説明

整列されずに積載された長方形の被加工材の折曲げ加工機への供給方法

【課題】ワークが整列不要でワーク1枚を確実に曲げ加工機へ供給する方法の提供。
【解決手段】ロボット7と姿勢計測手段36と板厚計測手段を有するローディング装置5と掴換え装置29とを備えた曲げ加工システムにおいて、1.積載姿勢計測手段により、ローディング装置の最上部のワークのY軸基準辺を表す直線の式とX軸基準辺を表す直線の式を求め、Y軸基準辺のX軸に対する傾きαと新しい原点O’を求める。2.傾きαと原点O’に基づいてロボットハンドの把持姿勢を修正する共に、ロボットハンドの吸着手段を上下動させて2枚目以降のワークを落下させる。3.板厚計測手段により板厚を計測する。4.複数枚が保持されている場合掴み換え装置に一時保持させ、最上層から1枚ずつローディング装置へ返送積載する。5.返送されたワークに対して行程1から行程3を実施する。6.行程3において複数枚保持されていなければそのワークを折曲げ加工機へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整列されずに積載された長方形の被加工材の折曲げ加工機への供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットによって折曲げ加工機へ長方形の被加工材の供給を行わせる場合、例えば、図29に示すように、ローディング装置201に積載された長方形の被加工材Wをロボットハンド203で吸着保持する際に、積載された長方形の被加工材Wの方向がバラバラでバキュームパッド205の長方形の被加工材W端部からの距離A〜Dが大きく相違すると、吸着ミスが発生したり、折曲げ加工機におけるバックゲージへの当接位置決め時に曲げ金型と被加工材Wの位置がずれることがある。
【0003】
そのため、ローディング装置201には被加工材Wをきちん整列して積載する必要があり、そのための作業工数が増加するという問題がある。
【0004】
また、ロボットハンドが2枚以上の被加工材Wを同時に吸着する場合があり、これを防止する手段として、例えば図30に示す如きマグネットフロータ207がある。しかしながら、マグネットフロータ207を使用する場合には、積載された長方形の被加工材Wの端部が揃っていないと2枚取りを防止できない。また、図31に示す如くマグネットフロータ207における2枚取りを防止するために、エアーブロー装置209を併用するが(特許文献1)、やはり被加工材Wの端部が揃っていないとエアーブローの効果が出ず2枚取りを防止することができないという問題がある。
【0005】
また、図32に示す如く、吸着パッド支持アーム301に設けたシリンダ支持枠302に進退シリンダ303を揺動可能に設け、この進退シリンダ303の進退ロッド(ピストンロッド)304により係合ピン305を軸として揺動させられる中空軸体306に設けた吸着パッド307で被加工材Wの端部を「めくり動作」により2枚取りを防止する方法(特許文献2)もあるが、折曲げ加工機に供給する長方形の被加工材Wには、図33に示す様に4隅に切欠き部311を有する形状も多くあり、吸着パッド307は切欠き部311を避けなければならず、被加工材の形状毎に移動しなくてははならず、「めくり動作」を効率的に使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−361583号公報
【特許文献2】特開2001−122456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の如き問題を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、ローディング装置に長方形の被加工材を整列積載することが不要であり、かつ2枚取りした場合でも、ロボットハンドの吸着手段及び掴み換え装置を利用して被加工材を確実に1枚に分離可能な折曲げ加工機への長方形の被加工材供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の整列されずに積載された長方形の被加工材の折曲げ加工機への供給方法は、複数の吸着手段を備えたロボットハンドを装着したロボットと、CAMコンピュータと、積載姿勢計測手段と板厚計測手段とを備えたローディング装置と、被加工材掴み換え装置とを備えた被加工材折曲げ加工システムにおいて、次の行程によることを要旨とするものである。
1.前記積載姿勢計測手段による計測データから、前記ローディング装置に積載された最上部の被加工材のY軸基準辺を表す直線の式と、X軸基準辺を表す直線の式を求め、前記Y軸基準辺のX軸に対する傾きαと新しい原点座標O’(x,y)を計算して求める。
2.行程1で求めたY軸基準辺のX軸に対する傾きαと、新しい原点座標O’(x,y)に基づいて、前記ロボットハンドの把持姿勢を修正して被加工材を吸着保持すると共に、前記ロボットハンドの複数の吸着手段を個別に上下動させて吸着された2枚目以降の被加工材を前記ローディング装置へ落下させる。
3.前記板厚計測手段により前記吸着手段が保持している被加工材の板厚を計測する。
4.前記行程3において複数枚の被加工材が吸着保持されていることを検出した場合、この吸着保持されている複数枚の被加工材を前記掴み換え装置に搬送して被加工材を一時保持させ、この掴み換え装置に一時保持した被加工材の最上層から1枚ずつ順番に吸着保持して前記ローディング装置へ返送積載する。
5.返送積載された被加工材に対して前記行程1から行程3を実施する。
6.前記行程3において複数枚の被加工材が吸着保持されていないことを検出した場合その被加工材を折曲げ加工機へ供給する。
【0009】
請求項2に記載の整列されずに積載された被加工材の折曲げ加工機への供給方法は、請求項1に記載の整列されずに積載された被加工材の折曲げ加工機への供給方法において、前記積載姿勢計測手段はレーザスリット光を用いた光切断法により前記被加工材の輪郭をキャプチャし、前記レーザスリット光で前記被加工材スキャンすることにより前記被加工材のX軸方向とY軸方向の端面位置を検出することを要旨とするものである。
【0010】
請求項3に記載の整列されずに積載された長方形の被加工材の折曲げ加工機への供給方法は、請求項1に記載の被加工材の折曲げ加工機への供給方法において、前記積載姿勢計測手段はレーザ変位計を備えた一対の測定ヘッドをX、Y及びZの3軸方向に移動位置決め自在に設け、前記レーザ変位計により前記被加工材上面の高さの変位を検出することにより、前記被加工材のX軸方向とY軸方向の端面位置を検出することを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の折曲げ加工機への被加工材供給方法によれば、ローディング装置に積載された被加工材をロボットハンドで吸着保持する際に、被加工材が整列積載されていなくても、ローディング装置の最上部の被加工材の位置決め基準位置に対する積載位置の変位を計測して、ロボットハンドの把持姿勢を修正して吸着保持するので、ロボットハンドによるの吸着ミスを防止し、かつ折曲げ加工時における曲げ位置のずれを防止することができる。
【0012】
また、ロボットハンドが2枚以上の被加工材を同時に吸着した場合には、ロボットハンドの吸着手段と掴み換え装置を利用して被加工材を確実に1枚に分離してから折曲げ加工機へ供給することができる。
【0013】
また、ローディング装置に被加工材が整列積載されていなくても構わないので整列積載のための作業工数が減少するので折曲げ加工の加工コストが低下する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明に係る折曲げ加工機への被加工材供給方法における被加工材曲げ加工システムの説明図。
【図2】ローディング装置の説明図(全体斜視図)。
【図3】図2における3次元レーザセンサ部の拡大図(正面側)。
【図4】図2における3次元レーザセンサ部の拡大図(裏面側)。
【図5】ローディング装置の計測範囲の説明図(全体斜視図)。
【図6】るローディング装置の計測範囲の説明図(平面図)。
【図7】ローディング装置の計測範囲の説明図(後側面図)。
【図8】ローディング装置の計測範囲の説明図(図6の左側面図)
【図9】3次元レーザセンサの測定原理の説明図。
【図10】3次元レーザセンサの測定動作状況を説明する図。
【図11】3次元レーザセンサによる測定結果の解析図。
【図12】ロボットハンドの吸着手段の概要の説明図で、(a)は上面図(b)は側面図を示す。
【図13】ロボットハンドの吸着手段の波打ち動作の説明図。
【図14】本願発明に係る2枚取り防止動作の説明図。
【図15】本願発明に係る2枚取り防止動作の説明図(手順1)。
【図16】本願発明に係る2枚取り防止動作の説明図(手順2)。
【図17】本願発明に係る2枚取り防止動作の説明図(手順3)。
【図18】本願発明に係る2枚取り防止動作の説明図(手順4)。
【図19】本願発明に係る2枚取り防止動作の説明図(手順5)。
【図20】本願発明に係る2枚取り防止動作の説明図(手順6)。
【図21】本願発明に係る2枚取り防止動作の説明図(手順7)。
【図22】本願発明に係る2枚取り防止動作の説明図(手順7−2)。
【図23】ローディング装置の別の実施形態の説明図。
【図24】図23のローディング装置における位置計測手段の説明図。
【図25】図23のローディング装置に載置された被加工材の載置位置の計測ポイントの説明図。
【図26】図23のローディング装置における位置計測手段の計測状況の説明図。
【図27】図23のローディング装置における位置計測手段の計測状況の説明図。
【図28】図23のローディング装置における位置計測手段による計測ポイントの位置計算の説明図。
【図29】ローディング装置に積載された端部が不揃の被加工材をロボットハンドで吸着保持する際の状況を説明する図。
【図30】端部が不揃の被加工材をマグネットフロータで分離させた状態。
【図31】マグネットフロータにエアーブロー装置を併用したときの分離状態の説明図。
【図32】吸着パッドで被加工材Wの端部をめくって2枚取りを防止する例の説明図。
【図33】4隅に切欠き部を有する被加工材の例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。図1は本発明に係る折曲げ加工機への長方形の被加工材供給方法の使用に適した折曲げ加工システム1の一例である。
【0016】
上記折曲げ加工システム1において、折曲げ加工機である例えばプレスブレーキ3の前方には、これから折曲げ加工を行う長方形の被加工材Wが積載されたローディング装置5が配置してあり、このローディング装置5と前記プレスブレーキ3との間にはロボット7が配置してある。
【0017】
上述のロボット7は、人間に代わって前記ローディング装置5に積載された前記被加工材の最上層の1枚を取って、前記プレスブレーキ3に装着されている曲げ金型(図示省略)の間に供給して折曲げ加工の作業を行うことが可能な構成を備えたものであり、この折曲げ加工システム1では多関節形の産業用ロボットを用いた例が示してある。
【0018】
前記ロボット7は、前記プレスブレーキ3の前方の床上にX軸方向(曲げ金型の長手方向)に延伸して敷設した基台9上を移動位置決め自在に設けてある。
【0019】
より詳細には、前記基台9に設けた一対のX軸ガイドレール11に前記ロボット7の基部のX軸キャリッジベース13が移動自在に係合しており、このX軸キャリッジベース13には前記基台9に設けたラック15に噛合するピニオン(図示省略)を駆動するX軸モータ17が設けてあり、このX軸モータ17を駆動することにより、前記ロボット7は前記基台9上をX軸方向に移動位置決め自在に設けてある。
【0020】
また、前記X軸キャリッジベース13上にZ軸方向に立設した主軸19を有し、この主軸19はZ軸を中心に約360度の範囲に回転位置決め自在である。そして、この主軸19には垂直面内において揺動可能な第1アーム21が設けてあり、第1アーム21の先端には第2アーム23が垂直面内において上下動可能に設けられ、この第2アーム23の先端にエンドエフェクターとして後述する複数の真空吸着パッドの如き吸着手段25を備えたロボットハンド27がこの第2アーム23の軸心に対して旋回可能に装着してある。
【0021】
図1に示すように、前記基台9の左側には前記ロボットハンド27に保持された被加工材Wを受領して一時的に保持する掴み換え装置29が設けてある。また、前記プレスブレーキ3の右側には加工済みの製品PDを載置しておく製品置き場31が設けてある。また、前記プレスブレーキ3の左側には前記ロボット7を制御するロボット制御装置33が配置してある。
【0022】
前記ローディング装置5には、長方形の被加工材の積載姿勢を計測する積載姿勢計測手段36が設けてある。この積載姿勢計測手段36にはロボットハンド27が保持した被加工材Wを挟持してその板厚をポテンショメータで計測する板厚計測手段37が設けてある(図2参照)。
【0023】
また、前記折曲げ加工システム1には、前記ロボット制御装置33の上位に位置するCAM用のコンピュータ38が設けてあり、このCAM用のコンピュータ38において曲げ製品の図形データ、折曲げ加工関係データ、ロボット動作関係のデータ並びに後述する別の形態の積載姿勢計測手段35における長方形の被加工材Wの積載姿勢の計測ポイントに関するデータ等を作成するものである。
【0024】
前記積載姿勢計測手段36は、X軸方向に延伸した基台40aとY軸方向に延伸した基台40bを一体的に接合したL字型の基台40を有し、この基台40の両端部には一対の支柱42が立設してある。また、支柱42上部にはガイド付きのロッドレスシリンダ54のガイド部54aがX軸方向にかつ水平に設けてある。そしてロッドレスシリンダ54に備わるスライダ(図示省略)にブラケット56を介して3次元レーザセンサ58が保持してある。
【0025】
前記積載姿勢計測手段36の基台40におけるX軸方向に延伸した基台40aには、長方形の被加工材WのY軸基準辺75に当接係合して被加工材WのY軸47方向の位置決めを行うための複数のY軸基準部材60が立設してある。同様に基台40bには被加工材WのX軸基準辺77に当接係合してX軸45方向の位置決めを行うX軸基準部材62が立設してある。
【0026】
図3、図4を参照するに、前記ブラケット56には、前記3次元レーザセンサ58のX軸方向の移動距離を検出するロータリエンコーダ64が取り付けてある。このロータリエンコーダ64の入力軸には前記ロッドレスシリンダ54に設けたラック66に噛合するピニオン68が設けてある。したがって、前記3次元レーザセンサ58のX軸方向の移動位置をロータリエンコーダ64により検出することができる。
【0027】
図5〜図8に示すように、積載姿勢計測手段36における3次元レーザセンサ58の計測範囲70は、X軸方向は約1000mm、Y軸方向の幅wは約400mm、被加工材Wの積載高Hさは約200mmである。しかしながら、この計測範囲70は一例であってこの範囲に限定されるものではない。
【0028】
なお、前記3次元レーザセンサ58による物体の3次元形状の測定原理は、図9に示す如く、レーザスリット光72を用いた公知の光切断法(例えば、特開200−193428号公報)により測定対象物OPの輪郭74をキャプチャし、この測定対象物OPを例えばX軸方向にスキャンすることにより3次元イメージを内蔵のカメラにより画像データとして取得するものである。すなわち、測定対象物OPの輪郭像74をY軸方向の高さの値として計測することができる。
【0029】
図10、図11参照しながら、3次元レーザセンサ58による長方形の被加工材Wの積載姿勢計測の仕方を説明する。
【0030】
前記ローディング装置5に複数枚の長方形の被加工材Wが整列されずに積載されている場合、例えば、最上層の被加工材WがX軸に対して図10の如く傾斜していた場合、3次元レーザセンサ58から最上層の被加工材W上面に投射されるレーザスリット光72を積載姿勢計測手段36の原点O(0,0)からX軸方向にスキャンする。
【0031】
スキャンによりレーザスリット光72がX=Cに位置したときに、3次元レーザセンサ58により被加工材Wの端部、この例の場合では、Y軸基準辺75とレーザスリット光72が交差するP点の座標(x1,y1)が、3次元レーザセンサ58に内蔵する画像解析ソフトにより検出される。同様にして、P点〜P点のそれぞれの座標(x2,y2)〜(x7,y7)が検出される。なお、スキャンのピッチは適宜に設定することができる。
【0032】
次いで、上述のスキャンにより検出したP点〜P点における座標(x1,y1)〜(x5,y5)データを基にして、統計的手法である最小自乗法によりY軸基準辺75を表す回帰直線Lの方程式、Y=a+bX・・(1)を求める。なお、回帰直線Lの勾配αは、α=tan−1bである。また係数a、bは回帰係数として求められるものである。
【0033】
同様にして、P点、P点における座標(x6,y6)、(x7,y7)のデータを基にして、X軸基準辺77を表す回帰直線Lの方程式は、Y=c+dX・・・(2)として求めることができる。この直線Lと前記直線Lから交点O’の座標(x,y)を計算して求めることができる(図11参照)。なお、係数c、dは回帰係数として求められるものである。
【0034】
図12(a、b)を参照するに、前記ロボットハンド27は、長方形の枠組部材79に下端部にバキュームパッド25を取り付けた空圧シリンダ81が複数個(図12の例では81a〜81fが2列、81g、81hが1列の計14個)が設けてあり、この複数の空圧シリンダ81は前記ロボット制御装置33により個別に上下動させることが可能に設けてある。
【0035】
図13は、前記ロボットハンド27の空圧シリンダ81を個別に波打ち作動させている状態を説明した図であり、図13aの状態では被加工材Wを水平に吸着保持した状態である。図13b、図13cは空圧シリンダ81a〜81f及び81g、81hを波が打つように作動させた状態である。この様に波打ち動作を空圧シリンダで行わせることにより、2枚取りされた被加工材Wの下側の板材を分離落下させるのである。
【0036】
再度、図1を参照するに、前記掴み換え装置29は、被加工材Wの裏面側を公知の真空吸着パッドにより吸着して水平保持する一対の水平保持アーム30a、30bと、この水平保持アーム30a、30bに水平保持された被加工材Wの上面側を公知の真空吸着パッドにより吸着して、揺動シリンダ32a、32bにより、上方向にほぼ90°に旋回保持する一対の旋回アーム手段34a、34bを備えている。
【0037】
上記構成の折曲げ加工システム1における折曲げ加工機への被加工材供給方法について説明する。
【0038】
行程1: 積載姿勢計測手段36により長方形の被加工材Wのローディング基準であるX軸45に対する傾きと、新しい座標原点O’(x,y)を求める。
【0039】
行程2: 行程1で求められた結果に基づいて、前記ロボットハンドの把持姿勢を修正して被加工材Wを吸着保持すると共に、前記ロボットハンド27の複数の吸着手段を個別に上下動させて吸着された2枚目以降の被加工材を前記ローディング装置5へ落下させる。
【0040】
より詳細には、新しい座標原点O’(x,y)と傾斜角度αから、ロボットの動作基準原点をO(0,0)から新しい座標原点O’(x,y)に移動させると共に座標軸を角度α度回転させ、この新しいロボットの動作基準原点O’(x,y)を基に、前記ロボットハンド27の把持姿勢を修正して被加工材を吸着保持すると共に、前記ロボットハンドの複数の吸着手段を個別に上下動させ、吸着された2枚目以降の被加工材を分離して落下させる。
【0041】
行程3: 前記板厚計測手段により前記吸着手段が保持している被加工材の板厚を計測する。
【0042】
行程4: 行程3において複数枚の被加工材が吸着保持されていることを検出した場合、この吸着保持されている複数枚の被加工材Wを前記掴み換え装置29に搬送して被加工材を一時保持させ、この掴み換え装置29に一時保持した被加工材の最上層から1枚ずつ順番に吸着保持して前記ローディング装置5へ返送積載する。
【0043】
行程5: 返送積載された被加工材に対して前記行程1から行程3を実施する。
【0044】
行程6: 前記行程3において複数枚の被加工材が吸着保持されていないことを検出した場合その被加工材を折曲げ加工機へ供給する。
【0045】
例えば、前記行程4において、例えば、図14に示す如く、「A」、「B」、「C」の3枚が同時に吸着保持されている場合、以下の手順1〜手順7により、掴み換え装置に一時保持した被加工材「A」、「B」、「C」を前記ローディング装置へ返送積載する。
【0046】
「手順1」:「A」、「B」、「C」の3枚を前記ロボット7のロボットハンド27により、前記掴み換え装置29へ搬送して、この3枚の被加工材を水平保持アーム30a、30bに一時保持させる(図14、図15参照)。
【0047】
「手順2、手順3」:前記ロボットハンド27により前記掴み換え装置29に一時保持した被加工材の最上層の1枚「A」を吸着保持して、前記ローディング装置5へ返送積載する(図16、図17参照)。
【0048】
「手順4、手順5」:残り「B」、「C」の上層の1枚「B」を吸着保持して前記ローディング装置5へ返送積載する(図18、図19参照)。
【0049】
「手順6」:最後に、残りの「C」を吸着保持して前記ローディング装置5へ返送積載する(図20、21参照)。この結果、前記ローディング装置5には、上から「C」、「B」、「A」の逆順に積載されることになる。
【0050】
図22は、前記行程1において、「A」、「B」2枚を吸着保持して前記ローディング装置5へ返送積載し、次いで残りの「C」を返送積載した場合である(手順7−2)。
【0051】
被加工材が付着する要因は、例えば被加工材の表面に油分が多い場合、重ねた状態で長時間放置されていた場合、上部の被加工材の重量が大きい場合等がその要因になるっているとが考えられる。そこで、上述の行程1〜7の動作を行うことにより、被加工材「A」、「B」、「C」の間に空気が入り、また重い重量がかかることなく次回の付着の可能性が少なくなるのである。
【0052】
図23は、前記ローディング装置5に設けた別の形態の積載姿勢計測手段35の説明図である。
【0053】
この積載姿勢計測手段35は、基台49上に設けたX軸用計測ユニット39とY軸用計測ユニット41からなっている。
【0054】
前記X軸用計測ユニット39とY軸用の計測ユニット41の構成および機能は、計測する方向が相違する以外はほぼ同一であるので、以下にX軸用計測ユニット39について説明する。
【0055】
図23を参照するに、前記X軸用計測ユニット39はレーザ変位計を備えた測定ヘッド43aを有し、この測定ヘッド43aは、前記ローディング装置5のY軸方向のローディング基準であるX軸45と、X軸方向のローディング基準であるY軸47の方向へ移動位置決め自在にかつX、Y軸方向に直交するZ軸方向に移動位置決め自在に設けてある。
【0056】
より詳細には、図24に示す様に前記X軸用計測ユニット39は、前記基台49上に設けた一対のX軸ガイドレール51に移動自在に係合するX軸キャリジベース53を有しており、このX軸キャリジベース53にはコラム55が一体的に立設してあると共に、このコラム55に隣接してX軸サーボモータ57が設けてある。
【0057】
前記基台49には、前記X軸駆動用のサーボモータ57の出力軸に設けたピニオン(図示省略)に噛合するラック59がX軸方向に延伸して設けてある。
【0058】
また、前記コラム55には、測長機能付きの上下動シリンダ61を立設してあり、この上下動シリンダ61の右側面(図24において右側)にZ軸キャリジベース63が昇降自在に取り付けてある。そして、このZ軸キャリジベース63には、レーザ発振器65を一体的に備えた前記測定ヘッド43aをY軸方向に移動自在に保持すると共に、この測定ヘッド43aをY軸方向に進退させる測長機能付きY軸シリンダ67が設けてある。
【0059】
上述の測定ヘッド43aには、被加工材Wの上面に当接して上下方向の位置を検出するためにX軸方向に回転自在の表面ガイドローラ69が設けてある。そして、この測定ヘッド43aに前記Y軸シリンダ67のピストンロッド71が連結してある。
【0060】
上記構成のX軸用計測ユニット39において、前記サーボモータ57、上下動シリンダ61およびY軸シリンダ67を作動させることにより、前記測定ヘッド43aをローディング装置5に載置された最上部の被加工材W上の適宜な位置に移動位置決めするこができる。さらに、前記測定ヘッド43aのレーザ変位計により最上部の被加工材Wの高さ(Z軸座標)の測定がができると共に、被加工材W上面の高さの変位を検出することにより、被加工材Wの端面位置を検出することができる。
【0061】
前記ローディング装置5のパレット73に複数枚の長方形の被加工材Wが整列されずに積載されている場合、この最上部の被加工材WのX軸45(又はY軸47)に対する傾きを計測するに当たっては、始めに計測に適した計測ポイントPを被加工材W上に設定する必要がある。
【0062】
図25は、被加工材Wの位置決め基準辺であるY軸基準辺75とX軸基準辺77を有する被加工材W〜Wが不揃いに4枚重なって載置された例であり、その中で被加工材Wが最上層に在る。この様な場合の計測ポイントPの設定は、複数枚の被加工材W〜Wの全てのY軸基準辺75とX軸基準辺77の直線部を含む位置に計測ポイントPを設定する。
【0063】
より詳細には、CAM用のコンピュータ38が、入力されている曲げ製品の図形データから被加工材Wの輪郭の直線部を自動的に検出し、ローディング装置5に積載された被加工材Wの積載姿勢の計測に適した計測ポイントP〜Pの4点を指定する。例えば、X軸45側のY軸基準辺75にP、Pの2点、Y軸47側のX軸基準辺77にP、Pの2点の計4点を指定する。長方形の被加工材Wの場合、Y軸基準辺75にP、Pの2点、X軸基準辺77にPの1点の計3点でも構わない。なお、図25において、PはX=A、PがX=B(A<B)であり、PはY=C、PはY=D(C<D)の場合を示したものである。
【0064】
次に、前記X軸用計測ユニット39により、最上部の被加工材WのX軸45に対する傾きを計測する場合について図26、図27を参照しながら説明する。
【0065】
計測ポイントがP(X=A)の場合、前記X軸サーボモータ57を作動させて、測定ヘッド43aのX座標をP、例えば、A=xになるように位置決めする。次いで、上下動シリンダ61を上昇限まで上昇させた後、Y軸シリンダ67を前進端まで伸張させて、測定ヘッド43aを積載された被加工材Wの上方に移動させる。
【0066】
次いで、上下動シリンダ61を作動させ、測定ヘッド43aの表面ガイドローラ69が被加工材W表面に当接するまで下降させる(図26の状態)。このとき、測定ヘッド43aのレーザ変位計からのレーザ光LBが被加工材Wの表面に投光されて、被加工材Wの表面位置と測定ヘッド43aの間の距離が計測される。
【0067】
次いで、Y軸シリンダ67をX軸45側へ移動させ、被加工材WのY軸基準辺75における測定ヘッド43aのレーザ変位計の変位を検出することにより、被加工材WのY軸基準辺75とX軸45の間の距離、Y=yが計測される。すなわち、計測ポイントがPの座標(x、y)が求められる。同様にして、計測ポイントPの座標(x、y )が求められる(図28参照)。
【0068】
したがって、Pの座標(x、y)とPの座標(x、y)とから、この計測ポイントPとPを通る直線Lの方程式は、次式(1)により求められる。
(数1)
Y={(y−y)/(x−x)}(X−x)+y・・・(1)
【0069】
前記Y軸用計測ユニット41の測定ヘッド43bを用いれば、同様にして、計測ポイントがP、Pの座標(x、y)、(x、y)が求められる。これにより、計測ポイントP、Pを通る直線の方程式Lは、次式(2)により求められる。
(数2)
Y={(y−y)/(x−x)}(X−x)+y・・・(2)
【0070】
また、数式(1)、(2)から、被加工材WのY軸基準辺75とX軸基準辺77を通る直線LとLの交点O’の座標(x,y)、すなわち、新しい座標原点O’(x,y)が求められる。なお、Y軸基準辺75のX軸45に対する傾きαは、α=tan−1(y−y)/(x−x)となる。また、X軸基準辺77Y軸47に対する傾きβは、β=tan−1(y−y)/(x−x)である。
【0071】
これにより、新しい座標原点O’(x,y)と傾斜角度αから、ロボットの動作基準原点をO(0,0)から新しい座標原点O’(x,y)に移動させると共に座標軸を角度α度回転させ、この新しいロボットの動作基準原点O’(x,y)を基に、前記ロボットハンド27の把持姿勢を修正して被加工材Wを吸着保持することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 折曲げ加工システム
3 プレスブレーキ
5 ローディング装置
7 ロボット
9 基台
11 X軸ガイドレール
13 X軸キャリッジベース
15 ラック
17 X軸モータ
19 主軸
21 第1アーム
23 第2アーム
25 吸着手段
27 ロボットハンド
29 掴み換え装置
30(a、b) 水平保持アーム
31 製品置き場
32(a、b) 揺動シリンダ
33 ロボット制御装置
34(a、b) 旋回アーム手段
35、36 積載姿勢計測手段
37 板厚計測手段
38 CAM用のコンピュータ
39 X軸用計測ユニット
40 基台
41 Y軸用計測ユニット
42 支柱
43 測定ヘッド
45 X軸
47 Y軸
49 計測ユニット基台
51 X軸ガイドレール
53 X軸キャリジベース
54 ロッドレスシリンダ
54a ガイド部
55 コラム
56 ブラケット
57 X軸サーボモータ
58 3次元レーザセンサ
59 ラック
60 Y軸基準部材
61 上下動シリンダ
62 X軸基準部材
63 Z軸キャリジベース
64 ロータリエンコーダ
66 ラック
65 レーザ発振器
67 Y軸シリンダ
68 ピニオン
69 表面ガイドローラ
71 ピストンロッド
72 レーザスリット光
74 輪郭
73 パレット
75 Y軸基準辺
77 X軸基準辺
79 枠組部材
81 空圧シリンダ
P 計測ポイント
OP 測定対象物
W 被加工材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸着手段を備えたロボットハンドを装着したロボットと、CAMコンピュータと、積載姿勢計測手段と板厚計測手段とを備えたローディング装置と、被加工材掴み換え装置とを備えた被加工材折曲げ加工システムにおいて、次の行程によることを特徴とする整列されずに積載された長方形の被加工材の折曲げ加工機への供給方法。
1.前記積載姿勢計測手段による計測データから、前記ローディング装置に積載された最上部の被加工材のY軸基準辺を表す直線の式と、X軸基準辺を表す直線の式を求め、前記Y軸基準辺のX軸に対する傾きαと新しい原点座標O’(x,y)を計算して求める。
2.行程1で求めたY軸基準辺のX軸に対する傾きαと、新しい原点座標O’(x,y)に基づいて、前記ロボットハンドの把持姿勢を修正して被加工材を吸着保持すると共に、前記ロボットハンドの複数の吸着手段を個別に上下動させて吸着された2枚目以降の被加工材を前記ローディング装置へ落下させる。
3.前記板厚計測手段により前記吸着手段が保持している被加工材の板厚を計測する。
4.前記行程3において複数枚の被加工材が吸着保持されていることを検出した場合、この吸着保持されている複数枚の被加工材を前記掴み換え装置に搬送して被加工材を一時保持させ、この掴み換え装置に一時保持した被加工材の最上層から1枚ずつ順番に吸着保持して前記ローディング装置へ返送積載する。
5.返送積載された被加工材に対して前記行程1から行程3を実施する。
6.前記行程3において複数枚の被加工材が吸着保持されていないことを検出した場合その被加工材を折曲げ加工機へ供給する。
【請求項2】
請求項1に記載の整列されずに積載された長方形の被加工材の折曲げ加工機への供給方法において、前記積載姿勢計測手段はレーザスリット光を用いた光切断法により前記被加工材の輪郭をキャプチャし、前記レーザスリット光で前記被加工材スキャンすることにより前記被加工材のX軸方向とY軸方向の端面位置を検出することを特徴とする整列されずに積載された被加工材の折曲げ加工機への供給方法。
【請求項3】
請求項1に記載の整列されずに積載された長方形の被加工材の折曲げ加工機への供給方法において、前記積載姿勢計測手段はレーザ変位計を備えた一対の測定ヘッドをX、Y及びZの3軸方向に移動位置決め自在に設け、前記レーザ変位計により前記被加工材上面の高さの変位を検出することにより、前記被加工材のX軸方向とY軸方向の端面位置を検出することを特徴とする整列されずに積載された被加工材の折曲げ加工機への供給方法。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2013−107080(P2013−107080A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251401(P2011−251401)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】