説明

斜めに配向した偏光フィルタに関連する領域を有する偏光している透明な視覚エレメント

本発明は、複数の領域(2a、2b)に区画された透明で偏光している視覚エレメント(2)を伴う。少なくとも1つの領域(2a)は、光の偏光フィルタを伴う。光学的表面を通る光は、前記光の偏光方向によって前記2つの領域(2a、2b)に対して異なって作用する。前記偏光フィルタは、90°と0°の、フィルタ配向と前記水平方向との間の角度で、前記エレメント(2、5)の作動位置における水平方向(H)に対して斜めに配向される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、斜めに配向した偏光フィルタに関連する領域を有する偏光している透明の視覚エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,250,759号明細書には、ゴルフ、ハンティング、又はフィッシングといった、レジャー活動の実行に好適な眼鏡レンズが開示されている。このようなレンズは、これらの活動の実行中における対象又は映る景色によって光透過の特性が調整されているいくつかの領域に区分されている。特に、レンズの相異なる領域は、前記光の偏光によって光のフィルタリングにおける異なる特性を有しうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両のドライバー、オートバイの運転手、飛行機のパイロットの視界は、特有の性質を有する。特に、この視界は、2つの分離した部位を備えている。この視界の第1の部位は、概して下方の部位であるが、車両又は飛行機のインストルメンタルパネルによって占められている。このインストルメンタルパネルは、例えば液晶ディスプレイパネル型の、1又は2以上のディスプレイにしばしば組み込まれる。このようなディスプレイは、ドライバー又はパイロットの区域(コンパートメント)の設計者によって使用される技術及び作製される人間工学的選択物に偏光特性が依存する、光を生成する。特に、2つのディスプレイ技術群、すなわち、パッシブマトリックスディスプレイ、及び、アクティブマトリックスディスプレイ、を考慮することができる。特に、スクリーン画素の照射状態は、
STN(supertwisted nematic)パッシブマトリックスディスプレイの場合、0°の角度に配向された偏光した光の放射に対応し、
DSTN(double supertwisted nematic)パッシブマトリックスディスプレイの場合、90°の角度に配向された偏光した光の放射に対応し、
TFT(thin-film transistor)アクティブマトリックスディスプレイの場合、45°の角度に配向された偏光した光の放射に対応する。
【0004】
上述した角度は、水平な基準方向に対して与えられる。オブザーバー(観察者)を見るときに、0°の基準方向は、右に配向されており、角度は反時計の向きを正として測定する。
【0005】
視界の第2の部位は、フロントガラスを介して又はオートバイの運転手の場合には直接見える、外部の景色(シーン)によって占められる。この領域における第2の部位は、概して、ドライバー又はパイロットの視界の上部を構成する。それ故、第2の部位は、インストルメンタルパネルによって占められる視界の部位の上位に位置する。この視界における第2の部位に位置する外部エレメントから入る光は、通常非偏光であり、すなわち、自然光である。しかしながら、この光も、後述する透明な表面の反射で偏光しうる。
【0006】
インストルメンタルパネルディスプレイの視界は、ドライバー又はパイロットの区域の設計における大きな課題をなしている。これは、ドライバーの区域又はコックピットに入る光、オートバイの運転手の周りに存在する光、そして、オブザーバー及びインストルメンタルパネルを照らす光によって、ディスプレイのコントラストが減衰するためである。そして、ディスプレイのピクセルにおける発光状態又は消光状態を区別することが困難になるおそれがある。
【0007】
暗い周縁部は、インストルメンタルパネルのディスプレイ上方にしばしば位置され、これによって、これらのディスプレイに照射される周辺光の量を抑制する。しかしながら、このような周縁部は、あまり有効ではなく、そして、見栄えが悪くかさばってしまう。さらに、これらの周縁部は、インストルメンタルパネルから外部の景色にドライバー又はパイロットの目を動かすときに、又は逆に、これらの景色からインストルメンタルパネルに動かすときに、ドライバー又はパイロットの目の順応を妨げるおそれがある。
【0008】
それ故、本発明の目的の1つは、例えばGPS(グローバル・ポジショニング・システム)又は携帯電話ディスプレイといった、インストルメンタルパネルディスプレイ及び搭載された電子機器の視覚認知を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、複数の領域(2a−2c;5a−5c)に区画された偏光した透明の視覚エレメントを提供する。前記領域の少なくとも1つ(2a;5a)は、光偏光フィルタに関連している。前記エレメントを横断する光は、前記光の偏光方向によって、2つの前記領域に対して異なって影響される。前記偏光フィルタによって特徴づけられるエレメントは、90°及び0°とは異なる、前記フィルタの配向と水平方向の間の角度で、前記エレメント(2;5)の使用位置の水平方向に比して斜めに配向されている。
【0010】
好ましくは、偏光フィルタは、135°で配向されている。上述の角度の値及び様々なディスプレイで放射された偏光された光を考慮すると、135°で配向された偏光フィルタは、搭載用ディスプレイに0°及び90°で吸光が生じないことを保証するためである。それ故、ドライバーがこれらを読み取ることが可能となり、そして、45°で偏光した光を付与する搭載用アクティブマトリックスディスプレイの視覚認知の向上を保証するためである。
【0011】
“偏光している透明な視覚エレメント”の表現は、レンズ及びアイバイザー(眼のひさし)を意味することが理解される。“レンズ”の語は、無機又は有機材料の複合体で作製されて、視界を保護及び/又は補正するために眼鏡のフレームに好適な様々な形態の全てのレンズを意味し、これらのレンズは、無限焦点、一焦点、二焦点、三焦点、可変焦点レンズから選択されることが理解される。“アイバイザー”の語は、任意の複合有機材料であり、視覚を許容するプロテクタに好適な様々な形態を意味することが理解される。例示的及び非限定的な例として、(ダイビング用、山岳活動用、スポーツ用、等)マスクのアイバイザー、(車両ドライバーの、スピードスポーツ用の保護の、等)ヘルメットのアイバイザーが挙げられる。
【0012】
“偏光している透明な視覚エレメントの使用位置”の表現は、人の頭部の垂直位置に対して、エレメントの通常の使用によってドライバー又はパイロットの眼の正面において調整されているときの、このエレメントの位置を意味することが理解される。“垂直”の語は、重力鉛直を示す。逆に、“水平”の語は、重力鉛直に比して90°の角度で偏位する方向を示す。
【0013】
後述の点を考慮した、レンズの光学的中心は、機械加工前の、レンズの幾何学的中心にしばしば一致する。より一般的には、光学的中心は、後述の方法の1つで定義されうる。
・2つのエッチングのマークの中心におけるレンズ上に位置する点、
・長視界における着用者に対する所定のプリズムを示す点、
・フレームに搭載する前に、レンズ上にトレースされた十字形で、レンズ上に現れる点、
・レンズにおける2つの構成表面の中心を結ぶラインを示す光軸を通る点。
【0014】
“偏光フィルタの配向”の表現は、このフィルタを透過する光の強度が最小又はゼロである、入射光の電場の配向を意味することが理解される。この発明の内容において、光の直線偏光、又は光の偏光の直線成分のみへの考慮がなされている。
【0015】
本発明によれば、90°及び0°と異なる角度で斜めに配向された偏光フィルタは、インストルメンタルパネルのディスプレイ(又は搭載された電子機器)とドライバー又はパイロットの目との間に、位置している。言い換えれば、透明な視覚エレメントの使用位置における、水平方向に対するフィルタの配向の角度は、厳密に0°と90°の間、又は、厳密に90°と180°の間である。このように配向されたフィルタは、垂直又は水平に配向された少なくともいくらかの光偏光成分を除去する。特に、ディスプレイに反射した周辺光は、従って、ドライバー又はパイロットの目で感知される前にフィルタされる。ディスプレイのピクセルにおける発光状態又は消光状態は、斜めに配向された偏光を伴うものであるが、その後、増大されたコントラストで感知される。0°及び90°の値を有する角度の厳密な除去によって、パッシブマトリックスディスプレイのピクセルの消光がなくなることが保証される。
【0016】
このコントラストの増大は、発光状態におけるディスプレイのピクセルによって放射された光の偏光方向に垂直に、偏光フィルタが配向されているときに最大となる。それ故、TFTディスプレイの場合に、偏光する透明な視覚エレメントの使用位置における偏光フィルタの配向に対して、水平方向から125°及び145°の間の角度で作製されるために、有利である。好ましくは、偏光フィルタの配向は、135°の角度をなし、それ故、45°で偏光された光の透過が保証される。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態において、斜めに配向された偏光フィルタを伴う領域は、前記エレメントの使用位置に対して前記エレメントの下方の部位に位置している。斜めに配向された偏光フィルタを伴うエレメントの領域は、インストルメンタルパネルが位置するドライバー又はパイロットの視界の部位に対応する。従って、ドライバー又はパイロットによって感知されるディスプレイのコントラストの改良が、運転又は飛行位置における頭の通常の位置に対して得られる。それ故、これによって、自然な運転又は飛行位置を維持しつつ、視覚的快適性が向上する。
【0018】
一つの特有の実施の形態において、斜めに配向された偏光フィルタを伴う領域は、偏光する透明な視覚エレメントの下方縁部に隣接してもよい。
【0019】
斜めに配向された偏光フィルタを伴うエレメントの領域が、偏光する透明な視覚エレメントの光学的中心と前記エレメントの使用位置におけるこの中心下方の20ミリメータに位置する地点との間を通る、上部の境界を有しているときに、良好な妥協が得られることも、本発明者は解明している。より詳細には、斜めに配向された偏光フィルタを伴うエレメントの領域の上部の境界は、光学的中心とこの中心下方の10ミリメータに位置する地点との間を通ってもよい。
【0020】
斜めに配向された偏光フィルタを伴うもの以外の、前記エレメントの領域の一つは、非偏光フィルタを伴うものであってもよい。
【0021】
前記エレメントは、使用位置に対して水平に配向された偏光フィルタを伴う領域を含んでいてもよい。水平に偏光した光で構成される反射は、それ故、このような領域において減衰する。このような反射によってドライバー又はパイロットの目がくらむ危険性は、それ故、減少する。このような偏光フィルタは、水面からの、地面の被覆物、特に濡れているときの砂、雪、又は氷からの、煩わしい反射の除去に対して特に有効である。
【0022】
斜めに配向された偏光フィルタを伴う領域は、前記エレメントの使用位置において、水平に配向された偏光フィルタを伴う領域よりも下に位置してもよい。このような光学的表面の構造は、ドライバー又はパイロットの視界の特性に特に適応している。これは、水平に配向されたフィルタによって減衰された反射が、視界の上方部位に位置する外部の景色から生じるためである。
【0023】
前記エレメントは、2つより多くの領域を備えていてもよい。特に、前記エレメントは、前記エレメントの使用位置に対して垂直に配向された偏光フィルタを伴う少なくとも1つの追加的な領域をさらに有していてもよい。それ故、垂直に偏光された光で構成される反射は、このような追加的な領域において減衰する。これらは、特に、例えば、カーウィンドウといった、透明で垂直な表面からの反射である。これらの反射によって眼がくらむドライバーの危険性も、それ故、低減される。
【0024】
好ましくは、垂直に配向された偏光フィルタを伴う追加的な領域は、その使用位置に対して前記エレメントの側部に位置する。これは、特に、これらの反射が、ドライバーの運転する道路を縁取る窓から入る場合、又は、ドライバーの右側及び/又は左側に位置する車両の窓から入る場合、垂直な壁からの反射がドライバーの視界の側部に主に位置しているためである。偏光する透明な視覚エレメントが上記で規定したようなレンズである場合には、前記追加的な領域は、前記レンズの、上記で規定したような光学的中心に対して前記レンズの外側縁部から向かう直線で測定して、前記レンズの外側縁部から、5ミリメータ(mm)及び75ミリメータの間(好ましくは5mm及び30mmの間)の距離の地点に向かう幅に亘って延在する。
【0025】
任意的に、前記エレメントは、その使用位置に対してそれぞれ垂直に配向された偏光フィルタを伴う2つの追加的な領域を備えていてもよい。2つの追加的な領域は、前記エレメントの向かい合う側部に位置している。垂直な壁からの反射による眩さに対してもたらされる保護は、従って、ドライバーの視界の側部、右側と左側の2つに対して対称的である。
【0026】
垂直に配向された偏光フィルタを伴う前記2つの追加的な領域は、光学エレメントの側縁部に隣接するように位置することが好ましい。これらは、前記光学エレメントが上記で規定したレンズを示している場合、前記エレメントの中央部において10ミリメータ及び60ミリメータ(mm)の間の距離で離隔している。好ましくは、それぞれの追加的な領域間の距離は、前記エレメントの中央部における10mm及び40mmの間であり、非常に好ましくは、20mm及び40mmの間である。
【0027】
本発明は、上述したような透明な視覚エレメントを少なくとも1つ組み込んだ視覚装置にも関する。
【0028】
前記視覚装置は、眼鏡を備えていてもよい。前記偏光している透明な視覚エレメントは、前記眼鏡のレンズを形成する。
【0029】
前記視覚装置は、例えばオートバイ用又はパイロット用ヘルメットといった、ヘルメットを備えていてもよい。その場合、ヘルメットのバイザーは、偏光している透明な視覚エレメントで構成される。
【0030】
前記視覚装置は、マスクの機能に応じて、2つの個別のレンズ又は単一のレンズを有する、マスクであってもよい。前記マスクは、コンバーチブル又は海洋船といったボートの運転用に好適な運転者のマスクであってもよい。その場合、マスクのバイザーは、偏光している透明な視覚エレメントで構成される。
【0031】
バイザーの場合において、着用者の瞳間の距離を考慮するためには、偏光している透明な視覚エレメントの領域の位置及び幅に対して計測を得れば十分であることが、当業者に明らかに理解されるであろう。
【0032】
本発明における他の特色及び利点は、添付図面を参照して、下記の3つの例示的で非限定的な実施の形態の説明において明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1を参照すると、眼鏡は、2つのレンズ2に適合された、2つの側部3を有するフレーム1を備えている。“レンズ”の語は、上述で規定したような通常の意味で受け取られる。
【0034】
このようなレンズは、偏光フィルタ用の単なる支持材であってもよい。この場合、何らかの像のゆがみを誘引しないように、レンズの2つの面は平行である。このレンズは、補正の性質(近視、乱視、遠視、老眼の補正)に関わらず、眼科矯正活動を有する、レンズであってもよく、例えば、無限焦点、一焦点、二焦点、三焦点、又は、特に多重焦点レンズであってもよい。レンズは、日差しよけレンズ又は調光レンズ等といった、他の光学的機能に関するものであってもよい。
【0035】
レンズ2は、番号2a及び2bで参照される、2つの領域に区画されている。領域2aは、眼鏡の使用位置に対して各レンズの下方縁部近くにある。領域2bは、領域2aの上方にある。領域2bは、各レンズ2の上側縁部近くにある。
【0036】
各レンズ2に対して、領域2a及び領域2bの間の境界は、図1においてCで表記される、光学的中心と、センタC下方の20ミリメータに位置する地点との間を通過しうる。好ましくは、センタC下方の10ミリメータを通過しうる。レンズ2の領域2a及び領域2bの間におけるこのような境界の位置は、車両のドライバーの視界中にある様々なエレメントの位置決めに特に好適である。
【0037】
各レンズの領域2aは、水平方向Hに約135°で配向された偏光フィルタを伴う。フィルタの配向は、図1における双頭の矢印で示される。各偏光フィルタは、例えば“scracthage”のような、当業者に知られた技術の1つを用いて製造されてもよい。これは、垂直に偏光された光を吸収するためのフィルタであってもよく、又は、可能であれば垂直に偏光された光を反射するためのフィルタであってもよい。
【0038】
この第1実施の形態において、各レンズ2の領域2bは、非偏光フィルタを有している。
【0039】
レンズ2の1つにおける領域2aへの入射光線は、その偏光によってフィルタされる。すなわち、入射光線は、フィルタの配向方向に平行に偏光されている場合、フィルタによって吸収される。一方、フィルタの配向方向に垂直に偏光されている場合、フィルタを透過する。
【0040】
図1bは、図1aに示した眼鏡を着用した自動車のドライバーを示す。明確化のために、ドライバーの外見は、点線で示されている。ドライバーの頭は、フロントガラスに向いており、このフロントガラスを介して道路102を、そして、道路102両側の景色のエレメント、例えば窓103をも、見ることができる。例えばアクティブマトリックス液晶型の(GPSディスプレイといった)、ディスプレイ100は、車両のインストルメンタルパネル中の、ドライバーの正面に位置している。出発地点及び到着地点の間の車両に続く道路といった、運転情報は、いくつかのピクセルが45°に偏光した光を放射するように作動されるディスプレイ100のピクセルによって、ディスプレイ100に表示される。この偏光方向は、図1bにおいて示された水平基準方向Hに対して規定される。この方向Hは、ドライバーの右側に向けられている。
【0041】
ドライバーに着用された眼鏡の各レンズ2の領域2aを伴う偏光フィルタの方向は、図1bに示されている。フィルタの各々は、各レンズ上で局所的に方向Hに対して135°に配向されている。各領域2aを伴う偏光フィルタの配向は、それ故、ディスプレイ100によって放射された光の偏光方向に垂直である。ドライバーは方向Hに対して45°で偏光された光を本質的に感知するため、それぞれの斜めに配向されたフィルタは、方向Hに対して135°で偏光した光を除去する。領域2aを伴うフィルタにおけるこのような配向は、ディスプレイ100で放射された光をより一層透過させるために結果的に好適である。
【0042】
図2は、上述したフレーム1とともに使用されうる眼鏡レンズ2に適用される、本発明の改良物を示す。図2に示される矢印は、上記で導入した、レンズ2を着用した人物の右側に対して同様に向いている、水平基準方向Hを示す。
【0043】
レンズ2は、前述の領域2a、2bを備えている。領域2aはまた、方向Hに対して135°で配向された偏光フィルタを伴うものであり、一方、領域2bは、レンズ2の領域2a上方に位置され、レンズ2の使用位置に対して水平に配向した偏光フィルタを伴い、すなわち、方向Hに平行である。
【0044】
透明な水平面での反射は、本質的に水平に偏光した光からなることがわかっている。このような反射は、例えば、特に道路102が濡れている場合(図1b参照)に、ドライバーの正面にある道路102の表面から来ることもある。このような反射は、ドライバーの視界を妨げる原因となり、そして、眼を眩ませることさえあり、これによって特定の運転状況において危険となる虞がある。図1bは、R1で表記された、このような反射を示す。反射R1は、ドライバーの視界の上側部位に位置し、ドライバーの眼鏡の各レンズ2における領域2bに対応している。各レンズ2の領域2bを伴う水平に配向された偏光フィルタは、ドライバーによる反射R1の感知を除去又は抑制する。それ故、運転快適性は、運転の安全性と同様に、増大する。
【0045】
同様に、垂直な表面からの反射は、垂直な光偏光を有している。図1bは、道路102に隣接する窓103からの反射R2を示している。反射R2は、ドライバーが頭を道路に向けているときに、ドライバーによって視界の側部において感知される。ドライバーによる反射R2の感知は、各レンズ2における垂直に配向された偏光フィルタを伴う少なくとも1つの側部の領域を提供することによって、除去又は減少されうる。図2に示されたレンズ2は、2cで参照される2つの側部の領域を組み込んでおり、各々は垂直に配向された偏光フィルタを伴う。2つの領域2cは、レンズ2の向かい合う側縁部の1つの近くに、すなわち、レンズ2の左縁部及び右縁部の近くに、それぞれ位置している。センタCに向けて配置される2つの領域2cにおけるそれぞれの境界間の距離は、センタCの高さで測定して、10ミリメータ及び60ミリメータの間であってもよい。好ましくは、この距離は、20ミリメータ及び40ミリメータの間である。
【0046】
従って、レンズ2は、4つの個々の主要な領域に区画されていてもよい。すなわち、方向Hに対して135°で配向された偏光フィルタを伴う下方中央領域2a、水平に配向された偏光フィルタを伴う上方中央領域2b、それぞれ垂直に配向された偏光フィルタを伴う2つの向かい合う側部領域2c、である。従って、図2に示されたレンズを備えた眼鏡を用いると、ドライバーは、ディスプレイ100を最適なコントラストで見ることができ、一方、正面に位置する道路からの眩しさと視界の側部に位置する垂直な壁からの反射とのいずれからも依然として保護される。
【0047】
図3は、例えばポリイミドで作製された、バイザー5を設けたオートバイ運転者のヘルメット4を示す。このバイザー5は、可撓性の透明な壁で構成されてもよい。バイザー5は、一方が他方よりも下方に位置するとともにバイザー5の下方縁部及び上方縁部付近にそれぞれ位置する、2つの領域5a、5bを備える。領域5aは、水平方向Hに135°で配向された偏光フィルタを伴う。前述と同様に、方向Hは、ドライバー、すなわち、ヘルメット4を着用したオートバイ運転者、の右側に対して向けられている。バイザーは、領域5a及び領域5bのそれぞれの側部に位置する2つの領域5cをさらに備えている。領域5cは、垂直に配向された偏光フィルタにそれぞれ関するものである。それ故、ヘルメット4のバイザーが運転姿勢で使用されている場合に、ヘルメット4のバイザーによって、道路の表面からの反射、又は、道路の両側部に位置する垂直な壁からの反射を除去することが可能となる。
【0048】
もちろん、図1a、図1b、図2に関して眼鏡レンズ用に説明された改良物は、図3のバイザー3に置き換えてもよい。これらは、本発明の範囲内において任意の偏光する透明な視覚エレメントに同様に置き換えてもよい。
【0049】
様々な変形例が、上述した実施の形態に対して導入されてもよい。
【0050】
それらの変形例のうち、視覚エレメントの領域は、それぞれの領域における境界の形を変更することによって、変更されてもよい。特に、これらの境界は、曲線でも直線でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1a】図1aは、本発明の第1実施の形態によるレンズを設けた眼鏡を示す。
【図1b】図1bは、自動車のドライバーの状況で、図1aによる眼鏡の1つの使用を示す。
【図2】図2は、本発明の第2実施の形態による眼鏡レンズを示す。
【図3】図3は、本発明の第3実施の形態によるアイバイザーを設けたヘルメットを示す。
【符号の説明】
【0052】
1 フレーム
2 レンズ
2a、2b、2c 領域
3 側部
4 ヘルメット
5 バイザー
5a、5b、5c 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の領域(2a−2c;5a−5c)に区画された偏光している透明な視覚エレメント(2;5)であって、
前記複数の領域の少なくとも1つ(2a;5a)は、光を偏光するフィルタを伴い、
前記光は、前記光の偏光方向によって前記2つの領域に対して異なって作用する前記エレメントを通り、
前記エレメントは、前記フィルタが、90°及び0°とは異なる、前記フィルタの配向と水平方向の間の角度で、前記エレメント(2;5)の使用位置の水平方向に対して斜めに配向されている、ことを特徴とする、偏光している透明な視覚エレメント。
【請求項2】
前記エレメント(2;5)の使用位置における偏光フィルタの配向は、前記水平方向に対して125°及び145°の間の角度をなしていることを特徴とする、請求項1に記載のエレメント。
【請求項3】
前記エレメント(2;5)の使用位置における偏光フィルタの配向は、前記水平方向に対して135°の角度をなしていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のエレメント。
【請求項4】
前記斜めに配向された偏光フィルタを伴う領域(2a;5a)は、前記エレメント(2;5)の使用位置に対して光学的表面の下方の部位に位置している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエレメント。
【請求項5】
前記斜めに配向された偏光フィルタを伴う領域(2a;5a)は、前記エレメントの下方の縁部に隣接している、請求項4に記載のエレメント。
【請求項6】
前記斜めに配向された偏光フィルタを伴う前記領域(2a;5a)の上部の境界は、前記エレメントの光学的中心(C)と前記エレメント(2;5)の使用位置における前記中心下方の20ミリメータに位置する地点との間を通る、請求項4又は請求項5に記載のエレメント。
【請求項7】
前記斜めに配向された偏光フィルタを伴う前記領域(2a;5a)の上部の境界は、前記エレメントの光学的中心(C)と前記エレメント(2;5)の使用位置における前記中心下方の10ミリメータに位置する地点との間を通る、請求項6に記載のエレメント。
【請求項8】
前記エレメントの領域(2b;5b)の1つは、前記エレメント(2;5)の使用位置に対して水平に配向された偏光フィルタを伴うものである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のエレメント。
【請求項9】
前記斜めに配向された偏光フィルタを伴う前記領域(2a;5a)は、前記エレメントの使用位置において、前記水平に配向された偏光フィルタを伴う領域(2b;5b)下方に、位置している、請求項8に記載のエレメント。
【請求項10】
前記エレメント(2;5)の使用位置に対して垂直に配向された偏光フィルタを伴う少なくとも1つの追加的な領域(2c;5c)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のエレメント。
【請求項11】
前記追加的な領域(2c;5c)は、前記エレメントの使用位置に対して前記エレメントの側部に位置する、請求項10に記載のエレメント。
【請求項12】
前記追加的な領域(2c;5c)は、前記エレメントの光学的中心に対して前記外側縁部から向かう直線で測定して、前記エレメントの外側縁部から、5mm及び75mmの間の距離の地点に向かう幅に亘って延在する、請求項11に記載のエレメント。
【請求項13】
前記追加的な領域は、5mm及び30mmの間の距離に亘って延在する、請求項12に記載のエレメント。
【請求項14】
前記光学的領域は、前記エレメント(2;5)の使用位置に対してそれぞれ垂直に配向された偏光フィルタを伴う2つの追加的な領域(2c;5c)を備え、
前記2つの追加的な領域は、前記エレメントの向かい合う側部に位置している、請求項10又は請求項11に記載のエレメント。
【請求項15】
前記2つの追加的な領域の各々は、前記エレメントの中央部において10mm及び60mmの間の距離で離隔している、請求項14に記載のエレメント。
【請求項16】
前記2つの追加的な領域の各々は、前記エレメントの中央部において10mm及び40mmの間の距離で離隔している、請求項15に記載のエレメント。
【請求項17】
前記2つの追加的な領域の各々は、前記エレメントの中央部において、20mm及び40mmの間の距離で離隔している、請求項15又は請求項16に記載のエレメント。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の、少なくとも1つの偏光している透明な視覚エレメントを組み込んでいる、視覚装置。
【請求項19】
前記視覚装置は、眼鏡を備え、前記偏光している透明な視覚エレメントは、前記眼鏡のレンズ(2)を構成していることを特徴とする、請求項18に記載の視覚装置。
【請求項20】
前記視覚装置は、ヘルメット(4)を備え、前記偏光している透明な視覚エレメントは、前記ヘルメットのバイザー(5)を構成していることを特徴とする、請求項18に記載の視覚装置。
【請求項21】
前記視覚装置は、マスクを備え、前記偏光している透明な視覚エレメントは、前記マスクのバイザーを構成していることを特徴とする、請求項18に記載の視覚装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−531033(P2007−531033A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505590(P2007−505590)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000750
【国際公開番号】WO2005/101099
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(506062207)エシロール・ランテルナシオナル(カンパニー・ジェネラル・ドプティク) (8)
【Fターム(参考)】