説明

放電点灯装置および照明器具。

【課題】放電開始電圧の低減を図れ且つ長寿命化を図れる放電点灯装置および照明器具を提供する。
【解決手段】気密容器1内の放電ガスに電界を印加して放電プラズマを生成させるための一対の放電用電極(アノード電極2a、カソード電極2b)と、気密容器1内に配置され放電ガス中へ電子を供給可能な電子源10と、気密容器1内での放電の開始を検出する放電検出手段20と、放電検出手段20により放電の開始が検出されたときには電子源10への放電プラズマの粒子の入射を抑制するように電子源10の電位を制御する制御手段30とを備える。電子源10の電子放出部(表面電極17)の表面と電子源10を囲む環状のカソード電極2bの表面とを同一平面上に揃えてある。気密容器1、アノード電極2a、カソード電極2b、電子源10などにより、照明器具用の放電ランプLaを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密容器内に封入されている放電ガスを放電させて放電プラズマを生成する放電点灯装置および照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球の環境問題に対する関心が高まるにつれて、水銀を利用せずに例えばキセノンガスなどの希ガスを放電ガスとして透光性の気密容器内に封入した希ガス蛍光ランプのような無水銀蛍光ランプが各所で研究開発されている。
【0003】
しかしながら、希ガス蛍光ランプは、水銀を利用した従来の蛍光ランプに比べて、効率が低く、従来の蛍光ランプと同等の輝度を得るためには、透光性の気密容器内に配置された一対の放電用電極間により高い放電開始電圧(始動電圧)を印加しなければならないという問題があった。
【0004】
これに対して、放電ガスとしてキセノンガスが封入された透光性の気密容器内に、一対の放電用電極とは別に電界放射型の電子源を配置し、一対の放電用電極間に電圧を印加する前に電子源を駆動して電子を放出させることにより、放電開始電圧を低減する技術が提案されており(例えば、特許文献1参照)、放電開始電圧を半分程度まで低減できることが知られている。ここにおいて、一対の放電用電極と電子源とを備えた放電点灯装置では、一対の放電用電極間の放電プラズマ生成空間の外に電子源を配置することで、放電プラズマに起因したダメージが電子源に発生するのを抑制していた。
【特許文献1】特開2002−150944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の放電プラズマ装置では、放電開始電圧を更に低減するためにより大きな電流を流すと、放電プラズマが電子源の電子放出面に達したり、放電用電極と電子源との間で放電が起こって、電子源の電子放出面に放電プラズマの粒子(例えば、プラスイオンなど)が衝突することにより電子源に損傷が発生し、電子源の寿命が短くなって、結果的に放電点灯装置の寿命が短くなってしまうという懸念があった。
【0006】
そこで、電子源を保護する保護部材として導電性材料により形成された網状体を電子源の電子放出面に対向配置することによって、電子源の電子放出面へのプラスイオンの衝突を抑制することが考えられるが、電子源へのプラスイオンの衝突を抑制するには網状体の網目のサイズを小さくする必要があり、電子源から放出された電子の一部が網状体に衝突したり捕らえられたりし、放電ガスであるキセノンガス中への電子の供給量が減少し、放電開始電圧が高くなってしまう。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、放電開始電圧の低減を図れ且つ長寿命化を図れる放電点灯装置および照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、気密容器内に封入されている放電ガスに電界を印加して放電プラズマを生成させるための少なくとも一対の放電用電極と、気密容器内に配置され放電ガス中へ電子を供給可能な電子源と、気密容器内での放電の開始を検出する放電検出手段と、放電検出手段により放電の開始が検出されたときには電子源の電子放出部への放電プラズマの粒子の入射を抑制するように電子源の電位を制御する制御手段とを備え、一対の放電用電極のうちの少なくとも一方の放電用電極の表面と電子源の電子放出部の表面とを同一平面上に揃えてなることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、気密容器内での放電の開始を検出する放電検出手段と、放電検出手段により放電の開始が検出されたときには電子源の電子放出部への放電プラズマの粒子の入射を抑制するように電子源の電位を制御する制御手段とを備えていることにより、保護部材を設けることなく電子源への放電プラズマの粒子の入射が抑制されるから、放電開始電圧を低減でき且つ長寿命化を図れ、しかも、一対の放電用電極のうちの少なくとも一方の放電用電極の表面と電子源の電子放出部の表面とを同一平面上に揃えてあることにより、電子源から放出される電子を放電プラズマ生成空間へ効率的に供給することができるとともに、放電が開始されるまでは電子源が電子を供給するだけでなく放電用電極としても機能するので、電子源から放出された電子を放電プラズマ生成空間へエネルギロス無く供給することが可能となり、放電開始電圧のより一層の低減を図れる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記一対の放電用電極がアノード電極とカソード電極とであって、前記一方の放電用電極がカソード電極であり、前記制御手段は、前記放電検出手段により放電の開始が検出されるまでは前記電子放出部の電位とカソード電極の電位とを同電位とするように前記電子源の電位を制御し、前記放電検出手段により放電の開始が検出されたときには前記電子放出部の電位をカソード電極の電位よりも高電位とするように前記電子源の電位を制御することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、カソード電極の近傍に配置された前記電子源の前記電子放出部へのプラスイオンの入射を抑制することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記一方の放電用電極が環状に形成され、前記電子源が当該環状の放電用電極の内側に配置されてなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記一方の放電用電極の側方に前記電子源が並設されている場合に比べて、前記電子源から放出される電子を放電プラズマ生成空間へ、より効率的に供給することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記電子源は、前記環状の放電用電極により囲まれた空間の中央に配置されてなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、放電の開始後に放電プラズマの広がる範囲を広くすることが可能となる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記一対の放電用電極がアノード電極とカソード電極とであって、前記一方の放電用電極がアノード電極であり、前記制御手段は、前記放電検出手段により放電の開始が検出されるまでは前記電子源の電子放出部の電位とアノード電極の電位とを同電位とするように前記電子源の電位を制御し、前記放電検出手段により放電の開始が検出されたときには前記電子放出部の電位をアノード電極の電位よりも低電位とするように前記電子源の電位を制御することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、アノード電極の近傍に配置された前記電子源の前記電子放出部への放電プラズマの粒子の入射を抑制することができる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5の発明において、前記放電用電極の対を複数対備え、離間距離の短い対に対して前記電子源が配置されてなることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、離間距離の長い対に対して前記電子源を配置する場合に比べて、放電開始電圧をより低減することができる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6の発明において、前記制御手段は、前記放電用電極間に矩形波電圧を印加させることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、前記放電用電極間に一定の直流電圧を印加する場合に比べて、より低い電力で放電を開始させることが可能となり、低消費電力化を図れる。
【0022】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7の発明において、前記電子源は、下部電極と、下部電極に対向した表面電極と、下部電極と表面電極との間に介在しナノメータオーダの多数の半導体微結晶および各半導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の多数の絶縁膜を有する強電界ドリフト層とを備えた電界放射型電子源からなり、表面電極が前記電子放出部を構成していることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、前記電子源としてフィラメントやスピント型電子源を採用した場合に比べて、前記電子源から放出される電子の初期エネルギが高くなるので、前記放電ガスの電離が起こりやすくなり、放電開始電圧をより確実に低減できる。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の放電点灯装置を備えてなることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、照明器具における放電点灯装置の放電開始電圧の低電圧化を図れる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明では、放電開始電圧を低減でき且つ長寿命化を図れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施形態1)
本実施形態の放電点灯装置は、図1(a)に示すように、気密容器1内に封入されている放電ガス(例えば、Xeガスなど)に電界を印加して放電プラズマを生成させるためのアノード電極2aおよびカソード電極2bと、気密容器1内に配置され放電ガス中へ電子を供給可能な電子源10と、気密容器1内での放電の開始を検出する放電検出手段20と、放電検出手段20により放電の開始が検出されたときには電子源10への放電プラズマの粒子(ここでは、プラスイオン)の入射を抑制するように電子源10の電位を制御する制御手段30とを備えている。ここにおいて、本実施形態では、アノード電極2aとカソード電極2bとが一対の放電用電極を構成している。また、本実施形態では、表面電極17が電子放出部を構成している。
【0028】
気密容器1は、透光性を有する材料(例えば、ガラス、透光性セラミックなど)により円筒状に形成されており、長手方向の一端部(図1(a)における左端部)にアノード電極2aが配置され、長手方向の他端部(図1(a)における右端部)にカソード電極2bが配置されている。すなわち、アノード電極2aとカソード電極2bとが気密容器1内において気密容器1の長手方向に離間して配置されている。なお、本実施形態では、気密容器1の内面に、放電ガスであるXeガスの励起により発生した紫外線によって励起されて発光する蛍光体層(図示せず)を設けてあり、気密容器1、アノード電極2a、カソード電極2b、電子源10などにより希ガス蛍光ランプを構成しているが、蛍光体層は必ずしも設ける必要はなく、蛍光体層を設けていない場合には、Xeガスの励起により発生した紫外線や可視光が気密容器1を通して放射されることとなる。
【0029】
電子源10は、弾道電子面放出型電子源(Ballistic electronSurface-emitting Device:BSD)と呼ばれている電界放射型電子源であり、図2(a)に示すように、矩形板状の絶縁性基板(例えば、絶縁性を有するガラス基板、絶縁性を有するセラミック基板など)14の一表面上に金属膜(例えば、タングステン膜など)からなる下部電極15が形成され、下部電極15上に強電界ドリフト層16が形成され、強電界ドリフト層16上に導電性薄膜(例えば、金薄膜)よりなる表面電極17が形成されている。なお、表面電極17を構成する導電性薄膜の膜厚は10〜15nm程度に設定することが望ましいが、当該導電性薄膜は単層膜に限らず多層膜でもよい。なお、本実施形態における電子源10では、下部電極15と強電界ドリフト層16と表面電極17とで表面電極17を通して電子を放出する電子源素子10aを構成している。
【0030】
電子源素子10aの強電界ドリフト層16は、図2(b)に示すように、少なくとも、下部電極15の表面側に列設された柱状の多結晶シリコンのグレイン(半導体結晶)51と、グレイン51の表面に形成された薄いシリコン酸化膜52と、グレイン51間に介在する多数のナノメータオーダのシリコン微結晶(半導体微結晶)63と、各シリコン微結晶63の表面に形成され当該シリコン微結晶63の結晶粒径よりも小さな膜厚の絶縁膜である多数のシリコン酸化膜64とから構成されている。ここに、各グレイン51は、下部電極15の厚み方向に延びている(つまり、絶縁性基板14の厚み方向に延びている)。
【0031】
上述の電子源素子10aから電子を放出させるには、表面電極17が下部電極15に対して高電位側となるように表面電極17と下部電極15との間に駆動電圧を駆動用の電源6(図1(a)参照)により印加すれば、下部電極15から強電界ドリフト層16へ注入された電子が強電界ドリフト層16をドリフトし表面電極17を通して放出される。
【0032】
ここに、上述の電子源素子10aでは、表面電極17と下部電極15との間に印加する駆動電圧を10〜20V程度の低電圧としても電子を放出させることができる。なお、本実施形態の電子源素子10aは、電子放出特性の真空度依存性が小さく且つ電子放出時にポッピング現象が発生せず安定して電子を高い電子放出効率で放出することができるという特徴を有している。
【0033】
上述の電子源素子10aの基本構成は周知であり、次のようなモデルで電子放出が起こると考えられる。すなわち、表面電極17と下部電極15との間に表面電極17を高電位側として電圧を印加することにより、下部電極15から強電界ドリフト層16へ電子eが注入される。一方、強電界ドリフト層16に印加された電界の大部分はシリコン酸化膜64にかかるから、注入された電子eはシリコン酸化膜64にかかっている強電界により加速され、強電界ドリフト層16におけるグレイン51の間の領域を表面に向かって図2(b)中の矢印の向き(図2(b)における上向き)へドリフトし、表面電極17をトンネルし放出される。しかして、強電界ドリフト層16では下部電極15から注入された電子がシリコン微結晶63でほとんど散乱されることなくシリコン酸化膜64にかかっている電界で加速されてドリフトし、表面電極17を通して放出され(弾道型電子放出現象)、強電界ドリフト層16で発生した熱がグレイン51を通して放熱されるから、電子放出時にポッピング現象が発生せず、安定して電子を放出することができる。
【0034】
なお、上述の強電界ドリフト層16では、シリコン酸化膜64が絶縁膜を構成しており絶縁膜の形成に酸化プロセスを採用しているが、酸化プロセスの代わりに窒化プロセスないし酸窒化プロセスを採用してもよく、窒化プロセスを採用した場合には各シリコン酸化膜52,64がいずれもシリコン窒化膜となり、酸窒化プロセスを採用した場合には各シリコン酸化膜52,64がいずれもシリコン酸窒化膜となる。
【0035】
本実施形態の放電点灯装置では、アノード電極2aとカソード電極2bとの間に電圧を供給する電源(以下、第1の電源と称す)5と、電子源10の表面電極17と下部電極15との間に電圧を供給する電源(以下、第2の電源と称す)6とを制御手段30によって制御するように構成されており、制御手段30によって第2の電源6から電子源10の表面電極17と下部電極15との間に表面電極17側を高電位とする直流電圧を印加させることにより、電子源10から電子が放出される一方で、制御手段30によって第1の電源5からアノード電極2aとカソード電極2bとの間にアノード電極2aを高電位側とする電圧を印加させるので、電子源10から放出された電子は、アノード電極2aとカソード電極2bとの間の電界によって加速され、アノード電極2aとカソード電極2bとの間の放電プラズマ生成空間3中に存在する放電ガスのガス分子に衝突する。ここで、ガス分子に衝突する電子が持っているエネルギが放電ガスの電離エネルギよりも大きければ、放電ガスが励起されて電離するから、このような過程が繰り返されることによってアノード電極2aとカソード電極2bとの間に流れる電流が急激に増大し放電プラズマが生成される。なお、電子源10から放出された電子がアノード電極2aとカソード電極2bとの間の電界により得るエネルギは、対をなすアノード電極2aとカソード電極2bとの間の電界強度と放電ガス中における電子の平均自由行程との積に依存し、電界強度は両電極2a,2b間に印加される電圧と両電極2a,2b間の距離とに依存する一方で、平均自由行程は気密容器1内の放電ガスの種類やガス圧に依存するから、電子源10から放出される電子の初期エネルギによらず、放電点灯装置の仕様によってほぼ決まる。
【0036】
ところで、上述の説明から分かるようにアノード電極2aとカソード電極2bとの間の電流−電圧特性が放電開始前後で大きく変化する(放電の開始前には電流がほとんど流れていないのに対し、放電の開始後は電流が増加し且つ電圧が低下する)。すなわち、放電が開始されると、アノード電極2aとカソード電極2bとの間のインピーダンス、電流、電圧それぞれが急激に変化する。そこで、本実施形態における放電検出手段20は、アノード電極2aとカソード電極2bとの間のインピーダンスの変化に基づいて放電の開始を検出するようにしてある。なお、放電検出手段20は、アノード電極2aとカソード電極2bとの間のインピーダンスの変化に限らず、電流の変化もしくは電圧の変化に基づいて放電の開始を検出するようにしてもよく、いずれにしても、アノード電極2aとカソード電極2bとの間の電気的特性の変化により放電の開始を確実に検出することができる。
【0037】
また、制御手段30は、上述のように、放電検出手段20により放電の開始が検出されたときに電子源10の表面電極17への放電プラズマの粒子(ここでは、プラスイオン)の入射を抑制するように電子源10の電位を制御する。なお、制御手段30は、例えば、マイクロコンピュータなどにより構成すればよい。
【0038】
ここで、制御手段30について、より具体的に説明すれば、制御手段30は、放電の開始前には、電子源10の表面電極17と下部電極15との間に表面電極17を高電位側として第2の電源6から電圧を印加させるとともに、アノード電極2aとカソード電極2bとの間にアノード電極2aを高電位側として第1の電源5から電圧を印加させるが、この際、図3(a)に示すように、表面電極17の電位とカソード電極2bの電位とを同電位とするように各電源5,6を制御する。したがって、アノード電極2aの電位に対して電子源10の表面電極17の電位が低電位となるので、放電の開始前に電子源10から放出された電子をアノード電極2aとカソード電極2bとの間の放電プラズマ生成空間3へ効率良く供給することができる。
【0039】
また、制御手段30は、放電検出手段20により放電の開始が検出されると(つまり、放電後には)、図3(b)に示すように電子源10の電位をカソード電極2bの電位よりも高くするように、表面電極17および下部電極15の電位を制御する。したがって、電子源10の表面電極17へのプラスイオンの入射を抑制することができ、放電プラズマのプラスイオンが電子源10の表面電極17へ入射することによる電子源10のダメージの発生を抑制することができる。ここで、電子源10の表面電極17の電位をプラズマ電位に近い値まで高くすることで、プラスイオンの入射によるダメージをより低減することが可能となる。なお、図3(b)に示した例では、表面電極17と下部電極15とを同電位としているので、電子源10から電子は放出されない。言い換えれば、放電開始後には電子源10の駆動が停止される。
【0040】
ところで、本実施形態の放電点灯装置では、アノード電極2aが円形状の形状に形成されるとともに、カソード電極2bが図1(b)に示すように環状(図示例では、円環状)に形成されており、アノード電極2aおよびカソード電極2bが円筒状の気密容器1と同心的に配置され、電子源10がカソード電極2bの内側に配置されている。ここにおいて、本実施形態の放電点灯装置では、電子源10の表面電極17の表面とカソード電極2bにおけるアノード電極2a側の表面とが同一平面上に揃うように電子源10とカソード電極2bとの相対的な位置関係を設定してあり、電子源10から放出される電子を放電プラズマ生成空間3へ効率的に供給することができるとともに、放電が開始されるまでは電子源10が電子を供給するだけでなくカソード電極2bとしても機能するので、電子源10から放出された電子を放電プラズマ生成空間3へエネルギロス無く供給することが可能となり、放電開始電圧のより一層の低減を図れる。なお、表面電極17の表面とカソード電極2bの表面とは略面一であればよい。
【0041】
以上説明した本実施形態の放電点灯装置では、気密容器1内での放電の開始を検出する放電検出手段20と、放電検出手段20により放電の開始が検出されたときには電子源10の表面電極17へのプラスイオンの入射を抑制するように電子源10の電位を制御する制御手段30とを備えていることにより、保護部材を設けることなくカソード電極2bの近傍に配置された電子源10の表面電極17へのプラスイオンの入射が抑制されるから、放電開始電圧を低減でき且つ長寿命化を図れる。しかも、カソード電極2bが環状に形成され、電子源10がカソード電極2bの内側に配置されていることにより、カソード電極2bの側方に電子源10が並設されている場合に比べて、電子源10から放出された電子を放電プラズマ生成空間3へ、より効率的に供給することができる。
【0042】
また、本実施形態の放電点灯装置では、電子源10がカソード電極2bにより囲まれた空間の中央に配置されているので、放電の開始後に放電プラズマの広がる範囲を広くすることが可能となり、放電ガスの励起により発生した紫外線を気密容器1の内面に設けてある上記蛍光体層へ効率良く照射することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の放電点灯装置では、電子源10として、上述の弾道電子面放出型電子源を採用しているので、放電ガス中でも安定して動作可能で、数eV以上の比較的高い初期エネルギを有する電子を放出することができ、電子源10としてフィラメントやスピント型電子源を採用した場合に比べて、電子源10から放出される電子の初期エネルギが高くなるから、放電ガスの電離が起こりやすくなり、放電開始電圧をより確実に低減できる。
【0044】
ところで、上述の実施形態では、一対の放電用電極(アノード電極2a,カソード電極2b)の両方を気密容器1内に配置してあるが、一対の放電用電極の一方あるいは両方を気密容器1の外部に配置するようにしてもよい。ここで、環状のカソード電極2bを気密容器1の外部に配置する場合には、カソード電極2bの内側に気密容器1が配置され、気密容器1の内側に電子源10が配置されるようにすればよい。なお、このような配置の場合も、放電が開始されるまでは電子源10もカソード電極として機能するが、放電の開始後に電子源10の表面電極17の電位をカソード電極2bの電位よりも高電位とすることで、電子源10の表面電極17へのプラスイオンの入射を抑制することができる。
【0045】
また、上述の実施形態では、カソード電極2bを環状の形状としてカソード電極2bの内側に電子源10を配置してあるが、カソード電極2bではなくアノード電極2aを環状の形状としてアノード電極2aの内側に電子源10を配置するようにし、放電の開始後に電子源10の表面電極17の電位をアノード電極2aの電位よりも低電位とするようにしてもよい。また、アノード電極2aとカソード電極2bとの両方を環状の形状として両方それぞれの内側に電子源10を配置するようにしてもよく、この場合には、放電プラズマ生成空間3への電子の供給量を増加させることができ、より確実に放電開始電圧を低減することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、一対の放電用電極がアノード電極2aとカソード電極2bとで構成されており、第1の電源5からアノード電極2aとカソード電極2bとの間に直流電圧を印加させるようにしてあるが、一対の放電用電極間に印加する電圧は、直流、交流のいずれでもよく、交流に限らず直流についても、矩形波電圧、三角波電圧などの周期波電圧でもよい。ここで、制御手段30が、第1の電源5からアノード電極2a・カソード電極2b間に矩形波電圧を印加させるようにすれば、アノード電極2a・カソード電極2b間に一定の直流電圧を印加する場合に比べて、より低い電力で放電を開始させることが可能となり、放電ランプLaの所望の輝度をより低い電力で得ることが可能となり、発光効率の向上を図れるととともに低消費電力化を図れる。また、放電用電極間に印加する電圧と、電子源10の表面電極17と下部電極15との間に印加する電圧との両方を矩形波電圧とし、両矩形波電圧の少なくとも立ち上がりを同期させることによって、より低い電力で放電を開始させることが可能となる。なお、交流の矩形波電圧を印加する場合には、一対の放電用電極の両方を環状の形状として、各放電用電極それぞれの内側に電子源10を配置することが望ましい。
【0047】
(実施形態2)
本実施形態の放電プラズマ装置の基本構成は実施形態1と略同じであり、放電用電極の対として、図3に示すように、気密容器1の長手方向(図3における左右方向)に離間したアノード電極2aとカソード電極2bとの対の他に、上記長手方向に直交する一方向(図3における上下方向であって気密容器1の径方向)に離間したアノード電極2aとカソード電極2bとの対を備えており、離間距離の短い対に対して電子源10が配置されている点などが相違する。すなわち、本実施形態では、上記長手方向に直交する一方向に離間したアノード電極2aとカソード電極2bとの対に関して、カソード電極2bを環状の形状として、当該環状のカソード電極2bの内側に電子源10を配置してある。ここにおいて、上記長手方向に直交する一方向に離間したアノード電極2aとカソード電極2bとの対には、第1の電源5から電圧が印加され、上記長手方向に離間したアノード電極2aとカソード電極2bとの対には、別の電源(以下、第3の電源と称す)7から電圧が印加されるようにしてあり、制御手段30が各電源5〜7を各別に制御できるようになっている。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
しかして、本実施形態の放電点灯装置では、放電用電極の対を2対備え、離間距離の短い対に対して電子源10を配置してあるので、離間距離の長い対に対して電子源10を配置する場合に比べて、電子源10から放出された電子が放電用電極間の電界から得るエネルギが高くなるので、放電開始電圧をより低減することができる。
【0049】
ところで、上記各実施形態の放電点灯装置は、例えば、図5に示すような照明器具に利用することができる。図5に示した照明器具は、いわゆる富士型の照明器具であって、天井面のような施工面に取り付けられる器具本体100と、器具本体100の長手方向の両端部にそれぞれ設けられた各一対のソケット102と、器具本体100に器具本体100を覆うように取り付けられる断面V字形の反射板103と、器具本体100に長手方向が一致する形でそれぞれソケット102間に保持される2本の直管形のランプ104と、2本のランプ104を点灯させる点灯装置(図示せず)とを備えている。ここにおいて、ランプ104として、上述の放電ランプLaを用い、点灯装置に、放電検出手段20、制御手段30などを設けることにより、上述の放電点灯装置を備えた照明器具を実現することができ、照明器具における放電点灯装置の放電開始電圧の低電圧化を図れる。
【0050】
また、上記各実施形態では、気密容器1内に封入するガスとしてXeガスを採用しているが、気密容器1内に封入するガスは、Xeガスに限定するものではなく、例えば、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Nガス、COガス、Hg蒸気や、それらの混合ガスなどのようにエネルギを供給することで放電を起こすガスであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態1を示し、(a)は放電点灯装置の概略構成図、(b)はカソード電極と電子源との位置関係の説明図である。
【図2】同上に用いる電子源を示し、(a)は概略断面図、(b)は動作説明図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】実施形態2の放電点灯装置の概略構成図である。
【図5】照明器具を示し、(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 気密容器
2a アノード電極(放電用電極)
2b カソード電極(放電用電極)
10 電子源(電界放射型電子源)
15 下部電極
16 強電界ドリフト層
17 表面電極(電子放出部)
20 放電検出手段
30 制御手段
63 シリコン微結晶(半導体微結晶)
64 シリコン酸化膜(絶縁膜)
La 放電ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密容器内に封入されている放電ガスに電界を印加して放電プラズマを生成させるための少なくとも一対の放電用電極と、気密容器内に配置され放電ガス中へ電子を供給可能な電子源と、気密容器内での放電の開始を検出する放電検出手段と、放電検出手段により放電の開始が検出されたときには電子源の電子放出部への放電プラズマの粒子の入射を抑制するように電子源の電位を制御する制御手段とを備え、一対の放電用電極のうちの少なくとも一方の放電用電極の表面と電子源の電子放出部の表面とを同一平面上に揃えてなることを特徴とする放電点灯装置。
【請求項2】
前記一対の放電用電極がアノード電極とカソード電極とであって、前記一方の放電用電極がカソード電極であり、前記制御手段は、前記放電検出手段により放電の開始が検出されるまでは前記電子放出部の電位とカソード電極の電位とを同電位とするように前記電子源の電位を制御し、前記放電検出手段により放電の開始が検出されたときには前記電子放出部の電位をカソード電極の電位よりも高電位とするように前記電子源の電位を制御することを特徴とする請求項1記載の放電点灯装置。
【請求項3】
前記一方の放電用電極が環状に形成され、前記電子源が当該環状の放電用電極の内側に配置されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放電点灯装置。
【請求項4】
前記電子源は、前記環状の放電用電極により囲まれた空間の中央に配置されてなることを特徴とする請求項3記載の放電点灯装置。
【請求項5】
前記一対の放電用電極がアノード電極とカソード電極とであって、前記一方の放電用電極がアノード電極であり、前記制御手段は、前記放電検出手段により放電の開始が検出されるまでは前記電子源の電子放出部の電位とアノード電極の電位とを同電位とするように前記電子源の電位を制御し、前記放電検出手段により放電の開始が検出されたときには前記電子放出部の電位をアノード電極の電位よりも低電位とするように前記電子源の電位を制御することを特徴とする請求項1記載の放電点灯装置。
【請求項6】
前記放電用電極の対を複数対備え、離間距離の短い対に対して前記電子源が配置されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の放電点灯装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記放電用電極間に矩形波電圧を印加させることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の放電点灯装置。
【請求項8】
前記電子源は、下部電極と、下部電極に対向した表面電極と、下部電極と表面電極との間に介在しナノメータオーダの多数の半導体微結晶および各半導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さな膜厚の多数の絶縁膜を有する強電界ドリフト層とを備えた電界放射型電子源からなり、表面電極が前記電子放出部を構成していることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の放電点灯装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の放電点灯装置を備えてなることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−329094(P2007−329094A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161420(P2006−161420)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】