説明

斜張橋のケーブル定着部の防水処理方法およびその装置

【課題】 斜張橋のケーブル定着部に設けている防水カバーのシール材が、風や車両走行等によるケーブルの振動によって劣化して防水機能が低下しても、雨水がシール材を通過して定着部側に浸入するのを防止するカバーシートによる防水処理を提供する。
【解決手段】 ケーブル2の定着用鋼管5に防水カバー4を装着し、この防水カバー4の上端部をシール材14を介してケーブル2の外周面に固着しているケーブル防水手段において、遮水性を有する柔軟なカバーシート3によって防水カバー4を被覆し、このカバーシート3の上端部を止水材6を介してケーブル2の外周面にバンド等によって固着することにより該カバーシート3をケーブル2の振動に応じて一体的に挙動させて止水材6の劣化を長期に亘り防止し、ケーブル2を伝って流下する雨水が定着用鋼管5内に浸入するのを防止するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は斜張橋の塔と桁間に張設している既設のケーブルの下端定着部において、この定着部に被覆してケーブルを伝う雨水等が該定着部内に浸入するのを防止する防水処理方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塔と桁間に所定の緊張力でもって斜めに張設、定着されているケーブルは、その下端部の定着部として桁に定着用鋼管を固着し、この定着用鋼管にケーブルの下端部を挿通して該下端部に固着している定着ブロックを定着用鋼管の下端開口部に定着させているが、雨水が定着用鋼管内に浸入すると錆や腐食等が生じるので防水手段を設ける必要がある。
【0003】
このため、例えば、特許文献1に記載したように、斜張橋の桁に固着している定着用鋼管にケーブルの下端部を挿入、定着してなるケーブル定着部において、この定着用鋼管を截頭円錐形状のゴム又は軟質合成樹脂製の肉厚防水カバーによって被覆すると共にこの防水カバーの小径上端部を定着用鋼管の上方近傍部におけるケーブル外周面にシール材を介して被着してその上端外周面をバンドで結着、固定し、さらに、下端部内周面を定着用鋼管の上端外周面に被着してその外周面もバンドによって結着、固定している。なお、上記截頭円錐形状の防水カバーは、その一部を上下端面間に亘って分割してあり、その分割面を押し広げることによりケーブル定着部に被せることができるように構成している。
【特許文献1】特開平10−298919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ケーブルは風や車両の通過等によって絶えず振動している一方、桁側に固着している定着用鋼管は風による影響を殆ど受けることがなくてケーブルに対しては固定状態に保持されており、この定着用鋼管に下端部を被せてバンドにより固着している上記防水カバーは肉厚であって可撓性に乏しいために、ケーブル外周面にシール材を介して被着している上端部も下端部を支点として固定状態を保持し、そのため、シール材はその外周面をこの防水カバーの上端部内周面で受止された状態でケーブルの振動により径方向への圧縮と膨脹との変形を繰り返し頻繁に行われて疲労し、シール効果が減少してケーブルと防水カバーとの間に隙間が発生し、降雨時には雨水がケーブルを伝ってこの隙間から定着用鋼管内に浸入して定着部に錆や腐食が生じ、構造物の耐久性を損ねる要因となるといった問題点があった。
【0005】
さらに、截頭円錐形状の防水カバーは、上述したようにケーブル定着部への装着を可能にするために、その一部を上下端間に亘って分割しているので、装着後にその分割面からも定着用鋼管側に雨水が浸入する虞れがあった。また、このような防水カバーによることなく、定着用鋼管に挿通したケーブルの下端部外周面と定着用鋼管の上端開口部内周面との間に止水材を介装した防水構造においても、ケーブルの振動によって上記同様に該止水材が疲労し、隙間が発生して定着用鋼管内に雨水が浸入することになる。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ケーブル定着部に設けている防水カバー等に被せることによって定着用鋼管側への雨水の浸入を長期に亘り確実に防止でき、また、構造が簡単で取扱性が良く、定着部への装着作業や取り替え作業も円滑に能率よく行うことができる斜張橋のケーブル定着部における防水処理方法とこの方法を実施するための装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、斜張橋の桁に固着した定着用鋼管にケーブルの下端部を挿入、定着していると共に、定着用鋼管の上端近傍部におけるケーブルの外周面とこの定着用鋼管の上端部外周面間に亘って防水カバーを装着してなるケーブル定着部の防水処理方法であって、その防水カバーを遮水性を有する柔軟なカバーシートによって被覆し、このカバーシートの上端部を防水カバーの上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻着、固定することを特徴とする。
【0008】
一方、請求項2に係る発明は、斜張橋の桁に固着した定着用鋼管にケーブルの下端部を挿入、定着していると共に、定着用鋼管の上端開口部内周面とケーブル外周面との間に止水材を介装してなるケーブル定着部の防水処理方法であって、上記定着用鋼管の上端部を遮水性を有する柔軟なカバーシートによって被覆し、このカバーシートの上端部を定着用鋼管の上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻着、固定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1に記載のケーブル定着部の防水処理方法を実施するための装置であって、斜張橋の桁に固着している定着用鋼管にケーブルの下端部を挿入、定着すると共に、前記定着用鋼管の上端近傍部におけるケーブルの外周面とこの定着用鋼管の上端部外周面間に亘って防水カバーを装着してなる斜張橋のケーブル定着部において、前記防水カバーを遮水性を有する柔軟なカバーシートによって被覆し、このカバーシートの上端部を防水カバーの上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻着してなる構造を有している。
【0010】
このように構成したケーブル定着部の防水装置において、請求項4に係る発明は、防水カバーを被覆するカバーシートは扇形形状に形成されてあり、このカバーシートを防水カバーに固定することなく該防水カバーの外周面に該外周面から遊離した状態に巻装し、上端部をケーブル外周面に止水材を介してバンドや紐状物等の結着具により固定していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、上記請求項2に記載のケーブル定着部の防水処理方法を実施するための装置であって、斜張橋の桁に固着した定着用鋼管にケーブルの下端部を挿入、定着していると共に、定着用鋼管の上端開口部内周面とケーブル外周面との間に止水材を介装してなる斜張橋のケーブル定着部において、定着用鋼管の上端部に該外周面から内周面を遊離させた状態で遮水性を有する柔軟なカバーシートを被覆し、このカバーシートの上端部を定着用鋼管の上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻装してバンドや紐状物等の結着具によって固定していると共に下端部を定着用鋼管の外周面にバンドや紐状物等の結着具によって固定してなる構造を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、斜張橋のケーブル定着部において、ケーブルを挿入、定着させている定着用鋼管の上端近傍部におけるケーブルの外周面とこの定着用鋼管の上端部外周面間に亘って装着した防水カバーを遮水性を有する柔軟なカバーシートによって被覆し、このカバーシートの上端部を防水カバーの上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻着しているので、風等によるケーブルの長期間に亘る振動によって防水カバーによる止水効果が低減しても、(該防水カバーを交換することなくカバーシートを防水カバーに被せるといった簡単な作業により)このカバーシートによって雨水が防水カバーを通じて定着用鋼管側に浸入するのを確実に防止することができる。
【0013】
この際、ケーブルが風等によって振動しても、防水カバーを被覆しているカバーシートはその柔軟性によって振動を吸収してケーブルの外周面に止水材を介して巻着している該カバーシートの上端部がケーブルと一体的に挙動し、従って、ケーブルと止水材間との間に隙間が生じる虞れもなく、ケーブルを伝う雨水が定着用鋼管側に浸入するのを確実に防止することができると共に長期間に亘って確実な止水性を発揮することができる。
【0014】
このように、本発明のケーブル定着部の防水処理方法を実施するための処理装置は、遮水性を有する柔軟なカバーシートを主要部として使用しているので、構造が簡単で安価に提供できるのは勿論、取扱性も良好で防水カバーの形状に応じて確実且つ容易に巻装することができると共に、既設の防水カバーにあっては、該防水カバーの補修や取り替え等を必要とすることなく経済的な雨水浸入防止対策を可能にすることができ、その上、多数本張設されている斜張橋のケーブルの定着部に対する装着作業が能率よく且つ確実に行うことができる。
【0015】
さらに、請求項4に係る発明によれば、防水カバーを被覆する上記カバーシートを扇形形状に形成しているので、截頭円錐形状に形成されている上記防水カバーの外周面に簡単且つ正確に一巻き状に巻装してその両端部を互いに重ね合わせた状態に被覆することができると共に、その上端部をケーブル外周面に止水材を介してバンドや紐状物等の結着具により固定しているので、容易に且つ強固な取付けが可能となり、多数本張設されている斜張橋のケーブルの定着部に対する本発明の防水装置の装着作業が能率よく且つ確実に行うことができる。その上、カバーシートを防水カバーの外周面に密着させた状態で固定することなく該防水カバーの外周面から遊離した状態に巻装しておくので、該カバーシートの下端部を定着用鋼管の上端部外周面にバンドや紐状物で固定しておいても、防水カバーから遊離している部分によってケーブルの振動を吸収させることができ、ケーブルと止水材間との間に隙間が生じるのを確実に防止することができる。
【0016】
また、ケーブルの下端を挿入、定着させている定着用鋼管を上記防水カバーによって被覆することなく、該定着用鋼管の上端開口部内周面とケーブル外周面間をシール材によって密閉してなる既設の定着部の放水処理方法としては、請求項2に記載したように、上記定着用鋼管の上端部をカバーシートによって被覆し、該カバーシートの上端部を定着用鋼管の上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻着しているので、この定着部の防水構造においてもケーブルの絶え間ない振動によって上記シール材が損傷して隙間が発生し、ロープを伝って雨水が定着用鋼管内に浸入しようとするが、上端部を定着用鋼管の上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻着しているカバーシートによって上記請求項1に係る発明と同様に、その浸入を長期間に亘って確実に防止することができるものである。
【0017】
請求項5に係る発明は、上記請求項2のケーブル定着部における防水処理方法を実施するための装置であって、上記遮水性を有する柔軟なカバーシートを定着用鋼管の外周面から遊離させた状態で巻装していると共にその下端部を定着用鋼管の外周面にバンドや紐状物等の結着具によって固定しているので、上記請求項4に係る発明と同様に、カバーシートが強風により捲れたりケーブル定着部から外れたりすることなく、強固に且つ体裁よく装着しておくことができると共に、このカバーシートが上述したように風等によって振動するケーブルと一体的に挙動して止水材部分に隙間が生じるのをなくし、定着部に対する確実な防水効果を奏することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は、斜張橋の塔(図示せず)と桁1間に張設しているケーブル2の下端定着部の縦断側面図、図2は図1におけるA−A線拡大断面図、図3は定着部の斜視図であってカバーシート3によって被覆された防水カバー4を透視した状態を示している。これらの図において、ケーブル2の下端定着部は、斜張橋の桁1に内径がケーブル2の外径よりも大径の定着用鋼管5を該ケーブル2の張設傾斜角度と同じ角度でもって傾斜した状態で固着してあり、この定着用鋼管5にケーブル2の下端部を挿通して公知のように、その下端を定着用鋼管5の下端開口部を閉止している定着板11の中央孔に挿通し、該下端に一体に取り付けている定着ブロック10をこの定着板11上に係止させることにより定着した構造としている。
【0019】
なお、定着用鋼管5の上端開口部の内周面とケーブル2の外周面との間にゴム等の防振手段12を介装している。また、ケーブル2は多数本の鋼線よりなるストランドを集束したロープの外周を合成樹脂製被覆材で被覆してなるものである。
【0020】
このように構成した斜張橋のケーブル定着部において、ケーブル2の架設施工後に、該定着部に肉厚のゴム製又は軟質合成樹脂製の防水カバー4を装着して、降雨時に雨水がケーブル2を伝って定着用鋼管5内に浸入するのを防止している。この防水カバー4は上下端が全面的に開口した截頭円錐形状に形成されていると共にケーブル2の外周面と定着用鋼管5の外周面とにバンド15、16によって固着される上下端部はそれぞれ大小径の円環部4a、4bに形成されてあり、さらに、図4に示すようにこの防水カバー4の一部を上下端間に亘って真っ直ぐに分割4cしている。
【0021】
そして、この分割した対向端面を押し広げてその大径側の下端部を上記定着用鋼管5の上端部外周面に被せると共にそれ以外の部分を定着用鋼管5の上方近傍部におけるケーブル2部分に被せ、上記分割部分を下向きにした状態で上端小径円環部4aの内周面とケーブル2の外周面との間にシール材14を介在させ、上端小径円環部4aの外周面をバンド15により締め付けてケーブル2の外周面にシール材14を介して固着していると共に下端大径円環部4bの外周面をバンド16により締め付けてその内周面を定着用鋼管5の上端部外周面に圧着させた状態で固着している。なお、この下端大径円環部4bは、防水カバー4の最大径の下端部よりも小径に形成されている。
【0022】
ケーブル2は風や走行車両等によって絶えず振動を繰り返しており、上記防水カバー4の内周面とケーブル2の外周面とで挟着された状態でこれらの内外周面間に介在させている上記シール材14はこの振動によって損傷し易くなっていて、損傷した場合には損傷によって生じた隙間部分から定着用鋼管5内に雨水が浸入する虞れがあるので、この防水カバー4を遮水性を有する柔軟なカバーシート3によって被覆し、このカバーシート3の上端部を防水カバー4の上方近傍部のケーブル外周面に止水材6を介して一巻き状に巻着、固定していると共に下端部を防水カバー4の下端近傍部における定着用鋼管5の上端部外周面に直接、一巻き状に巻着、固定している。なお、斜張橋が構築された時に、その張設されたケーブルの定着部に装着した防水カバー4を上記カバーシート3によって被覆しておいてもよい。
【0023】
遮水性を有する柔軟なカバーシート3としてはポリアミド系、ポリアラミド系、ポリエステル系又はポリビニルアルコール系の繊維によって織製してなる織物の両面に塩化ビニル樹脂やクロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム等をコーティングして耐候性を備えてなるシート状物や、上記織物の両面にフッ素樹脂フィルムを貼着してなるもの、さらには、織物以外の耐候性と遮水性を有する柔軟な合成樹脂製シート状物を採用している。
【0024】
このカバーシート3は図4に示すように、上記防水カバー4を被覆する部分3aを、この防水カバー4の外周面を該防水カバー4の中心回りに展開して得られる扇形形状よりも一回り大きい扇形形状に形成していると共に、この扇形形状の防水カバー被覆部3aの幅狭い上端縁には、この上端縁から上方に向かってケーブル2の外周長よりも広幅の一定長さを有する矩形状のケーブル被覆部3bを一体に設けてあり、さらに、防水カバー被覆部3aにおいて、防水カバー4の上記下端円環部を被覆する下端部を下端に向かって徐々に幅狭くしていると共に、この下端からさらに下方に向かって定着用鋼管5の外周長よりも幅広い一定長さの鋼管被覆部3cを一体に設けてなるものである。
【0025】
また、このカバーシート3の上端部とケーブル2の外周面との間に介在させる上記止水材6としては、吸水性に優れてその吸水によって膨潤する発泡合成樹脂材からなり、一定幅と厚みを有し且つケーブル2を一巻きし得る長さを有する帯状ないしは棒状形状に形成されているが、このような発泡合成樹脂材からなるもの以外に、防水性と耐候性及び柔軟性を有するその他の軟質合成樹脂やゴム等より形成された止水材を使用してもよい。
【0026】
上記カバーシート3の防水カバー被覆部3aによって防水カバー4を一巻き状に被覆してその対向する両側端部を全長に亘って重ね合わた状態にする。この際、該防水カバー被覆部3aの内周面を防水カバー4の外周面に全面的に密接させることなく該外周面から遊離させて撓みが可能な状態に被覆しておく。このカバーシート3の防水カバー被覆部3aによる防水カバー4の被覆と同時に該カバーシート3の上端部のケーブル被覆部3bを防水カバー4の上方近傍部のケーブル外周面に止水材6を介して一巻き状に巻回してその両側端部を重ね合わせた状態にし、この巻装したケーブル被覆部3bの外周面をバンド7により緊締して固定し、さらに、このカバーシート3の下端部の鋼管被覆部3cも上記防水カバー被覆部3aによる防水カバー4の被覆時に防水カバー4の下端近傍部における定着用鋼管5の上端部外周面に一巻き状に巻回してバンド8により緊締して固定する。なお、止水材6はその両端面を傾斜端面に形成し、カバーシート3の外周面にこれらの対向する傾斜端面を接合することにより、全周に亘って一定厚みの環状止水材を構成し、この状態にして上記バンド7により固定している。
【0027】
このように、シール材14が損傷等により劣化している防水カバー4をケーブル2から取り外すことなく、該防水カバー4をカバーシート3により被覆すると共に該カバーシート3の上端部を止水材6を介してケーブル2の外周面に巻装してバンド7により固着し、下端部を定着用鋼管5の上端部に巻装してバンド8により固着してなる防水装置を構成する。なお、防水カバー4の上下端部は固着する結着具としては、上記バンドに限定することなく紐状物やその他のファスナーであってもよい。なお、上述したように、このカバーシート3は既設の防水カバー4に限らず、新設の防水カバーに被覆させてもよい。
【0028】
この防水装置によれば、風等の影響によって絶えず振動しているケーブル2に止水材6を介して巻着しているカバーシート3の上端部はケーブル2と一体的に振動すると共に、防水カバー4を被覆している被覆部3aの柔軟性、可撓性によってその振動を吸収させているので、該上端被覆部3bはこの防水カバー被覆部3a側からは何等の抵抗を受けることなく止水材6と共にケーブル2と一体的に挙動し、従って、ケーブル2と止水材6との間に隙間が生じる虞れもなく、降雨時にケーブル2を伝って流下する雨水が防水機能が低下している防水カバー4側のシール材16側に浸入するのを防止することができる。また、防水カバー4を被覆しているカバーシート3の上記被覆部3aによって雨水が防水カバー4の分割部分から内部に浸入するのを防止することができる。
【0029】
以上の実施の形態においては、定着用鋼管5の上端開口部を上記防水カバー4によって被覆してなる定着部の防水処理について説明したが、防水カバー4を使用していない定着部に対しても上記カバーシート3と同一材料よりなるカバーシート3'によって防水処理を行うことができる。図6はその実施の形態を示すもので、ケーブル2を挿通、定着させている定着用鋼管5は、その上端開口部においてケーブル2の外周面と該定着用鋼管5の内周面間をシール材14' によって封止している。従って、この定着部の構造においても、ケーブル2の振動によってシール材14' が定着用鋼管5の内周面を固定側として頻繁に圧縮作用を受けて損傷し、損傷によって生じた隙間から定着用鋼管5内に雨水が浸入する虞れがある。
【0030】
このため、定着用鋼管5の上端近傍部のケーブル2の外周面から該定着用鋼管5の上端部外周面に亘って上記カバーシート3と同一材料よりなる遮水性を有する柔軟なカバーシート3'によって被覆し、このカバーシート3'の上端部を定着用鋼管4の上方近傍部のケーブル外周面に止水材6を介して一巻き状に巻着、固定すると共に下端部を定着用鋼管5の上端部外周面に直接、一巻き状に巻着、固定している。
【0031】
このカバーシート3'は定着用鋼管4の外周面の周長よりもその幅がやや大きい矩形状に形成されてあり、ケーブル2の外周面から定着用鋼管5の上端部外周面に亘り、その内周面を定着用鋼管5の外周面に密着させることなく該外周面から遊離させるようにして一巻き状に巻き付けると共に両側端部を重ね合わせた状態にし、この状態にしてケーブル2の外周面に止水材6を介して該カバーシート3'の上端部外周面をバンド7により固着すると共に下端部を定着用鋼管5の上端部に同じくバンド8により固着して定着部の防水装置を構成するものである。
【0032】
この防水装置によれば、風等の影響によって絶えず振動しているケーブル2に止水材6を介して巻着しているカバーシート3'の上端部はケーブル2と一体的に振動すると共に、定着用鋼管5を被覆している該カバーシート3'の被覆部の柔軟性、可撓性によってその振動を吸収させることができるので、該カバーシート3'の上端部は止水材6と共にケーブル2と一体的に挙動し、従って、ケーブル2と止水材6との間に隙間が生じる虞れもなく、降雨時にケーブル2を伝って流下する雨水が定着用鋼管5の上端開口部に装着した防水機能が低下しているシール材14' 側に浸入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ケーブル定着部の縦断側面図。
【図2】図1におけるA−A線拡大断面図。
【図3】防水カバーを透視した状態の定着部の斜視図。
【図4】カバーシートを展開した状態の定着部の斜視図。
【図5】カバーシートを断面し定着部の簡略平面図。
【図6】本発明の別な実施の形態を示す定着部の縦断側面図。
【符号の説明】
【0034】
1 桁
2 ケーブル
3 カバーシート
4 防水カバー
5 定着用鋼管
6 止水材
7、8 バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜張橋の桁に固着した定着用鋼管にケーブルの下端部を挿入、定着していると共に、定着用鋼管の上端近傍部におけるケーブルの外周面とこの定着用鋼管の上端部外周面間に亘って防水カバーを装着してなるケーブル定着部の防水処理方法であって、上記防水カバーを遮水性を有する柔軟なカバーシートによって被覆し、このカバーシートの上端部を防水カバーの上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻着、固定することを特徴とする斜張橋のケーブル定着部の防水処理方法。
【請求項2】
斜張橋の桁に固着した定着用鋼管にケーブルの下端部を挿入、定着していると共に、定着用鋼管の上端開口部内周面とケーブル外周面との間に止水材を介装してなるケーブル定着部の防水処理方法であって、定着用鋼管の上端部を遮水性を有する柔軟なカバーシートによって被覆し、このカバーシートの上端部を定着用鋼管の上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻着、固定することを特徴とする斜張橋のケーブル定着部における防水処理方法。
【請求項3】
斜張橋の桁に固着している定着用鋼管にケーブルの下端部を挿入、定着すると共に、前記定着用鋼管の上端近傍部におけるケーブルの外周面とこの定着用鋼管の上端部外周面間に亘って防水カバーを装着してなる斜張橋のケーブル定着部において、前記防水カバーを遮水性を有する柔軟なカバーシートによって被覆し、このカバーシートの上端部を防水カバーの上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻着してなることを特徴とする斜張橋のケーブル定着部における防水装置。
【請求項4】
防水カバーを被覆するカバーシートは扇形形状に形成されてあり、このカバーシートを防水カバーに固定することなく該防水カバーの外周面に該外周面から遊離した状態に巻装し、上端部をケーブル外周面に止水材を介してバンドや紐状物等の結着具により固定していると共に下端部を定着用鋼管の外周面にバンドや紐状物等の結着具により固定してことを特徴とする請求項3に記載の斜張橋のケーブル定着部における防水装置。
【請求項5】
斜張橋の桁に固着した定着用鋼管にケーブルの下端部を挿入、定着していると共に、定着用鋼管の上端開口部内周面とケーブル外周面との間に止水材を介装してなる斜張橋のケーブル定着部において、定着用鋼管の上端部に該外周面から内周面を遊離させた状態で遮水性を有する柔軟なカバーシートを被覆し、このカバーシートの上端部を定着用鋼管の上方近傍部のケーブル外周面に止水材を介して巻装してバンドや紐状物等の結着具によって固定していると共に下端部を定着用鋼管の外周面にバンドや紐状物等の結着具によって固定していることを特徴とする斜張橋のケーブル定着部における防水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−95376(P2008−95376A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278060(P2006−278060)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(592185585)株式会社ブリッジ・エンジニアリング (7)
【Fターム(参考)】