説明

救難用点灯装置

【課題】電源として安価かつ簡便な乾電池を用いることができるようにして、長時間にわたり表示灯を確実に点灯させることができ、しかも、常時、水に浸っていなくても表示灯を点灯維持できる救難用点灯装置を提供する。
【解決手段】救難用点灯装置は乾電池4を電源とする表示灯2の点灯回路中に接点機構5が介装されて成る。前記接点機構5は、固定接点と、固定接点に対向配置される可動接点と、水との接触により膨張して可動接点を固定接点と接触する位置まで変位させるアクチュエータとを含んでいる。前記乾電池4および接点機構5はケース内に、表示灯2はケース外に、それぞれ配置されている。前記ケースには前記乾電池4が配置される密閉された第1の室Aと、前記接点機構5が配置される透水可能な第2の室Bとが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機や船舶の事故に際し、乗員や乗客などが海上へ投げ出されたり海上へ脱出したときに表示灯が自動的に点灯して居場所を知らせるようにした救難用点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の救難用点灯装置として、図6に示すように、救命胴衣100に装着する態様のものが提案されている。この救難用点灯装置は、浸漬式電池より成る電源装置101と電球やLEDなどの表示灯102とから成るもので、電源装置101は救命胴衣100に設けられたポケット100aなどに、表示灯102は救命胴衣100の肩部に設けられた取付部100bに、それぞれ装着されている。電源装置101と表示灯102との間はリード線103により接続されている。この救命胴衣100は、非常時に備えて飛行機や船舶に搭載されており、乗客や乗員がこの救命胴衣100を着用して着水したとき、浸漬式電池が水に浸って起電力を発生し、電源装置101より表示灯102へ給電が行われて表示灯102が自動点灯する。表示灯102の光は上空または四方に向けて発せられ、これにより遭難者の居場所を知る手がかりとなる。
【0003】
前記浸漬式電池には、従来、水を電解液として発電する海水電池が用いられている。この種の海水電池は、ニッケル、銅などのイオン化傾向の比較的小さな金属またはその合金を用いて形成された陽極と、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛などのイオン化傾向の比較的大きな金属またはその合金を用いて形成された陰極とを備えたもので(例えば、特許文献1)、この海水電池で発生した起電力によって表示灯102が点灯駆動される。
【0004】
【特許文献1】特開平8−17446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した海水電池では、水の電気分解時に発生する酸素や水素などの気体やイオンが電極部(主として陽極)に付着するため、発電性能が著しく低下し、長時間にわたって表示灯102を確実に点灯させることが困難である。また、この種の海水電池を電源装置101に用いた場合、海水電池が水に浸っている状態でなければ、起電力が得られないため、何らかの原因で海水電池が水面上に置かれたとき、表示灯102が消灯し、その結果、遭難者の発見を遅らせるおそれがある。さらに、海水電池は一般の乾電池に比較して高価であって簡便でなく、乾電池を電源として使用できる救難用点灯装置の出現が望まれていた。
【0006】
この発明は、電源として安価かつ簡便な乾電池を用いることができるようにして、長時間にわたり表示灯を確実に点灯させることができ、しかも、常時、水に浸っていなくても表示灯を点灯維持できる救難用点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による救難用点灯装置は、乾電池を電源とする表示灯の点灯回路中に接点機構が介装されて成る。前記接点機構は、固定接点と、固定接点に対向配置される可動接点と、水との接触により膨張して可動接点を固定接点と接触する位置まで変位させるアクチュエータとを含んでいる。前記乾電池および接点機構はケース内に、表示灯はケース外に、それぞれ配置されている。前記ケースには前記乾電池が配置される密閉された第1の室と、前記接点機構が配置される透水可能な第2の室とが設けられている。
【0008】
救難用点灯装置が着水していない状態では、可動接点は固定接点から離れて定位し、接点機構は開いている。その結果、点灯回路は通電せず、表示灯は点灯しない。救難用点灯装置が着水すると、アクチュエータは水と接触して膨張するので、可動接点は固定接点と接触する位置まで変位し、接点機構が閉じる。その結果、点灯回路が通電し、表示灯が点灯する。
着水時、ケースの第1の室には水が浸入せず、乾電池は水に浸ることがないので、動作に支障をきたすおそれはない。ケースの第2の室には水が浸入するので、アクチュエータは水に浸って膨張し、接点機構が閉動作する。
【0009】
この発明の好ましい一実施態様においては、前記アクチュエータは水との接触により膨張する材料をもって形成された板状体であり、その板状体の一表面に可動接点が接着され、板状体の他表面がケースに固定されている。前記の「水との接触により膨張する材料」として、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)スポンジ、水膨張ゴム、水膨張ゴム発泡体などを用いることができる。いずれも弾力性があり、親水性、吸水性、および保水性を有している。
【0010】
前記乾電池は、外気温の上昇および低下により起電力の低下を招くので、外気温の変化による性能劣化を防止するために、ケースの第1の空間に熱が遮断された状態で配置するのが望ましい。ここで、熱が遮断された状態を実現するのに、乾電池の周囲に空気による断熱層を設けるようにしてもよく、また、乾電池の周囲をウレタンフォームなどの断熱材で覆うようにしてもよい。
【0011】
前記可動接点が固定接点に接触し、接点機構が閉動作して点灯回路が通電したとき、前記点灯回路の通電状態を安定して保持するために、点灯回路に通電状態を保持する自己保持回路を設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、電源として乾電池を用いるようにしたから、長時間にわたり表示灯を確実に点灯させることができる。しかも、乾電池は安価かつ簡便であるから、救難用点灯装置のコストの低減および利便性の向上を実現できる。また、水との接触により膨張するアクチュエータにより可動接点を固定接点と接触する位置まで移動させるから、常時、水に浸っていなくても表示灯を点灯維持でき、安定した動作を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明の一実施例である救難用点灯装置1の外観を示している。
図示例の救難用点灯装置1は、図6に示した救命胴衣100に装着されるもので、救命胴衣100の胴部に形成されたポケット100a内に装着される装置本体20と、肩部に形成された取付部100bに装着される表示灯2とを備えている。前記装置本体20は4枚の側板11〜14と2枚の端板15,16とを接着して構成されるケース10を含んでいる。前記端板15に開設された貫通孔15aよりリード線3,30がケース10の外部へ引き出され、リード線3,30の先端に前記表示灯2が接続されている。
【0014】
前記表示灯2は、LEDや電球により構成されるが、その他にキセノン放電管などを用いることもできる。また、LEDとして高輝度発光のものや自己点滅タイプのものを用いてもよい。なお、表示灯2の点灯回路には必要に応じて昇圧回路などを組み込むこともできる。
【0015】
前記ケース10の内部には、図2に示すように、内部の空間を区画するための仕切板17が設けてある。この仕切板17を挟んで一方の空間には2個の乾電池4,4を収納保持するための第1の室Aが、他方の空間には接点機構5を設けるための第2の室Bが、それぞれ形成されている。前記接点機構5は乾電池4,4を電源とする表示灯2の点灯回路中に介装されるもので、図3に示すように、固定接点51,52に可動接点50が接触して接点機構5が閉じたとき(同図中、一点鎖線で示す。)、点灯回路が通電して表示灯2が点灯する。
【0016】
第1の室Aは、水が浸入しないように密閉されている。この第1の室Aに2個の乾電池4,4を保持するための保持枠41,42が組み付けられている。各保持枠41,42には正負の各電極43,44がそれぞれ設けられるともに、2個の乾電池4,4を直列接続するために、一方の保持枠41の正電極43と他方の保持枠42の負電極44とがリード線31で接続されている。一方の保持枠41の負電極44と接点機構5の一方の固定接点51とはリード線32により接続され、他方の保持枠42の正電極43には表示灯2に接続するためのリード線30が接続されている。各リード線32,30は仕切板17に形成された連通孔17aより第2の室Bへ導入されている。前記リード線30は接点機構5の他方の固定接点52に接続されたリード線3とともに、前記貫通孔15aよりケース外へ引き出されている。
【0017】
上記の保持枠41,42に保持される2個の乾電池4,4は、第1の室Aにおいて、周囲の側板11〜14の内面との間に空気の断熱層が介在した状態で保持されている。前記断熱層によって外部からの熱が乾電池4,4に伝達するのを阻止されるが、一層の断熱効果を得るために、第1の室A内にウレタンフォームなどの断熱材を配備して乾電池4,4の周囲を覆うようにする。
【0018】
第2の室Bには内部の空間を2分するための第2の仕切板18が設けられている。この仕切板18には接点機構5を構成する固定接点51,52が一定の間隔を隔てた絶縁状態で取り付けられている。この仕切板18を挟んで一方の空間B1には接点機構5を構成する可動接点50が配備されている。また、他方の空間B2はリード線3,30を導出入するための空間になっている。
前記空間B1は、水が入るように前記端板15の空間B1に対応する位置に透水用の切欠19が形成されている。一方、空間B2は、水が入らないように密閉状態に形成されている。なお、空間B2は密閉状態にするのが望ましいが、必ずしもそうである必要はない。
【0019】
前記可動接点50は、固定接点51,52に対向位置し、前記側板12の内面に固定されたアクチュエータ53に支持固定されている。前記アクチュエータ53は水との接触により膨張するPVAスポンジなどの材料をもって板状に形成されたものであり、その板状体の一表面に可動接点50が接着されている。PVAスポンジは、微細な連続気孔構造をもち、親水性、吸収性、および保水性に優れている。このPVAスポンジに代えて例えば水膨張ゴム発泡体を用いてもよい。水膨張ゴム発泡体は一般に天然ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムなどをベースとし、水膨張性を有するものである。可動接点50はアクチュエータ53の膨張時に固定接点51,52と接触する位置まで変位するように固定接点51,52との対向距離が設定されている。可動接点50が固定接点51,52に接触したとき、固定接点51,52間が可動接点50を介して導通する。なお、リード線を通す前記貫通孔15aや連通孔17aを水膨張ゴムを用いてシールすれば、第1の室Aおよび第2の室Bの空間B2の防水性を高めることができる。
【0020】
図4は、救難用点灯装置1の構成を電気回路として示したものである。同図において、4は乾電池、2は表示灯であり、この表示灯2の点灯回路6中に前記接点機構5が介装されている。接点機構5は、固定接点51,52と、固定接点51,52に対向配置される可動接点50と、可動接点50を支持し水との接触により膨張して可動接点50を固定接点51,52と接触する位置まで変位させるアクチュエータ53とを含んでいる。なお、前記点灯回路6は、前記したリード線3,30〜32に介して乾電池4、表示灯2、および接点機構5が接続されることにより構成されるものである。
【0021】
前記点灯回路6には、図5に示すような自己保持回路60を設けてもよい。この自己保持回路60は、前記接点機構5が閉動作して点灯回路6が通電したとき、その通電状態を保持する。図示例の自己保持回路60は、リレー61と常開のリレー接点62とで構成されている。リレー接点62は接点機構5と並列に接続してある。この実施例によれば、接点機構5が閉動作したとき、リレー61が付勢されてリレー接点62が閉じるので、その後、接点機構5が開動作や開閉動作を行っても点灯回路6の通電が安定した状態で保持される。
【0022】
上記した構成の救難用点灯装置が着水していない状態では、接点機構5の可動接点50は固定接点51,52から離れて定位し、接点機構5は開いている。その結果、点灯回路6は通電せず、表示灯2は点灯しない。救難用点灯装置が着水すると、ケース10の第2の室Bの空間B1に水が浸入するので、アクチュエータ53は水と接触して膨張する。これにより、可動接点50は固定接点51,52と接触する位置まで変位し、固定接点51,52間が可動接点50を介して導通し、接点機構5が閉じる。その結果、点灯回路6は通電し、表示灯2が点灯する。なお、着水時、ケース10の第1の室Aには水が浸入せず、乾電池4が水に浸ることがないので、動作に支障をきたすおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施例である救難用点灯装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】端板の一部を破断した側面図である。
【図4】救難用点灯装置の構成を示す電気回路図である。
【図5】表示灯の点灯回路の他の実施例を示す電気回路図である。
【図6】救命胴衣の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 救難用点灯装置
2 表示灯
3,30 リード線
4 乾電池
5 接点機構
6 点灯回路
10 ケース
50 可動接点
51,52 固定接点
53 アクチュエータ
60 自己保持回路
A 第1の室
B 第2の室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾電池を電源とする表示灯の点灯回路中に接点機構が介装されて成り、前記接点機構は、固定接点と、固定接点に対向配置される可動接点と、水との接触により膨張して可動接点を固定接点と接触する位置まで変位させるアクチュエータとを含んでおり、前記乾電池および接点機構はケース内に、表示灯はケース外に、それぞれ配置され、前記ケースには前記乾電池が配置される密閉された第1の室と、前記接点機構が配置される透水可能な第2の室とが設けられて成る救難用点灯装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、水との接触により膨張する材料をもって形成された板状体であり、その板状体の一表面に可動接点が接着され、板状体の他表面がケースに固定されている請求項1に記載された救難用点灯装置。
【請求項3】
前記乾電池は、ケースの第1の空間に熱が遮断された状態で収納されている請求項1に記載された救難用点灯装置。
【請求項4】
前記点灯回路は、接点機構が閉動作して通電したとき、通電状態を保持する自己保持回路を含んでいる請求項1に記載された救難用点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−256393(P2006−256393A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73973(P2005−73973)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(391010390)浦工株式会社 (8)
【出願人】(504422287)
【Fターム(参考)】