説明

放電灯点灯装置

【課題】周囲温度の変化による出力電力の影響を抑えた放電灯の点灯を実現する。
【解決手段】放電灯15を点灯させる電力の低減または増加を改善するため電力調整用抵抗を感温素子R6とし温度による電力変化を軽減する。感温素子R6は正特性の抵抗で電力を制御する制御回路19の入力側に抵抗R5と感温素子R6を抵抗分割したグランド側に感温素子R6を接続する。温度が上昇すると感温素子R6の抵抗値が上がり制御回路19に供給される電圧が高くなる。高くなると制御回路19の出力はトランジスタQ1をオンする時間が延びて出力を増加する方向に作用する。低温になると感温素子R6の抵抗値が低下して制御回路19に供給される電圧が低下する。電圧が低くなると制御回路19の出力はトランジスタQ1オン時間が短くなって出力を低下させ、第1のDC/DC変換回路12から出力される直流電圧Vd2の値を制御し放電灯15の明るさを均一化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載用ヘッドランプとして使用する高圧放電灯や液晶プロジェクターの光源として使用する高圧放電灯等を点灯させる放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放電灯点灯装置は、周囲温度により高圧放電灯の始動時の光束立ち上がりを制御するために、高圧放電灯の近傍に温感素子を搭載し、この温感素子の感温結果に基づきインバータから高圧放電灯へ供給される電力の供給量を調整するようにしている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平6−132087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、高圧放電灯はランプ電力を一定に制御することにより明るさを一定に保つようにするが、負荷が定格電圧、常温の状態で所望の電力に調整しても周囲温度および通電により部品温度が変化すると電力は調整した電力から外れてしまう問題がある。
【0004】
この発明の目的は、周囲温度による出力電力の変化や電源投入してから時間経過による出力電力の変化の影響を抑えた放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の放電灯点灯装置は、直流電源と、前記直流電源の電圧を所望の第1の直流電圧に変換する第1のDC/DC変換回路と、前記直流電源の電圧を所望の第2の直流電圧に変換する第2のDC/DC変換回路と、始動時に前記第2の直流電圧に基づき所望の高電圧を生成するイグナイタと、前記イグナイタの出力に基づき点灯に必要な電力が供給される放電灯と、前記第2の直流電圧を交流電圧に変換し、前記放電灯をグローからアーク点灯に移行させるDC/AC変換回路と、制御信号に基づき前記第1のDC/DC変換回路で交流電圧を生成させるための制御回路と、前記DC/AC変換回路を駆動させ、前記第1のDC/DC変換回路の交流電圧を直流電圧に変換するとともに定電圧を得る定電圧回路とからなり、前記第2の直流電圧に基づき生成される前記制御回路の制御信号は、周囲温度の変化に応じて生成されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、周囲温度による出力電力の変化や電源投入してから時間経過による出力電力変化の影響を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態について説明するための構成図である。11は例えば12Vの定電圧の直流電源であり、この直流電源11の直流電圧を、第1のDC/DC変換回路12に供給する。また、直流電源11は第2のDC/DC変換回路13にも第1のDC/DC変換回路12を介して供給し、ここで1kVに昇圧された直流電圧Vd1を生成し、イグナイタ14に供給する。イグナイタ14では供給された1kVの直流電圧に基づき、例えば25kV程度の高圧のパルス電圧を発生させて放電灯15に供給し、放電灯15をグロー放電させる。
【0008】
第1のDC/DC変換回路12では、例えば400Vの高い直流電圧Vd2を出力端子Voから生成し、DC/AC変換回路16に供給するとともに、交流電圧Va1を生成し、定電圧回路17に供給する。定電圧回路17では交流電圧Va1に基づき降圧させた定電圧の直流電圧Vd3を生成し、DC/AC変換駆動回路18と制御回路19の電源としてそれぞれ供給する。DC/AC変換駆動回路18では、駆動交流電圧Va2を生成してDC/AC変換回路16に変換して出力する。制御回路19は、第1のDC/DC変換回路12から交流電圧Va1と直流電圧Vd2をそれぞれ生成するための制御信号を生成する。
【0009】
イグナイタ14は、第2のDC/DC変換回路13から供給される直流電圧に基づき生成された高圧直流電圧でパルス電圧を生成してグロー放電された放電灯15に、DC/AC変換回路16から供給される例えば400Vの交流電圧Va3を供給する。これにより、放電灯15をグロー放電からアーク放電に切り替える。
【0010】
ここで、図1の第1のDC/DC変換回路12、定電圧回路17、DC/AC変換回路16をより詳細に説明する。
【0011】
まず、第1のDC/DC変換回路12の構成について説明する。直流電源11の正極は、トランスTRの一次側コイルn1の一端に接続する。一次側コイルn1の他端は、スイッチング用のCMOS型トランジスタQ1のドレインに接続する。一次側コイルn1の両端には、直列接続された抵抗R1およびコンデンサC0の並列回路とコンデンサおよび図示接続のダイオードD1の並列回路が接続される。ダイオードD1、コンデンサC0,C1、抵抗R1はスナバ回路を構成し、トランスTRで発生するサージ電圧を吸収してトランジスタQ1にサージ電圧がかからないようにする。
【0012】
トランジスタQ1のソースは抵抗R2を介して基準電位点に接続する。また、トランジスタQ1のゲートは抵抗R3を介して基準電位点に接続する。FETQ1のゲートには抵抗R4を介してトランジスタQ1を駆動する信号を生成する制御回路19からの駆動信号を供給する。
【0013】
二次側コイルn2の一端は、第2のDC/DC変換回路13に接続するとともに、ダイオードD2、コンデンサC2を介して基準電位点に接続する。ニ次側コイルn2の他端は一次側コイルn1の他端に接続する。ダイオードD2とコンデンサC2の接続点は、DC/AC変換回路16用の電源として出力端子Voから直流電圧Vd2を供給する。
【0014】
出力端子Voと基準電位点間には直列接続された抵抗R5と正特性を有する抵抗である感温素子R6を接続する。抵抗R5と感温素子R6は、直流電圧Vd2の電圧の変化を検出するための電圧検出回路20を構成する。抵抗R5と感温素子R6の接続点は、抵抗Ra,Rbを介して基準電位点に接続する。抵抗R5と感温素子R6の接続点には発生する直流電圧Vwは、抵抗Ra,Rbで分割した電圧Vw’を制御回路19に供給する。また、基準電位点から抵抗R7を介して制御回路19に供給するとともにDC/AC変換回路16に供給する。
【0015】
次いで、定電圧回路17の構成について説明する。トランスTRの一次側コイルn1にダイオードD3のアノードを接続する。ダイオードD3のカソードは、高周波成分を抑制するインピーダンス素子である、例えばビーズ型のインダクタL1、電解コンデンサC3を介して基準電位点に接続する。インダクタL1と電解コンデンサC3の接続点は、コレクタがコンデンサC4を介して基準電位点に接続されたPNP型トランジスタQ2のエミッタに接続する。トランジスタQ2のエミッタ・ベース間には抵抗R8を接続する。トランジスタQ2のベースは、ツェナーダイオードZDを介して基準電位点に接続する。
【0016】
また、DC/AC変換回路16は、例えばCMOS型のスイッチングトランジスタのスイッチSa,Sb,Sc,Sdからいわゆるフルブリッジ回路を構成しており、スイッチSaとスイッチSd、スイッチSbとスイッチScは同時にオンオフ制御され、これらの2群のスイッチは交互にオンオフ制御される。
【0017】
次に、上記した図1構成の動作について図2の波形図とともに説明する。トランジスタQ1を、制御回路19からの制御信号に基づきオンオフ制御させることでトランスTRの一次側コイルn1に交流電圧Va1発生させる。交流電圧Va1は、第2のDC/DC変換回路14を構成する一次側コイルn1より巻線数の多い図示しない三次側コイルに高い交流電圧を生成し、この交流電圧に基づいた例えば1kVの直流電圧Vd1に変換してイグナイタ14に供給する。イグナイタ14では供給された1kVに基づき図2(b)に示す例えば25kVを生成して放電灯15に供給し、放電灯15をグロー放電させる。
【0018】
また、トランスTRは二次側コイルn2を、一次側コイルn1より巻線比を多くし、それに応じた高い交流電圧を生成する。この交流電圧は、ダイオードD2、コンデンサC2を用いて図2(a)に示す例えば400Vの直流電圧Vd2に整流してDC/AC変換回路16に供給する。
【0019】
トランスTRの一次側に発生した交流電圧Va1は、ダイオードD3、インダクタL1、電解コンデンサC3により図2(c)に示すような直流電圧に変換する。交流電圧Va1は、リップル電流およびリップル電圧を含むため、高周波成分をインダクタL1で図2(d)に示すように除去する。変換された直流電圧は、ツェナーダイオードZDのツェナー電圧で決まる電圧で一定にされた直流電圧Vd3をトランジスタQ2のコレクタから生成し、この直流電圧Vd3を制御回路19およびDC/AC変換駆動回路18の電源としてこれらに供給する。
【0020】
制御回路19は、スイッチング信号を生成し、トランジスタQ1をオンオフ制御して直流電源11の直流電圧を交流電圧Va1に生成する。また、フルブリッジ構成のDC/AC変換回路16は、DC/AC変換駆動回路18から出力される駆動信号で、スイッチSaとスイッチSdをオン、スイッチSbとスイッチScをオフ、次にスイッチSaとスイッチSdをオフ、スイッチSbとスイッチScをオンする制御を交互に行い、出力から直流電圧Vd2に交流電圧Va2が重畳された交流電圧Va3を得る。放電灯15は、これまで直流電圧Vd1に基づきイグナイタ14で生成された高い直流電圧でグロー放電された状態から、今度は交流電圧Va3に基づきアーク放電に移行し、以降この状態を交流電圧Va3が供給され続けられるまで維持する。
【0021】
ところで、放電灯15は直流電圧Vd2と抵抗R7を流れる出力電流Ir7により設定される電力で制御回路19、第1のDC/DC変換回路12を介して点灯するが、周囲温度または部品の発熱により部品の特性が変化する。このため設定電力は温度により変化した場合、抵抗R6と感温素子R7接続点の電圧Vwが変化し、第1のDC/DC変換回路12から出力される直流電圧Vd2は、周囲の温度変化等で電圧値も変化してくる。このため直流電圧Vd2の電圧変化を検出し、この検出結果に基づき直流電圧Vd2が周囲温度に関係なく一定になるように制御する。
【0022】
具体的には、温度検出回路20の感温素子R7の温度に対する抵抗変化率を例えば図3に示すようなものを使用する。感温素子R7は、図3(a)に示すように周囲の温度が25℃での抵抗変化率が0%を中心にしてリニアに変化するもので、温度の上昇に従い抵抗変化率も上昇し、温度の低下に従い低効変化率も下降する特性を有する。
【0023】
感温素子R7の温度変化に基づく制御について図4とともに説明する。まず、周囲の温度が25℃のときは、図3に示すように、温度による感温素子R7の抵抗変化は見られない。このため、抵抗R5と感温素子R7の抵抗値に基づき生成される直流電圧Vwは、抵抗Ra,Rbで分割された電圧Vw’となり、制御回路19の比較器191に供給する。この場合の比較器191の出力は、制御回路19からトランジスタQ1のゲートを図4(a)に示すゲート・ソース間電圧Vgsのオン期間は、ドレイン・ソース間電圧Vdsオフし、ゲート・ソース間電圧Vgsのオフ期間は、ドレイン・ソース間電圧Vdsオンする制御信号を出力する。
【0024】
次に、周囲温度が85℃程度に高くなると、制御回路19の出力は、図4(b)に示すようにトランジスタQ1をオンする時間が延びて出力を増加する方向に作用する。周囲温度が−40℃程度に低温になると感温素子R7の抵抗値が低下して制御回路19の入力端子の電圧が低下する。周囲電圧が低くなると、制御回路19の出力は図4(c)に示すようにトランジスタQ1オン時間が短くなり出力を低下する方向に作用する。
【0025】
このように、周囲温度の変化によりトランジスタQ1のオン/オフの比率を変えてDC/AC変換回路16のオンデューティーを変えることでランプ電力の制御を行い、放電灯15にかかる電力を一定になるように制御する。これにより、周囲温度や電子部品の発熱により使用部品の特性変化による放電灯15の明るさの変化を防止することができる。
【0026】
図5は、この発明の他の実施形態について説明するための回路構成図である。図1と同一の構成部分には同一の符号を付し、異なる部分について説明する。
【0027】
ところで図1において、出力端子Voに生成される直流電圧Vd2は、始動時に400V、定格時45V程度となる。このため始動時の消費電力を抑えるには、抵抗R5の抵抗値を、感温素子R6の抵抗値を比べて小さくする必要がある。例えばR5は400kΩ、R6は2kΩである。このため感温素子R6の抵抗値が低いと少しの抵抗変化では電力変化が小さく微調整がしにくいことが考えられる。
【0028】
そこで、この実施形態は、図1の感温素子R6を、通常の抵抗R8に変更するとともに、比較器191に入力する電圧を分圧する抵抗Ra,Rbのうち抵抗Rbを、正特性を有する抵抗である感温素子Rcに変更したものである。
【0029】
抵抗Raと感温素子Rcの抵抗値は、例えば1kΩ程度の値とそれぞれの値を同じに設定することができる。このため、温度により抵抗値が変化する感温素子Rcの変化量が微量であっても、抵抗Raと感温素子Rcの接続点に得られる電圧Vw’の変化量は大きいものとなる。このため、制御回路19からは、微妙な温度変化に対しても確実な制御信号を得ることが可能となる。
【0030】
この実施形態では、少し温度変化に対しても放電灯に係る電圧を一定にする微調整な制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態について説明するための回路構成図。
【図2】図1の動作について説明するための説明図。
【図3】感温素子の正特性例について説明するための説明図。
【図4】(a)は常温時、(b)は85℃時、(c)は−40℃時のそれぞれ図1の要部に動作について説明するための説明図。
【図5】この発明の他の実施形態について説明するための回路構成図。
【符号の説明】
【0032】
11 直流電源
12 第1のDC/DC変換回路
13 第2のDC/DC変換回路
14 イグナイタ
15 放電灯
16 DC/AC変換回路
17 定電圧回路
18 DC/AC変換駆動回路
19 制御回路
20 電圧検出回路
R6、Rc 感温素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源の電圧を所望の第1の直流電圧に変換する第1のDC/DC変換回路と、
前記直流電源の電圧を所望の第2の直流電圧に変換する第2のDC/DC変換回路と、
始動時に前記第2の直流電圧に基づき所望の高電圧を生成するイグナイタと、
前記イグナイタの出力に基づき点灯に必要な電力が供給される放電灯と、
前記第2の直流電圧を交流電圧に変換し、前記放電灯をグローからアーク点灯に移行させるDC/AC変換回路と、
制御信号に基づき前記第1のDC/DC変換回路で交流電圧を生成させるための制御回路と、
前記DC/AC変換回路を駆動させ、前記第1のDC/DC変換回路の交流電圧を直流電圧に変換するとともに定電圧を得る定電圧回路とからなり、
前記第2の直流電圧に基づき生成される前記制御回路の制御信号は、周囲温度の変化に応じて生成されるものであることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記制御回路の制御信号は、温度変化で直線的に変化する抵抗値を有する素子に関連付けて、前記第2の直流電圧値を制御するものであることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
温度変化で直線的に変化する抵抗値を有する素子は、前記第1のDC/DC変換回路の出力に設定した分圧電圧を得る基準電位点側の抵抗素子であることを特徴とする請求項2記載の放電灯装置。
【請求項4】
温度変化で直線的に変化する抵抗値を有する素子は、前記第2の直流電圧を分圧した電圧を、さらに分圧する抵抗素子のいずれか一方としたことを特徴とする請求項2記載の放電灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−66596(P2007−66596A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248744(P2005−248744)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】