説明

散乱光測定方法およびそれに用いる散乱光測定装置

【課題】 容易且つ高感度で散乱光を測定する方法、ならびに、それに用いる散乱光測定装置を提供する。
【解決手段】 光源から試料に光を照射し、前記試料に照射された照射光における前記試料を透過した直接光の受光部への到達を遮断し、散乱光を受光部で受光する。このように直接光を遮断することで、容易に高感度で散乱光を測定できる。この方法は、光を出射する光源と、光を受光する受光部と、試料を配置する試料配置部と、光を遮断する遮光部とを有し、前記受光部が、前記光源からの照射光の光路方向に配置され、前記試料配置部が、前記光源と前記受光部との間に配置され、前記遮光部が、試料配置部と前記受光部との間であって、前記試料を透過する直接光の光路途中に配置されている装置によって、容易に実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱光の測定方法、それに用いる散乱光測定装置および試料保持用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粒子径の測定や目的物質の検出において、散乱光の測定が採用されている。散乱光の測定には、精密性が重要であり、例えば、散乱光の測定装置についても、非常に厳密な構造設計が求められている。具体的には、例えば、コヒーレントな光を出射できる光源の使用や、光学レンズの厳密な配置、特定方向(角度)の散乱光を受光するための受光部の厳密な位置決定等が行われている。また、散乱光を効率良く受光するために、例えば、複数の受光部を複数の角度に設置したり、装置内において、必要な角度の散乱光を受光できる領域に受光部を移動させるという方法がとられている。
【0003】
しかしながら、厳密な構造設計には、コストがかかり、また、厳密性が損なわれると、測定精度に影響を及ぼすという問題がある。また、光学レンズや受光部等を厳密に配置することによって、例えば、装置が大きくなったり、組立が困難であるという問題がある。さらに、受光部を適宜移動させることにより、測定精度が低下するおそれもある。
【0004】
また、近年、マイクロチップやマイクロタス(μTAS:Micro Total Analysis System)のような、使い捨ての小型分析用具が着目されている。これらの用具は、流路や反応部等が微細化されているため、例えば、試料の軽減、測定時間の短縮化、廃棄物の低減等が期待されている。しかしながら、一方では、流路や反応部が微細であるために、発生する散乱光が極めて小さく、信頼性のある測定感度を得ることができないという問題もある。このために、これらの小型分析用具を使用する場合には、特に、シグナルが小さすぎる散乱光に代えて、直接光で検出している。
【特許文献1】特開2006−292410号公報
【特許文献2】特開2003−215139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、容易且つ高感度で散乱光を測定する方法、ならびに、それに用いる散乱光測定装置および試料保持用具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の散乱光測定方法は、散乱光を測定する散乱光測定方法であって、
光源から前記試料に光を照射する光照射工程と、
前記試料に照射された照射光を受光部で受光する受光工程とを有し、
前記受光工程において、前記照射光における前記試料を透過した直接光の前記受光部への到達を遮断し、前記散乱光を前記受光部で受光することを特徴とする。
【0007】
本発明の散乱光測定装置は、本発明の散乱光測定方法に使用する散乱光測定装置であって、
光を照射する光源と、光を受光する受光部と、試料を配置する試料配置部と、光を遮断する遮光部とを有し、
前記受光部が、前記光源からの照射光の光路方向に配置され、
前記試料配置部が、前記光源と前記受光部との間に配置され、
前記遮光部が、試料配置部と前記受光部との間であって、前記試料を透過する直接光の光路途中に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の試料保持用具は、本発明の散乱光測定方法に使用する試料保持用具であって、
試料保持部と光を遮断する遮光部とを備え、
前記遮光部が、前記試料を透過する直接光の光路途中に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、試料を透過する直接光を遮断することで、散乱光を容易に効率よく受光することが可能となった。特に、近年、注目されているマイクロチップやマイクロタスのように、微細な領域に試料が配置される場合、従来の方法では、前述のように、精密な測定や特殊な装置を使用しなければ、ほとんど散乱光を受光することができず、必要な測定感度が得られないという問題があった。しかしながら、本発明によれば、例えば、マイクロチップ等を使用した場合でも、試料を透過する直接光を遮断するのみで、必要な散乱光を測定することが可能である。このため、本発明の方法、ならびに、それに使用する散乱光測定装置や試料保持用具は、散乱光測定が必要なあらゆる分野において、極めて有用といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<散乱光測定方法>
本発明の散乱光測定方法は、前述のように、散乱光を測定する散乱光測定方法であって、光源から前記試料に光を照射する光照射工程と、前記試料に照射された照射光を受光部で受光する受光工程とを有し、前記受光工程において、前記照射光における前記試料を透過した直接光の前記受光部への到達を遮断し、前記散乱光を前記受光部で受光することを特徴とする。
【0011】
散乱光とは、一般に、媒質中で進路を変えた光を意味するが、本発明においては、広義に、反射光や屈折光等の意味も含む。
【0012】
本発明においては、前記試料を透過した直接光を遮断することで、容易に散乱光の効果的な受光を実現したことが特徴であり、直接光をどのようにして遮断するかは、何ら制限されない。遮断の方法としては、例えば、前記直接光が受光部に到達する前に、試料を透過した直接光を反射させたり、吸収する方法等があげられる。
【0013】
本発明の散乱光測定方法を適用する試料の種類は、何ら制限されず、散乱光の測定が求められる試料であれば、あらゆるものに適用できる。また、試料の形態も何ら制限されず、例えば、溶液、分散液、懸濁液等の液体、ゲル、固体、気体、エアロゾル等があげられる。具体例としては、例えば、目的成分の分析や定量、粒子径の測定等に適用可能である。なお、本発明は、これらには何ら制限されない。
【0014】
このような本発明の散乱光測定方法は、例えば、以下に示す本発明の散乱光測定装置や本発明の試薬保持用具を使用することによって実現できる。なお、本発明は、これらには限定されない。
【0015】
<散乱光測定装置>
本発明の散乱光測定装置は、前述のように、本発明の散乱光測定方法に使用する散乱光測定装置であって、光を照射する光源と、光を受光する受光部と、試料を配置する試料配置部と、光を遮断する遮光部とを有し、前記受光部が、前記光源からの照射光の光路方向に配置され、前記試料配置部が、前記光源と前記受光部との間に配置され、前記遮光部が、前記試料配置部と前記受光部との間であって、前記試料を透過する直接光の光路途中に配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の散乱光測定装置によれば、例えば、従来の散乱光測定装置のように、散乱光を受光するために受光部を必要な角度に移動させたり、複数の受光部を複数の角度に設置する必要がない。また、本発明の散乱光測定装置によれば、例えば、光源、受光部および試料配置部の位置を固定できる。このように位置関係を安定させることが可能であることから、例えば、測定精度の信頼性を維持することができる。
【0017】
前記遮光部は、例えば、光を吸収したり、光を反射することが好ましい。具体的に、前記遮光部は、光吸収材料または光反射材料を含むことが好ましく、特に光反射材料を含むことが好ましい。また、前記遮光部は、光吸収材料および光反射材料の両者を含んでもよい。前記光吸収材料としては、特に制限されないが、例えば、黒色塗料、酸化第二銅や酸化コバルト等の黒色粉末(無機粉末)、カーボン、黒色プラスチック、黒アルマイト等があげられる。前記光反射材料としては、特に制限されないが、鏡面材料や鏡面加工材料、白色塗料、酸化チタンや酸化アルミニウム等の白色粉末等があげられる。前記鏡面材料および鏡面加工材料としては、例えば、セラミックや金属等があげられる。前記遮光部は、例えば、全体が、前述のような光吸収材料または光反射材料を含んでもよいし、基材の表面に、前述のような材料をコーティングしたり、前述のような材料を含むフィルムを貼り付ける(シールする)ことによっても形成できる。前者において前記各種材料を混入させる基材の材質、または、後者において前記各種材料でコーティングする基材の材質としては、特に制限されないが、例えば、アクリル等の透過性ポリマーがあげられる。また、受光部を覆うカバー部材において、直接光の遮断が必要な領域が、前述のような材料を含んでもよい。この場合、カバー部材において、前記遮光部以外は、後述するような光を透過する材料から構成されていることが好ましい。また、例えば、受光部を覆うカバー部材の表面において、直接光の遮断が必要な領域に、前述のような材料をコーティングしたり、前述のような材料を含むフィルムを貼り付けてもよい。前記カバー部材は、例えば、前記光を透過する材料から形成されていることが好ましい。
【0018】
前記遮光部は、特に、光を反射することが好ましい。このように遮光部で光が反射されると、反射光が前記試料に照射されるため、前記試料に、複数回(2回以上)光が照射される。これによって、受光部で受光する散乱光を、より一層増加できる。
【0019】
前記遮光部の大きさおよび形状は、前記試料を透過した直接光を遮断できれば特に制限されないが、例えば、それに加えて不要な角度の散乱光を同様に遮断できる大きさおよび形状であってもよい。
【0020】
また、本発明の散乱光測定装置は、例えば、直接光を遮断する遮光部の他に、さらに、試料を透過した不要な角度の散乱光を遮断する遮光部を備えてもよい。これによって、例えば、必要な角度の散乱光のみを選択して、受光することが可能となる。
【0021】
本発明の散乱光測定装置は、例えば、測定の際、前記試料配置部に、試料保持部を有する試料保持用具が配置されることが好ましい。この場合、例えば、前述の光照射工程に先立って、前記試料保持用具の試料保持部に試料を供給(配置)した後、これを前記散乱光測定装置の試料配置部に配置して、前記試料保持用具内の試料に、前記光源からの光(出射光)を照射する。また、前記光照射工程に先立って、前記散乱光測定装置の試料配置部に前記試料保持用具を配置した後、前記試料保持用具の試料保持部に試料を供給(配置)してもよい。
【0022】
前記試料保持用具としては、例えば、断面形状が凹部である試料保持部を備える構造が例示できる。また、例えば、流路を備える構造であってもよい。具体例としては、試料の導入口、流路および試料保持部を有し、前記導入口と前記試料保持部とが、前記流路で連結された構造が例示できる。また、例えば、導入口および流路を有し、前記導入口と前記流路が連結されており、前記流路の一部が試料保持部を兼ねてもよい。このような試料保持用具としては、特に制限されず、例えば、セル、チップ、マイクロチップ、マイクロチューブ、バイオリアクター等、従来公知の用具が使用できる。
【0023】
前記試料保持用具において、前記試料への照射光の光路方向における前記試料保持部の長さは、特に制限されないが、例えば、10〜1000μmの範囲であり、好ましくは50〜500μmであり、より好ましくは100〜400μmである。この長さは、例えば、セル長、光路長ということもできる。
【0024】
また、本発明の散乱光測定装置は、例えば、前記試料配置部に、直接、試料が供給(配置)されてもよい。この場合、前記試料配置部としては、例えば、散乱光測定装置内に形成された、試料を保持するための流路や凹部等があげられる。前記試料配置部の形状や大きさは、特に制限されないが、前記試料配置部に試料を配置した際、前記光源からの照射光の光路方向における試料が占める領域の長さ、すなわち、装置内部に充填された試料の前記光路方向の厚みは、例えば、10〜1000μmの範囲であり、好ましくは50〜500μmであり、より好ましくは100〜400μmである。
【0025】
本発明の散乱光測定装置において、受光部の種類は、特に制限されないが、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトマルチプライヤーチューブ等の受光素子があげられる。受光部における受光素子の数は、特に制限されないが、少ない個数であることが好ましく、特に好ましくは1個である。
【0026】
本発明の散乱光測定装置において、光源の種類は、特に制限されないが、例えば、LED、LD、レーザー、水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ等があげられる。また、その波長は、特に制限されないが、例えば、260〜1100nmの範囲であり、好ましくは310〜650nmであり、より好ましくは365〜415nmである。光源から照射される光の直径は、例えば、出射部の絞りで調節できる。前記出射部と光源とは、例えば、光ファイバー等で連結される。
【0027】
本発明の散乱測定装置において、光源としては、例えば、小径の光源(「点光源」ともいう)や線光源があげられる。小径の光源の場合、例えば、円周方向での散乱光を受光できることから、感度の向上が可能である。また、線光源の場合、例えば、スリット構造にすることで、感度の向上が可能である。
【0028】
本発明の散乱光測定装置は、例えば、さらに、受光部が散乱光を受光することにより発生する電圧を増幅する増幅器、電流変化を電圧変化に変化させるI/V回路、電圧をデジタル値に変換するAD変換器等を備えてもよい。また、散乱光測定装置は、さらに、電流値を光強度(散乱光強度)に変換したり、光源の発光を調節したり、電流のデジタル値を光強度(散乱光強度)に変換等するためのCPU等を備えてもよい。
【0029】
以下、本発明の散乱光測定装置の具体例について、図1〜図3を用いて説明する。これらの実施形態は、試料配置部に試料保持用具を配置して使用する散乱光測定装置の例である。なお、本発明は、これらの実施形態には制限されない。
【0030】
(実施形態1)
実施形態1は、光源として小径の光源を備える散乱光測定装置の一例である。
【0031】
図1は、試料保持用具が配置された散乱光測定装置の斜視図であり、図2は、図1のA−A方向断面図である。なお、図1は、便宜上、各構成部材を離して表した概略図である。両図に示すように、散乱光測定装置は、光源11、受光部16、第1の遮光部14および第2の遮光部13を備える。本実施形態において、第1の遮光部14は、試料を透過した直接光を遮断するための部材であり、第2の遮光部13は、試料を透過した不要な角度の散乱光を遮断するための部材である。受光部16は、光源11に対向する位置に配置されており、具体的には、光源11からの照射光Xの光路方向に配置されている。また、受光部16の光源11側表面には、第1の遮光部14および第2の遮光部13が配置されている。そして、散乱測定装置は、使用時において、受光部16上に、第1の遮光部14および第2の遮光部13を介して、試料保持部に試料15が保持された試料保持用具12が配置される。散乱光測定装置において、試料保持用具12が配置される部位が、いわゆる試料配置部である。試料保持用具12は、カバー基板12aと支持基板12bとを含む。支持基板12bの表面には、試料保持部15として凹状の溝が形成されており、前記溝が形成された表面にカバー基板12aが被覆されている。この散乱光測定装置において、第1の遮光部14は、光源11からの照射光Xのうち、試料15を透過した直接光X’の光路途中に配置されており、第2の遮光部13は、光源11からの照射光Xのうち、試料15を透過し、且つ、不要な角度に進路を変えた散乱光の光路途中に配置されている。
【0032】
前記散乱光測定装置において、第1の遮光部14の形状は、特に制限されず、例えば、光源の種類によって適宜決定できる。本実施形態のように光源が小径の光源の場合、遮光部14の平面形状は、円形であることが好ましい。なお、前記平面とは、試料を透過した直接光が照射される面を意味する。また、散乱光測定装置において、第1の遮光部14は、その中心が前記小径の光源からの照射光の中心と対向していることが好ましい。
【0033】
散乱光測定装置における各部の大きさは、特に制限されず、例えば、試料保持用具12の大きさや、試料保持用具12における試料保持部15の大きさ等によって適宜決定できる。また、既存の分光光度計等の光強度測定装置を利用して、本発明の散乱光測定装置を製造する場合は、例えば、分光光度計の各部の大きさにあわせて、遮光部等の大きさを設定することができる。以下、試料保持用具を一般的なマイクロチップと仮定して、散乱光測定装置の各部の大きさについて述べるが、これらの記載は一例であって、本発明を限定するものではない。
【0034】
第1の遮光部14の大きさは、特に制限されず、例えば、小径の光源11からの照射光の直径や、小径の光源11から照射光が出射される位置と光源側の試料表面との距離、試料保持用具の厚み等を考慮して、適宜決定できる。具体例としては、例えば、小径の光源からの照射光の直径と、前記遮光部の平面の直径との比が、1:2〜100であることが好ましく、より好ましくは1:20〜100であり、特に好ましくは1:40〜60である。なお、ここでいう照射光の直径とは、例えば、出射時の照射光の直径を意味する。
【0035】
第1の遮光部14は、光を遮断できればよく、その厚みは何ら制限されない。同図に示すように、遮光部として光を遮断する部材を配置する場合、厚みの上限は、例えば、1mm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.1mmであり、厚みの下限は、例えば、0.05mm(50μm)以下であることが好ましい。また、コーティングやシール等の場合、厚みの上限は、例えば、1mm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.1mmであり、厚みの下限は、特に制限されないが、例えば、0.05mm(50μm)程度である。
【0036】
小径の光源からの照射光(例えば、出射時の照射光)の直径は、特に制限されないが、一般的に、20〜800μmであることが好ましく、より好ましくは20〜400μmであり、特に好ましくは40〜100μmである。
【0037】
小径の光源11から照射光が出射される位置と、光源側の試料15表面または試料保持用具12の光源側表面との距離は、特に制限されないが、一般的に、0〜10mmであることが好ましく、より好ましくは1〜5mmであり、特に好ましくは1〜3mmである。
【0038】
光源側の試料15表面と受光部16表面との距離は、特に制限されないが、一般的に、1〜50mmであることが好ましく、より好ましくは1〜20mmであり、特に好ましくは2〜5mmである。
【0039】
試料保持用具12の大きさ、形状、材質等は、特に制限されないが、一般的なマイクロチップが例示できる。一般的なマイクロチップの場合、その大きさは、例えば、全体の長さ20〜200mm、全体の幅20〜150mm、全体厚み0.1〜10mmである。試料保持部15の厚み、すなわち、光源11からの照射光の光路方向の長さ(セル長)は、例えば、10〜1000μmの範囲であり、好ましくは100μmである。
【0040】
試料保持用具12における試料保持部15の形状は、特に制限されないが、例えば、小径の光源の場合、その平面形状が円形であることが好ましい。前記平面とは、例えば、試料保持部15において、光源11からの照射光Xが照射される面を意味する。試料保持部15の平面の直径は、例えば、0.1〜10mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2mmであり、特に好ましくは0.7〜0.8mmである。また、試料保持部15に保持される試料の体積は、例えば、1〜1000μLであることが好ましい。
【0041】
試料保持用具12の材質は、特に制限されないが、一般的に、バックグラウンドを低減するため、光透過性の材質であることが好ましい。前記材質としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルポリキサン(PDMS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PS(ポリスチレン)等の重合体、ガラス等があげられる。なお、試料保持用具の具体的な形状は、例えば、後述する本発明の試料保持用具と同様である。ただし、本発明の散乱光測定装置に使用する試料保持用具は、後述するような遮光部を備えていなくともよい。
【0042】
この散乱光測定装置を用いて、例えば、以下のようにして本発明の散乱光測定方法を実施できる。まず、前述のように、試料保持用具12の試料保持部に試料15を供給した後、これを所定の位置に配置する。そして、光源11から照射光Xを出射し、試料保持用具12の試料15に照射する。すると、試料15に照射された照射光Xのうち、試料15を透過する直接光X’は、第1の遮光部14で遮断され、下方に位置する受光部16への到達が妨げられる。また、試料15に照射された照射光Xのうち、試料15を透過し、且つ、不要な角度に進路を変えた散乱光は、第2の遮光部13で遮断され、下方に位置する受光部16への到達が妨げられる(図示せず)。他方、試料15との接触により発生した散乱光のうち、試料15を透過し、且つ、第1の遮光部14と第2の遮光部13との間に到達した散乱光は、下方に位置する受光部16で受光される。このように、直接光を遮断し、さらに、不要な散乱光遮断することで、より効率よく必要な散乱光を受光することができる。なお、第2の遮光部13は、任意であり、本発明を限定するものではない。
【0043】
また、遮光部のうち、特に第1の遮光部14は、光を反射することが好ましい。この場合、図2において、試料15を透過した直接光X’は、第1の遮光部14に到達すると、反射によって試料15の方向に進路を変える。この反射光が試料15に照射されることによって、さらに散乱光が発生するため、散乱光の発生量をより一層増加できる。このため、より一層測定感度を向上することができる。また、第1の遮光部14が光を反射する場合、照射光を照射する側に、さらに、受光部を設けてもよい。このように受光部を設けることで、例えば、試料15を通過した直接光X’のうち再度試料15を通過した直接光を受光することができる。これによって、受光部16で目的の散乱光のみを受光し、且つ、さらなる受光部で試料を透過した直接光(いわゆる透過光)をも受光できる。
【0044】
なお、本実施形態は、受光部16の上に遮光部のみからなる部材13、14を配置する形態であるが、これには制限されない。例えば、前述のような、遮光部を有するカバーを受光部14上に配置してもよい。これは、例えば、光を透過するカバー部材を準備し、遮断が必要な領域に、光を遮断するフィルムをシールしたり、光を遮断する材料をコーティングすること等によって作製できる。
【0045】
(実施形態2)
実施形態2は、光源として線光源を備える散乱光測定装置の一例である。
【0046】
図3は、試料保持用具が配置された散乱光測定装置の斜視図であり、便宜上、各構成部材を離して示した概略図である。なお、特に示さない限りは、前記実施形態1と同様である。
【0047】
本実施形態における散乱光測定装置は、図3に示すように、光源11が線光源であり、第1の遮光部34の平面形状ならびに第2の遮光部33の内枠の形状がそれぞれ四角形であり、試料保持用具12における試料保持部35の平面形状が四角形である以外は、実施形態1と同様である。なお、図3において、矢印Yを長手方向、矢印Zを長手方向に対して垂直方向という。
【0048】
前記散乱光測定装置において、第1の遮光部34の形状は、特に制限されないが、本実施形態のように光源が線光源の場合、遮光部の平面形状は、四角形であることが好ましい。なお、前記平面とは、試料を透過した直接光が照射される面を意味する。また、散乱光測定装置において、第1の遮光部34は、その長手方向(Y方向)が、線光源からの照射光の長手方向(Y方向)に対向していることが好ましい。
【0049】
第1の遮光部34の大きさは、特に制限されないが、例えば、前記線光源からの照射光の長手方向(Y方向)の長さと、前記遮光部の前記長手方向(Y方向)の長さとの比が、1:1〜100であることが好ましく、より好ましくは1:1〜10であり、特に好ましくは1:1〜3である。また、前記照射光の長手方向に対する垂直方向(Z方向)の長さと、前記遮光部の前記垂直方向(Z方向)の長さとの比が、例えば、1:1〜100であることが好ましく、より好ましくは1:1〜10であり、特に好ましくは1:2〜5である。なお、本発明において、線光源からの照射光の長手方向(Y方向)の長さとは、例えば、出射時の長さを意味する。
【0050】
出射時における線光源からの照射光の長さ(Y方向の長さ)は、特に制限されないが、一般的に、10〜3000μmであることが好ましく、より好ましくは100〜2000μmであり、特に好ましくは800〜1500μmである。
【0051】
試料保持用具12における試料保持部35の形状は、特に制限されないが、例えば、線光源の場合、その平面形状が四角形であることが好ましい。前記平面とは、例えば、試料保持部35において、光源11からの照射光Xが照射される側の面を意味する。試料保持部35において、前述の長手方向(Y方向)の長さは、例えば、10〜150mmであることが好ましく、より好ましくは20〜100mmであり、特に好ましくは50〜80mmである。また、試料保持部35において、前述の長手方向に対する垂直方向(Z方向)の長さは、例えば、10〜150mmであることが好ましく、より好ましくは20〜100mmであり、特に好ましくは50〜80mmである。
【0052】
<試料保持用具>
本発明の試料保持用具は、前述のように、本発明の散乱光測定方法に使用する試料保持用具であって、試料保持部と光を遮断する遮光部とを備え、前記試料を透過する直接光の光路途中に配置されていることを特徴とする。
【0053】
本発明の試料保持用具によれば、例えば、従来の散乱光測定装置のように、散乱光を受光するため、受光部を必要な角度に移動させたり、複数の受光部を複数の角度に設置する必要がない。また、本発明の試料保持用具によれば、例えば、散乱光の測定装置における光源、受光部および試料配置部の位置を固定できる。このように位置関係を安定させることが可能であることから、例えば、測定精度の信頼性もより向上できる。また、試料保持用具に遮光部を設けるのみで足りることから、例えば、既存の光強度測定装置に適用することができる。
【0054】
本発明の試料保持用具における前記遮光部は、試料を通過する直接光の光路途中に配置されていればよく、特に制限されない。また、前記遮光部は、試料保持用具に配置されていること以外は、前述した本発明の散乱光測定装置における遮光部と同様である。また、本発明の試料保持用具は、遮光部を有すること以外は、例えば、前述した本発明の散乱光測定装置に使用する試料保持用具と同様である。
【0055】
本発明の試料保持用具は、前述のような遮光部を備えていればよく、例えば、既存の分光光度計、散乱光測定装置等の光強度測定装置に配置して使用できる。また、前記装置としては、例えば、本発明の散乱光測定装置を使用することもでき、この場合、散乱光測定装置は、前述の遮光部を備えていなくともよい。
【0056】
本発明の試料保持用具は、例えば、試料保持部や、後述するような試料の導入口と試料保持部とを連結する流路に、さらに、所望の試薬が配置されてもよい。試料中の目的成分を散乱光の受光により検出または定量する場合、例えば、抗原、抗体、ラテックスや酵素等が結合した抗原や抗体、酵素、発色基質等の様々な試薬と、試料中の目的成分とを反応させて、その反応物に光を照射して、散乱光の測定が行われることがある。このため、例えば、目的成分の種類に応じて、適宜、必要な試料を配置することで、試料保持用具内で検出に必要な反応を行い、且つ、同じ試料保持用具を用いて、散乱光の検出を行うこともできる。
【0057】
以下、本発明の試料保持用具の具体例について、図4および図5を用いて説明する。なお、本発明は、これらの実施形態には制限されない。
【0058】
(実施形態3)
実施形態3は、試料保持部の平面形状が円形である試料保持用具の一例である。なお、本実施形態の試料保持用具は、遮光部を有する以外は、前述した、本発明の散乱光測定装置に使用する試料保持用具と同様である。
【0059】
図4は、試料保持用具40の斜視図であり、(a)は、便宜上、各構成部材を離して示した概略図であり、(b)は、試料保持用具40の上面側からの斜視図であり、(c)は、試料保持用具40の裏面側からの斜視図である。図4に示すように、試料保持用具40は、支持基板42とカバー基板41とを含む。支持基板42の表面には、流路47と流路47に連結された試料保持部45が凹状の溝として形成されている。カバー基板41は、支持基板42の凹状の溝が形成された表面に被覆されており、これによって、流路47の末端(図において右端)が試料の導入口46となる。そして、同図(c)に示すように、試料保持用具40の裏面には、第1の遮光部44と第2の遮光部43とが形成されている。第1の遮光部44は、試料保持用具40におけるカバー基板41の表面から試料保持部45に保持された試料に照射光を照射した際、試料を透過する直接光の光路途中に形成されている。また、第2の遮光部43は、試料保持用具40におけるカバー基板41の表面から試料保持部45に保持された試料に照射光を照射した際、試料を透過し、且つ、不要な角度に進路を変えた散乱光の光路途中に形成されている。なお、本実施形態の試料保持用具における第1の遮光部44は、特に示さない限り、例えば、実施形態1の散乱測定装置における第1の遮光部と同様である。また、第2の遮光部43は、任意であり、本発明を限定するものではない。
【0060】
本実施形態の試料保持用具40に照射する照射光の種類は、特に制限されないが、試料を保持する試料保持部45の平面形状が円形であることから、例えば、小径の光源から出射される光を照射することが好ましい。なお、試料保持部の大きさや、小径の光源からの照射光の条件等は、特に制限されず、前述と同様である。
【0061】
この試料保持用具40を用いて、例えば、以下のようにして本発明の散乱光測定方法を実施できる。まず、試料保持用具40の試料保持部45に試料を供給する。そして、試料を保持させた試料保持用具40を、既存の分光光度計や散乱光測定装置等の、光を受光してその強度を測定可能な装置に配置する。このような装置の構成は、特に制限されないが、例えば、光を出射する光源と、光を受光する受光部と、試料を配置する試料配置部とを有し、前記受光部が、前記光源からの照射光の光路方向に配置され、前記試料配置部が、前記光源と前記受光部との間に配置された装置があげられる。具体的な構成として、例えば、本発明の散乱光測定装置と同様のものがあげられるが、本実施形態においては、散乱光測定装置に遮光部が配置されていなくともよい。このような装置の前記試料配置部に試料保持用具40を配置し、前記光源からの照射光を試料保持用具40のカバー基板41表面側から試料保持部45の試料に照射する。すると、試料への照射光のうち、試料を透過する直接光は、第1の遮光部44で遮断される。また、試料への照射光のうち、試料を透過し、且つ、不要な角度に進路を変えた散乱光は、第2の遮光部43で遮断される。他方、試料との接触により発生した散乱光のうち、試料を透過し、且つ、第1の遮光部44と第2の遮光部43との間の領域に到達した散乱光は、試料保持用具40の支持基板42を通過し、試料保持用具40の下方に位置する受光部で受光される。このように、直接光を遮断し、さらに、不要な散乱光遮断することで、効率よく必要な散乱光を受光することができる。なお、第2の遮光部43は、任意であり、本発明を限定するものではない。
【0062】
なお、試料保持用具40の内部への試料の供給方法は、何ら制限されず、試料保持用具40は、例えば、試料を導入するために、さらなる部位を備えてもよい。例えば、カバー基板41は、試料保持部45の上方に空気孔を有してもよい。このような形態によれば、例えば、毛管現象によって、試料の導入口46から内部に試料を導入できる。また、シリンジ等を用いた加圧によって、試料保持用具40の内部に試料を導入することもできる。また、試料保持部が、さらに、別の流路と連結しており、前記流路の末端開口部から試料保持用具40の内部を減圧することによって、導入口46より前記内部に試料を導入することもできる。また、前記流路の末端開口部から、例えば、ポンプやシリンジ等を用いて吸引することによって、導入口46より前記内部に試料を導入することもできる。
【0063】
(実施形態4)
実施形態4は、流路が試料保持部を兼ねている試料保持用具の一例である。なお、本実施形態の試料保持用具は、遮光部を有する以外は、前述した、本発明の散乱光測定装置に使用する試料保持用具と同様である。
【0064】
図5は、試料保持用具50の斜視図であり、(a)は、便宜上、各構成部材を離して示した概略図であり、(b)は、試料保持用具50の上面側からの斜視図であり、(c)は、試料保持用具50の裏面側からの斜視図である。図5に示すように、本実施形態の試料保持用具50は、流路57の一部が、光照射を受ける試料保持部55を兼ねており、第1の遮光部54の平面形状ならびに第2の遮光部53の内枠の形状がそれぞれ四角形である以外は、実施形態3と同様である。具体的には、支持基板42の表面には、流路57と流路57に連結された廃液部51が凹状の溝として形成されている。また、同図(c)に示すように、試料保持用具50の裏面には、第1の遮光部54と第2の遮光部53とが形成されている。実施形態3と同様に、第1の遮光部54は、試料を透過する直接光の光路途中に形成されており、第2の遮光部53は、試料を透過し、且つ、不要な角度に進路を変えた散乱光の光路途中に形成されている。なお、本実施形態の試料保持用具50における第1の遮光部54は、特に示さない限り、例えば、実施形態2の散乱測定装置における第1の遮光部と同様である。また、第2の遮光部53は、任意であり、本発明を限定するものではない。
【0065】
本実施形態の試料保持用具50に照射する光の種類は、特に制限されないが、試料を保持する流路57(光照射される試料保持部55)の平面形状が四角形であることから、例えば、線光源から出射される光を照射することが好ましい。なお、試料保持部55の大きさや、線光源からの照射光の条件等は、特に制限されず、前述と同様である。
【0066】
本実施形態の試料保持用具も、例えば、実施形態3の試料保持用具と同様にして使用できる。また、試料保持用具50の内部に導入された試料は、例えば、その余剰が廃液部51に送られてもよい。
【0067】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
直接光を遮断する遮光部を設けた本発明の散乱光測定装置を用いて、抗原CRPと抗体との抗原抗体反応液について散乱光強度の測定を行った。
【0069】
(アビジン−ビオチン化抗CRP抗体の作製)
まず、抗CRP抗体にビオチンを結合させた。12.2mg/mlの抗CRP抗体(オリエンタル酵母社)3mlに、10mMのビオチン水溶液(溶媒:水)494.2μlを加え、その混合液を室温で静置した。前記ビオチンとしては、NHS-LC-LC-biotin(PIERCE社)を使用した。前記混合液を遠心脱塩カラムZeba(商標)Desalt Spin Columns(PIERCE社)に供し、1,000×g、2分、20℃の条件で遠心して、未反応のビオチンを除去した。そして、前記カラム内に残ったビオチン化抗CRP抗体を含む溶液を回収し、限外ろ過フィルター(分画分子量100kDa)に供して、3,600×rpm、20分、20℃の条件で遠心し、ビオチン化抗CRP抗体を濃縮した。ここで、抗CRP抗体のビオチンラベル率を、HABA置換法により決定した。この結果、抗体一分子あたりビオチンが一分子以上結合していることを確認した。また、続くアビジン化に先立って、ビオチン化抗CRP抗体を含む濃縮液について、タンパク質量を測定した。タンパク質量の測定は、280nmにおける吸光度測定により行った。続いて、ビオチン化抗CRP抗体に、さらにアビジンを結合させた。前述のビオチン化抗CRP抗体を含む濃縮液に、2mg/mlアビジン(Calbiochem社)を含むPBS溶液1.35mlを加え、この混合液を室温で5分間静置した。続いて、前記混合液を限外ろ過フィルター(分画分子量100kDa)に供して、3,600×rpm、20分、20℃の条件で遠心し、未反応のアビジンの除去およびアビジン-ビオチン化抗CRP抗体の濃縮を行った。このようにしてアビジン−ビオチン化抗CRP抗体を得た。
【0070】
(マイクロセルへの乾燥試薬の配置)
前記アビジン−ビオチン化抗CRP抗体を用いて、下記組成の液体試薬を調製した。この液体試薬29μlを、図6に示す試料保持用具60の試料保持部65に供給し、凍結乾燥することによって乾燥させた。このようにして、試料保持用具60に乾燥試薬を配置した。図6は、試料保持用具の一例を示す斜視図であり、便宜上、各構成部材を離して示した概要図である。同図に示すように、試料保持用具60は、支持基板63とカバー基板61とを含む。支持基板63の表面には、試料導入部64、乾燥試薬が配置された試料保持部65、廃液部66、および、これらを連結する流路67が、凹状の溝として形成されている。カバー基板61は、支持基板63の試料導入部64と対応する箇所に試料導入口62を備え、支持基板63の前記溝が形成された表面に被覆されている。なお、試料保持用具60において、試料保持部65の平面形状、すなわち、光が照射される面の形状は、円形とした。試料保持用具60の詳細は、以下の通りである。
カバー基板
材質:シリコン系のポリエチレンテレフタレート(PET)
厚み:150μm
支持基板
材質:アクリル樹脂
厚み:5mm(試料保持部の底面から支持基板の底面までの長さ)
試料保持部
直径:1.3mm
深さ:約300μm
【0071】
【表1】

【0072】
(散乱光測定装置)
図1に示す散乱光測定装置を組立てた。散乱光測定装置の各部の詳細は、以下の通りである。なお、本実施例においては、図1の試料保持用具12は、前述の図6の試料保持用具60である。
光源:LED(ナイトライド社)
波長:365nm
照射光直径:0.4mm
受光部:フォトダイオード(商品名S2386-44K、浜松ホトニクス製)
第1遮光部
材質:遮光剤カーボンブラックを50%(w/v)含むアクリル
直径:0.8mm
厚み:10μm
第2遮光部
材質:遮光剤カーボンブラックを50%(w/v)含むアクリル
内部直径:25mm
厚み:10μm
【0073】
(CRP濃度測定方法)
ヒト全血から回収したCRPフリーの血清(オリエンタル酵母工業)に、所定濃度(0、0.5、1mg/100ml)となるようにCRP(Capricon Products Inc.社)を添加して、検体を調製した。そして、前述の試料保持用具60の導入口62から各検体20μlを添加し、前記検体を試料導入部64から試料保持部65に移動させ、25℃で4分間インキュベートした後、前記散乱光測定装置を用いて、試料保持部65に光を照射して散乱光強度(365nm)を測定した。なお、試料保持用具60は、図1に示す散乱光測定装置において、試料保持部65に光が照射され、試料を透過した直接光が第1遮光部で遮光されるように配置されている。他方、比較例として、受光部上に遮光部を配置しない以外は同じ構成である散乱光測定装置を用いて、同様にして、散乱光強度を測定した。そして、測定した散乱強度から、光学濃度(O.D.)を算出した。
【0074】
これらの結果を図7に示す。同図は、各CRP濃度における光学濃度を示すグラフである。同図において、■は、遮光部を設けた散乱光測定装置で測定した実施例1の結果であり、◆は、遮光部を設けていない散乱光測定装置で測定した比較例1の結果である。
【0075】
同図に示すように、遮光部を設けていない比較例1(◆)は、直接光も受光するため、散乱光がほとんど検出できなかった。これに対して、遮光部を設けた実施例1(■)は、直接光の遮光により、高い感度で散乱光を検出できた。
【実施例2】
【0076】
直接光を遮断する遮光部を設けた散乱光測定装置を用いて、牛乳の希釈液について散乱光強度の測定を行った。
【0077】
牛乳の希釈液を検体とした以外は、前記実施例1と同様の装置を用いて、同様にして散乱光の測定を行った。なお、希釈液における牛乳の割合(希釈濃度)は、未希釈牛乳を1として、0.0005、0.001、0.0015、0.002、0.0025とした。
【0078】
これらの結果を図8に示す。同図は、各牛乳希釈濃度における光強度を示すグラフである。同図において、■は、遮光部を設けた散乱光測定装置で測定した実施例2の結果であり、◆は、遮光部を設けていない散乱光測定装置で測定した比較例2の結果である。
【0079】
同図に示すように、遮光部を設けていない比較例2(◆)は、直接光も受光するため、散乱光がほとんど検出できなかった。これに対して、遮光部を設けた実施例2(■)は、直接光の遮光によって、比較例よりも優れた感度で散乱光を検出できた。
【0080】
以上の結果から、遮断部を設けて、試料を透過する直接光を遮断することによって、効果的に散乱光を検出できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明によれば、試料を透過する直接光を遮断することで、散乱光を容易に高感度で受光することが可能となった。特に、近年、注目されているマイクロチップやマイクロタスのように、微細な領域に試料が配置される場合、従来の方法では、前述のように、精密な測定や特殊な装置を使用しなければ、ほとんど散乱光を受光することができず、必要な測定感度が得られないという問題があった。しかしながら、本発明によれば、例えば、マイクロチップ等を使用した場合でも、試料を透過する直接光を遮断するのみで、必要な散乱光を測定することが可能である。このため、本発明の方法、ならびにそれに使用する散乱光測定装置や試料保持用具は、散乱光測定が必要なあらゆる分野において、極めて有用といえる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、本発明の実施形態における散乱光測定装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す前記散乱光測定装置の断面図である。
【図3】図3は、本発明のその他の実施形態における散乱光測定装置を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明のその他の実施形態における試料保持用具を示す概略図であり、(a)は構成部材を離して表した斜視図、(b)は上面側からの斜視図、(c)は裏面側からの斜視図である。
【図5】図5は、本発明のその他の実施形態における試料保持用具を示す概略図であり、(a)は構成部材を離して表した斜視図、(b)は上面側からの斜視図、(c)は裏面側からの斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施例1における試料保持用具の概略を示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施例1において、遮光部を備える散乱光測定装置を用いて測定した散乱光強度とCRP濃度との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の実施例2において、遮光部を備える散乱光測定装置を用いて測定した散乱光強度と牛乳希釈濃度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0083】
11:光源
12、40、50、60:試料保持用具
13、14、33、34、43、44、53、54:遮光部
15、35、45、55、65:試料、試料保持部
16:受光部
12a、41、61:カバー基板
12b、42、63:支持基板
46、62:導入口
47、57、67:流路
64:試料導入部
51、66:廃液部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱光を測定する散乱光測定方法であって、
光源から前記試料に光を照射する光照射工程と、
前記試料に照射された照射光を受光部で受光する受光工程とを有し、
前記受光工程において、前記照射光における前記試料を透過した直接光の前記受光部への到達を遮断し、前記散乱光を前記受光部で受光することを特徴とする、散乱光測定方法。
【請求項2】
前記直接光の吸収および反射の少なくとも一方により、直接光を遮断する、請求項1記載の散乱光測定方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の散乱光測定方法に使用する散乱光測定装置であって、
光を照射する光源と、光を受光する受光部と、試料を配置する試料配置部と、光を遮断する遮光部とを有し、
前記受光部が、前記光源からの照射光の光路方向に配置され、
前記試料配置部が、前記光源と前記受光部との間に配置され、
前記遮光部が、試料配置部と前記受光部との間であって、前記試料を透過する直接光の光路途中に配置されていることを特徴とする散乱光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−8351(P2010−8351A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170733(P2008−170733)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】