説明

放電管及びバックライト装置

【課題】液晶表示装置の調光を変更した場合に良好に色度補正を行うことができる放電管及びそれを使用したバックライト装置。
【解決手段】第1放電管1と第2放電管2とを有し、第1放電管1が発する全光束の変化が第2放電管2が発する全光束の変化よりも小さく、第1放電管1には第1蛍光体が塗布され、第2放電管2には波長変換される光の相対強度の変化が第1蛍光体で波長変換される光の相対強度の変化よりも小さい第2蛍光体が塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用の放電管及びそれを使用したバックライト装置に関し、特に、液晶表示装置の調光を変更した場合に良好に色度補正を行うことができる放電管及びそれを使用したバックライト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットショッピングやTVショッピング等の急速な普及に伴い、液晶TV又は液晶ディスプレイ等の液晶表示装置において、表示面上で忠実に実物(又は画面を印刷した物など出力物)の色を再現することが切望されている。
【0003】
液晶TV又は液晶ディスプレイ等の表示面(表示画面)を均一な光で背面から照射するバックライト装置として、表示面の直下(背面)に単数又は複数の放電管を有する直下型(方式)と、表示面の側面に放電管を有し、反射板、導光板などの光学部材を有するエッジライト方式がある。例えば、直下型のバックライト装置を用いた液晶表示装置は放電管に設けられた一対の電極に所定の電位が印加されると、放電管内に電子が流れ、放電管内に充填された水銀ガスに電子が衝突し、紫外線を発する。紫外線は放電管に塗布された蛍光体に当たると、放電管は蛍光体に固有の光に変換され、変換された光は表示面に向かって発する。一般的に、赤色・青色・緑色の蛍光体が塗布されたそれぞれの放電管に所定の電位を加えると、各々の蛍光体に当たって放電管から発する光が混合され、白色の光が表示面へと照射される。照射された白色の光は表示面に設けられた拡散板を通って表示面をほぼ均一に照射する。さらに、表示面には表示面の所定した箇所のみ光を通す機構(シャッター)とシャッターを通った光が赤・青・緑などのカラーフィルターを通る構造となっている。従って、カラーフィルターを通った光は再び赤色・青色・緑色の光に分解され、その配列によって放電管を有する側と反対の表示面上にさまざまな色の光が再現され、表示面に出力される。
【0004】
そこで、表示面から出る光の色再現性を拡大する場合、表示面に設けられたカラーフィルターを変更する方法と放電管に塗布された蛍光体を変更する方法が考えられる。
【0005】
図5はxy色度図を示す。なお、馬蹄形の曲線Aは可視光の単色光の色度点を結んで得られる単色光の軌跡、曲線Aの両端を結ぶ直線Bは純紫軌跡、太線Cは黒体軌跡を示す。曲線Hと直線Iで囲まれる領域の内側に入るほど鮮やかさ(鮮度)が小さく、単色光を混ぜた混合した光(混合した光)となる。なお、図5中の三角(▲)印は一般的に使用される赤色の波長を発する蛍光体(Y203:Eu)が塗布された放電管、一般的に使用される青色の波長を発する蛍光体(BaMgAl1627:Eu)が塗布された放電管、及び一般的に使用される緑色の波長を発する蛍光体(LaPO:Ce,Tb)が塗布された放電管(以下、これら3つの放電管で構成したものを「従来の蛍光体を塗布した放電管群」とする。)それぞれが発する光(単色光)の色度座標を示し、これらの点を結んで囲まれた領域が従来の蛍光体を塗布した放電管群で色再現することができる領域(色再現領域)である。また、バツ(×)印は現行の表示面に設けられたカラーフィルターを用いた場合に高い色純度を示す放電管を組み合せたもの(以下、これら3つの放電管で構成したものを「高色純度の蛍光体を塗布した放電管群」とする。)であり、これらの点を結んで囲まれた領域が高色純度の蛍光体を塗布した放電管群の色再現領域である。ちなみに、高色純度の蛍光体を塗布した放電管群は、現行の表示面に設けられたカラーフィルターを用いた場合に高い色純度を示す赤色の波長を発する蛍光体(Y(P,V)O:Eu)が塗布された放電管、従来の蛍光体を塗布した放電管群を構成する青色の波長を発する蛍光体が塗布された放電管、現行の表示面に設けられたカラーフィルターを用いた場合に高い色純度を示す緑色の波長を発する蛍光体(BaMgAl1627:Eu,Mn)が塗布された放電管とからなる。また、ひし形を結んだ領域はNTSC方式の色度領域を示す。
【0006】
ところで、液晶表示装置は使用環境に応じて手動又は自動で放電管に流れる電流(管電流)を変更し、液晶表示装置の表示面の調光を変更する「明るさ調整機能」を備えている。そこで、液晶表示装置の表示面の調光を変更しても液晶表示装置の色再現性が悪化しないように補正することが切望されている。
【0007】
図6は高色純度の蛍光体を塗布した放電管群を構成する各放電管が発する赤色・緑色・青色の単色光の相対強度と各放電管に流れる電流(管電流)との関係を示す。なお、各放電管におけるガラス管は同じ物を使用し、各放電管に定格電流を流した時、つまり最大調光時における光の強度を相対強度100%(基準)として、管電流を下げることで液晶表示装置の調光を最小まで下げたときの変化を示している。
【0008】
図6に示すように、高色純度の蛍光体が塗布された放電管群の調光を変更した場合、緑色の単色光を発する放電管の相対強度は赤色の単色光の光を発する放電管及び青色の単色光の光を発する放電管の相対強度に比べて管電流に対する変化が小さい。ちなみに、従来の蛍光体を塗布した放電管群を構成する各放電管が発する赤色・緑色・青色の単色光の相対強度と各放電管に流れる電流(管電流)との関係は、放電管から発する色によらずほぼ一致している。
【0009】
図7は従来の蛍光体を塗布した放電管群からの混合した光について、構成する各放電管に流れる管電流を等しく図6に示すように最大調光時から最小調光時まで変化した時、混合した光の色度軌跡と黒体軌跡Yをxy色度図に示した図である。また、図8は高色純度の蛍光体を塗布した放電管群から出る混合した光について、構成する各放電管に流れる管電流を等しく変化させて図6に示す最大調光から最小調光まで変化した時、混合した光の色度軌跡と黒体軌跡Yをxy色度図に示した図である。
【0010】
図7に示すように、従来の蛍光体を塗布した放電管群から出る混合した光(放電管群を構成する各放電管を点灯させた時、各放電管から出た光が干渉した光)において各放電管に流れる管電流を等しく変化させて調光を下げた時の色度軌跡は左下方向(x座標及びy座標がともに減少する方向)に移動し、黒体軌跡とほぼ平行となる。したがって、混合した光を調光したときの黒体軌跡Y又は黒体軌跡の延長線Y´からの偏差、すなわち混合した光の色座標を黒体軌跡に垂線を下ろし、その垂線と黒体軌跡との交点の色度座標から混合した光の色度座標までの距離が、調光を変化させてもあまり変わらないか又は差は小さい。一方、図8に示すように、高色純度の蛍光体を塗布した放電管群が発する混合した光において各放電管の管電流を等しく変化させて調光を下げると、色度軌跡は左上方向(x座標は減少、y座標は増加する方向)に移動する。したがって、調光を変化させた後の混合した光の色度軌跡は黒体軌跡に沿った方向と異なり、調光を変化させた後の黒体軌跡yからの偏差が図7の従来の蛍光体を塗布した放電管群から出る混合した光の場合と異なり、調光を変更する前と比べて非常に大きくずれてしまう。
【0011】
したがって、高色純度の蛍光体を塗布した放電管群を構成する其々の放電管を組み込んだ液晶表示装置において、管電流を等しく変化させて調光を行うと、混合した光の色度座標は調光前の色度座標からずれてしまう。つまり、高色純度の蛍光体を塗布した放電管群を使用して色純度を改善したにもかかわらず、放電管群から出る光の色度が調光操作でずれてしまう。その結果、液晶表示装置の表示面における色度も調光を変化させると変化してしまう。
【0012】
そこで、高色純度の蛍光体を塗布した放電管群を構成する3本の放電管からなる多灯構成とし、各放電管において調光を変化させた時の電流制御を独立に行うことによって、その混合した光の色度を補正する方法が考えられる。
【0013】
また、白色の混合した光を発する放電管と、混合した光にさらに補正する光を加えることで混合した光の色度を補正する方法が考えられる。この場合、赤色・青色・緑色の波長の光を発する3種類の補助放電管を色度補正のために必要に応じて補助的に点灯させ、混合した光の色度を補正する方法が考えられる。(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−206486号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、現行のカラーフィルターを用いた場合に高い色純度を示す3種類の放電管群からなる多灯構成を用いたバックライト装置において、調光を補正するためには各放電管に流れる電流を各々制御する必要があり、各放電管に1つのインバータ回路を用意なければならない。さらに、3種類の放電管を実装するための空間も必要であり、バックライト装置全体が大型化してしまう。
【0015】
同様に、特許文献1に示すバックライト装置は、赤色・青色・緑色の光を出す3種類の補助放電管を用意し、さらに各補助放電管に流れる電流を制御するため、各補助放電管を独立に制御するインバータ回路とそれを実装する空間が必要となる。また、3種類の補助放電管を実装するための空間も必要となり、バックライト装置が大型化してしまう。
【0016】
本発明の課題は、液晶表示装置用の放電管及びそれを使用したバックライト装置に関し、特に、液晶表示装置の調光を変更した場合に良好に色度補正を行うことができる放電管及びそれを使用したバックライト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の本発明は、第1放電管と第2放電管とを有し、前記第1放電管が発する全光束の変化が前記第2放電管が発する全光束の変化よりも小さく、前記第1放電管には第1蛍光体が塗布され、前記第2放電管には波長変換される光の相対強度の変化が前記第1蛍光体で波長変換される光の相対強度の変化よりも小さい第2蛍光体が塗布されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1放電管が発する全光束の変化が第2放電管の発する全光束の変化よりも小さい第2放電管と第1放電管とを組合せ、第1放電管に第1蛍光体を、第2放電管に第1蛍光体で波長変換した光よりも相対強度が小さくなる第2蛍光体を塗布していることによって、液晶表示装置の調光を変更した際、第1放電管と第2放電管における相対輝度の違いを補正し、第1放電管と第2放電管を組み合わせた放電管における色度補正を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(本発明の実施例1)
図1は本発明の実施例1に関わる放電管とそれを用いたバックライト装置の構成を示す。図1に示すように、実施例1に関わる放電管とそれを用いたバックライト装置は、放電管1及び2と、放電管1及び2の光束を調整するインバータ回路3と導光板4とを備えて構成されたエッジライト方式のバックライト装置である。
【0020】
放電管1及び2は、中空形状のガラス管であって、ガラス管の断面(ガラス管の長手方向に垂直な平面で切断した断面)形状は円、楕円、又は円を成している。ガラス管の内壁には一対の電極を有し、端部が密閉された形状のガラス管内に放電用ガスとして、ネオン、アルゴン、クリプトンなどの希ガス又はそのいずれか複数を選択した混合不活性ガスと、水銀ガスとが充填されている。なお、放電管1及び2内には気化していない水銀も含まれている。また、放電管1及び2の内壁又は外壁には蛍光体が塗布されている。
【0021】
放電管の一対の電極に所定の電圧を印加すると、一方の電極から電子が飛び出し、飛び出した電子が水銀ガスに当たって紫外線が放出される。紫外線はガラス管の壁面に塗布された蛍光体に当たり、蛍光体に応じて所定の波長変換された光を放電管の外に発する。放電管1及び2から出た光は導光板4に入射される。入射された光は導光板4で多重反射されて混光された光が導光板4の一方の主面4a側に設けられた表示面に照射される。なお、表示面には所定の箇所以外に光を通過させないようにする機構(フィルタ)と、放電管1及び2それぞれから出る光をさらに波長変換する赤色・青色・緑色などのカラーフィルタが設けられている。
【0022】
本発明の実施例1において、放電管2内に充填された放電用ガスのガス圧は、放電管1内に充填された放電用ガスのガス圧に比べて高くする。例えば、放電管1内に充填された放電用ガスのガス圧は70〜75torrとし、放電管2内に充填された放電用ガスのガス圧は80〜90torrとする。なお、本発明の実施例1のバックライト装置における放電管1及び2の組み合わせは、ガラス管の断面の径又は断面積は略同一であって、同じ形状の放電管を使用し放電管に充填された放電用ガスのガス圧が異なる放電管の組み合わせである。
【0023】
図2は放電管1及び2に流す管電流と、放電管1及び2が発する光の全光束との関係を示す。ちなみに、放電管1及び2は同じ蛍光体が塗布されているものとする。図2に示すように、管電流が大きい領域では、放電管1の全光束は放電管2の全光束よりも大きい。放電管1,2の管電流を同じように減少させると、放電管2が発する全光束の減少幅は、放電管1が発する全光束の減少幅よりも小さいので、管電流値が約6mAを境に放電管1の全光束は放電管2の全光束よりも小さくなる。
【0024】
そこで、調光の変更命令に応じて放電管の輝度を制御するインバータ回路3に対して放電管1及び2を電気的に並列接続する。液晶表示装置の調光を下げると、インバータ回路3は管電流を調整して放電管1,2の管電流を下げ、放電管1の全光束の変化は放電管2の全光束の変化よりも大きくなる。つまり、最初、放電管1及び2の輝度を同じにしておくと、液晶表示装置の調光を下げた後のそれぞれの輝度は、放電管1に比べて放電管2の方が高くなる。なお、図2において最大調光が放電管の全光束が等しい点(管電流が6mAの点)より右側となるように設定しているが、この限りではなく、放電管1,2の全光束が等しい点を最大調光時になるよう選択しても良いし、放電管2の全光束が放電管1の全光束よりも大きい管電流の領域で最大調光時の管電流を設定しても良い。
【0025】
一方、現行の表示面に設けられたカラーフィルターを用いた場合に高色純度で組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)の蛍光体であって電子が水銀ガスに当たって放出される紫外線を波長515nm近傍に波長のピークを有する緑色の光に変換する蛍光体と、現行の表示面に設けられたカラーフィルターを用いた場合に高色純度で組成(Y(P,V)O:Eu)の蛍光体であって電子が水銀ガスに当たって放出される紫外線を波長620nm近傍に波長のピークを有する赤色の光に変換する蛍光体と、現行の組成(BaMgAl1627:Eu)の蛍光体であって電子が水銀ガスに当たって放出される紫外線を波長450nm近傍に波長のピークを有する青色の光に変換する蛍光体をそれぞれ放電管に塗布して管電流を同じように下げると、背景技術に示すように、組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)の蛍光体を塗布した放電管から出る光の相対輝度はそれ以外の蛍光体を塗布した放電管から出る光の相対輝度よりも変化が小さい。つまり、最初、それぞれの蛍光体を塗布した放電管が同じ輝度とし、液晶表示装置の調光を下げた後の組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)の蛍光体を塗布した放電管の輝度は、それ以外の蛍光体を塗布した放電管の輝度よりも高くなる。
【0026】
以上の事柄から、管電流の変化に対する輝度の変化が大きい組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)からなる蛍光体を放電管1に塗布し、管電流の変化に対する輝度の変化が小さい組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)以外の蛍光体を放電管2に塗布する。組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)以外の蛍光体として、例えば、組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)と光の3原色を構成する(Y(P,V)O:Eu)及び組成(BaMgAl1627:Eu)を塗布する。
【0027】
このように蛍光体を塗布した放電管を用いると、放電管1は放電管2に比べて放電用ガスのガス圧が低く放電管2に比べて放電管1の輝度の変化が大きく、蛍光体で変換される光の管電流に対する輝度の変化が小さい蛍光体を放電用ガスのガス圧が高い放電管に塗布し、蛍光体で変換される光の管電流に対する輝度の変化が大きい蛍光体を放電用ガスのガス圧が低い放電管に塗布することよって、管電流を変化させて液晶表示装置の調光を変化させた時の各放電管から出る光の輝度を良好に調整することができる。したがって、この放電管の組み合わせを有する放電管及びそれを用いたバックライト装置は、調光を変化させた時、液晶表示装置の表示面における色度補正を良好に行うことができる。
【0028】
なお、放電管1にも組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の蛍光体を塗布しても良い。バックライト装置から出る光のホワイトバランスを考慮し、放電管1にも組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の少なくとも一方の蛍光体を塗布し、その塗布量は放電管1および2におけるその蛍光体の塗布量を100%として30%〜70%の範囲で塗布しても良い。例えば、放電管1に組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の一方が50%と組成(BaMg2Al1627;Eu,Mn)が100%塗布され、放電管2は放電管1に塗布された組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の一方であって放電管1及び2合わせて所望する光とするために必要な塗布量の残り(この場合、50%)と、組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の他方が100%塗布されている。
【0029】
次に、本発明の実施例1に係るバックライト装置の動作について説明する。本発明の実施例1のバックライト装置は、放電管1及び2をインバータ3に対して並列接続する。インバータ回路3は管電流を制御して、液晶表示装置の表示面における調光を制御する。
【0030】
放電管1,2の全光束の変化に合わせて放電管1,2をそれぞれ独立に制御して、よりきめ細かい調光による色度補正の制御をしても良いが、放電管1,2を電気的に並列接続させることで、インバータ回路1つで2種類の放電管(放電管1,2)を制御して調光を変化させた時の色度補正を行うこともできる。したがって、本発明のバックライト装置を用いれば、少ないインバータ回路3で良好に色度補正することができ、インバータ回路3を実装する空間もコストも削減することができる。
【0031】
インバータ回路3の制御方法として放電管1,2における管電流の最大値を制御する方法と、放電管1,2の管電流のON時間/(ON時間+OFF時間)、つまりデュ−ティ−比を変化させる方法、それら両方を組み合わせた方法がある。管電流の最大値のみを変化させる制御に比べて他の2つの方法はバックライト装置の輝度を良好に輝度を幅広く調整することができるので好ましい。
【0032】
(本発明の実施例2)
本発明の実施例2は放電管1a,2aの放電用ガスのガス圧をほぼ等しくし、図3に示すように、放電管2aのガラス管は放電管1aに比べてガラス管の内径又は断面積を小さくする。例えば、放電管1aの内径を2.2mmとし、放電管2aの内径を1.8mmとする。他の構成は本発明の実施例1と重複するものは説明を省略する。
【0033】
放電管1a及び2aに流れる管電流と放電管1a,2aが発する光の全光束との関係は図4に示すようになる。なお、ここで放電管1a,2aに同じ蛍光体を塗布したものであって、放電管1a及び2aは放電用ガスのガス圧は等しいものとする。図4で示すように、最大調光時のそれぞれの放電管から出る光束を基準として調光を下げると、放電管2aが発する光の全光束の変化は放電管1aが発する光の全光束の変化が小さい。なお、図4において最大調光が放電管の全光束がほぼ等しい点となるように設定しているが、この限りではなく、放電管2aの全光束が放電管1aの全光束よりも大きい管電流の領域で最大調光時の管電流を設定しても良い。
【0034】
管電流の変化に対する輝度の変化が小さい組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)以外の蛍光体を放電管2aに塗布する。組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)以外の蛍光体として、例えば、組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)とで光の3原色を構成する(Y(P,V)O:Eu)及び組成(BaMgAl1627:Eu)を塗布する。
【0035】
このように蛍光体を塗布した放電管を用いると、組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)で変換される光の輝度の変化は組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)以外の蛍光体に比べては小さいが、一方、放電管1aは放電管2aに比べてガラス管の内径又は断面積が大きく、放電管2aに比べて放電管1aの輝度の変化が大きくなる。蛍光体で変換される光の管電流に対する輝度の変化が小さい蛍光体をガラス管の内径又は断面積の大きい放電管1aに塗布し、蛍光体で変換される光の管電流に対する輝度の変化が大きい蛍光体をガラス管の内径又は断面積の小さい放電管2aに塗布することよって、管電流を変化させた時の各放電管から出る光の輝度を調整することができる。したがって、この放電管の組み合わせを有する放電管及びそれを用いたバックライト装置は、調光を変化させた時、液晶表示装置の表示面における色度補正を良好に行うことができる。
【0036】
なお、放電管1aにも組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の蛍光体の少なくともいずれか一方を塗布しても良い。バックライト装置から出る光のホワイトバランスを考慮し、放電管1aにも組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の蛍光体を塗布し、その塗布量は放電管1aおよび2aにおけるその蛍光体の塗布量を100%として、30%〜70%の範囲で塗布しても良い。例えば、放電管1aに組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の一方が50%と組成(BaMg2Al1627;Eu,Mn)が100%塗布され、放電管2aは放電管1aに塗布された組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の一方であって放電管1a及び2a合わせて所望する光とするために必要な塗布量の残り(この場合、50%)と、組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の他方が100%塗布されている。
【0037】
次に、本発明の実施例2に係るバックライト装置の動作について説明する。本発明の実施例2のバックライト装置は、本発明の実施例1のように、放電管1a及び2aをインバータ3´に対して並列接続して、液晶表示装置の表示面における調光を制御する。
【0038】
放電管1a,2aの全光束の変化に合わせて放電管1a,2aをそれぞれ独立に制御して、よりきめ細かい調光による色度補正の制御をしても良いが、放電管1a,2aを電気的に並列接続させることで、インバータ回路1つで2種類の放電管(放電管1a,2a)を制御して調光を変化させた時の色度補正を行うこともできる。したがって、本発明のバックライト装置を用いれば、少ないインバータ回路3´で良好に色度補正することができ、インバータ回路3´を実装する空間もコストも削減することができる。
【0039】
インバータ回路3´の制御方法として放電管1a,2aにおける管電流の最大値を制御する方法と、放電管1a,2aの管電流のON時間/(ON時間+OFF時間)、つまりデュ−ティ−比を変化させる方法、それら両方を組み合わせた方法がある。管電流の最大値のみを変化させる制御に比べて他の2つの制御方法はバックライト装置の輝度を良好に輝度を幅広く調整することができるので好ましい。
【0040】
(本発明の実施例3)
本発明の実施例3は上記実施例1と2とを組み合わせたものである。即ち、放電管2bの放電用ガスのガス圧を放電管1bよりも高くし、且つ放電管2bのガラス管の内径又は断面積を放電管1bに比べて小さくする。更に、放電管1bに蛍光体で変換される光の管電流に対する輝度の変化が小さい蛍光体である組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)を塗布し、放電管2bに組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)よりも蛍光体で変換される光の管電流に対する輝度の変化が大きい蛍光体である組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)以外を塗布する。組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)以外の蛍光体として、例えば、組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の蛍光体の少なくとも一方を塗布する。
【0041】
このように蛍光体を塗布した放電管を用いると、組成(BaMgAl1627;Eu,Mn)で変換される光は他の光に比べて輝度の変化は小さいが、放電管1bは放電管2bに比べて放電用ガスのガス圧及びガラス管の内径又は断面積が高い放電管2bに比べて放電管1bの輝度の変化が実施例1及び2よりも大きくなる。蛍光体で変換される光の管電流に対する輝度の変化が小さい蛍光体を放電用ガスのガス圧が高い放電管に塗布し、蛍光体で変換される光の管電流に対する輝度の変化が大きい蛍光体を放電用ガスのガス圧が低い放電管に塗布することよって、電流を変化させた時の各放電管から出る光の輝度を調整することができる。この放電管の組み合わせを有するバックライト装置は、調光を変化させた時、バックライト装置の表示面における色度補正をより良好に行うことができる。
【0042】
なお、放電管1bにも組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の蛍光体を塗布しても良い。バックライト装置から出る光のホワイトバランスを考慮し、放電管1bにも組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の蛍光体を塗布し、その塗布量は放電管1bおよび2bにおけるその蛍光体の塗布量を100%として、30%〜70%の範囲で塗布しても良い。例えば、放電管1bに組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の一方が50%と組成(BaMg2Al1627;Eu,Mn)が100%塗布され、放電管2bは放電管1bに塗布された組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の一方であって放電管1b及び2b合わせて所望する光とするために必要な塗布量の残り(この場合、50%)と、組成(Y(P,V)O:Eu)又は組成(BaMgAl1627:Eu)の他方が100%塗布されている。
【0043】
次に、本発明の実施例1に係るバックライト装置の動作について説明する。本発明の実施例1のバックライト装置は、放電管1b及び2bをインバータ3″に対して並列接続する。インバータ回路3″は管電流を制御して、液晶表示装置の表示面における調光を制御する。
【0044】
放電管1b,2bのガス圧の変化による全光束の変化に合わせて放電管1b及び2bをそれぞれ独立に制御して、よりきめ細かい調光による色度補正の制御をしても良いが、インバータ回路1つで2種類の放電管(放電管1b,2b)を制御して調光を変化させた時の色度補正を行うこともできる。したがって、本発明のバックライト装置を用いれば、少ないインバータ回路3″で良好に色度補正することができ、インバータ回路3″を実装する空間もコストも削減することができる。
【0045】
インバータ回路3″の制御方法として放電管1b,2bにおける管電流の最大値を制御する方法と、放電管1b,2bの管電流のデュ−ティ−比を変化させる方法、両方を組み合わせた方法がある。管電流のみを変化させる制御に比べて他の2つの方法はバックライト装置の輝度を良好に幅広く調整することができるので好ましい。
【0046】
また、放電管1b及び2bを用いたバックライト装置において、放電管1b及び2bそれぞれから発する光が混合した光を調光したときの色度補正を行うために放電管1b及び2bそれぞれの管電流を制御する方法を示したが、管電流の代わりに、放電管の電極間電圧又は電力の最大値を制御しても良く、あるいは電圧又は電力のデューティを変化させても良い。
【0047】
なお、本発明の実施例1〜3は以下のように変更しても良い。
【0048】
(1) 図で示すようにエッジライト方式のバックライト装置でなく、直下型のバックライト装置に適応しても良い。
【0049】
(2) 蛍光体の組成は上記で示す例に限らない。管電流を変化させた時、相対輝度が高い光に波長変換する蛍光体とそれよりも相対輝度が低い光に波長変換する蛍光体であって、前者の蛍光体を放電管1,1a,1bに塗布し、後者の蛍光体を放電管2,2a,2bに塗布する放電管及びそれを使用するバックライト装置全てに適応することができる。また、上記実施例1〜3で示す放電管1,1a,1b及び2,2a,2bに塗布される蛍光体の塗布量は一例であって、この限りではない。
【0050】
(3) 放電管1,1a,1b及び2,2a,2bは各1本とは限らない。放電管1,1a,1b及び2,2a,2bがそれぞれ複数本且つ同数であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1に係わるバックライト装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係わるバックライト装置の放電管1,2に同じ蛍光体を塗布した場合における管電流とそれぞれの放電管が発する光の全光束との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施例2に係わるバックライト装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例2に係わるバックライト装置の放電管1a,2aに同じ蛍光体を塗布した場合における管電流とそれぞれの放電管が発する光の全光束との関係を示す図である。
【図5】従来の蛍光体で変換された光、高色純度品の蛍光体で変換された光、及びNTSCの色度座標を示す図である。
【図6】高色純度品の各蛍光体で変換された光の相対輝度と管電流との関係を示す図である。
【図7】従来の蛍光体を塗布した放電管群からの混合した光について色度軌跡と黒体軌跡Yをxy色度図に示した図である。
【図8】高色純度品の蛍光体を塗布した放電管群からの混合した光について色度軌跡と黒体軌跡Yをxy色度図に示した図である。
【符号の説明】
【0052】
1,2 放電管
3 インバータ
4 導光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1放電管と第2放電管とを有し、
前記第1放電管が発する全光束の変化が前記第2放電管が発する全光束の変化よりも大きく、前記第1放電管には第1蛍光体が塗布され、前記第2放電管には波長変換される光の相対強度の変化が前記第1蛍光体で波長変換される光の相対強度の変化よりも小さい第2蛍光体が塗布されていることを特徴とする放電管。
【請求項2】
中空形状の第1ガラス管を有する第1放電管と、
中空形状の第2ガラス管を有する第2放電管とを有し、
前記第1ガラス管の内径は前記第2ガラス管の内径よりも大きく、前記第1放電管には第1蛍光体が塗布され、前記第2放電管には波長変換される光の相対強度の変化が前記第1蛍光体で波長変換される光の相対強度の変化よりも大きい第2蛍光体が塗布されていることを特徴とする放電管。
【請求項3】
前記第1及び前記第2放電管には放電用ガスが注入されており、
前記第1放電管に注入された放電用ガスのガス圧は前記第2放電管に注入された放電用ガスのガス圧よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2記載の放電管。
【請求項4】
波長変換された光の相対強度が前記第1蛍光体で波長変換された光の相対強度に比べて大きく、且つ前記第2蛍光体で波長変換された光の相対強度に比べて小さい第3蛍光体が少なくとも前記第1又は前記第2放電管のいずれか一方に塗布されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の放電管。
【請求項5】
前記第1乃至第3蛍光体で波長変換される光は光の3原色を構成することを特徴とする請求項4記載の放電管。
【請求項6】
前記第1蛍光体は組成(BaMgAl1627:Eu,Mn)の蛍光体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の放電管。
【請求項7】
前記第2蛍光体は青色の波長の光に変換する蛍光体であって、
前記第3蛍光体は赤色の波長の光に変換する蛍光体であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の放電管。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の前記第1放電管及び前記第2放電管を有し、
前記第1放電管と前記第2放電管とが並列接続されていることを特徴とするバックライト装置。
【請求項9】
前記第1放電管に接続されたインバータ回路における、前記第1放電管から出る光の調光を変更するための第1制御パラメータを前記第2放電管に接続された前記インバータ回路における、前記第2放電管から出る光の調光を変更するための第2制御パラメータよりも大きく変化させることを特徴とする請求項8記載のバックライト装置。
【請求項10】
前記第1及び第2制御パラメータは管電流又は放電管の電極間電圧又は電力の最大値又は前記管電流と前記電圧と前記電力とのいずれかのデュ−ティ−比であることを特徴とする請求項8又は9記載のバックライト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−157599(P2007−157599A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354025(P2005−354025)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】