説明

散水機能を有する粉砕機

【課題】水分を含んでいる被粉砕物を粉砕するときには、粉砕されても円盤の中に留まり、円盤の外へ排出されにくい。そして、排出されにくいにもかかわらず、投入を続けることで、詰まってしまった。この水分を含み、粉砕された粉砕物を円盤の外へスムーズに排出する必要があった。本発明は必要に応じて、液体を供給できる粉砕機を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の第1手段は、固定された上の円盤と、回転する下の円盤と、下の円盤を回転させる駆動手段とより構成するとともに、上の円盤に備えた投入口に液体を供給するための散水手段を設けることを特徴とする散水機能を有する粉砕機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含んでいる被粉砕物に、液体を供給しながらすりつぶす装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉砕にはいくつかの方法があり、被粉砕物が特に食品の場合、ボールミル粉砕機(例えば特許文献1)や、石臼などの上下2枚の円盤による粉砕機(例えば特許文献2、3)、気流式粉砕機やロールクラッシャー、また、気流式と円盤を組み合わせた粉砕機(例えば特許文献4)などがあった。
【0003】
本発明は、上記の円盤による粉砕機に関するものであり、円盤による粉砕機には昔ながらの石臼と最近の機械式の円盤による粉砕機がある。昔ながらの石臼は、上の石臼を手動または自動で低速回転させて粉砕するものが多く、最近の機械式の円盤による粉砕機は下の円盤を回転させて粉砕するものが多い。
【0004】
最近の機械式の円盤による粉砕機は、粉砕の効率を上げるために回転を速くするが、回転が速くなると円盤及び被粉砕物の温度が上がり、変質してしまう可能性が高くなる。従って、機械式の円盤による粉砕機には、円盤の冷却機構がついているものが多い。
【0005】
上記粉砕は、乾燥している被粉砕物を粉にするものである。本発明のように水分を含んでいる被粉砕物に、液体を加えながらすりつぶす装置はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−117688号公報
【特許文献2】特許第3626159号公報
【特許文献3】特開2000−70741号公報
【特許文献4】特開平11−179222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乾燥している被粉砕物を粉砕するときには、被粉砕物が乾燥しているため、粉砕されると、順次円盤の外へ排出される。しかし、水分を含んでいる被粉砕物を粉砕するときには、粉砕されても円盤の中に留まり、円盤の外へ排出されにくい。そして、排出されにくいにもかかわらず、投入を続けることで、詰まってしまった。この水分を含み、粉砕された粉砕物を円盤の外へスムーズに排出する必要があった。
【0008】
そこで、作業者が必要に応じて、手作業により投入口から液体を供給したところ、粉砕物は円盤の外へ排出されてきた。しかし、目視と感覚により手作業で加えたため、液体が少ないときには粉砕物がダマになり、液体が多いときには粉砕物が液体状となり、ムラが生じてしまった。
【0009】
以上のことより、本発明は必要に応じて、液体を供給できる粉砕機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1手段は、固定された上の円盤と、回転する下の円盤と、下の円盤を回転させる駆動手段とより構成するとともに、上の円盤に備えた投入口に液体を供給するための散水手段を設けることを特徴とする散水機能を有する粉砕機。本発明の第2手段は、前記第1手段において、投入口に向けて散水孔を開孔した散水ホースと、ポンプと、給水手段と、これらを接続する給水ホースと、より構成する散水手段を設けることを特徴とする散水機能を有する粉砕機。本発明の第3手段は、前記第2手段において、ポンプにタイマーを設けて、散水時間と休止時間を設定することにより、散水量を調整することを特徴とする散水機能を有する粉砕機。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉砕機により、円盤内に被粉砕物を詰まらせることなく、スムーズに粉砕できた。また、粒度が均一な製品を製造することができた。そして、機械化することで、製品の粘度が安定した。また、供給量や時間を制御することにより、安定した製品ができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の装置の実施例を示した全体正面図である。
【図2】図2は図1の平面図である。
【図3】図3は本発明の装置の実施例を示した主要部の正面一部断面図である。
【図4】図4は散水手段の概念図である。
【図5】図5は実施例の上の円盤を下から見た図である。
【図6】図6は実施例の下の円盤を上から見た図である。
【図7】図7は擂潰部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面により、粉砕機の全体について説明する。上の円盤1と下の円盤2は、それぞれ中央部に向かって上方に傾斜しており、周囲が略平行となっている。上の円盤1の方が、下の円盤2よりも傾斜が大きく、円盤1、2同士の隙間は上方へ行くほど、広くなっている。上の円盤1の中央部は、投入口11として開口している。円盤1、2の傾斜部には、刃5、6を備える。円盤1、2の略平行になっている周囲には擂潰部3、4を備え、この擂潰部3、4は、内側から外側に延びる複数個の凹部3a、4a、凸部3b、4bを交互に連続して形成する。
【0014】
下の円盤2には、駆動軸9を嵌合し、モータ8からの出力を伝えている。よって、下の円盤2は回転し、下の円盤2と駆動軸9は着脱自在である。粉砕された被粉砕物を、上の円盤1と下の円盤2のすき間から落下させるケーシング12を設け、ケーシング12内の被粉砕物を集めるために、下の円盤2に掃き込み具19を設ける。掃き込み具19は下の円盤2とともにケーシング12内部を回転し、被粉砕物をケーシング12の一部に設けた取出口13へ掃き込む。取出口13の外側には取出シュート14を設け、取出シュート14の下には、取出シュート14より落下してきた被粉砕物を回収するための容器15を設ける。機枠16の下にコロ17を設けることにより、装置全体の移動が容易となる。
【0015】
上の円盤1の中央部の投入口11に散水手段の一部である散水ホースを設ける。この散水ホースには、散水孔を開孔してある。散水手段は、この散水ホース41と、ポンプ43と、給水手段(本実施例では給水タンク45)と、これらを接続する給水ホース44からなる。散水を行うときには、給水タンク45内の液体をポンプによりくみ上げ、散水ホース41の散水孔42より散水する。ポンプ43には、タイマー46を設け、散水の設定を行なう。
【0016】
係止機構は、本実施例では係止板10、機枠16、回動軸20、ハンドル18、ハンドル軸25等により、構成する。係止板10は、機枠16に対して回動軸20により回動し、上の円盤1を上下させることができる。ハンドル18、ハンドル軸25で係止板10を固定することができる。係止板10の一方は、回動軸20により回動自在に機枠16に固定されており、他方をハンドル18、ハンドル軸25で固定する。
【0017】
上の円盤1と、係止板10とは、球面座金21、22を介して接続されており、係止板10に球面座金(上)21を取付け、上の円盤1には球面座金(下)22を取付ける。係止板10と球面座金(上)21、円盤1と球面座金(下)22は一体でも良い。円盤1の上部を係止板10の開口に挿入し、係止板10の球面座金21と円盤1の球面座金22を合わせたあと、係止板10の開口より出ている円盤1の上部の投入口11の周囲に板バネ23を嵌め、Uナット24を回転させながら嵌めこんでいる。
【0018】
円盤1、2の擂潰部3、4は、凹部3a、4aと水平な凸部3b、4bを交互に設置する。凹部の形状は、断面が弧状、略三角状のV字状などがある。凹部と凹部の間の水平の凸部は、0.3ミリメートル以上1.5ミリメートル以下が望ましく、それ以下の場合は凸部が水平ではない状態と略同じになり、それ以上の場合は、擂潰部3、4がほぼ水平と同じような状態になってしまう。よって、水平な凸部は0.3ミリメートル以上1.5ミリメートル以下がよい。
【0019】
円盤1、2及び被粉砕物が熱を持つと、被粉砕物の品質が変質してしまうため、円盤1、2の内部を水などの冷却媒体が流れて円盤1、2及び被粉砕物を冷却する冷却装置がついているが、図面、詳細な説明は省略する。
【0020】
本実施例の装置の動作を説明する。まず、準備として、下の円盤2を駆動軸9と嵌合する。そして、上の円盤1を係止板10の開口へ挿入し、係止板10の球面座金21と円盤1の球面座金22を合わせ、板バネ23、Uナット24により、固定する。係止板10を回動軸20で回動させ、上の円盤1を下の円盤2の上へ設置し、ハンドル18をハンドル軸25へ挿入し、係止板10を固定する。
【0021】
次に、モータ8を起動し、下の円盤2を回転させる(冷却装置がついている場合は、冷却装置も起動する)。そして、投入口11より被粉砕物を投入する。投入口11へ被粉砕物を投入するためには、手で投入する、または、投入装置(図示しない)を設置して投入装置により投入する。投入装置は定量供給できるものが良い。投入口11に投入された被粉砕物に、散水ホース41の散水孔42より散水をする。あらかじめ、タイマー46により散水時間と休止時間を設定する。これにより、散水量の調整ができる。ポンプ43の能力、タイマー46による時間により、散水量を把握することができる。
【0022】
被粉砕物は上下の円盤1、2の間で、刃5、6により粉砕され、円盤1、2の隙間より小さくなると、下(隙間が狭いほう)へ移動する。刃5、6により粉砕された被粉砕物は、擂潰部3、4へ移動し、更に細かく粉砕され、遠心力と、擂潰部3、4の形状(凹部、凸部がそれぞれ内側から外側へ延びている)により円盤1、2の周囲へ移動し、円盤1、2の隙間からケーシング12へ落下する。落下した被粉砕物は下の円盤2とともに回転する掃き込み具19により、取出口13へ誘導され、取出シュート14により容器15へ取り出される。
【0023】
上記のように、球面座金21、22を取付けて作動させると、下の円盤2の擂潰部4がミソを擂った状態になっても、上の円盤1の擂潰部3で下の円盤2の擂潰部4を押さえるとき、球面座金21、22に上の円盤1も下の円盤2に合わせてミソを擂り、擂潰部3、4が密着した状態で下の円盤2が回転する。このために、上下の擂潰部3、4が平行となり、均一で細かい被粉砕物が取出口13へ出てくる。
【0024】
擂潰部3、4に水平な凸部3b、4bを設けると、上下の擂潰部3、4は水平な凸部3b、4bで被粉砕物を押圧した状態となり、押しつぶされたように細かくなるため、粒子が滑らかな粒子となる。
【0025】
この装置に、1晩浸漬し、水分を含んだ米(一晩浸漬すると、米の重量の2〜4割程度の水が米に吸収される)を投入する。投入された米は、上下の円盤1、2によりすりつぶされ、粉砕される。この時、散水すると刃5、6に付着した米を水が流して落下し、擂潰部3、4へ入りやすくする。更に、擂潰部3、4へ水が入ることにより、粉砕された米が円盤より排出されやすくなる。散水ホースの太さ、散水孔の大きさ、散水ポンプの能力にもよるが、本実施例においては、3秒散水し、10秒休止するペースの散水が良好であった。粉砕された米は、スラリー状の水分が均一なペースト(米ペースト)となり、パン、ケーキ、お好み焼き等に利用することができる。
【0026】
被粉砕物は上記の米に限らず、水分を含んだ被粉砕物に利用できる。また、散水手段から出てくる液体(給水手段によって供給する液体)は水に限らず、出汁や調味料でもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 (上の)円盤
2 (下の)円盤
3 (上の円盤の)擂潰部
3a (上の円盤の)凹部
3b (上の円盤の)凸部
4 (下の円盤の)擂潰部
4a (下の円盤の)凹部
4b (下の円盤の)凸部
5 (上の円盤の)刃
6 (下の円盤の)刃
8 モータ
9 駆動軸
10 係止板
11 投入口
12 ケーシング
13 取出口
14 取出シュート
15 容器
16 機枠
17 コロ
18 ハンドル
19 掃き込み具
20 回動軸
21 球面座金(上)
22 球面座金(下)
23 皿バネ
24 Uナット
25 ハンドル軸
41 散水ホース
42 散水孔
43 ポンプ
44 給水ホース
45 給水タンク
46 タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された上の円盤と、回転する下の円盤と、下の円盤を回転させる駆動手段とより構成するとともに、上の円盤に備えた投入口に液体を供給するための散水手段を設けることを特徴とする散水機能を有する粉砕機。
【請求項2】
投入口に向けて散水孔を開孔した散水ホースと、ポンプと、給水手段と、これらを接続する給水ホースと、より構成する散水手段を設けることを特徴とする請求項1記載の散水機能を有する粉砕機。
【請求項3】
ポンプにタイマーを設けて、散水時間と休止時間を設定することにより、散水量を調整することを特徴とする請求項2記載の散水機能を有する粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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