整形外科用固定材
【課題】 基材に保持されている硬化性樹脂が保存中に他に移行したりすることがなく、何時でも安定して使用することができる整形外科用固定材を得るようにする。
【解決手段】 基材4に水硬化性樹脂3を保持させた支持体5を設ける。上記支持体5の水硬化性樹脂3は、その大部分が未硬化状態に維持されているが、それと同時に、支持体5の表面部分の水硬化性樹脂3は部分的に反応・硬化させて支持体5に保護皮膜を形成する。この保護皮膜によって未硬化の水硬化性樹脂3が他部へ浸透したり、移行するのを防止することができる。このスプリント材1などの整形外科用固定材に水を供給して患部に適用し、未硬化の水硬化性樹脂を硬化させることによって患部を固定することができる。水硬化性樹脂に代えて光硬化性樹脂を使用することもできる。
【解決手段】 基材4に水硬化性樹脂3を保持させた支持体5を設ける。上記支持体5の水硬化性樹脂3は、その大部分が未硬化状態に維持されているが、それと同時に、支持体5の表面部分の水硬化性樹脂3は部分的に反応・硬化させて支持体5に保護皮膜を形成する。この保護皮膜によって未硬化の水硬化性樹脂3が他部へ浸透したり、移行するのを防止することができる。このスプリント材1などの整形外科用固定材に水を供給して患部に適用し、未硬化の水硬化性樹脂を硬化させることによって患部を固定することができる。水硬化性樹脂に代えて光硬化性樹脂を使用することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、スポーツ分野などにおいて、治療又は保護の目的で患部を固定又は支持するスプリント、キャスト、ステーなどを形成するための整形外科用固定材に関する。特に、人や動物の骨折、捻挫、矯正などの治療や予防に、またスポーツ等において転倒、衝撃などから身体を保護するための整形外科用固定材に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、スプリントは骨折、捻挫又は変形等の疾患部位を外方から覆うようにして、固定、矯正又は支持を行うために使用される。骨折等の直後は患部が大きく腫れており発熱もあるので、すぐにギブスを巻くことができず、先ずスプリント材を当てて患部を固定している。また、スプリント材には、簡便性があり、正確な固定、支持ができるため脱臼、捻挫等の場合にも使用されている。
従来のスプリント材は、患部を綿で覆いその上から木片や梯子状シーネ当て、更にその上から伸縮性包帯等を巻いて固定していたが、患部との適合性に劣る点があった。
【0003】
その後、開放(連続)気泡型フォームシート等に水硬化性樹脂を保持させたスプリント材が開発され、多く用いられるようになった。この水硬化性樹脂を用いたスプリント材は、ゴム手袋を手に嵌めて、密封した袋から取り出し、水を張ったバケツ等の中に全体を浸して水硬化性樹脂に水を供給するようにする。そして、水の中から引上げて軽く搾り、予め下巻き材を巻いておいた患部にスプリント材を当てて沿わせるようにし、その上から弾力包帯を巻いて水硬化性樹脂を硬化させる。硬化したスプリント材は、患部に合致した支持固定を行うと共に容易に取り外しもできるようにしたものである(特許文献1)。
【0004】
更に、その後水硬化性樹脂を保持させたものを被覆材で包んだスプリント材も提供されるようになった。これらの水硬化性樹脂を用いたスプリント材は、いずれもバケツに溜めた水等に全体を浸けることによって、水硬化性樹脂に対して水が充分に接触して硬化反応が円滑に進むようにする必要がある。従って、作業が何かと煩雑であるし、作業中に水が周りに飛び散って治療室が汚れたりすることもあった。
【0005】
また、上記被覆材で包んだスプリント材では、下巻き材を必要とせず直接患部に当てがうことができるものもある。しかしその場合には、バケツから引上げたときに被覆材が多量の水を含んでいるので、そのままでは患部の皮膚表面に当てることができない。そこで、患部に適用する前に被覆材の表面をタオル等で押さえて、余分な水を吸い取り除去する必要があった。また、これらの操作を行っても十分に水を除去することは難しく、未だ表面が濡れて湿ったスプリント材を皮膚に当てて適用しなければならない。皮膚表面はその湿気によって蒸れるし、乾燥するのに時間がかかることもあり、患者は何かと不快に感じることが多かった。また、皮膚の弱い人や患部に傷がある場合には更に多くの支障を生じていた。
【0006】
さらに、上記被覆材で包んだスプリント材では、保存中に水硬化性樹脂が被覆材に浸透して移行して来ることがある。こうした移行を防止する為に、樹脂に揺変性付与剤を添加することが行われている(特許文献2)。
この揺変性付与剤によってある程度樹脂の移行が防止できるが、移行防止の為に添加量を多くすると急激に樹脂の粘度が高くなって、樹脂の塗布が困難となり、製造上の不都合がある。
【0007】
また、樹脂の組成の調整によって粘度を高くすることもできるが、樹脂の粘度は温度の影響を受け易い。粘度を高くしたものでも、高温時には樹脂の粘度が下がって被覆材への移行が起こり易く、低温時には粘度が上がって樹脂の塗布が困難となり、製造上の不都合がある。
【0008】
また、テープ状の基材に水硬化性樹脂を保持させ、これを巻回したキャストでも、防湿性の包装袋に密封して保存している間に、特に高温状態に置くなど保存状況が悪いと樹脂垂れが起こり、樹脂が基材から離れて包装袋内に溜まってしまうことも見られる。また、ロール状のキャストの表面に樹脂が漏出していると、キャストを患部に巻回するときに手袋に樹脂が多く付着してスムーズなローリングやモールディングができないこともある。
【0009】
【特許文献1】特許第2686271号公報
【特許文献2】特開平9−224796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、基材に硬化性樹脂を保持させた支持体を持った整形外科用の固定材において、硬化性樹脂の移動や移行を防止して、何時でも同じような状態で使用できるものを得ようとするものである。
また、整形外科用固定材を手袋を嵌めることなく直接手で取り扱うことができるようなものを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材に硬化性樹脂を保持させた支持体を有する整形外科用固定材において、支持体の硬化性樹脂の大部分を未硬化状態に維持すると共に、その表面部分の硬化性樹脂を部分的に反応・硬化させるようにする。
上記支持体の表面部分の部分的な硬化によって、支持体の硬化性樹脂の移動や、移行を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、整形外科用固定材を形成している支持体に保持されている硬化性樹脂の移動、移行を制御することによって、何時でも安定した状態で硬化性樹脂を機能させ、所望の整形外科用固定材を得ることができる。
また、この整形外科用固定材は、硬化性樹脂の表面部分が部分的に硬化されているので、場合に応じてこれを使用するとき、素手で直接取り扱って、患部に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明をスプリント材に適用した場合について述べると、スプリント材1は、硬化性樹脂3を基材4に保持させた支持体5を、患部に接する側に設けた緩衝材2の上に位置させている。この支持体5の上は被覆材6で覆っている。そして、この支持体5と被覆材6の間には、支持体5の表面の硬化性樹脂と接触する支持体保護材7を介在させている。
この支持体保護材7は、これと接触する硬化性樹脂3の表面部分と部分的に反応して硬化させ、樹脂の流動性を規制している。これにより未硬化の大部分の硬化性樹脂3は移動せず、被覆材6側へ移行して行かないので、基材4に保持された状態を保ってことができる。
こうしたスプリント材1は、通常、湿気不透過性の包装材に入れて保存される。
【0014】
上記支持体5の硬化性樹脂3を保持する基材4は、硬化性樹脂と非反応性であって、引張弾性率が高いものがよく、少くとも約800MPa程度以上のものが好ましい。また、下記する硬化性樹脂に水硬化性樹脂を使用し、外方から水分を噴霧して供給することによって硬化させるものの場合は、供給された水が浸透し、拡散し易くするため、1cm2 当り約15〜35個程度の開口を有し、開口率が約12〜48%程度であることが望ましい。こうした基材4は、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維その他を使用した織物、編物、不織布等が使用される。上記開口率は、一定範囲内における空隙が占める面積の割合であって、基材の拡大写真を撮り、写真を画像認識してコンピューター処理で求めることができる。
【0015】
上記基材4に保持させる硬化性樹脂には、水と反応して硬化する水硬化性樹脂がある。こうした水硬化性樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーと触媒、その他の添加物からなるポリウレタンプレポリマー組成物がある。
【0016】
上記ポリオールには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダムまたはブロック共重合体など、並びにこれらの適宜混合物がある。このポリオールの数平均分子量としては約200〜4000程度のものが望ましく、分子量が200以下では剛性が大きく、硬くて脆い性質となり、分子量4000以上では剛性が小さく固定材としての強度が不足することがある。また、これらのポリオールと共に公知のポリオールも用いることができ、例えばビスフェノール系ジオール(ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等)などを適宜混合して用いることができる。
【0017】
上記ポリイソシアネートには、従来公知のポリイソシアネートを使用することができ、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート及びこれらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートなどがあり、これらは単独または2種以上組合せて使用することができる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びこれらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート(変性MDI)を用いるとよい。
【0018】
末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得るための、ポリオールとポリイソシアネートとの配合比率は、通常ポリオール1当量当りポリイソシアネートを約2〜5当量、好ましくは2.5〜5当量にする。両者の反応は、通常約30〜100℃、好ましくは約50〜80℃で加熱攪拌することで達成される。ポリウレタンプレポリマーの粘度は、通常、室温23℃で約10〜50Pa・s、好ましくは約15〜40Pa・sにするとよい。
【0019】
反応触媒としては、貯蔵安定性に優れたものを選択使用するとよく、従来からよく知られているものとして、ジモルホリノジエチルエーテル、ビス−4−(2,6−ジメチルモルホリノ)ジエチルエーテル、アルキル置換ジモルホリノジエチルエーテル類等があり、これらを単独または2種以上混合して用いることができる。
上記ポリウレタンプレポリマーには適宜安定剤を含有させるとよく、こうした安定剤としては公知のベンゾイルクロライド、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等を使用することができる。これらの安定剤も単独または2種以上混合して用いることができる。
【0020】
上記水硬化性樹脂には、必要に応じて揺変性付与剤を加えると、支持体中の偏在化を一層防ぐことができる。こうした揺変性付与剤としては、シリカ、酸化チタン、有機系のポリアルキレングリコールの末端水酸基を水酸基処理剤で処理したポリアルキレン変性化合物で一般にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはこれらの共重合体を塩化メチル、脂肪酸等で処理したものがある。また、芳香族カルボン酸エステル類、D−ソルビトールと芳香族アルデヒドとのアセタール化反応により合成されたベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール類等を使用することができる。使用量としては、水硬化性樹脂に対して約0.01〜3wt%程度、好ましくは約0.03〜1wt%程度である。
【0021】
界面活性剤を水硬化性樹脂と共に用いることができ、非イオン系、アニオン系、カチオン系、両性イオン系が使用できる。非イオン系としては脂肪酸アルカノールアミド系、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等がある。アニオン系としてはエーテルカルボン酸、スルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等がある。カチオン系としてはアルキルアンモニウム塩等が使用できる。両性イオン系としてはN,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等が使用できる。又、添加量としては水硬化性樹脂に対し約0.1〜3%程度で、水硬化性樹脂へ直接配合したり、基材に水硬化性樹脂を保持させた後に、噴霧や塗布によって表面に付着させてもよい。この界面活性剤は、水硬化性樹脂に対する濡れや浸透性を一層良化する。
【0022】
本発明のポリウレタンプレポリマーには更に、必要に応じて消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、粘着力抑制剤、紫外線吸収剤、顔料や染料等の着色剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0023】
ポリウレタンプレポリマー組成物の調製にあたっては、ポリオールとポリイソシアネートとから得られたポリウレタンプレポリマーに、上記触媒、安定剤、各種添加剤を加えればよい。また、上記ポリウレタンプレポリマーを製造する際にポリオール、ポリイソシアネートと共に、あらかじめ触媒、安定剤、各種添加剤の一部または全量を加えておいてもよい。
【0024】
上記基材4にポリウレタンプレポリマー組成物を保持させるには、従来公知の方法でよく、例えば低湿度に調整された室内でポリウレタンプレポリマー組成物をロールによって基材に塗布する方法によって行うことができる。得られたものを保存するには、湿気を遮断できる容器や包装材中に密封するとよい。
【0025】
上記した水硬化性樹脂3を基材4に保持させた支持体5は、一枚で使用することもできるが、通例、適用部位に応じた強度が得られるように複数枚を重ねて支持体5にするとよい。上肢など余り強い作用が加わらない場合には少ない枚数でよいが、下肢用等には枚数を増やすとよい。基材4にガラス繊維で形成した編布を使用する場合には、約2〜15枚程度の範囲内で選択すればよく、汎用品としては約4〜8枚程度重ねたものを支持体5にするとよい。図に示すものでは7枚重ねている。
【0026】
この支持体5の上を、支持体保護材7が接触するように覆っている。この支持体保護材7には、水硬化性樹脂3と部分的に反応して硬化させる硬化剤72が保持されている。この硬化剤72は、支持体5の表面部分の水硬化性樹脂3と部分的に反応するが、連鎖反応を起こさず、大部分の水硬化性樹脂を未硬化の状態に保っておくことができる。
こうした支持体保護材7には、通例、目の荒い編布、織布や不織布、開口の大きな軟質連続気泡フォーム、ネット、孔あきフイルムその他の開口率が約30〜90%程度、好ましくは約50〜70%程度の担体71を使用する。この開口率は、上記した支持体の基材と同様の方法で求められる。
このような担体71に硬化剤72を保持させるとよく、この硬化剤には活性水素を有する物質が含まれている。
【0027】
この硬化剤72の活性水素を有する物質としては、水酸基、アミノ基又はイミノ基を有するものが好適である。こうしたものとしては、例えば水酸基を有する物質では、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、多糖類(デンプン、プルラン、デキストラン、キトサン、ショ糖等)、糖類(グルコース、マルトース、トレハロース等)、ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、グリセリン誘導体(グリセリン、グリセリンのプロピレンオキシド付加物、グリセリンのエチレンオキシド付加物等)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物、トリエタノールアミン、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ステアリルアルコール、ヘキサノール、オクタノール等がある。アミノ基を有する物質では、ポリオルニチン、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサミン等)、ポリアルキルアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン等)、ジアミン類(1,6−ヘキサンジアミン、1,10−デカンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等)、トリス(アミノエチル)アミン、ステアリルアミン、オクチルアミン等がある。イミノ基を有する物質では、ポリエチレンイミン、ポリブチレンイミン等がある。そして、これらを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
これらの硬化剤が、常温で固体であるか又は液体であるかによって、硬化性樹脂への供給方法を変えるとよく、それらを目的によって適宜使い分けをすることができる。固体の場合には、直接散布することもできるが、硬化性樹脂の表面を均一的に硬化させるためには、溶媒に溶かしてその濃度で硬化する程度をコントロールすることが好ましい。また、少量でも溶媒に溶けやすいものが好ましい。こうしたものとして、入手し易いものでは、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、等)、多糖類(デンプン、プルラン、デキストラン、キトサン、ショ糖等)、糖類(グルコース、マルトース、トレハロース等)等が好ましく使用できる。
【0029】
また、硬化剤が液体の場合には直接供給する方法が簡便であり、供給する量をコントロ−ルすることで簡便に硬化する程度を制御することができる。なお、液体が揮発性の高いものであると、反応する前に気体となって揮散してしまい、均一に硬化させることが困難になるので、揮発性の低いものが好ましい。こうしたものとして、入手し易いものでは、グリセリン誘導体(グリセリン、グリセリンのプロピレンオキシド付加物、グリセリンのエチレンオキシド付加物等)、ポリリジン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサミン等)、ポリアルキルアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン等)、イミノ基を有する物質では、ポリエチレンイミン等がある。
【0030】
図に示すものは、担体71が目の荒いポリエステル繊維製で、開口率が60%の織布で、これに硬化剤となるポリビニルアルコールを0.02〜0.1g/m2 程度の割合で付着、保持させたものである。このポリビニルアルコールは、上記担体71の織布の織目の保持にも寄与している。
【0031】
この支持体保護材7を支持体5の表面に重ねたとき、支持体保護材7に保持されている硬化剤72は、支持体5の表面部分の水硬化性樹脂3と反応し、水硬化性樹脂を硬化させる。この硬化は、硬化剤72と表面部分の水硬化性樹脂3が接触した位置で部分的に起こり、大部分の水硬化性樹脂は未硬化のまま維持されており、連鎖的に反応して全体を硬化させることはない。
上記硬化は、支持体5の表面を部分的に硬化させ、更に好ましくは表面に薄い皮膜を形成し、水硬化性樹脂3の被覆材6への移動を防止するようになる。
【0032】
上記支持体5を載置した患部に接する側の緩衝材2は、患部に対する緩衝性を有しており、未硬化の硬化性樹脂が浸透し難く、適度の通気性があるものが好ましい。また、こうした緩衝材には、支持体の硬化性樹脂と非反応性で柔らかく患部の形状に追随して変形しやすいもの(成形性が良いもの)がよい。この緩衝材により患部側への当りを柔らかくし、硬化時における硬化性樹脂の反応熱が患部側へ伝わるのを防ぎ、供給された水が皮膚へ移行するのを防ぐことができる。例えば、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系等の合成繊維やレーヨン等の半合成繊維、綿等の天然繊維などを使用した厚みのある不織布、立体的な編物や織物などがある。また、ウレタン系、ポリオレフィン系、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等の単体や複合体の均一発泡体、スキン層を有する発泡体、更に前記各材料の積層体、不織布や立体編物・織物と発泡体の組合せ構造体などにすることができる。
【0033】
この緩衝材2の厚さは上記した作用を有するものであれば比較的薄いものが望ましいが、通常、約3〜17mm程度、好ましくは約4〜15mm程度である。3mmより薄いと上記作用が得難くなり、17mmを超えると成形性が悪くなることが多い。
【0034】
上記緩衝材2は複層状にすることができ、患部側の皮膚接触層21は、患部への当りをより和らげるように、通気性があり、皮膚への刺激性がなく、抗菌性のあるものが望ましい。この場合、皮膚接触層21に通気性のあるものを用いれば、非接触層側に通気性のない若しくは乏しい材料を用いることもできる。
【0035】
図に示す緩衝材2は、皮膚接触層21、防水層22、緩和層23の三層で形成されている。この皮膚接触層21は、厚さが2〜17mm程度の、ポリエステル繊維を使用したニードルパンチ不織布で目付量を200〜400g/m2 としたものである。防水層22は水硬化性樹脂の浸透や使用時において噴霧された水が皮膚接触層に浸透して行くのを防止するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等のメルトブローン不織布で目付量10〜20g/m2 のものを使用している。その他にポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム等も使用できる。この防水層22は場合に応じて省略することができる。
また、上記緩和層23は、比較的負荷のかかる部位に使用したときの耐久性、クッション性を向上させるために使用され、例えば厚さ約1〜10mm程度のポリウレタン、ポリエチレンその他の軟質連続気泡フォームを使用している。
【0036】
上記支持体保護材7の上は、被覆材6によって覆われている。この被覆材6は、素手で直接操作しても支持体5の水硬化性樹脂に触れないように隔離している。スプリント材1の被覆材6の上から弾力包帯を巻いて患部に固定するときに、誤って未硬化の樹脂が包帯に付着しないようにすることができる。そして、この被覆材6は、使用する際に外方から供給される水を支持体5に速やかに浸透させることができるものがよい。
【0037】
こうした被覆材6は、外方から供給した水がスムーズに透過する透水性と、通気性と共に、適度な腰があり、水硬化性樹脂が浸透して表面に出てこず、水硬化性樹脂と非反応性であることが好ましい。例えば、その開口率としては約10〜60%程度で、好ましくは約30〜50%程度がよく、厚さは、約0.5〜8mm程度であり、好ましくは約1〜4mm程度である。素材としては、ポリフルオロエチレン系、ポリエステル系、ポリオレフイン系、ポリ塩化ビニル系等の合成繊維やレーヨン等の半合成繊維、綿等の天然繊維などを使用した編物、織物、不織布、シートなどを用いることができる。また、上記プラスチックのエラストマーを使用した押出成形品の孔付シートなどを用いることができる。
この開口率も、上記した支持体の基材と同様の方法で求めることができる。
【0038】
図示する被覆材6は、ポリプロピレンエラストマーを使用した押出成形による一体成形のネットで、開口率が28〜36%で、厚さが1〜2mm程度のものである。このネットは適度の柔軟性と弾性を有しており、患部の形状に沿って変形することができる。
【0039】
上記支持体保護材7の担体71の厚みを厚くし、非吸水性の材料で形成すると、上記被覆材6を省略することができる。この場合、担体71の厚さは1.2〜4mm程度あるとよい。こうすると、被覆材6が無くてもスプリント材1を素手で取り扱うことができる。
【0040】
このスプリント材1を使用するときには、保存中の湿気不透過性の包装材等からスプリント材1を取り出す。このスプリント材1は、上記したように、支持体保護材7によって支持体5の表面部分の水硬化性樹脂3が部分的に反応し、硬化されているので、水硬化性樹脂の移動が規制されている。この水硬化性樹脂は保存中に包装材の中に垂れ出して行くことがないし、取り出したスプリント材1に、手袋を嵌めないで直接手を触れて取扱うこともできる。
【0041】
被覆材6側から噴霧器、エアゾール容器等を使用して水を噴霧する。供給された水は被覆材6、支持体保護材7を通過して支持体5へ浸透して行き、水硬化性樹脂との反応が始まる。このスプリント材1の緩衝材2側を直接、下肢、上肢その他の患部に当て、外側から手で触りながら形を整え、その上から弾力包帯で巻いてモールディングをする。次第に硬化が進み全体が硬化すればスプリントが出来上がって、患部を固定することができる。必要に応じて弾力包帯を解けば、随時これを取り外すこともできる。
【0042】
上記した噴霧等によって供給する水に界面活性剤を加えておくと、水硬化性樹脂に対する水の浸透がよくなるので好ましいことが多い。この界面活性剤としては、非イオン系、アニオン系、カチオン系、両性イオン系界面活性剤のいずれも使用可能であるが、上記した水硬化性樹脂と共に使用するような界面活性剤を用いるとよい。
【0043】
また、図4を参照し、本発明をキャスト材に適用した一例について述べると、キャスト材31は、水硬化性樹脂32をテープ状の基材33に保持させた支持体34を巻回して形成している。こうして巻回した支持体34の表面部分35に接触するようにして支持体保護材36で包むようにする。
この支持体保護材36は、これと接触する巻回した支持体34の水硬化性樹脂の表面部分と部分的に反応して硬化させ、樹脂の流動性を規制している。これにより巻回した支持体の大部分の硬化性樹脂は未硬化のままで確実に保持されている。こうしたキャスト材31は、湿気不透過性の包装材37で包装して保存するとよい。こうした保存中に、水硬化性樹脂が支持体から流れ出して包装材中に溜まるようなことはない。
こうしたキャスト材31は、包装材37より取り出し、支持体保護材36を取り除き、水中に浸漬してから軽く絞り、水と反応させる。支持体34を巻き戻しながら患部に巻回して行くと、支持体34には水硬化性樹脂33が確実に保持されているので、支持体に保持されている硬化性樹脂を硬化させ、患部を確実に固定させることができる。
【0044】
更に、本発明は身体用の各種装具類のステー材としても適用することができる。すなわち、足関節装具、膝装具、腰痛帯、上肢の装具その他の種々の装具についての固定材、支持材、保護材として使用することができる。
例えば、上記のような装具において、柔軟な本体の内部に固定、支持、保護のために支持体と、支持体保護材(硬化剤つき)又は硬化剤等を含むステー材を上記本体の一部に設置する。こうした装具は密封容器に保管しておくことができ、使用時に装具を密封容器から取り出し、使用部位に適用し、外方から水又は光等を供給して支持体を硬化させる。
また、支持体と、支持体保護材(硬化剤つき)又は硬化剤を含むステー材の表面をカバー材で覆い、これを密封容器に保管しておく。使用時に密封容器から取り出し、水の供給を行った後に、装具に設けたポケットなどに挿入して適用することもできる。この場合、出し入れ可能に挿入できるようにするとよいことがある。
【0045】
上記硬化性樹脂には、光の照射で硬化する光硬化性樹脂を使用することができる。
こうした光硬化性樹脂は、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤(たとえば光ラジカル重合開始剤等)、光増感剤などのその他の成分を含有している。使用する光硬化性樹脂は、一般的に使用されている光照射により架橋し得る感光性基を有する光硬化性樹脂であれば、特に限定されるものではなく、適宜のものを使用することができる。
【0046】
上記光硬化性樹脂としては、例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物で、モノマー、プレポリマー、2量体、3量体等のオリゴマー、それらの混合物がある。更にそれらの共重合体がある。
また、上記以外に、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ノボラック系樹脂及びこれらの二種以上の変性樹脂に光重合性不飽和基が結合したものが使用できる。
【0047】
上記光重合性不飽和基としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、シンナモイル基、シンナミリデン基、アジド基等が挙げられる。こうした光硬化性樹脂において、単官能及び多官能(メタ)アクリレートが一般的であり、例えば、感光性基として(メタ)アクリロイル基を含む光硬化性樹脂、感光性基としてシンナモイル基を含む光硬化性樹脂、感光性基としてアリル基を含む光硬化性樹脂などが挙げられる。この光硬化性樹脂は、下記光ラジカル重合開始剤と組み合わせて使用することが好ましい。これらの光硬化性樹脂は、単独で、また適宜混合して使用することができる。
【0048】
更に、必要に応じて、従来から公知のアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ゴム、ウレタン樹脂等の光重合性基を含有しない樹脂を配合することができる。
【0049】
上記した光反応開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を使用することができる。この 光ラジカル重合開始剤としては、一般に使用されている光ラジカル重合開始剤であれば特に制限されない。例えば、ベンゾフェノン,ベンゾインメチルエーテル,ベンゾインイソプロピルエーテル,ベンジル,キサントン、チオキサントン,アントラキノンなどの芳香族カルボニル化合物、アセトフェノン,プロピオフェノン,α−ヒドロキシイソブチルフェノン,α,α’−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン,1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン,ジアセチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類、ベンゾイルパーオキサイド,t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,t−ブチルハイドロパーオキサイド,ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート,3・3’・4・4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの有機過酸化物、ジフェニルヨードブロマイド,ジフェニルヨードニウムクロライドなどのジフェニルヨードニウムハロゲン化物、四臭化炭素,クロロホルム,ヨードホルムなどの有機ハロゲン化物、3−フェニル−5−イソオキサゾロン,2・4・6−トリス(トリクロロメチル)−1・3・5−トリアジンベンズアントロンなどの複素環式及び多環式化合物、2・2’−アゾ(2・4−ジメチルバレロニトリル),2・2−アゾビスイソブチロニトリル,1・1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル),2・2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物、鉄−アレン錯体、チタノセン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、ビスイミダゾール系化合物、N−アリールグリシジル系化合物、アクリジン系化合物、芳香族ケトン/芳香族アミンの組み合わせ、ペルオキシケタール等が挙げられる。
【0050】
更に、光増感剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミン安息香酸メチル、4-ジメチルアミン安息香酸エチル、4,4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン等がある。
この光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて更に種々の成分を配合することができる。例えば、貯蔵中にゲル化を防止し、貯蔵安定性を維持するために安定剤を配合することができる。この安定剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンメチルエーテル、t-ブチルハイドロキノンおよびカテコール等のフェノール類、ベンゾキノン、ナフトキノンおよびフェニルベンゾキノン等のキノン類等がある。
【0051】
上記支持体の光硬化性樹脂は、下記する活性水素を有する硬化剤と部分的に反応する性質を有しており、支持体の表面で反応させることによって部分的に硬化し、支持体の樹脂の移動や、移行を防止することができる。更に部分的な硬化によって表面に保護被膜を形成することができる。
【0052】
上記硬化剤の活性水素を有する物質としては、アミノ基又はイミノ基を有するものが好適である。こうしたものとしては、ポリオルニチン、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサミン等)、ジアミン類(1,6−ヘキサンジアミン、1,10−デカンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等)、トリス(アミノエチル)アミン、ステアリルアミン、オクチルアミン、イミノ基を有する物質では、ポリエチレンイミン、ジブチルアミン、ジエチルアミン等があり、これらを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
上記アミノ基又はイミノ基を有するものは水硬化性樹脂と同様の方法で適用することができる。こうしたものとしては、均一に反応させるためには揮発性が低いものが好ましく、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサミン等)、ポリエチレンイミン等がある。
【0053】
光硬化性樹脂を用いたスプリント材を使用するとき、表面が部分的に硬化されているので、遮光性の包装材等から、手に手袋を嵌めることなくスプリント材を取り出すことができる。更に、表面に保護皮膜が形成されているものでは、一層安全に取り出すことができる。そして、このスプリント材の皮膚接触層側を直接患部に当て、被覆材側から直接手で触りながら形を整え、その上から弾力包帯で巻いてモールディングをする。そして、上記被覆材の外側から紫外線、可視光線等の光を照射する。未硬化の光硬化性樹脂は次第に硬化し、全体が硬化すればスプリントが出来上がって、患部を固定することができる。
出来上がったスプリントは、必要に応じ随時に弾力包帯を解いて、患部から取り外すことができる。
【実施例】
【0054】
実施例のスプリント材として下記する緩衝材、支持体、支持体保護材、被覆材を用意し、比較例として下記する緩衝材、支持体、被覆材を用意した。
【0055】
(実施例1)
(1)支持体
(1−1) 基材: ガラス繊維の編物、開口率22%
(1−2) 硬化性樹脂: 水硬化性ウレタン樹脂であって、ポリオール(分子量400のポリエチレングリコール(PEG)5.0%(wt%:以下同じ)、分子量600のPEG11.0%、分子量2000のPEG2.0%、分子量4000のPEG6.0%、分子量330のビスフェノール系ジオール5.0%、分子量600のビスフェノール系ジオール10.0%とポリイソシアネート(MDIが47.5%、変性MDIが11.5%)からなるポリウレタンプレポリマー98%、触媒(ビス−4−(2,6−ジメチルモルホリノ)ジエチルエーテル)1.5%、消泡剤(ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合体:BYK−A525)0.1%、酸化防止剤(テトラキス−{メチレン−3−(3”,5”−ジ−t−ブチル−4”−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン:IRGANOX1010)0.2%、安定剤(p−トルエンスルホン酸)0.1%、揺変性付与剤(ジベンジリデンソルビトール)0.1%からなる。
(1−3) 重ね枚数: 7枚重ね合せ
(2)支持体保護材
(2−1) 担体: ポリエステル(PET)繊維の織布、開口率60%、厚さ0.2mm
(2−2) 硬化剤: ポリビニルアルコール(PVA)
付着量 0.03g/m2
(3)緩衝材
(3−1) 皮膚接触層: PET繊維の不織布、
目付量300g/m2、厚さ3mm
(3−2) 防水層: ポリプロピレンのメルトブローン(PPMB)不織布
目付量10〜20g/m2
(3−3) 緩和層: ポリウレタン(PU)の軟質連続気泡フォーム、厚さ2mm
(4)被覆材
ポリプロピレン(PP)エラストマー製のネット、開口率35%、
目付量360g/m2 、厚さ1.5mm、撥水・撥油処理無し
【0056】
(実施例2〜9)
図5、図6の表に示すとおりである。すなわち、
(実施例2)
支持体保護材の硬化剤にポリエチレンイミンを付着量0.02g/m2 で使用している。また緩衝材の緩和層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例3)
支持体保護材の担体がなく、硬化剤には1,6−ヘキサンジオールを使用し、付着量0.03g/m2 の割合で支持体の水硬化性樹脂の表面部分に付着させている。また、緩衝材の防水層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例4)
支持体保護材の担体がなく、硬化剤にはジエチレントリアミンを使用し、付着量0.03g/m2 の割合で支持体の水硬化性樹脂の表面部分に付着させている。緩衝材の防水層及び緩和層を欠いている。被覆材にPET繊維の不織布で、目付量150g/m2 、厚さ2mm、撥水・撥油処理無しのものを使用している。他は、実施例1と同じである。
(実施例5)
支持体保護材の担体にポリエチレン(PE)エラストマー製のネットで、開口率40%のものを使用し、硬化剤にはポリビニルアルコール(PVA)を、付着量0.06g/m2 の割合で付着させている。被覆材は使用しない。他は、実施例1と同じである。
【0057】
(実施例6)
支持体の硬化性樹脂として水硬化性樹脂に代えて光硬化性樹脂を使用した。この光硬化性樹脂は、アクリルウレタンオリゴマー58.3%(wt%:以下同じ)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート38.8%、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド2.9%からなる。
支持体保護材の硬化剤にはジエチレントリアミンを付着量0.03g/m2の割合で担体に保持させた。また、緩衝材の防水層及び緩和層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例7)
支持体の硬化性樹脂として水硬化性樹脂に代えて実施例6の光硬化性樹脂を使用している。支持体保護材の担体がなく、硬化剤にはジエチレントリアミンを付着量0.03g/m2 の割合で光硬化性樹脂の表面部分に付着させている。緩衝材の緩和層にはPUの軟質連続気泡フォームで厚さ3mmのものを使用し、防水層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例8)
支持体の硬化性樹脂として実施例6の光硬化性樹脂を使用している。支持体保護材の担体がなく、硬化剤にはポリアリルアミンを付着量0.05g/m2 の割合で支持体の光硬化性樹脂の表面部分に付着させている。また緩衝材の防水層及び緩和層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例9)
支持体の硬化性樹脂として実施例6の光硬化性樹脂を使用している。支持体保護材の担体にPPエラストマー製のネットで、開口率40%、厚さ1.7mmのものを使用し、硬化剤にはポリアリルアミンを付着量0.06g/m2 の割合で担体に付着させている。また緩衝材の緩和層には、PUの軟質連続気泡フォームで厚さ3mmのものを使用し、防水層を欠いている。被覆材は省略した。他は、実施例1と同じである。
【0058】
(比較例1)
(1)支持体
(1−1) 基材: ガラス繊維の編物、開口率11%
(1−2) 硬化性樹脂: 実施例1の水硬化性ウレタン樹脂
(1−3) 重ね枚数: 7枚重ね合せ
(2)支持体保護材: ナシ
(3)緩衝材
(3−1) 皮膚接触層: PET繊維の不織布、
目付量200g/m2 、厚さ6mm
(3−2) 防水層: ナシ
(3−3) 緩和層: ナシ
(4)被覆材
PET繊維の不織布、目付量200g/m2 、厚さ6mm、撥水・撥油処理無しのものを使用した。
【0059】
(比較例2〜10)
図7、図8に示すとおりである。すなわち、
(比較例2)
支持体の基材にガラス繊維の編物で開口率18%のものを使用した。緩衝材の皮膚接触層にはPUの軟質連続気泡フォーム、目付量0.66g/m3、厚さ6mmのものを使用した。また、被覆材にPET繊維の不織布、目付量50g/m2 、厚さ0.1mm、撥水・撥油処理をしたものを使用した。他は、比較例1と同じである。
(比較例3)
支持体は、基材にPET繊維の編物で、開口率10%のもの使用し、他は比較例1の支持体と同じにした。緩衝材の皮膚接触層にポリウレタンPUの軟質連続気泡フォームで目付量0.66g/m3で、厚さ6mmのものに、厚さ0.1mmのPETフイルムを重ねたものを使用した。また、被覆材にPETフイルムで厚さ0.1mm、撥水・撥油処理をしていないものを使用した。他は、比較例1と同じである。
(比較例4)
支持体は、実施例1の支持体と同じにした。緩衝材の皮膚接触層にPET繊維の不織布で、目付量300g/m2 、厚さ5mmのものを使用した。被覆材にPET繊維をダブルラッセル編した編物で、開口率34%、目付量310g/m2 、厚さ3mm、撥水・撥油処理をしていないものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
(比較例5)
支持体及び被覆材は、実施例1の支持体及び被覆材と同じにした。緩衝材の皮膚接触層にPET繊維の不織布で、目付量300g/m2 、厚さ10mmのものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
【0060】
(比較例6)
支持体は、実施例1の支持体と同じにした。緩衝材の皮膚接触層は、比較例5と同じにした。被覆材にPET繊維をダブルラッセル編した編物で、開口率34%、目付量310g/m2 、厚さ4mm、撥水・撥油処理をしたものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
(比較例7)
支持体及び被覆材は、実施例1の支持体と同じにした。緩衝材の皮膚接触層は、比較例5と同じにした。緩衝材の緩和層にPUの軟質連続気泡フォームで厚さ2mmのものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
(比較例8)
支持体に実施例1の水硬化性樹脂に代えて実施例6の光硬化性樹脂を使用した。緩衝材の皮膚接触層は、比較例5と同じにした。他は、比較例2と同じにした。
(比較例9)
支持体は、比較例8と同じにした。緩衝材の皮膚接触層は、比較例5と同じにした。被覆材は実施例1と同じにした。他は、比較例1と同じにした。
(比較例10)
支持体及び緩衝材の皮膚接触層は、比較例3と同じにした。被覆材は、厚さ0.1mmのPETフイルムに、PET繊維の不織布で、目付量120g/m2 、厚さ2mmのものを重ね、撥水・撥油処理をしていないものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
【0061】
(物性評価)
実施例及び比較例について物性評価試験を行った。
(1)樹脂の移行
スプリント材に、10cm×10cm当り19.6Nの荷重をかけ、50℃で7日間保管し、被覆材への樹脂の移行を目視により確認した。
目視による評価は下記により行った。
(1−1)被覆材のある場合
A: 被覆材への樹脂の移行がない。
B: 被覆材の外側表面への樹脂の移行は無いが、支持体と接している面への樹脂の移行が見られる。
C: 被覆材への樹脂の移行があり、外側表面への樹脂の移行が見られる。
(1−2)被覆材のない場合
A: 支持体保護材外側表面への樹脂の移行がない。
C: 支持体保護材外側表面への樹脂の移行が見られる。
(2)硬化性
(2−1) 硬化開始10分後の硬化性
スプリント材の硬化開始から10分後及び最終の強度を比較した。
10cm×10cmのスプリント材を用意し、水噴霧、水浸漬、光照射の各硬化方法により水又は光を供給して硬化させる。
水噴霧による場合は50g/m2 の水を被覆材側から噴霧して硬化させた。
水浸漬の場合は、スプリント材を水中に漬けて、水中から取出して余分な水を除去(除去後に付着している水の量は約100g/m2 である)して硬化させた。
光照射の場合はメタルハライドランプ(120w)を20cm離れた位置から40秒照射して硬化させた。
上記水又は光を供給した時点から10分後の3点曲げ強度を測定する。測定は、支点間距離50mm、試験速度100mm/minの条件で行い、最大応力を10分後の硬化性として強度で表わした。
(2−2) 最終硬化性
上記と同様にして24時間後の強度を求めた。
(3)通気性
スプリント材を硬化後に、直径45mmの円形に切り取り、測端部は粘土を用いてシールした。この試験片についてガーレー式通気度試験機で空気量350mlの通気度を測定した。
【0062】
(物性評価の結果)
実施例及び比較例の物性評価の結果は、図9〜図12の図表に示した。
実施例では、樹脂の移行性についていずれも「A」の評価が得られており、水硬化性樹脂、光硬化性樹脂の被覆材又は支持体保護材の外側表面への移行が見られなかった。比較例においては、比較例3、4では「A」の評価が得られており、水硬化性樹脂の被覆材への移行が見られなかったが、他の例では水硬化性樹脂、光硬化性樹脂の被覆材への移行が見られた。
硬化性に関して、実施例の水硬化性樹脂のものでは、実施例1−2、4を除き硬化10分後の強度が比較例よりも低いけれども、24時間後の最終強度では比較例に比べて大幅に高い数値となっている。光硬化性樹脂では、実施例でも比較例でも硬化開始10分後には最終強度に近い値が得られているが、実施例の方が比較例に比べて相対的に高い強度が得られている。
また、通気性において実施例では良好な結果が出ているが、比較例では実施例に比べて約1/4〜1/6程度であり、特に比較例3、同10では通気性が見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例を示す一部省略一部切欠斜視図である。
【図2】図1のものの断面図である。
【図3】図1のものの使用状態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図5】本発明の実施例の構成を示す図表である。
【図6】本発明の他の実施例の構成を示す図表である。
【図7】本発明の比較例の構成を示す図表である。
【図8】本発明の他の比較例の構成を示す図表である。
【図9】本発明の実施例の物性評価の結果を示す図表である。
【図10】本発明の他の実施例の物性評価の結果を示す図表である。
【図11】本発明の比較例の物性評価の結果を示す図表である。
【図12】本発明の他の比較例の物性評価の結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0064】
1 スプリント材
2 緩衝材
3 水硬化性樹脂
4 基材
5 支持体
6 被覆材
7 支持体保護材
21 皮膚接触層
22 防水層
23 緩和層
71 担体
72 硬化剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、スポーツ分野などにおいて、治療又は保護の目的で患部を固定又は支持するスプリント、キャスト、ステーなどを形成するための整形外科用固定材に関する。特に、人や動物の骨折、捻挫、矯正などの治療や予防に、またスポーツ等において転倒、衝撃などから身体を保護するための整形外科用固定材に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、スプリントは骨折、捻挫又は変形等の疾患部位を外方から覆うようにして、固定、矯正又は支持を行うために使用される。骨折等の直後は患部が大きく腫れており発熱もあるので、すぐにギブスを巻くことができず、先ずスプリント材を当てて患部を固定している。また、スプリント材には、簡便性があり、正確な固定、支持ができるため脱臼、捻挫等の場合にも使用されている。
従来のスプリント材は、患部を綿で覆いその上から木片や梯子状シーネ当て、更にその上から伸縮性包帯等を巻いて固定していたが、患部との適合性に劣る点があった。
【0003】
その後、開放(連続)気泡型フォームシート等に水硬化性樹脂を保持させたスプリント材が開発され、多く用いられるようになった。この水硬化性樹脂を用いたスプリント材は、ゴム手袋を手に嵌めて、密封した袋から取り出し、水を張ったバケツ等の中に全体を浸して水硬化性樹脂に水を供給するようにする。そして、水の中から引上げて軽く搾り、予め下巻き材を巻いておいた患部にスプリント材を当てて沿わせるようにし、その上から弾力包帯を巻いて水硬化性樹脂を硬化させる。硬化したスプリント材は、患部に合致した支持固定を行うと共に容易に取り外しもできるようにしたものである(特許文献1)。
【0004】
更に、その後水硬化性樹脂を保持させたものを被覆材で包んだスプリント材も提供されるようになった。これらの水硬化性樹脂を用いたスプリント材は、いずれもバケツに溜めた水等に全体を浸けることによって、水硬化性樹脂に対して水が充分に接触して硬化反応が円滑に進むようにする必要がある。従って、作業が何かと煩雑であるし、作業中に水が周りに飛び散って治療室が汚れたりすることもあった。
【0005】
また、上記被覆材で包んだスプリント材では、下巻き材を必要とせず直接患部に当てがうことができるものもある。しかしその場合には、バケツから引上げたときに被覆材が多量の水を含んでいるので、そのままでは患部の皮膚表面に当てることができない。そこで、患部に適用する前に被覆材の表面をタオル等で押さえて、余分な水を吸い取り除去する必要があった。また、これらの操作を行っても十分に水を除去することは難しく、未だ表面が濡れて湿ったスプリント材を皮膚に当てて適用しなければならない。皮膚表面はその湿気によって蒸れるし、乾燥するのに時間がかかることもあり、患者は何かと不快に感じることが多かった。また、皮膚の弱い人や患部に傷がある場合には更に多くの支障を生じていた。
【0006】
さらに、上記被覆材で包んだスプリント材では、保存中に水硬化性樹脂が被覆材に浸透して移行して来ることがある。こうした移行を防止する為に、樹脂に揺変性付与剤を添加することが行われている(特許文献2)。
この揺変性付与剤によってある程度樹脂の移行が防止できるが、移行防止の為に添加量を多くすると急激に樹脂の粘度が高くなって、樹脂の塗布が困難となり、製造上の不都合がある。
【0007】
また、樹脂の組成の調整によって粘度を高くすることもできるが、樹脂の粘度は温度の影響を受け易い。粘度を高くしたものでも、高温時には樹脂の粘度が下がって被覆材への移行が起こり易く、低温時には粘度が上がって樹脂の塗布が困難となり、製造上の不都合がある。
【0008】
また、テープ状の基材に水硬化性樹脂を保持させ、これを巻回したキャストでも、防湿性の包装袋に密封して保存している間に、特に高温状態に置くなど保存状況が悪いと樹脂垂れが起こり、樹脂が基材から離れて包装袋内に溜まってしまうことも見られる。また、ロール状のキャストの表面に樹脂が漏出していると、キャストを患部に巻回するときに手袋に樹脂が多く付着してスムーズなローリングやモールディングができないこともある。
【0009】
【特許文献1】特許第2686271号公報
【特許文献2】特開平9−224796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、基材に硬化性樹脂を保持させた支持体を持った整形外科用の固定材において、硬化性樹脂の移動や移行を防止して、何時でも同じような状態で使用できるものを得ようとするものである。
また、整形外科用固定材を手袋を嵌めることなく直接手で取り扱うことができるようなものを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材に硬化性樹脂を保持させた支持体を有する整形外科用固定材において、支持体の硬化性樹脂の大部分を未硬化状態に維持すると共に、その表面部分の硬化性樹脂を部分的に反応・硬化させるようにする。
上記支持体の表面部分の部分的な硬化によって、支持体の硬化性樹脂の移動や、移行を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、整形外科用固定材を形成している支持体に保持されている硬化性樹脂の移動、移行を制御することによって、何時でも安定した状態で硬化性樹脂を機能させ、所望の整形外科用固定材を得ることができる。
また、この整形外科用固定材は、硬化性樹脂の表面部分が部分的に硬化されているので、場合に応じてこれを使用するとき、素手で直接取り扱って、患部に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明をスプリント材に適用した場合について述べると、スプリント材1は、硬化性樹脂3を基材4に保持させた支持体5を、患部に接する側に設けた緩衝材2の上に位置させている。この支持体5の上は被覆材6で覆っている。そして、この支持体5と被覆材6の間には、支持体5の表面の硬化性樹脂と接触する支持体保護材7を介在させている。
この支持体保護材7は、これと接触する硬化性樹脂3の表面部分と部分的に反応して硬化させ、樹脂の流動性を規制している。これにより未硬化の大部分の硬化性樹脂3は移動せず、被覆材6側へ移行して行かないので、基材4に保持された状態を保ってことができる。
こうしたスプリント材1は、通常、湿気不透過性の包装材に入れて保存される。
【0014】
上記支持体5の硬化性樹脂3を保持する基材4は、硬化性樹脂と非反応性であって、引張弾性率が高いものがよく、少くとも約800MPa程度以上のものが好ましい。また、下記する硬化性樹脂に水硬化性樹脂を使用し、外方から水分を噴霧して供給することによって硬化させるものの場合は、供給された水が浸透し、拡散し易くするため、1cm2 当り約15〜35個程度の開口を有し、開口率が約12〜48%程度であることが望ましい。こうした基材4は、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維その他を使用した織物、編物、不織布等が使用される。上記開口率は、一定範囲内における空隙が占める面積の割合であって、基材の拡大写真を撮り、写真を画像認識してコンピューター処理で求めることができる。
【0015】
上記基材4に保持させる硬化性樹脂には、水と反応して硬化する水硬化性樹脂がある。こうした水硬化性樹脂としては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーと触媒、その他の添加物からなるポリウレタンプレポリマー組成物がある。
【0016】
上記ポリオールには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダムまたはブロック共重合体など、並びにこれらの適宜混合物がある。このポリオールの数平均分子量としては約200〜4000程度のものが望ましく、分子量が200以下では剛性が大きく、硬くて脆い性質となり、分子量4000以上では剛性が小さく固定材としての強度が不足することがある。また、これらのポリオールと共に公知のポリオールも用いることができ、例えばビスフェノール系ジオール(ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物等)などを適宜混合して用いることができる。
【0017】
上記ポリイソシアネートには、従来公知のポリイソシアネートを使用することができ、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート及びこれらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートなどがあり、これらは単独または2種以上組合せて使用することができる。好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びこれらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート(変性MDI)を用いるとよい。
【0018】
末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得るための、ポリオールとポリイソシアネートとの配合比率は、通常ポリオール1当量当りポリイソシアネートを約2〜5当量、好ましくは2.5〜5当量にする。両者の反応は、通常約30〜100℃、好ましくは約50〜80℃で加熱攪拌することで達成される。ポリウレタンプレポリマーの粘度は、通常、室温23℃で約10〜50Pa・s、好ましくは約15〜40Pa・sにするとよい。
【0019】
反応触媒としては、貯蔵安定性に優れたものを選択使用するとよく、従来からよく知られているものとして、ジモルホリノジエチルエーテル、ビス−4−(2,6−ジメチルモルホリノ)ジエチルエーテル、アルキル置換ジモルホリノジエチルエーテル類等があり、これらを単独または2種以上混合して用いることができる。
上記ポリウレタンプレポリマーには適宜安定剤を含有させるとよく、こうした安定剤としては公知のベンゾイルクロライド、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等を使用することができる。これらの安定剤も単独または2種以上混合して用いることができる。
【0020】
上記水硬化性樹脂には、必要に応じて揺変性付与剤を加えると、支持体中の偏在化を一層防ぐことができる。こうした揺変性付与剤としては、シリカ、酸化チタン、有機系のポリアルキレングリコールの末端水酸基を水酸基処理剤で処理したポリアルキレン変性化合物で一般にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはこれらの共重合体を塩化メチル、脂肪酸等で処理したものがある。また、芳香族カルボン酸エステル類、D−ソルビトールと芳香族アルデヒドとのアセタール化反応により合成されたベンジリデンソルビトール、ジトリリデンソルビトール類等を使用することができる。使用量としては、水硬化性樹脂に対して約0.01〜3wt%程度、好ましくは約0.03〜1wt%程度である。
【0021】
界面活性剤を水硬化性樹脂と共に用いることができ、非イオン系、アニオン系、カチオン系、両性イオン系が使用できる。非イオン系としては脂肪酸アルカノールアミド系、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等がある。アニオン系としてはエーテルカルボン酸、スルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等がある。カチオン系としてはアルキルアンモニウム塩等が使用できる。両性イオン系としてはN,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等が使用できる。又、添加量としては水硬化性樹脂に対し約0.1〜3%程度で、水硬化性樹脂へ直接配合したり、基材に水硬化性樹脂を保持させた後に、噴霧や塗布によって表面に付着させてもよい。この界面活性剤は、水硬化性樹脂に対する濡れや浸透性を一層良化する。
【0022】
本発明のポリウレタンプレポリマーには更に、必要に応じて消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、粘着力抑制剤、紫外線吸収剤、顔料や染料等の着色剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0023】
ポリウレタンプレポリマー組成物の調製にあたっては、ポリオールとポリイソシアネートとから得られたポリウレタンプレポリマーに、上記触媒、安定剤、各種添加剤を加えればよい。また、上記ポリウレタンプレポリマーを製造する際にポリオール、ポリイソシアネートと共に、あらかじめ触媒、安定剤、各種添加剤の一部または全量を加えておいてもよい。
【0024】
上記基材4にポリウレタンプレポリマー組成物を保持させるには、従来公知の方法でよく、例えば低湿度に調整された室内でポリウレタンプレポリマー組成物をロールによって基材に塗布する方法によって行うことができる。得られたものを保存するには、湿気を遮断できる容器や包装材中に密封するとよい。
【0025】
上記した水硬化性樹脂3を基材4に保持させた支持体5は、一枚で使用することもできるが、通例、適用部位に応じた強度が得られるように複数枚を重ねて支持体5にするとよい。上肢など余り強い作用が加わらない場合には少ない枚数でよいが、下肢用等には枚数を増やすとよい。基材4にガラス繊維で形成した編布を使用する場合には、約2〜15枚程度の範囲内で選択すればよく、汎用品としては約4〜8枚程度重ねたものを支持体5にするとよい。図に示すものでは7枚重ねている。
【0026】
この支持体5の上を、支持体保護材7が接触するように覆っている。この支持体保護材7には、水硬化性樹脂3と部分的に反応して硬化させる硬化剤72が保持されている。この硬化剤72は、支持体5の表面部分の水硬化性樹脂3と部分的に反応するが、連鎖反応を起こさず、大部分の水硬化性樹脂を未硬化の状態に保っておくことができる。
こうした支持体保護材7には、通例、目の荒い編布、織布や不織布、開口の大きな軟質連続気泡フォーム、ネット、孔あきフイルムその他の開口率が約30〜90%程度、好ましくは約50〜70%程度の担体71を使用する。この開口率は、上記した支持体の基材と同様の方法で求められる。
このような担体71に硬化剤72を保持させるとよく、この硬化剤には活性水素を有する物質が含まれている。
【0027】
この硬化剤72の活性水素を有する物質としては、水酸基、アミノ基又はイミノ基を有するものが好適である。こうしたものとしては、例えば水酸基を有する物質では、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、多糖類(デンプン、プルラン、デキストラン、キトサン、ショ糖等)、糖類(グルコース、マルトース、トレハロース等)、ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、グリセリン誘導体(グリセリン、グリセリンのプロピレンオキシド付加物、グリセリンのエチレンオキシド付加物等)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド付加物、トリエタノールアミン、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ステアリルアルコール、ヘキサノール、オクタノール等がある。アミノ基を有する物質では、ポリオルニチン、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサミン等)、ポリアルキルアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン等)、ジアミン類(1,6−ヘキサンジアミン、1,10−デカンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等)、トリス(アミノエチル)アミン、ステアリルアミン、オクチルアミン等がある。イミノ基を有する物質では、ポリエチレンイミン、ポリブチレンイミン等がある。そして、これらを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
これらの硬化剤が、常温で固体であるか又は液体であるかによって、硬化性樹脂への供給方法を変えるとよく、それらを目的によって適宜使い分けをすることができる。固体の場合には、直接散布することもできるが、硬化性樹脂の表面を均一的に硬化させるためには、溶媒に溶かしてその濃度で硬化する程度をコントロールすることが好ましい。また、少量でも溶媒に溶けやすいものが好ましい。こうしたものとして、入手し易いものでは、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、等)、多糖類(デンプン、プルラン、デキストラン、キトサン、ショ糖等)、糖類(グルコース、マルトース、トレハロース等)等が好ましく使用できる。
【0029】
また、硬化剤が液体の場合には直接供給する方法が簡便であり、供給する量をコントロ−ルすることで簡便に硬化する程度を制御することができる。なお、液体が揮発性の高いものであると、反応する前に気体となって揮散してしまい、均一に硬化させることが困難になるので、揮発性の低いものが好ましい。こうしたものとして、入手し易いものでは、グリセリン誘導体(グリセリン、グリセリンのプロピレンオキシド付加物、グリセリンのエチレンオキシド付加物等)、ポリリジン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサミン等)、ポリアルキルアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン等)、イミノ基を有する物質では、ポリエチレンイミン等がある。
【0030】
図に示すものは、担体71が目の荒いポリエステル繊維製で、開口率が60%の織布で、これに硬化剤となるポリビニルアルコールを0.02〜0.1g/m2 程度の割合で付着、保持させたものである。このポリビニルアルコールは、上記担体71の織布の織目の保持にも寄与している。
【0031】
この支持体保護材7を支持体5の表面に重ねたとき、支持体保護材7に保持されている硬化剤72は、支持体5の表面部分の水硬化性樹脂3と反応し、水硬化性樹脂を硬化させる。この硬化は、硬化剤72と表面部分の水硬化性樹脂3が接触した位置で部分的に起こり、大部分の水硬化性樹脂は未硬化のまま維持されており、連鎖的に反応して全体を硬化させることはない。
上記硬化は、支持体5の表面を部分的に硬化させ、更に好ましくは表面に薄い皮膜を形成し、水硬化性樹脂3の被覆材6への移動を防止するようになる。
【0032】
上記支持体5を載置した患部に接する側の緩衝材2は、患部に対する緩衝性を有しており、未硬化の硬化性樹脂が浸透し難く、適度の通気性があるものが好ましい。また、こうした緩衝材には、支持体の硬化性樹脂と非反応性で柔らかく患部の形状に追随して変形しやすいもの(成形性が良いもの)がよい。この緩衝材により患部側への当りを柔らかくし、硬化時における硬化性樹脂の反応熱が患部側へ伝わるのを防ぎ、供給された水が皮膚へ移行するのを防ぐことができる。例えば、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系等の合成繊維やレーヨン等の半合成繊維、綿等の天然繊維などを使用した厚みのある不織布、立体的な編物や織物などがある。また、ウレタン系、ポリオレフィン系、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等の単体や複合体の均一発泡体、スキン層を有する発泡体、更に前記各材料の積層体、不織布や立体編物・織物と発泡体の組合せ構造体などにすることができる。
【0033】
この緩衝材2の厚さは上記した作用を有するものであれば比較的薄いものが望ましいが、通常、約3〜17mm程度、好ましくは約4〜15mm程度である。3mmより薄いと上記作用が得難くなり、17mmを超えると成形性が悪くなることが多い。
【0034】
上記緩衝材2は複層状にすることができ、患部側の皮膚接触層21は、患部への当りをより和らげるように、通気性があり、皮膚への刺激性がなく、抗菌性のあるものが望ましい。この場合、皮膚接触層21に通気性のあるものを用いれば、非接触層側に通気性のない若しくは乏しい材料を用いることもできる。
【0035】
図に示す緩衝材2は、皮膚接触層21、防水層22、緩和層23の三層で形成されている。この皮膚接触層21は、厚さが2〜17mm程度の、ポリエステル繊維を使用したニードルパンチ不織布で目付量を200〜400g/m2 としたものである。防水層22は水硬化性樹脂の浸透や使用時において噴霧された水が皮膚接触層に浸透して行くのを防止するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等のメルトブローン不織布で目付量10〜20g/m2 のものを使用している。その他にポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム等も使用できる。この防水層22は場合に応じて省略することができる。
また、上記緩和層23は、比較的負荷のかかる部位に使用したときの耐久性、クッション性を向上させるために使用され、例えば厚さ約1〜10mm程度のポリウレタン、ポリエチレンその他の軟質連続気泡フォームを使用している。
【0036】
上記支持体保護材7の上は、被覆材6によって覆われている。この被覆材6は、素手で直接操作しても支持体5の水硬化性樹脂に触れないように隔離している。スプリント材1の被覆材6の上から弾力包帯を巻いて患部に固定するときに、誤って未硬化の樹脂が包帯に付着しないようにすることができる。そして、この被覆材6は、使用する際に外方から供給される水を支持体5に速やかに浸透させることができるものがよい。
【0037】
こうした被覆材6は、外方から供給した水がスムーズに透過する透水性と、通気性と共に、適度な腰があり、水硬化性樹脂が浸透して表面に出てこず、水硬化性樹脂と非反応性であることが好ましい。例えば、その開口率としては約10〜60%程度で、好ましくは約30〜50%程度がよく、厚さは、約0.5〜8mm程度であり、好ましくは約1〜4mm程度である。素材としては、ポリフルオロエチレン系、ポリエステル系、ポリオレフイン系、ポリ塩化ビニル系等の合成繊維やレーヨン等の半合成繊維、綿等の天然繊維などを使用した編物、織物、不織布、シートなどを用いることができる。また、上記プラスチックのエラストマーを使用した押出成形品の孔付シートなどを用いることができる。
この開口率も、上記した支持体の基材と同様の方法で求めることができる。
【0038】
図示する被覆材6は、ポリプロピレンエラストマーを使用した押出成形による一体成形のネットで、開口率が28〜36%で、厚さが1〜2mm程度のものである。このネットは適度の柔軟性と弾性を有しており、患部の形状に沿って変形することができる。
【0039】
上記支持体保護材7の担体71の厚みを厚くし、非吸水性の材料で形成すると、上記被覆材6を省略することができる。この場合、担体71の厚さは1.2〜4mm程度あるとよい。こうすると、被覆材6が無くてもスプリント材1を素手で取り扱うことができる。
【0040】
このスプリント材1を使用するときには、保存中の湿気不透過性の包装材等からスプリント材1を取り出す。このスプリント材1は、上記したように、支持体保護材7によって支持体5の表面部分の水硬化性樹脂3が部分的に反応し、硬化されているので、水硬化性樹脂の移動が規制されている。この水硬化性樹脂は保存中に包装材の中に垂れ出して行くことがないし、取り出したスプリント材1に、手袋を嵌めないで直接手を触れて取扱うこともできる。
【0041】
被覆材6側から噴霧器、エアゾール容器等を使用して水を噴霧する。供給された水は被覆材6、支持体保護材7を通過して支持体5へ浸透して行き、水硬化性樹脂との反応が始まる。このスプリント材1の緩衝材2側を直接、下肢、上肢その他の患部に当て、外側から手で触りながら形を整え、その上から弾力包帯で巻いてモールディングをする。次第に硬化が進み全体が硬化すればスプリントが出来上がって、患部を固定することができる。必要に応じて弾力包帯を解けば、随時これを取り外すこともできる。
【0042】
上記した噴霧等によって供給する水に界面活性剤を加えておくと、水硬化性樹脂に対する水の浸透がよくなるので好ましいことが多い。この界面活性剤としては、非イオン系、アニオン系、カチオン系、両性イオン系界面活性剤のいずれも使用可能であるが、上記した水硬化性樹脂と共に使用するような界面活性剤を用いるとよい。
【0043】
また、図4を参照し、本発明をキャスト材に適用した一例について述べると、キャスト材31は、水硬化性樹脂32をテープ状の基材33に保持させた支持体34を巻回して形成している。こうして巻回した支持体34の表面部分35に接触するようにして支持体保護材36で包むようにする。
この支持体保護材36は、これと接触する巻回した支持体34の水硬化性樹脂の表面部分と部分的に反応して硬化させ、樹脂の流動性を規制している。これにより巻回した支持体の大部分の硬化性樹脂は未硬化のままで確実に保持されている。こうしたキャスト材31は、湿気不透過性の包装材37で包装して保存するとよい。こうした保存中に、水硬化性樹脂が支持体から流れ出して包装材中に溜まるようなことはない。
こうしたキャスト材31は、包装材37より取り出し、支持体保護材36を取り除き、水中に浸漬してから軽く絞り、水と反応させる。支持体34を巻き戻しながら患部に巻回して行くと、支持体34には水硬化性樹脂33が確実に保持されているので、支持体に保持されている硬化性樹脂を硬化させ、患部を確実に固定させることができる。
【0044】
更に、本発明は身体用の各種装具類のステー材としても適用することができる。すなわち、足関節装具、膝装具、腰痛帯、上肢の装具その他の種々の装具についての固定材、支持材、保護材として使用することができる。
例えば、上記のような装具において、柔軟な本体の内部に固定、支持、保護のために支持体と、支持体保護材(硬化剤つき)又は硬化剤等を含むステー材を上記本体の一部に設置する。こうした装具は密封容器に保管しておくことができ、使用時に装具を密封容器から取り出し、使用部位に適用し、外方から水又は光等を供給して支持体を硬化させる。
また、支持体と、支持体保護材(硬化剤つき)又は硬化剤を含むステー材の表面をカバー材で覆い、これを密封容器に保管しておく。使用時に密封容器から取り出し、水の供給を行った後に、装具に設けたポケットなどに挿入して適用することもできる。この場合、出し入れ可能に挿入できるようにするとよいことがある。
【0045】
上記硬化性樹脂には、光の照射で硬化する光硬化性樹脂を使用することができる。
こうした光硬化性樹脂は、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤(たとえば光ラジカル重合開始剤等)、光増感剤などのその他の成分を含有している。使用する光硬化性樹脂は、一般的に使用されている光照射により架橋し得る感光性基を有する光硬化性樹脂であれば、特に限定されるものではなく、適宜のものを使用することができる。
【0046】
上記光硬化性樹脂としては、例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物で、モノマー、プレポリマー、2量体、3量体等のオリゴマー、それらの混合物がある。更にそれらの共重合体がある。
また、上記以外に、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ノボラック系樹脂及びこれらの二種以上の変性樹脂に光重合性不飽和基が結合したものが使用できる。
【0047】
上記光重合性不飽和基としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、シンナモイル基、シンナミリデン基、アジド基等が挙げられる。こうした光硬化性樹脂において、単官能及び多官能(メタ)アクリレートが一般的であり、例えば、感光性基として(メタ)アクリロイル基を含む光硬化性樹脂、感光性基としてシンナモイル基を含む光硬化性樹脂、感光性基としてアリル基を含む光硬化性樹脂などが挙げられる。この光硬化性樹脂は、下記光ラジカル重合開始剤と組み合わせて使用することが好ましい。これらの光硬化性樹脂は、単独で、また適宜混合して使用することができる。
【0048】
更に、必要に応じて、従来から公知のアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ゴム、ウレタン樹脂等の光重合性基を含有しない樹脂を配合することができる。
【0049】
上記した光反応開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を使用することができる。この 光ラジカル重合開始剤としては、一般に使用されている光ラジカル重合開始剤であれば特に制限されない。例えば、ベンゾフェノン,ベンゾインメチルエーテル,ベンゾインイソプロピルエーテル,ベンジル,キサントン、チオキサントン,アントラキノンなどの芳香族カルボニル化合物、アセトフェノン,プロピオフェノン,α−ヒドロキシイソブチルフェノン,α,α’−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン,1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルアセトフェノン,ジアセチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類、ベンゾイルパーオキサイド,t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート,t−ブチルハイドロパーオキサイド,ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート,3・3’・4・4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの有機過酸化物、ジフェニルヨードブロマイド,ジフェニルヨードニウムクロライドなどのジフェニルヨードニウムハロゲン化物、四臭化炭素,クロロホルム,ヨードホルムなどの有機ハロゲン化物、3−フェニル−5−イソオキサゾロン,2・4・6−トリス(トリクロロメチル)−1・3・5−トリアジンベンズアントロンなどの複素環式及び多環式化合物、2・2’−アゾ(2・4−ジメチルバレロニトリル),2・2−アゾビスイソブチロニトリル,1・1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル),2・2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物、鉄−アレン錯体、チタノセン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、ビスイミダゾール系化合物、N−アリールグリシジル系化合物、アクリジン系化合物、芳香族ケトン/芳香族アミンの組み合わせ、ペルオキシケタール等が挙げられる。
【0050】
更に、光増感剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミン安息香酸メチル、4-ジメチルアミン安息香酸エチル、4,4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン等がある。
この光硬化性樹脂組成物には、必要に応じて更に種々の成分を配合することができる。例えば、貯蔵中にゲル化を防止し、貯蔵安定性を維持するために安定剤を配合することができる。この安定剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンメチルエーテル、t-ブチルハイドロキノンおよびカテコール等のフェノール類、ベンゾキノン、ナフトキノンおよびフェニルベンゾキノン等のキノン類等がある。
【0051】
上記支持体の光硬化性樹脂は、下記する活性水素を有する硬化剤と部分的に反応する性質を有しており、支持体の表面で反応させることによって部分的に硬化し、支持体の樹脂の移動や、移行を防止することができる。更に部分的な硬化によって表面に保護被膜を形成することができる。
【0052】
上記硬化剤の活性水素を有する物質としては、アミノ基又はイミノ基を有するものが好適である。こうしたものとしては、ポリオルニチン、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサミン等)、ジアミン類(1,6−ヘキサンジアミン、1,10−デカンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等)、トリス(アミノエチル)アミン、ステアリルアミン、オクチルアミン、イミノ基を有する物質では、ポリエチレンイミン、ジブチルアミン、ジエチルアミン等があり、これらを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
上記アミノ基又はイミノ基を有するものは水硬化性樹脂と同様の方法で適用することができる。こうしたものとしては、均一に反応させるためには揮発性が低いものが好ましく、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ペンタエチレンヘキサミン等)、ポリエチレンイミン等がある。
【0053】
光硬化性樹脂を用いたスプリント材を使用するとき、表面が部分的に硬化されているので、遮光性の包装材等から、手に手袋を嵌めることなくスプリント材を取り出すことができる。更に、表面に保護皮膜が形成されているものでは、一層安全に取り出すことができる。そして、このスプリント材の皮膚接触層側を直接患部に当て、被覆材側から直接手で触りながら形を整え、その上から弾力包帯で巻いてモールディングをする。そして、上記被覆材の外側から紫外線、可視光線等の光を照射する。未硬化の光硬化性樹脂は次第に硬化し、全体が硬化すればスプリントが出来上がって、患部を固定することができる。
出来上がったスプリントは、必要に応じ随時に弾力包帯を解いて、患部から取り外すことができる。
【実施例】
【0054】
実施例のスプリント材として下記する緩衝材、支持体、支持体保護材、被覆材を用意し、比較例として下記する緩衝材、支持体、被覆材を用意した。
【0055】
(実施例1)
(1)支持体
(1−1) 基材: ガラス繊維の編物、開口率22%
(1−2) 硬化性樹脂: 水硬化性ウレタン樹脂であって、ポリオール(分子量400のポリエチレングリコール(PEG)5.0%(wt%:以下同じ)、分子量600のPEG11.0%、分子量2000のPEG2.0%、分子量4000のPEG6.0%、分子量330のビスフェノール系ジオール5.0%、分子量600のビスフェノール系ジオール10.0%とポリイソシアネート(MDIが47.5%、変性MDIが11.5%)からなるポリウレタンプレポリマー98%、触媒(ビス−4−(2,6−ジメチルモルホリノ)ジエチルエーテル)1.5%、消泡剤(ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合体:BYK−A525)0.1%、酸化防止剤(テトラキス−{メチレン−3−(3”,5”−ジ−t−ブチル−4”−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン:IRGANOX1010)0.2%、安定剤(p−トルエンスルホン酸)0.1%、揺変性付与剤(ジベンジリデンソルビトール)0.1%からなる。
(1−3) 重ね枚数: 7枚重ね合せ
(2)支持体保護材
(2−1) 担体: ポリエステル(PET)繊維の織布、開口率60%、厚さ0.2mm
(2−2) 硬化剤: ポリビニルアルコール(PVA)
付着量 0.03g/m2
(3)緩衝材
(3−1) 皮膚接触層: PET繊維の不織布、
目付量300g/m2、厚さ3mm
(3−2) 防水層: ポリプロピレンのメルトブローン(PPMB)不織布
目付量10〜20g/m2
(3−3) 緩和層: ポリウレタン(PU)の軟質連続気泡フォーム、厚さ2mm
(4)被覆材
ポリプロピレン(PP)エラストマー製のネット、開口率35%、
目付量360g/m2 、厚さ1.5mm、撥水・撥油処理無し
【0056】
(実施例2〜9)
図5、図6の表に示すとおりである。すなわち、
(実施例2)
支持体保護材の硬化剤にポリエチレンイミンを付着量0.02g/m2 で使用している。また緩衝材の緩和層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例3)
支持体保護材の担体がなく、硬化剤には1,6−ヘキサンジオールを使用し、付着量0.03g/m2 の割合で支持体の水硬化性樹脂の表面部分に付着させている。また、緩衝材の防水層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例4)
支持体保護材の担体がなく、硬化剤にはジエチレントリアミンを使用し、付着量0.03g/m2 の割合で支持体の水硬化性樹脂の表面部分に付着させている。緩衝材の防水層及び緩和層を欠いている。被覆材にPET繊維の不織布で、目付量150g/m2 、厚さ2mm、撥水・撥油処理無しのものを使用している。他は、実施例1と同じである。
(実施例5)
支持体保護材の担体にポリエチレン(PE)エラストマー製のネットで、開口率40%のものを使用し、硬化剤にはポリビニルアルコール(PVA)を、付着量0.06g/m2 の割合で付着させている。被覆材は使用しない。他は、実施例1と同じである。
【0057】
(実施例6)
支持体の硬化性樹脂として水硬化性樹脂に代えて光硬化性樹脂を使用した。この光硬化性樹脂は、アクリルウレタンオリゴマー58.3%(wt%:以下同じ)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート38.8%、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド2.9%からなる。
支持体保護材の硬化剤にはジエチレントリアミンを付着量0.03g/m2の割合で担体に保持させた。また、緩衝材の防水層及び緩和層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例7)
支持体の硬化性樹脂として水硬化性樹脂に代えて実施例6の光硬化性樹脂を使用している。支持体保護材の担体がなく、硬化剤にはジエチレントリアミンを付着量0.03g/m2 の割合で光硬化性樹脂の表面部分に付着させている。緩衝材の緩和層にはPUの軟質連続気泡フォームで厚さ3mmのものを使用し、防水層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例8)
支持体の硬化性樹脂として実施例6の光硬化性樹脂を使用している。支持体保護材の担体がなく、硬化剤にはポリアリルアミンを付着量0.05g/m2 の割合で支持体の光硬化性樹脂の表面部分に付着させている。また緩衝材の防水層及び緩和層を欠いている。他は、実施例1と同じである。
(実施例9)
支持体の硬化性樹脂として実施例6の光硬化性樹脂を使用している。支持体保護材の担体にPPエラストマー製のネットで、開口率40%、厚さ1.7mmのものを使用し、硬化剤にはポリアリルアミンを付着量0.06g/m2 の割合で担体に付着させている。また緩衝材の緩和層には、PUの軟質連続気泡フォームで厚さ3mmのものを使用し、防水層を欠いている。被覆材は省略した。他は、実施例1と同じである。
【0058】
(比較例1)
(1)支持体
(1−1) 基材: ガラス繊維の編物、開口率11%
(1−2) 硬化性樹脂: 実施例1の水硬化性ウレタン樹脂
(1−3) 重ね枚数: 7枚重ね合せ
(2)支持体保護材: ナシ
(3)緩衝材
(3−1) 皮膚接触層: PET繊維の不織布、
目付量200g/m2 、厚さ6mm
(3−2) 防水層: ナシ
(3−3) 緩和層: ナシ
(4)被覆材
PET繊維の不織布、目付量200g/m2 、厚さ6mm、撥水・撥油処理無しのものを使用した。
【0059】
(比較例2〜10)
図7、図8に示すとおりである。すなわち、
(比較例2)
支持体の基材にガラス繊維の編物で開口率18%のものを使用した。緩衝材の皮膚接触層にはPUの軟質連続気泡フォーム、目付量0.66g/m3、厚さ6mmのものを使用した。また、被覆材にPET繊維の不織布、目付量50g/m2 、厚さ0.1mm、撥水・撥油処理をしたものを使用した。他は、比較例1と同じである。
(比較例3)
支持体は、基材にPET繊維の編物で、開口率10%のもの使用し、他は比較例1の支持体と同じにした。緩衝材の皮膚接触層にポリウレタンPUの軟質連続気泡フォームで目付量0.66g/m3で、厚さ6mmのものに、厚さ0.1mmのPETフイルムを重ねたものを使用した。また、被覆材にPETフイルムで厚さ0.1mm、撥水・撥油処理をしていないものを使用した。他は、比較例1と同じである。
(比較例4)
支持体は、実施例1の支持体と同じにした。緩衝材の皮膚接触層にPET繊維の不織布で、目付量300g/m2 、厚さ5mmのものを使用した。被覆材にPET繊維をダブルラッセル編した編物で、開口率34%、目付量310g/m2 、厚さ3mm、撥水・撥油処理をしていないものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
(比較例5)
支持体及び被覆材は、実施例1の支持体及び被覆材と同じにした。緩衝材の皮膚接触層にPET繊維の不織布で、目付量300g/m2 、厚さ10mmのものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
【0060】
(比較例6)
支持体は、実施例1の支持体と同じにした。緩衝材の皮膚接触層は、比較例5と同じにした。被覆材にPET繊維をダブルラッセル編した編物で、開口率34%、目付量310g/m2 、厚さ4mm、撥水・撥油処理をしたものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
(比較例7)
支持体及び被覆材は、実施例1の支持体と同じにした。緩衝材の皮膚接触層は、比較例5と同じにした。緩衝材の緩和層にPUの軟質連続気泡フォームで厚さ2mmのものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
(比較例8)
支持体に実施例1の水硬化性樹脂に代えて実施例6の光硬化性樹脂を使用した。緩衝材の皮膚接触層は、比較例5と同じにした。他は、比較例2と同じにした。
(比較例9)
支持体は、比較例8と同じにした。緩衝材の皮膚接触層は、比較例5と同じにした。被覆材は実施例1と同じにした。他は、比較例1と同じにした。
(比較例10)
支持体及び緩衝材の皮膚接触層は、比較例3と同じにした。被覆材は、厚さ0.1mmのPETフイルムに、PET繊維の不織布で、目付量120g/m2 、厚さ2mmのものを重ね、撥水・撥油処理をしていないものを使用した。他は、比較例1と同じにした。
【0061】
(物性評価)
実施例及び比較例について物性評価試験を行った。
(1)樹脂の移行
スプリント材に、10cm×10cm当り19.6Nの荷重をかけ、50℃で7日間保管し、被覆材への樹脂の移行を目視により確認した。
目視による評価は下記により行った。
(1−1)被覆材のある場合
A: 被覆材への樹脂の移行がない。
B: 被覆材の外側表面への樹脂の移行は無いが、支持体と接している面への樹脂の移行が見られる。
C: 被覆材への樹脂の移行があり、外側表面への樹脂の移行が見られる。
(1−2)被覆材のない場合
A: 支持体保護材外側表面への樹脂の移行がない。
C: 支持体保護材外側表面への樹脂の移行が見られる。
(2)硬化性
(2−1) 硬化開始10分後の硬化性
スプリント材の硬化開始から10分後及び最終の強度を比較した。
10cm×10cmのスプリント材を用意し、水噴霧、水浸漬、光照射の各硬化方法により水又は光を供給して硬化させる。
水噴霧による場合は50g/m2 の水を被覆材側から噴霧して硬化させた。
水浸漬の場合は、スプリント材を水中に漬けて、水中から取出して余分な水を除去(除去後に付着している水の量は約100g/m2 である)して硬化させた。
光照射の場合はメタルハライドランプ(120w)を20cm離れた位置から40秒照射して硬化させた。
上記水又は光を供給した時点から10分後の3点曲げ強度を測定する。測定は、支点間距離50mm、試験速度100mm/minの条件で行い、最大応力を10分後の硬化性として強度で表わした。
(2−2) 最終硬化性
上記と同様にして24時間後の強度を求めた。
(3)通気性
スプリント材を硬化後に、直径45mmの円形に切り取り、測端部は粘土を用いてシールした。この試験片についてガーレー式通気度試験機で空気量350mlの通気度を測定した。
【0062】
(物性評価の結果)
実施例及び比較例の物性評価の結果は、図9〜図12の図表に示した。
実施例では、樹脂の移行性についていずれも「A」の評価が得られており、水硬化性樹脂、光硬化性樹脂の被覆材又は支持体保護材の外側表面への移行が見られなかった。比較例においては、比較例3、4では「A」の評価が得られており、水硬化性樹脂の被覆材への移行が見られなかったが、他の例では水硬化性樹脂、光硬化性樹脂の被覆材への移行が見られた。
硬化性に関して、実施例の水硬化性樹脂のものでは、実施例1−2、4を除き硬化10分後の強度が比較例よりも低いけれども、24時間後の最終強度では比較例に比べて大幅に高い数値となっている。光硬化性樹脂では、実施例でも比較例でも硬化開始10分後には最終強度に近い値が得られているが、実施例の方が比較例に比べて相対的に高い強度が得られている。
また、通気性において実施例では良好な結果が出ているが、比較例では実施例に比べて約1/4〜1/6程度であり、特に比較例3、同10では通気性が見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例を示す一部省略一部切欠斜視図である。
【図2】図1のものの断面図である。
【図3】図1のものの使用状態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す一部切欠斜視図である。
【図5】本発明の実施例の構成を示す図表である。
【図6】本発明の他の実施例の構成を示す図表である。
【図7】本発明の比較例の構成を示す図表である。
【図8】本発明の他の比較例の構成を示す図表である。
【図9】本発明の実施例の物性評価の結果を示す図表である。
【図10】本発明の他の実施例の物性評価の結果を示す図表である。
【図11】本発明の比較例の物性評価の結果を示す図表である。
【図12】本発明の他の比較例の物性評価の結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0064】
1 スプリント材
2 緩衝材
3 水硬化性樹脂
4 基材
5 支持体
6 被覆材
7 支持体保護材
21 皮膚接触層
22 防水層
23 緩和層
71 担体
72 硬化剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に硬化性樹脂を保持させた支持体の該硬化性樹脂の大部分を未硬化状態に維持すると共に、支持体表面の硬化性樹脂を部分的に反応・硬化させた整形外科用固定材。
【請求項2】
上記硬化性樹脂が水硬化性樹脂である請求項1記載の整形外科用固定材。
【請求項3】
基材に水硬化性樹脂を保持させた支持体の該水硬化性樹脂の大部分を未硬化状態に維持すると共に、外方から供給される水を透過することができる担体に水硬化性樹脂の硬化剤を担持させた支持体保護材で覆い、該支持体保護材で上記支持体表面の水硬化性樹脂を部分的に反応・硬化させる請求項2記載の整形外科用固定材。
【請求項4】
上記硬化剤が水硬化性樹脂と反応する活性水素を有する物質を含有する請求項3記載の整形外科用固定材。
【請求項5】
上記硬化剤が、水酸基、アミノ基又はイミノ基を有する物質である請求項4記載の整形外科用固定材。
【請求項6】
上記硬化剤が、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、多糖類、糖類、グリセリン誘導体、ポリリジン、ポリアリルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアルキルアミン、ポリエチレンイミンの1つまたはこれらの組み合わせである請求項4または5記載の整形外科用固定材。
【請求項7】
上記硬化性樹脂が光硬化性樹脂である請求項1記載の整形外科用固定材。
【請求項8】
基材に光硬化性樹脂を保持させた支持体の該光硬化性樹脂の大部分を未硬化状態に維持すると共に、外方から供給される光を透過することができる担体に光硬化性樹脂と化学的に反応する硬化剤を担持させた支持体保護材で覆い、該支持体保護材で上記支持体表面の光硬化性樹脂を部分的に反応・硬化させる請求項7記載の整形外科用固定材。
【請求項9】
上記硬化剤は光硬化性樹脂と反応する活性水素を有する物質を含有する請求項8記載の整形外科用固定材。
【請求項10】
上記硬化剤がアミノ基又はイミノ基を有する物質である請求項9記載の整形外科用固定材。
【請求項11】
上記硬化剤が、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリエチレンイミンの1つまたはこれらの組み合わせである請求項9または10記載の整形外科用固定材。
【請求項12】
上記支持体保護材の担体が、約30〜90%の開口率である請求項3〜6、8〜11のいずれかに記載の整形外科用固定材。
【請求項1】
基材に硬化性樹脂を保持させた支持体の該硬化性樹脂の大部分を未硬化状態に維持すると共に、支持体表面の硬化性樹脂を部分的に反応・硬化させた整形外科用固定材。
【請求項2】
上記硬化性樹脂が水硬化性樹脂である請求項1記載の整形外科用固定材。
【請求項3】
基材に水硬化性樹脂を保持させた支持体の該水硬化性樹脂の大部分を未硬化状態に維持すると共に、外方から供給される水を透過することができる担体に水硬化性樹脂の硬化剤を担持させた支持体保護材で覆い、該支持体保護材で上記支持体表面の水硬化性樹脂を部分的に反応・硬化させる請求項2記載の整形外科用固定材。
【請求項4】
上記硬化剤が水硬化性樹脂と反応する活性水素を有する物質を含有する請求項3記載の整形外科用固定材。
【請求項5】
上記硬化剤が、水酸基、アミノ基又はイミノ基を有する物質である請求項4記載の整形外科用固定材。
【請求項6】
上記硬化剤が、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、多糖類、糖類、グリセリン誘導体、ポリリジン、ポリアリルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアルキルアミン、ポリエチレンイミンの1つまたはこれらの組み合わせである請求項4または5記載の整形外科用固定材。
【請求項7】
上記硬化性樹脂が光硬化性樹脂である請求項1記載の整形外科用固定材。
【請求項8】
基材に光硬化性樹脂を保持させた支持体の該光硬化性樹脂の大部分を未硬化状態に維持すると共に、外方から供給される光を透過することができる担体に光硬化性樹脂と化学的に反応する硬化剤を担持させた支持体保護材で覆い、該支持体保護材で上記支持体表面の光硬化性樹脂を部分的に反応・硬化させる請求項7記載の整形外科用固定材。
【請求項9】
上記硬化剤は光硬化性樹脂と反応する活性水素を有する物質を含有する請求項8記載の整形外科用固定材。
【請求項10】
上記硬化剤がアミノ基又はイミノ基を有する物質である請求項9記載の整形外科用固定材。
【請求項11】
上記硬化剤が、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリエチレンイミンの1つまたはこれらの組み合わせである請求項9または10記載の整形外科用固定材。
【請求項12】
上記支持体保護材の担体が、約30〜90%の開口率である請求項3〜6、8〜11のいずれかに記載の整形外科用固定材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−55281(P2006−55281A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238593(P2004−238593)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】
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