説明

整復装置およびその調整方法

【課題】 操作者が接触していないフリー状態における整復装置の駆動手段の駆動を防止し、誤作動を抑制する整復装置およびその調整方法を提供する。
【解決手段】 整復装置として下腿や足を保持する足裏当て部材110(下腿支持台を含む)と、力を計測する力センサとを有する装置を採用する。足裏当て部材110に力を作用させるモータを設ける。モータを制御するコントロールユニットと、足裏当て部材110の回転角を出力するエンコーダ423とを設ける。力センサが計測する足裏当て部材110にかかる重力の向きと反対側の向きに重力と同じ大きさの力ベクトルを仮想的に生成することで、力センサによる力の計測値をほぼ0にする。エンコーダ423から出力する回転角度データをコントロールユニットに供給し、回転角度と同じ角度だけ生成する力ベクトルの向きを回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、整復装置およびその調整方法に関し、特に、大腿部骨折などの患者の下肢を整復治療する際に用いられる整復装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、人が骨折や脱臼をした場合に、これを治療するために整復治療が行われる。そして、整復治療を行う場合には、医師や整復師などの整復治療を行う者が、自らの力で患者の脚などに伸縮、曲げ、あるいは捻りなど各種の動作を行わせていた。しかしながら、患者の脚などに各種の動作を行なわせるためには、相当大きな力が必要であり、医師や整復師などに重労働を強いることになる。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、整復装置が用いられる。この整復装置においては、力が加えられた方向に力をアシストする、パワーアシスト制御が行われる。すなわち、骨折整復装置におけるパワーアシスト制御は、人間が力を加えた場合に、その力(パワー)を支援(アシスト)する方向にモータを駆動させる。
【0004】
従来技術においては、1つの力センサを備えるのみで2つの力を計測可能にするとともに、外部からの力を検知して力を補助するように駆動系を駆動させるために、フットスイッチを踏んだ瞬間の、力センサの値をアシスト対象力の原点(検知基準)とし、その後の力の変化を、力センサにより測定し、アシスト原点との差を求めて、アシスト対象力を検出する構成が採用されている。
【0005】
そして、足首より足側を固定するための下腿支持台や足裏当て部材などが接触されて設けられている。整復手術においては、この下腿支持台を移動させたり回転させたりすることによって、足の整復が行われる。
【特許文献1】特開2004−348699号公報(図1)
【特許文献2】特開2003−252600号公報
【特許文献3】特許第3188953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、この下腿支持台に対し、操作者も全く手を触れていない状態、いわゆるフリー状態の時であっても、整復装置のパワーアシストが働き、下腿支持台(およびその付属物)が動いてしまうという現象が生じた。
【0007】
したがって、この発明の目的は、操作者も全く手を触れていない状態、いわゆるフリーの状態の時であっても、整復装置の駆動手段が駆動するのを防止して、誤作動を抑制可能な整復装置およびその調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の発明は、
対象物を保持可能に構成されているとともに、所定の軸の周りに回転可能に構成された対象物保持手段と、
対象物保持手段に作用する力を計測可能に構成された力計測手段と、
対象物保持手段に対して力を作用させる駆動手段と、
駆動手段を制御するとともに、力計測手段および駆動手段との間で情報データを通信可能に構成された制御手段と、
対象物保持手段の回転角度を出力する回転角度出力手段とを有し、
制御手段により、力計測手段により計測される対象物保持手段にかかる重力の向きとは反対側の向きに、対象物保持手段にかかる重力の大きさと同じ大きさの力ベクトルを生成することによって、力計測手段による計測値がほぼ0とされ、
回転角度出力手段から出力された回転角度データが制御手段に供給された段階で、回転角度データに基づいて、回転角度と同じ角度だけ、力ベクトルの向きを回転させるように構成されている
ことを特徴とする整復装置である。
【0009】
この発明の第2の発明は、
対象物を保持可能に構成されているとともに、所定の軸の周りに回転可能に構成された対象物保持手段と、対象物保持手段に作用する力を計測可能に構成された力計測手段と、対象物保持手段に対して力を作用させる駆動手段と、駆動手段を制御するとともに、力計測手段および駆動手段との間で情報データを通信可能に構成された制御手段と、対象物保持手段の回転角度を出力する回転角度出力手段とを有する整復装置の調整方法であって、
制御手段により、力計測手段により計測される対象物保持手段にかかる重力の向きとは反対側の向きに、対象物保持手段にかかる重力の大きさと同じ大きさの力ベクトルを生成して力計測手段による計測値をほぼ0とし、回転角度出力手段から出力された回転角度データを制御手段に供給して、制御手段により回転角度データに基づいて、回転角度と同じ角度だけ力ベクトルの向きを回転させるようにした
ことを特徴とする整復装置の調整方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明による整復装置および整復装置の調整方法によれば、操作者が全く手を触れていない状態、いわゆるフリーの状態時において、整復装置の駆動手段が動き出すのを防止することができ、誤作動を抑制可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、以上の発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0012】
まず、この発明の一実施形態による整復装置について説明する。図1に、この一実施形態による整復部を示す。なお、この一実施形態による整復装置は、いわゆる整復ロボットと称される整復部と、この整復部の制御を行うコントロール部とから構成される。
【0013】
(整復部)
図1に示すように、この一実施形態による整復部は、患者Kの下肢K1に整復治療を施すものであり、下肢K1を整復すべき患者Kの少なくとも下半身を支える支持台50を備えている。また、図2に患者Kに対する整復装置の可動方向である6軸を示す。
【0014】
図1に示すように、支持台50には、直線的に形成された揺動アーム52が略水平面内において揺動自在に取り付けられている。揺動アーム52の駆動、すなわち揺動は、医師または整復師による手動操作、または図示省略したアーム駆動手段(なお、駆動源は、図3に示す「モータ120」)によって行われる。このアーム駆動手段により揺動アーム52の揺動動作を自動的に行わせる場合には、位置決めボルト52Aを電磁チャック(図示せず)などに換え、揺動アーム52の位置決めおよびその解除も自動化することが好ましい。
【0015】
揺動アーム52の自由端部には、支持プレート56が固着されている。この支持プレート56には、揺動アーム52を任意の位置で停止、固定するためのストッパ56Bが設けられている。ストッパ56Bについては、アーム駆動手段により揺動アーム52の揺動動作を自動的に行わせる場合には、揺動アーム52の固定およびその解除を自動的に行い得る機材に変える。揺動アーム52の直上に、患者Kの下腿K2を支持する下腿支持台58が配設されている。揺動アーム52は、この下腿支持台58を略水平面内で揺動させるためのものである。
【0016】
また、この一実施形態による整復部5は、下腿支持台58をほぼ水平な軸線60の周りに移動、すなわち回転させるための第1可動テーブル61と、この第1可動テーブル61を回転駆動する第1駆動手段としてのモータ62とを備えている。
【0017】
また、整復部5は、下腿支持台58を略垂直方向に移動させるための第3可動テーブル64と、この第3可動テーブル64を駆動する第3駆動手段65と、下腿支持台58を略水平方向に移動させるための第2可動テーブル67と、この第2可動テーブル67を駆動する第2駆動手段68とを有している。
【0018】
上述した揺動アーム52、第1可動テーブル61、第2可動テーブル67、第3可動テーブル64および下腿支持台58は、段階的に支持台50に取り付けられている。この一実施形態においては、揺動アーム52、第3可動テーブル64、第2可動テーブル67、第1可動テーブル61および下腿支持台58の順序で段階的に取り付けられ、その最終段である第1可動テーブル61に下腿支持台58が取り付けられている。なお、揺動アーム52および各可動テーブル61,67,64の取り付け順序は適宜変更可能である。
【0019】
上述した揺動アーム52は、図1および図2に示す患者Kの下肢K1に左右(矢印X方向)移動動作、すなわち揺動動作を行なわせるため、また、下腿支持台58を患者Kの左足、右足のいずれかに対応させて位置させるために用いられる。
【0020】
また、第1可動テーブル61は、患者Kの下肢K1に捻り(図2中矢印R方向)動作を行わせるために用いられる。また、第2可動テーブル67は、下肢K1に前後(矢印Y方向)への移動動作、すなわち伸縮動作を行わせるために用いられる。また、第3可動テーブル64は、下肢K1に上下(矢印Z方向)移動動作を行なわせるために用いられる。
【0021】
次に、上述したそれぞれの構成要素について説明する。まず、下腿支持台58を略水平な軸線60の周りに移動させる、すなわち患者の下肢K1に捻り(矢印R方向)動作を行なわせるための第1可動テーブル61およびモータ62(第1駆動手段)について説明する。
【0022】
図1に示すように、第1可動テーブル61は円盤状に形成され、モータ62の出力軸(後述)に装着されている。下腿支持台58は、この第1可動テーブル61に対して自在継手72および中継プレート73を順次介して連結されている。下腿支持台58と第1可動テーブル61との間に介装された自在継手72は、略水平な軸線の周りに回転自在に構成されているとともに、略垂直な軸線の周りに回転自在に構成されている。また、中継プレート73の前端部に円形の座が形成され、自在継手72の下端が嵌着されている。中継プレート73の後端は、第1可動テーブル61に嵌着されている。
【0023】
次に、下腿支持台58を略垂直方向に移動させる、すなわち、患者の下肢K1に上下(矢印Z方向)移動動作を行なわせるための第3可動テーブル64および第3駆動手段65の構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、揺動アーム52の自由端部に装着された支持プレート56上には、ガイド部材75が立設されている。このガイド部材75に、第3可動テーブル64が上下(矢印Z方向)において移動自在に取り付けられている。具体的に、ガイド部材75に中間部材76が上下動自在に取り付けられており、この中間部材76に対して昇降部材77が上下動自在に取り付けられている。第3可動テーブル64は、この昇降部材77の上端部に搭載されている。
【0025】
この第3駆動手段65においては、モータ83を作動させることによって中間部材76が上下動する。これにより、第3可動テーブル64が上下動し、下腿支持台58の移動がなされる。なお、第3可動テーブル64および下腿支持台58は、昇降部材77に対して左右(矢印X方向)に沿って揺動可能である。
【0026】
次に、下腿支持台58を略水平方向に移動させる、すなわち患者の下肢K1を前後(矢印Y方向)に移動させる動作、すなわち伸縮動作を行なわせるための第2可動テーブル67および第2駆動手段68について説明する。
【0027】
この第2駆動手段68は、直線駆動装置からなり、インナブロック(図示せず)を備えている。また、第2可動テーブル67は、このインナブロックの上面にボルトにて締結されている。このように構成された第2駆動手段68においては、モータ97が作動することによって、インナブロックに締結されている第3可動テーブル67が移動する。よって、下腿支持台58を略水平方向に沿って移動可能となる。
【0028】
また、自在継手72に設けられた、略水平な軸線の周りに移動自在、すなわち回転自在に構成された継手部材72Aには、継手部材72Aをその回転中心軸線周りに回転させる第4駆動手段としての中空モータ102が内蔵されている。また、継手部材72Aとともに自在継手72を構成する、ほぼ垂直な軸線の周りに移動自在、すなわち回転自在に構成された第2継手部材72Bには、この第2継手部材72Bをその回転中心軸線の周りに回転させる第5駆動手段としての中空モータ104が内蔵されている。
【0029】
このような構成において、中空モータ102を作動させることによって、下腿支持台58を、矢印Q(図2参照)の示す方向に移動させることが可能となる。すなわち、患者の足首K4に対して前後への曲げ動作を行わせることができる。また、他の中空モータ104を作動させると、下腿支持台58が矢印Pで示す方向に移動し、これによって、患者の足首K4に対して左右の振り動作を行なわせることができる。
【0030】
また、図1に示すように、下腿支持台58は、患者Kの足K3と、下腿K2の下部側を載せて保持可能な大きさのテーブル状に構成されている。この下腿支持台58には、患者Kの足裏を当てるために、下腿支持台58の端部に設けられた足裏当て部材110、および患者Kの下腿K2を固定する固定手段としてのバンド111が設けられている。なお、これらの足裏当て部材110、バンド111および下腿支持台58の質量は合計で約3kg程度である。そのため、足K3が載せられていない状態かつ操作者が触れていない状態(以下、フリー状態)であっても、後述する力センサ114には、これらの質量に応じた重力(エンドエフェクタ重)がかかるので、重力キャンセル処理が実行され、フリー状態で6軸の検知量がほぼ0になるように設定されている。
【0031】
また、揺動アーム52は、手動で伸縮可能に構成されている。なお、揺動アーム52の伸縮は、手動方式に限定するものではなく、自動化も可能である。例えば、ボールねじ機構と、このボールねじ機構を作動させるモータなどの駆動機構とからなるアーム伸縮手段とから実現可能である。
【0032】
(コントロール部)
次に、整復部5を制御する、この一実施形態によるコントロール部について説明する。図3に、この発明の一実施形態によるコントロール部を示す。
【0033】
図3に示すように、この一実施形態によるコントロール部は、システム全体をコントロールするコントロールユニット113、下肢K1を種々動かしたときに下肢K1に加わる力を検出可能に構成された単体の力センサ114、この力センサ114によって検出された力を表示する力表示部115と、持ち運び移動可能なオペレーションボックス117とオンオフのスイッチとしてのフットスイッチ121を備えている。
【0034】
また、コントロールユニット113には、ドライバ118を介して、上述したアーム駆動手段が含むモータ120、および第1〜第5駆動手段としての、それぞれのモータ62,97,83,102,104が接続されている。
【0035】
また、このコントロールユニット113は、CPU(中央演算処理装置)とROMおよびRAMなどのメモリとからなる情報処理部、および補助記憶部などを有して構成されている。そして、このように構成されたコントロールユニット113は、リアルタイムOSをベースにしたアプリケーションが格納されて構成されている。
【0036】
また、このコントロールユニット113におけるリアルタイムOSをベースとして、実時間性を確保するために、ユーザタスクやリアルタイムタスクなどの各種タスクが組み合わされて、例えば1kHzの制御ループによって整復部5を制御する種々の処理が行われている。また、このコントロールユニット113には、力センサ114よる力の計測値が、データにより供給される。
【0037】
次に、上述した構成の整復部5の作用について説明する。図1に示すように、患者Kの下肢K1に整復治療を施す場合には、患者Kを仰臥させた状態で、下半身を支持台50上に載置させ、上半身を適宜テーブル(図示せず)などで支える。そして、患者Kの下腿K2および足K3を下腿支持台58に載置させ、バンド111で下腿K2を固定する。
【0038】
次に、整復治療すべき内容に応じてオペレーションボックス117を適宜操作し、揺動アーム52、第1〜第3可動テーブル61、67、64、または自在継手72の継手部材72A、72Bを駆動する。すなわち、図2に示すように、下肢K1を左右(矢印X)方向に動かす場合には、揺動アーム52をX方向に揺動させる。
【0039】
下肢K1に捻り(矢印R方向)を行わせる場合には、第1可動テーブル61を回転させる。下肢K1を上下方向(矢印Z方向)に動かす場合には、第3可動テーブル64を上下に駆動する。また、下肢K1を前後方向(矢印Y方向)に伸縮させる場合には、第2可動テーブル67を前後に駆動する。
【0040】
さらに、足首K4を左右に振る(矢印P方向)場合には自在継手72の下側の第2継手部材72Bを同方向に回転駆動する。また、足首K4を前後に曲げる(矢印Q方向)場合には、自在継手72の上側の継手部材72Aを同方向に回転駆動する。
【0041】
さて、以上の説明においては、遠隔操作可能なオペレーションボックス117を医師などが操作することでそれぞれのモータ120,83,62,104,102,97が作動され、これによって揺動アーム52などが駆動されて患者Kの下肢K1が適宜の方向に移動可能に構成されていた。
【0042】
しかしながら、一方で、医師などが自らの力によって下肢K1を動かし、整復治療を施すのに最適な状況にし、その状況を装置に認識させる必要がある。この場合、医師などが患者Kの下肢K1を動かそうとしても、それぞれのモータを含む駆動系による保持力が妨げとなる。そこで、次のような構成が採用されている。
【0043】
すなわち、上述の力センサ114は、たとえば医師などの操作者によって加えられる力である、6軸の各方向(矢印X,Y,Z,P,QおよびRの各方向)におけるそれぞれのアシスト対象力を検知可能に構成されている。そして、この力センサ114による計測値は、数値データとして、制御部としてのコントロールユニット113に供給される。
【0044】
この力センサ114は、図1に示すように、自在継手72が具備する継手部材に形成された座部と、下腿支持台58の足裏当て部材110の背面に形成された座部110Aとの間に介装されている。
【0045】
一方、図3に示すオペレーションボックス117には、それぞれのモータの作動によって下肢K1を所望の状況になるように動かそうとする場合と、医師自らの力によって下肢K1を整復治療に最適な状況になるように動かそうとする場合とで、当該整復装置の制御を切り替えるためのスイッチが設けられている。コントロールユニット113は、この切り替えに応じて、制御が変えられる。
【0046】
(パワーアシスト動作)
それぞれのモータの作動によって下肢K1を所望の状況になるように動かそうとする場合には、上述したように制御し、医師自らの力によって下肢K1を整復治療に最適な状況になるように動かそうとすべく切り替えられた場合には、次のように制御される。
【0047】
すなわち、医師などが下肢K1を任意の方向に動かそうとすると、力センサ114に、その方向の力が作用し、この力センサ114が、その力の方向を検知する。このとき、コントロールユニット113は、その方向に対応するモータを、医師などにより加えられる力が減ずる方向に駆動し、力センサ114が検知する力がゼロとなった時点でモータを停止する。このようなパワーアシスト制御駆動について、以下に具体的に説明する。
【0048】
この一実施形態によるパワーアシスト駆動方式においては、医師などにより患者の足K3に加えられた力が力センサ114によって検出されると、非線形演算により、出力すべき力または速度が計算され、この出力された力または速度の情報データに対して、PID制御が実行され、フィードバックを行うことによって、任意の位置姿勢に動作させる駆動方式である。
【0049】
そこで、この一実施形態においては、整復装置に設けられた、1つの力センサ114により、パワーアシスト制御の開始時点で検知される検知基準と、力センサ114の計測値との差、すなわちアシスト対象力を抽出するようにする。
【0050】
すなわち、まず、パワーアシスト動作を開始するために、医師などにより図3に示すフットスイッチ121が踏まれる。このとき、コントロールユニット113により、踏んだ瞬間の時点における力センサ114の値が、アシスト対象力の原点、すなわち検知基準として設定されるとともに、このアシスト対象力の原点に対して、この時点以降の変化が測定される。すなわち、最初にフットスイッチ121を踏んだ瞬間に、最初の重力キャンセル処理が実行される。また、この一実施形態においては、矢印R方向に沿って回転された場合においても、常時重力キャンセルが実行させる。
【0051】
これにより、アシスト対象力の検出が可能となるとともに、患足の自重の影響も排除することができる。なお、力センサ114の計測値が0(N)となる、いわゆる力センサ114の真の原点は、コントロールユニット113において記憶されている。そして、整復治療に必要な範囲で、医師などにより人力で足K3に対して力が作用される。この医師などによる人力が加えられた段階で、力センサ114による計測値が大幅に変化する。
【0052】
この時点においては、アシスト対象力として、この医師などによる人力の大きさ、すなわち「足K3に加えた力」が設定される。そして、コントロールユニット113により、このアシスト対象力に応じた駆動力を足K3に作用させるために、ドライバ118に信号が供給され、検知基準とこの「足K3に加えた力」との差が減少する方向に、モータ62,83,97,102,104,120のうちの必要なモータが駆動される。これにより、所定の駆動力が足K3に作用される。
【0053】
また、上述したように、コントロールユニット113には、力センサ114の真の原点も記憶されている。そのため、この真の原点と、力センサ114による計測値と、上述のように設定された「足K3に加えた力」の大きさとから、「足K3にかかっている力」の検出が可能となる。すなわち、力を測定する1つの力センサ114によって、「足K3にかかっている力」と「足K3に加えた力」とを検出することが可能となる。そして、医師などが足K3に力を加えた状態で、駆動手段であるモータ62,83,97,102,104,120のうちのパワーアシスト制御駆動に必要なモータにより、足K3に補助力が作用される。
【0054】
続けて、医師などにより足K3に力が加えられた状態で、「足K3にかかっている力」が増加する場合、力センサ114の計測値が増加していく。なお、このときの力センサ114の計測値の傾きは、整復治療の状況や、医師などによる設定に応じて、変更することが可能であり、力を加える速度を所望の速度にすることによって、必要に応じた速度を得ることができる。そして、力センサ114の計測値の増加に応じて、検知基準と力センサ114における計測値との差、すなわちアシスト対象力が全体として減少していく。そして、このアシスト対象力の減少に伴って、足K3に作用される駆動力も減少される。続けて、アシスト対象力が減少し続けて、足K3に作用される駆動力が減少すると、力センサ114による計測値が検知基準に近づいてくる。これに応じて、足K3に作用する駆動力が0に近づき、停止する方向に向かう。
【0055】
また、「足K3にかかっている力」の増加量と、「足K3に加えた力」が釣り合った場合、すなわち、力センサ114の計測値が、アシスト原点(検知基準)に到達した段階で、アシスト対象力は0(N)となり、これにより、足K3に作用する駆動力が0となり、アシスト動作が停止する。なお、アシスト動作が停止した後であっても、フットスイッチ121を踏み直すことによって、再び上述のアシスト動作を継続することが可能である。
【0056】
また、この一実施形態においては、医師などがフットスイッチ121を離して、駆動力を解放し、アシスト動作を停止する仕様が採用されている。すなわち、医師などの操作者が異常を感じた場合には、即座に駆動を停止可能に構成されている。
【0057】
次に、以上のように動作する、この一実施形態によるパワーアシスト制御の詳細について説明する。図4に、このパワーアシスト制御を実行するための制御系を示し、図5に、この一実施形態によるパワーアシスト制御の、医者などの操作者によるアシスト対象力の入力に対する、アシスト力(補助力)の関係のグラフを示す。また、図6に、特許文献1に記載された従来技術によるパワーアシスト制御を実行するための制御系を示す。なお、以下の説明においては、アシスト力が出力される例について説明するが、出力は速度であってもよく、モータなどへの指示信号としては、通常速度を決定する信号が供給されることが多いので、以下のアシスト力をアシスト用に出力される速度としてもよい。
【0058】
なお、以下の説明において実行される制御は、制御プログラムに基づいて、上述したコントローラ部における情報処理部により実行される。そして、この情報処理部からの制御信号と、整復装置の各部からの信号に基づいて、種々の部位が駆動される。以下の説明においては、この制御の理解を容易にするために、各処理の部位として説明する。
【0059】
まず、図6に示すように、従来技術によるパワーアシスト制御においては、図5中の直線グラフ(図5中、「従来技術」のグラフ)に示すように、対象物に加えられるアシスト対象力、すなわち人間が骨折の整復の際に、整復部5の足裏当て部材110やバンド111に加えた力X、すなわち患者の足(患足)に対して、整復部5において、定数Cを乗じた補助力(C・X)がさらに作用させるように、または、足裏当て部材110やバンド111に加えられたアシスト対象力Xに比例した速度となるように、パワーアシスト制御が行われていた。
【0060】
ところが、このようなパワーアシスト制御においては、どうしても操作者が不快に感じるという問題があった。そこで、人間の感覚、感性に適合するパワーアシスト制御を考察した。この考察によると、力検知手段としての力センサ114により検知される、施術者などの操作者によるアシスト対象力の入力(対象物に加えられる力)が小さい場合には、高加速度で速度を増加させ、フォース入力が大きい場合には、低加速度で速度を増加させる制御が望ましい。
【0061】
すなわち、人間が対象物である患足に加えたアシスト対象力Xにおいて、アシスト対象力Xが小さな力の時には、パワーアシスト制御により駆動される力Y(または速度)の増加率を大きく、大きな力の時には、パワーアシスト制御により駆動される力Y(または速度)の増加率を小さくする。このような条件を満足する所定の関数f(X)は、図5における曲線グラフに示すように、「原点を通り(f(0)=0)、増加関数で、かつアシスト対象力Xで微分した導関数f´(X)が減少関数になるような関数」、より好適には、「原点を通り(f(0)=0)、単調増加関数、かつアシスト対象力Xで微分した導関数f´(X)が減少関数になるような関数」である。
【0062】
そこで、この一実施形態においては、図4に示すように力センサ114からの入力されるアシスト対象力のデータに対し、まず、ローパスフィルタ401(LPF401)を介して、信号ノイズが除去される。その後、この入力データに対して、エンドエフェクタ重方向のベクトル生成処理部404と患足重方向のベクトル生成処理部404とにより重力キャンセルのための補正が行われる。この補正後のアシスト対象力のデータが、非線形化演算処理部402に入力される。これにより、アシスト対象力のデータに対して、非線形化処理が実行される。
【0063】
非線形化演算処理部402において用いられる関数の例としては、対数関数や(1/n)次関数などを挙げることができる。なお、図5における曲線グラフは、
【数1】


のグラフであり、本発明者により整復装置にとって好ましい非線形化関数であると確認されたものである。なお、整復装置以外では、(1/n)次関数や対数関数以外にも、種々の関数を利用することが可能である。例えば、三角関数の一部(単調増加部分かつ、その導関数が単調減少する部分)を利用することも可能である。
【0064】
(PID制御)
また、図6に示すように、特許文献1に記載された従来技術において、力センサ601により計測された測定値に対して、係数Gを掛ける演算処理602が行われ、積分処理604、モータ605、エンコーダ606により、オープンループでパワーアシスト制御を行っていた。この場合、本発明者が鋭意実験を行って得た知見によれば、「ユーザの力指令に対し、出力軸速度がすばやく収束しない」ということがわかり、この点が問題であった。
【0065】
そこで、この一実施形態においては、図4に示すように、上述した整復装置の操作者により加えられる力の抽出処理および非線形化処理を実行する操作制御部に加え、速度域および加速度域における比例・積分・微分制御(PID制御)処理部が設けられる。以下に、この一実施形態による整復装置に採用されるフィードバック制御によるPID制御について説明する。
【0066】
比例制御(P制御)は、偏差の大きさに比例(Proportional)して操作量を調整する制御である。また、積分制御(I制御)は、偏差の積分に比例(Integral)した操作量を調整する制御である。このI制御は、自己平均性をもつ制御対象に比例制御のみを行ったときに目標値や外乱に対して残る定常偏差を除去することができる。また、微分制御(D制御)は、偏差の微分(Derivative)に比例した操作量を調整する動作である。このD制御は、偏差の増減の動向を操作量の決定に反映し、制御特性の改善を図ることができる。
【0067】
そして、この一実施形態においては、エンコーダ423から出力された位置データ、速度データ、回転角度データが、微分処理部415,416において2階微分処理され、加速度域の情報として、PID制御処理部に供給される。そして、非線形化演算処理部402から出力されたアシスト力情報および/または、速度情報、および/または加速度情報に対して、エンコーダ423から出力され、2階微分されて加速度域の情報となった位置情報が減算されて、PID制御処理部に供給される。
【0068】
この情報は、PID制御処理部において、まず、定数倍処理414が施された後、それぞれ上述した比例制御部412、積分制御部411、微分制御部413に供給される。これらの部分で各種制御が実行された後、互いに加算され、出力される。
【0069】
この出力は、積分処理部422に供給されて、1階積分され、速度域の情報や、変位の情報としてモータ421に供給される。モータ421においては、この情報に基づいて駆動が制御され、整復装置の整復部5における各モータの駆動が制御される。なお、このモータ421の駆動情報はエンコーダ423にも供給される。
【0070】
このように、この一実施形態によるPID制御においては、速度域におけるPID制御のみならず、加速度域におけるPID制御を実行する。これによって、目標とする速度、変位に収束するまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【0071】
すなわち、アシスト力に対して、速度域および加速度域におけるPID制御を実行することにより、出力軸速度を、すばやく所定の速度や変位に収束させて、挙動を安定させることが可能となり、所定の速度や変位に収束する場合の振動を抑制することができる。
【0072】
(重力キャンセル方法)
次に、この発明の一実施形態による整復装置の調整方法である、重力キャンセル方法について説明する。図7に、この発明の一実施形態による整復装置における重力キャンセル方法を示し、図9に、従来技術を示す。また、図8に、この一実施形態による重力キャンセル方法のシーケンスのフローチャートを示す。
【0073】
すなわち、特許文献1に記載された従来技術による整復装置においては、前後上下左右の3方向と、前後方向、上下方向および左右方向を中心とした3回転方向との6軸の力を測定することができる力センサ601(図6参照)を備えている。
【0074】
この力センサ601には、足首より足側を固定するための、対象物保持手段としての下腿支持台58や足裏当て部材110など(図1参照)が接触されて設けられている。整復手術においては、この下腿支持台58を移動させたり回転させたりすることによって、足の整復が行われる。
【0075】
ところが、この下腿支持台58を、前後方向の軸の周り(図2中、矢印R方向)で回転させると、下腿支持台58に全く手を触れていない状態、いわゆるフリーの状態であっても、整復装置のモータが駆動して、パワーアシストが働き、下腿支持台58が動いてしまうという現象が生じた。
【0076】
そこで、本発明者は、この原因について鋭意検討を行った。本発明者の観察によると、下腿支持台を回転させると、回転させた向きにパワーアシストが働くことが確認された。これにより、本発明者は、この下腿支持台58が動く理由が、スタート時における重力キャンセル用の仮想の力にあることを想起するに至った。
【0077】
すなわち、骨折整復装置においては、力センサ114により6軸の力(図2参照)が測定される。これらのうちの上下方向に関しては、重力の影響が存在する。この際、6軸のうちの重力方向に沿った方向が問題となる。この点、図9に示すように、下腿支持台58や足裏当て部材110に重力が作用している時に、この重力によって加えられている力を、人間により加えられている「外力(アシスト対象力)」として計測しないようにするために、この重力分を計算して、加えられている力を計算上0とする、いわゆる「重力キャンセル」が実行される。具体的には、重力の向きとは反対側の向きに重力キャンセル用の仮想の力が設定される。
【0078】
そこで、この一実施形態においては、図7に示すように、下腿支持台58を前後方向に沿った軸の周りに回転させた場合においても、整復装置における下腿支持台58の回転角度のデータをフィードバックして、常に重力方向の力をキャンセルする補正を実行するように構成する。
【0079】
具体的に、この一実施形態による重力キャンセル方法においては、整復装置として、対象物としての下腿K3および足K4を保持する対象物保持手段としての足裏当て部材110、バンド111および下腿支持台58と、これらの下腿支持台58に作用する力を計測可能に構成された力計測手段としての力センサ114とが設けられた装置が採用される。そして、下腿支持台58に力を作用させる駆動手段として、6軸方向に駆動可能とするために、図4に示すモータ421(図2中、モータ62,97,83,102,104,120)が設けられる。また、整復装置においては、これらのモータ421を制御するとともに、力センサ114およびモータ421との間で情報データを通信可能に構成されたコントロールユニット113と、足裏当て部材110や下腿支持台58の回転角度を出力する回転角度出力手段としてのエンコーダ423が設けられる。
【0080】
また、コントロールユニット113により、力センサ114によって計測される下腿支持台58および足裏当て部材110にかかる重力の向きとは反対側の向きに、重力の大きさと同じ大きさの力ベクトルを仮想的に生成して、力センサ114による計測値をほぼ0とする。そして、エンコーダ423から出力される回転角度データは、コントロールユニット113に供給される。そして、この回転角度データに基づいて、回転角度と同じ角度だけ、生成される力ベクトルの向きが回転させる。
【0081】
すなわち、図4に示すように、エンコーダ423から出力された回転角度データ(回転角度θ)が、エンドエフェクタ重方向ベクトル生成処理部404に供給される。そして、このエンドエフェクタ重方向ベクトル生成処理部404により、回転角度に応じたエンドエフェクタ重方向ベクトルが生成される。
【0082】
そして、このエンドエフェクタ重方向ベクトルのデータに基づき、患足重方向ベクトル生成処理部403において、患足重方向ベクトルが生成される。そして、この患足重方向のベクトルが生成されると、この段階における重力の向きとは反対の向きに仮想の力ベクトルが設定され生成される。これにより、力センサ114に対して重力キャンセル処理が実行され、計測値がほぼ0とされる。
【0083】
このように構成することにより、下腿支持台58および足裏当て部材110を前後方向の軸の周り(図2中、矢印R方向)に回転させた場合に、常時重力方向に対して反対方向に重力キャンセル用の仮想の力を設定することができ、常時重力キャンセル処理を実行可能となるので、フリーの状態でパワーアシスト制御が働くことを回避することができる。
【0084】
次に、このような重力キャンセルの具体的なシーケンスの一例について説明する。
【0085】
すなわち、図8に示すように、まず、整復装置の電源が投入される(ステップST1)と、ステップST2に移行して、エンドエフェクタ重の読み取りが行われる。なお、コントロールユニット113の所定の記憶部にエンドエフェクタ重の大きさをあらかじめ登録しておくことにより、ステップST2の読み取り処理を省略することも可能である。
【0086】
次に、ステップST3に移行して、整復装置の初期化が実行された後、ステップST4において、実際の治療のために下腿支持台58に患足が載せられ、足裏当て部材110やバンド111などにより、足首が固定される。その後、ステップST5において、患足の重さ(患足重)が測定される。
【0087】
以上の準備段階が終了すると、整復装置におけるパワーアシスト制御を実行するための重力キャンセル処理が行われる。すなわち、ステップST6において、上述した6軸のエンコーダから各数量を読みとった後、ステップST7において、エンドエフェクタ重のベクトルが生成され、ステップST8において患足重のベクトルが生成される。これによって、上述したように、最初の段階における重力キャンセル処理のための必要なベクトル情報がコントロールユニット113に供給される。
【0088】
次に、ステップST9において、実際に医者などの施術者が手を使って下腿支持台58に力を作用させると、ステップST10に移行して、力センサ114により、施術者が外部から加えた力、エンドエフェクタ重および患足重の力の合計のベクトル(フォースベクトル)が計測される。その後、ステップST11に移行して、操作力(アシスト対象力)が算出される。なお、操作力(アシスト対象力)は、
操作力=(フォースベクトル)−(エンドエフェクタ重ベクトル+患足重ベクトル)
として計算される。
【0089】
このように、フォースベクトルから、エンドエフェクタ重ベクトルおよび患足重ベクトルを減算することにより、重力キャンセル処理が実行される。これにより、施術者自身が下腿支持台58などに作用させた力(操作力)が抽出される。その後、この重力キャンセル処理に基づいて、施術者による外部からの力を入力として、上述した図5に示すグラフに基づいて6軸のモータ120,83,62,104,102,97が駆動される。これにより、パワーアシスト制御が実行される。
【0090】
以上のステップST6〜ステップST12が順次繰り返されて、整復装置を用いた施術者による整復治療が実行される。
【0091】
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0092】
例えば、上述の一実施形態において挙げた数値や数式はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値や数式を用いてもよい。
【0093】
また、例えば、揺動アーム52を伸縮可能とすることにより、患者Kが小柄である、大柄である、また、大人である、子供であるなど、どのような体格であろうとも、揺動アーム52を適宜伸縮させることで対応できる。また、例えば、揺動アーム52を伸縮させるアーム伸縮手段を有することにより、揺動アーム52の伸縮を自動的に行うことができ、人力を必要最小限にすることができる。また、例えば、揺動アーム52は、下肢K1に左右移動動作を行わせ、第1可動テーブル61は、下肢K1に捻り動作を行なわせ、第2可動テーブル67は、下肢K1に伸縮動作を行なわせ、第3可動テーブル64は、下肢K1に上下移動動作を行なわせる。このような構成は、医師などに整復治療を自在に行わせるに好適である。
【0094】
また、例えば、揺動アーム52、第1可動テーブル61、第2可動テーブル67、第3可動テーブル64および下腿支持台58は、所定の順序、例えば、この一実施形態おいて記載した順序で段階的に取り付けることができ、この場合には、各部を独立させて別々に組み立てる場合に比べて構成を簡略化することができる。
【0095】
また、例えば、下腿支持台58には、患者Kの下腿K2を固定するための固定手段(バンド111など)を設けたので、下腿支持台58から患者Kの脚に力を有効に伝達できる。また、下肢K1および足首K4に行なわせる各動作は、それぞれ単独で行なわせることができるが、2種類以上の動作を同時に行なわせることもできる。例えば、揺動アーム52と継手部材72A,72Bを同時に駆動することにより、下肢K1に左右移動動作を行わせながら、足首K4に前後の曲げ動作などを行わせることなどが可能になる。
【0096】
また、下腿支持台58には、患者Kの足裏を当てる足裏当て部材110を設けたので、下肢K1に前後の伸縮動作を行なわせるとき、または足首K4に前後の曲げ動作や左右への振り動作を行なわせるときに、患者Kの足裏全体に力を加えることができ、これにより、患者Kに無用な痛みを与えるのを防止することができる。
【0097】
また、上述した一実施形態においては、整復部5の揺動アーム52を揺動させるための駆動手段(アーム駆動手段)を有する場合を示したが、この駆動手段は必ずしも設ける必要はない。設けない場合は、人力によって揺動アーム52を所望の位置に揺動させ、位置決めする。
【0098】
なお、この発明は、必ずしも整復装置に適用するのみならず、土木作業の際に利用される土木機器など、外部からの力を検知することによって作用させる力を補助するように構成された、あらゆる装置に適用することが可能である。
【0099】
また、上述の一実施形態においては、オペレーションボックス117として、図3に示すように、外部にスイッチなどが突出した装置が用いられているが、このオペレーションボックス117として、図3中に示されるような各種スイッチをタッチパネル上に表示して、ボタンと同様の作用を行うことができる構成を採用することも可能である。なお、この場合であっても、非常時において、装置の稼動を停止するための非常停止ボタンなどは、タッチパネル外の突出したボタンから構成することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】この発明の一実施形態による整復装置における整復部を示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態による整復装置における整復部によって患者の下肢に行わせることが可能な動作を説明するための図である。
【図3】この発明の一実施形態による整復装置のコントローラを示す略線図である。
【図4】この発明の一実施形態によるパワーアシスト制御を実行する制御系を示す制御ブロック図である。
【図5】この発明の一実施形態および従来技術によるパワーアシスト制御装置における操作者による力の入力に対する変換操作力を示すグラフである。
【図6】従来技術によるパワーアシスト制御を実行する制御系を示す制御ブロック図である。
【図7】この発明の一実施形態による重力キャンセル方法を説明するための略線図である。
【図8】この発明の一実施形態による整復装置における重力キャンセル処理のシーケンスの一例を示すフローチャートである。
【図9】従来技術による重力キャンセル方法の問題点を説明するための略線図である。
【符号の説明】
【0101】
5 整復部
50 支持台
52 揺動アーム
52A ボルト
56 支持プレート
56B ストッパ
58 下腿支持台
60 軸線
61,64,67 可動テーブル
62,83,97,102,104,120,421,605 モータ
65 第3駆動手段
68 第2駆動手段
72 自在継手
72A,72B 継手部材
73 中継プレート
75 ガイド部材
76 中間部材
77 昇降部材
102,104 中空モータ
110 足裏当て部材
110A 座部
111 バンド
113 コントロールユニット
114 力センサ
115 力表示部
117 オペレーションボックス
118 ドライバ
121 フットスイッチ
401 ローパスフィルタ
402 非線形化演算処理部
403 患足重方向ベクトル生成処理部
404 エンドエフェクタ重方向ベクトル生成処理部
411 積分制御部
412 比例制御部
413 微分制御部
414 定数倍処理
415,416 微分処理部
422 積分処理部
423,606 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持可能に構成されているとともに、所定の軸の周りに回転可能に構成された対象物保持手段と、
上記対象物保持手段に作用する力を計測可能に構成された力計測手段と、
上記対象物保持手段に対して力を作用させる駆動手段と、
上記駆動手段を制御するとともに、上記力計測手段および上記駆動手段との間で情報データを通信可能に構成された制御手段と、
上記対象物保持手段の回転角度を出力する回転角度出力手段とを有し、
上記制御手段により、上記力計測手段により計測される上記対象物保持手段にかかる重力の向きとは反対側の向きに、上記対象物保持手段にかかる重力の大きさと同じ大きさの力ベクトルを生成することによって、上記力計測手段による計測値がほぼ0とされ、
上記回転角度出力手段から出力された回転角度データが上記制御手段に供給された段階で、上記回転角度データに基づいて、上記回転角度と同じ角度だけ、上記力ベクトルの向きが回転されるように構成されている
ことを特徴とする整復装置。
【請求項2】
対象物を保持可能に構成されているとともに、所定の軸の周りに回転可能に構成された対象物保持手段と、上記対象物保持手段に作用する力を計測可能に構成された力計測手段と、上記対象物保持手段に対して力を作用させる駆動手段と、上記駆動手段を制御するとともに、上記力計測手段および上記駆動手段との間で情報データを通信可能に構成された制御手段と、上記対象物保持手段の回転角度を出力する回転角度出力手段とを有する整復装置の調整方法であって、
上記制御手段により、上記力計測手段により計測される上記対象物保持手段にかかる重力の向きとは反対側の向きに、上記対象物保持手段にかかる重力の大きさと同じ大きさの力ベクトルを生成して上記力計測手段による計測値をほぼ0とし、上記回転角度出力手段から出力された回転角度データを上記制御手段に供給して、上記制御手段により上記回転角度データに基づいて、上記回転角度と同じ角度だけ上記力ベクトルの向きを回転させるようにした
ことを特徴とする整復装置の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−113672(P2008−113672A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101886(P2005−101886)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】