説明

故人を偲ぶ品及び該物品の製造方法

【課題】本発明の目的は、火葬に伴う熱処理前においては、通常の色であるが、火葬における高温で熱処理されたとき、金色に輝く色等とすることが可能な故人を偲ぶ品、及び該物品の製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、 (1) 装飾を施した、陶磁器4に、パール顔料1、有機顔料・炭素系顔料から選ばれた顔料と、有機結合剤からなる塗料を塗布したことを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品、(2) 前記(1)の塗布層を有する故人を偲ぶ品を、さらに800〜1200℃で熱処理することを特徴とする熱処理方法、(3) 前記(1)の塗布層を有する故人を偲ぶ品を、保護包装をした状態で熱処理することを特徴とする熱処理方法、(4) 前記(1)の塗布層を有する故人を偲ぶ品を、さらに800〜1200℃で熱処理して得られた製品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故人を偲ぶ品及び該物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棺の中に、故人が身の回りに置き愛用した眼鏡、筆記具など思い出の品を入れることが広く行われている。しかし火葬は高温で行われるため、これら故人が愛用した眼鏡、筆記具など思い出の品は焼失する。そこで、故人を長く偲ぶため、金で装飾した陶磁器製仏像等を、特殊容器に入れ、火葬における高温から保護する提案がなされている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−125922号公報
【0004】
もし火葬による高温処理の前後に外観変化が存在すれば、故人の魂が、該故人を偲ぶ品に乗り移ったとの信仰を得ることが可能であるが、しかし、前記提案の方法では、火葬の前後において、外観の変化が発生しない欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、火葬に伴う熱処理前においては、通常の色であるが、火葬における高温で熱処理されたとき、金色に輝く色等とすることが可能な故人を偲ぶ品、及び該物品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の仏像及び故人を偲ぶための品及び該物品の製造方法は、以下の特徴を有する。
(1) 装飾を施した、陶磁器に、パール顔料、有機顔料・炭素系顔料から選ばれた顔料と、有機結合剤からなる塗料を塗布したことを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品、
(2) 装飾を施した、陶磁器に、パール顔料、有機顔料・炭素系顔料から選ばれた顔料と、有機結合剤からなる塗料を塗布したことを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品の製造方法、
(3) (1)において、パール顔料として、雲母に酸化チタン、酸化ニッケルなどの金属酸化物をコートした顔料であることを特徴とする、
(4) (2)において、パール顔料として、雲母に酸化チタン、酸化ニッケルなどの金属酸化物をコートした顔料であることを特徴とする、
(5) (1)において、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上であることを特徴とする有機顔料・炭素系顔料であることを特徴とする、
(6) (2)において、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上であることを特徴とする有機顔料・炭素系顔料であることを特徴とする、
(7) (1)において、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上であることを特徴とする有機結合剤であることを特徴とする、
(8) (2)において、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上 であることを特徴とする有機結合剤であることを特徴とする、
(9) (1)において、装飾として金、銀、白金等の貴金属装飾あることを特徴とする、
(10)(2)において、装飾として金、銀、白金等の貴金属装飾あることを特徴とする、
(11)(1)において、赤、黄色、青等に着色した無機顔料装飾であることを特徴とする、
(12 (2)において、赤、黄色、青等に着色した無機顔料装飾であることを特徴とする、
(13)(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)の塗布層を有する故人を偲ぶ品を、さらに800〜1200℃で熱処理することを特徴とする、
(14)(13)において、塗布層を有する故人を偲ぶ品を、保護包装をした状態で熱処理することを特徴とする、
(15) (1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)の塗布層を有する故人を偲ぶ品を、さらに800〜1200℃で熱処理して得られた製品
である。
【0007】
本発明に於いて、貴金属装飾を施した陶磁器作成に使用される陶磁器としては、長石等を原料とし食器などに広く使用されている陶器、牛骨灰やカオリンを原料としたボーンチャイナ等の軟質磁器、長石、カオリン、ケイ石等を原料とする硬質磁器等の所謂オールセラミックスをあげることができる。また、アルミナ磁器、ムライト磁器等所謂ニューセラミックスをあげることができる。
【0008】
故人を偲ぶ品の形態としては、仏像、人形、十字架その他宗教に基づく物品や、愛玩動物としての犬・猫や、船、自動車、飛行機等のレプリカ品等愛着のある品をあげることができる。これら形態に陶磁器を成形する方法としては、鋳込み成形をあげることができる。すなわち、陶磁器の原料と水を攪拌しておき少量のケイ酸ナトリウムを添加して泥しょうとしたものを、あらかじめ作成した石膏製鋳型に流し込み成形する方法をあげることができる。
【0009】
成形した未焼成の陶磁器は所定の温度で焼成して予定の仏像、人形、犬・猫等の形態とする。次に、酸化カリ、酸化ナトリウム、無水硼酸、アルミナ、酸化珪素等の成分を有する釉薬成分からなる分散液を塗布し陶磁器表面をガラス質の釉薬で覆い、1200〜1350℃で焼成し釉薬で覆われた陶磁器が作成される。
【0010】
本発明において、貴金属装飾は、塩化金等の貴金属化合物をテルペン化合物・硫黄系溶剤に溶解した貴金属・レジネート溶液を釉薬で覆われた陶磁器の上に塗布し、700〜800℃の高温で焼成することにより行われる。ここで使用する貴金属・レジネートは、洋食器の装飾に広く使用されており、市販品から容易に入手することができる。なお、貴金属の発色を変更するため、貴金属を混合して使用することもできるし、貴金属の釉薬に対する接着性を改善するため、微量の卑金属例えばビスマス、クロムなどが添加されることがある。また貴金属装飾の代わりに、赤、黄色、青等に着色した無機顔料装飾を使用することもできる。
【0011】
本発明において、装飾を施した、陶磁器に、パール顔料、有機顔料・炭素系顔料から選ばれた顔料と、有機結合剤からなる塗料を塗布される。
ここに使用するパール顔料とは、パール光沢を発する顔料であって、魚のうろこに由来する天然物や、屈折率の低い雲母の薄片の表面に屈折率の高い酸化チタンが析出した顔料をあげることができる。雲母由来のパール顔料の場合、酸化チタン層と雲母及びその周辺の媒体との境で反射した光がパール光沢を出している。雲母由来のパール顔料の場合は、雲母に基づく無機物のため、火葬などの高温処理後、貴金属の装飾が表面にあらわれるのを妨害するおそれがあるが、パール顔料の隠蔽性が優れているため、顔料の使用量が少なくて効果をあげることができ、本発明の目的に適合した。
【0012】
本発明において、装飾を施した陶磁器の塗布に使用される有機顔料・炭素系顔料としては、芳香族化合物に由来する有機顔料・炭素系顔料をあげることができる。有機顔料・炭素系顔料は高温にさらされると燃焼するので、火葬などの高温処理後は装飾の表面があらわれるからである。一方無機顔料は、酸化コバルト、酸化鉄などに由来する色であり、高温処理後も残存し貴金属装飾の表面があらわれず好ましくない。また炭素系顔料も高温で酸化除去される性質のため同様に使用可能であった。有機顔料には、金属を含む場合があるが、金属を含む場合は好ましくない。このため、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上であることが必要である。
【0013】
本発明において、パール顔料、有機顔料・炭素系顔料から選ばれた顔料の分散溶解と、貴金属装飾を施した陶磁器との接合に使用される有機結合剤としては、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、メチルセルロース、ニトロセルロース、ブチラール樹脂などをあげることができる。これら有機結合材は、有機溶剤に希釈して使用される。ここに使用される有機溶剤としては、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテートなどの高沸点溶剤が好ましい。結合材としては、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上であることが好ましい。
【0014】
本発明において、塗布層を有する故人を偲ぶ品は、さらに800〜1200℃において熱処理される。この場合、1000℃以上で長時間保持されることもあり、貴金属装飾が痛められることがある。そこで、好ましくは熱処理に先立ち保護包装される。保護包装の方法としては、酸素不足の状態で炭化しやすいセルロース系繊維、難燃化処理されたセルロース繊維、フェノール樹脂繊維、アクリル繊維を熱処理することで得られる耐炎繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機難燃性繊維や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、等の無機繊維をあげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
カオリンなどを含む通常の陶磁器製造に使用する陶磁器原料の懸濁溶液を、石膏より作成した型に鋳込み、水分を濾過しつつ、懸濁液の固形分を沈殿させる。過剰の水分を石膏型から吸引除去した後、未焼成状態の仏像を型から取りだし、乾燥し800℃で焼成する。
次に酸化ナトリウム・酸化カリウム・アルミナ・酸化珪素・無水硼酸系の釉薬を塗布し、1200〜1350℃に焼成して図1に示すような釉薬を施した仏像を得た。次に、金・ビスマス系金属を有するレジネート溶液を仏像に塗布し乾燥後、750〜800℃に焼成して金色に輝く仏像を得た。第1図は、故人を偲ぶ品としての仏像の正面図である。
【0016】
有機結合材として、メタクリル樹脂、顔料として雲母を使用したパール顔料を使用し、有機溶剤としてテルピネオールを使用して塗料を作成し、前記金色に輝く貴金属装飾された仏像に塗布された。乾燥すれば、金色は失われる。この状態で、故人を偲ぶ品として商品として市販される。
【0017】
前記故人を偲ぶ品は、好ましくは、保護包装されて800〜1050℃に熱処理される。
ここに使用あれる包装材としては、ガラス繊維を使用し、十分に覆った。木製の箱に入れ、800〜1050℃に加熱後、ガラス繊維の覆いを取り外し木綿で磨くと、金色に輝く貴金属装飾の施された仏像が出てきた。
【0018】
前記0016におけるパール顔料の代わりに、有機顔料・炭素系顔料を使用した。同様に金色が失われた故人を偲ぶ品が得られた。アクリル繊維由来の耐炎性を有する繊維で覆った後、同様に、800〜1050℃加熱後、覆いを外すと金色に輝く貴金属装飾の施された仏像が出てきた。
【0019】
前記0015の仏像の代わりに幼い子供の人形で同様に行った。同様に金色に輝く貴金属装飾は保存されることが確認された。また貴金属装飾の代わりに黄色、赤色の無機顔料を使用し、ガラス繊維を包装材と使用し同様に行なわれた。同様に800〜1200℃加熱でパール顔料は焼却され黄色、赤色の無機顔料の装飾が現れることが確認された。
図2は、故人を偲ぶ品の表面として、陶磁器4の表面に釉薬3で装飾を施し、さらに貴金属装飾2を施し、パール顔料・メタクリル樹脂からなるパール顔料を含む塗布層1で塗装を施した故人を偲ぶ品の断面構造模式図である。
図3は、熱処理を施した後、乃至パール顔料を塗布する前の故人を偲ぶ品の断面図である。故人を偲ぶ品の表面として、陶磁器の表面に釉薬で装飾を施し、貴金属装を有する。パール顔料・メタクリル樹脂からなる塗布は失われている。
【0020】
以上の説明によって明らかな様に、本発明による故人を偲ぶ品は、以下に列挙した如き、実用上の好ましい効果を奏する。
(a)葬儀用品として需要があり産業に寄与する。
(b)故人の魂が乗り移ったとの考えを故人ゆかりの人に与え、後に残された故人ゆかりの人に安らぎを与えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】故人を偲ぶ品の一例としての仏像の正面図である。
【図2】故人を偲ぶ品の表面として、陶磁器の表面に釉薬で装飾を施し、さらに貴金属装飾を施し、パール顔料・メタクリル樹脂からなる塗装を施した故人を偲ぶ品の断面構造模式図である。
【図3】熱処理を施した後、乃至パール顔料を塗布する前の故人を偲ぶ品の模式断面図である。表面として、陶磁器の表面、釉薬層、貴金属装を有し、パール顔料・メタクリル樹脂からなる塗布層は失われている。
【符号の説明】
【0022】
1 パール顔料を含む塗布層
2 金装飾層
3 釉薬層
4 陶磁器層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾を施した、陶磁器に、パール顔料、有機顔料・炭素系顔料から選ばれた顔料と、有機結合剤からなる塗料を塗布したことを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品。
【請求項2】
装飾を施した、陶磁器に、パール顔料、有機顔料・炭素系顔料から選ばれた顔料と、有機結合剤からなる塗料を塗布したことを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、パール顔料として、雲母に酸化チタン、酸化ニッケルなどの金属酸化物をコートした顔料であることを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品。
【請求項4】
請求項2において、パール顔料として、雲母に酸化チタン、酸化ニッケルなどの金属酸化物をコートした顔料であることを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品の製造方法。
【請求項5】
請求項1において、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上であることを特徴とする有機顔料・炭素系顔料であることを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品。
【請求項6】
請求項2において、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上であることを特徴とする有機顔料・炭素系顔料であることを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上であることを特徴とする有機結合剤であることを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品。
【請求項8】
請求項2において、空気中で常温から700℃に加熱したとき、揮発減量が99%以上であることを特徴とする有機結合剤であることを特徴とする塗布層を有する故人を偲ぶ品の製造方法。
【請求項9】
請求項1において、装飾として金、銀、白金等の貴金属装飾あることを特徴とする故人を偲ぶ品。
【請求項10】
請求項2において、装飾として金、銀、白金等の貴金属装飾あることを特徴とする故人を偲ぶ品の製造方法。
【請求項11】
請求項1において、赤、黄色、青等に着色した無機顔料装飾であることを特徴とする故人を偲ぶ品。
【請求項12】
請求項2において、赤、黄色、青等に着色した無機顔料装飾であることを特徴とする故人を偲ぶ品の製造方法。
【請求項13】
請求項1、請求項3、請求項5、請求項7、請求項9、請求項11の塗布層を有する故人を偲ぶ品を、さらに800〜1200℃で熱処理することを特徴とする熱処理方法。
【請求項14】
請求項13において、塗布層を有する故人を偲ぶ品を、保護包装をした状態で熱処理することを特徴とする熱処理方法。
【請求項15】
請求項1、請求項3、請求項5、請求項7、請求項9、請求項11の塗布層を有する故人を偲ぶ品を、さらに800〜1200℃で熱処理して得られた製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−263298(P2006−263298A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88192(P2005−88192)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(399044126)寿工芸株式会社 (1)
【Fターム(参考)】