説明

放電装置を備えた送風装置

【課題】ダクトに沿った内側突条部の任意の位置で通路を介して帯電微粒子水やイオンを供給して、ダクトを流れる空気流が放電装置側に逆流するのを防止しながら放電装置で発生させる帯電微粒子水やイオンを吹出口から吹出される空気流に乗せて放出できる。帯電微粒子水やイオンを流す通路がダクトの外側に大きくはみ出すことがなくて全体の装置をコンパクト化できる。
【解決手段】送風装置3に、上流側端部に吸込み口4を備え且つ下流側端部に吹出口5を備え且つ送風ファン6を有するダクト7を設け、該ダクト7の壁部9の一部をダクト7内に突出させて、ダクト7に沿い且つ先端がダクト7の吹出口5付近に至る内側突条部8をダクト7の壁部9と一体に形成する。内側突条部8内に先端がダクト7の吹出口5付近に開口する通路10を設け、該通路10に、放電装置2で発生させた帯電微粒子水又はイオンを放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化により帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置又はイオンを発生させるイオン発生装置よりなる放電装置を備えた送風装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、静電霧化装置で発生させたナノメータサイズの帯電微粒子水を、車載用空調装置のような送風装置の吹出口から吹出される空気流に乗せて自動車などの車両の室内、あるいは建物内の室内に放出することが知られている。
【0003】
室内に放出されたナノメータサイズの帯電微粒子水はスーパーオキサイドラジカルやヒドロキシラジカルといったラジカルが含まれており、室内の壁、シート、ダッシュボード、カーテン等に付着した臭い成分の脱臭を行うことができると共に、人や衣服に付着して室内に持ち込まれた花粉等のアレルゲン物質を抑制したり、また、肌や髪に潤いを持たせることができる。
【0004】
ところで、静電霧化装置で発生させた帯電微粒子水を送風装置の空気流に乗せて室内に放出するには、例えば、送風装置のダクト内に静電霧化装置を配置し、ダクト内で帯電微粒子水を生成してダクト内を流れる空気流に帯電微粒子水を乗せることが考えられるが、これだと、静電霧化装置がダクト内に配置してあるため、静電霧化装置により帯電微粒子水を発生させる際、ダクト内を流れる空気の温度、湿度などの影響を受け、安定して帯電微粒子水を生成できないという問題があり、また、静電霧化装置がダクト内に内装してあるため、静電霧化装置のダクト内への組込が複雑となり、また、静電霧化装置の保守、点検がし難いという問題がある。
【0005】
そこで、静電霧化装置をダクト外に配置し、ダクト外で発生させた帯電微粒子水を送風装置のダクト内に放出することが提案されている。ところが、送風装置の使用中、ダクト内は常に風が流れており、ダクト内は正圧になっていることが多い。そして、ダクト内が正圧状態のときはダクト内の空気が静電霧化装置側に逆流し、帯電微粒子水をダクト内に放出することができない。したがって、ダクト内の負圧となる特定の部分においてしか帯電微粒子水をダクト内に放出することができないという問題がある。
【0006】
また、ダクトの外に配置した静電霧化装置から帯電微粒子水を流す導入管を導出し、ダクトの壁部に設けた孔から上記導入管をダクト内に導入し、導入管の先端をダクトの吹出口付近に開口させることで、圧力差により空気流が静電霧化装置側に逆流しないようにすることが特許文献1により提案されている。
【0007】
しかし、この特許文献1は、ダクトに孔を設けて該孔から導入管を挿入し、更に、この挿入した導入管の先端をダクトの吹出口付近まで、導入する必要がある。この場合、導入管がダクト内を斜めに横切ったりして、送風装置本来の送風機能を低下させると言う問題があり、また、導入管のダクト内への導入組込み作業も面倒な作業となる。更に、ダクトに直接孔をあけて導入管を挿入するので、シールの精度が良くなければ、ダクト内を流れる空気流が孔の縁のシールが不良となった部分からもれ出すという問題があり、送風装置本来の機能低下が生じる。
【0008】
また、他の従来例として、ダクトの外側に静電霧化装置を配置し、該静電霧化装置に接続した導入管を、ダクト内に導入管を導入することなく、ダクトの外側に位置させ、導入管の先端をダクトの吹出口付近に開口させるものが特許文献2により提案されている。
【0009】
このものは、導入管全体がダクトの外側に存在するため、ダクトと導入管を含めた部分の大きさが大きくなり、装置全体が大きくなり、例えば、自動車のような車両に組み込む場合の大きな制約となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−37247号公報
【特許文献1】特開2007−163109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の従来例の問題点に鑑みて発明したのもであって、ダクトの空気流が流れている部分に直接孔を開けることなく、ダクトに沿った内側突条部の任意の位置で通路を介して帯電微粒子水やイオンを供給して、ダクトを流れる空気流が放電装置側に逆流するのを防止しながら放電装置で発生させる帯電微粒子水やイオンを吹出口から吹出される空気流に乗せて放出することができ、しかも、帯電微粒子水やイオンを流す通路がダクトの外側に大きくはみ出すことがなくて全体の装置をコンパクト化できる放電装置を備えた送風装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成になっている。
【0013】
本発明は、静電霧化により帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置1又はイオンを発生させるイオン発生装置よりなる放電装置2を備えた送風装置3である。本発明の特徴は、送風装置3に、上流側端部に吸込み口4を備え且つ下流側端部に吹出口5を備え且つ送風ファン6を有するダクト7を設け、該ダクト7の壁部9の一部をダクト7内に突出させて、ダクト7に沿い且つ先端がダクト7の吹出口5付近に至る内側突条部8をダクト7の壁部9と一体に形成し、該内側突条部8内に先端がダクト7の吹出口5付近に開口する通路10を設け、該通路10に、放電装置2で発生させた帯電微粒子水又はイオンを放出して成ることにある。
【0014】
このような構成とすることで、放電装置2で発生させた帯電微粒子水又はイオンを、送風装置3のダクト7の壁部10と一体に形成した内側突条部8内に設けた通路10を通して、ダクト7の吹出口5付近で吐出し、吹出口5から吹出される空気流に乗せて帯電微粒子水又はイオンを自動車などの車両の室内、あるいは建物内の室内に放出することができる。したがって、従来例のように、ダクト7の空気流が流れている部分に直接孔を開けて導入管をダクト7内に挿入する必要がなく、ダクト7に沿った内側突条部8の任意の位置で通路10を介して帯電微粒子水やイオンを供給することが可能となる。また、壁部9の一部をダクト7内に突出して形成した内側突条部8内に通路10を設けてあるので、放電装置2で発生させた帯電微粒子水又はイオンを吹出口5付近まで供給する通路10の全部又は一部がダクト7内に位置し、装置全体をコンパクト化できる。
【0015】
また、内側突条部8内に内側突条部8の先端面に開口する孔11を形成して該孔11が通路10となっていることが好ましい。
【0016】
このように、ダクト7の壁部9の一部を、孔11を有する内側突条部8として一体に形成することで、ダクト7自体に通路10を形成でき、構成が簡略化し、部材点数が少なくなる。また、ダクト7の外面の内側突条部8の外面に相当する部分の任意の位置に接続孔40をあけて、放電装置2の放出部36を接続することで、ダクト7の長手方向の任意の位置から帯電微粒子水又はイオンを通路10内に供給することができ、ダクト7に対する放電装置2の配置位置が限定されない。
【0017】
また、内側突条部8の外面側を内側突条部8に沿って凹ませて外面側凹条部12を形成し、該外面側凹条部12内にダクト7の壁部9とは別の内部が通路10となった管体13を配設することが好ましい。
【0018】
これにより、通路10を構成する管体13をダクト7と別体にでき、放電装置2の配置位置に応じて外面側凹条部12の任意の位置から外面側凹条部12の先端に至るように管体13を配置でき、ダクト7に対する放電装置2の配置位置が限定されない。また、該別体の管体13を内側突条部8の外面側を内側突条部8に沿って凹ませた外面側凹条部12内に配置することで、別体の管体13の全部又は一部がダクト7の外面から外に張り出さないようにでき、装置全体をコンパクト化できる。
【0019】
また、内側突条部8が、ダクト7の空気の流れ方向と直交する断面においてコーナとなる部分を含んでいることが好ましい。
【0020】
ダクト7の一側の壁部9の巾方向の略中間部分をダクト7内に一体に突出して内側突条部8を形成した場合、内側突条部8の両側面と、該内側突条部8を突設した壁部9の両側端とそれぞれ隣接する他の壁部9との間にそれぞれ隙間が生じて、ダクト7内を流れる空気流が、内側突条部8で分流されて、吹出口5部分で空気流に乱れが生じやすくなるが、内側突条部8が、ダクト7の空気の流れ方向と直交する断面においてコーナとなる部分を含んでいると、空気流が内側突条部8で分流され難く、吹出口5部分における空気流の乱れを抑制できる。
【0021】
また、ダクト7の吹出口5、及び、吹出口5付近に開口する通路10先端の吐出口14に対向して可動ルーバ15を設け、該可動ルーバ15の吐出口14に対向する部分に可動ルーバ15を閉じた状態でも吐出口14と連通する吐出用開口部16を設けることが好ましい。
【0022】
このような構成とすることで、可動ルーバ15を閉じたり、閉に近い状態になっても、通路10の先端の吐出口14から吐出する帯電微粒子水又はイオンを吐出用開口部16を経て自動車などの車両の室内、あるいは建物内の室内に放出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記のように構成したので、従来のように、ダクトの空気流が流れている部分に直接孔を開けて別体の導入管をダクト内に挿入する必要がなく、また、ダクトに沿った内側突条部の任意の位置で通路を介して帯電微粒子水やイオンを供給して、ダクトを流れる空気流が放電装置側に逆流するのを防止しながら帯電微粒子水やイオンを吹出口から吹出される空気流に乗せて放出することができる。しかも、帯電微粒子水やイオンを流す通路がダクトの外側に大きくはみ出すことがなくて全体の装置をコンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の断面図である。
【図2】同上のイオン発生装置(静電霧化装置)の配置位置が異なる例の断面図である。
【図3】同上に用いる静電霧化装置の斜視図である。
【図4】同上に用いる静電霧化装置本体の概略構成図である。
【図5】同上の内側突条部を形成したダクトの一例を示す要部斜視図である。
【図6】同上の内側突条部を形成したダクトの他例を示す要部斜視図である。
【図7】同上の内側突条部を形成したダクトの更に他例を示す要部斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態の断面図である。
【図9】同上のイオン発生装置(静電霧化装置)の配置位置が異なる例の断面図である。
【図10】同上の要部分解斜視図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態の断面図である。
【図12】(a)は本発明の送風装置に可動ルーバを設けた例を示す斜視図であり、(b)は同上の吐出用開口部を形成した可動ルーバの斜視図である。
【図13】(a)は可動ルーバを開にした状態で帯電微粒子水が放出されている状態を示す断面図であり、(b)は可動ルーバを閉にした状態で帯電微粒子水が放出されている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0026】
添付図面には本発明の送風装置3として自動車のような車両に設ける空調装置3aの例が示してあり、また、送風装置3に備える放電装置2として静電霧化装置1の例が示してある。
【0027】
空調装置3aは、図1、図2に示すように、上流側端部が室外の空気又は室内(自動車の車内)11内の空気を吸い込むための吸込み口4となり、且つ、下流側端部が吸い込んで空調した空気を車両の室内18内に吹き出すための吹出口5となったダクト7と、ダクト7内に配置された送風ファン6と空調のための熱交換器19とを備えている。
【0028】
空調装置3aに設けた熱交換器19は送風ファン6で送風された空気を冷却したり、加温したりして空調するためのものであり、実施形態では熱交換器19として例えばエバポレータとヒーターを用いてある。
【0029】
ダクト7の壁部9の一部をダクト7内に突出させて、ダクト7の長手方向(空気流の流れ方向)に沿い且つ先端がダクト7の吹出口5付近に至る内側突条部8をダクト7の壁部9と一体に形成してある。
【0030】
この内側突条部8内に先端がダクト7の吹出口5付近に開口する通路10を設けてある。
【0031】
図1、図2に示す実施形態、図5に示す実施形態、図6に示す実施形態、図7に示す実施形態では、内側突条部8内に内側突条部8の長手方向に沿って孔11を形成して該孔11により通路10を構成した例を示しており、該通路10となる孔11は内側突条部8の先端面に開口し、後端が閉塞されたものであり、孔11はダクト7内の空気が流れる部分とは非連通となっている。
【0032】
ダクト7の壁部9の一部をダクト7内に突出させて内側突条部8を形成するに当たり、内側突条部8の形状としては任意の形状のものが考えられる。
【0033】
図5に示す実施形態では、ダクト7の一側を構成する壁部9の巾方向の略中間部分をダクト7内に突出させて内側突条部8を形成したものであり、また、図6、図7に示す実施形態では、内側突条部8が、ダクト7の空気の流れ方向と直交する断面においてコーナとなる部分を含んでいる例であり、このうち、図7に示す実施形態では、内側突条部8が、ダクト7の空気の流れ方向と直交する断面において2つのコーナとなる部分を含んでいる。
【0034】
ここで、図5のように、ダクト7の一側の壁部9の巾方向の略中間部分をダクト7内に一体に突出して内側突条部8を形成した場合、内側突条部8の両側面と、該内側突条部8を突設した壁部9の両側端とそれぞれ隣接する他の壁部9との間にそれぞれ隙間20が生じて、ダクト7内を流れる空気流が、内側突条部8で両側に分流されて、吹出口5部分で空気流に乱れが生じやすくなるおそれがあるが、図6、図7のように、内側突条部8が、ダクト7の空気の流れ方向と直交する断面においてコーナとなる部分を含んでいると、空気流が内側突条部8で分流され難く、吹出口5部分における空気流の乱れを抑制でき、より好ましいものとなる。もちろん、ダクト7の断面形状、内側突条部8の断面形状は上記した各例のものにのみ限定されるものではなく、種々の形状のものが採用できる。
【0035】
静電霧化装置1は図3に示すようなもので、ダクト7の外側に配置してダクト7を構成するダクト7または他の部材に取付けられるもので、いわゆる外付けである。
【0036】
静電霧化装置1の外郭を構成するハウジング21内には図4に示すような静電霧化装置本体22が内装してある。図4に示す静電霧化装置本体22は、放電極23と、放電極23が配置された静電霧化室30と、放電極23の先端に供給する水供給手段25と、放電極23に供給された水に高電圧を印加して静電霧化により帯電微粒子水を生成するための高電圧印加手段26とを備えたもので、添付図面に示す実施形態では水供給手段25がペルチェユニット27のような冷却手段により空気中の水分を冷却して結露水を生成することで放電極23に水を供給するようになっている。したがって、本実施形態では冷却手段が放電極23に水を供給する水供給手段25を構成している。
【0037】
また、添付図面に示す実施形態では、絶縁性を有する略筒状をした本体ケース28の内部を仕切り29で仕切り、本体ケース28内の仕切りで仕切った片側半分に水供給手段25であるペルチェユニット27を内装し、本体ケース28内の他の片側半分が静電霧化室30となっている。
【0038】
ペルチェユニット27は、熱伝導性の高いアルミナや窒化アルミニウムからなる絶縁板の片面側に回路を形成してある一対のペルチェ回路板を、互いの回路が向き合うように対向させ、多数列設してあるBiTe系の熱電素子を両ペルチェ回路板間で挟持すると共に隣接する熱電素子同士を両側の回路で電気的に接続させ、ペルチェ入力リード線を介してなされる熱電素子への通電により一方のペルチェ回路板側から他方のペルチェ回路板側に向けて熱が移動するように構成したものである。上記一方の側のペルチェ回路板の外側には冷却部31を接続してあり、また、上記他方の側のペルチェ回路板の外側には放熱部32が接続してあり、実施形態では放熱部32として放熱フィンの例が示してある。
【0039】
ペルチェユニット27の冷却部31側に放電極23の後端部が接続してあって、該放電極23が本体ケース28内の仕切り29に設けた孔を嵌通して静電霧化室30内に突出している。
【0040】
図4に示す実施形態では、筒状をした本体ケース28の先端開口部に環状をした対向電極33が設けてある。なお、対向電極33を設けない場合であってもよい。
【0041】
本体ケース28の静電霧化室30の周囲の壁部となった部分には周方向の複数個所に内外に開口する開口が設けてある。
【0042】
ハウジング21には静電霧化装置本体22で発生した帯電微粒子水を放出するための放出部36が設けてあり、添付図面に示す実施形態では放出部36は筒状をしていて後端部が本体ケース28の先端部(実施形態では対向電極33の中央口35)を介して静電霧化室30と連通している。
【0043】
上記静電霧化装置1は前述のように、ダクト7の外側に配置してダクト7を構成するダクト7または他の部材に取付けられるものであるが、この静電霧化装置1の配設位置に対応して、上記ダクト7に一体に形成した孔11を有する内側突条部8の外面の長手方向の静電霧化装置1と対向する位置に接続孔40をあけ、該接続孔40に上記静電霧化装置1に設けた筒状の放出部36を接続する。
【0044】
ここで、接続孔40はダクト7に一体に形成した孔11を有する内側突条部8の外面に形成するので、ダクト7の外面に接続孔40をあけても、ダクト7内の送風空気が流れる部分には孔があけられず、ダクト7の壁部9から送風空気が漏れるということがないようになっている。
【0045】
また、接続孔40をあける位置は、内部に孔11を有する内側突条部8の外面の長手方向の任意の位置にあけることができ、この結果、ダクト7の外側に配設する静電霧化装置1に近い位置に接続孔40を形成して放出部36を接続できることになり、図1や、図2のように静電霧化装置1をダクト7の外側の長手方向に沿った任意の位置に配置することが可能となる。
【0046】
図6に示す実施形態においては、ダクト7に一体に形成した孔11を有する内側突条部8の外面に長手方向に沿って壁部9の他の部分の肉厚に比べて薄肉となった複数の薄肉部41を形成してあり、この長手方向の任意の薄肉部41に接続孔40を形成するようにした例であり、この実施形態では薄肉部41に接続孔40を形成するので、長手方向の任意の位置に簡単に接続孔40を形成して、放電装置2の放出部36を接続することができる。
【0047】
なお、薄肉部41は形成すべき接続孔40の外周に相当する部位のみを連続して、または断続的に薄肉部41としてもよい。
【0048】
また、図7に示す実施形態においては、ダクトに一体に形成した孔11を有する内側突条部8の外面に長手方向に沿って複数の接続孔40を形成し、複数の接続孔40のうち任意の接続孔40を選択して静電霧化装置1に設けた筒状の放出部36を接続し、他の接続孔40を蓋42で閉塞した例であり、この例においても、長手方向の任意の位置の接続孔40に放電装置2の放出部36を接続することができる。
【0049】
空調装置3aを運転すると、送風ファン6が運転されて吸込み口4から室外(車外)の空気又は室内(車内)18内の空気をダクト7内に吸い込み、熱交換器19で設定温度に調整された空気がダクト7を流れて吹出口5から室内(車内)18に吹き出される。
【0050】
この空調装置3aの運転の際に、静電霧化装置1を運転すると、ペルチェユニット27に通電されて冷却部31が冷却され、冷却部31が冷却されることで放電極23が冷却され、空気中の水分を結露して放電極23の先端に水(結露水)を供給する。このように放電極23に水が供給された状態で上記放電極23の先端に供給された水に高電圧を印加することで、該高電圧により放電極23の先端部に供給された水の液面が局所的に錐状に盛り上がり(テーラーコーン)が形成される。テーラーコーンが形成されると、該テーラーコーンの先端に電荷が集中してこの部分における電界強度が大きくなって、更にテーラーコーンを成長させる。このようにテーラーコーンが成長し該テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度となると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受け、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返してマイナスに帯電したナノメータサイズの帯電微粒子水が大量に生成される。
【0051】
静電霧化装置1で生成された帯電微粒子水は、放出部36を経てダクト7に沿って一体に形成した内側突条部8内部に設けた通路10である孔11内に供給され、通路10である孔11を経て、先端の吐出口14から吐出される。
【0052】
この通路10の先端の吐出口14はダクト7の吹出口5の近くに位置している(実施形態では内側突条部8の先端がダクト7の先端まで至っており、内側突条部8の先端の吐出口14が、ダクト7の先端の吹出口5に隣接して開口している)ので、帯電微粒子水はダクト7内に放出されることなく、図1、図2の破線で示す矢印のようにダクト7外に放出されて吹出口5から吹出される実線で示す空気流に乗って室内(車内)18に供給される。この場合、上記のように通路10の先端の吐出口14がダクト7の先端の吹出口5付近に設けてあるので、送風ファン6により強制的に空気が流れて正圧となってダクト7からダクト7内の空気が通路10を逆流して静電霧化装置1側に逆流することがなく、帯電微粒子水が吹出口5から吹出される空気流に誘引されて吐出口14から吐出して空気流に乗って室内(車内)18に供給される。
【0053】
したがって、静電霧化装置1に生成した帯電微粒子水を吐出口14側にスムーズに供給するためのファンを設けなくても、静電霧化装置1で生成した帯電微粒子水を通路10を経て吐出口14から吐出して吹出口5から吹出される空気流に乗せることが可能となる。
【0054】
もちろん、静電霧化装置1にファンを設けて、生成した帯電微粒子水を通路10を経て吐出口14から吐出するための流れを形成するようにしてもよく、この場合は、吹出口5から吹出される空気流による誘引力と、上記静電霧化装置1に設けたファンによる流れとの相乗で、静電霧化装置1で生成した帯電微粒子水を吐出口14から吐出して吹出口5から吹出される空気流によりスムーズに乗せることができる。
【0055】
室内18に放出されたナノメータサイズの帯電微粒子水は室内18を浮遊して室内18の内壁、シート、ダッシュボード、カーテン、室内18の人の衣服や毛髪等に付着する。
【0056】
水を霧化させて発生させたナノメータサイズの帯電微粒子水(ナノミスト)はスーパーオキサイドラジカルやヒドロキシラジカルといったラジカルが含まれていているので、室内18の内壁、シート、ダッシュボード、カーテン、室内18の人の衣服や毛髪等に付着した臭い成分の脱臭を行うことができると共に、人や衣服に付着して室内に持ち込まれた花粉等のアレルゲン物質も抑制することができ、殺菌、除菌をしたり、また、肌や髪に潤いを持たせることができる。また、帯電微粒子水はナノメータサイズと小さいので、室内18の隅々まで浮遊し、また繊維等の内部に侵入して内部まで脱臭、殺菌、除菌、アレルゲン物質の抑制等を図ることができる。
【0057】
図8乃至図10には本発明の他の実施形態が示してある。本実施形態においては、ダクト7の壁部9の一部をダクト7内に突出させて、ダクト7の長手方向(空気流の流れ方向)に沿い且つ先端がダクト7の吹出口5付近に至る内側突条部8をダクト7の壁部9と一体に形成したことにおいては、前述の実施形態と同様であるが、本実施形態では、内側突条部8の外面側を内側突条部8に沿って凹ませて外面側凹条部12を形成し、この外面側凹条部12内にダクト7の壁部9とは別の内部が通路10となった管体13を配設してある。
【0058】
図8乃至図10の実施形態では管体13がホースにより構成してあり、該管体13の後端は静電霧化装置1の筒状をした放出部36に接続されるもので、該管体13を先端の吐出口14が外面側凹条部12の先端に位置するように管体13を外面側凹条部12に嵌め込む。ここで、ダクト7に対する静電霧化装置1の配設位置に応じて、管体13の長さを任意の長さに設定して外面側凹条部12内に嵌め込み配置するものであり、これにより、静電霧化装置1をダクト7の外側の長手方向に沿った任意の位置に配置することが可能となる。
【0059】
外面側凹条部12内に管体13を嵌め込み配置した状態で、内部が通路10となった管体13はダクト7の外面から外に突出しないか、または、突出するとしても一部が突出するだけであるから、装置全体をコンパクト化できる。
【0060】
また、管体13としては、上記のように後端部が静電霧化装置1の放出部36に接続するホースにより構成したもののみに限定されず、図11のようにダクト7とは別体の管により構成し、該管を外面側凹条部12に内に嵌め込み配設し、この管の外面の長手方向の任意の位置に接続孔43をあけ、該接続孔34に静電霧化装置1の筒状の放出部36を接続してもよい。
【0061】
空調装置3a、静電霧化装置1を運転した場合の作用効果は前述の図1乃至図4に示す実施形態と同様であり、重複する説明は省略する。
【0062】
本実施形態においては、内側突条部8の外面側を内側突条部8に沿って凹ませて外面側凹条部12を形成するので、ダクト7の加工が簡単でダクト7の構造が簡略化する。
【0063】
なお、上記各実施形態においては、通路10の先端の吐出口14とダクト7の先端の吹出口5とをダクト7の長手方向において一致させた位置としたが、通路10の先端の吐出口14がダクト7の先端の吹出口5よりも後方に少しずれた位置にあってもよく、また、通路10の先端の吐出口14がダクト7の先端の吹出口5よりも前方に少し突出した位置にあってもよい。
【0064】
上記したいずれの実施形態においても、図12、図13に示すように、ダクト7の吹出口5、及び、吹出口5付近に開口する通路10先端の吐出口14の前方には可動ルーバ15を設けてあり、この可動ルーバ15は両端部の軸を中心に回動自在となっていて、可動ルーバ15を可動して送風方向を可変できるように構成する。
【0065】
ここで、上記可動ルーバ15の吐出口14に対向する部分に吐出用開口部16が設けてあり、可動ルーバ15を閉じた状態でも吐出口14が吐出用開口部16と対向して連通するように構成してある。この吐出用開口部16は一つの可動ルーバ15に設けてもよいが、複数の可動ルーバ15に設けてもよい。
【0066】
これにより、可動ルーバ15が開いている時は、前述したように吐出口14から吐出される帯電微粒子水が、吹出口5から吹出される空気流に乗って室内18に放出される際、図13(a)のように可動ルーバ15で規制された向きに放出されるが、可動ルーバ15を閉じた場合は、図13(b)のように吐出口14から吐出する帯電微粒子水が対向する吐出用開口部16から室内18に放出される。
【0067】
したがって、自動車のように吹出口5が複数箇所にあり、任意の吹出口5に対応した可動ルーバ15を開、他の任意の吹出口5に対応した可動ルーバ15を閉とした場合でも、閉とした側の吹出口5に隣接する吐出口14から吐出する帯電微粒子水を吐出用開口部16から室内18に放出することができる。
【0068】
また、送風装置3である空調装置3aの運転を停止し、静電霧化装置1のみを運転した状態でも、可動ルーバ15に邪魔されることなく、吐出口14から吐出する帯電微粒子水を吐出用開口部16から室内18に放出することができる。
【0069】
上記各実施形態では、放電装置2として静電霧化装置1の例で説明したが、放電装置2がイオン発生装置であってもよい。
【0070】
この場合は、イオン発生装置の放電極23に高電圧を印加することで、プラス又はマイナスのイオンが発生し、該イオンをイオン発生装置の放出部36から通路10を経て吐出口14から前述の実施形態と同様に吹出口5から吹出される空気流に乗せて放出することができる。
【0071】
また、上記各例は放電装置2である静電霧化装置1又はイオン発生装置を車両の車室に設置した例を示したが、車両に設置するものにのみ限定されず、建物の室内あるいはその他の任意の放出対象空間に設置してもよい。
【0072】
また、上記各実施形態では送風装置3として自動車のような車両に設ける空調装置3aの例として説明したが、送風装置3として建物における全館の空調を制御するセントラルヒーティング方式の空調装置、あるいはその他の空調装置であってもよいものである。
【0073】
また、送風装置3としては、熱交換器19を備えた空調装置3aにのみ限定されず、熱交換器19のない送風のみを行う送風装置であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 静電霧化装置
2 放電装置
3 送風装置
4 吸込み口
5 吹出口
6 送風ファン
7 ダクト
8 内側突条部
9 壁部
10 通路
11 孔
12 外面側凹条部
13 管体
14 吐出口
15 可動ルーバ
16 吐出用開口部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電霧化により帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置又はイオンを発生させるイオン発生装置よりなる放電装置を備えた送風装置であって、送風装置に、上流側端部に吸込み口を備え且つ下流側端部に吹出口を備え且つ送風ファンを有するダクトを設け、該ダクトの壁部の一部をダクト内に突出させて、ダクトに沿い且つ先端がダクトの吹出口付近に至る内側突条部をダクトの壁部と一体に形成し、該内側突条部内に先端がダクトの吹出口付近に開口する通路を設け、該通路に、放電装置で発生させた帯電微粒子水又はイオンを放出して成ることを特徴とする放電装置を備えた送風装置。
【請求項2】
内側突条部内に内側突条部の先端面に開口する孔を形成して該孔が通路となっていることを特徴とする請求項1記載の放電装置を備えた送風装置。
【請求項3】
内側突条部の外面側を内側突条部に沿って凹ませて外面側凹条部を形成し、該外面側凹条部内にダクトの壁部とは別の内部が通路となった管体を配設して成ることを特徴とする請求項1記載の放電装置を備えた送風装置。
【請求項4】
内側突条部が、ダクトの空気の流れ方向と直交する断面においてコーナとなる部分を含んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の放電装置を備えた送風装置。
【請求項5】
ダクトの吹出口、及び、吹出口付近に開口する通路先端の吐出口に対向して可動ルーバを設け、該可動ルーバの吐出口に対向する部分に可動ルーバを閉じた状態でも吐出口と連通する吐出用開口部を設けて成ることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の放電装置を備えた送風装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−38747(P2011−38747A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189045(P2009−189045)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】