説明

斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法

【課題】大径の加工用工具を用いた斜め食い違い軸式ウォームギヤについて、良好な噛合い接触面を確保することを設計上も製造上も可能とする斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法を提供する。
【解決手段】所望の圧力角を有するウォーム加工用工具により加工されるウォーム歯形の式と、前記ウォーム歯形の式で得られる加工用工具より大径で、前記ウォーム歯形のウォームと好適に噛み合うホイールを加工するための工具取付角を導く共通式(図6の式(3.1))によって得られる歯形形状の大径加工用工具1PH、1QH、1RHによって加工される大径工具切りホイール歯形の式とを得、前記ウォーム歯形の式によってウォームの歯形形状を算出し、前記大径工具切りホイール歯形の式によってホイール2(2I、2II、2III、2IV)の歯形形状を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームとホイールのそれぞれの軸芯線を含む二平面が互いの軸芯線からの垂線を共有して所定の間隔の平行関係にあると共に、それぞれの軸芯線が前記垂線方向から見て、所定の斜交角度関係にあるウォームとホイールと(両者を纏めて、「ウォームギヤ」と称する。)の歯形形状算出方法、つまり、斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法に関する。
【0002】
本発明は、また、前記算出方法から得られた歯形形状データから得られるウォームとホイールとの歯当たり隙間算出方法、こうして得られた歯形形状のデータと、歯当たり隙間のデータとを用いてウォーム及びホイールを製造する製造方法、この製造方法で製造されたウォーム及びホイールを備えたウォームギヤ減速機、及び、このウォームギヤ減速機を用いた電動操舵装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ウォームギヤ減速機は、小型で高減速比が得られ、回転が静かで騒音が小さいことから、産業上の種々の分野で用いられ、自動車の電動操舵装置の補助操舵力を与える電動機と操舵入出力軸との間にも用いられている。
【0004】
ところで、ウォームギヤ減速機に用いられるウォームとホイール(一般には、「ウォームホイール」と称されるが、本願では、単に、「ホイール」という。)は、その加工方法によって、1形から4形の4種類のウォーム形式(JIS B 1723)がある。
【0005】
なお、ウォームギヤには、大別して、円筒ウォームギヤと鼓形ウォームギヤとの2種類があるが、ここでは、円筒ウォームギヤの場合について取り扱う。上記、JIS規格も円筒ウォームギヤに関するものである。
【0006】
図7(a)に示すように、1形ウォーム1Iは、ウォーム軸断面と平行に加工用工具(バイト)WSを取付け加工するもので、軸断面におけるウォーム歯面の形状は直線となっているものである。なお、図中における符号αは軸断面の圧力角を示す。
【0007】
図7(b)に示すように、2形ウォーム1IIは、ウォームの歯溝直角方向に加工用工具(バイト)WTを取付け加工するもので、歯溝直角断面におけるウォーム歯面の形状は直線となっているものである。なお、図中における符号αは加工用工具(バイト)の圧力角を示す。
【0008】
図1(a)に示すように、3形ウォーム1IIIは、円錐面で圧力角αの加工用工具(フライス又は砥石)WPをウォーム1IIIの進み角βだけ傾けて加工するもので、歯溝直角断面のウォーム歯面は直線ではないものである。
【0009】
図4(a)、(b)に示すように、4形ウォーム1IVは、平らな加工面を有する加工用工具(フライス(b)又は砥石(a))WR、WQを直径dである基礎円分偏心させて加工するもので、軸直角断面でウォーム歯面がインボリュート曲線となるものである。なお、図中における符号βgは、基礎円進み角である。
【0010】
ここで、産業上は、1形ウォームと、2形ウォームとは用いられる機会が少なく、3形ウォーム及び4形ウォームが、特に3形ウォームが多用されているのが実情であり、3形ウォームギヤについての実施、研究開発が活発である。
【0011】
ところで、ウォームギヤについては、ウォームとホイールとの噛合い接触面をできるだけ多くとって、滑らかな接触と、単位接触面積当たりの伝達力を小さくすることが従来より求められてきた。
【0012】
この問題を解決するものとして、従来の勘と経験とによって、それぞれ別個に製造されたウォームとホイールとを組み合わせて、歯面隙間の良好な組み合わせを事後的に調整するという方法が用いられていたのを、それぞれの歯面形状(歯形形状)を完全に数式で算出し、ウォームとホイールとの間の歯面隙間を希望のものとすることができる算出方法が非特許文献1で提案されている。
【0013】
この非特許文献1は、ウォームギヤの理想的な噛合いを数式的に達成するという点で優れたものであるが、3形の軸直角食い違い交差式のウォームギヤに関するものであった。
【0014】
一方、近年、ウォームとホイールとの軸芯線を、一定角度傾けて斜交させたいという要請が、特に、周囲環境のスペース制限の大きい自動車関連の電動操舵装置等に於いて高まっているが、上記の非特許文献1の算出方法では、このような場合に対処することができなかった。
【0015】
斜め食い違い軸式ウォームギヤについては、また、算出方法の記載はないものの、特許文献1及び2には、その実施態様とその作用効果とが記載されており、産業的にも、利用価値のあるものであることが解る。
【0016】
また、特許文献3は、特に、電動操舵装置におけるウォームギヤ減速機について、ホイールの進み角をウォームの進み角より小さくすることにより、ホイールの歯のモジュールを大きくしてウォームギヤの高強度化、あるいは、ウォームギヤ減速機の軸間距離を縮めることによる小型化が可能としてる(特許文献3の段落[0015])。
【0017】
図9は、本発明の背景技術となるウォームギヤ減速機の要部を示す図であり、この特許文献3に記載されたものである。この図9には、その要部となる、ウォーム11とこのウォーム11に噛み合うホイール12とが記載されている。ここで、これらのウォーム11とホイール12とを纏めてウォームギヤ15とする。
【0018】
このウォームギヤ15の場合、この図9から解るように、ホイール12の進み角をウォーム11の進み角より小さくするのに、ウォーム11の軸芯線と、ホイール12の軸芯線とを図面に垂直な方向から見て直交でなく、一定の斜交角度Γoをもってで斜交配置させている。つまり、この特許文献3も斜め食い違い軸式ウォームギヤに関するものである。
【0019】
ところで、この特許文献3には、段落[0007]に大略、「強度面を考慮して、大径のホブカッターを用いる必要があり、その場合、ウォームとホイールとの噛合い面積が小さくなるため、面圧負荷が増大する。」旨の記載があり、大径ホブカッター(加工用工具)の問題点が指摘されている。
【0020】
また、特許文献3には、段落[0008]に大略、「従来の直交型ウォームギヤ減速機では、十分なホイール歯面強度を確保することが困難であった。」旨の記載があり、ホイールの歯面強度を確保するためには、斜め食い違い軸式ウォームギヤが有利であることが示唆されている。
【0021】
さらに、特許文献3には、段落[0009]に大略、「大径のホブカッターでホイールの歯面形成をすると、その進み角の問題を解消するために干渉の問題が生じ、この干渉を回避するために斜交型のウォームギヤ減速機が提案されているが、その場合、歯面相互間の接触が点接触になり、噛合い部面圧が高くなり耐久性が低下するという問題があった。」と、大径ホブカッター(加工用工具)を用い、食い違い軸式ウォームギヤとする場合の問題点が指摘されている。
【0022】
ここで、上記の問題を解決するために、特許文献3は、上述したように、「ホイールの進み角をウォームの進み角より小さくした斜め食い違い軸式ウォームギヤ減速機」を提案しているものである。
【0023】
しかしながら、本発明者及び出願人によれば、この特許文献3に記載の技術と異なる技術で、斜め食い違い軸式ウォームギヤについても、良好な噛合い接触面を確保して、滑らかな接触と、単位接触面積当たりの伝達力を小さくし、耐久性を向上させたウォームギヤが可能であると思われた。
【非特許文献1】「3形ウォームギヤの歯面修整法の研究(第1報、ホブ基礎ねじ面の計算法の解析)」(日本機械学会論文集(C編)52巻 481号(昭61-9)。論文 No.85-1312B)
【特許文献1】特開昭61−37581号公報(第2図)
【特許文献2】特開2000−219140号公報(図1)
【特許文献3】特開2007−239849号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、上記問題を改善しようとするもので、大径の加工用工具を用いた斜め食い違い軸式ウォームギヤについて、良好な噛合い接触面を設計上も製造上も確保することを可能とする斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法を提供することを目的としている。
【0025】
本発明は、また、前記算出方法を用いたウォームとホイールとの歯当たり隙間算出方法、こうして得られた歯形形状のデータと、歯当たり隙間のデータとを用いてウォーム及びホイールを製造する製造方法、この製造方法で製造されたウォーム及びホイールを備えたウォームギヤ減速機、及び、このウォームギヤ減速機を用いた電動操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法は、ウォームとホイールとそれぞれの軸芯線を含む二平面が互いの軸芯線からの垂線を共有して所定の間隔の平行関係にあると共に、それぞれの軸芯線が前記垂線方向から見て、所定の斜交角度関係にあるウォームとホイールと歯形形状算出方法であって、
所望の圧力角を有するウォーム加工用工具により加工されるウォーム歯形の式と、
前記ウォーム歯形を有する工具を、前記所定の間隔を保って、前記ホイールの軸芯線に対して前記所定の斜交角度だけ傾けて、該ホイールを加工した場合に得られるウォーム切りホイール歯形の式と、
前記ウォーム加工用工具と同一のウォーム形式であって、該ウォーム加工用工具のピッチ円半径より大きいピッチ円半径を持つ大径加工用工具について、前記ウォーム切りホイール歯形の式との関係を規定する共通式により得られる大径工具の歯形形状の式と、
前記大径工具の歯形を有する大径加工用工具を、前記所定の間隔を保って、前記ホイールの軸芯線に対して所定の工具取付角だけ傾けて該ホイールを加工した場合に得られる大径工具切りホイール歯形の式とを用い、
前記ウォーム歯形の式によってウォームの歯形形状を算出し、前記大径工具切りホイール歯形の式によってホイールの歯形形状を算出する、ことを特徴とする。
【0027】
本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームとホイールとの歯当たり隙間算出方法は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法で得られたウォーム歯形とホイール歯形との間の同時接触線に沿って隙間を計算し、ウォームとホイールとの噛み合い面における隙間分布を求めて歯当たり状態を算出することを特徴とする。
【0028】
本発明の斜め食い違い軸加工式のウォーム及びホイールの製造方法は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法で得られたウォームとホイールとの歯形形状のデータと、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームとホイールとの歯当たり隙間算出方法で得られた歯当たり隙間のデータとを用いてウォーム及びホイールを製造することを特徴とする。
【0029】
本発明のウォームギヤ減速機は、本発明の斜め食い違い軸加工式のウォーム及びホイールの製造方法を用いて製造されたウォーム及びホイールを備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明の電動操舵装置は、本発明のウォームギヤ減速機を用いた電動操舵装置であって、前記電動操舵装置の入出力軸に前記ウォームギヤ減速機のホイールを、前記電動操舵装置の電動機に前記ウォームギヤ減速機のウォームを連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法によれば、ウォームとホイールのそれぞれの軸芯線を含む二平面が互いの軸芯線からの垂線を共有して所定の間隔の平行関係にあると共に、それぞれの軸芯線が前記垂線方向から見て、所定の斜交角度関係にあるウォームとホイールの歯形形状算出方法であって、
所望の圧力角を有するウォーム加工用工具により加工されるウォーム歯形の式と、
前記ウォーム歯形を有する工具を、前記所定の間隔を保って、前記ホイールの軸芯線に対して前記所定の斜交角度だけ傾けて、該ホイールを加工した場合に得られるウォーム切りホイール歯形の式と、
前記ウォーム加工用工具と同一のウォーム形式であって、該ウォーム加工用工具のピッチ円半径より大きいピッチ円半径を持つ大径加工用工具について、前記ウォーム切りホイール歯形の式との関係を規定する共通式により得られる大径工具の歯形形状の式と、
前記大径工具の歯形を有する大径加工用工具を、前記所定の間隔を保って、前記ホイールの軸芯線に対して所定の工具取付角だけ傾けて該ホイールを加工した場合に得られる大径工具切りホイール歯形の式とを用い、
前記ウォーム歯形の式によってウォームの歯形形状を算出し、前記大径工具切りホイール歯形の式によってホイールの歯形形状を算出するので、大径の加工用工具を用いた斜め食い違い軸式ウォームギヤについて、良好な噛合い接触面を設計上も製造上も確保することを可能とする。
【0032】
本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームとホイールとの歯当たり隙間算出方法によれば、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法で得られたウォーム歯形とホイール歯形との間の同時接触線に沿って隙間を計算し、ウォームとホイールとの噛み合い面における隙間分布を求めて歯当たり状態を算出するので、歯当たり隙間の算出を正確に予め算出でき、その際、上記本発明の歯形形状算出方法の効果を発揮する。
【0033】
本発明の斜め食い違い軸加工式のウォーム及びホイールの製造方法によれば、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法で得られたウォームとホイールとの歯形形状のデータと、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームとホイールとの歯当たり隙間算出方法で得られた歯当たり隙間のデータとを用いてウォーム及びホイールを製造するので、本発明の歯形形状算出方法、歯当たり隙間算出方法の効果を、製造方法として発揮する。
【0034】
本発明のウォームギヤ減速機によれば、本発明の斜め食い違い軸加工式のウォーム及びホイールの製造方法を用いて製造されたウォーム及びホイールを備えたので、本発明の製造方法の効果を、ウォームギヤ減速機として発揮する。
【0035】
本発明の電動操舵装置によれば、本発明のウォームギヤ減速機を用いた電動操舵装置であって、前記電動操舵装置の入出力軸に前記ウォームギヤ減速機のホイールを、前記電動操舵装置の電動機に前記ウォームギヤ減速機のウォームを連結したので、本発明のウォームギヤ減速機の効果を、電動操舵装置として発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明の基本思想と実施の形態とについて、図面を用いて説明する。
<斜め食い違い軸式ウォームギヤに関する本発明の基本思想>
1.斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法という基本思想
この発明思想は、ウォームとホイールとそれぞれの軸芯線を含む二平面が互いの軸芯線からの垂線を共有して所定の間隔の平行関係にあると共に、それぞれの軸芯線が前記垂線方向から見て、所定の斜交角度関係にあるウォームとホイールと歯形形状算出方法であって、
所望の圧力角を有するウォーム加工用工具により加工されるウォーム歯形の式と、
前記ウォーム歯形を有する工具を、前記所定の間隔を保って、前記ホイールの軸芯線に対して前記所定の斜交角度だけ傾けて、該ホイールを加工した場合に得られるウォーム切りホイール歯形の式と、
前記ウォーム加工用工具と同一のウォーム形式であって、該ウォーム加工用工具のピッチ円半径より大きいピッチ円半径を持つ大径加工用工具について、前記ウォーム切りホイール歯形の式との関係を規定する共通式により得られる大径工具の歯形形状の式と、
前記大径工具の歯形を有する大径加工用工具を、前記所定の間隔を保って、前記ホイールの軸芯線に対して所定の工具取付角だけ傾けて該ホイールを加工した場合に得られる大径工具切りホイール歯形の式とを用い、
前記ウォーム歯形の式によってウォームの歯形形状を算出し、前記大径工具切りホイール歯形の式によってホイールの歯形形状を算出する、ことを特徴とする。
【0037】
この算出方法は、非特許文献1に記載された算出方法を更に改良進化活用させて、ウォームとホイールとの軸芯線が斜交する場合にも適用できるようにしたもので、まず、算出式の中に、両軸芯線の所定の斜交角度(Γ)を導入したことを特徴とする。
【0038】
ついで、この算出方法は、ホイールの加工に、ウォームつまりウォーム加工用工具より大きいピッチ円半径を持つ大径加工用工具を用いるようにしたことを特徴とする。このようにすると、特に、自動車の電動操舵装置用のウォームギヤ減速機のように、ウォームギヤが小型の場合でも、ホイールの歯切りを、加工用工具の寿命を長くさせながら、より安定、確実にすることができて、実用性が増す。
【0039】
ついで、この算出方法は、大径加工用工具を用いながら、前記所定の斜交角度でウォームと交差するホイールを形成すべく、この大径加工用工具をホイールの軸芯線に対して傾けるべき所定の工具取付角を算出する前記共通式を用いるようにしたことを特徴とする。
【0040】
こうして、この本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法は、大径加工用工具を用いながら、ウォームギヤの歯形形状を正確に算出でき、これにより後述するように適切な歯当たり隙間を算出し、もって、歯面隙間分布を事前に設計解析することができ、良好な噛合い接触面を確保するウォームギヤを製造することができる。
【0041】
加えて、この算出方法によれば、歯形形状や歯面隙間など、良好な歯当たり設計を自由にコントロールでき、耐久性に優れたウォームギヤを得ることができる。
【0042】
つまり、本発明の上記算出方法によれば、斜め食い違い軸式ウォームギヤに関して、ウォームとホイールとの噛合い接触面をできるだけ多くとって、滑らかな接触と、単位接触面積当たりの伝達力を小さくし、耐久性を向上させることができる。
【0043】
2.本発明の歯形形状算出方法を3形ウォームギヤに適用した算出方法
この算出方法は、ウォーム歯形の式が3形ウォーム歯形の式(図2(c)の式(1.7))であって、
ウォーム切りホイール歯形の式が前記3形ウォームの式に対応した3形ウォーム切りホイール歯形の式(図3(e)の式(1.16))であって、
大径工具の歯形形状の式が、前記3形ウォーム切りホイール歯形の式との関係を規定する共通式(図6(d)の式(3.1))から得られる3形大径工具の歯形形状の式(図2(c)の式(1.7))であって、
大径工具切りホイール歯形の式が、前記3形大径工具の歯形形状の式による大径工具の歯形を有する大径加工用工具を用いた場合の3形大径工具切りホイール歯形の式(図3(e)の式(1.16))であることを特徴とする。
【0044】
この算出方法は、本発明の歯形形状算出方法を、具体的にJIS規格の3形ウォームに適用したもので、その詳細な算出過程は後述するが、これにより、3形ウォームについては、実用的に本発明の歯形形状算出方法を適用することができ、上記歯形形状算出方法の作用効果を3形ウォームについて具体的に発揮することができる。
【0045】
3.本発明の歯形形状算出方法を4形ウォームギヤに適用した算出方法
この算出方法は、ウォーム歯形の式が4形ウォーム歯形の式(図5(a)の式(2.5))であって、
ウォーム切りホイール歯形の式が前記4形ウォームの式に対応した4形ウォーム切りホイール歯形の式(図5(j)の式(2.13))であって、
大径工具の歯形形状の式が、前記4形ウォーム切りホイール歯形の式との関係を規定する共通式(図6(d)の式(3.1))から得られる4形大径工具の歯形形状の式(図5(a)の式(2.5))であって、
大径工具切りホイール歯形の式が、前記4形大径工具の歯形形状の式による大径工具の歯形を有する大径加工用工具を用いた場合の4形大径工具切りホイール歯形の式(図5(j)の式(2.13))であることを特徴とする。
【0046】
この算出方法は、本発明の歯形形状算出方法を、具体的にJIS規格の4形ウォームに適用したもので、その詳細な算出過程は後述するが、これにより、4形ウォームについては、実用的に本発明の歯形形状算出方法を適用することができ、上記本発明の歯形形状算出方法の作用効果を4形ウォームについて具体的に発揮することができる。
【0047】
4.本発明の歯形形状算出方法で得られたデータを用いたウォームギヤ歯当たり隙間算出方法
この算出方法は、上記本発明の歯形形状算出方法で得られたウォーム歯形とホイール歯形との間の同時接触線に沿って隙間を計算し、ウォームとホイールとの噛み合い面における隙間分布を求めて歯当たり状態を算出することを特徴とする。
【0048】
つまり、歯形形状のデータが得られる以上、関連する諸データ(上記所定の間隔等)を適宜選択して、求めるウォームギヤの歯当たり隙間を算出でき、それを以下のように製造方法に適用すれば、求める歯当たり隙間のウォーム及びホイールを製造することができ、実際のウォームギヤとして、本発明の歯形形状算出方法の作用効果を発揮することができる。
【0049】
5.得られた歯形形状データ、歯当たり隙間のデータを用いてウォームギヤを製造する製造方法
この製造方法は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法で得られたウォームとホイールとの歯形形状のデータと、歯当たり隙間算出方法で得られた歯当たり隙間のデータとを用いてウォーム及びホイールを製造することを特徴とする。
【0050】
この製造方法によれば、適切な歯当たり隙間を確保する斜め食い違い軸式ウォームギヤを事前に設計解析して製造することができ、本発明の歯形形状算出方法の作用効果を製造方法として発揮することができる。
【0051】
加えて、大径加工用工具を用いるため、小径加工用工具に比べ、加工速度を早くすることができると共に、工具の寿命も長くすることができ、実用性に優れる。
【0052】
6.本発明の製造方法で得られたウォームギヤを備えたウォームギヤ減速機
このウォームギヤ減速機は、上記タイトルに示すような構成であるので、前記本発明のウォームギヤの作用効果、つまり、本発明の歯形形状算出方法の作用効果をウォームギヤ減速機として発揮することができる。
【0053】
7.本発明のウォームギヤ減速機を用いた電動操舵装置
この電動操舵装置は、本発明のウォームギヤ減速機のホイールを、その入出力軸に、ウォームをその電動機に連結したもので、これにより、本発明の歯形形状算出方法の作用効果を電動操舵装置として発揮することができる。
【0054】
更に、特許文献2と同様に、ウォームギヤの斜交を利用して、電動機の配置を操舵ラック軸と平行とすることなど、電動操舵装置のレイアウトの自由度を向上させることができる。
<実施形態1>
図1は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォーム歯形形状算出方法の一例を示すもので、(a)は、その算出方法の対象とする3形ウォームの加工法の説明図、(b)は(a)の工具形状を示す図、(c)はその算出方法で用いる式(1.1)を示す図、(d)は(a)のウォームと工具との座標系を示す図、(e)〜(g)はその算出方法で用いる式(1.2)〜式(1.4)を示す図である。
【0055】
図2(a)〜(h)((f)を除く。)は、図1の算出方法で用いる式(1.5)〜式(1.11)を示す図、(f)は、この算出方法で得られた3形ウォームの軸芯線を角度Γ傾けた場合のウォームとホイールの噛合いを示す図である。
【0056】
図3(a)〜(e)は、図1の算出方法で用いる式(1.12)〜式(1.16)を示す図である。なお、これより既に説明した部分については、同じ符号を用いて重複説明を省略する。
【0057】
これより、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法を3形ウォームに適用する実施形態について説明する。なお、以下の説明では、特許請求の範囲での用語に対応して符合の説明で説明しているような用語と符合とを用いている。
1. 3形ウォームギヤの基礎式
1.1 3形ウォームのねじ面の基礎式
JIS B 1723にあるように、3形ウォーム1IIIは、円錐面のフライスまたは砥石(ウォーム加工用工具WP)の回転軸をウォーム軸に対して、進み角β傾けて加工したねじ面である。[図1(a)]
工具(フライスカッターまたは砥石)WPに対して、工具軸をZ軸として座標系O-XYZ上に取り[図1(b)]、
ρa:歯先半径
ρ:ピッチ円半径
α:圧力角
W:ρでの刃幅
ρ:任意の工具表面(A点)の半径
Θ:任意の工具表面(A点)のXY面における偏角
とする。切削面はZ軸に対し、負側を[1]面、正側を[2]面とする。
【0058】
任意の工具表面の座標(A点)は、
図1(c) の(1.1)式
となる。復号は、負が[1]面、正が[2]面である。
【0059】
ウォーム1IIIに対して、軸をz軸として座標系o-xyz上に取り[図1(d)]、
rc:ピッチ円半径
β:ピッチ円の進み角
L:リード L=2πrctanβ
λ:回転角
zc:ピッチ円での溝幅
a:ウォームと工具の軸間距離 a=rc
とする。
【0060】
ウォーム座標系o-xyzを固定し、工具をウォーム軸に対し回転角λで右ねじ回転させて研削する場合を考える。任意の工具表面の座標(A点)は、ウォーム座標系o-xyzから見て、角度λ右ねじ回転し、z軸上をλrtanβ並進した位置になり、
図1(e)の(1.2)式
となる。
【0061】
ウォーム1IIIのねじ面(ウォームと工具の接触面)は、運動する工具表面(座標群)の包絡面で形成され、この包絡面の条件式は、次のヤコビアン、
図1(f)の(1.3)式
を計算し、
図1(g)の(1.4)式
として与えられる。
【0062】
(1.4)式が成り立つ時、(1.2)式で表される座標(x,y,z)はウォームのねじ面の座標になり、半径rは
図2(a)の(1.5)式
と表され、ねじ面の軸断面輪郭(xz面における輪郭)は、y=0とおいて、
図2(b)の(1.6)式
となる。
【0063】
ウォーム1IIIのねじ面を表す一般式は、軸断面輪郭をウォーム軸に対して角度θ回転させると、z軸方向にθrtanβだけ並進することから、
図2(c)の(1.7)式
となる。
【0064】
なお、ウォーム1IIIの軸断面輪郭上の任意半径rにおける接線がx軸となす角度α(ねじ面の圧力角)は、
図2(d)の(1.8)式
となり、工具の歯幅Wは、
図2(e)の(1.9)式
となる。
1.2 軸を角度Γ傾けた3形ウォームと噛合うホイール歯面の基礎式
3形ウォーム1IIIに対して軸をz軸として座標系をo-xyz上に取り、ホイール2IIIに対して軸をζ軸として座標系をO-ξηζ上に取る。ウォーム軸はホイール軸直角面に対して、角度Γ傾けて取付け[図2(f)]、
rc:ウォームのピッチ円半径
β:ウォームの進み角
L:ウォームのリード L=2πrctanβ
n:ウォームの条数
Γ:ウォームの傾け角
ψ:ウォームの回転角
Rc:ホイールのピッチ円半径
γ:ホイールの進み角 γ=β+Γ
【0065】
Z:ホイールの歯数
u:歯数比 u=Z/n
c:ウォームとホイールの軸間距離 c=rc+Rc
とする。
【0066】
ウォーム1IIIをz軸回りに角度ψ回転させた時、任意半径rにおけるウォームのねじ面は、ウォーム1III自身がz軸方向に移動しない(ホイールが回転する)ことから、
図2(g)の(1.10)式
となる。ただし、条件式として、
図2(h)の(1.11)式
が成り立つ。
【0067】
これを、歯数比uによって角度ψ/u左ねじ回転するホイール座標系O-ξηζで表すと、
図3(a)の(1.12)式
となる。
【0068】
ホイール2IIIのねじ面(ウォーム1IIIとホイール2IIIの接触面)は、運動するウォーム表面(座標群)の包絡面で形成され、この包絡面の条件式は、次のヤコビアン、
図3(b)の(1.13)式
を計算し、
図3(c)の(1.14)式
として与えられる。ここで、γ=θ+ψである。
【0069】
図3(c)の(1.14)式が成り立つ時、図3(a)の(1.12)式で表される座標(ξ,η,ζ)はホイール歯面の座標になり、半径R、ξη平面のξ軸との角度τは、
図3(d)の(1.15)式
となり、ホイール歯面を表す式は、
図3(e)の(1.16)式
となる。
<実施形態2>
図4は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法の他例を示すもので、(a)は、その算出方法の対象とする4形ウォームの加工法(研削)の説明図、(b)は、その算出方法の対象とする4形ウォームの加工法(切削)の説明図、(c)は(a)、(b)の4形ウォームの歯形形状であるインボリュートヘリコイドを示す図、(d)は(c)における平面[S]上のインボリュート曲線を示す図、(e)〜(g)は、その算出方法で用いる式(2.1)〜式(2.3)を示す図、(h)は、この過程で用いる軸断面輪郭を示す図、(i)は、その算出方法で用いる式(2.4)を示す図である。
【0070】
図5(a)〜(j)((d)を除く。)は、図4の算出方法で用いる式(2.5)〜式(2.13)を示す図、(d)は、この算出方法で得られた4形ウォームの軸芯線を角度Γ傾けた場合のウォームとホイールの噛合いを示す図である。
【0071】
これより、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法を4形ウォームに適用する実施形態について説明する。
2. 4形ウォームギヤの基礎式
2.1 4形ウォームのねじ面の基礎式
JIS B 1723にあるように、4形ウォーム1IV(インボリュートウォーム)は、平らな面のフライスWRまたは砥石WQで基礎円筒に接する平面上では直線となるように加工したねじ面である。軸直角平面上ではインボリュート曲線となり、バイトまたはインボリュートホブで切削することもできる。[図4(a)、(b)]
半径rgの円筒が平面[P]を転がるとき、[P]平面内にある傾斜角βgなる直線Gが空間に描くねじ面がインボリュートヘリコイドであり、曲線A0Aは基礎円から巻き出されるインボリュート曲線である[図4(c)(d)]。
【0072】
4形ウォーム1IVは、インボリュート曲線をねじ軸方向にリードLで累進させて形成する。このとき、
L:リード
L=2πrgtanβg=2πrctanβ
rg:基礎円筒半径
βg:基礎弦巻線の進み角
rc:ピッチ円半径
βc:ピッチ円半径の進み角
とする。
【0073】
図4(d)において、A0D(円弧長さ)=CD(直線長さ)であることから、軸直角断面上の曲線A0Aを極座標で表すと、
図4(e)の(2.1)式
となる。ここで、invはインボリュート関数と呼ぶ。
【0074】
曲線A0Aをウォーム軸回りに偏角φで右ねじ運動すると、
図4(f)の(2.2)式
となる。
【0075】
ねじ面の軸断面輪郭(xz平面上の輪郭)は、φ=0とおいて、
図4(g)の(2.3)式
となり、ピッチ円での溝幅をzcとし、溝幅の中心をz=0となるように座標変換すれば[図4(h)]、軸断面輪郭は、
図4(i)の(2.4)式
となる。複号は、z軸に対し、負側を[1]面、正側を[2]面とする。
【0076】
ウォーム1IVのねじ面を表す一般式は、軸断面輪郭をウォーム軸に対して角度θ回転させると、z軸方向にθrtanβだけ並進することから、
図5(a)の(2.5)式
となる。
【0077】
なお、ウォーム1IVの軸断面輪郭上の任意半径rにおける接線がx軸となす角度α(ねじ面の圧力角)は、
図5(b)の(2.6)式
となり、特にピッチ円半径rcにおける圧力角をαaとすると、
図5(c)の(2.7)式
が成り立つ。
2.2 軸を角度Γ傾けた4形ウォームと噛合うホイール歯面の基礎式
4形ウォーム1IVに対して軸をz軸として座標系をo-xyz上に取り、ホイール2IVに対して軸をζ軸として座標系をO-ξηζ上に取る。ウォーム軸はホイール軸直角面に対して、角度Γ傾けて取付け[図5(d)]、
rg:ウォームの基礎円半径
βg:ウォームの基礎円の進み角
rc:ウォームのピッチ円半径
βc:ウォームのピッチ円の進み角
zc:ウォームのピッチ円での溝幅
L:ウォームのリード L=2πrctanβ
n:ウォームの条数
Γ:ウォームの傾け角
ψ:ウォームの回転角
Rc:ホイールのピッチ円半径
γ:ホイールの進み角 γ=β+Γ
【0078】
Z:ホイールの歯数
u:歯数比 u=Z/n
c:ウォームとホイールの軸間距離 c=rc+Rc
とする。
【0079】
ウォーム1IVをz軸回りに角度ψ回転させた時、任意半径rにおけるウォーム1IVのねじ面は、ウォーム1IV自身がz軸方向に移動しない(ホイール2IVが回転する)ことから、
図5(e)の(2.8)式
となる。
【0080】
これを、歯数比uによって角度ψ/u左ねじ回転するホイール座標系O-ξηζで表すと、
図5(f)の(2.9)式
となる。
【0081】
ホイール2IVのねじ面(ウォーム1IVとホイール2IVの接触面)は、運動するウォーム表面(座標群)の包絡面で形成され、この包絡面の条件式は、次のヤコビアン、
図5(g)の(2.10)式
を計算し、
図5(h)の(2.11)式
として与えられる。ここで、γ=θ+ψである。
【0082】
図5(h)の(2.11)式が成り立つ時、図5(f)の(2.9)式で表される座標(ξ,η,ζ)はホイール歯面の座標になり、半径R、ξη平面のξ軸との角度τは、
図5(i)の(2.12)式
となり、ホイール歯面を表す式は、
図5(j)の(2.13)式
となる。
<共通式の説明>
図6は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法で共通に用いられる、噛み合いを最適にするウォームと大径加工用工具の関係を示す共通式を説明するためのものであって、(a)は、ウォームとホイールとの噛合いを示す図、(b)は、大径加工用工具とホイールとの噛合いを示す図、(c)は(a)、(b)で用いる符号の関係の表を示す図、(d)は噛み合いを最適化するウォームと大径加工用工具の関係を示す共通式(3.1)を示す図である。
【0083】
3形、4形の各式におけるΓに変えて、ウォームギヤの進み角を所定の斜交角度Γとして、この斜交角度に対して、大径加工用工具(ホブカッター、シングルカッター、砥石などを含む)1PH、1PQ、1RHについて共通式(3.1)で得られる所定の工具取付角Γで歯形形状を計算すれば、希望する斜め食い違い軸加工式のウォーム1(1I、1II、1III、1IV)及びホイール2(2I、2II、2III、2IV)の歯形形状を得ることができ、この歯形形状は、噛合いを最適にするものである。
3.噛合いを最適にするウォームと大径加工用工具の関係式(1〜4形共通)
ウォームとホイールの理想的な噛合いは、ホイールをウォームと同じ諸元を持ったホブを用い、噛合い状態と同じ姿勢で加工することである。しかし、ホブ径が小さい場合、ホブの摩耗が激しく寿命が短くなり製造上現実的でない。
【0084】
なお、ここで符号2′(2I′,2II′,2III′,2IV′)は、ホブ径が小さい場合、つまり、ホイールとかみ合うウォームと同径のホブでホイールを加工する場合の各ホイールを示している。
【0085】
そこで、大径加工用工具1PH、1QH、1RHをウォームと同じ形で、かつ径を大きく作成し[図6(a)(b)]、
ウォームと大径加工用工具を区別するために、記号に添字を付けて
図6(c)の表
とする。
【0086】
噛合いを最適にするウォームと大径加工用工具の関係は、ホイールのピッチ円半径Rcにおいて、
図6(d)の(3.1)式
と設定することである。
<実施形態3>
図7(a)は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法を適用可能な1形ウォームの加工方法を示す図、(b)は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法を適用可能な2形ウォームの加工方法を示す図である。
【0087】
これらのウォームギヤの加工方法については、明細書の背景技術の所で説明したので、ここでは省略する。
【0088】
上述した実施形態1、2の算出方法と、共通式とは、この図に記載した1形ウォーム1I、2形ウォーム1IIにも適用可能なものであり、その場合には、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォーム歯形形状算出方法は、1形ウォーム1I、2形ウォーム1IIについても、3形ウォーム1III、4形ウォーム1IVと同様の作用効果を発揮するものである。
【0089】
また、同様に、3形ウォーム1III、4形ウォーム1IVについてのウォームとホイールとの歯当たり隙間算出方法、ウォーム及びホイールを製造する製造方法、この製造方法で製造されたウォーム及びホイールを備えたウォームギヤ減速機、このウォームギヤ減速機を用いた電動操舵装置についても、1形ウォーム1I、2形ウォーム1IIにも適用可能なものであり、その場合には、これら3形ウォーム、4形ウォームについての作用効果を、1形ウォーム1I、2形ウォーム1IIについても発揮することができる。
<実施形態4>
図8(a)は本発明の斜め食い違い軸加工式のウォーム及びホイールの製造方法の一例で製造されたウォーム及びホイールを用いた電動操舵装置の要部を示す断面図、(b)は(a)の電動操舵装置の全体構成を示す図である。
【0090】
図8(a)の電動操舵装置10は、図8(b)に示すように、自動車等の車両の車輪(タイヤ)Tの操舵を補助するもので、運転者が操作するハンドルHDに連結された入力軸3Aと、これにトルクセンサ6を介して連結された出力軸3Bとからなる入出力軸3と、補助操舵力を発生させる電動機4とを備えている。
【0091】
電動操舵装置10は、また、電動機4に連結された本発明のウォーム1と、入出力軸3の出力軸3Bに連結されたホイール2とを備えたウォームギヤ減速機5と、出力軸3Bの反入力軸3A側に設けられたピニオン3aと、このピニオン3aで直線駆動される操舵ラック軸7とを備えている。
【0092】
このような構成の電動操舵装置10によれば、運転者がハンドルHDを操舵すれば、その操舵力がトルクセンサ6で検出され、その操舵力に応じて、電動機4が駆動され、その駆動力がウォーム1から、ホイール2、出力軸3B、ピニオン3a、操舵ラック軸7と伝達されて、車輪(タイヤ)Tの操舵を補助することができる。
【0093】
この際、この電動操舵装置10(10I、10II、10III、10IV)は、本発明の歯形形状算出方法、歯当たり隙間算出方法を用いた製造方法で製造されたウォーム1(1I、1II、1III、1IV)及びホイール2(2I、2II、2III、2IV)を備えたウォームギヤ減速機5(5I、5II、5III、5IV)を用いているので、これらの効果を、ウォームギヤ減速機、電動操舵装置としても発揮することができ、特に、斜め食い違い軸の場合は車載レイアウト上有利である。
【0094】
また、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法は、上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
【0095】
また、本発明の歯当たり隙間算出方法、ウォーム及びホイールを製造する製造方法、ウォームギヤ減速機、電動操舵装置は、上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
【0096】
また、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法は、相対的に直交でない角度に傾けて加工する場合について説明したが、ウォームとホイールとの軸芯線が直交関係になる場合についても、大径加工用工具を用いて、ホイールを、この目的の元に形成することは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法は、大径の加工用工具を用いた斜め食い違い軸式ウォームギヤについて、良好な噛合い接触面を確保し、その歯形の設計解析が自由にできることが要請される産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法の一例を示すもので、(a)は、その算出方法の対象とする3形ウォームの加工法の説明図、(b)は(a)の工具形状を示す図、(c)はその算出方法で用いる式(1.1)を示す図、(d)は(a)のウォームと工具との座標系を示す図、(e)〜(g)はその算出方法で用いる式(1.2)〜式(1.4)を示す図
【図2】(a)〜(h)((f)を除く。)は、図1の算出方法で用いる式(1.5)〜式(1.11)を示す図、(f)は、この算出方法で得られた3形ウォームの軸芯線を角度Γ傾けた場合のウォームとホイールの噛合いを示す図
【図3】(a)〜(e)は、図1の算出方法で用いる式(1.12)〜式(1.16)を示す図
【図4】本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法の他例を示すもので、(a)は、その算出方法の対象とする4形ウォームの加工法(研削)の説明図、(b)は、その算出方法の対象とする4形ウォームの加工法(切削)の説明図、(c)は(a)、(b)の4形ウォームの歯形形状であるインボリュートヘリコイドを示す図、(d)は(c)における平面[S]上のインボリュート曲線を示す図、(e)〜(g)は、その算出方法で用いる式(2.1)〜式(2.3)を示す図、(h)は、この過程で用いる軸断面輪郭を示す図、(i)は、その算出方法で用いる式(2.4)を示す図
【図5】(a)〜(j)((d)を除く。)は、図4の算出方法で用いる式(2.5)〜式(2.13)を示す図、(d)は、この算出方法で得られた4形ウォームの軸芯線を角度Γ傾けた場合のウォームとホイールの噛合いを示す図
【図6】本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法で共通に用いられる、噛み合いを最適にするウォームと大径加工用工具の関係を示す共通式を説明するためのものであって、(a)は、ウォームとホイールとの噛合いを示す図、(b)は、大径加工用工具とホイールとの噛合いを示す図、(c)は(a)、(b)で用いる符号の関係の表を示す図、(d)は噛み合いを最適化するウォームと大径加工用工具の関係を示す共通式(3.1)を示す図
【図7】(a)は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法を適用可能な1形ウォームの加工方法を示す図、(b)は、本発明の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法を適用可能な2形ウォームの加工方法を示す図
【図8】(a)は本発明の斜め食い違い軸加工式のウォーム及びホイールの製造方法の一例で製造されたウォーム及びホイールを用いた電動操舵装置の要部を示す断面図、(b)は(a)の電動操舵装置の全体構成を示す図
【図9】本発明の背景技術となるウォームギヤ減速機の要部を示す図
【符号の説明】
【0099】
1(1I、1II、1III、1IV) ウォーム
2(2I、2II、2III、2IV) ホイール
z(図6(a)、(b)) ウォーム軸芯線
ζ(図6(a)、(b)) ホイール軸芯線
WF(図6(a)、(b)) ウォーム平面
HF(図6(a)、(b)) ホイール平面
直線oO(図6(a)、(b)) 垂線
o−O(図6(a)、(b)) 所定の間隔
Γ(図2(f)、図5(d)) 所定の斜交角度
Γ、Γ 傾け角(所定の斜交角度、所定の工具取付角)
α(図1(b)) 工具の圧力角
WP(図1(a)) ウォーム加工用工具
WQ(図4(a)) ウォーム加工用工具(砥石)
WR(図4(b)) ウォーム加工用工具(フライス)
1P(図1(a)) ウォーム歯形を有する工具
1Q(図4(a)) ウォーム歯形を有する工具
1R(図4(b)) ウォーム歯形を有する工具
ρ(図1(b)) ウォーム加工用工具のピッチ円半径
cw(図6(c)) ウォーム加工用工具のピッチ円半径
ch(図6(c)) 大径加工用工具のピッチ円半径
1PH(図1(a)) 大径加工用工具
1RH(図4(a)) 大径加工用工具
1QH(図4(b)) 大径加工用工具
3(3A、3B) 入出力軸
4 電動機
5(5I、5II、5III、5IV) ウォームギヤ減速機
10(10I、10II、10III、10IV) 電動操舵装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォームとホイールとのそれぞれの軸芯線を含む二平面が互いの軸芯線からの垂線を共有して所定の間隔の平行関係にあると共に、それぞれの軸芯線が前記垂線方向から見て、所定の斜交角度関係にあるウォームとホイールとの歯形形状算出方法であって、
所望の圧力角を有するウォーム加工用工具により加工されるウォーム歯形の式と、
前記ウォーム歯形を有する工具を、前記所定の間隔を保って、前記ホイールの軸芯線に対して前記所定の斜交角度だけ傾けて、該ホイールを加工した場合に得られるウォーム切りホイール歯形の式と、
前記ウォーム加工用工具と同一のウォーム形式であって、該ウォーム加工用工具のピッチ円半径より大きいピッチ円半径を持つ大径加工用工具について、前記ウォーム切りホイール歯形の式との関係を規定する共通式により得られる大径工具の歯形形状の式と、
前記大径工具の歯形を有する大径加工用工具を、前記所定の間隔を保って、前記ホイールの軸芯線に対して所定の工具取付角だけ傾けて該ホイールを加工した場合に得られる大径工具切りホイール歯形の式とを用い、
前記ウォーム歯形の式によってウォームの歯形形状を算出し、前記大径工具切りホイール歯形の式によってホイールの歯形形状を算出する、ことを特徴とする斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法。
【請求項2】
ウォーム歯形の式が3形ウォーム歯形の式(図2(c)の式(1.7))であって、
ウォーム切りホイール歯形の式が前記3形ウォームの式に対応した3形ウォーム切りホイール歯形の式(図3(e)の式(1.16))であって、
大径工具の歯形形状の式が、前記3形ウォーム切りホイール歯形の式との関係を規定する共通式(図6(d)の式(3.1))から得られる3形大径工具の歯形形状の式(図2(c)の式(1.7))であって、
大径工具切りホイール歯形の式が、前記3形大径工具の歯形形状の式による大径工具の歯形を有する大径加工用工具を用いた場合の3形大径工具切りホイール歯形の式(図3(e)の式(1.16))であることを特徴とする請求項1記載の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法。
【請求項3】
ウォーム歯形の式が4形ウォーム歯形の式(図5(a)の式(2.5))であって、
ウォーム切りホイール歯形の式が前記4形ウォームの式に対応した4形ウォーム切りホイール歯形の式(図5(j)の式(2.13))であって、
大径工具の歯形形状の式が、前記4形ウォーム切りホイール歯形の式との関係を規定する共通式(図6(d)の式(3.1))から得られる4形大径工具の歯形形状の式(図5(a)の式(2.5))であって、
大径工具切りホイール歯形の式が、前記4形大径工具の歯形形状の式による大径工具の歯形を有する大径加工用工具を用いた場合の4形大径工具切りホイール歯形の式(図5(j)の式(2.13))であることを特徴とする請求項1記載の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法で得られたウォーム歯形とホイール歯形との間の同時接触線に沿って隙間を計算し、ウォームとホイールとの噛み合い面における隙間分布を求めて歯当たり状態を算出することを特徴とする斜め食い違い軸加工式ウォームとホイールとの歯当たり隙間算出方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか記載の斜め食い違い軸加工式ウォームギヤ歯形形状算出方法で得られたウォームとホイールとの歯形形状のデータと、請求項4記載の斜め食い違い軸加工式ウォームとホイールとの歯当たり隙間算出方法で得られた歯当たり隙間のデータとを用いてウォーム及びホイールを製造することを特徴とする斜め食い違い軸加工式のウォーム及びホイールの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の斜め食い違い軸加工式のウォーム及びホイールの製造方法を用いて製造されたウォーム及びホイールを備えたことを特徴とするウォームギヤ減速機。
【請求項7】
請求項6記載のウォームギヤ減速機を用いた電動操舵装置であって、
前記電動操舵装置の入出力軸に前記ウォームギヤ減速機のホイールを、前記電動操舵装置の電動機に前記ウォームギヤ減速機のウォームを連結したことを特徴とする電動操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−156443(P2009−156443A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338437(P2007−338437)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】