説明

散水システム

【課題】加圧ポンプを設けることなく、通常の上水圧力で被散水物を効率的に洗浄する。被散水物表面における上水の拡散性、流動性を高めて上水の消費量を低減する。
【解決手段】上水管(1)から供給される上水をバブル発生手段(5)によりマイクロバブル化またはナノバブル化して生成された散水用上水を被散水物へ散水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物(建物、外壁、建物付随施設等を含む)や車輛、機械器具等の被散水物への散水用途に適した散水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の被散水物を洗浄するには、一般的には被散水物に対して水道水(以下、上水と称する。)を噴射して付着した埃やごみ等の異物を洗い流している。被散水物の洗浄効率は、上水圧力に依存し、より高い圧力で噴射することにより異物を効率的に洗浄している。このため、より高い噴射圧を得るため、上水を流通させるホースの途中に加圧ポンプを設けて圧力を高める必要があり、上記加圧装置により洗浄用に散水システムが高コスト化する問題を有している。
【0003】
また、近年においては、上水の散水による洗浄効率を高めるため、被散水物の表面に酸化チタン膜を塗膜し、散水時の光触媒効果により被散水物表面からの異物の剥離性を高めて除去効率を高めているが、上水自体、被散水物表面での拡散性、流動性が悪いため、被散水物表面に対して大量の上水を散水しなければならず、上水の消費量が増大して洗浄コストが高コスト化する問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開−号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、被散水物の洗浄効率が上水圧力に依存するため、より高い噴射圧を得るには、加圧ポンプを設けて圧力を高める必要があり、上記加圧装置により洗浄用に散水システムが高コスト化する点にある。また、上水自体、被散水物表面での拡散性、流動性が悪いため、被散水物表面に対して大量の上水を散水しなければならず、上水の消費量が増大して洗浄コストが高コスト化する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被散水物に対して上水を散水する散水システムにおいて、上水管から供給される上水をバブル発生手段によりマイクロバブル化またはナノバブル化して生成された散水用上水を被散水物へ散水することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、加圧ポンプを設けることなく、通常の上水圧力で被散水物を効率的に洗浄することができる。また、被散水物表面における上水の拡散性、流動性を高めて上水の消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】散水システムを示す説明図である。
【図2】散水手段の一例を示す説明図である。
【図3】散水システムの変更例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上水管から供給される上水をバブル発生手段によりマイクロバブル化またはナノバブル化して生成された散水用上水を被散水物へ散水することを最適の実施形態とする。
【実施例1】
【0010】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1に示すように本発明の散水システムは、水道管等の上水管1に接続された水栓3はバブル発生手段5の供給口部にホース7を介して接続される。該バブル発生手段5は水栓3から吐出される上水をマイクロバブル化またはナノバブル化してバブル上水を生成する。上記バブル発生手段5により生成されるバブル形態としては、直径が30μm
付近に分布のピークがあり、気泡濃度としては数百個/mL 程度の低濃度型又は10μm 付近に気泡分布のピークがあり、気泡個数が数千個/mL以上の高濃度型のマイクロバブル、若しくは1μm
以下のナノ単位のナノバブルの何れであってもよい。
【0011】
上記バブル発生手段5によるバブル上水の生成方法としては、供給される上水を渦流形成し、この渦流中に空気を巻き込んだ後にファン等で切断、粉砕してマイクロバブルを生成する方法が知られている。また、ナノバブル化されたバブル上水の生成方法としては、上記のように生成されたマイクロバブルを圧壊して生成したり、ナノレベルの無数の穴を有したSPG(シラスポーラスガラス)膜を用い、この膜から圧縮ガスを放出して生成する。これらバブル発生手段5は、従来公知の装置を使用することにより上水をマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用上水に生成する。
【0012】
上記のようにマイクロバブル化またはナノバブル化された散水用上水は、気泡の上昇速度が遅く、水中での滞留状態が長時間にわたって維持される。そして散水用上水の気泡は、負の電荷に帯電し、気泡同士が反発し合って結合することがなく、気泡濃度を長時間にわたって保つことができる。また、上記の散水用上水は、気泡の自己圧壊作用によりラジカル生成されて高いラジカル密度に保たれる。
【0013】
上記バブル発生手段5の吐出側には散水手段9がホース11を介して接続される。上記散水手段9としては、散水用上水を霧状又は筋状に噴射する噴射ノズル、スプリンクラーが適しているが、被散水物が建造物壁面等のような垂直面の場合には、図2に示すように垂直壁面に相対して水平状態に配置され、該垂直壁面に向かって散水用上水を放水したり、垂れ流したりする多数の孔が形成されたパイプ13により構成される。
【0014】
被散水物に対して散水または噴射された散水用上水は、生成された高密度のマイクロバブルまたはナノバブルによる表面電位特性により被散水物に付着した異物を電気的に吸着して効率的に除去することができる。また、散水用上水は、マイクロバブルまたはナノバブルによるラジカル密度が高いため、被散水物に付着した異物を酸化分解して効率的に除去することができる。更に、散水用上水は、マイクロバブルまたはナノバブルにより被洗浄物に対する流動性及び拡散性が高く、被散水物の表面にて効率的に広がりながら流動して付着した異物を効率的に除去することができる。
【0015】
このため、本発明に係る散水用上水で被散水物へ散水して洗浄する場合には、散水用上水を高い圧力で噴射する必要がなく、垂れ流す程度で付着した異物を除去することができ、散水用上水の消費量を低減することができると共に散水用上水の噴射圧力で被散水物が損傷するのを防止することができる。なお、散水手段9をパイプ13とする構成は一例で、これに限定されるものではなく、例えば壁面に対してホースを固定し、該ホースから吐出される散水用上水を直接垂れ流する例であってもよい。
【0016】
特に、酸化チタン層により光触媒処理された被散水物に対して散水する場合にあっては、被覆処理された酸化チタン膜に対して散水用上水を良好に流動及び拡散させて表面電位特性及び高密度ラジカル特性により付着した異物を効率的に除去することができる。
【0017】
また、機械器具、例えば金型等のような被散水物に対して本例に係る散水用上水を散水して異物や付着した油脂を除去する用途にあっては、図3に示すように水栓3とバブル発生手段5の間にろ過手段15を設け、該ろ過手段15により上水に含有された塩類(カルシウム、炭酸ガス等)や残留塩素を減少させたり、除去したりして浄水化または純水化した後にバブル発生手段5によりマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用上水を生成すればよい。上記ろ過手段15としては、フィルター形式、イオン交換膜形式等の何れであってもよい。
【0018】
更に、緑化施設に植えられた樹木や植物(以下、樹木等と称する。)にあっては、これら樹木等が植えられた土壌中の水分がアルカリ性養分の吸収により強酸性化して生育不良を招く恐れがあるが、本発明に係る散水用上水を樹木等への打ち水として散水することにより強酸性化した土壌中の水分を最適なpH値(pH5.5〜6.5)に調整し、樹木等の生育環境を改善することができる。
【0019】
本実施例は、被散水物に対してマイクロバブル化またはナノバブル化された散水用上水を散水することにより被散水物の表面に対して効率的に拡散及び流動させながら付着した異物をマイクロバブルまたはナノバブルによる高い表面電位特性、ラジカル密度で効率的に除去することができる。
【0020】
また、上記のように生成された散水用上水を樹木等へ散水する場合には、樹木が植えられた土壌中の酸性化した水分を最適なpH値へ調整して生育環境を改善することができる。
【0021】
上記説明は、上水管1から供給される上水を直接マイクロバブル化またはナノバブル化して散水用上水を生成して散水可能にするシステムとしたが、マイクロバブル化またはナノバブル化された散水用上水を一旦、処理タンクに溜めた後に必要に応じて処理タンクから取り出して散水可能にするシステム、上水管1からの上水を一旦、貯水タンクに溜めた後に該貯水タンクから供給される上水を上記のようにマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用上水を生成して散水可能にするシステム、上記のように貯水タンクに溜められた上水をマイクロバブル化またはナノバブル化して生成した散水用上水を処理タンクに溜め、必要に応じて処理タンクから散水用上水を取出して散水するシステムの何れであってもよい。この場合にあっては、貯水タンクからバブル発生手段5に至る配管、ホースの途中及び処理タンクから散水手段に至る配管、ホースの途中にポンプをそれぞれ設けて上水またはマイクロバブル化またはナノバブル化された散水用上水を供給できるようにすればよい。
【符号の説明】
【0022】
1 上水管
3 水栓
5 バブル発生手段
7 ホース
9 散水手段
11 ホース
13 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被散水物に対して上水を散水する散水システムにおいて、
上水管から供給される上水をバブル発生手段によりマイクロバブル化またはナノバブル化して生成された散水用上水を被散水物へ散水する散水システム。
【請求項2】
請求項1において、バブル発生手段により上水をマイクロバブル化またはナノバブル化するに先立って上水をろ過手段よりろ過して浄水化または純水化する散水システム。
【請求項3】
請求項1及び2の何れかにおいて、散水用上水は、被散水物を洗浄する用途に使用する散水システム。
【請求項4】
請求項1及び2の何れかにおいて、散水用上水は、被散水物に対する打ち水の用途に使用する散水システム。
【請求項5】
請求項1において、バブル発生手段は上水管から直接供給される上水をマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用上水を生成する散水システム。
【請求項6】
請求項1において、バブル発生手段は上水管から供給される上水を貯水タンクに溜めた後に該貯水タンクから供給される上水をマイクロバブル化またはナノバブル化して散水用上水を生成する散水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43151(P2013−43151A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184240(P2011−184240)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(311009044)株式会社トータルアシスト (3)
【Fターム(参考)】