説明

斜杭の打設管理方法

【課題】画像情報と測量情報とに基づいて斜杭の打設誘導や位置の確認などを行って打設管理すること。
【解決手段】本発明の斜杭の打設管理方法では、画像送信機能付き測量装置を少なくとも2台用いるとともに、視準点の位置情報を光波を用いて測量する、斜杭の打設管理方法であって、1台の画像送信機能付き測量装置は位置情報が既知の第2地点に設置し、他の1台の画像送信機能付き測量装置は位置情報が既知の第3地点に設置し、第2地点に設置した画像送信機能付き測量装置から送信された第1地点の画像情報と、第3地点に設置した画像送信機能付き測量装置から送信された第1地点の画像情報と、第2地点の位置情報と、第3地点の位置情報とに基づいて、前記2つの画像情報を表示手段に表示させるとともに、前記杭の所定部位の位置情報を、前記光波測量装置を用いて測量することによって、前記杭の位置および傾斜角を高精度で測量して打設管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報が既知の地点を基準にして、斜杭の誘導および位置確認を行って打設管理を行う方法に関するものであり、特には、少人数で打設管理する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、位置情報が既知の地点を基準にして、位置情報が未知の地点の杭などの位置情報を測量する場合には、既知の地点に設置した測量装置で、未知の地点を視準し、両地点間の相対的な位置関係に基づいて、測量計算を行って、未知の地点の位置情報を得ることが行われている。
近年においては、前記測量装置としては、視準方向の角度情報を電気的に得ることができるとともに、視準点までの距離を各種光学的な手法を用いて電気的に得ることができ、測量計算もマイクロコンピュータ等の電子的な手段を用いて迅速且つ正確に行うことが可能なトータルステーション等の電子的な測量装置が使用されることが多くなっている。
また、前記トータルステーション等の電子的な測量装置には、視準方向を電気信号で指示することにより、モータ等の駆動手段を制御して指定された方向に光軸を向けることが可能なモータドライブ機構を備えたものが使用されるようになってきている。
また、トータルステーションにCCDカメラを備えたものが提案されている。(例えば、特許文献1、2参照)
【0003】
【特許文献1】特開2000-275044号公報
【特許文献2】特許第3854168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測量装置の操作は電気信号で可能となったので、遠隔制御も可能であるが、
視準している方向を確認するためには、測量装置の望遠鏡の接眼部を操作者が目視して、所定の地点を視準しているか否かを確認する必要があり、また別地点の管理者に伝達するにはトランシーバなどで報告する必要があった。
したがって、各測量装置には、その接眼部を目視するために、最低1人の操作者を配置する必要があった。
【0005】
特に、海上での斜杭を打設する場合であって、近くの岸などから前記斜杭を所定の位置に、所定の角度で打設する場合には、前記斜杭の位置が所定の位置であるか否かを確認するためには、例えば異なる2方向から測量対象物を測量する必要がある。
したがってこのような場合には、それぞれの2カ所に測量装置を設置するとともに、それぞれの2カ所に測量装置の操作者が必要であった。
しかしこの2方向からの測量では前記斜杭の角度を確認するのは非常に難しく、通常は、杭に直接傾斜計を当てて計測したり、杭打ち船のリーダーの角度等で代用していたので、さらに人員が必要であった。
このように、作業船の打設方位でだいたいの目安とするので正確な計測は困難であった。また、これらの作業は海上で、小型測量船を使用して行なうため波による動揺があり、安全上好ましく無かった。
【0006】
そこで、本発明は、測量対象の斜杭の場所や測量装置を設置した地点に作業者や操作者等の人員を配置しなくても、遠隔地などの別地点において、画像情報と測量情報とに基づいて前記斜杭の打設誘導や位置の確認などを行って打設管理する方法を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる斜杭の打設管理方法では、
所定方向を基準として、測量対象にある杭の第1地点を視準し、その視準方向の角度を計測して測量情報として出力する測量手段、
前記光軸方向を変更する駆動手段、
前記光軸方向の第1地点を含む画像を撮像して画像情報として出力する撮像手段、
前記測量手段にて得られた測量情報と、前記撮像手段にて得られた画像情報を遠隔地へ送信するとともに遠隔地から送信された制御信号を受信する通信手段、および
前記通信手段にて得られた制御信号に基づいて前記駆動手段を介して前記測量手段の光軸方法を変更するとともに前記撮像手段を制御する制御手段を備えた画像送信機能付き測量装置を少なくとも2台用いるとともに、
視準点の位置情報を光波を用いて測量する斜杭の打設管理方法であって、
1台の画像送信機能付き測量装置は位置情報が既知の第2地点に設置し、
他の1台の画像送信機能付き測量装置は位置情報が既知の第3地点に設置し、
第2地点に設置した画像送信機能付き測量装置から送信された第1地点の視準方向の角度を含む測量情報および画像情報と、第3地点に設置した画像送信機能付き測量装置から送信された第1地点の視準方向の角度を含む測量情報および画像情報と、第2地点の位置情報と、第3地点の位置情報とに基づいて、前記2つの画像情報を表示手段に表示させるとともに、
前記杭の所定部位の位置情報を、前記光波測量装置を用いて測量することによって、
前記杭の位置および傾斜角を高精度で測量して打設管理することを特徴としている。
請求項2では、
前記2つの画像情報とともに、前記杭の設計情報に基づいた補助線を前記表示手段に表示させることによって、前記杭の位置および傾斜角と、前記設計情報に基づいた位置および傾斜角とのずれを表示するように構成したことを特徴としている。
請求項3では、
前記杭の所定部位にプリズムを配置し、
前記光波測量装置で前記プリズムを視準することによって
前記2台の画像送信機能付き測量装置を用いて撮像した前記杭の所定部位の位置情報を補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1にかかる斜杭の打設管理方法によれば、
2台の画像送信機能付き測量装置とともに、視準点の位置情報を光波を用いて測量する光波測量装置を用い、斜杭の所定部位の位置情報を前記光波測量装置を用いて補正するので、前記2台の画像送信機能付き測量装置からの視準方向の交角の大小によらず、画像送信機能付き測量装置を用いた測量精度を向上させることがでる。また、斜杭の近くに人員を配置して斜杭の傾斜を計測する必要がなく、海上で打設する斜杭等のような直線部分を持った部材の傾斜も、画像を見ながら誘導することができるので、少ない人数で斜杭の打設管理が効率良く、また精度良く行える。
【0009】
請求項2では、
前記2つの画像情報とともに、前記杭の設計情報に基づいた補助線を前記表示手段に表示させることによって、前記杭の位置および傾斜角と、前記設計情報に基づいた位置および傾斜角とのずれを表示するように構成したので、斜杭の打設誘導が効率よく行える。
請求項3では、
前記杭の所定部位にプリズムを配置し、
前記光波測量装置で前記プリズムを視準することによって
前記2台の画像送信機能付き測量装置を用いて撮像した前記杭の所定部位の位置情報を補正することによって、海上で打設する斜杭等のような直線部分を持った部材の特定の部位の高さおよび/または位置も正確に測量することができるので、杭打ち作業等においては、所定の条件で杭を打ち込むことができ、斜杭の打設管理が効率良く、また精度良く行える。
このように、本発明による斜杭の打設管理方法では、海上の杭に近づかなくても杭の高さおよび/または位置と、杭の傾きの計測が可能であり、誰でも簡単に確認が出来るという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の斜杭の打設管理方法に用いる画像送信機能付き測量装置を示した図面に基づいて詳細に説明する。
図1、2において、
1は三脚等の架台101上に配設された従来同様の構成の測量装置本体である。
2は前記測量装置本体1に内蔵された駆動部であり、前記測量装置本体1を、前記架台101に対して相対的に移動させて、測量装置本体1の視準方向(光軸方向)を変更する。この駆動部2は、測量装置本体1の光軸方向を水平面内で回転移動させるための駆動機構と、光軸方向を垂直面内で回転移動させる駆動機構とを含んでいる。すなわち、垂直軸回りに回転させる駆動機構と、水平軸回りに回転させる駆動機構とを含んでいる。この駆動部2は、光軸方向の角度情報を出力するように構成されている。
【0011】
3は前記測量装置本体1に内蔵された測距部であり、例えばレーザ光もしくは赤外光を光軸方向に照射して、視準点からの反射光を検出することによって、例えば、照射光と反射光との位相差を検出することによって視準点までの距離を計測して、測量装置本体1が設置された地点から視準点の地点まで距離情報を出力するように構成されている。
4は前記測量装置本体1に内蔵された本体制御部であり、外部から入力された制御信号に基づいて前記駆動部2を制御することによって、前記測距部3の光軸方向を変更するように構成されている。
5は前記測量装置本体1に内蔵された望遠鏡であり、この望遠鏡5の光軸は前記測距部3の光軸と並行になるように調整されている。
なお、前記駆動部2と前記測距部3とで特許請求の範囲に記載された測量手段が構成されている。前記角度情報と前記距離情報とで測量情報が構成されている。
【0012】
本発明に用いる画像送信機能付き測量装置では、前記測量装置本体1の上部にはCCD撮像部8が取付機構80を介して取り付けられている。
6は、前記駆動部2を介して前記測量装置本体1の光軸方向を上下左右に回転移動させるための手動操作用の1対の回転ツマミである。6aは上下回転用のツマミ、6bは左右回転用のツマミである。
オペレータが、以上の構成の測量装置本体1を使用して測量する場合には、前記望遠鏡5の接眼部をオペレータの肉眼でのぞきながら、前記回転ツマミ6を操作して測量対象の地点を視準し、その視準点までの距離情報を前記測距部3によって得て、その視準点の角度情報を前記駆動部2によって得て、これらの測量情報を前記制御部4に取り込んで、表示部にて表示させることができる。
以上の測量装置本体1は、例えば、公知のトータルステーションと同等の機能を備えている。
【0013】
前記CCD撮像部8はズーム機能を備えた撮像手段であり、前記測量装置本体1に着脱可能もしくは一体に取り付けられている。このCCD撮像部8は、その撮像方向(光軸方向)にある視準点を含む画像を撮像して電気信号に変換して画像情報として出力するように構成されている。このCCD撮像部8の光軸は、前記望遠鏡5の光軸と並行になるように調整されている。このCCD撮像部8は、外部から入力される制御信号に応じてズーム倍率を増減制御するとともに、画像情報とともに撮像時点でのズーム倍率、シャッター速度などの撮像条件情報を出力するように構成されている。
なお、前記CCD撮像部8から出力される画像情報は動画もしくは静止画のいずれも選択可能である。
【0014】
9は回転ツマミ駆動装置であり、前記測量装置本体1に備えられた回転ツマミ6を遠隔操作するために着脱可能なユニットである。この回転ツマミ駆動装置を前記測量装置本体1に装着すると、1対の駆動ギア9a,9bの外周面の凹凸が前記回転ツマミ6a,6bの外周面の凹凸と噛み合うので、前記駆動ギア9a,9bを図示しないモータで正逆回転駆動することによって、オペレータが直接手動操作しているように、光軸方向を所望の方向に向けることができる。
【0015】
11は付加制御部であり、
前記CCD撮像部8から出力される画像情報と撮像条件情報、
前記本体制御部4から出力される距離情報と角度情報、および
を外部へ通信するための後述する通信部12へ出力する機能を備えているとともに、
前記通信部12を介して外部から入力された各制御信号を、それぞれの信号の制御対象に応じて本体制御部4、CCD撮像部8、回転ツマミ駆動部9へ出力する。
例えば、前記駆動部2、測距部3.望遠鏡5等を制御するための制御信号が入力された場合には、その制御信号を本体制御部4へ出力し、
CCD撮像部8のズーム倍率等の撮像条件を変更するための制御信号が入力された場合には、その制御信号をCCD撮像部8へ出力し、
CCD撮像部8の視準方向を変更する指示する制御信号が入力された場合には、その制御信号を回転ツマミ駆動部9に出力する。
81は補助線合成部であり、前記CCD撮像部8にて得られた画像情報に、垂直もしくは水平もしくは所定角度の補助線画像を生成して合成するように構成されている。なお、前記補助線画像は、前記CCD撮像部8もしくは前記付加制御部11の内部で生成して合成してもよい。
【0016】
なお、前記CCD撮像部8、回転ツマミ駆動装置9、および本体制御部4と、付加制御部11とを接続する接続ケーブル類は、前記駆動部2の動作に与える負荷を最小限とするように柔らかなケーブルを採用することが好ましい。
【0017】
12は通信部であり、
前記本体制御部4および前記付加制御部11を介して得られた視準点までの距離情報及び角度情報を含む測量情報と、
前記本体制御部4を介して得られた前記CCD撮像部8の画像情報、およびCCD撮像部8の撮像条件情報とを、
デジタル信号に変換して、有線式もしくは無線式の通信手段を介して遠隔地へ送信する送信機能を備えている。
また、遠隔地から送信された制御信号を受信して、前記付加制御部11へ出力する受信機能とを備えている。
10は、以上のように構成された本発明に用いる画像送信機能付き測量装置である。
【0018】
図3において、15はコントローラであり、遠隔地に居るオペレータが、前記通信部12を介して前記測量装置本体1と通信を行い、前記測量装置を制御操作するために、通信機能151を備えた携帯型のコンピュータ152で構成した。
前記コンピュータ152は、ハードディスク装置や半導体メモリなどの記憶手段を内蔵するとともに、前記測量装置本体1を遠隔制御するためのソフトウェアがインストールされており、前記測量装置本体1の通信部12から送信される測量情報、前記CCD撮像部8の画像情報、およびCCD撮像部8の撮像条件情報を、前記通信機能151で受信して、記憶媒体に保存するとともにディスプレイ153に表示する。
また、光軸方向を変更するための制御信号と、CCD撮像部のズーム機能等を制御するための制御信号と、測量装置本体1を制御するための制御信号等を入力するキーボード、タッチパネル、ジョイステック等の入力手段154とを備えるとともに、入力されたこれらの制御信号を前記ディスプレイ153に表示するとともに、前記通信機能151を用いて前記測量装置本体1の通信部12に送信する機能を備えている。
また、前記補助線合成部81の機能の全てもしくは一部の機能を、前記コントローラ15に内蔵してもよい。
【0019】
以上の測量装置を用いて斜杭の打設管理方法を実施する場合には、測量に先立って、次のように、上記構成の画像送信機能付き測量装置10のCCD撮像部8の光軸の調整を行っておく。
調整用のターゲットを使用して光軸合わせを行う。前記調整用のターゲットは、測量手段の測量軸の垂直方向上部にオフセットした位置にカメラ軸を表示している。
まず、測量手段による測量軸をあわせた状態で、CCD撮像部8の光軸をあわせる。この光軸あわせは、CCD撮像部8に備えられた機械的な光軸調整機構を用いて行うことができる。測量軸を視準するのに通常は自動視準機能を使用している。なお、目視による視準でも構わない。
このように測量手段の視準軸とCCD撮像部8の光軸とを平行にする光軸合わせを行うが、平行でなく、一定の相対関係でありさえすれば光軸を変化させた場合の角度の情報は相対的に知ることが可能である。
【実施例1】
【0020】
以上の構成の画像送信機能付き測量装置10を2台用いて、測量対象の第1地点Aに斜杭Pを打設する実施例1の場合の斜杭の打設管理方法を、図4を参照しつつ説明する。
図4において、第1地点Aには、打設杭を所定の角度で斜めに打設することのできる打設船が配置されている。なお、垂直な杭も、斜杭の特別な状態として斜杭に包含されるものとする。
第2地点Bと第3地点Cに、2台の画像送信機能付き測量装置10B、10Cを設置し、オペレータはコントローラ15とともに第4地点Dに居るものとする。なお、前記2つの測量装置10B、10Cの位置情報は、例えば後方交会等の方法で確定しておき、打設作業を開始する時点では既知となっているものとする。
【0021】
このとき、前記2つの測量装置10B、10Cの配置位置は、杭打設方向およびその直角方向であって、前記第1地点Aを視準する2つの視準方向で挟む角が90度になる位置とすると、打設が精度良く行いやすいが、90度に限定されるものではなく、その挟む角に応じて、打設すべき所定の角度を2つの測量装置の位置に応じて補正演算することによって、前記2つの測量装置の位置から見た場合の打設杭の角度を算出して、その角度に応じた補助線を生成してコントローラ15の画面に表示させればよい。
なお、第4地点Dは前記第1地点Aの近くでもよい。この場合、オペレータは打設船に乗船して、コントローラ15の画面を見ながら打設作業を行うことができる。
【0022】
オペレータは、前記コントローラ15に表示される2つの画像送信機能付き測量装置10B、10CのそれぞれのCCD撮像部からの画像を見る。
このとき、前記コントローラ15に備えられたジョイスティック等の入力手段を介して、各CCD撮像部のズーム機能を操作してパンさせたりズームさせたりすることができる。
【0023】
前記コントローラ15の画面には、図4に示したように、測量装置10Bから送信された第2地点から見た打設杭の画像D2と、測量装置10Cから送信された第3地点から見た打設杭の画像D3とが表示される。
前記コントローラ15の画面には、前記打設杭の画像D2とともに、打設すべき斜め角度に対応して演算して生成された補助線L2が表示され、前記打設杭の画像D3とともに、打設すべき斜め角度に対応して演算して生成された補助線画像L3が表示される。
図4に示した画像の例では、何れの画像の場合も杭の角度が立ち過ぎているので、前記打設杭の画像が前記補助線画像と重なるように、打設船を操作して調整する。
なお、前記打設杭の角度は以上のようにして所定の角度になるように調整しつつ打設杭の誘導を行うが、前記打設杭の打設位置は、GPS装置や、前記測量装置が備える測距機能を使用して計測し調整することができる。
【0024】
なお、以上のようにコントローラ15に表示される画像を見ながら打設杭を誘導する場合には、CCD撮像部8のズーム倍率を変えながら操作すると優れた操作性がえられる。
例えば、まず、打設の位置や角度を所定の設計位置や設計角度に合わせ込む場合には、はじめにはズーム倍率を小さくして、打設杭まわりの全体画像を把握しながら位置合わせ・角度合わせを行い、ほぼ合致してきたら、ズーム倍率を大きくして、打設杭の画像を拡大して表示させ、位置と角度の微調整を行うと、スムーズな位置合わせ・角度合わせが可能となる。
【0025】
以上の作業において、打設杭が複数ある場合には、順次1本ずつの杭を選んで誘導する。このとき、誘導対象の杭番号を選び、設計情報で指示された杭の属性(X座標、Y座標、Z座標、杭角度、杭方向角、杭の直径)と、前記測量装置の設置位置B、Cの位置関係から、杭方向(左接線、右接線、中心)を計算し、測量装置の視準軸を前記杭の左接線に振り向ける。なお、前記杭角度とは杭と水平面との成す角度であり、前記杭方向角とは前記杭を水平面に投影した線分の方向角である。
以上の設計情報に基づいて、当該測量装置から見た打設杭の見かけ上の角度を計算して、その角度の傾き線の画像を補助線画像として生成して表示する。
このように表示させて、測量装置の位置、CCD撮像部8のズーム倍率、補助線画像
を固定させた状態で、打設杭を移動させて、打設杭の角度を前記補助線画像に合わせる。このような位置合わせのための指示は、打設船上においてコントローラ15の画像を見ながら行ってもよいが、打設船とは異なる位置の第4地点においてコントローラ15の画像を見ながら行ってもよい。
【0026】
以上のように、斜杭の場合には、2つの異なる方向から視準するように画像送信機能付き測量装置を配置するとよい。
【0027】
図4に基づいて前述したように、前記2つの測量装置10B、10Cの配置位置は、前記第1地点Aを挟む角が90度になる位置とすると、打設が精度良く行えるが、90度に限定されるものではない。
【実施例2】
【0028】
そこで、以下においては、前記第1地点Aを挟む角が90度でない場合に精度を高めるために第3の計測装置として光波測量装置を追加した測量方法を説明する。
例えば、図5のように、一方の計測装置10Cを設置すべき90度方向が海上であるために計測装置10Cを設置可能な場所が確保できない場合や、図6のように、一方の計測装置10Cを設置すべき90度方向に桟橋等の障害物があって計測装置10Cを設置可能な場所からの見通しが困難である場合には、前記第1地点Aを挟む角が90度以外の方向に、計測装置10Cを設置せざるを得なくなる。
図5に示した実施例2の場合には、前記第1地点Aを挟む角が90度より小さくなる場所(陸地など)を第3地点として計測装置10Cを設置することができる。
【実施例3】
【0029】
また、例えば、図6に示した実施例3の場合には、前記第1地点Aを挟む角が90度より大きくなる場所(構造物の上など)を第3地点として計測装置10Cを設置することができる。
【0030】
図5の場合、前記2つの測量装置10B、10Cから前記第1地点Aを挟む角が90度より小さくなるので、前記2つの測量装置10B、10Cによって計測した打設杭の姿勢の精度が低下する。
この場合には、任意の第4地点に第3の測量装置として光波測量装置10Dを設置する。光波測量装置10Dは、画像送信機能付き測量装置である必要はなく、自動追尾機能を備えて前記打設杭の所定の部位を視準して、その位置(距離と方角)を連続的に計測してリアルタイムに、その位置(距離と方角)を送信する機能を備えていればよい。そのためには、打設杭の所定位置に設置したプリズムを視準して計測する通信機能を備えたトータルステーションや、打設杭の所定位置を視準して位置を計測するノンプリズム式の通信機能を備えたトータルステーションなどを使用することができる。
【0031】
前記プリズムを設置する場合には、打設杭に直接取り付けるか、打設杭に対して相対的な位置関係を保った状態で動く部材、例えば打設用のハンマーなどの部材に取り付ける。前記プリズムは前記打設杭の杭芯や前記部材の中心軸に直接取り付けることは困難であるので、前記プリズムを実際に取り付ける取付け位置と、杭芯もしくは中心軸との位置関係を予め計測し、また、前記取付け位置と、杭天端との位置関係を予め計測して、測量時の補正値として記録しておく必要がある。
【0032】
次に、実際の計測データを例示して、3つの測量装置を用いた打設杭の誘導方法を説明する。
打設杭の位置の設計情報が、水平面上に設定したX−Y−Z座標で与えられている場合で説明する。
打設中の杭に関しての設計情報で指示された杭の属性(X座標、Y座標、Z座標、杭角度、杭方向角、杭の直径)と、前記2つの測量装置10B、10Cの設置位置B、Cの位置関係から、杭方向(左接線、右接線、中心)を計算し、測量装置10B、10Cの視準軸を前記杭の左接線に振り向ける。そして、当該測量装置10B、10Cから見た打設杭の見かけ上の角度を計算して、その角度の傾き線の画像を補助線画像として生成して表示して、誘導の目標とする。
【0033】
このとき、前記2つの測量装置10B、10Cから前記第1地点Aを挟む角が90度より小さいので、前記2つの測量装置10B、10Cから見た打設杭の見かけ上の角度の計算値の誤差が大きくなる。
そこで、光波測量装置10Dの光波測量機能を用いて前記打設杭の所定の部位(プリズムの取付け位置、マーキングされた位置など)の位置を正確に測量する。このようにして測量した所定の部位の正確な位置情報と、設計情報とを比較して、打設杭の状態を正確に確認する。
【0034】
また、打設高さの確認については、光波測量装置10Dを用いて測量した前記打設杭の所定の部位(プリズムの取付け位置など)の位置情報(実測値)と、前記所定の部位と杭天端との位置関係(予め計測しておく。)に基づいた前記補正値とに基づいて、打設杭の現在の打設高さを算出し、設計情報に基づいた打設位置と打設高さ(設計値)とのずれを示して、打設杭の状態を正確に確認して、設計情報とのずれが無くなるように誘導する。
【0035】
図6に示した実施例3の場合、前記2つの測量装置10B、10Cから前記第1地点Aを挟む角が90度より大きくなるので、この場合も、前記2つの測量装置10B、10Cによって計測した打設杭の姿勢の精度が低下する。
図5の場合と同様に、光波測量装置を追加することによって、打設杭の位置を正確に測量して、精度の低下を防ぐことができる。
【0036】
このように、第3の測量装置として測距機能を備えた光波測量装置を用いることにより、2台の測量装置を用いて、前記第1地点Aを挟む角が90度より大きくずれる場合の、打設杭の誘導の誤差を低減することができる。
したがって、無理に90度の場所に測量櫓などを設定しなくてもよく、低コストで杭の誘導が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかる斜杭の打設管理方法に用いる画像送信機能付き測量装置の側面図である。
【図2】前記画像送信機能付き測量装置のブロック図である
【図3】本発明にかかる斜杭の打設管理方法に用いる測量装置のコントローラの説明図である
【図4】本発明にかかる斜杭の打設管理方法の実施例1の説明図である
【図5】実施例2の斜杭の打設管理方法の説明図である
【図6】実施例3の斜杭の打設管理方法の説明図である
【符号の説明】
【0038】
1 測量装置本体、測量装置
2 駆動部
3 測距部
4 本体制御部
5 望遠鏡
6 回転ツマミ
71 着脱構造
72 固定機構
73 バランス錘
8 CCD撮像部
81 補助線合成部
9 回転ツマミ駆動装置
10B、10C 画像送信機能付き測量装置
10D 光波測量装置
11 付加制御部
12 通信部
15 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向を基準として、測量対象にある杭の第1地点を視準し、その視準方向の角度を計測して測量情報として出力する測量手段、前記光軸方向を変更する駆動手段、前記光軸方向の第1地点を含む画像を撮像して画像情報として出力する撮像手段、前記測量手段にて得られた測量情報と、前記撮像手段にて得られた画像情報を遠隔地へ送信するとともに遠隔地から送信された制御信号を受信する通信手段、および前記通信手段にて得られた制御信号に基づいて前記駆動手段を介して前記測量手段の光軸方法を変更するとともに前記撮像手段を制御する制御手段を備えた画像送信機能付き測量装置を、少なくとも2台用いるとともに、視準点の位置情報を光波を用いて測量する、斜杭の打設管理方法であって、
1台の画像送信機能付き測量装置は位置情報が既知の第2地点に設置し、
他の1台の画像送信機能付き測量装置は位置情報が既知の第3地点に設置し、
第2地点に設置した画像送信機能付き測量装置から送信された第1地点の視準方向の角度を含む測量情報および画像情報と、第3地点に設置した画像送信機能付き測量装置から送信された第1地点の視準方向の角度を含む測量情報および画像情報と、第2地点の位置情報と、第3地点の位置情報とに基づいて、前記2つの画像情報を表示手段に表示させるとともに、
前記杭の所定部位の位置情報を、前記光波測量装置を用いて測量することによって、
前記杭の位置および傾斜角を高精度で測量して打設管理することを特徴とする斜杭の打設管理方法。
【請求項2】
前記2つの画像情報とともに、前記杭の設計情報に基づいた補助線を前記表示手段に表示させることによって、前記杭の位置および傾斜角と、前記設計情報に基づいた位置および傾斜角とのずれを表示するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の斜杭の打設管理方法。
【請求項3】
前記杭の所定部位にプリズムを配置し、
前記光波測量装置で前記プリズムを視準することによって
前記2台の画像送信機能付き測量装置を用いて撮像した前記杭の所定部位の位置情報を補正することを特徴とする請求項1、2の何れか1項に記載の斜杭の打設管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−191167(P2011−191167A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57275(P2010−57275)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(599098127)株式会社ソーキ (28)
【Fターム(参考)】