説明

放電灯点灯装置

【課題】電磁場に対してその影響を受け難く、グランドレベル付近のランプ電圧に対して精度の高いAD変換機能を有する放電灯点灯装置を提供すること。
【解決手段】直流電力を放電灯への供給電力に変換する電力変換回路と、電力変換回路のスイッチング素子をオンオフ制御する制御回路と、放電灯のランプ電圧Vを検出して制御回路にアナログ電圧信号Vを送るランプ電圧検出回路6とを備える。ランプ電圧検出回路6は分圧回路7と定電圧源8とを有する。分圧回路7は、放電灯の両端に接続される抵抗器R、Rの直列回路からなり、一方を分圧用抵抗器Rとして該抵抗器Rの両端子間電圧を分圧値として供する。定電圧源8は、抵抗器Rに直列接続され、分圧値にオフセット電圧を加算する。制御回路は、分圧値にオフセット電圧を加算したアナログ電圧信号VをAD変換して、そのディジタル電圧信号に基づき電力変換回路の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光灯やHIDランプ等の放電灯を点灯させる放電灯点灯装置、特にそのランプ電圧検出機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電灯点灯装置としては、銅鉄型の安定器(いわゆる銅鉄バラスト)が用いられてきた。安定器にはランプ電流を適正に制限するという役目があるが、銅鉄型の安定器では重量が重くなるとともに安定器自体が大型化してしまうため、近年では、安定器の軽量化、小型化、高機能化を目的としてスイッチング素子やダイオード等の電子部品を用いたいわゆる電子式安定器が利用されている。さらに、電子式安定器にマイクロコンピュータを内蔵した制御回路を設けて、寿命末期等の異常放電発生時にも対応できる電子式安定器が使用されるようになってきている。
【0003】
例えば、放電灯の点灯不能、異常放電あるいは短絡を適切に検知して、点灯電力の供給を停止する機能を備えた電子式安定器が知られている(特許文献1参照)。特許文献1によると、電圧検知手段が放電灯への供給電圧を検知して、マイクロコンピュータが検知電圧と正常電圧領域とを比較して、該領域から逸脱した場合に放電灯への電力供給を停止するようになっている。
【0004】
このようなマイクロコンピュータ搭載型電子式安定器では、通常、ADコンバータがランプ電圧の検出値をアナログ信号からディジタル信号に変換して、その信号をマイクロコンピュータに送っている。マイクロコンピュータは、AD変換されたランプ電圧検出値に基づいて、放電灯への供給電圧が異常でないかどうかを判断する。供給電圧が正常であれば、ランプ電力変換回路におけるスイッチング素子のオンデューティなどを演算し、スイッチング素子を駆動する指令信号をランプ電力変換回路に出力して、適切な電力の供給を維持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−289588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスイッチング方式の電力変換回路を備えた電子式安定器では、スイッチング素子の周期的なオンオフ制御を高周波にすればするほど、安定器全体の軽量化と小型化を進めることが可能である。電子式安定器を構成する部品およびケースを小型化できれば、安定器内部でのエネルギーロスも小さくなり、省資源化に役立つ。
しかしながら、オンオフ制御を高周波にすると、回路内での電流の激しい変化に伴って発生する電磁場も大きくなってしまい、電磁場によるノイズの密度が増大する。そのため、特許文献1に記載のようなマイコン搭載型の電子式安定器では、制御回路に設けられたADコンバータが電子式安定器の内部で発生する電磁場の影響を強く受けてしまう。
特に、グランドレベル付近のランプ電圧を検出する際には、上記の電磁場によるノイズの影響でAD変換機能の精度に限界があった。
【0007】
放電灯の始動時においては、放電灯の点灯直後にランプ電圧が急激に低下してグランドレベル(零レベル)に近くなる。例えば、始動電圧240Vとした場合には、点灯によりランプ電極間が短絡電圧となり、10V以下に低下する。この電圧の急激な低下を検知してランプ点灯を判定し、始動制御から始動初期制御へと制御モードを変更するなどの方法が採られている。
このような始動時に激しい変動が生じるランプ特性を有する放電灯の始動制御を一層安定させるためには、グランドレベル付近でのより正確なランプ電圧の検出機能が必須となる。従って、前述のような電磁場の発生によるノイズの影響を受けてグランドレベル付近でのAD変換機能の精度に限界があるという問題は、早急に解決されるべきであった。
【0008】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、ADコンバータでディジタル電圧信号に変換されたランプ電圧検出値を用いて、電力変換制御を行うマイクロコンピュータを搭載している放電灯点灯装置において、その目的は、放電灯点灯装置自身を発生源とする電磁場に対してその影響を受け難く、グランドレベル付近のランプ電圧に対して精度の高いAD変換機能を有する高精度AD変換機能付きの放電灯点灯装置を提供することにある。言い換えると、ADコンバータが電磁場の影響を受けることでグランドレベル付近での変換機能の精度に限界があるとしても、グランドレベル付近のランプ電圧を正確に検出することが可能で、放電灯の始動段階における安定した始動制御を実行できる放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、近年、電力変換回路等のスイッチング制御の高周波数化が進み、点灯装置自身がより強い電磁場の発生源となってきたことで、ランプ電圧の検出値をマイクロコンピュータで使用可能なディジタル信号に変換するためのADコンバータがグランドレベル付近でのノイズの影響を強く受けるようになり、このことが放電灯の始動制御をより安定にすることに対する障害になっているという点に着目した。発明者は、電磁場の発生を防止する対策とは異なり、グランドレベルでノイズの影響を受ける環境下であっても、高い精度でランプ電圧信号をAD変換できるような検出機構を見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、前記課題を解決するために本発明にかかる放電灯点灯装置は、
交流電圧を全波整流する整流回路、および、該整流回路の両出力端に接続される電解コンデンサを有し、前記電解コンデンサの両端を出力端として直流電圧を供給する直流電源回路と、
前記直流電源回路からの直流電圧をスイッチング素子のオンオフ制御で電力変換する電力変換回路と、
前記電力変換回路のスイッチング素子をオンオフ制御する制御回路と、
を備え、前記電力変換回路の両出力端に接続された放電灯に対して所定のランプ電流を供給する放電灯点灯装置において、
放電灯の両端子間に印加される電圧を検出して前記制御回路にアナログ電圧信号を送るランプ電圧検出回路を備え、
該ランプ電圧検出回路は、
放電灯の両端子間に接続される二つの抵抗器の直列回路を有するとともに、このうちの一方を分圧用抵抗器として用いて、該分圧用抵抗器の両端子間電圧をランプ電圧の分圧値として供する分圧部と、
前記分圧用抵抗器に直列接続され、前記ランプ電圧の分圧値に一定電圧を加算する定電圧加算部と、
を含んで構成され、前記分圧用抵抗器と前記定電圧発生部との直列回路における両端子間電圧をアナログ電圧信号で出力することを特徴とする。
ここで、制御回路は、前記ランプ電圧検出回路からのアナログ電圧信号をディジタル電圧信号に変換するADコンバータと、前記ディジタル電圧信号を用いて前記電力変換回路の電力変換制御を行うマイクロコンピュータと、を有している。
【0011】
また、本発明の放電灯点灯装置では、
前記ランプ電圧検出回路は、検出するランプ電圧からリップル成分を除去する高周波リップル除去部を有し、
前記高周波リップル除去部は、放電灯の両端子間に接続されるフィルタ用抵抗器とフィルタ用コンデンサとの直列回路からなり、
前記分圧部および前記定電圧加算部の直列回路は、前記フィルタ用コンデンサの両端子間に接続されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、分圧部と定電圧加算部とを有するランプ電圧検出回路を用いたから、ランプ電圧を適切な大きさの電圧に分圧して検出するだけでなく、検出したランプ電圧信号がグラウンド電位近くのノイズに埋もれてしまうのを防ぐことができる。すなわち、従来のADコンバータ入力端子電圧の信号は、本発明のランプ電圧検出回路により、ランプ電圧の分圧値に電圧加算部による一定電圧を加算した信号に置き換えられる。その結果、ADコンバータ入力端子電圧の信号は、一定電圧分だけ上昇し、AD変換の際にグランドレベルのノイズの影響を受けないで済むようになる。
【0013】
このように定電圧加算部による一定電圧の加算を行うと、検出対象のランプ電圧が従来と同じレベルであっても、AD変換後の電圧値にノイズの影響が表れなくなる。ADコンバータ入力端子電圧の信号レベルを、グラウンドの電位レベルに近いノイズレベルから、ノイズの影響を受けない程度の高いレベルまで浮かすことができるから、ランプ電圧信号がグラウンド電位近くのノイズに埋もれなくて済む。
【0014】
以上のように、本発明によれば、放電灯点灯装置自身を発生源とする電磁場に起因するノイズに強く、グランドレベル付近のランプ電圧を高い精度でAD変換できる。つまり、ADコンバータがグランドレベル付近で電磁場の影響を受けたとしても、ランプ電圧を正確に検出することが可能で、放電灯の始動段階においてより安定した始動制御を実行できる。
また、ランプ電圧検出回路に高周波リップル除去部を設けたことにより、ランプ電圧に含まれている高周波成分(ノイズ分)を、フィルタ用抵抗とフィルタ用コンデンサからなるRC積分回路により平滑除去できるので、後段の分圧部へ送られるランプ電圧信号に高周波ノイズが混在するのを防ぐことができる。その結果、ADコンバータ入力端子電圧の信号に高周波のノイズ成分が含まれることがなくなるので、ADコンバータ入力端子電圧のSN比をランプ電圧信号のSN比のレベルに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる放電灯点灯装置の概略回路構成図である。
【図2】第1実施形態にかかる放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図3】(A)は従来の放電灯点灯装置におけるランプ電圧と、ADコンバータ入力端子電圧との関係、(B)は該ランプ電圧と、AD変換後のマイクロコンピュータが認識した電圧の数値データとの関係を示すグラフである。
【図4】図2の回路中のランプ電圧検出回路の回路図である。
【図5】本発明の放電灯点灯装置におけるランプ電圧とADコンバータ入力端子電圧との関係、および、該ランプ電圧とAD変換後のマイクロコンピュータが認識した電圧の数値データとの関係を合わせて示すグラフである。
【図6】本発明の放電灯点灯装置におけるランプ電圧と、マイクロコンピュータが認識した電圧の数値データを補正したデータとの関係を示すグラフである。
【図7】第2実施形態にかかる放電灯点灯装置のランプ電圧検出回路の回路図である。
【図8】(A)は実施例としてランプ電圧検出回路で検出されマイクロコンピュータで補正された零レベル付近のランプ電圧の信号波形を示す図であり、(B)はその比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1に本実施形態にかかる放電灯点灯装置の回路構成の概略を示す。放電灯点灯装置は、交流電流を整流して直流化し、直流電圧を所定の大きさに制御して放電灯に供給するものであり、例えば、水銀灯、メタルハライドランプおよび高圧ナトリウムランプなどの高圧放電灯Laを点灯制御するために用いられる。放電灯点灯装置は、直流電源回路2、電力変換回路3、制御回路1およびランプ電圧検出回路6に大別される。
【0017】
直流電源回路2は、図1のように、交流電源ACからの交流電力から安定した直流電力を作り出して後段に接続された電力変換回路3に直流電力を供給する。
電力変換回路3は、高圧放電灯Laのランプ電圧に応じて、直流電力を適切な電力に変換して高圧放電灯Laに供給する。
高圧放電灯Laは、電力変換回路3の両出力端1a、1b間に接続されている。
【0018】
ランプ電圧検出回路6は、電力変換回路3の両出力端1a、1b間に印加されるランプ電圧Vを検出し、検出値をアナログ電圧信号として制御回路1へ出力する。
制御回路1は、電力変換回路3に内蔵されているスイッチング素子Q1のオンオフ駆動を制御するための回路であり、ADコンバータ5とマイクロコンピュータ4とを含んで構成される。制御回路1には、ランプ電圧検出回路6からのアナログ電圧信号を入力する一対の端子2a、2bを有する。
【0019】
ADコンバータ5は、アナログ−ディジタル変換を行う回路素子である。ADコンバータ5には、入力端子2a、2bを介してランプ電圧検出回路6からのアナログ電圧信号が入力される。このADコンバータ5の入力端子に印加される電圧をADコンバータ入力端子電圧Vと呼ぶ。すなわち、ADコンバータ5は、アナログ電圧信号であるADコンバータ入力端子電圧Vをディジタル電圧信号V2dに変換するのである。
マイクロコンピュータ4は、ADコンバータ5からのディジタル電圧信号V2dを用いて電力変換回路3の電力変換制御を行う。
【0020】
図2は第1実施形態にかかる放電灯点灯装置における直流電源回路2および電力変換回路3の具体的な回路構成を示す。
直流電源回路2は、ダイオードブリッジなどで構成される全波整流回路21と、この全波整流回路21の両出力端に接続された電解コンデンサCと、を有する。全波整流回路21は、交流電流を全波整流し直流化する。電解コンデンサCは、整流化された直流電流によって充電され、電力変換回路3に内蔵されたスイッチング素子Qがオン状態に期間、電力変換回路3に直流電力を供給する。すなわち、電解コンデンサCの両端を出力端として直流電圧が供給される。
【0021】
電力変換回路3は、直流電源回路2の後段に接続され、直流電源回路2からの直流電力をスイッチング素子Qのオンオフ駆動により電力変換する。電力変換回路3としては、一般的な降圧チョッパ回路が用いられており、スイッチング素子Q、インダクタL、ダイオードDおよび平滑コンデンサCによって構成され、平滑コンデンサCの両端子に高圧放電灯Laが接続される。
電力変換回路3は、次のように各素子が接続されて構成されている。まず、電解コンデンサCの正極側の出力端にスイッチング素子Qの一端を接続し、平滑コンデンサCの負極側の出力端とスイッチング素子Qの他端の間にインダクタLおよび平滑コンデンサCの直列回路を接続し、平滑コンデンサCの端子間に放電灯Laを並列に接続する。スイッチング素子Qは、数十kHzの高い周波数でオンオフするようになっている。
【0022】
スイッチング素子Qがオン状態である期間に、電解コンデンサVC0に蓄えられた電荷を電源として、スイッチング素子Qを直流電流が流れ、インダクタLに磁場のエネルギーが蓄積される。そして、スイッチング素子Qがオンからオフ状態に切り替わると、インダクタLのエネルギーの放出によってインダクタLに電流が連続して流れる。電力変換回路3には、スイッチング素子Qがオフに切り替わった後、インダクタLからの電流が、放電灯Laを経由して再びインダクタLに戻るような閉ループの電流経路が形成されている。すなわち、インダクタLと平滑コンデンサCの直列回路の両端間が、インダクタLに戻る方向のみに電流を流すダイオードDによって接続されている。
【0023】
このように電力変換回路3では、高周波で切り替わるスイッチング素子Qがオンになると、電解コンデンサCの正極の端子からの直流電流が、スイッチング素子Q→インダクタL→放電灯Laの順番で電解コンデンサCの負極の端子に流れて、インダクタLに磁場のエネルギーが蓄積される。また、スイッチング素子Qがオフになると、直流電流の供給が遮断され、スイッチング素子QとインダクタLの接続点における電圧が略零になる。そして、インダクタLのエネルギーが電流となって放出され、放電灯La→ダイオードDの順番でインダクタLに戻るようになっている。
従って、電力変換回路3は、直流電源回路2の出力直流電圧VC0を高圧放電灯Laの定格で決まる電力値で点灯動作できるランプ電圧Vに変換して、これに応じたランプ電流を高圧放電灯Laに供給することができる。
【0024】
なお、図2は本発明の放電灯点灯装置の一例であり、直流電源回路2の構成としては、前述の全波整流回路と、昇圧チョッパ型の力率改善回路とからなる構成でもよい。また、電力変換回路3の後段にランプ電圧の極性反転回路を追加して、所定の周期で交番するランプ電圧を高圧放電灯Laに印加するようにした放電灯点灯装置としてもよい。
【0025】
図2の放電灯点灯装置では、ランプ電圧検出回路6が平滑コンデンサCの両端電圧を高圧放電灯Laのランプ電圧Vとして検出し、制御回路1がランプ電圧Vの検出値に基づいてスイッチング素子Qを高周波でオンオフさせるスイッチング周波数、又はそのオンデューティを決定し、スイッチング素子Qの制御用の指令信号を出力する。このようにして制御回路1は高圧放電灯Laに供給する電力を調整している。
【0026】
ここで、従来の放電灯点灯装置の問題点をグラフに基づいて詳しく説明する。図3(A)に、ランプ電圧検出回路を通常の分圧回路7のみで構成した場合の、ランプ電圧VとADコンバータ入力端子電圧Vの関係を示す。また、同図(B)に、同じランプ電圧検出回路を用いた場合の、ランプ電圧VとAD変換後のマイクロコンピュータ4が認識する電圧値V1dの関係を示す。従来の放電灯点灯装置では、同図(A)のようにランプ電圧検出回路で検出可能なランプ電圧の下限値が、例えば0.2V程度であるにも関わらず、同図(B)のように、マイクロコンピュータ4が認識可能な電圧値の下限値が、例えば0.5V程度まで上昇(悪化)してしまう。
【0027】
この原因は、グランドレベルの電位を検出する際に、ADコンバータ5がノイズの影響を受けてしまうことである。このノイズは、高周波スイッチングで制御する電力変換回路3などで発生する電磁場に起因していることが判っている。ADコンバータ5に対するノイズ対策が行われていない場合、グランドレベル付近のランプ電圧値が放電灯点灯装置自身からの電磁波によるノイズで埋もれてしまうのである。この結果、グランドレベル付近のランプ電圧の検出値をより高い精度でAD変換することが困難になっていた。
【0028】
本発明で特徴的なことは、ADコンバータ5がより高い精度のAD変換を実行できるように、ランプ電圧検出回路6を、図4に示す分圧回路(分圧部に相当する)7と、定電圧源(定電圧加算部に相当する)8とを含んで構成した点にある。
分圧回路7は、高圧放電灯Laの両端子(1a、1b)間に接続される二つの抵抗器R、Rの直列回路を有する。二つの抵抗器R、Rのうちで抵抗値の小さい方を分圧用抵抗器Rとして用いる。そして、分圧用抵抗器Rの両端子間電圧が、ランプ電圧Vの分圧値とされる。
【0029】
定電圧源8は、分圧用抵抗器Rに直列接続されており、分圧用抵抗器Rによるランプ電圧Vの分圧値に、一定電圧(オフセット電圧)を加算する。つまり、ランプ電圧検出回路6は、分圧用抵抗器Rと定電圧源8との直列回路における両端子間電圧をアナログ電圧信号で出力する。この出力電圧がADコンバータ入力端子電圧Vとなる。
【0030】
定電圧源8の具体的な回路構成を説明する。
定電圧源8は、図4のように定電流源9と抵抗器R1の並列回路からなる。定電流源9は、抵抗器Rと安定化直流電源Eの直列回路からなる。すなわち、高圧放電灯Laの高電位側の端子1aとグランドライン側の端子1bとの間には、抵抗器R、抵抗器Rおよび抵抗器Rとが直列に接続され、抵抗器Rの両端子間に定電流源9が並列に接続されているのである。安定化直流電源Eからの直流電流は、抵抗器R→抵抗器R→安定化直流電源Eの順に流れるため、抵抗器Rの両端にオフセット電圧が生じる。
【0031】
このような構成のランプ電圧検出回路6を用いれば、ランプ電圧Vを適切な大きさの電圧に分圧して検出できるだけでなく、検出したランプ電圧信号がグラウンド電位近くのノイズに埋もれてしまうのを防ぐことができる。すなわち、図3(A)で示した従来のADコンバータ入力端子電圧Vの信号は、本発明のランプ電圧検出回路6により、ランプ電圧Vの分圧値に定電圧源8によるオフセット電圧を加算した信号に置き換えられる。その結果、ADコンバータ入力端子電圧Vの信号の下限値は、図5に示すようにオフセット電圧レベル分だけ上昇し、AD変換の際にグランドレベルのノイズの影響を受けないで済むようになる。
【0032】
定電圧源8によるオフセット電圧の加算を行うと、図5のようにADコンバータ入力端子電圧VとAD変換後のマイクロコンピュータ4が認識する電圧値V2dとがグランドレベル付近においても一致するようになる。従って、検出対象のランプ電圧Vが同じレベルであっても、ランプ電圧検出回路6を用いることでAD変換後の電圧値にノイズの影響が表れなくなる。このように、ADコンバータ入力端子電圧Vの信号レベルを、グラウンドの電位レベルに近いノイズレベルから、ノイズの影響を受けない程度の高いレベルまで浮かすことができるから、ランプ電圧信号がグラウンド電位近くのノイズに埋もれなくて済む。また、ADコンバータ5については従来と同じものを使用できる。
【0033】
マイクロコンピュータ4では、認識したディジタル信号を容易に補正することができる。ここでは、マイクロコンピュータ4で認識されたAD変換後のディジタル信号を元のランプ電圧に補正処理する方法について説明する。
ADコンバータ5は、グラウンドの電位レベルに近いノイズレベルから浮かされたADコンバータ入力端子電圧Vの信号のAD変換を実行する。そして、マイクロコンピュータ4は、このAD変換後の数値データより、次式を使って元のランプ電圧Vを算出する。
(数1)
= K ×(V − K
ただし、
=1/(1.0−((R+R)・R/X))
=E・R・R/X
X =(R+R)(R+R+R)−R・R
上式で用いる各係数は、図4に示すランプ電圧検出回路6の各素子の仕様に対応させている。図6にマイクロコンピュータ4によって補正されたランプ電圧値を示す。
【0034】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態におけるランプ電圧検出回路6を、図7に示すように、リップル除去回路10を有するランプ電圧検出回路106にしたものである。第1実施形態における直流電源回路2、電力変換回路3および制御回路1については、本実施形態において共通するので説明を省略する。
ランプ電圧検出回路106は、第1実施形態と同様に、分圧回路7および定電圧源8を有するとともに、さらに、検出するランプ電圧V1からリップル成分を除去する高周波リップル除去回路(リップル除去部に相当する)10を有している。
【0035】
高周波リップル除去部10は、高圧放電灯Laの両端子(1a、1b)間に接続されるフィルタ用抵抗器Rとフィルタ用コンデンサCとの直列回路からなる。そして、分圧回路7の二つの抵抗器R、Rと定電圧源8との直列回路は、フィルタ用コンデンサCの両端子間に接続されている。
【0036】
フィルタ用抵抗R4とフィルタ用コンデンサCからなる積分回路を通さずに高い抵抗値のRと低い抵抗値のRとで分圧した場合、ランプ電圧信号に含まれている高い周波数成分を含むノイズ成分は抵抗器Rの寄生容量成分を通り抜けてしまい、分圧用抵抗器Rの両端子間の電圧に取り込まれる。その結果、高周波のノイズ成分がADコンバータ入力端子電圧Vの信号とともに、AD変換されてしまい、高周波のノイズ成分が発生してしまう。ADコンバータ5の入力端子電圧VにおけるSN比(信号成分とノイズ成分の比率)は、ランプ電圧信号のSN比よりも悪化してしまう。
【0037】
しかし、本実施形態によれば、ランプ電圧Vに含まれている高周波成分(ノイズ分)を、図7に示すようなフィルタ用抵抗Rとフィルタ用コンデンサCからなるRC積分回路により平滑除去するので、後段の分圧回路7へ送られるランプ電圧信号に高周波ノイズが混在するのを防ぐことができる。その結果、ADコンバータ入力端子電圧Vの信号に高周波のノイズ成分が含まれることがなくなるので、ADコンバータ入力端子電圧VのSN比をランプ電圧信号のSN比のレベルに維持することができる。
【0038】
マイクロコンピュータ4は、このAD変換後の数値データより、次式を使って元のランプ電圧V1を算出することができる。
(数2)
= K ×(V − K
ただし、
=1/(1.0−((R+R)(R+R)/X))
=E・R・(R+R)/X
X =(R+R)(R+R+R+R)−R・R
上式で用いる各係数は、図7に示すランプ電圧検出回路6の各素子の仕様に対応させている。
【0039】
図7の回路構成中の各素子を次のように設定した場合の補正式を例示する。
抵抗器Rを510KΩとし、分圧用抵抗器Rを5.1KΩとして分圧回路7を構成する。また、安定化直流電源Eを5.0Vとし、抵抗器Rを10KΩとして定電流源9を構成する。そして、抵抗器Rを1.5KΩとして、抵抗器Rおよび定電流源9から定電圧源8を構成する。また、リップル除去回路10のフィルタ用抵抗器Rを5.1KΩ、フィルタ用コンデンサCを2200pFとする。
【0040】
予め、定電流源9からの安定化直流電流を抵抗器Rに流すことにより、オフセット電圧を発生させておく。
まず、高圧放電灯Laの両端子1a、1b間に印加されたランプ電圧Vに含有されている高周波成分をリップル除去回路10で除去する。さらに、分圧回路7で分圧した電圧、つまり分圧用抵抗器Rの端子間電圧に、抵抗器Rで発生したオフセット電圧を加算したものをADコンバータ入力端子電圧Vとする。
【0041】
ADコンバータ入力端子電圧VをAD変換した数値をV2dとすれば、前述の補正式(2)は、下記のようになる。
(数3)
1d = 81.0 ×(V2d − 0.64)
式(3)中のV1dは、ランプ電圧Vをバックグラウンドノイズのない状態でAD変換した数値を示す。この補正式によりバックグラウンドノイズのない状態でAD変換した電圧値V1dを算出することができる。
【0042】
図8に本発明にかかる実施例と比較例とを示す。同図(A)は、実施例として、ランプ電圧検出回路で検出されA/D変換された後、マイクロコンピュータで補正されたランプ電圧の信号波形を示す。同図(B)は、比較例として、従来の分圧回路のみのランプ電圧検出回路で検出されAD変換された後、マイクロコンピュータで認識されたランプ電圧の信号波形を示す。いずれも零レベル付近の電圧を検出対象とし、ランプ電圧検出回路以外の構成(例えばADコンバータ等)は同じとした。そして、マイクロコンピュータからDAコンバータにより出力されるランプ電圧の信号波形を、通常のプローブを用いて検出し、オシロスコープで可視化させた(図8)。そのためオシロスコープで得られる実施例および比較例の各信号波形には、プローブでの検出に伴うノイズが同程度ずつ含まれている。通常のプローブでは、検針とグランド接続用の配線により構成されるループ状の断面が、一種のループアンテナとして機能し、測定波形に、ループアンテナが拾ったノイズ成分が重複し、本来の波形がノイズ成分により太くなるという問題点がある。
このような前提で、実施例および比較例を比べると、本発明の電圧検出回路を用いた方が、マイクロコンピュータで認識される信号波形に含まれるノイズレベルが小さくなることが判る。つまり、ランプ電圧が零レベル付近であっても、本発明の電圧検出回路がランプ電圧に一定電圧を加算するので、AD変換の際にグランドレベル付近のノイズの影響を受けずに済む。さらに、マイクロコンピュータがAD変換後のディジタル信号を、一定電圧加算前のランプ電圧のレベルに容易に補正できるので、図8(A)のように、従来よりもグランドレベルのノイズの影響を受けない高精度の波形信号を得ることができる。
【0043】
なお、上記の実施形態では、高輝度高圧放電灯(いわゆるHIDランプ)の電子式安定器について説明したが、他にも蛍光灯などの放電灯に対しても、本発明の電子式安定器を適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 制御回路
2 直流電源回路
3 電力変換回路
4 マイクロコンピュータ
5 ADコンバータ
6、106 ランプ電圧検出回路
7 分圧回路(分圧部)
8 定電圧源(定電圧加算部)
9 定電流源
10 リップル除去回路(リップル除去部)
AC 交流電源
電解コンデンサ
フィルタ用コンデンサ
安定化直流電源
La 高圧放電灯
抵抗器
分圧用抵抗器
抵抗器
フィルタ用抵抗器
抵抗器
ランプ電圧
ADコンバータ入力端子電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を全波整流する整流回路、および、該整流回路の両出力端に接続される電解コンデンサを有し、前記電解コンデンサの両端を出力端として直流電圧を供給する直流電源回路と、
前記直流電源回路からの直流電圧をスイッチング素子のオンオフ制御で電力変換する電力変換回路と、
前記電力変換回路のスイッチング素子をオンオフ制御する制御回路と、
を備え、前記電力変換回路の両出力端に接続された放電灯に対して所定のランプ電流を供給する放電灯点灯装置において、
放電灯の両端子間に印加される電圧を検出して前記制御回路にアナログ電圧信号を送るランプ電圧検出回路を備え、
該ランプ電圧検出回路は、
放電灯の両端子間に接続される二つの抵抗器の直列回路を有するとともに、このうちの一方を分圧用抵抗器として用いて、該分圧用抵抗器の両端子間電圧をランプ電圧の分圧値として供する分圧部と、
前記分圧用抵抗器に直列接続され、前記ランプ電圧の分圧値に一定電圧を加算する定電圧加算部と、
を含んで構成され、前記分圧用抵抗器と前記定電圧発生部との直列回路における両端子間電圧をアナログ電圧信号で出力し、
前記制御回路は、前記ランプ電圧検出回路からのアナログ電圧信号をディジタル電圧信号に変換するADコンバータと、前記ディジタル電圧信号を用いて前記電力変換回路の電力変換制御を行うマイクロコンピュータと、を有することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1記載の放電灯点灯装置において、
前記ランプ電圧検出回路は、検出するランプ電圧からリップル成分を除去する高周波リップル除去部を有し、
前記高周波リップル除去部は、放電灯の両端子間に接続されるフィルタ用抵抗器とフィルタ用コンデンサとの直列回路からなり、
前記分圧部および前記定電圧加算部の直列回路は、前記フィルタ用コンデンサの両端子間に接続されることを特徴とする放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−38578(P2012−38578A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177707(P2010−177707)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】