説明

故障検出機能付きエンコーダの仮相クロック生成方法

【課題】本発明は、チャタリング信号に拘わらず、各インクリメンタル信号から仮相クロックを得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による故障検出機能付きエンコーダの仮相クロック生成方法は、A相、B相インクリメンタル信号(3,4)が“1”の時及び“0”の時に仮相クロック(6)が“1”と“0”となり、4象現のうち2象現離れた条件が成立しない限り仮相クロック(6)が反転しないロジックを用いる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障検出機能付きエンコーダの仮相クロック生成方法に関し、特に、A相、
B相インクリメンタル信号に基づいて仮相クロックを得ることにより、インクリメンタル信号にチャタリングが発生した場合でも安定した仮相クロックを得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の故障検出機能付き機能を内蔵したエンコーダの場合、例えば、特許文献1に開示されたエンコーダにおいても、開示していないが、故障検出を行うための基準信号としては、エンコーダの信号処理回路に内蔵されたクロック発生回路から得られるクロック信号が採用されている。
前記クロック信号を用いることにより、信号処理回路から得られるエンコーダ信号の誤信号等の検出及び補正等を行っている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−204572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の故障検出機能付き機能を内蔵したエンコーダにおいては、前述のように内蔵された回路からのクロック信号を用いているが、このクロックの異常を検出するためには、クロック信号を2系統用意して冗長系としなければならず、回路構成及びコスト共に課題が存在していた。
【0005】
また、前述のインクリメンタルエンコーダにおいて、軸位置が出力論理の変化点付近にある場合、電気的、機械的要因により、エンコーダ出力がチャタリングする場合がある。このチャタリングした状態のインクリメンタル信号を基準にシステムクロックの異常検出を行った場合、検出回路の動作可能クロック以上の高速なパルスが入力されてしまう場合があり、正常な検出が困難となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による故障検出機能付きエンコーダの仮相クロック生成方法は、回転体の回転を検出部で検出して得たA相インクリメンタル信号とB相インクリメンタル信号を用いて仮相クロックを生成する場合、前記A相インクリメンタル信号が“1”で前記B相インクリメンタル信号が“1”の時に、前記仮相クロックは“1”に変化し、前記A相インクリメンタル信号が“0”で前記B相インクリメンタル信号が“0”の時に、前記仮相クロックは“0”に変化し、前記A相又はB相インクリメンタル信号にチャタリング信号が発生した場合には前記仮相クロックの生成には影響が及ばないようにする方法であり、また、前記A相、B相インクリメンタル信号は、その位相が互いに90°異なると共に1周期あたり4象現の信号で構成され、前記仮相クロックを生成する場合、前記4象現のうち2象現離れた条件が成立しない限り前記仮相クロックが反転しないロジックを用いる方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による故障検出機能付きエンコーダの仮相クロック生成方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、回転体の回転を検出部で検出して得たA相インクリメンタル信号とB相インクリメンタル信号を用いて仮相クロックを生成する場合、前記A相インクリメンタル信号が“1”で前記B相インクリメンタル信号が“1”の時に、前記仮相クロックは“1”に変化し、前記A相インクリメンタル信号が“0”で前記B相インクリメンタル信号が“0”の時に、前記仮相クロックは“0”に変化し、前記A相又はB相インクリメンタル信号にチャタリング信号が発生した場合には前記仮相クロックの生成には影響が及ばないようにし、また、前記A相、B相インクリメンタル信号は、その位相が互いに90°異なると共に1周期あたり4象現の信号で構成され、前記仮相クロックを生成する場合、前記4象現のうち2象現離れた条件が成立しない限り前記仮相クロックが反転しないロジックを用いているため、インクリメンタル信号にチャタリングが発生した場合でも、チャタリングに影響を受けることなく、安定した仮相クロック信号を生成し、冗長系を用いることなく、仮相クロックを得て、クロックの故障検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、A相、B相インクリメンタル信号に基づいて仮相クロックを得ることにより、インクリメンタル信号にチャタリングが発生した場合でも安定した仮相クロックを得るようにした故障検出機能付きエンコーダの仮相クロック生成方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0009】
以下、図面と共に本発明による故障検出機能付きエンコーダの仮相クロック生成方法の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものはエンコーダの回転符号板からなる回転体であり、この回転体1の回転により光学式に得られた検出部2からの2相のA相インクリメンタル信号3及びB相インクリメンタル信号4は、信号処理部5を介して仮相クロック信号6として生成されるように構成されている。
【0010】
図2は、仮相クロック6の生成として、A相インクリメンタル信号3が“1”、B相インクリメンタル信号4が“1”の条件が成立する時に、仮相クロック6は“1”に変化し、各インクリメンタル信号3,4が“0”の時は仮相クロック6は“0”となる。
この場合、機械的な振動等によってA相インクリメンタル信号3にチャタリング信号7が発生した場合、このチャタリング信号7は仮相クロック6には影響せず、異常な周波数が出力されることはない。
【0011】
さらに、インクリメンタルエンコーダにおいては、A,B相インクリメンタル信号3,4の位相が90°ずれているため、1周期あたり4象現の信号を得ることができるが、このインクリメンタルエンコーダからクロック監視用の仮相クロック6を生成する場合において、2象現離れた条件が成立しない限りクロックが反転しないロジックを前記信号処理部5に組む(例えば第1象現で“1”となり、第3象現で“0”になる等)ことで、チャタリング信号7が発生しても監視用仮相クロックにはチャタリングは発生せず、検出用クロックとして用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による仮相クロック生成方法を示すブロック図である。
【図2】図1の各信号の波形図である。
【符号の説明】
【0013】
1 回転体
2 検出部
3 A相インクリメンタル信号
4 B相インクリメンタル信号
5 信号処理部
6 仮相クロック
7 チャタリング信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体(1)の回転を検出部(2)で検出して得たA相インクリメンタル信号(3)とB相インクリメンタル信号(4)を用いて仮相クロック(6)を生成する場合、
前記A相インクリメンタル信号(3)が“1”で前記B相インクリメンタル信号(4)が“1”の時に、前記仮相クロック(6)は“1”に変化し、前記A相インクリメンタル信号(3)が“0”で前記B相インクリメンタル信号(4)が“0”の時に、前記仮相クロック(6)は“0”に変化し、前記A相又はB相インクリメンタル信号(3,4)にチャタリング信号(7)が発生した場合には前記仮相クロック(6)の生成には影響が及ばないことを特徴とする故障検出機能付きエンコーダの仮相クロック生成方法。
【請求項2】
前記A相、B相インクリメンタル信号(3,4)は、その位相が互いに90°異なると共に1周期あたり4象現の信号で構成され、前記仮相クロックを生成する場合、前記4象現のうち2象現離れた条件が成立しない限り前記仮相クロック(6)が反転しないロジックを用いることを特徴とする請求項1記載の故障検出機能付きエンコーダの仮相クロック生成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−128279(P2009−128279A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305638(P2007−305638)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】