説明

放電破壊用カートリッジの製造方法および放電破壊用カートリッジ

【課題】爆発性の破壊用物質の充填量を容易に調整できる。
【解決手段】破壊容器2内に挿入配置した金属細線4に、所定量の電気エネルギーを供給することにより、金属細線4を急激に溶融気化させ、金属細線4の溶融気化現象に伴って、破壊容器2内で金属細線4に充填した爆発性の破壊用物質5を爆発させて被破壊物を破壊する放電破壊用カートリッジ1を製造するに際し、破壊容器2内に、破壊容器2の内半径より大きい外径で複数の略球状のスペーサ11を挿入して爆発性の破壊用物質5の充填量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電破壊用カートリッジの製造方法および放電破壊用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された放電破壊用カートリッジは、図6に示すように、破壊容器2内に挿入配置した一対の電極3A,3B間に溶融気化物質である金属細線4を接続し、電極3A,3Bを介して金属細線4に所定量の電気エネルギーを電極3A,3B間に供給することにより、金属細線4を急激に溶融気化させ、金属細線4の溶融気化現象に伴う衝撃力を、金属細線4の周囲に充填された破壊用物質5を介して被破壊物を破壊するように構成されている。
【特許文献1】特開平11−256975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来では、金属細線4の衝撃力を伝達する破壊用物質にゼリーや水などを使用していたが、近年、爆発性の破壊用物質5を使用して大きい破壊力を得るものが提案されている。
【0004】
爆発性の破壊用物質5を充填した放電破壊用カートリッジを使用する場合、爆発性の破壊用物質5の充填量を調整することにより、衝撃力を制御することができる。たとえばコンクリート建造物のリニューアルなどにおいて、脆弱化した破壊領域を破壊し、破壊領域以外の健全な部分に衝撃力の影響が及ばないように、衝撃力を調整することができる。
【0005】
爆発性の破壊用物質5の充填量を調整する場合、破壊容器の径や高さを変更して容量を調整する方法が考えられるが、必要な容量ごとに破壊容器を準備しなれけばならない。また破壊容器の外径が変更されると、放電破壊用カートリッジを被破壊物に装填するための装着穴を内径の変更も必要となり、別に穿孔工具を用意する必要があるなど、準備に手間がかかることになる。
【0006】
本発明は上記問題点を解決して、爆発性の破壊用物質の充填量を容易に調整することができる放電破壊用カートリッジの製造方法および放電破壊用カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、破壊容器内に挿入配置した溶融気化物質に、所定量の電気エネルギーを供給することにより、溶融気化物質を急激に溶融気化させ、溶融気化物質の溶融気化現象に伴って、破壊容器内で溶融気化物質の周囲に設けた爆発性の破壊用物質を爆発させて被破壊物を破壊する放電破壊用カートリッジを製造するに際し、破壊容器内に、破壊容器の内半径より大きい外径で単数または複数の略球状のスペーサを挿入して、前記破壊用物質の充填量を調整するものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1の構成において、略球状のスペーサは、球体または扁平球体あるいは多面体であり、材質はガラスまたはプラスチックからなるものである。
請求項3記載の放電破壊用カートリッジは、円筒形の破壊容器内に挿入配置した溶融気化物質に、所定量の電気エネルギーを供給することにより、溶融気化物質を急激に溶融気化させ、溶融気化物質の溶融気化現象に伴って、破壊容器内で溶融気化物質の周囲に設けた爆発性の破壊用物質を爆発させて被破壊物を破壊する放電破壊用カートリッジであって、破壊容器内に、前記破壊用物質の充填量を調整する単数または複数の略球状のスペーサが収容され、前記スペーサは破壊容器の内半径より大きい外径に形成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1または3記載の発明によれば、破壊容器内に、破壊容器の内半径より大きい外径の単数または複数の略球状のスペーサを挿入することにより、溶融気化物質とスペーサとの接触面を最小として溶融気化物質と爆発性の破壊用物質との接触面を十分確保するとともに、スペーサ同士間の連通空間またはスペーサと破壊容器内面の間の連通空間も十分に確保して、溶融気化物質の溶融気化現象に伴う衝撃力を、爆発性の破壊用物質に十分伝播させて爆発させ、破壊領域を破壊することができる。したがって、同じ破壊容器を使用して必要な個数のスペーサを挿入するだけで、破壊用物質の充填量を容易に調整することができ、衝撃力の及ぶ破壊領域を制御することができる。また径の異なる破壊容器も不要で、被破壊物に径の異なる装着穴を形成する必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
なお、従来例と同一部材には、同一符号を付して説明する。
【0011】
図1,図2に示すように、本発明に係る放電破壊用カートリッジ1は、たとえば樹脂製で有底円筒形の破壊容器2と、この破壊容器2内に開口部から容器中心軸Oの両側に一定間隔をあけて挿入配置され変形可能な一対の電極3A,3Bと、電極3A,3Bの先端部間に連結されて伸縮自在なコイル状の金属細線4(溶融気化物質の一例で、たとえばCuからなる)と、破壊容器2内に充填されて金属細線4を浸漬する所定量の爆発性の破壊用物質5(ニトロメタンなどの爆発性物質あるいは可燃性物質が用いられる)と、爆発性の破壊用物質5の充填量を調整するために破壊容器2内に挿入された複数の球形状のスペーサ11と、破壊容器2の開口部を閉じて爆発性の破壊用物質5を封入する蓋材(破壊容器)6とで構成されている。また電極3A,3Bは蓋材6を貫通して電極端子3a,3bが外部に露出され、使用に際しては、電極端子3a,3bにそれぞれリード線7A,7Bが連結される。
【0012】
前記スペーサ11は、材質が液体の浸透性がなく、高圧縮下で収縮しない、たとえばガラスまたはプラスチックにより形成されている。またその形状は、図1に示す球体形のスペーサ11や図5(a)に示すような多面体形のスペーサ12、図5(b)に示すような錠剤状の扁平球体形のスペーサ13などを含む略球体形に形成されている。球体形や多面体のスペーサ11,12の場合は、破壊容器2の内半径dよりも大きい外径D1に形成される。また扁平球体形のスペーサ13の場合には、破壊容器2の内半径dよりも大きい短径D2に形成される。また多面体のスペーサ12の場合は、二十面体以上が好ましく、正二十面体や切頂二十面体、二十・十二面体、斜方立法八面体など、下記の条件を満足するものであればよい。なお、図5(a)の多面体のスペーサ12は正五角形12枚、正六角形20枚からなる切頂二十面体を示している。これらスペーサ11〜13により、破壊容器2内の容積に相当する爆発性の破壊用物質5の容量から、スペーサ11〜13の総体積分を削減することができる。
【0013】
ここで、a)スペーサ11が金属細線4に接触した時に接触面積を少なくすることができて、金属細線4の溶融気化現象に伴う衝撃力のほとんどを周囲の爆発性の破壊用物質5に伝播させることができること、b)スペーサ11同士の接触部やスペーサ11と破壊容器2の内面との接触部において、連通空間を確保し金属細線4の溶融気化現象に伴う衝撃力がスペーサ11で遮られることなく、周囲の爆発性の破壊用物質5に良好に伝播させることができることが重要である。
【0014】
本発明者は、比較例として、破壊容器2に、その内半径以下、たとえばビース状の複数の粒状スペーサや小径スペーサを挿入配置して実験した結果、爆発性の破壊用物質5の充填量に対応する破壊領域を破壊することができなかった。これは、金属細線4の溶融気化現象に伴う衝撃力が、小径スペーサにより遮られて爆発性の破壊用物質5に伝播されなかったり、またスペーサ同士の接触部分で連通空間部が小さくなり、衝撃力が周囲の爆発性の破壊用物質5に良好に伝播させることができなかったためであると考えられる。
【0015】
上記放電破壊用カートリッジ1は、図3に示すように、破壊容器2内に、破壊領域を破壊可能な所定容量の爆発性の破壊用物質5を充填し、金属細線4および電極3A,3Bを挿入しつつ、所定個数のスペーサ11を挿入配置し、これにより爆発性の破壊用物質5が開口部に達する状態とし、蓋材6を装着してシールする。この時、電極3A,3Bを湾曲可能に形成するとともに、金属細線4を伸縮可能なコイル状に形成しておくことにより、スペーサ11をスムーズに挿入配置することができる。ここで、金属細線4が変位したり、変形しても、溶融気化に影響が生じることはない。
【0016】
上記放電破壊用カートリッジ1の使用は、図4に示すように、被破壊物Mの所定位置に所定深さの装着穴Tを穿孔し、電極端子3a,3bにそれぞれリード線7A,7Bが接続された放電破壊用カートリッジ1を装着穴Tに装填する。さらに装着穴Tの開口部に砂などからなるタンピング材Uを充填して所定厚で押し固める。
【0017】
放電カートリッジ1の金属細線4に電気エネルギーを供給するエネルギー供給回路21は、リード線7A,7Bがそれぞれ接続される導線22A,22Bと、これら導線22A,22Bがそれぞれ接続される電源装置(直流高電圧電源)23と、導線22A,22B間に接続されたコンデンサー24と、一方の導線22Aに介在された放電スイッチ25(パワースイッチングユニット)とで構成されている。したがって、エネルギー供給回路21では、電源装置23からコンデンサー24に金属細線4を溶融気化させるのに必要な量の電気エネルギーを蓄積し、放電スイッチ25をオンして、コンデンサー23から電極3A,3Bを介して金属細線4に電気エネルギーを供給することができる。
【0018】
放電破壊用カートリッジ1では、金属細線4が溶融気化されてその体積膨張により衝撃エネルギーが発生し、この放電、火花、発熱、体積膨張に伴う衝撃エネルギーにより、爆発性の破壊用物質5が爆発される。
【0019】
この時、金属細線4と爆発性の破壊用物質5との接触面積が十分に確保され、またスペーサ11間の連通空間も十分に確保されることから、全ての爆発性の破壊用物質5が瞬時に爆発し、目的とする破壊領域を破壊することができる。
【0020】
上記実施の形態1によれば、破壊容器2内に、破壊容器2の中心軸Oから内面まで内半径dより大きい外径D1で球体形の複数のスペーサ11を挿入配置することにより、爆発性の破壊物質5の充填量を調整し、金属細線4とスペーサ11との接触面を最小として、金属細線4と爆発性の破壊用物質5との接触面を十分確保することができ、さらにスペーサ11同士の接触によるスペーサ11間の連通空間の遮蔽や、スペーサ11と破壊容器2の内面との接触による連通空間の遮蔽を少なくして、爆発性の破壊用物質5の連通空間を十分に確保することができる。これにより、金属細線4の溶融気化現象に伴う衝撃力を、爆発性の破壊用物質5に良好に伝播させて、目的とする破壊領域を確実に破壊することができる。
【0021】
したがって、同じ破壊容器2を使用して、必要な個数のスペーサ11を挿入配置するだけで、容易かつ迅速に爆発性の破壊用物質5の充填量を調整することができ、衝撃力の及ぶ破壊領域を容易に制御することができる。また容量の異なる破壊容器も不要で、被破壊物Mに異なる径の装着穴Tを形成する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る放電破壊用カートリッジの実施の形態1を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すA−A断面図である。
【図3】放電破壊用カートリッジの分解斜視図である。
【図4】放電破壊用カートリッジの使用状態を示す説明図である。
【図5】スペーサの別の実施例を示し、(a)は多面体、(b)は扁平球体を示す。
【図6】従来の放電破壊用カートリッジを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 放電破壊用カートリッジ
2 破壊容器
3A,3B 電極
4 金属細線(溶融気化物質)
5 爆発性の破壊用物質
6 蓋材
11 スペーサ
12,13 スペーサ
21 エネルギー供給回路
O 容器中心軸
M 被破壊物
T 装着穴
U タンピング材
d 内半径
D1 外径
D2 短径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の破壊容器内に挿入配置した溶融気化物質に、所定量の電気エネルギーを供給することにより、溶融気化物質を急激に溶融気化させ、溶融気化物質の溶融気化現象に伴って、破壊容器内で溶融気化物質の周囲に設けた爆発性の破壊用物質を爆発させて被破壊物を破壊する放電破壊用カートリッジを製造するに際し、
破壊容器内に、破壊容器の内半径より大きい外径で単数または複数の略球状のスペーサを挿入して、前記破壊用物質の充填量を調整する
ことを特徴とする放電破壊用カートリッジの製造方法。
【請求項2】
略球状のスペーサは、球体または扁平球体あるいは多面体であり、
材質はガラスまたはプラスチックからなる
ことを特徴とする請求項1記載の放電破壊用カートリッジの製造方法。
【請求項3】
円筒形の破壊容器内に挿入配置した溶融気化物質に、所定量の電気エネルギーを供給することにより、溶融気化物質を急激に溶融気化させ、溶融気化物質の溶融気化現象に伴って、破壊容器内で溶融気化物質の周囲に設けた爆発性の破壊用物質を爆発させて被破壊物を破壊する放電破壊用カートリッジであって、
破壊容器内に、前記破壊用物質の充填量を調整する単数または複数の略球状のスペーサが収容され、
前記スペーサは破壊容器の内半径より大きい外径に形成された
ことを特徴とする放電破壊用カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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