説明

散気管清掃装置および散気管清掃方法

【課題】水処理装置の散気管内壁に付着し乾燥・硬化した汚泥を除去する。
【解決手段】フレキシブルシャフト(20)の先端に取り付けたビット(10)をy字管(9)から挿入し、送気管(8)および屈曲管(7)を通し、散気管(6)に至らせ、電動ドリル(30)を回すと、散気管(6)内でビット(10)が回転および振子運動し、散気管(6)の内壁に付着し乾燥・硬化した汚泥を粉砕・剥離する。
【効果】汚泥が散気管(6)内に充満して散気管(6)を詰まらせてしまっている場合でも、汚泥を好適に粉砕、剥離および除去することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置や攪拌装置などの水処理装置に用いる散気管清掃装置および散気管清掃方法に関し、さらに詳しくは、散気管内壁に付着し硬化した汚泥を好適に除去しうる散気管清掃装置および散気管清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理装置の散気管内に清掃ブラシを通し、散気管内を清掃するようにした汚水処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−272467号公報([0011])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水処理装置の散気管から気泡を放出すると、散気管から出て行く気泡と入れ替わるように原水が散気管内に入り、汚泥が散気管の内壁に付着する。この散気管の内壁に付着した汚泥は、散気管に送り込まれた空気により乾燥し、硬化する。そして、ついには汚泥が、散気管内に充満して散気管を詰まらせてしまうこともある。
しかし、上記従来の汚水装置のように清掃ブラシを通すだけでは、散気管内壁に付着し硬化した汚泥を好適に除去できない問題点があった。
そこで、本発明の目的は、水処理装置に用いる散気管内壁に付着し硬化した汚泥を好適に除去しうる水処理装置に用いる散気管清掃装置および散気管清掃方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、水処理施設の水槽内水中に気泡を放出するための散気管および前記散気管に空気を送り込むための送気管のいずれの内径よりも小さい外径を有し且つ重心が回転軸から偏心したビットと、水槽外に置かれるモータと、前記モータから前記送気管内を通り前記散気管まで挿入しうる長さを有し且つ屈曲部がある場合はその屈曲部で曲がると共に前記ビットが振子運動しうる柔軟性を有し前記モータの回転を前記ビットに伝えるフレキシブルシャフトとを具備したことを特徴とする散気管清掃装置を提供する。
上記第1の観点による散気管清掃装置では、フレキシブルシャフトの先端に取り付けたビットを送気管の水槽外の部分から送気管内に挿入し、送気管を通して散気管に至らせる。そして、モータを回すと、散気管内でビットが回転および振子運動するので、散気管内壁に付着し乾燥・硬化した汚泥を好適に除去することが出来る。また、汚泥が散気管内に充満して散気管を詰まらせてしまっている場合でも、汚泥を好適に除去することが出来る。
【0005】
ビットの外径を送気管および散気管のいずれの内径よりも小さくしたのは、管内を通すためである。
また、ビットの重心を回転軸から偏心させたのは、管内径よりも外径が小さいビットを振子運動させて、管内壁に当たるまでビットを振るためである。
【0006】
フレキシブルシャフトをモータから送気管内を通り散気管まで挿入しうる長さとしたのは、モータを水槽外に置くためである。
また、フレキシブルシャフトは、屈曲部がある場合はその屈曲部で曲がると共に、ビットが振子運動しうる柔軟性を有することが必要である。
【0007】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による散気管清掃装置において、前記フレキシブルシャフトが、前記ビットに一端が連結されるビット連結部と、前記ビット連結部の他端に一端が連結され前記ビット連結部の柔軟性よりも低い柔軟性を有する中間部の少なくとも2段になっていることを特徴とする散気管清掃装置を提供する。
上記第2の観点による散気管清掃装置では、フレキシブルシャフトをビット連結部と中間部の少なくとも2段とし、ビット連結部の柔軟性を相対的に高くし、中間部の柔軟性を相対的に低くした。これにより、ビットは、屈曲部がある場合はその屈曲部で曲がって進み易くなると共に振子運動し易くなる。他方、中間部は、捩れを抑えて、回転を好適に伝達することが出来る。なお、中間部は、ビット連結部に先導されて屈曲部を曲がるので、屈曲部の曲がりに支障を生じない。また、ビット連結部の長さだけビットから離れるので、ビットの振子運動にも支障を生じることはない。
【0008】
第3の観点では、本発明は、水処理施設の水槽内水中に気泡を放出するための散気管および前記散気管に空気を送り込むための送気管を備えた水処理用散気装置に対して、請求項1または請求項2に記載の前記フレキシブルシャフトの先端に付けた前記ビットを水槽外から前記送気管内を通して前記散気管まで挿入し前記モータで駆動して回転および振子運動させ、散気管内壁に付着し乾燥・硬化した汚泥を前記ビットで粉砕・剥離することを特徴とする散気管清掃方法を提供する。
上記第3の観点による散気管清掃方法では、フレキシブルシャフトの先端に取り付けたビットを送気管の水槽外の部分から送気管内に挿入し、送気管を通して散気管に至らせる。そして、モータを回すと、散気管内でビットが回転および振子運動するので、散気管内壁に付着し乾燥・硬化した汚泥を好適に除去することが出来る。また、汚泥が散気管内に充満して散気管を詰まらせてしまっている場合でも、汚泥を好適に除去することが出来る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の散気管清掃装置および散気管清掃方法によれば、散気管内壁に付着し乾燥・硬化した汚泥を好適に粉砕、剥離および除去することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係る散気管清掃装置100の使用状態を示す斜視図である。
この散気管清掃装置100は、ビット10と、フレキシブルシャフト20と、電動ドリル30とを具備してなる。
【0012】
例えば、図2に示すように、散気管清掃装置100の使用対象となる膜ろ過装置1は、浸漬膜2と、各浸漬膜2からのろ過水を集めるための集水管3と、各浸漬膜2のろ過水出口と集水管3のろ過水入口とをそれぞれ連結するろ過水管4と、集水管3にろ過水Dを集めるためのポンプ5と、浸漬膜2の下方に水平方向に設置され浸漬膜2の外面を気泡で洗浄するための散気管6と、方向を90゜変える屈曲部7と、屈曲部7により散気管6に連結され垂直方向に立ち上がり原水S外に出て原水S外から散気管6に空気を送り込むための送気管8と、空気口9aおよびビット口9bを有するy字管9と具備している。
散気管6には、散気穴6aが穿設されている。また、屈曲部7と反対側の散気管6の端部は下方に曲げられ且つ端面が開口6bになっている。
【0013】
散気管6と屈曲部7と送気管8とy字管9とは、別体である必要はない。例えば、屈曲部7と送気管8とを一体物としてもよい。
【0014】
ビット10は、送気管8および散気管6と屈曲部7のいずれの内径よりも小さい外径を有している。
【0015】
フレキシブルシャフト20は、電動ドリル30からy字管9および送気管8内を通り屈曲部7で曲がり散気管6の端面開口6bから汚泥(図6のM)を押し出しうる長さを有し且つ屈曲部7で曲がると共にビット10が振子運動しうる柔軟性を有している。
【0016】
図3の(a)はビット10の正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は背面図である。図4は、ビット10の断面図である。
ビット10は、ステンレス製であり、樽形の胴部11に3枚の太刃12と3枚の細刃13が連続して付いている。太刃12は細刃13より重いため、重心は胴部11の中心軸から偏心している。
胴部11には、ボルト孔14と、六角孔15と、円孔16が穿設されている。
【0017】
図5に示すように、フレキシブルシャフト20の先端の六角ナット部21を、ビット10の六角孔15に挿入し、ボルト22を螺合することで、フレキシブルシャフト20の先端にビット10を装着する。
【0018】
図6に示すように、フレキシブルシャフト20は、ビット10に一端が連結されるビット連結部20aと、ビット連結部20aの他端に一端が連結される中間部20bの2段になっている。中間部20bの他端は、電気ドリル30に把持される把持部20cになっている。
ビット連結部20aは、屈曲部7で曲がると共にビット10が振子運動しうる柔軟性を有している。中間部20bは、ビット連結部20aの柔軟性よりも低い柔軟性を有している。
【0019】
図7は、散気管6の清掃状態を示す説明図である。
矢印aのように電動モータ30により中間部20bが回転されると、矢印bのようにビット連結部20aおよびビット10が回転すると共に、矢印cのようにビット10が振子運動する。これにより、散気管6の内壁に付着し乾燥・硬化した汚泥Mを粉砕・剥離することが出来る。
そして、図8に示すように、散気管6の端面開口6bより汚泥Mを排出する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の散気管清掃装置および散気管清掃方法は、浄水、排水および廃水処理施設などの水処理施設で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る散気管清掃装置を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る散気管清掃装置および膜ろ過装置を示す斜視図である。
【図3】実施例1に係るビットを示す正面図、側面図および背面図である。
【図4】実施例1に係るビットを示す断面図である。
【図5】実施例1に係るビットとフレキシブルシャフトの取付けを示す断面図である。
【図6】実施例1に係るフレキシブルシャフトを示す側面図である。
【図7】実施例1に係る散気管からの汚泥の排出状態を示す斜視図である。
【図8】実施例1に係る散気管の清掃状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 膜ろ過装置
2 浸漬膜
3 集水管
4 ろ過水管
5 ポンプ
6 散気管
7 屈曲部
8 送気管
9 y字管
100 散気管清掃装置
D ろ過水
M 汚泥
S 原水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理施設の水槽内水中に気泡を放出するための散気管および前記散気管に空気を送り込むための送気管のいずれの内径よりも小さい外径を有し且つ重心が回転軸から偏心したビットと、水槽外に置かれるモータと、前記モータから前記送気管内を通り前記散気管まで挿入しうる長さを有し且つ屈曲部がある場合はその屈曲部で曲がると共に前記ビットが振子運動しうる柔軟性を有し前記モータの回転を前記ビットに伝えるフレキシブルシャフトとを具備したことを特徴とする散気管清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載の散気管清掃装置において、前記フレキシブルシャフトが、前記ビットに一端が連結されるビット連結部と、前記ビット連結部の他端に一端が連結され前記ビット連結部の柔軟性よりも低い柔軟性を有する中間部の少なくとも2段になっていることを特徴とする散気管清掃装置。
【請求項3】
水処理施設の水槽内水中に気泡を放出するための散気管および前記散気管に空気を送り込むための送気管を備えた水処理用散気装置に対して、請求項1または請求項2に記載の前記フレキシブルシャフトの先端に付けた前記ビットを水槽外から前記送気管内を通して前記散気管まで挿入し前記モータで駆動して回転および振子運動させ、散気管内壁に付着し乾燥・硬化した汚泥を前記ビットで粉砕・剥離することを特徴とする散気管清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−104931(P2010−104931A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280619(P2008−280619)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000193508)水道機工株式会社 (50)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】