり、フィルタ用のインダクタLfは、直流電源E1の+側電圧と昇圧チョッパ回路1のインダクタL1の入力端との間、および直流電源E1の−側電圧と昇圧チョッパ回路1の回路グランドとの間に各々接続されている。
【0038】
そして、スイッチング素子Q1のオフ期間中に昇圧チョッパ回路1のインダクタL1を介してコンデンサC1を充電しているときには、直流電源E1の+側電圧とインダクタL1の入力端との間に接続されたインダクタLfの抵抗成分によって電圧降下が発生し、インダクタL1の入力端の電圧が低下するので、起動時、あるいは起動後の急激な負荷変動によってチョッパ動作が停止した状態でも、インダクタL1の両端にはインダクタLfの抵抗成分によって十分な電位差が発生する。したがって、リプルの少ない直流電圧を供給する直流電源E1を用いた放電灯点灯装置において、起動時、あるいは起動後にチョッパ動作が停止した状態となっても、電流検出巻線Nsには十分な電圧が発生し、ゼロ電流検出が可能となり、再びスイッチング素子Q1をオンして、発振動作の継続が可能となり、昇圧チョッパ回路1を確実に起動、動作させることができる。
【0039】
また、フィルタ回路4によって、昇圧チョッパ回路1で発生したノイズ(発振ノイズ等)の直流電源E1側への伝播を抑制でき、さらに、インダクタL1の両端に十分な電位差が発生させるためのインピーダンス要素を、フィルタ回路4のインダクタLfに兼用させることで、構成の簡略化を図ることができる。
【0040】
(実施形態4)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図4に示すように、実施形態2のインピーダンス要素たるサーミスタThにサイリスタS1を並列接続し、インダクタL1に磁気結合した駆動巻線Ndの一端をインダクタL1の入力側に接続し、駆動巻線Ndの他端をダイオードD2のアノードに接続し、ダイオードD2のカソードとインダクタL1の入力側との間にコンデンサC2を接続し、コンデンサC2の両端電圧を、サイリスタS1のゲート端子(制御端子)−カソード端子間に印加している。
【0041】
そして、サイリスタS1は、サーミスタThの両端間を短絡・開放する手段であり、電源投入直後は、コンデンサC2が充電されておらず、サイリスタS1はオフしており、スイッチング素子Q1のオフ期間中にインダクタL1を介してコンデンサC1を充電しているときには、通電状態のサーミスタThで電圧降下が発生し、インダクタL1の入力端の電圧が低下するので、インダクタL1の両端にはサーミスタThによって十分な電位差が発生する。したがって、リプルの少ない直流電圧を供給する直流電源E1を用いた放電灯点灯装置において、起動時の電流検出巻線Nsには十分な電圧が発生し、ゼロ電流検出が可能となり、再びスイッチング素子Q1をオンして、発振動作の継続が可能となり、昇圧チョッパ回路1を確実に起動させることができる。
【0042】
さらに、時間が経過するにつれて、駆動巻線NdからダイオードD2を介してコンデンサC2に充電電流が流れ込み、コンデンサC2の電圧が上昇する。コンデンサC2の電圧がサイリスタS1のオン電圧を超えると、サイリスタS1がオンし、サーミスタThには電流が流れなくなり、サーミスタThでの損失が低減する。
【0043】
また、本実施形態の放電灯点灯装置は、入力段にフィルタ回路4を設けており、直流電源E1の+側電圧と昇圧チョッパ回路1のインダクタL1の入力端との間、および直流電源E1の−側電圧と昇圧チョッパ回路1の回路グランドとの間にフィルタ用のインダクタLfが各々接続され、フィルタ部4の入力端間にはフィルタ用のコンデンサCf1が接続されている。
【0044】
そして、スイッチング素子Q1のオフ期間中に昇圧チョッパ回路1のインダクタL1を介してコンデンサC1を充電しているときには、直流電源E1の+側電圧とインダクタL1の入力端との間に接続されたインダクタLfの抵抗成分によって電圧降下が発生し、インダクタL1の入力端の電圧が低下するので、起動時、あるいは起動後の急激な負荷変動によってチョッパ動作が停止した状態でも、インダクタL1の両端にはインダクタLfの抵抗成分によって十分な電位差が発生する。したがって、リプルの少ない直流電圧を供給する直流電源E1を用いた放電灯点灯装置において、起動時、あるいは起動後にチョッパ動作が停止した状態となっても、電流検出巻線Nsには十分な電圧が発生し、ゼロ電流検出が可能となり、再びスイッチング素子Q1をオンして、発振動作の継続が可能となり、昇圧チョッパ回路1を確実に起動、動作させることができる。
【0045】
このように、インピーダンス要素として、サーミスタThとインダクタLfとの両方を用い、サーミスタThに並列にサイリスタS1を設けることで、起動時はサーミスタThおよびインダクタLfの両抵抗成分によって確実に起動させ、動作時はインダクタLfの抵抗成分によって確実に動作させながらサーミスタThでの損失を低減させている。なお、サイリスタS1は、FET等の他のスイッチング素子でもよい。
【0046】
また、フィルタ回路4によって、昇圧チョッパ回路1で発生したノイズ(発振ノイズ等)の直流電源E1側への伝播を抑制できる。
【0047】
(実施形態5)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図5に示すように、実施形態1の構成に付加して、その入力段にフィルタ回路4、整流回路5、コンデンサCf3を設けており、直流電源E1の+側電圧と昇圧チョッパ回路1のインダクタL1の入力端との間、および直流電源E1の−側電圧と昇圧チョッパ回路1の回路グランドとの間に整流回路5を介してフィルタ用のインダクタLfが各々接続され、フィルタ部4の入力端間および出力端間にはフィルタ用のコンデンサCf1,Cf2が各々接続されている。そして、フィルタ回路4の出力は整流回路5で整流され、整流回路5の出力端間にはフィルタ用のコンデンサCf3が接続されている。
【0048】
したがって、直流電源E1の+側電圧と−側電圧との接続が逆になる誤接続が生じた場合でも、整流回路4によって、昇圧チョッパ回路1には正しい極性の直流電圧が入力されるので、誤動作や故障が発生することなく正常に動作し、ユーザも直流電源E1の極性を気にせず接続することができて、扱い易いものになる。また、コンデンサCf1,Cf2,Cf3を適宜設定することによって、直流電源E1の代わりに商用電源を入力した場合でも、整流回路4によって商用電源を整流した電圧を用いて動作させることができる。
【0049】
さらに、抵抗Raによる実施形態1の効果に付加して、直流電源E1の+側電圧と昇圧チョッパ回路1のインダクタL1の入力端との間に接続されたインダクタLfを備えることによって、スイッチング素子Q1のオフ期間中にインダクタL1を介してコンデンサC1を充電しているときには、インダクタLfの抵抗成分で電圧降下が発生し、インダクタL1の入力端の電圧が低下するので、起動時、あるいは起動後の急激な負荷変動によってチョッパ動作が停止した状態でも、インダクタL1の両端にはインダクタLfの抵抗成分によって十分な電位差が発生する。したがって、リプルの少ない直流電圧を供給する直流電源E1を用いた放電灯点灯装置において、起動時、あるいは起動後にチョッパ動作が停止した状態となっても、電流検出巻線Nsには十分な電圧が発生し、ゼロ電流検出が可能となり、再びスイッチング素子Q1をオンして、発振動作の継続が可能となり、昇圧チョッパ回路1を確実に起動、動作させることができる。
【0050】
このように、インピーダンス要素として、サーミスタThおよびインダクタLfの両抵抗成分を用いることで、昇圧チョッパ回路1の起動特性、動作特性をさらに向上させている。なお、コンデンサCf3の容量によっては、上記インピーダンス要素による作用に不利になることが考えられるため、少なくとも、コンデンサCf3の容量はコンデンサC1の容量より小さくする必要がある。
【0051】
また、フィルタ回路4によって、昇圧チョッパ回路1で発生したノイズ(発振ノイズ等)の直流電源E1側への伝播を抑制できる。
【0052】
(実施形態6)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図6に示すように、実施形態4の構成に付加して、フィルタ回路4の出力に整流回路5を設けており、直流電源E1の+側電圧と−側電圧との接続が逆になる誤接続が生じた場合でも、整流回路4によって、昇圧チョッパ回路1には正しい極性の直流電圧が入力されるので、誤動作や故障が発生することなく正常に動作し、ユーザも直流電源E1の極性を気にせず接続することができて、扱い易いものになる。
【0053】
また、フィルタ回路4の出力端間に接続したフィルタ用のコンデンサCf2は省略してもよい。
【0054】
(実施形態7)
図7は、実施形態1乃至6いずれかの放電灯点灯装置Aを搭載した鉄道車両Xであり、放電灯点灯装置Aによって前照灯に用いられる放電灯Laを点灯させている。したがって、特に信頼性が求められる鉄道車両Xにおいて、放電灯Laの点灯動作について確実な起動、動作を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施形態1の放電灯点灯装置を示す構成図である。
【図2】実施形態2の放電灯点灯装置を示す構成図である。
【図3】実施形態3の放電灯点灯装置を示す構成図である。
【図4】実施形態4の放電灯点灯装置を示す構成図である。
【図5】実施形態5の放電灯点灯装置を示す構成図である。
【図6】実施形態6の放電灯点灯装置を示す構成図である。
【図7】実施形態7の鉄道車両を示す構成図である。
【図8】従来の放電灯点灯装置を示す構成図である。
【図9】インダクタ両端の電位差を示す波形図である。
【符号の説明】
【0056】
1 昇圧チョッパ回路
2 インバータ回路
3 負荷回路
L1 インダクタ
Q1 スイッチング素子
D1 ダイオード
C1 コンデンサ
R1 抵抗
Ns 電流検出巻線
K1 チョッパ制御回路
E1 直流電源
La 放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の両端間に接続されたインダクタとスイッチング素子との直列回路と、直流電源からインダクタを介して発生する電圧を平滑する平滑回路と、インダクタを流れる電流を検出する電流検出回路と、スイッチング素子のオン・オフを制御するチョッパ制御回路とで構成され、チョッパ制御回路が、電流検出回路で検出した電流が第1の閾値以下になったときにスイッチング素子をオンし、第2の閾値以上になったときにスイッチング素子をオフすることで、直流電源から入力された直流電圧を昇圧して平滑回路を通して出力する昇圧チョッパ回路と、
昇圧チョッパ回路の出力を高周波電力に変換するインバータ回路と、
共振インダクタおよび共振コンデンサからなる共振回路を具備し、インバータ回路が出力する高周波電力を当該共振回路を介して放電灯に供給する負荷回路と、
直流電源と昇圧チョッパ回路のインダクタとの間に接続されたインピーダンス要素と
を備えることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記インピーダンス要素は、抵抗成分で構成されることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記インピーダンス要素の両端間を短絡・開放する手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記インピーダンス要素の両端間を短絡・開放する手段は、制御端子に駆動電圧が印加されることでオンするスイッチング素子であり、前記昇圧チョッパ回路のインダクタに磁気結合した駆動巻線の一端をインダクタの入力側に接続し、駆動巻線の他端を整流素子および時定数回路を介して当該スイッチング素子の制御端子に接続することを特徴とする請求項3記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記インピーダンス要素は、抵抗成分およびインダクタンス成分を有し、前記昇圧チョッパ回路のインダクタの入力側において前記直流電源の両端間にフィルタコンデンサを設けたことを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
放電灯と、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置を備える鉄道車両において、放電灯点灯装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置であることを特徴とする鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−186631(P2008−186631A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17063(P2007−17063)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】