説明

放電灯用電子安定器

【課題】 本発明の目的は、4石のスイッチング素子を使用した電子安定器であって、力率を改善しつつ電圧利用率及び放電灯への出力電力を上げることのできる放電灯用電子安定器を提供することにある
【解決手段】 第1及び第2スイッチング素子24−1、24−2のオン/オフ動作のオンデューティを、交流電源12からの略正弦波状の入力電圧の瞬時値に応じて変更して入力電圧の昇圧動作を行い、放電灯16への電流供給を、入力電圧が正のとき第1及び第4スイッチング素子24−1、24−4をオン、負のとき第2及び第3スイッチング素子24−3、24−4をオンにして行う動作と、入力電圧が正のとき第2及び第3スイッチング素子24−3、24−4をオン、負のとき第1及び第4スイッチング素子をオンにして行う動作とを、第1及び第2スイッチング素子のオンデューティに応じて選択して行うことを特徴とする放電灯用電子安定器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4石のスイッチング素子を使用した放電灯用電子安定器、特にその制御機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、HIDランプ用電子安定器として、図1に示すような6石のスイッチング素子を使用したものが、広く用いられている。図1のHIDランプ用電子安定器は、交流電源からの入力電圧を整流及び昇圧するコンバータ回路部と、コンバータ回路部からの直流電圧を降圧するチョッパ回路部と、チョッパ部からの直流電圧を矩形波状に変換して放電灯へ出力するインバーター回路部と、を備えており、コンバータ回路部に一石のスイッチング素子、チョッパ回路部に一石のスイッチング素子、インバータ回路部に4石のスイッチング素子、の合計6石のスイッチング素子が用いられている。
上記のコンバータ回路部は、交流電源からの入力電圧を整流するブリッジ整流回路と、該ブリッジ整流回路の出力側に、スイッチング素子、ダイオード、平滑コンデンサからなる昇圧チョッパ回路とで構成されており、スイッチング素子のスイッチング動作によって、交流電源からの入力電流を略正弦波状に近づけて力率を高め、交流電源からの交流電源を所定の値に昇圧された直流電圧に変換して出力する。
【0003】
コンバータ回路部の出力側には、さらにスイッチング素子、ダイオード、インダクタ、平滑コンデンサからなる降圧チョッパ回路部が設けられ、コンバータ回路部からの直流電圧を降圧し、放電灯に流れる電流を所定の値に調節する。
また、インバータ回路部は二つのスイッチング素子の直列回路が、チョッパ回路の出力側に並列に接続され、図で対角線上に位置するスイッチング素子のペアを交互にオン/オフすることで放電灯へ矩形波電圧を供給する。
上記のような6石のスイッチング素子を必要とすることは、電子安定器のコストを上げ、HIDランプの普及を妨げる要因の一つとなっている。そこで、スイッチング素子の数を減らしコストを下げることを目的として、4石のスイッチング素子を用いたHIDランプ用電子安定器が提案されている(例えば、特許文献1、2の電源装置を参照)。
【特許文献1】特開平11−67477号公報
【特許文献2】特開2000−123985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に示された電子安定器では、コンバータ回路、チョッパ回路、インバータ回路に含まれるスイッチング素子を一部兼用することで、使用するスイッチング素子の数を減らしている。その結果、特許文献1、2に記された回路では、一つのスイッチング素子が複数の機能を担うことになり、図1の回路と比べ個々のスイッチング素子の動作が制限される。
4石のスイッチング素子を用いた電子安定器に対し、これまで様々な制御方法が提案されてきたが、図1のものと比べると、その性能は低いものであった。例えば、特許文献1、2に記された制御法では、入力電力の利用率が低く、高出力のランプの点灯には不向である。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、4石のスイッチング素子を使用した電子安定器であって、力率を改善しつつ電圧利用率及び放電灯への出力電力を上げることのできる放電灯用電子安定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の放電灯安定器は、第1整流素子と第2整流素子との直列回路と、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との直列回路とが、第1整流素子側と第1スイッチング素子側が同じ側となるように、平滑コンデンサに並列に接続され、第1整流素子と第2整流素子の接続点と、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の接続点とが第1インダクタを介して交流電源に接続され、前記交流電源からの入力電圧が正の期間では、第1スイッチング素子のオン時に第1インダクタに貯えられたエネルギーを、第1スイッチング素子のオフ時に、前記平滑コンデンサへ放出することで入力電圧の昇圧動作を行い、前記交流電源からの入力電圧が負の期間では、第2スイッチング素子のオン時に第1インダクタに貯えられたエネルギーを、第2スイッチング素子のオフ時に、前記平滑コンデンサへ放出することで入力電圧の昇圧動作を行うことで、入力電圧の整流及び昇圧を行うコンバータ回路部と、
第3スイッチング素子と第4スイッチング素子の直列回路が、第3スイッチング素子側が第1スイッチング素子側となるように、前記平滑コンデンサに並列に接続され、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の接続点と、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子の接続点とが、第2インダクタを介して放電灯に接続され、第4スイッチング素子と第1スイッチング素子とがオンのとき、平滑コンデンサから放電灯へ正方向の電流を供給し、第3スイッチング素子と第2スイッチング素子とがオンのとき、平滑コンデンサから放電灯へ負方向の電流を供給して、放電灯へ略矩形波状の出力電流を供給するインバータ回路部と、
前記各回路部の電圧、電流値情報を検知するための検知手段と、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記コンバータ回路部およびインバータ回路部のスイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御手段と、
を備える。
【0006】
そして、前記制御手段によって前記コンバータ回路部は、前記交流電源からの入力電圧が正の期間のとき、前記第1スイッチング素子のオンデューティを交流電源からの入力電圧の瞬時値に応じて変更することで昇圧動作の制御が行われ、入力電圧が負の期間のとき、前記第2スイッチング素子のオンデューティを交流電源からの入力電圧の瞬時値に応じて変更することで昇圧動作の制御が行われる。
さらに前記制御手段は、前記インバータ回路部の放電灯への出力動作として、(A)入力電圧が正のとき、第3スイッチング素子をオフとし、第4スイッチング素子のオンの期間が、第1スイッチング素子のオンの期間と少なくとも一部が重なるように、第4スイッチング素子のオン/オフ動作を行うことで、平滑コンデンサから供給される放電灯への正方向の電流を制御し、入力電圧が負のとき、第4スイッチング素子をオフとし、第3スイッチング素子のオンの期間が、第2スイッチング素子がオンの期間と少なくとも一部が重なるように、第3スイッチング素子のオン/オフ動作を行うことで、平滑コンデンサから放電灯へ供給される負方向の電流を制御する動作Aと、
(B)第1及び第2スイッチング素子のうち、一方の素子がオフのときは他方の素子をオンとし、入力電圧が正のとき、第4スイッチング素子をオフとし、第3スイッチング素子のオンの期間が、第2スイッチング素子がオンの期間と少なくとも一部が重なるように、第3スイッチング素子のオン/オフ動作を行うことで、平滑コンデンサから放電灯へ供給される負方向の電流を制御し、入力電圧が負のとき、第3スイッチング素子をオフとし、第4スイッチング素子のオンの期間が、第1スイッチング素子のオンの期間と少なくとも一部が重なるように、第4スイッチング素子のオン/オフ動作を行うことで、平滑コンデンサから放電灯へ供給される正方向の電流を制御する動作Bと、の二つの動作を、入力電圧が正のときは第1スイッチング素子のオンデューティの値、入力電圧が負のときは第2スイッチング素子のオンデューティの値、に基づいて選択して行うことを特徴とする。
【0007】
ここで、入力電圧は、前記第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の接続点から前記第1整流素子と第2整流素子の接続点へと向う方向を正とした。
また、放電灯へ流れる電流は、第1、2スイッチングの接続点から第3、4スイッチング素子の接続点へ向う方向を正とした。
上記の放電灯用電子安定器において、前記制御手段は、入力電圧が正のときは前記第1スイッチング素子のオンデューティの値が、入力電圧が負のときは第2スイッチング素子のオンデューティの値が、予め定められた閾値以上のとき動作A、該閾値未満のとき動作Bを選択し、該閾値は前記放電灯に十分な電力を供給できる値に設定されていることが好適である。
上記の放電灯用電子安定器において、前記閾値は50%に設定されていることが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の放電灯用電子安定器によれば、昇圧動作を行う第1または第2スイッチング素子のオンデューティを可変にして、入力電圧の昇圧を行い、該オンデューティに基づいて、放電灯への電流供給のタイミングを制御しているため、入力力率を改善しつつ、放電灯へ高い出力電力を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
図2は本発明の実施形態にかかる放電灯用電子安定器の概略構成図である。図2の放電灯用電子安定器10は、交流電源12からの入力電圧を整流、昇圧するためのコンバータ回路部14と、放電灯16へ矩形波状の出力電圧を供給するインバータ回路部18と、コンバータ回路部14およびインバータ回路部18の電圧/電流情報を検知するための検知手段20と、コンバータ回路部14とインバータ回路部18に含まれるスイッチング素子のスイッチング制御を行う制御手段22とを備え、コンバータ回路部14とインバータ回路部18は一部のスイッチング素子を共用することで、合計4石のスイッチング素子を用いて構成されている。
【0010】
コンバータ回路部14は、第1スイッチング素子24−1と第2スイッチング素子24−2の直列回路と、第1ダイオード26−1(第1整流素子)と第2ダイオード26−2(第2整流素子)の直列回路とが、平滑コンデンサ28に並列に接続されている。ここで、第1スイッチング素子24−1側と第1ダイオード26−1側とは同じ側となるように接続されている。第1スイッチング素子24−1と第2スイッチング素子24−2の接続点と、第1ダイオード26−1と第2ダイオード26−2の接続点が、第1インダクタ30を介して、交流電源12に接続されるという構成となっている。
一方、インバータ部18は、第3スイッチング素子24−3と第4スイッチング素子24−4の直列回路が、第3スイッチング素子24−3側が第1スイッチング素子24−1と同じ側にくるように、平滑コンデンサ28に並列に接続されている。そして、第1スイッチング素子24−1と第2スイッチング素子24−2の接続点と、第3スイッチング素子24−3と第4スイッチング素子の接続点24−4とが、第2インダクタ32を介して放電灯16に接続されるという構成となっている。
【0011】
本実施形態では第1〜第4スイッチング素子24−1〜24−4としてFETを用い、また、寄生ダイオード34−1〜34−4がそれぞれのスイッチング素子24−1〜24−4に逆並列に接続されている。
上記のような回路構成のもとで、検知手段20は、上記各回路部の電流値、及び電圧値を検知し、検知手段20によって検知した信号を制御手段22へと送り、制御手段22はその信号に基づいて、スイッチング素子24−1〜24−4のスイッチング動作の制御を行う。つまり、制御手段22では、検知された情報を基に、各スイッチング素子のオンデューティ(スイッチング周期の長さに対するオン期間の長さの比)を決定する。つまり、各スイッチング素子は、所定のスイッチング周波数で駆動され、制御手段20からの制御信号によりそれぞれのオンデューティが制御される。また本実施形態では制御手段22としてDSP(デジタルシグナルプロセッサ)を用いて構成されている。
【0012】
まず、交流電源からの入力電圧が正(以下では、入力電圧の方向を前記第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の接続点から前記第1整流素子と第2整流素子の接続点へと向う方向を正とする。)の半サイクルの期間では、従来の昇圧チョッパ回路と同じ原理で、コンバータ回路部14の第1スイッチング素子24−1のオン/オフによって入力電圧の昇圧を行う。つまり、第1スイッチング素子24−1がオンのとき、第1インダクタ30にエネルギーを蓄積し、オフのときに平滑コンデンサ28へ蓄積されたエネルギーを放出する。第1スイッチング素子24−1のオンデューティは、検知手段20によって検知された入力電圧の瞬時値、及びコンデンサ両端の直流電圧、入力電流に基づいて決定され、コンデンサ両端の直流電圧を一定値に保ち、また入力電流が入力電圧と同じ略正弦波状となるようにして入力力率の改善を行っている。また、入力電圧が負のサイクルの期間では、第2スイッチング素子のオン/オフ動作によって同様に入力電圧の昇圧が行われる。
【0013】
インバータ回路部18では、平滑コンデンサ28から放電灯16へ矩形波状の出力電流を供給するために、第4スイッチング素子24−4は第1スイッチング素子24−1に、第4スイッチング素子24−4のオン期間と第1スイッチング素子24−1のオン期間とが少なくとも一部が重なるように、同期してスイッチング動作を行い、同様に、第3スイッチング素子24−3は第2スイッチング素子24−2に、第3スイッチング素子24−3のオン期間と第2スイッチング素子24−2のオン期間とが少なくとも一部が重なるように、同期してスイッチング動作を行う。つまり、第1スイッチング素子24−1と第4スイッチング素子24−4がペアとなり、同時にオンのときに放電灯に正方向(ここで、第1、2スイッチングの接続点から第3、4スイッチング素子の接続点へ向う方向を正とした。以下同じ)の電流を流し、一方第2、3スイッチング素子24−2、24−3が同時にオンのとき、負の方向の電流を供給する。
また、インバータ回路部18の第4スイッチング素子24−4(もしくは第3スイッチング素子24−3)のオンデューティは、放電灯16への出力電流が適切な値になるように制御手段22によって決定される。つまり、インバータ回路部18は降圧チョッパとしての働きも担っている。
【0014】
本実施形態における特徴的な部分は、放電灯16への出力動作のタイミングを昇圧動作を行っている第1及び第2スイッチング素子(入力電圧が正の半サイクル期間においては第1スイッチング素子24−1、負の半サイクル期間においては第2スイッチング素子24−2)のオンデューティに基づいて決定することにある(図3参照)。つまり、昇圧動作を行うスイッチング素子のオンデューティが、あらかじめ設定された閾値以上のときは第1インダクタ28にエネルギーを貯えている期間に放電灯16へ電流を供給する動作A(図3のモードAおよびA’)を行い、閾値未満のときは平滑コンデンサ28へエネルギーを放出している期間に放電灯16へ電流を供給する動作B(図3のモードBおよびB’)を行うよう制御手段22によって制御される。
【0015】
以上が本実施形態の概略構成であり、以下にさらに詳細に本実施形態の説明を行う。
図4、5を参照してコンバータ回路部14の動作を説明する。コンバータ回路部14は、入力電圧が正の半サイクルの期間においては、第1スイッチング素子24−1のスイッチング動作によって、負のときは第2スイッチング素子24−2の動作によって昇圧動作を行っている。
まず、入力電圧が正の半サイクルの期間を考える。図4(a)に示すように第1スイッチング素子24−1がオンのとき、交流電源12、第1インダクタ30、第1ダイオード26−1、第1スイッチング素子24−1により形成される閉回路に電流が流れ、第1インダクタ30にエネルギーが貯えられる。第1スイッチング素子がオフのときは、図4(b)に示すように、交流電源12、第1インダクタ30、第1ダイオード26−1、平滑コンデンサ28、第2スイッチング素子24−2(もしくはその寄生ダイオード)を通る閉回路を電流が流れ、第1インダクタ30から平滑コンデンサ28にエネルギーが放出される。
同様に入力電圧が負の半サイクルの期間においては、第2スイッチング素子24−2がオンのとき、図5(a)に示すように、交流電源12、第2スイッチング素子24−2、第2ダイオード26−2、第1インダクタ30により形成される閉回路に電流が流れ、第1インダクタ30にエネルギーが貯えられる。第2スイッチング素子24−2がオフのときは、図5(b)に示すように、交流電源12、第1スイッチング素子24−1(もしくはその寄生ダイオード)、平滑コンデンサ28、第2整流素子26−2、第1インダクタ30、により形成される閉回路に電流が流れ、オン期間に貯えた第1インダクタ30のエネルギーが平滑コンデンサ28に供給される。
【0016】
ここで、本実施形態では、入力電圧が正の半サイクルの期間において、第2スイッチング素子24−2は昇圧動作に関しては何の働きも行っていないが、後述するようにインバータ回路部14の第3および第4スイッチング素子のスイッチング動作との関係で、第1スイッチング素子24−1がオフのときに第2スイッチング素子24−2をオンとしている。同様に入力電圧が負の半サイクルの期間においては、第2スイッチング素子24−2がオフのときに、昇圧動作と関係ない第1スイッチング素子24−1をオンとしている。
このようにコンバータ回路部では、入力電力が正の半サイクルの期間のときは第1スイッチング素子のオンデューティを、負の半サイクルの期間のときは第2スイッチング素子のオンデューティを、図3に示したように、入力電圧の瞬時値に応じて変更することで、平滑コンデンサ28両端の直流電圧が一定になるよう制御している。
【0017】
本実施形態の特徴的な部分は、入力電圧の昇圧動作を行う第1及び第2スイッチング素子のオンデューティーの値に応じて、放電灯へ電流を供給するタイミングを変更することである。つまり、入力電圧が正の半サイクルの期間において、図3に示すように、昇圧動作を行っている第1スイッチング素子のオン期間に合わせて第4スイッチング素子をオンすることで放電灯に正方向の電流を供給する電流供給モードA(図6(a)参照)と、第1スイッチング素子のオフ期間に第2スイッチング素子、第3スイッチング素子をオンにして放電灯に負方向の電流を供給する電流供給モードB(図7(a)参照)とを、第1スイッチング素子のオンデューティ値に応じて切り替える。同様に、入力電圧が負の半サイクルの期間において、昇圧動作を行っている第2スイッチング素子のオン期間に合わせて第3スイッチング素子をオンにして放電灯へ負方向の電流を供給する電流供給モードA’(図6(b)参照)と、第2スイッチング素子のオフ期間に、第1及び第4スイッチング素子をオンとして放電灯に正方向の電流を供給する電流供給モードB’(図7(b)参照)とを、第2スイッチング素子のオンデューティ値に応じて切り替える。
【0018】
入力電圧が正の半サイクル期間において、図3に示したように、電流供給モードAでは、第1スイッチング素子24−1がオン、第2スイッチング素子24−2がオフ、第3スイッチング素子24−3がオフ、第4スイッチング素子24−4がオンとなる。このとき、図6(a)に示したように、コンバータ回路部は、交流電源12、第1インダクタ30、第1整流素子26−1、第1スイッチング素子24−1を通る閉回路を通る電流が流れ、第1インダクタ30にエネルギーを貯えている状態である。インバータ回路部は平滑コンデンサ28、第1スイッチング素子24−1、放電灯16、第2インダクタ32、第4スイッチング素子24−4で形成される閉回路により、平滑コンデンサ28から放電灯16へ正方向の出力電流が供給される。
【0019】
一方、図3に示した電流供給モードBでは、第1スイッチング素子24−1がオフ、第2スイッチング素子24−2がオン、第3スイッチング素子24−3がオン、第4スイッチング素子24−4がオフとなる。このとき、図7(a)に示したように、コンバータ回路部は、交流電源12、第1コンダクタ30、第1整流素子26−1、平滑コンデンサ28、第2スイッチング素子24−2、による閉回路を電流が流れ、第1インダクタ30に貯えられたエネルギーを、平滑コンデンサ28に放出している。一方、インバータ回路部は平滑コンデンサ28、第3スイッチング素子24−3、第2インダクタ32、放電灯16、第2スイッチング素子24−2で形成される閉回路により、平滑コンデンサ28から放電灯16へ負方向の出力電流が供給される。
【0020】
また、入力電圧が負の半サイクルの期間において、図3に示すように、電流供給モードA’では第1スイッチング素子24−1がオフ、第2スイッチング素子24−2がオン、第3スイッチング素子24−3がオン、第4スイッチング素子24−4がオフとなる。このとき、図6(b)に示したように、コンバータ回路部では交流電源12、第2スイッチング素子24−2、第2ダイオード26−2、第1インダクタ30を通る閉回路を電流が流れ、インバータ回路部では、平滑コンデンサ28、第3スイッチング素子24−3、第2インダクタ32、放電灯16、第2スイッチング素子24−2により形成される閉回路を電流が流れ、平滑コンデンサ28から放電灯16へ負方向の電流が供給される。
【0021】
一方、電流供給モードB’では、図3に示すように、第1スイッチング素子24−1がオン、第2スイッチング素子24−2がオフ、第3スイッチング素子24−3がオフ、第4スイッチング素子24−4がオンとなる。このとき、図7(b)に示したように、コンバータ回路部では、交流電源12、第1スイッチング素子24−1、平滑コンデンサ28、第2ダイオード26−2、第1インダクタ30を通る閉回路を電流が流れ、平滑コンデンサ28に第1インダクタ30からのエネルギーが放出される。インバータ回路部では平滑コンデンサ28、第1スイッチング素子24−1、放電灯16、第2インダクタ32、第4スイッチング素子24−4を通る閉回路に電流が流れ、平滑コンデンサ28から放電灯16に正方向の電流が供給される。
【0022】
以上のように、電流供給モードA,A’では、コンバータ回路部が第1インダクタにエネルギーを貯えている状態のときに、インバータ回路部が放電灯へ出力電流を供給し、一方電流供給モードB,B’では、コンバータ回路部が第1インダクタから平滑コンデンサへエネルギーを供給している状態のときに、放電灯へ出力電流を供給している。
本実施形態では、第1スイッチング素子のオンデューティ(入力電圧が負の半サイクルの期間では第2スイッチング素子のオンデューティ)が50%以上のとき、上記電流供給モードA、A’(動作A)を選択し、50%未満のとき電流供給モードB、B’(動作B)を選択している。その結果、放電灯への出力電圧は図8に示したようなものとなる。
【0023】
本実施形態では、以上のように、第1及び第2スイッチング素子のオンデューティに応じて、放電灯への電流供給のタイミングを変えるという構成をとっているため、放電灯へ十分な量の出力電力を供給することができる。つまり、オンデューティの大きい素子に合わせて、第3もしくは第4スイッチング素子をオンにして放電灯へ電流を供給できる状態にするため、平滑コンデンサから放電灯への電流の供給時間を十分に取れる。よって、低出力ランプのみならず、高出力ランプにも対応した放電灯用電子安定器を提供することができる。
また、コンバータ回路側の第1及び第2スイッチング素子のオンデューティを可変としているため、入力電流を入力電圧と同期した略正弦波状に近づけることができ、特許文献1、2に記載された制御法に比べ、高い力率が得られる。
【0024】
上記の実施形態では、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子のうち、一方がオフのときは他方がオンとなるようにし、第1及び第2スイッチング素子のうちオンデューティの大きい方に合わせて、電流供給モードを選んだ。つまり、第1及び第2スイッチング素子のうち、昇圧動作を行っている素子のオンデューティが50%以上のとき、その素子のオン期間に合わせて放電灯へ電流を供給する動作A(電流供給モードA、A’)を選択し、50%未満のときは、昇圧動作を行っている素子のオフ期間(他方の素子のオン期間)に合わせて放電灯へ電流を供給する動作B(電流供給モードB、B’)を選択した。
ただし、電流供給モードを切り替え点となる、オンデューティの閾値の値は上記のように50%に限定されず、放電灯へ十分な電力が供給される値であればよい。例えば、低出力の放電灯に最適な電力供給を行うため、この閾値を60%と設定してもよい。また、放電灯の種別毎に最適な閾値を適宜設定することもできる。
また、電流供給モードA、A’において、第1及び第2スイッチング素子のうち、昇圧動作を行う方の素子がオフのとき、他方をオンにする必要は必ずしもなく、電流供給モードB、B’を選択した時点で、第1及び第2スイッチング素子のうち、昇圧動作を行う方の素子がオフのとき、他方をオンとして、平滑コンデンサから放電灯へ電流を供給可能なようにすればよい。
【0025】
以上のような構成を実験によって検証した。図9がその結果であり、250Wのメタルハライドランプを、入力電圧を100V、平滑コンデンサ両端の電圧を250Vとして点灯させたときの入力電流とランプ電流を示す。結果は、入力力率93%となり高い力率の改善が見られた。
以上説明したように、本発明の電子安定器では、必要なスイッチング素子の数は4石のみであるため、低いコストで製造が可能となる。しかも、一般的な、6石のスイッチング素子を有する電子安定器並の高い力率と電圧利用率を持つ電子安定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】6石のスイッチング素子を有する電子安定器の概略構成図
【図2】本発明の実施形態にかかる電子安定器の概略構成図
【図3】本発明の実施形態にかかる電子安定器のスイッチング動作の説明図
【図4】コンバータ回路部の動作(正の半サイクルの期間)の説明図
【図5】コンバータ回路部の動作(負の半サイクルの期間)の説明図
【図6】放電灯への電流供給時における電流の流れの説明図
【図7】放電灯への電流供給時における電流の流れの説明図
【図8】本発明の実施形態にかかる電子安定器の出力動作の一例を示すグラフ
【図9】本発明の実施形態にかかる電子安定器によるランプ点灯時の入力電流及びランプ電流を示すグラフ
【符号の説明】
【0027】
10 放電灯安定器
12 交流電源
14 コンバータ回路部
16 放電灯
18 インバータ回路部
20 検知手段
22 制御手段
24−1〜24−4 第1〜第4スイッチング素子
26−1、2 第1、第2整流素子
28 平滑コンデンサ
30 第1インダクタ
32 第2インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1整流素子と第2整流素子との直列回路と、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との直列回路とが、第1整流素子側と第1スイッチング素子側が同じ側となるように、平滑コンデンサに並列に接続され、第1整流素子と第2整流素子の接続点と、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の接続点とが第1インダクタを介して交流電源に接続され、前記交流電源からの入力電圧が正の期間では、第1スイッチング素子のオン時に第1インダクタに貯えられたエネルギーを、第1スイッチング素子のオフ時に、前記平滑コンデンサへ放出することで入力電圧の昇圧動作を行い、前記交流電源からの入力電圧が負の期間では、第2スイッチング素子のオン時に第1インダクタに貯えられたエネルギーを、第2スイッチング素子のオフ時に、前記平滑コンデンサへ放出することで入力電圧の昇圧動作を行うことで、入力電圧の整流及び昇圧を行うコンバータ回路部と、
第3スイッチング素子と第4スイッチング素子の直列回路が、第3スイッチング素子側が第1スイッチング素子側となるように、前記平滑コンデンサに並列に接続され、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の接続点と、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子の接続点とが、第2インダクタを介して放電灯に接続され、第4スイッチング素子と第1スイッチング素子とがオンのとき、平滑コンデンサから放電灯へ正方向の電流を供給し、第3スイッチング素子と第2スイッチング素子とがオンのとき、平滑コンデンサから放電灯へ負方向の電流を供給して、放電灯へ略矩形波状の出力電流を供給するインバータ回路部と、
前記各回路部の電圧、電流値情報を検知するための検知手段と、
前記検知手段によって検知した情報に基づいて、前記コンバータ回路部およびインバータ回路部のスイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段によって前記コンバータ回路部は、前記交流電源からの入力電圧が正の期間のとき、前記第1スイッチング素子のオンデューティを交流電源からの入力電圧の瞬時値に応じて変更することで昇圧動作の制御が行われ、入力電圧が負の期間のとき、前記第2スイッチング素子のオンデューティを交流電源からの入力電圧の瞬時値に応じて変更することで昇圧動作の制御が行われ、
さらに前記制御手段は、前記インバータ回路部の放電灯への出力動作として、(A)入力電圧が正のとき、第3スイッチング素子をオフとし、第4スイッチング素子のオンの期間が、第1スイッチング素子のオンの期間と少なくとも一部が重なるように、第4スイッチング素子のオン/オフ動作を行うことで、平滑コンデンサから供給される放電灯への正方向の電流を制御し、入力電圧が負のとき、第4スイッチング素子をオフとし、第3スイッチング素子のオンの期間が、第2スイッチング素子がオンの期間と少なくとも一部が重なるように、第3スイッチング素子のオン/オフ動作を行うことで、平滑コンデンサから放電灯へ供給される負方向の電流を制御する動作Aと、
(B)第1及び第2スイッチング素子のうち、一方の素子がオフのときは他方の素子をオンとし、入力電圧が正のとき、第4スイッチング素子をオフとし、第3スイッチング素子のオンの期間が、第2スイッチング素子がオンの期間と少なくとも一部が重なるように、第3スイッチング素子のオン/オフ動作を行うことで、平滑コンデンサから放電灯へ供給される負方向の電流を制御し、入力電圧が負のとき、第3スイッチング素子をオフとし、第4スイッチング素子のオンの期間が、第1スイッチング素子のオンの期間と少なくとも一部が重なるように、第4スイッチング素子のオン/オフ動作を行うことで、平滑コンデンサから放電灯へ供給される正方向の電流を制御する動作Bと、の二つの動作を、入力電圧が正のときは第1スイッチング素子のオンデューティの値、入力電圧が負のときは第2スイッチング素子のオンデューティの値、に基づいて選択して行うことを特徴とする放電灯用電子安定器。
【請求項2】
請求項1記載の放電灯用電子安定器において、
前記制御手段は、入力電圧が正のときは前記第1スイッチング素子のオンデューティの値が、入力電圧が負のときは第2スイッチング素子のオンデューティの値が、予め定められた閾値以上のとき動作A、該閾値未満のとき動作Bを選択し、該閾値は前記放電灯に十分な電力を供給できる値に設定されていることを特徴とする放電灯用電子安定器。
【請求項3】
請求項2に記載の放電灯用電子安定器において、
前記閾値は50%に設定されていることを特徴とする放電灯用電子安定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−79985(P2006−79985A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264037(P2004−264037)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】