説明

文字列表示装置、文字列表示方法およびプログラム

【課題】 画像上の任意の点の傍らに文字列を表示する際に、複雑な処理を要することなく、文字列と対応する点との配置関係を崩さずに文字列を表示することのできる文字列表示装置、文字列表示方法およびそのプログラムを提供する。
【解決手段】 表示画面上に文字列を表示する文字列表示装置、文字列表示方法、そのプログラムである。そして、文字列の左側に書出し位置が設定されている通常文字列データに基づいて、当該書出し位置から右方へ文字列を描画する通常文字列描画手段と、文字列T14の右側に書出し位置(P1)が設定されている逆さ文字列データに基づいて、当該書出し位置(P1)から左方へ文字列を描画する逆さ文字列描画手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示画面上に文字列を表示する文字列表示装置、文字列表示方法およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地図の表示出力の際、地点の名称等を表示するのに文字列の表示出力が併せて行われる。文字列の表示は、指定された文字列に対応するフォントデータを使用して、指定された書出し位置から各文字を順に描画することで行われる。
【0003】
画像上に設定された複数の指標点の各名称等を表わすために、これら複数の指標点の近傍にそれぞれ文字列を表示する場合、指標点とそれに対応する文字列とが適宜な間隔で近接し、且つ、複数の文字列が互いに重なり合わないように、文字列の配置設計がなされて、画像データと文字列データとを含んだ表示用のデータベースが構築される。
【0004】
また、本発明に関連する従来技術として、特許文献1には、地図情報の表示の際、表示方向が東西南北の何れの方向に変化しても、文字列を適宜な向きに修正して表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−288584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像データと文字列データとが含まれる表示用のデータベースに従って画像と文字列とを表示出力する際に、文字列のフォントデータや画像とフォントとのサイズ比率が、文字列の配置設計を行ったときと異なることがある。すると、指標点の左側に表示枠が設定された文字列の場合、画像サイズに比べて文字幅の広いフォントが使用されることで、文字列が表示枠の右側にはみ出して表示されて文字列と指標点とが重なってしまったり、画像サイズに比べて文字幅の狭いフォントが使用されることで、文字列が表示枠の左側に片寄って文字列と指標点とが離れてしまうといった不都合が生じることがある。
【0007】
このような不都合は、例えば、指標点が密集している箇所において、複数の文字列が重なることがないように、文字列が指標点の左方に配置設計されている場合に生じる。
【0008】
そのため、従来、フォントデータや画像とフォントとのサイズ比率を変更して画像上に文字列を表示する場合、文字列と指標点が重なったり文字列が指標点から大きく離れたりしないように、フォントデータに応じて文字列の表示位置を適宜修正する複雑な処理を行った後に文字列を描画する必要があった。
【0009】
この発明の目的は、画像上の任意の点の傍らに文字列を表示する際に、複雑な処理を要することなく、文字列と対応する点との配置関係を崩さずに文字列を表示することのできる文字列表示装置、文字列表示方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
表示画面上に文字列を表示する文字列表示装置であって、
文字列の左側に書出し位置が設定されている通常文字列データに基づいて、当該書出し位置から右方へ文字列を描画する通常文字列描画手段と、
文字列の右側に書出し位置が設定されている逆さ文字列データに基づいて、当該書出し位置から左方へ文字列を描画する逆さ文字列描画手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の文字列表示装置において、
前記通常文字列描画手段は、
文字列の始端文字から終端文字へかけて順に文字を描画し、
前記逆さ文字列描画手段は、
文字列の終端文字から始端文字へかけて順に文字を描画することを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の文字列表示装置において、
文字列が上下逆さまに表示される逆表示態様に切り換える上下切替手段を備え、
前記通常文字列描画手段は、
逆表示態様の場合に、前記通常文字列データに設定されている書出し位置から右方へ、文字列の終端文字から始端文字へかけて各文字を上下逆さまにして順に描画し、
前記逆さ文字列描画手段は、
逆表示態様の場合に、前記逆さ文字列データに設定されている書出し位置から左方へ、文字列の始端文字から終端文字へかけて各文字を上下逆さまにして順に描画する
ことを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の文字列表示装置において、
地図画像を表わす地図画像データ、前記地図画像上の複数の地点をそれぞれ表わす複数の地点データ、前記複数の地点のうち1個又は複数の地点に対応する文字列と書出し位置とが設定された前記通常文字列データ、および、前記複数の地点のうち別の1個又は複数の地点に対応する文字列と書出し位置とが設定された前記逆さ文字列データを記憶した地図データベースと、
前記地図画像データに基づいて地図画像を描画する第1描画手段と、
前記複数の地点データに基づいて前記地図画像上における前記複数の地点に複数の指標マークを描画する第2描画手段とを備え、
前記通常文字列描画手段は、
前記通常文字列データに基づき前記地図画像上における前記設定された書出し位置から前記設定された文字列を右方へ描画し、
前記逆さ文字列描画手段は、
前記逆さ文字列データに基づき前記地図画像上における前記設定された書出し位置から前記設定された文字列を左方へ描画する
ことを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の文字列表示装置において、
文字のフォントデータを記憶したフォントデータベースを備え、
前記通常文字列描画手段および前記逆さ文字列描画手段は、
前記フォントデータベースのフォントデータに基づいて文字の描画を行うことを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の文字列表示装置において、
前記通常文字列データは、
文字列を表わすコードと、当該文字列の表示枠の少なくとも左端位置を表わす位置データと、を含むデータであり、
前記逆さ文字列データは、
文字列を表わすコードと、当該文字列の表示枠の少なくとも右端位置を表わす位置データと、を含むデータである
ことを特徴としている。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の文字列表示装置において、
前記通常文字列描画手段および前記逆さ文字列描画手段による描画は、
表示画面の画素データが一時的に記憶される表示メモリへの画素データの描画であることを特徴としている。
【0017】
請求項8記載の発明は、
表示画面上に文字列を表示する文字列表示方法であって、
文字列の左側に書出し位置が設定されている通常文字列データに基づいて、当該書出し位置から右方へ、順に文字列の始端文字から終端文字へかけて各文字を描画していく通常文字列描画ステップと、
文字列の右側に書出し位置が設定されている逆さ文字列データに基づいて、当該書出し位置から左方へ、順に文字列の終端文字から始端文字へかけて各文字を描画していく逆さ文字列描画ステップと、
前記通常文字列描画ステップおよび前記逆さ文字列描画ステップの描画に基づく画像を前記表示画面上に出力する表示出力ステップと、
を含むことを特徴としている。
【0018】
請求項9記載の発明は、
出力画像の表示データを生成するコンピュータに、
文字列の左側に書出し位置が設定されている通常文字列データに基づいて、当該書出し位置から右方へ、順に文字列の始端文字から終端文字へかけて各文字を描画していく通常文字列描画機能を実現させるプログラムコードと、
文字列の右側に書出し位置が設定されている逆さ文字列データに基づいて、当該書出し位置から左方へ、順に文字列の終端文字から始端文字へかけて各文字を描画していく逆さ文字列描画機能を実現させるプログラムコードと
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従うと、文字列の右側を所定位置に合わせたい文字列については通常文字列データに設定して通常文字列描画により描画を行わせ、文字列の左側を所定位置に合わせたい文字列については逆さ文字列データに設定して逆さ文字列描画により描画を行わせることで、複雑な処理を行うことなく、各文字列を適宜な配置で表示できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の地図表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態の地図表示装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図3】地図データベースの一例を示すデータチャートである。
【図4】そのまま文字列レイヤに登録される文字列と地点記号との配置関係を示す説明図である。
【図5】逆さ文字列レイヤに登録される文字列と地点記号との配置関係を示す説明図である。
【図6】地図データベースの各レイヤのデータを画像として表わしたもので、(a)は各レイヤのデータを通常描画した場合の画像図、(b)は実際に表示装置に出力される画像図である。
【図7】CPUにより実行される地図描画処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図8】図7のステップS8で実行される逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図9】逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理の内容を示す説明図であり、(a)は1個の逆さ文字列データを表わした図、(b)は逆さ文字列データの描画開始から第1段階の図、(c)は逆さ文字列データの描画開始から第2段階の図である。
【図10】図7のステップS7で実行されるそのまま文字列レイヤ通常描画処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図11】図7のステップS10で実行される逆さ文字列レイヤ通常描画処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図12】図7のステップS9で実行されるそのまま文字列レイヤ逆さ描画処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の文字列表示装置の実施形態である地図表示装置の全体構成を示すブロック図、図2は、実施形態の地図表示装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0023】
この実施形態の地図表示装置1は、地図画像と文字列とを重畳させた表示出力を行う装置であり、図1に示すように、プログラムを実行するCPU(中央演算処理装置)10と、CPU10が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM(Read Only Memory)12と、CPU10に作業用のメモリ領域を提供するとともに表示メモリ11Aを有するRAM(Random Access Memory)11と、液晶ディスプレイなど画像表示を行う表示装置13と、外部からユーザの指令を入力する操作部14と、地図の画像データや文字列のデータが登録された地図データベース20と、フォントデータが登録されたフォントデータベース16と、各部の間でデータやコマンドを転送するバス18等を備えている。
【0024】
表示メモリ11Aは、表示装置13に表示される画像の各画素のデータが展開されるものである。表示装置13は、表示メモリ11Aに書き込まれた画素データを読み込んで、この画素データに応じた画像の表示出力を行う。
【0025】
ROM12には、CPU10により実行されることで各種機能を実現する複数の機能モジュールのプログラムが格納されている。機能モジュールには、図2に示すように、操作部14を介して外部から指令を入力し地図の表示範囲を移動させたり地図の向きを上下逆さまにしたりするなど地図表示の統括的な制御を行う統括部5と、地図データベース20から画像データを読み出して描画処理(表示メモリ11Aへの書き出し)を行う画像描画処理部6と、地図データベース20の文字列データから地図画像上の絶対座標で表わされている表示枠の位置データを読み出して表示メモリ11A上の描画位置を検索する文字配置検索部7と、フォントデータベース16のフォントデータを用いて文字列の描画処理を行う文字列描画処理部8等が含まれる。
【0026】
これらの各機能モジュールを実現するプログラムは、ROM12に格納するほか、例えば、データ読取装置を介してCPU10が読み取り可能な、光ディスク等の可搬型記憶媒体、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに格納しておくことが可能である。また、このようなプログラムがキャリアウェーブ(搬送波)を媒体として通信回線を介して地図表示装置1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0027】
図3には、地図データベースの一例を表わしたデータチャートを示す。
【0028】
地図データベース20は、地図画像データとして地図画像の各パーツを表わす複数の地図オブジェクトがそれぞれ登録される地図オブジェクトレイヤ21〜24と、地点データとして地図上に表示する地点記号「●」のデータが登録される観光スポット印レイヤ25と、そのまま文字列データ(通常文字列データ)が登録されるそのまま文字列レイヤ26と、逆さ文字列データが登録される逆さ文字列レイヤ27等から構成される。
【0029】
地図オブジェクトレイヤ21〜24に登録される地図オブジェクトには、地図画像の各パーツとなる地面、道路、鉄道などの各オブジェクトが含まれる。地図オブジェクトのデータ形式はラスタデータやベクタデータなど種々の形式を適用することができる。各地図オブジェクトは、地図上に設定されている絶対座標を用いて各画像の配置が表わされている。
【0030】
観光スポット印レイヤ25に登録される地図記号データは、地図記号の種類と上記絶対座標を用いた配置データとから構成される。
【0031】
そのまま文字列レイヤ26に登録されるそのまま文字列データは、文字列の表示枠の左端位置が書出し位置として設定されている文字列データである。そのまま文字列データには、文字列の始端文字から終端文字までの各文字を表わすコード列と、文字列の表示枠の左端位置を地図上に設定されている絶対座標により表わした位置データとが少なくとも含まれる。この実施形態では、配置設計時における文字列の表示枠の左上隅と右下隅の座標データが含まれ、そのうち左上隅が書出し位置として定義される。
【0032】
逆さ文字列レイヤ27に登録される逆さ文字列データは、文字列の表示枠の右端位置が書出し位置として設定されている文字列データである。逆さ文字列データには、文字列の始端文字から終端文字までの各文字を表わすコード列と、文字列の表示枠の右端位置を地図上に設定されている絶対座標により表わした位置データとが少なくとも含まれる。この実施形態では、配置設計時における文字列の表示枠の左上隅と右下隅の座標データが含まれ、そのうち右下隅が書出し位置として定義される。
【0033】
図4には、そのまま文字列レイヤ26に登録される文字列と地点記号との配置関係を示す説明図を、図5には、逆さ文字列レイヤ27に登録される文字列と地点記号との配置関係を示す説明図を、それぞれ示す。
【0034】
そのまま文字列レイヤ26には、図4(a),(b),(c)に示すように、文字列T1〜T3の右範囲の近傍に地点記号fが来るように配置設計された文字列が登録される。
【0035】
逆さ文字列レイヤ27には、図5(a),(b),(c)に示すように、文字列T4〜T6の左範囲の近傍に地点記号fが来るように配置設計された文字列が登録される。なお、図5において、逆さ文字列データの文字列が上下逆さに記されているが、これは逆さ文字列データであることを示すためのもので、実際に表示画面に出力されるときには通常の向きで表示されることになる。
【0036】
図6には、地図データベースの各レイヤのデータを画像として表わした図を示す。(a)は各レイヤのデータを通常描画した場合の画像図、(b)は実際に表示装置に出力される画像図である。図6において、f1〜f5は地点記号、T11〜T15は地点記号f1〜f5に対応付けられた文字列T11〜T15であり、このうちT11〜T13はそのまま文字列レイヤ26に属する文字列、T14,T15は逆さ文字列レイヤ27に属する文字列である。
【0037】
図6(a)に示すように、地点記号f1〜f5や文字列T11〜T15は、地面、道路、鉄道などのオブジェクト画像上の所定位置に重畳されて表示される。ここで、文字列が密集していなければ、地点記号f1,f2の左方へ文字列が配置されるように文字列データを設定することができる。一方、地点記号f3〜f5の箇所に示すように、文字列が密集していると、全ての文字列を地点記号f3〜f5の左方へ配置したのでは、文字列同士が重なったり、文字列と地点記号f3〜f5とが重なってしまう。なので、このような場合には、文字列T13〜T15に示すように、地点記号f3の下側右方、上側左方、左方へと文字列が配置されるように文字列データを設定することになる。
【0038】
この場合、地点記号f1〜f3の右方に配置されている文字列T11〜T13は、そのまま文字列データとしてそのまま文字列レイヤ26に登録し、地点記号f4,f5の左方に配置される文字列T14,T15は、逆さ文字列データとして逆さ文字列レイヤ27に登録して、地図データベース20を構築する。
【0039】
実際の画像表示処理では、逆さ文字列レイヤ27の文字列T14,T15も通常の向きに描画されるので、図6(b)に示すように正常な表示内容が得られる。
【0040】
次に、上記構成の地図表示装置1の動作について説明する。
【0041】
図7には、CPU10により実行される地図描画処理のフローチャートを示す。
【0042】
この地図描画処理は、ユーザにより操作部14から地図表示の実行指令や、地図の表示範囲の更新指令が入力された場合に開始される。この地図描画処理が開始されると、先ず、CPU10は、地図上に設定されている絶対座標によって地図の表示対象領域を設定する(ステップS1)。次にCPU10は、地図データベース20の地図オブジェクトレイヤ21〜24、観光スポット印レイヤ25から、上記の表示対象領域に含まれる各データを読み出す(ステップS2)。
【0043】
続いて、CPU10は、別の制御処理によって設定されている地図の表示方向が表わされるデータを読み込んで、地図表示の上下方向を確定する(ステップS3)。
【0044】
そして、画像描画処理部6としての機能により、ステップS2で読み出した地図オブジェクトに基づいて対応する画像データを生成して表示メモリ11Aの指定位置に書き出す描画処理を行う(ステップS4:第1描画手段)。さらに、ステップS2で読み出した地点記号のデータに基づき対応する指標マークの画像データを生成して表示メモリ11Aの指定位置に書き出す描画処理を行う(ステップS5:第2描画手段)。
【0045】
上記のステップS4,S5の描画処理により、表示メモリ11Aに地図の地面、道路、鉄道等の画像データと地点記号の画像データとが展開された状態になる。
【0046】
次に、CPU10は、ステップS3で確定した上下方向に基づく分岐処理を行って(ステップS6:上下切換手段)、通常の向きであれば、順次、そのまま文字列レイヤ通常描画処理(ステップS7)と、逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理(ステップS8)を行って、この地図描画処理を終了する。
【0047】
一方、上下反転の向きであれば、順次、そのまま文字列レイヤ逆さ描画処理(ステップS9)と、逆さ文字列レイヤ通常描画処理(ステップS10)を行って、この地図描画処理を終了する。
【0048】
図8には、上記ステップS8で実行される逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理のフローチャートを、図9には、この逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理の内容を表わした説明図を示す。
【0049】
逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理に移行すると、CPU10は、先ず、地図データベース20の逆さ文字列レイヤ27から表示対象領域に含まれる文字列を検索して、その中から1個の逆さ文字列データを抽出する(ステップS11)。そして、この逆さ文字列データに記された文字コードから文字列の始端文字から終端文字までの各文字に対応するフォントデータをフォントデータベース16から抽出する(ステップS12)。
【0050】
続いて、CPU10は、文字配置検索部7の機能として、逆さ文字列データに含まれる表示枠の座標データから右下隅の位置を書出し基準点P1(図9)として認識し、表示メモリ11Aに設定される表示座標上のどの位置に該当するのか座標変換により求める(ステップS13)。
【0051】
書出し基準点P1を求めたら、次に、CPU10は、文字列描画処理部8の機能として、表示メモリ11Aに文字列の描画を行う(ステップS14:逆さ文字列表示手段)。すなわち、先ず、図9(b)に示すように、書出し基準点P1を右下隅の位置として文字列の終端文字(図9の例では「会」)についてフォントデータを使用して描画する。次いで、図9(c)に示すように、書出し位置を上記文字の文字幅だけ左方へずらして次の文字(図9の例では「教」)についてフォントデータを使用して描画する。このような処理を文字列の始端文字まで繰り返して逆さ文字列データに設定されている文字列を描画する。
【0052】
1個の逆さ文字列データについての描画が完了したら、この逆さ文字列データが表示対象領域に含まれる文字列を表わした逆さ文字列データの最後か否かを判別し(ステップS15)、最後でなければ次の文字列の描画を行うべくステップS11に戻る。このようにステップS11〜S15の処理が繰り返されることで、表示対象領域に含まれる全ての逆さ文字列データに対して描画処理が実行されて、これらの文字列が表示メモリ11Aに描画される。
【0053】
そして、ステップS15の判別処理で最後の文字列と判別されたら、この逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理を終了する。
【0054】
この逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理によれば、フォントの文字幅が変化した場合や、地図画像の拡大縮小により地図画像とフォントとのサイズ比率が変更された場合でも、文字列の右側の位置が地図画像上で固定され、文字列の左端が地図画像上で位置を変化させることになる。従って、文字列の右側に地点記号fが設定されている場合に、文字列と地点記号fとが常に良好な配置関係を保つことになる。
【0055】
図10には、図7のステップS7で実行されるそのまま文字列レイヤ通常描画処理のフローチャートを示す。
【0056】
文字列レイヤ通常描画処理は、図8の逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理と類似の処理であり、文字列データの検索元が地図データベース20のそのまま文字列レイヤ26である点(ステップS21)と、書出し基準点を文字列の表示枠の左上隅として求める点(ステップS23)と、文字列の描画を文字列の始端文字から終端文字へかけて書出し基準点から右方へ行う点(ステップS24:通常文字列描画手段)とを異ならせたものである。
【0057】
このそのまま文字列レイヤ通常描画処理によれば、文字列の左側の位置が地図画像上で固定され、フォントの文字幅やフォントと地図画像とのサイズ比率が変更された場合に、文字列の右側が地図画像上で位置を変化させることになる。従って、文字列の左側に地点記号fが設定されている場合に、文字列と地点記号fとが常に良好な配置関係を保つことになる。
【0058】
図11には、図7のステップS10で実行される逆さ文字列レイヤ通常描画処理のフローチャートを、図12には、図7のステップS9で実行されるそのまま文字列レイヤ逆さ描画処理のフローチャートを、それぞれ示す。
【0059】
逆さ文字列レイヤ通常描画処理(図11)とそのまま文字列レイヤ逆さ描画処理(図12)は、地図表示の向きを上下反転する場合に、文字列を上下逆さまにする描画処理である。
【0060】
逆さ文字列レイヤ通常描画処理に移行すると、CPU10は、先ず、ステップS31〜S33において、図8のステップS11〜S13と同一の処理を行う。そして、文字列の描画ステップ(ステップS34)において、書出し基準点から左方へ、文字列の始端文字から終端文字へかけて各文字のフォントを180°回転させて描画処理を行う。そして、ステップS35で最後の文字列まで描画したか判別して、最後の文字列までステップS31〜S35の処理を繰り返す。
【0061】
また、そのまま文字列レイヤ逆さ描画処理に移行すると、CPU10は、先ず、ステップS41〜S43において、図10のステップS21〜S23と同一の処理を行う。そして、文字列の描画ステップ(ステップS44)において、書出し基準点から右方へ、文字列の終端文字から始端文字へかけて各文字のフォントを180°回転させて描画処理を行う。そして、ステップS45で最後の文字列まで描画したか判別して、最後の文字列までステップS41〜S45の処理を繰り返す。
【0062】
このような逆さ文字列レイヤ通常描画処理とそのまま文字列レイヤ逆さ描画処理により、文字列と地点記号fとの範囲関係が良好に保たれたまま、文字列が上下逆さになって表示出力されることになる。
【0063】
以上のように、この実施形態の地図表示装置1によれば、そのまま文字列レイヤ通常描画処理(図10)とそのまま文字列レイヤ逆さ描画処理(図12)によって、文字列の左側に書出し位置が設定されているそのまま文字列データに対して、この書出し位置から右方へ文字列が描画される。また、逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理(図8)と逆さ文字列レイヤ通常描画処理(図11)によって、文字列の右側に書出し位置が設定されている逆さ文字列データに対して、この書出し位置から左方へ文字列が描画される。従って、文字列の左側の配置をずらしたくない文字列についてはそのまま文字列データとし、文字列の右側の配置をずらしたくない文字列については逆さ文字列データとすることで、地図画像上の文字列の適切な配置関係を崩すことなく、各文字列を表示出力することができる。
【0064】
また、上記の逆さ文字列レイヤ逆さ描画処理(図8)では、文字列の終端文字から始端文字へかけて書出し位置から左方へ各文字を描画していくので、文字列の右側の配置をずらすことなく各文字を通常の向きにして逆さ文字列データの文字列を表示することができる。
【0065】
また、表示画面の上下方向が反転と判別された場合には、そのまま文字列レイヤ逆さ描画処理(図12)によって、文字列の終端文字から始端文字へかけて書出し位置から右方へフォントを逆さにして描画が行われ、逆さ文字列レイヤ通常描画処理(図11)によって、文字列の始端文字から終端文字へかけて書出し位置から左方へフォントを逆さにして描画が行われるので、それにより、文字列の配置関係を崩さずに文字列を逆さに表示することができる。
【0066】
また、この実施形態の地図表示装置1は、地図オブジェクトレイヤ21〜24と、観光スポット印レイヤ25と、そのまま文字列レイヤ26と、逆さ文字列レイヤ27とを有する地図データベース20を備え、この地図データベース20のデータに基づいて地図画像や文字列の描画が行われるので、各文字列が適切に配置設計されている地図データベース20を用意しておくことで、簡単な描画処理によって適切な配置を崩すことなく地図画像と文字列との表示を行うことができる。
【0067】
また、この実施形態の地図表示装置1は、フォントデータベース16を備え、フォントデータを使用して文字列の描画を行うようにしているので、フォントデータによっては文字列の幅が地図データベース20の設計時と異なってくる場合が生じるが、上記の描画処理によって、地図上の各地点と各文字列との配置関係を崩すことなく各文字列を表示出力することが可能になっている。
【0068】
また、この実施形態の地図表示装置1では、そのまま文字列データと逆さ文字列データとが、文字列を表わすコード列と、地図上の絶対座標で表わされた文字列の表示枠の位置データとを含んだデータとなっているので、そのまま文字列データに対しては表示枠の左上隅を書出し位置として簡単に求めることができるし、逆さ文字列データに対しては表示枠の右下隅を書出し位置として簡単に求めることができる。
【0069】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、各文字列が地点記号にそれぞれ対応付けられて表示される構成を示したが、例えば、地図上の駅の図柄に文字列を対応づけて表示する場合など、画像上の任意の点に文字列を対応づけて表示する場合にも、同様に本発明を有効に適用することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、そのまま文字列データと逆さ文字列データとが地図表示装置1の内部に保持された形態を示したが、そのまま文字列データや逆さ文字列データは外部から与えられてそれを表示出力する形態としても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、CPU10がそのまま文字列データと逆さ文字列データとを、地図データベース20の何れのレイヤに登録されているかによって識別する形態を示したが、文字列データ自体に逆さ文字列データとそのまま文字列データとを識別可能な識別子を付加しておき、この識別子に基づいてCPU10が逆さ文字列データなのかそのまま文字列データなのかを識別して、それに対応する描画処理を行うようにしても良い。
【0072】
その他、表示出力する画像や文字列の種類、地図データベースの各データ構成など、実施形態で示した細部構成および方法は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 地図表示装置
5 画像描画処理部
7 文字配置検索部
8 文字列描画処理部
10 CPU(コンピュータ)
11 RAM
11A 表示メモリ
12 ROM
16 フォントデータベース
20 地図データベース
21〜24 地図オブジェクトレイヤ
25 観光スポット印レイヤ
26 そのまま文字列レイヤ
27 逆さ文字列レイヤ
f,f1〜f5 地点記号
T1,T11〜T15 文字列
P1 書出し基準点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面上に文字列を表示する文字列表示装置であって、
文字列の左側に書出し位置が設定されている通常文字列データに基づいて、当該書出し位置から右方へ文字列を描画する通常文字列描画手段と、
文字列の右側に書出し位置が設定されている逆さ文字列データに基づいて、当該書出し位置から左方へ文字列を描画する逆さ文字列描画手段と、
を備えていることを特徴とする文字列表示装置。
【請求項2】
前記通常文字列描画手段は、
文字列の始端文字から終端文字へかけて順に文字を描画し、
前記逆さ文字列描画手段は、
文字列の終端文字から始端文字へかけて順に文字を描画することを特徴とする請求項1記載の文字列表示装置。
【請求項3】
文字列が上下逆さまに表示される逆表示態様に切り換える上下切替手段を備え、
前記通常文字列描画手段は、
逆表示態様の場合に、前記通常文字列データに設定されている書出し位置から右方へ、文字列の終端文字から始端文字へかけて各文字を上下逆さまにして順に描画し、
前記逆さ文字列描画手段は、
逆表示態様の場合に、前記逆さ文字列データに設定されている書出し位置から左方へ、文字列の始端文字から終端文字へかけて各文字を上下逆さまにして順に描画する
ことを特徴とする請求項2記載の文字列表示装置。
【請求項4】
地図画像を表わす地図画像データ、前記地図画像上の複数の地点をそれぞれ表わす複数の地点データ、前記複数の地点のうち1個又は複数の地点に対応する文字列と書出し位置とが設定された前記通常文字列データ、および、前記複数の地点のうち別の1個又は複数の地点に対応する文字列と書出し位置とが設定された前記逆さ文字列データを記憶した地図データベースと、
前記地図画像データに基づいて地図画像を描画する第1描画手段と、
前記複数の地点データに基づいて前記地図画像上における前記複数の地点に複数の指標マークを描画する第2描画手段とを備え、
前記通常文字列描画手段は、
前記通常文字列データに基づき前記地図画像上における前記設定された書出し位置から前記設定された文字列を右方へ描画し、
前記逆さ文字列描画手段は、
前記逆さ文字列データに基づき前記地図画像上における前記設定された書出し位置から前記設定された文字列を左方へ描画する
ことを特徴とする請求項2記載の文字列表示装置。
【請求項5】
文字のフォントデータを記憶したフォントデータベースを備え、
前記通常文字列描画手段および前記逆さ文字列描画手段は、
前記フォントデータベースのフォントデータに基づいて文字の描画を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の文字列表示装置。
【請求項6】
前記通常文字列データは、
文字列を表わすコードと、当該文字列の表示枠の少なくとも左端位置を表わす位置データと、を含むデータであり、
前記逆さ文字列データは、
文字列を表わすコードと、当該文字列の表示枠の少なくとも右端位置を表わす位置データと、を含むデータである
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の文字列表示装置。
【請求項7】
前記通常文字列描画手段および前記逆さ文字列描画手段による描画は、
表示画面の画素データが一時的に記憶される表示メモリへの画素データの描画であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の文字列表示装置。
【請求項8】
表示画面上に文字列を表示する文字列表示方法であって、
文字列の左側に書出し位置が設定されている通常文字列データに基づいて、当該書出し位置から右方へ、順に文字列の始端文字から終端文字へかけて各文字を描画していく通常文字列描画ステップと、
文字列の右側に書出し位置が設定されている逆さ文字列データに基づいて、当該書出し位置から左方へ、順に文字列の終端文字から始端文字へかけて各文字を描画していく逆さ文字列描画ステップと、
前記通常文字列描画ステップおよび前記逆さ文字列描画ステップの描画に基づく画像を前記表示画面上に出力する表示出力ステップと、
を含むことを特徴とする文字列表示方法。
【請求項9】
出力画像の表示データを生成するコンピュータに、
文字列の左側に書出し位置が設定されている通常文字列データに基づいて、当該書出し位置から右方へ、順に文字列の始端文字から終端文字へかけて各文字を描画していく通常文字列描画機能を実現させるプログラムコードと、
文字列の右側に書出し位置が設定されている逆さ文字列データに基づいて、当該書出し位置から左方へ、順に文字列の終端文字から始端文字へかけて各文字を描画していく逆さ文字列描画機能を実現させるプログラムコードと
を含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−134192(P2011−134192A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294365(P2009−294365)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】