説明

救命救急補助システムとその方法とユーザ端末装置と救命救急補助装置

【課題】初期救助を実施するまでの所要時間を短縮することが出来る救命救急補助システムの提供。
【解決手段】この発明の救命救急補助システムは、ユーザ端末装置と第三者端末装置と救命救急補助装置とで構成され、ユーザ端末装置の救命情報通信部はユーザの生体情報とユーザ端末装置の位置情報とを救命救急補助装置に通信する。第三者端末装置の第三者端末救命情報送受信部は第三者端末装置の位置情報を定期的に上記救命救急補助装置に送信する。救命救急補助装置の緊急性判断部は、生体情報から救命救急の緊急性を判断し、位置情報解析部がユーザ位置情報と第三者端末位置情報とからユーザの現在位置の近くに居る第三者の位置関係を解析してユーザ端末装置と第三者端末装置との間の距離情報を出力し、通知者判断部が緊急性情報と距離情報と第三者の属性情報を入力として救命指示情報を送信する第三者端末装置を選別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、利用者(ユーザ)が携帯する移動端末にて取得したユーザの生体情報をもとに、ユーザの体調の異常度を判別、通知する救命救急を補助する救命救急補助システムとその方法と、ユーザ端末装置と救命救急補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において、事故や急病など予期しない体調の異常、急変が生じる場合がある。体調の異常が軽度な場合には、ユーザは休養をとったり、自ら通院したりすることで対処することができる。一方、体調の異常が重度であったり、体調の急変により生命の危機的状況となったりといった、緊急を要する場合には、119番通報などで救命救急を要請する必要があるが、自らの意識が無い場合や、発声・動作が困難な状況、見通し範囲内に人が居ない場合などにあっては119番通報を行うことすら難しい。従って、ユーザの生体情報を自動でモニタ・送信する装置を携帯し、体調の異常度を判別して必要に応じて第三者に通知し、救命救急を要請することの出来るシステムの登場が望まれている。
【0003】
特許文献1には、移動端末を携帯しているユーザの体調に異変が生じた際に、異常度に応じた対処を行うシステムが開示されている。図9に、そのシステム構成を示して簡単に説明する。
【0004】
特許文献1に開示されたシステムは、移動端末11、体調管理装置13、医療機関の端末17、かかりつけの医療機関の端末18、第三者の端末16、のそれぞれがインターネット12を介して接続されて構成される。移動端末11は、ユーザの体調データと位置情報を、インターネット12を介して体調管理装置13に周期的に送信する。体調管理装置13は、受信した体調データを、第1及び第2の閾値を用いて監視する。ユーザからの体調データが第1の閾値を越えている場合には、ユーザの移動端末ならびにユーザの現在位置近くの医療機関に通知を行って警告し、第2の閾値を超えている場合には、救命救急が必要であると判断し、前記医療機関に加え、ユーザの家族等の第三者にも通知を行って救助を促す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−232963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によるシステムでは、救命救急が必要である場合に、ユーザの体調異常通知を受けた家族や、医療機関に勤務する医療従事者が直接現場に駆けつけたり、救急車を手配したりすることになるが、家族等の第三者はユーザの現在位置近くに居るとは限らない。たとえ近くに居たとしても救命救急の心得がなければ救助することが出来ない。また、ユーザの現在位置近くの医療機関に勤務する医療従事者や救急車が駆けつけるにしても、現場が最寄の救命救急対応医療機関から遠く離れている場合もあり、救助が間に合わない場合がある。救急車の出動件数は年々増加しており、救急隊の現場到着から病院収容までの時間(平均約45分、平成21年度消防白書)も過去十年間で1.3倍も増加している。その結果、初期救命に失敗する事例が多数報告され社会問題化している。
【0007】
この発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、移動端末を携帯しているユーザの体調異常を検知してから初期救助を実施するまでの所要時間を短縮することが出来る救命救急補助システムとその方法と、ユーザ端末装置と救命救急補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の救命救急補助システムは、ユーザ端末装置と第三者端末装置と救命救急補助装置とで構成される。ユーザ端末装置は、生体情報検出部と、ユーザ端末位置検出部と、救命情報通信部とを備える。生体情報検出部はユーザの生体情報を検出する。ユーザ端末位置検出部はユーザ端末装置の位置情報を測定する。救命情報通信部はユーザの生体情報とユーザ端末装置の位置情報を含む救命情報を救命救急補助装置に通信する。第三者端末装置は、第三者端末位置検出部と第三者端末救命情報送受信部とを備える。第三者端末位置検出部は、当該第三者端末装置の位置情報を測定する。第三者端末救命情報送受信部は、第三者端末装置の位置情報を定期的に救命救急補助装置に送信すると共に救命救急補助装置からの救命指示情報を受信する。救命救急補助装置は、救命情報送受信部と緊急性判断部と位置情報解析部と通知者判断部とを備える。救命情報送受信部は、救命情報と第三者端末情報を受信すると共に救命指示情報を第三者端末装置に送信する。緊急性判断部は救命情報から救命救急の緊急性を判断して緊急性情報を出力する。位置情報解析部はユーザ位置情報と第三者端末位置情報とからユーザの現在位置の近くに居る第三者の位置関係を解析してユーザ端末装置と第三者端末装置との間の距離情報を出力する。データベースはユーザの生体情報の履歴と距離情報と第三者の属性情報を複数の第三者端末装置にそれぞれ対応させて記録する。通知者判断部は緊急性情報と距離情報と第三者の属性情報を入力として救命指示情報を第三者端末装置に送信する。
【0009】
また、この発明のユーザ端末装置は、生体情報検出部とユーザ端末位置検出部と救命情報送受信部と転倒検出部と初期救助要求生成部とを具備する。生体情報検出部はユーザの生体情報を検出する。ユーザ端末位置検出部はユーザ端末装置の位置情報であるユーザ位置情報を測定する。救命情報送受信部は生体情報とユーザ位置情報とを救命救急補助装置に送信する。転倒検出部はユーザの転倒状態を検出して転倒情報を救命救急補助装置に送信する。初期救助要求生成部は転倒情報を救命救急補助装置に送信した後の救命救急補助装置からの安否応答要求に応答して初期救助要求信号を生成する。
【0010】
また、この発明の救命救急補助装置は、救命情報送受信部と緊急性判断部と位置情報解析部と通知者判断部とデータベースとを具備する。救命情報送受信部はユーザの生体情報と第三者端末情報を受信すると共に救命指示情報を第三者端末装置に送信する。位置情報解析部は、ユーザ位置情報と第三者端末位置情報とからユーザの現在位置の近くに居る第三者の位置関係を解析してユーザ端末装置と第三者端末との間の距離情報を出力する。通知者判断部は、緊急性情報と距離情報と第三者の属性情報を入力として救命指示情報を送信する第三者端末を選別する。データベースは、ユーザの生体情報の履歴と、距離情報と、第三者の属性情報を複数の第三者端末にそれぞれ対応させて記録する。
【発明の効果】
【0011】
この発明の救命救急補助システムによれば、ユーザに体調異常が生じ、救命救急行為が必要になった場合に、ユーザ周辺にいるユーザ救助に適切な第三者(医師、看護士、救命士、医学生、その他医療従事者、AEDの操作や人工呼吸などに習熟した一般人、その他の一般人)に救命指示情報を送信することが出来るので、初期救助までの所要時間を短くすることができ、救命率を向上させることが出来る。
【0012】
また、この発明のユーザ端末装置は、転倒検出部と初期救助要求生成部を備えることで初期救助の実行をより確実にする効果を奏する。また、この発明の救命救急補助装置は、データベースを備えることで、緊急事態に陥ったユーザに対してより適切なスキルを備えた第三者を選定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の救命救急補助システム100のシステム構成例を示す図。
【図2】この発明の救命救急補助システム100の動作シーケンスを示す図。
【図3】この発明の救命救急補助システム100の動作を概念的に示す図。
【図4】ユーザ端末装置30,30′の機能構成例を示す図。
【図5】第三者端末装置40の機能構成例を示す図。
【図6】救命救急補助装置50の機能構成例を示す図。
【図7】緊急性判断部52が「緊急性あり」と判断する生体情報の一例を示す図。
【図8】データベース55に記録されるデータの一例を示す図。
【図9】従来の体調管理システムのシステム構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。複数の図面中同一のものには同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【実施例1】
【0015】
図1に、この発明の救命救急補助システム100のシステム構成例を示す。救命救急補助システム100は、ユーザ端末装置30と、第三者端末装置40と60と、救命救急補助装置50と、ネットワーク3と、で構成される。ユーザ端末装置30、第三者端末装置40,60、は本システムの利用者が所持する携帯電話やスマートフォン、PDA等の持ち運びが可能な電子機器である。本システムでは、多数のユーザがそれぞれ固有の端末装置を所持していることを想定する。なお、第三者端末装置40と60は、それを携帯する人が異なるだけで、端末装置としての基本機能は同じである。また、ネットワーク3は例えばインターネットである。
【0016】
図2に示す救命救急補助システム100の動作シーケンス図も参照して本システムの動作を説明する。ユーザ端末装置30は、生体情報検出部31と、ユーザ端末位置検出部32と、救命情報通信部33とを備える。生体情報検出部31は、ユーザ端末装置30を携帯するユーザの生体情報を検出する(ステップS31)。生体情報は、例えば、計時処理(ステップS301)の繰り返し(ステップS301bのNo)による所定時間の経過毎に検出される(ステップS301bのYes)。なお、計時処理は、図1では省略している制御手段が行う。
【0017】
ここで、生体情報とは、脈拍、心拍、心電図信号、筋電、呼吸(例えば呼吸の速さ、深さ、換気量など)、発汗、GSR(皮膚電気反応)、血圧、血糖値、血中酸素飽和度(S)、皮膚表面温度、脳波(例えばα波、β波、θ波、δ波の情報)、血流変化(近赤外分光による脳電流、末消血流などの血流変化)、体温、眼の状態(瞳孔状態、眼の動き、まばたき等)、呼気ガスや経皮ガス中の水素やアンモニアなどの特定ガスの成分量、などである。例えばGSR、体温、皮膚表面温度、心電図信号、筋電、心拍、脈拍、血流変化、血圧、脳波、発汗などを検出するには、ユーザの皮膚に接触するセンサを用いれば良いことが知られている(例えば特開2010-525915号公報)。なお、生体情報の取得方法は、人体に非侵襲的な方法が望ましいが、侵襲的な方法であっても良い。また、取得する生体情報は上記したものに限られず、ユーザの体調を検知できるものであれば良い。
【0018】
次に、ユーザ端末位置検出部32は、ユーザ端末装置30の位置情報を測定する(ステップS32)。位置情報の取得方法としては、GPS(全地球測位システム)を利用することが望ましいが、携帯電話や無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)などの接続先基地局やアクセスポイントなどの情報を利用しても良く、単一の取得方法でなく複数の取得方法を複合的に利用しても良い。
【0019】
救命情報通信部33は、検出した生体情報と位置情報を含む救命情報を救命救急補助装置50に送信する(ステップS33)。救命情報は、例えば、毎秒といった短い時間間隔から、毎時といった比較的に間隔の空いた所定の時間間隔、生体情報に急激な変化が見られた際などに、ネットワーク3を介して救命救急補助装置50に送信される。
【0020】
第三者端末装置40は、第三者端末位置検出部41と、第三者端末救命情報送受信部42とを備える。第三者端末位置検出部41は、第三者端末装置40の位置を測定する(ステップS41)。第三者端末救命情報送受信部42は、第三者端末装置40の位置情報を含む第三者端末情報を定期的、または第三者に一定距離以上の移動が生じた際に救命救急補助装置50に送信する(ステップS42a)と共に、救命救急補助装置50からの救命指示情報を受信する(ステップS42b)。ここで第三者端末情報には、位置情報の他に第三者の属性情報が含まれる。第三者の属性情報とは、職業(医師、看護士、救命士等の医療行為に関係するものとその他)、専門(医師であれば、内科、外科、麻酔科等)、第三者が救助可能なレベル(例えば、A:全ての医療行為が可能、B:注射、止血等が可能、C:AEDのみ操作可能、D:医療行為は不可)などである。第三者端末装置60は、基本的な構成を第三者端末装置40と同じにするものであり、その説明は省略する(図1参照)。なお、図1では第三者端末装置を2個しか示していないが、本システムでは2個以上の複数個の第三者端末装置が存在する。
【0021】
救命救急補助装置50は、救命情報送受信部51と、緊急性判断部52と、位置情報解析部53と、通知者判断部54とを備える。救命情報送受信部51は、ユーザ端末装置30からの生体情報と位置情報とを含む救命情報を受信する(ステップS51b)。また、救命情報送受信部51は、第三者端末装置40からの第三者端末情報を受信する(ステップS51a)。
【0022】
緊急性判断部52は、ユーザ端末装置30から受信した生体情報から救命救急の緊急性を判断し、緊急性の有無を表す緊急性情報を出力する(ステップS52)。緊急性を判定する方法としては、例えば、呼吸10回/分未満または30回/分以上、呼吸音の左右差(左肺と右肺)、異常呼吸音、脈拍120回/分以上または50回/分未満、収縮期血圧90mmHg未満または収縮期血圧200mmHg以上、動脈血酸素飽和度90%未満を満たした状態を、緊急度が高いと判定できることが知られている(例えば、平成15年度財団法人全国市町村振興協会助成事業「救急搬送における重症度・緊急度判断基準作成委員会報告書」)。その他にも、CTAS(Canadian Triage and Acuity Scale)に照らせば、客観的に緊急度を導けることが知られている(例えば、http://jsem.umin.ac.jp/ctas/index.html)。また、ユーザの平常時の生体情報を把握しておき、その平常時との差分で緊急度を判定するようにしても良い。
【0023】
緊急性判断部52が、「緊急性なし」と判断した場合はステップS51aとS51bの処理が繰り返される。「緊急性あり」と判断した場合、位置情報解析部53は、ユーザ端末装置30の位置情報と第三者端末装置40の位置情報とから、ユーザ端末装置30の位置、つまりユーザの現在位置近くにいる第三者の位置関係を解析し、ユーザ端末装置30と複数の第三者端末装置40,60との間の距離情報を出力する(ステップS53)。
【0024】
データベース55は、ユーザの生体情報の履歴と距離情報と第三者の属性情報を複数の第三者端末装置にそれぞれ対応させて記録する(ステップS55)。
【0025】
通知者判断部54は、緊急性情報と、データベース55に記録された距離情報と第三者の属性情報を入力として、救命情報を送信する第三者端末装置を携帯する第三者を一人ないし複数人選別する(ステップS54a)。選別の際に医療行為が出来ない者を複数人選別してもほとんど意味が無く、体調異常が生じたユーザに合った第三者が選別されるべきである。そこでデータベース55上にある属性情報を利用し、距離情報、属性情報から適切な第三者を選ぶ。第三者端末装置が選別されると、救命情報送受信部51は、選別された第三者の第三者端末装置(例えば第三者端末装置40)に救命指示情報を送信する(ステップS51c)。救命指示情報にはユーザ位置情報が含まれる。また、ユーザが発見し易くなる情報、例えばユーザの性別や年齢等のユーザの属性情報の一部を救命指示情報に含めても良い。また、ユーザ位置情報以外の情報、例えばAED等の医療機器の位置情報も含めても良い。そうすることで第三者が、医療機器を持って初期救助に駆けつけることが可能になる。また、救命指示情報に初期救助方法の具体的な指示情報を含めても良い。その情報は、第三者がより適切な処置を行うことの助けになる。
【0026】
第三者端末装置40を携帯する第三者は、救命指示情報を確認し、初期救助に駆けつけられるか否かについての初期救助可否情報を、第三者端末救命情報送受信部42から救命救急補助装置50に送信する(ステップS42c)。
【0027】
救命救急補助装置50の通知者判断部54は、第三者端末装置40からの初期救助可否情報が救助可であれば動作を終了(ステップS54b、確定済み)し、初期救助可否情報が救助不可または、一定時間以上の応答がない場合(ステップS54b、未)には、選別済みの複数人の他の第三者端末に救命指示情報を送信し、第三者端末を特定できるまで位置情報解析(ステップS53)からの処理を繰り返す(ステップS54bの未からステップS53に至るループ)。
【0028】
以上述べたように、この発明の救命救急補助システム100によれば、ユーザに体調異常が生じ救命救急行為が必要になった場合に、ユーザの近くにいるユーザの体調異常の対処に適した第三者に救命指示情報を送信することが出来るので、初期救助までの所要時間を短くするとともに、適切な処置が早期に可能となる。以上により、体調異常が生じたユーザの救命率を向上させることが出来る。図3に、ユーザに対して初期救助が行われるまでの処理過程を概念的に示す。ユーザ端末装置30からの救命情報送信(ステップS33)及び、第三者端末40と救命救急補助装置50との間の位置情報の送信(ステップS42a)や救命指示情報の受信(ステップS51c)を示す参照符号は、図2と対応している。
【0029】
次に、この発明の救命救急補助システム100を構成する各装置について説明する。
〔ユーザ端末装置〕
図4に、ユーザ端末装置30の機能構成例を示す。ユーザ端末装置30は、プログラムやデータが記憶されたROM(Read Only Memory)と、これらプログラムを実行するCPUと、CPUが用いるデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)とから成る制御手段301が、機能ブロック300を構成する各機能部の動作手順及び動作タイミングを制御してその機能を実現するものである。通信インターフェース302は、第三者端末装置40,60、救命救急補助装置50と通信するものであり、例えば携帯電話の送受話機能である。これらの制御手段と通信インターフェースの構成は、他の装置も同様に備える。
【0030】
ユーザ端末装置30の機能ブロック300は、ユーザ端末位置検出部31と、生体情報検出部32と、救命情報通信部33と、を備える。なお、機能ブロック300において、一般的な端末装置が備える表示部や計時部や入力部等は省略している。
【0031】
ユーザ端末位置検出部31は、例えばGPS受信器でありGPS衛星からの測位電波を受信してユーザ端末装置30の位置情報を、緯度・経度の数値として出力する。なお、ユーザ端末位置検出部31は、GPS以外の技術を用いても良い。例えば、携帯電話の接続先基地局情報や無線LANのアクセスポイントの識別情報と住所とを対応付けたデータベースから、ユーザ端末装置30の位置情報を求めても良い。
【0032】
生体情報検出部32は、上記したようにユーザの体調を検知できるものであれば何でも良い。簡単な例としては、胸に電極ベルトを巻いて心拍数を検出する方法などがある。この胸の電極ベルトを利用すれば電極ベルトの伸縮を検出することで呼吸数も簡単に測定することも可能である。また、血圧にしても、カフ(腕に巻きつけるベルト)を用いずに血圧を測定する方法として脈波伝搬速度(Pulse Wave Velocity)を利用したものが知られている。このような方法を用いることでユーザの生体情報を比較的容易に検出することが可能である。胸の電極ベルトの心拍情報や血圧計からの血圧情報は、ユーザ端末装置30に有線で伝達しても良い。または、近距離無線(例えばBlue tooth等)でその間を無線接続するようにしても良い。
【0033】
救命情報通信部33は、ユーザ端末位置検出部31で検出した位置情報と、生体情報検出部32で検出した生体情報とを含む救命情報を救命救急補助装置50に送信する。救命情報通信部33は、送受信機能を備えた救命情報送受信部33′としても良く、救命救急補助装置50からの要求を受信し、その応答として生体情報を送信するようにしても良い。
【0034】
救命救急補助装置50からの要求に応答して生体情報を送信する形態でも、この発明の救命救急補助システムを構成することが可能である。その場合、救命救急補助装置50からの要求があった時に例えば血圧等を測定して、その生体情報と位置情報とを救命救急補助装置50に送信する。このように救命情報をオンデマンドで送信することで、ユーザ端末装置30の生体情報検出部32の構成を、より簡易にすることが可能である。
【0035】
〔変形例〕
図4に、ユーザ端末装置30の変形例であるユーザ端末装置30′の機能構成を破線で示す。ユーザ端末装置30′は、ユーザ端末装置30の機能構成に加えて更に転倒検出部34と、初期救助要求生成部35と、を備える。
転倒検出部34は、ユーザが、転倒したことを検出して転倒情報を救命救急補助装置50に送信する。ユーザが転倒する場合とは、例えば脳血管障害で意識を失うような場合である。転倒情報は、例えば携帯電話の通信機能を用いて救命救急補助装置50に対して送信される。
【0036】
ユーザの転倒は、加速度センサを用いることで検出することが出来る。3軸以上の検出軸を備えた加速度センサを用いることで、正確に転倒状態を検出することが可能である。
【0037】
初期救助要求生成部35は、転倒情報を救命救急補助装置50に送信した後の救命救急補助装置50からの安否応答要求に応答して初期救助要求信号を生成する。
【0038】
初期救助要求信号は、例えば、安否応答要求に対してユーザが、ユーザ端末装置30に設けられた救命ボタンを長く押す(例えば30秒以上)等の操作に基づいて生成しても良い。又は、安否応答要求を受信した後の生体情報を、初期救助要求信号に代えて、若しくは初期救助要求信号と共に救命救急補助装置50に送信するようにしても良い。救命ボタンは、図示を省略している入力部内に設けられる。
【0039】
ユーザが重篤な状態では、安否応答要求に的確に応えることが出来ない。その場合は、救命救急補助装置50側で所定時間内に応答がないことを判断して第三者端末40,60に救命指示情報を送信する。
このようにユーザ端末装置30′は、初期救助の実行をより確実にする効果を奏する。
【0040】
〔第三者端末装置〕
図5に、第三者端末装置40の機能構成例を示す。第三者端末装置40も、ROM、RAM、CPUによって構成される点で、ユーザ端末装置30と救命救急補助装置50と同じである。また、通信インターフェース402も同様である。
【0041】
第三者端末装置40は、第三者端末位置検出部41と、第三者端末救命情報送受信部42と、属性情報登録部43と、を具備する。第三者端末位置検出部41は、第三者端末装置40の位置を測定して第三者端末位置情報を第三者端末救命情報送受信部42に出力する。位置測定の方法は、ユーザ端末位置検出部32と同じである。
【0042】
属性情報登録部43は、第三者端末装置40を携帯する第三者の属性情報を記録する。第三者の属性情報とは、第三者の資格(医師、救命救急士等)や、例えばAED(自動体外式除細動器)装置の操作に習熟している等の第三者の特徴に関する情報である。
【0043】
第三者端末救命情報送受信部42は、第三者端末位置情報と第三者の属性情報を含む第三者端末情報を定期的に上記救命救急補助装置に送信すると共に上記救命救急補助装置からの救命指示情報を受信する。
【0044】
〔救命救急補助装置〕
図6に、救命救急補助装置50の機能構成例を示す。救命救急補助装置50は、プログラムやデータが記憶されたROM(Read Only Memory)と、これらプログラムを実行するCPUと、CPUが用いるデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)とから成る制御手段501が、機能ブロック500を構成する各機能部の動作手順及び動作タイミングを制御してその機能を実現する点で、ユーザ端末装置30と同じである。通信インターフェース502も同様である。
救命救急補助装置50は、救命情報送受信部51と、緊急性判断部52と、位置情報解析部53と、通知者判断部54と、データベース55と、を具備する。救命情報送受信部51は、ユーザの生体情報と第三者端末情報を受信すると共に救命指示情報を第三者端末装置50に送信する。
【0045】
緊急性判断部52は、ユーザの生体情報から当該ユーザに対する救命救急の緊急性を判断して緊急性情報を出力する。緊急性の判断は上述した通りである。例えば、ユーザの心拍数が図7に示すように、例えば70(BPM)前後で推移していた心拍数が、120(BPM)以上や50(BPM)以下に大きく変化した場合に「緊急性あり」と判断し、緊急性情報を出力する。ユーザの心拍数等の生体情報の推移は、データベース55に記録されている。心拍数以外の生体情報を利用して緊急性を判断しても良い。複数種類の生体情報が得られれば緊急性判断部52において、緊急事態の状況を推定することも可能である。血圧の急激な低下、呼吸数の上昇、心拍数の急激な上昇、体温の低下などが判明した場合には、例えば大量出血の緊急事態であると推定することが出来る。
【0046】
位置情報解析部53は、ユーザ位置情報と第三者端末位置情報とからユーザの現在位置の近くに居る第三者の位置関係を解析してユーザ端末装置30と第三者端末装置40,60との間の距離情報を出力する。その距離情報は、データベース55で常時管理される。データベース55は、第三者の属性情報と、ユーザとの間の距離情報とをそれぞれ対応させて記録する。なお、距離情報を常時管理しなくても良い。例えば、継続的に取得している生体情報から体調異常が生じる危険性が高いユーザに対してのみデータベース55を管理することで、初期救助の迅速性を損なうことなく救命救急補助装置50の負荷を軽減することが出来る。
【0047】
通知者判断部54は、緊急性判断部52が出力する緊急性情報と距離情報(第三者端末の識別情報も含む)と第三者の属性情報を入力として救命指示情報を送信する複数の第三者端末装置を選別する。通知者判断部54は、選別した第三者端末装置の救助可能レベルを決定してその情報をデータベース55に記録するようにしても良い。
【0048】
図8に、データベース55に記録されるデータの一例を示す。図8の1行が、それぞれの第三者端末装置に対応している。通知者判断部54は、緊急性情報と距離情報と属性情報から初期救助を依頼する第三者端末装置を選別する。緊急性情報が、上記した大量出血を示唆しているとすると、止血方法を熟知し、大量出血の理由が判断できる第三者に駆けつけてもらうことが望ましい。その場合、通知者判断部54は救助レベルがAである、第三者AAA、第三者DDDの医師を選択する。
【0049】
救命情報送受信部51は、ユーザとの距離がより近い第三者AAAに救命指示情報を送信する。救命救急補助装置50は、第三者AAAが携帯する第三者端末装置から、救助可能の初期救助可否情報の応答が得られれば、第三者を選択する動作を終了する。応答が否であれば、救命情報送受信部51は次の候補者である第三者DDDに救命指示情報を送信する。救命情報送受信部51は、初期救助に向かう第三者が見つかるまで第三者を選択する動作を繰り返す。
【0050】
なお、第三者端末装置から初期救助可否情報の応答が得られない場合も想定される。その場合、所定時間内に応答が無ければ選別した複数の第三者端末装置の他の第三者端末装置に対して救命指示情報を送信することになるが、その他の第三者端末装置からも応答が得られない可能性がある。その場合、いたずらに時間を消費してしまう。
【0051】
そこで、選別された複数の第三者端末装置に対して同時に救命指示情報を送信する方法も考えられる。救命指示情報を同報した第三者端末装置の内、最初に救助可の初期救助可否情報の応答が得られた第三者端末装置に対して改めて初期救助依頼をすることで、初期救助に要する時間を最小化することが可能である。また、複数の生体情報からユーザの状況をより細かく推定できる場合は、複数の第三者端末装置に救命指示情報を同報した後に、もう一度位置情報解析を行い、その状況により適合する第三者を選別し直して救命指示情報を改めて送信するようにしても良い。
【0052】
以上述べたように救命救急補助装置50は、緊急事態に陥ったユーザ近くの初期救助に適切な第三者に救命指示情報を送信することが出来る。また、ユーザ周辺に居る適切な医療従事者や、AEDの操作や人工呼吸などに習熟した第三者に初期救助を促すことが出来る。その結果、この発明の救命救急補助システム100は、初期救助までの所要時間を短縮すると共に、救命率を向上させる効果を奏する。
【0053】
また、第三者を選定する際に、位置情報と第三者の属性情報を総合的に勘案して選定する例を説明したが、距離情報を優先、又は属性情報を優先して第三者を選定するようにしても良い。また、その第三者の選別人数には予め上限や下限を定めても良い。また、第三者を選定するアルゴリズムとして、距離情報や、属性情報に任意の重み付けを行い、選定される第三者が重み付けに応じて一意に定まるようにしても良い。こうすることで、ユーザとの距離を重視した選定を行ったり、第三者のスキルを重視した選定を行ったりといった方法で、第三者の選定を行うようにしても良い。
【0054】
また、第三者に対して救命指示情報を送信する方法として、ユーザの近くに居る複数の第三者に一斉に送信した後に、再度、より高度な専門性を備えた医師等に通知を行う方法を採用しても良い。このようにすることでユーザの救命率を向上できる可能性がある。
【0055】
また、救命指示情報を送信した後は、ユーザ端末装置30と第三者端末装置40,60と救命救急補助装置50との間で三者間通話を行えるようにしても良い。三者間通話によって、現場でより適切な処置が行える。このように、この発明は上記した実施例に限定されることなく種々の変更が可能である。
上記した各装置における処理手段をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、各装置における処理手段がコンピュータ上で実現される。
【0056】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD-RAM(Random Access Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP-ROM(Electronically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0057】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記録装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0058】
また、各手段は、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより構成することにしてもよいし、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末装置と第三者端末装置と救命救急補助装置とで構成される救命救急補助システムであって、
上記ユーザ端末装置は、ユーザの生体情報を検出する生体情報検出部と、当該ユーザ端末装置の位置を表すユーザ位置情報を測定するユーザ端末位置検出部と、上記生体情報と上記ユーザ位置情報を含む救命情報を上記救命救急補助装置に送信する救命情報通信部とを備え、
上記第三者端末装置は、当該第三者端末装置の位置情報を測定する第三者端末位置検出部と、上記第三者端末装置の第三者端末位置情報を含む第三者端末情報を定期的に上記救命救急補助装置に送信すると共に上記救命救急補助装置からの救命指示情報を受信する第三者端末救命情報送受信部とを備え、
上記救命救急補助装置は、上記救命情報と上記第三者端末情報を受信すると共に救命指示情報を上記第三者端末装置に送信する救命情報送受信部と、上記救命情報から救命救急の緊急性を判断して緊急性情報を出力する緊急性判断部と、上記救命情報と上記第三者端末位置情報とからユーザの現在位置の近くに居る第三者の位置関係を解析して上記ユーザ端末装置と上記第三者端末装置との間の距離情報を出力する位置情報解析部と、上記ユーザの生体情報の履歴と上記距離情報と上記第三者の属性情報を複数の上記第三者端末装置にそれぞれ対応させて記録するデータベースと、上記緊急性情報と上記距離情報と上記第三者の属性情報を入力として上記救命指示情報を送信する第三者端末装置を特定する通知者判断部と、
を備えたことを特徴とする救命救急補助システム。
【請求項2】
請求項1に記載した救命救急補助システムにおいて、
上記救命指示情報には、上記ユーザ位置情報の他に上記ユーザの属性情報の一部の情報を含むことを特徴とする救命救急補助システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した救命救急補助システムにおいて、
上記通知者判断部は、第三者端末装置からの初期救助可否情報が救助可であれば動作を終了し、上記初期救助可否情報が救助不可であれば他の第三者端末装置を選択して初期救助を行う第三者端末装置を携帯する第三者が特定されるまで、その動作を繰り返すことを特徴とする救命救急補助システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載した救命救急補助システムにおいて、
上記通知者判断部は、2個以上の複数の第三者端末装置を選別し、上記救命情報送受信部は上記複数の第三者端末装置に対して同時に上記救命指示情報を送信することを特徴とする救命救急補助システム。
【請求項5】
ユーザの生体情報を検出する生体情報検出部と、
ユーザ端末装置の位置情報であるユーザ位置情報を測定するユーザ端末位置検出部と、
上記生体情報と上記ユーザ位置情報とを上記救命救急補助装置に送信する救命情報送受信部と、
上記ユーザの転倒状態を検出して転倒情報を上記救命救急補助装置に送信する転倒検出部と、
上記転倒情報を上記救命救急補助装置に送信した後の上記救命救急補助装置からの安否応答要求に応答して初期救助要求信号を生成する初期救助要求生成部と、
を具備するユーザ端末装置。
【請求項6】
ユーザの生体情報と第三者端末情報を受信すると共に救命指示情報を上記第三者端末装置に送信する救命情報送受信部と、
上記ユーザの生体情報から当該ユーザに対する救命救急の緊急性を判断して緊急性情報を出力する緊急性判断部と、
ユーザ位置情報と第三者端末位置情報とからユーザの現在位置の近くに居る第三者の位置関係を解析して上記ユーザ端末装置と上記第三者端末装置との間の距離情報を出力する位置情報解析部と、
上記緊急性情報と上記距離情報と第三者の属性情報を入力として上記救命指示情報を送信する第三者端末装置を選別する通知者判断部と、
上記ユーザの生体情報の履歴と上記距離情報と第三者の属性情報を複数の上記第三者端末装置にそれぞれ対応させて記録するデータベースと、
を具備する救命救急補助装置。
【請求項7】
ユーザ端末装置と第三者端末装置と救命救急補助装置とを備えた救命救急補助方法であって、
上記ユーザ端末装置は、ユーザの生体情報を検出する生体情報検出過程と、当該ユーザ端末装置の位置を表すユーザ位置情報を測定するユーザ端末位置検出過程と、上記生体情報と上記ユーザ情報を含む救命情報を上記救命救急補助装置に送信する救命情報通信過程とを備え、
上記第三者端末装置は、当該第三者端末装置の位置情報を測定する第三者端末位置検出過程と、上記第三者端末装置の第三者端末位置情報を含む第三者端末情報を定期的に上記救命救急補助装置に送信すると共に上記救命救急補助装置からの救命指示情報を受信する第三者端末救命情報送受信過程とを備え、
上記救命救急補助装置は、上記救命情報と上記第三者端末情報を受信すると共に救命指示情報を上記第三者端末装置に送信する救命情報送受信過程と、上記救命情報から救命救急の緊急性を判断して緊急性情報を出力する緊急性判断過程と、上記救命情報と上記第三者端末位置情報とからユーザの現在位置の近くに居る第三者の位置関係を解析して上記ユーザ端末装置と上記第三者端末装置との間の距離情報を出力する位置情報解析過程と、上記ユーザの生体情報の履歴と上記距離情報と上記第三者の属性情報を複数の上記第三者端末装置にそれぞれ対応させてデータベースに記録するデータベース記録過程と、上記緊急性と上記距離情報と上記第三者の属性情報を入力として上記救命指示情報を送信する第三者端末装置を特定する通知者判断過程とを備えたことを特徴とする救命救急補助方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−222443(P2012−222443A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83628(P2011−83628)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】