説明

断熱パネルおよびその製造方法

【課題】真空断熱材を外被材で覆った断熱パネルおよびその製造方法であって、断熱パネルの位置ずれ、および真空断熱材の真空破壊の発生を防止することができる断熱パネルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】断熱パネル1000は、真空断熱材100と、真空断熱材100を覆う外被材200と、当該断熱パネル1000を固定対象部材に固定するため、外被材200の表面26上に沿って接着された固定部材310a,310bとを備える。固定部材310a,310bを利用して断熱パネル1000を固定対象部材に固定することにより、据え付け後においては、断熱パネル1000の位置ずれが発生せず、また据え付け時においても、釘またはビスなどが真空断熱材100に向かって打ち付けられることがなく、真空断熱材100の内部の真空が破壊されることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空断熱材を外被材で覆った断熱パネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が大きな環境問題となっており、一般住宅においても電気、ガスまたは石油等のエネルギー消費量を減らすことが求められている。しかし、現実には地球温暖化の影響により夏季の平均気温は年々上昇し、一般住宅のエアコン等によるエネルギー使用量はむしろ増加する傾向にある。このような背景のもと、従来のグラスウールを用いた断熱材に代わって、高い断熱性能を有する真空断熱材を一般住宅における壁、床または天井などに固定するという技術が提案されている。
【0003】
一般的な真空断熱材は、芯材と、芯材を内部に密閉封止するガスバリア性フィルムとから構成されている(特許文献1,2参照)。真空断熱材は、建物の柱間に固定される(特許文献3,4参照)。
【0004】
図33を参照して、特許文献3、4に開示されている真空断熱材の固定方法について説明する。図33において、柱80,80、外壁材90、および内壁材92は、紙面垂直方向に延びて設けられている。真空断熱材100は、柱80,80、外壁材90、および内壁材92に囲まれた空間に配置されている。真空断熱材100は、芯材14と、芯材14を密閉封止するガスバリア性フィルム12とから構成されている。説明の便宜上、ガスバリア性フィルム12の両端において、ガスバリア性フィルム12同士が相互に溶着されているヒレ状の部分を、周縁部102,102と規定する。
【0005】
自然状態において、周縁部102を含めた真空断熱材100の全幅(紙面左右方向)は、柱80,80間の寸法より長く設定されている。真空断熱材100を、柱80,80間に挿入することにより、真空断熱材100のヒレ状に形成された周縁部102,102と柱80,80と間に摩擦力が生じる。真空断熱材100は、当該摩擦力により、柱80,80間に固定されている。
【0006】
ところが、摩擦力のみによる固定方法は、真空断熱材100を柱80,80間に簡易に固定することができる反面、経年劣化等により周縁部102と柱80との間に隙間が生じやすい。当該隙間が生じることにより、断熱性能は低下する。さらに、摩擦力のみによる固定方法は、真空断熱材100の位置ずれが生じやすい。当該位置ずれにより、断熱性能が低下するだけでなく、芯材14を覆っているガスバリア性フィルム12に損傷が生じ、真空断熱材100の内部の真空が破壊されてしまうこともある。
【0007】
図34を参照して、上記の隙間または位置ずれの発生を防止するために、釘またはビスなどの締結手段70を用いて真空断熱材100を柱80,80間に固定する方法もある。当該固定方法においては、締結手段70が真空断熱材100の周縁部102に貫通して設けられる。締結手段70が貫通している部分は、ガスバリア性フィルム12上の周縁部102において開口部を形成している。この開口部は、経年劣化等により芯材14を覆っている部分まで拡大し、真空断熱材100の内部の真空が破壊されてしまうことがある。
【0008】
図35を参照して、特許文献5に開示されている断熱パネルについて説明する。なお、図35においては、説明の便宜上、一部(一点鎖線で示される部分)を破断して図示している。図35に示すように、特許文献5における断熱パネル1は、真空断熱材100を発泡体104で覆う構成を採用している。
【0009】
ここで仮に、断熱パネル1(図35)を建物の柱間に固定する際、特許文献3、4に開示されるような摩擦力を利用して固定する方法を採用したとする。当該固定方法によれば、断熱パネル1と柱との間に生じる位置ずれの発生を抑制することができない。当該位置ずれにより隙間が発生し、断熱性能が低下する。
【0010】
また仮に、断熱パネル1(図35)を建物の柱間に固定する際、図34に示すような釘またはビスなどの締結手段を用いて固定する方法を採用したとする。当該固定方法によれば、発泡体104が真空断熱材100を覆っているため、外部から断熱パネル1の内部における真空断熱材100の位置を視認することができず、据え付け時において締結手段が誤った位置に打ち込まれることにより、真空断熱材100の内部の真空が破壊されてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−156193号公報
【特許文献2】特開2004−84847号公報
【特許文献3】特開2008−261221号公報
【特許文献4】特開2008−274755号公報
【特許文献5】特開2005−299697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、真空断熱材を外被材で覆った断熱パネルおよびその製造方法であって、断熱パネルの位置ずれ、および真空断熱材の真空破壊の発生を防止することができる断熱パネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に基づいた断熱パネルにおいては、真空断熱材と、上記真空断熱材を覆う外被材と、当該断熱パネルを固定対象部材に固定するため、上記外被材の表面上または上記外被材の端面上に沿って接着された固定部材とを備える。
【0014】
上記発明の他の形態においては、上記固定部材は、ベース部と立壁部とを有し、上記ベース部の表面は、上記外被材の上記表面上に接着され、上記立壁部は、上記ベース部の端部から、上記外被材が接着されている面と反対側に向かって延びて設けられる。
【0015】
上記発明の他の形態においては、上記固定部材は、上記外被材の上記表面上に接着され、上記固定部材は、上記外被材に接着された状態で、上記外被材の上記表面からさらに外側に向かってはみ出す延在部を有する。
【0016】
上記発明の他の形態においては、当該断熱パネルの固定後に生じる当該断熱パネルと上記固定対象部材との間の隙間を減らすため、上記外被材上の上記固定対象部材と向かい合う領域上に軟質発泡体が設けられている。
【0017】
上記発明の他の形態においては、上記軟質発泡体上の上記固定対象部材と向かい合う領域に接着剤が塗布されている。
【0018】
上記発明の他の形態においては、上記固定部材は、上記外被材の上記端面上に接着され、上記固定部材は嵌合部を有し、第1の当該断熱パネルにおける上記嵌合部と、第2の当該断熱パネルにおける上記嵌合部とを嵌合させることにより、第1および第2の当該断熱パネルどうしを連結することができる。
【0019】
上記発明の他の形態においては、上記固定部材は、上記外被材の上記端面上に接着され、上記固定部材は嵌合部を有し、上記外被材の上記端面上には、上記固定部材が接着されていない部分を含むように他の嵌合部が設けられ、第1の当該断熱パネルにおける上記嵌合部と、第2の当該断熱パネルにおける上記他の嵌合部とを突き合わせることにより、第1および第2の当該断熱パネルどうしを嵌合させることができる。
【0020】
上記発明の他の形態においては、上記固定部材は、上記外被材の上記端面上に接着され、上記外被材の上記端面上において、上記固定部材が接着されていない部分を含むように嵌合部が設けられ、第1の当該断熱パネルにおける上記嵌合部と、第2の当該断熱パネルにおける上記嵌合部とを突き合わせることにより、第1および第2の当該断熱パネルどうしを嵌合させることができる。
【0021】
この発明の第1の局面に基づいた断熱パネルの製造方法おいては、真空断熱材と、当該断熱パネルの製造方法により製造される断熱パネルを固定対象部材に固定するための固定部材と、液体原料と、所定の形状の空間を内部に形成することができる金型と、を準備する工程と、上記固定部材を上記空間の内部に挿入するとともに、上記固定部材を上記空間の内部の表面若しくは上記空間の内部の端面に沿うように保持する工程と、上記真空断熱材を上記空間の内部に挿入する工程と、上記液体原料を上記空間の内部に充填する工程と、上記液体原料を固形化することにより、上記真空断熱材を覆う外被材を形成する工程と、上記外被材から上記金型を剥離する工程とを備える。
【0022】
上記発明の他の形態においては、上記固定部材は、ベース部と、上記ベース部の端部から上記ベース部の一方の面に向かって延びて設けられる立壁部とを有し、上記金型は、上記空間の内部の上記表面から上記空間と反対方向に上記立壁部を逃がすための他の空間をさらに有し、上記立壁部が上記他の空間の内部に配置されるように、上記固定部材は上記空間の内部に挿入される。
【0023】
上記発明の他の形態においては、上記固定部材は、上記外被材に接着された後の状態で、上記外被材の上記表面からさらに外側に向かってはみ出す延在部を有し、上記金型は、上記空間の内部の上記端面から上記空間と反対方向に上記延在部を逃がすための他の空間をさらに有し、上記延在部が上記他の空間の内部に配置されるように、上記固定部材は上記空間の内部に挿入される。
【0024】
この発明の第1の局面に基づいた断熱パネルの製造方法おいては、真空断熱材と、当該断熱パネルの製造方法により製造される断熱パネルを固定対象部材に固定するための固定部材と、液体原料と、対向して配置される上面材および下面材と、を準備する工程と、連続して上記下面材を供給する工程と、上記下面材の表面に上記真空断熱材を載置する工程と、載置される上記真空断熱材の、上記下面材の供給方向における前方および/または後方に上記固定部材を配置する工程と、上記真空断熱材に向かって上記液体原料を散布する工程と、散布された上記液体原料の表面に対して連続して上記上面材を供給する工程と、上記液体原料を固形化することにより、上記真空断熱材を覆う外被材を形成する工程と、上記外被材を所定の形状に裁断する工程とを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、真空断熱材を外被材で覆った断熱パネルおよびその製造方法であって、断熱パネルの位置ずれ、および真空断熱材の真空破壊の発生を防止することができる断熱パネルおよびその製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1における断熱パネルを示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線に関する矢視断面図である。
【図3】実施の形態1の他の構成における断熱パネルを示す断面図である。
【図4】実施の形態1のさらに他の構成における一の断熱パネルを示す斜視図である。
【図5】実施の形態1のさらに他の構成における他の断熱パネルを示す斜視図である。
【図6】実施の形態2における断熱パネルを示す斜視図である。
【図7】図6におけるVII−VII線に関する矢視断面図である。
【図8】実施の形態2の他の構成における断熱パネルを示す断面図である。
【図9】実施の形態2の他の構成における断熱パネルを示す他の断面図である。
【図10】実施の形態2の他の構成における断熱パネルの断熱性能に関する比較実験の態様を示す断面図である。
【図11】実施の形態3における断熱パネルを示す斜視図である。
【図12】図11におけるXII−XII線に関する矢視断面図である。
【図13】実施の形態4における断熱パネルを示す斜視図である。
【図14】図13におけるXIV−XIV線に関する矢視断面図である。
【図15】実施の形態4における断熱パネルの複数を固定対象部材に固定している様子を示す断面図である。
【図16】実施の形態4における断熱パネルの複数が固定対象部材に固定された様子を示す断面図である。
【図17】実施の形態5における断熱パネルを示す斜視図である。
【図18】図17におけるXVIII−XVIII線に関する矢視断面図である。
【図19】実施の形態5における断熱パネルの複数を固定対象部材に固定している様子を示す断面図である。
【図20】実施の形態5における断熱パネルの複数が固定対象部材に固定された様子を示す断面図である。
【図21】実施の形態6における断熱パネルを示す斜視図である。
【図22】実施の形態6の他の構成における断熱パネルを示す斜視図である。
【図23】実施の形態7における断熱パネルを示す斜視図である。
【図24】図23におけるXXIV−XXIV線に関する矢視断面図である。
【図25】実施の形態7における断熱パネルの2つが嵌合された様子を示す斜視図である。
【図26】実施の形態7における断熱パネルの複数が嵌合された様子を示す斜視図である。
【図27】実施の形態1〜7における断熱パネルが固定された建物を示す斜視図である。
【図28】実施の形態8における断熱パネルの製造方法を示す断面図である。
【図29】実施の形態8における断熱パネルの製造方法に使用される金型を示す断面図である。
【図30】実施の形態9における断熱パネルの製造方法を示す断面図である。
【図31】実施の形態9における断熱パネルの製造方法に使用される金型を示す断面図である。
【図32】実施の形態10における断熱パネルの製造方法を示す断面図である。
【図33】真空断熱材を柱間に固定するための一般的な方法を示す断面図である。
【図34】真空断熱材を柱間に固定するための一般的な他の方法を示す断面図である。
【図35】真空断熱材を発泡体で覆った断熱パネルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施の形態)
以下、本発明に基づいた各実施の形態における断熱パネルおよびその製造方法について図面を参照しながら説明する。実施の形態1〜7において、本発明に基づいた断熱パネルについて説明する。実施の形態8〜10において、本発明に基づいた断熱パネルの製造方法について説明する。以下に説明する各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0028】
(実施の形態1:断熱パネル1000)
図1および図2を参照して、本発明に基づいた実施の形態1について説明する。図1においては、説明の便宜上、一部(一点鎖線で示される部分)を破断して図示している。なお、後述する図6,図11,図13および図17においても同様に、説明の便宜上、一部(一点鎖線で示される部分)を破断して図示している。
【0029】
図1を参照して、本実施の形態における断熱パネル1000は、真空断熱材100と、外被材200と、固定部材310a、310bとを備えている。
【0030】
真空断熱材100は、芯材14と、芯材14を内部に密閉封止するガスバリア性フィルム12とを有している。ガスバリア性フィルム12は芯材14を覆うとともに、芯材14が覆われている部分を真空状態に封止している。
【0031】
外被材200は、真空断熱材100の周りを覆うように設けられている。外被材200は板状に形成されており、表面25,26と、端面21〜24とを有している。
【0032】
固定部材310aは、外被材200の表面26上に沿って接着されている。固定部材310aは、外被材200の端面21と外被材200の端面23とを結ぶ方向において、所定の幅W1を有している。固定部材310aは、断熱パネル1000を、図示しない固定対象部材に固定することができる。
【0033】
図2を参照して、固定部材310aは、断熱パネル1000をたとえば柱80,80(固定対象部材)間に固定する。図2において、柱80,80は、紙面垂直方向に延びて設けられている。固定部材310aは、ベース部30と立壁部32,32とを有している。ベース部30の(紙面上方側の)表面と、外被材200の表面26とが接着されている。ベース部30は、外被材200の端面22側から端面24側にまで延びて設けられている。
【0034】
立壁部32,32は、ベース部30の両端部からベース部30に対して略直交し、かつベース部30の外被材200が接着されている面と反対側の方向(紙面下方)に向かって延びて設けられている。図2における立壁部32,32は、外被材200の端面22,端面24と略同一の平面上に設けられている。
【0035】
立壁部32の表面上には、立壁部32と直交する方向(紙面左右方向)に、締結手段70を設けることができる。締結手段70が釘またはビスなどである場合、締結手段70は立壁部32を貫通することができる。締結手段70がネジなどである場合、立壁部32はその表面上に開口部を有していてもよい。固定部材310b(図1)は、固定部材310aと略同様に構成されている。
【0036】
なお、図2における真空断熱材100は、外被材200の内部において紙面下方に偏って(固定部材310aと接するように)配置されているが、外被材200の紙面上下方向の中心寄りに(固定部材310aと接しないで)配置されていてもよい。
【0037】
芯材14、ガスバリア性フィルム12、外被材200、および固定部材310a,310bの各材料などは、たとえば次の通りである。
【0038】
真空断熱材100を構成する芯材14には、無機質粉末(多孔体)として、パーライト、沈降シリカ、またはエアロジル(乾式シリカの一種)などを使用するとよい。芯材14には、有機質粉末(多孔体)としてウレタン粉末を使用してもよい。芯材14には、無機質繊維としてガラス繊維を使用してもよい。芯材14には、有機質繊維としてプラスチック繊維を使用してもよい。芯材14には、有機質発泡体として、連通気泡ウレタンフォーム、エチレン発泡体、またはスチレン発泡体を使用してもよい。芯材14には、その他の金属、または有機質ハニカム構造体などを使用してもよい。
【0039】
真空断熱材100を構成するガスバリア性フィルム12には、ヒートシール可能な樹脂性のフィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはアクリルニトリル等を使用するとよい。ガスバリア性フィルム12には、ステンレス等の金属容器を使用してもよい。ガスバリア性フィルム12には、バリアー性をより向上させるために、アルミ箔、アルミ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)、シリカ蒸着PET(ポリエチレンテレフタレート)、およびエチレンビニルアルコール共重合体膜等を接着剤等により積層し、その外側をPET(ポリエチレンテレフタレート)またはナイロン等の保護シートによりラミネートしたものを使用してもよい。
【0040】
外被材200には、たとえば硬質ウレタンフォームを使用することができる。硬質ウレタンフォームは、アミン系の触媒または金属系の触媒として、ポリオールに反応を制御することができるものと、整泡剤として、フォーム中のセル形状を制御することができるシリコン等と、発泡剤として、プレミックスに水、シクロペンタン、HFC141b、HFC245faまたはHFC365等を加えたものと、イソシアネートとを混合して成型するとよい。外被材200には硬質ウレタンフォーム以外にも、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、またはポリエチレンフォームなどを使用してもよい。
【0041】
固定部材310a,310bには、金属材料として、鉄、SUS(ステンレス)、またはAL(アルミニウム)等を使用するとよい。固定部材310a,310bには、樹脂材料として、ABS(アクリル、ブタジエン、およびスチレンの共重合体)、PP(ポリプロピレン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、または塩化ビニル等を使用してもよい。
【0042】
(作用・効果)
図2を参照して、固定部材310a(または固定部材310b、以下同じ)の立壁部32を利用して、断熱パネル1000を固定対象部材に固定することができる。具体的には、断熱パネル1000を柱80,80間に配置する。次に、締結手段70を立壁部32の内側から外側(柱80側)に向かって貫通させる。締結手段70と柱80とが、固定部材310aの立壁部32を挟み込む(締結する)ことにより、断熱パネル1000が柱80,80間に固定される。
【0043】
固定部材310a(の立壁部32)を利用して、断熱パネル1000を柱80,80間に固定するため、据え付け後、断熱パネル1000の位置が柱80,80間においてずれることを防止することができる。
【0044】
外被材200が真空断熱材100の周りを覆うように設けられている。外部から断熱パネル1000内部における真空断熱材100の位置を視認することができないが、固定部材310aの立壁部32を利用して、断熱パネル1000を固定対象部材に固定することができる。立壁部32の位置と真空断熱材100の位置とは離れており、立壁部32の表面上には、立壁部32と直交する方向に締結手段70を設けることができる。据え付け時において、釘またはビスなどの締結手段70が真空断熱材100に向かって打ち付けられることがなく、真空断熱材100の内部の真空が破壊されることを防止することができる。
【0045】
(実施の形態1の他の構成:断熱パネル1001)
図3を参照して、実施の形態1の他の構成における断熱パネル1001について説明する。外被材200の端面22および外被材200の端面24に沿って、軟質発泡体40,40がそれぞれ設けられている。
【0046】
外被材200の端面22(または端面24、以下同じ)と柱80とが向かい合うように断熱パネル1001が配置されると、端面22と柱80との間に隙間が生じる場合がある。軟質発泡体40は、当該隙間を減らすことができる。当該隙間に流れる空気の量が減り、実施の形態1の断熱パネル1000に比べて高い断熱性能を得ることができる。
【0047】
軟質発泡体40の柱80と向かい合う側の表面に、さらに接着剤42が塗布されていてもよい。上記の隙間の幅(紙面左右方向)より軟質発泡体40の幅の方が大きい場合、接着剤42は軟質発泡体40と柱80とを接着する。上記隙間は封止され、より高い断熱性能を得ることができる。害虫などが外部から侵入することも防止できる。軟質発泡体40の材料には、軟質ウレタンフォーム、軟質エチレンフォームまたは塩ビフォームなどを用いるとよい。
【0048】
なお、軟質発泡体40を設けない場合は、断熱パネル1001を固定対象部材に固定した後、スプレー式の発砲ウレタンフォーム、またはシリコンシール材などを用いて上記隙間を封止してもよい。
【0049】
また、固定部材310aのベース部30の、立壁部32,32が延びている方の面に、さらに板状の他の外被材210が接着されていてもよい。断熱パネル1001の断熱性能および剛性が向上する。
【0050】
(実施の形態1のさらに他の構成)
図4および図5を参照して、実施の形態1のさらに他の構成における断熱パネル1002,1003について説明する。断熱パネル1000(実施の形態1、以下同じ)は、固定部材310aおよび固定部材310bの2つを備えているが(図1参照)、これに限られない。
【0051】
図4を参照して、断熱パネル1002は、1つの固定部材314を備えている。固定部材314のベース部30が、外被材200の表面26全体に沿って設けられている。固定部材314の立壁部32は、外被材200の端面21側から端面23側にまで延びて設けられている。立壁部32上には、複数の開口部34,34が設けられている。ネジなどの締結手段70を開口部34の内側から外側(柱80側)に向かって貫通させることで、断熱パネル1002を固定対象部材(図示せず)に固定することができる。
【0052】
固定部材314のベース部30および立壁部32が、断熱パネル1000に比べて広範囲に設けられている。ベース部30および立壁部32においては、断熱パネル1000に比べて大きな曲げ剛性を有している。断熱パネル1002を柱間に固定することにより、建物全体としての剛性を大きく向上させることができる。建物全体としての剛性を向上させる必要が無い場合、建物を構成している柱などの数を減らすことができる。
【0053】
建物を構成している柱などの数が減ると、残りの柱同士の間隔は広がる。柱同士の間隔が広がると、柱間に固定する断熱パネル1002の大きさを大きくすることが可能となり、作業工数の削減にも繋がる。
【0054】
断熱パネル1002の立壁部32においては、断熱パネル1000に比べて広範囲にわたって締結手段を設けることができる。より強固に断熱パネル1002を柱間に固定することができる。
【0055】
図5を参照して、断熱パネル1003のように、立壁部32,32が、さらに外被材200の端面21側および端面23側に設けられていてもよい。外被材200の端面21側および端面23側に設けられた立壁部32,32を用いて、断熱パネル1003を天井や床を構成する梁などにも固定することができる。
【0056】
(実施の形態2:断熱パネル2000)
図6および図7を参照して、本発明に基づいた実施の形態2について説明する。図6を参照して、本実施の形態における断熱パネル2000は、真空断熱材100と、外被材200と、固定部材320a、320bとを備えている。
【0057】
真空断熱材100および外被材200の構成は、上述の実施の形態1と同様であるため、その説明を繰り返さないものとする。
【0058】
固定部材320aは、外被材200の表面26上に沿って接着されている。固定部材320aは、外被材200の端面21と外被材200の端面23とを結ぶ方向において、所定の幅W2を有している。固定部材320aは、断熱パネル2000を図示しない固定対象部材に固定することができる。
【0059】
図7を参照して、固定部材320aは、断熱パネル2000をたとえば柱80,80(固定対象部材)間に固定する。固定部材320aは帯状に形成されており、外被材200に接着された状態で、外被材200の表面26からさらに外側(紙面左右方向)に向かってはみ出す延在部36,36を有している。
【0060】
延在部36の表面上には、延在部36と直交する方向(紙面上下方向)に、締結手段70を設けることができる。延在部36はその表面上に開口部を有していてもよい。固定部材320bは、固定部材320aと略同様に構成されている。
【0061】
(作用・効果)
固定部材320a(または固定部材320b、以下同じ)の延在部36を利用して、断熱パネル2000を固体対象部材に固定することができる。具体的には、断熱パネル2000を柱80,80間に配置する。次に、締結手段70を延在部36の表面側から裏面側(柱80側)に向かって貫通させる。締結手段70と柱80とが、固定部材320aの延在部36を挟み込む(締結する)ことにより、断熱パネル2000が柱80,80間に固定される。
【0062】
固定部材320a(の延在部36)を利用して、断熱パネル2000を柱80,80間に固定するため、据え付け後、断熱パネル2000の位置が柱80,80間においてずれることを防止することができる。
【0063】
延在部36の位置と真空断熱材100の位置とは離れており、延在部36の表面上には、延在部36と直交する方向に締結手段70を設けることができる。据え付け時において、釘またはビスなどの締結手段70が真空断熱材100に向かって打ち付けられることがなく、真空断熱材100の内部の真空が破壊されることを防止することができる。
【0064】
一般的に、断熱パネル2000が固定された後、外壁材(90)(図9参照)が柱80,80の表面側(紙面上方側)に固定される。外壁材は、微小な釘などの締結手段(71,71)で柱80,80に固定される。
【0065】
外壁材を柱80,80に固定するとき、外壁材が設けられている側から断熱パネル2000内部における真空断熱材100の位置を視認することができない。締結手段(71)が誤った位置に打ち込まれることにより、仮に固定部材320aが外被材200の表面26上に設けられていないと、微小な釘が真空断熱材100にまで到達し、真空断熱材100の内部の真空が破壊されてしまう。
【0066】
断熱パネル2000によれば、所定の幅W2を有する固定部材320a(および固定部材320b)が、外被材200の表面26上に沿って接着されていることにより、誤った位置に打ち込まれた微小な締結手段71が真空断熱材100にまで到達することを防止する。真空断熱材100の内部の真空が破壊されることを防止できる。
【0067】
(実施の形態2の他の構成:断熱パネル2001)
図8を参照して、実施の形態2の他の構成における断熱パネル2001について説明する。断熱パネル1001(実施の形態1の他の構成、以下同じ)と同様に、外被材200の端面22および外被材200の端面24に沿って、軟質発泡体40,40がそれぞれ設けられている。
【0068】
軟質発泡体40は、外被材200の端面22(または端面24、以下同じ)と柱80との間に生じる隙間を減らすことができる。当該隙間に流れる空気の量が減り、実施の形態2の断熱パネル2000に比べて高い断熱性能を得ることができる。
【0069】
断熱パネル1001と同様に、軟質発泡体40の柱80と向かい合う側の表面に、さらに接着剤42が塗布されていてもよい。上記の隙間の幅より軟質発泡体40の幅の方が大きい場合、接着剤42は軟質発泡体40と柱80とを接着する。上記隙間は封止され、より高い断熱性能を得ることができる。害虫などが外部から侵入することも防止できる。
【0070】
図8に示すように、外被材200の表面25側に、さらに保護板50が設けられていてもよい。
【0071】
図9を参照して、一般的に、断熱パネル2001が柱80,80間に固定された後、外壁材90に加えて、内壁材92が柱80,80に固定される。内壁材92は、微小な釘などの締結手段71,71により柱80,80に固定される。
【0072】
内壁材92を柱80,80に固定するとき、内壁材92が設けられている側から断熱パネル2001の内部における真空断熱材100の位置を視認することができない。締結手段71が誤った位置に打ち込まれることにより、仮に保護板50が外被材200の表面25上に設けられていないと、締結手段71が真空断熱材100にまで到達し、真空断熱材100の内部の真空が破壊されてしまう。
【0073】
断熱パネル2001によれば、保護板50が、外被材200の表面25上に設けられていることにより、誤った位置に打ち込まれた締結手段71が真空断熱材100にまで到達することを防止する。真空断熱材100の内部の真空が破壊されることを防止できる。
【0074】
断熱パネル2000(実施の形態2)は、固定部材320aおよび固定部材320bの2つを備えているが(図6参照)、これに限られない。断熱パネル1002(実施の形態1のさらに他の構成)と同様に、本実施の形態における断熱パネル2001は、剛性を向上させる観点、および真空破壊防止の観点から、外被材200の表面26全体に沿って設けられる1つの固定部材を備えていてもよい。保護板50も同様に、外被材200の表面25全体を覆うように設けられていてもよい。
【0075】
(実施の形態2の他の構成に関する比較実験結果)
上記の実施の形態2の他の構成(断熱パネル2001)に関し、断熱パネル2001を柱80,80間に固定し、さらに外壁材90および内壁材92を柱80,80の表面に固定した状態(実際の使用状態に近い状態)において、断熱性能に関する比較実験を行なった。
【0076】
図10を参照して、上部に開口を有する断熱容器85の中に、(図中下から順番に、)板状の銅板89、内壁材92、柱80,80、柱80,80間に固定された断熱パネル2001、外壁材90、シリコンシート83を順次積み上げるように収容した。
【0077】
銅板89には、熱源として複数のヒーター87,87を設けた。シリコンシート83には、柱80,80付近と、断熱パネル2001の中央付近とに、温度センサー84をそれぞれ設けた。シリコンシート83には温度センサー84の他に、柱80付近と、断熱パネル2001の中央付近とに、熱流センサー84Sをそれぞれ設けた。熱流センサー84Sには、昭和電工株式会社製Shothrm HFM熱流計の熱流センサー(大きさ50mm×100mm×5mm)を使用した。シリコンシート83の厚さは約5mmとした。
【0078】
シリコンシート83の表面には、水86と多数の氷88とを入れたポリエチレンの袋を載置した。この状態で、銅板89(温端に相当)の温度が約30℃になるようにヒーター87を制御した。温度センサー84(冷端に相当)により、温度センサー84が配置されている各位置における単位面積当たりの熱流Qを測定した。
【0079】
熱流Q(W/m)と、熱伝導率λ(W/mK)と、断熱パネル2001の厚さL(m:固定部材320a〜保護板50間の寸法)と、ΔT(温端温度−冷端温度(K))との間には、λ=Q×L÷ΔTの関係が有り、複合材料の平均の熱伝導率を算出することができる。
【0080】
上記の結果、柱80,80付近における熱流Qは、5.4(W/m)であった。断熱パネル2001の中央付近における熱流Qは、0.69(W/m)であった。
【0081】
一方、上記の実験の態様から、固定部材320aと保護板50と軟質発泡体40とを除いた態様により、同様の実験を行なった。その結果、柱80,80付近における熱流Qは、6.8(W/m)であった。断熱パネルの中央付近における熱流Qは、0.8(W/m)であった。固定部材320aと保護板50と軟質発泡体40とを備えた断熱パネル2001の方が、断熱性能に優れていることがわかる。
【0082】
なお、固定部材320aと保護板50と軟質発泡体40とを備えた断熱パネル2001において、柱80,80付近の熱伝導率λを、上記の式(λ=Q×L÷ΔT:熱流値Q,厚さL,ΔT)に基づき算出すると、0.0023(W/mK)である。この熱伝導率λは、外被材200と真空断熱材100との合成の熱伝導率に近い値となっている。
【0083】
一方、固定部材320aと保護板50と軟質発泡体40とを除いた態様において、同様に柱80,80付近の熱伝導率λを、上記の式に基づき算出すると、0.0027(W/mK)である。このことからも、固定部材320aと保護板50と軟質発泡体40とを備えた断熱パネル2001の方が、断熱性能に優れていることがわかる。
【0084】
(実施の形態3:断熱パネル3000)
図11および図12を参照して、本発明に基づいた実施の形態3について説明する。図11を参照して、本実施の形態における断熱パネル3000は、真空断熱材100と、外被材200と、固定部材330とを備えている。真空断熱材100および外被材200の構成は、上述の実施の形態1と同様である。
【0085】
固定部材330は、外被材200の端面22上に沿って接着(埋設)されている。固定部材330は、外被材200の端面21と外被材200の端面23とを結ぶ方向において、所定の幅W3を有している。固定部材330は、断熱パネル3000を図示しない固定対象部材に固定することができる。
【0086】
図12を参照して、固定部材330は、断熱パネル3000をたとえば柱80,80間の外側(表面82側)に固定する。本実施の形態における断熱パネル3000は、いわゆる外壁断熱構造に用いることができる。
【0087】
固定部材330は、嵌合部38aを有している。嵌合部38aは、外被材の端面22から、さらに(紙面右方向に)突出して設けられている。固定部材330の嵌合部38aは、同一の形状を有する他の固定部材330の嵌合部38aと嵌合することができる。図12に示すように、固定部材330の断面形状はたとえば略L字状(上下反対)であり、(紙面右方向に)突出している部分が嵌合部38aである。ここでは、嵌合部38aの形状は直方体である。
【0088】
嵌合部38aの(紙面上方側の)表面上には、嵌合部38aと直交する方向(紙面上下方向)に、締結手段70を設けることができる。嵌合部38aはその表面上に開口部を有していてもよい。
【0089】
(作用・効果)
固定部材330の嵌合部38aを利用して、断熱パネル3000を他の断熱パネル(3000a)と連結させた状態で、固体対象部材に固定することができる。具体的には、図12に示すように、断熱パネル3000と、断熱パネル3000と同一の構成を有する断熱パネル3000aとを準備する。図12において、断熱パネル3000aの嵌合部38aaは、断熱パネル3000の嵌合部38aに対応している。
【0090】
断熱パネル3000の嵌合部38aと断熱パネル3000aの嵌合部38aaとを嵌合させることにより、断熱パネル3000と断熱パネル3000aとを連結する。この状態で、断熱パネル3000と断熱パネル3000aとを柱80の表面82側に配置する。
【0091】
次に、締結手段70を、断熱パネル3000の嵌合部38aと、これと嵌合している断熱パネル3000aの嵌合部38aaとに貫通させる。締結手段70と柱80とが、断熱パネル3000の嵌合部38aと、これと嵌合している断熱パネル3000aの嵌合部38aaとを挟み込む(締結する)ことにより、断熱パネル3000,3000aは、連結された状態で柱80,80の表面82上に固定される。
【0092】
断熱パネル3000の固定部材330(の嵌合部38a)と,断熱パネル3000aの固定部材330(の嵌合部38aa)とを利用して、断熱パネル3000,3000aを柱80,80の表面82上に固定するため、据え付け後、断熱パネル3000,3000aの位置が柱80,80の表面82上においてずれることを防止することができる。
【0093】
嵌合部38a(および嵌合部38aa、以下同じ)の位置と真空断熱材100の位置とは離れており、嵌合部38aの表面上には、嵌合部38aと直交する方向に締結手段70を設けることができる。据え付け時において、釘またはビスなどの締結手段70が真空断熱材100に向かって打ち付けられることがなく、真空断熱材100の内部の真空が破壊されることを防止することができる。
【0094】
(実施の形態4:断熱パネル4000)
図13〜図16を参照して、本発明に基づいた実施の形態4について説明する。図13を参照して、本実施の形態における断熱パネル4000は、真空断熱材100と、外被材200と、固定部材340と、固定部材342と、表面材60とを備えている。真空断熱材100および外被材200の構成は、上述の実施の形態1と同様である。
【0095】
固定部材340は、外被材200の端面24上に沿って接着(埋設)されている。固定部材340は、外被材200の端面21と外被材200の端面23とを結ぶ方向において、所定の幅W4を有している。固定部材340は、嵌合部38aを有している。
【0096】
固定部材342は、外被材200の端面22上に沿って接着(埋設)されている。固定部材342は、外被材200の端面21と外被材200の端面23とを結ぶ方向において、所定の幅W4を有している。固定部材342は、断熱パネル4000を図示しない固定対象部材に固定することができる。固定部材342は、嵌合部38bを有している。
【0097】
断熱パネル3000(実施の形態3)においては、固定部材330(図11参照)が外被材200の一方の端面22上にのみ沿って接着されている。断熱パネル4000(本実施の形態)においては、固定部材340および固定部材342が、外被材200の双方の端面24,22上に沿ってそれぞれ接着されている。
【0098】
表面材60は、意匠上の観点から、外被材200の表面26上の全体にわたって設けられている。表面材60は、外被材200の表面26側において、外被材200および固定部材340,342を覆い隠すように設けられている。
【0099】
図14を参照して、固定部材342(および固定部材340)は、断熱パネル4000をたとえば柱80,80間の外側(表面82側)に固定する。本実施の形態における断熱パネル4000は、いわゆる外壁断熱構造に用いることができる。
【0100】
固定部材340の嵌合部38aは、外被材の端面24から、さらに(紙面左方向に)突出して設けられている。固定部材342の嵌合部38bは、外被材の端面22から、(紙面左方向に)窪んで設けられている。
【0101】
固定部材340の嵌合部38aは、同一の形状を有する他の断熱パネルにおける固定部材342の嵌合部38bと嵌合することができる。図14に示すように、固定部材340の断面形状はたとえば略L字状(上下反対)であり、(紙面左方向に)突出している部分が嵌合部38aである。ここでは、嵌合部38aの断面形状は直方体である。固定部材342の断面形状もたとえば略L字状であり、(紙面左方向に)窪んでいる部分が嵌合部38bである。ここでは、窪んでいる部分の形状は、上記嵌合部38aと同様な直方体である。
【0102】
固定部材342の(紙面下方側の)表面上には、固定部材342と直交する方向(紙面上下方向)に、締結手段70を設けることができる。固定部材342はその表面上に開口部を有していてもよい。
【0103】
(作用・効果)
固定部材340の嵌合部38aおよび固定部材342の嵌合部38bを利用して、断熱パネル4000を他の断熱パネル(4000a)と連結させた状態で、固体対象部材に固定することができる。
【0104】
図15を参照して、具体的には、断熱パネル4000と、断熱パネル4000と同一の構成を有する断熱パネル4000aとを準備する。
【0105】
まず断熱パネル4000を、柱80に固定された外壁材90の表面に配置する(紙面右)。締結手段70を、断熱パネル4000の固定部材342から柱80にまで貫通させる。締結手段70と柱80とが、断熱パネル4000の固定部材342を挟み込む(締結する)ことにより、断熱パネル4000が外壁材90の表面に固定される。
【0106】
次に断熱パネル4000aを外壁材90の表面に配置する。断熱パネル4000の嵌合部38bと断熱パネル4000aの嵌合部38aとを嵌合させる。断熱パネル4000aの嵌合部38aは、断熱パネル4000の嵌合部38bと外壁材90とに挟み込まれる。断熱パネル4000と断熱パネル4000aとは連結される。
【0107】
次に締結手段70を、断熱パネル4000aの固定部材342から柱80にまで貫通させる(紙面中央)。締結手段70と柱80とが、断熱パネル4000aの固定部材342を挟み込む(締結する)ことにより、断熱パネル4000aが外壁材90の表面に固定される。
【0108】
図16を参照して、断熱パネル4000,4000aは連結された状態で、外壁材90の表面に固定される。断熱パネル4000,4000aのように、複数の断熱パネル4000を繰り返し連結して外壁材90の表面に固定してもよい。
【0109】
なお、図15および図16に示すように、外壁材90の(紙面左)端部においては、断熱パネル4000bを採用するとよい。断熱パネル4000bの固定部材340には嵌合部38aが設けられているが、意匠上の観点から、断熱パネル4000bの固定部材344には嵌合部が設けられていない。また、断熱パネル4000,4000aおよび4000bのさらに表面に、微小なネジなどの他の締結手段71を用いてセラミックボードなどのパネル94を固定してもよい。
【0110】
断熱パネル4000の固定部材342(の嵌合部38b)と,断熱パネル4000aの固定部材340(の嵌合部38a)とを利用して、断熱パネル4000,4000aを、外壁材90を挟んで柱80,80の表面に固定するため、据え付け後、断熱パネル4000,4000aの位置が外壁材90の表面上においてずれることを防止することができる。
【0111】
固定部材342の位置と真空断熱材100の位置とは離れており、固定部材342の表面上には、固定部材342と直交する方向に締結手段70を設けることができる。据え付け時において、釘またはビスなどの締結手段70が真空断熱材100に向かって打ち付けられることがなく、真空断熱材100の内部の真空が破壊されることを防止することができる。
【0112】
(実施の形態5:断熱パネル5000)
図17〜図20を参照して、本発明に基づいた実施の形態5について説明する。図17を参照して、本実施の形態における断熱パネル5000は、真空断熱材100と、外被材200と、固定部材350と、表面材60とを備えている。真空断熱材100および表面材60の構成は、上述の実施の形態5において説明したのと同様である。
【0113】
固定部材350は、外被材200の端面22上に沿って接着(埋設)されている。固定部材350は、外被材200の端面21と外被材200の端面23とを結ぶ方向において、所定の幅W5を有している。固定部材350は、断熱パネル5000を図示しない固定対象部材に固定することができる。固定部材350は、嵌合部38を有している。
【0114】
本実施の形態における外被材200は、嵌合部28を有している。嵌合部28は、外被材200の端面24上に設けられている。嵌合部28は、外被材200の端面21と外被材200の端面23とを結ぶ方向において、所定の幅W5を有している。
【0115】
図18を参照して、固定部材350は、断熱パネル5000をたとえば柱80,80間の外側(表面82側)に固定する。本実施の形態における断熱パネル5000は、いわゆる外壁断熱構造に用いることができる。
【0116】
外被材200の嵌合部28は、外被材の端面24から、さらに(紙面左方向に)突出して設けられている。固定部材350の嵌合部38は、外被材の端面22から、(紙面左方向に)窪んで設けられている。
【0117】
固定部材350の嵌合部38は、同一の形状を有する他の断熱パネルにおける外被材200の嵌合部28と嵌合することができる。図18に示すように、外被材200の嵌合部28の形状はたとえば直方体である。固定部材350の断面形状はたとえば略L字状であり、(紙面左方向に)窪んでいる部分が嵌合部38である。ここでは、窪んでいる部分の形状は、上記嵌合部28と同様な直方体である。
【0118】
固定部材350の(紙面下方の)表面上には、固定部材350と直交する方向(紙面上下方向)に、締結手段70を設けることができる。固定部材350はその表面上に開口部を有していてもよい。
【0119】
(作用・効果)
外被材200の嵌合部28および固定部材350の嵌合部38を利用して、断熱パネル5000を他の断熱パネル(5000a)と連結させた状態で、固体対象部材に固定することができる。
【0120】
図19を参照して、具体的には、断熱パネル5000と、断熱パネル5000と同一の構成を有する断熱パネル5000aとを準備する。さらに、外壁材90の(紙面左)端部に固定するための、断熱パネル5000bを準備する。断熱パネル5000bの外被材200には嵌合部28が設けられているが、意匠上の観点から、断熱パネル5000bの固定部材352には嵌合部が設けられていない。
【0121】
まず断熱パネル5000bを、柱80に固定された外壁材90の表面端部(紙面左)に配置する。締結手段70を、断熱パネル5000bの固定部材352から柱80にまで貫通させる。締結手段70と柱80とが、断熱パネル5000bの固定部材352を挟み込む(締結する)ことにより、断熱パネル5000bが外壁材90の表面に固定される。
【0122】
次に断熱パネル5000aを外壁材90の表面に配置する。断熱パネル5000bの嵌合部28と断熱パネル5000aの嵌合部38とを嵌合させる。断熱パネル5000bの嵌合部28は、断熱パネル5000aの嵌合部38と外壁材90とに挟み込まれる。断熱パネル5000bと断熱パネル5000aとは連結される。
【0123】
次に締結手段70を、断熱パネル5000aの固定部材350から柱80にまで貫通させる(紙面中央)。締結手段70と柱80とが、断熱パネル5000aの固定部材350を挟み込む(締結する)ことにより、断熱パネル5000aが外壁材90の表面に固定される。
【0124】
同様にして、断熱パネル5000を外壁材90の表面に配置する。断熱パネル5000aの嵌合部28と断熱パネル5000の嵌合部38とを嵌合させる。締結手段70を、断熱パネル5000の固定部材350から柱80にまで貫通させる。締結手段70と柱80とが、断熱パネル5000の固定部材350を挟み込む(締結する)ことにより、断熱パネル5000が外壁材90の表面に固定される。
【0125】
図20を参照して、断熱パネル5000,5000aおよび5000bは連結された状態で、外壁材90の表面に固定される。断熱パネル5000,5000aのように、複数の断熱パネル5000を繰り返し連結して外壁材90の表面に固定してもよい。また、断熱パネル5000,5000aおよび5000bのさらに表面に、微小なネジなどの他の締結手段71を用いてパネル94を固定してもよい。
【0126】
断熱パネル5000の外被材200(の嵌合部28)と,断熱パネル5000aの固定部材350(の嵌合部38)とを利用して、断熱パネル5000,5000aを、外壁材90を挟んで柱80,80の表面82上に固定するため、据え付け後、断熱パネル5000,5000aの位置が外壁材90の表面上においてずれることを防止することができる。
【0127】
固定部材350の位置と真空断熱材100の位置とは離れており、固定部材350の表面上には、固定部材350と直交する方向に締結手段70を設けることができる。据え付け時において、釘またはビスなどの締結手段70が真空断熱材100に向かって打ち付けられることがなく、真空断熱材100の内部の真空が破壊されることを防止することができる。
【0128】
(実施の形態6:断熱パネル6000)
図21および図22を参照して、本発明に基づいた実施の形態6について説明する。図21を参照して、本実施の形態における断熱パネル6000は、真空断熱材100と、外被材200と、固定部材360と、固定部材362とを備えている。
【0129】
断熱パネル6000は、断熱パネル4000(実施の形態4:図13参照)の構成と略同様であるが、次の点において相違している。断熱パネル6000の固定部材360,362の表面には、さらに凹凸が設けられている。
【0130】
より具体的に説明する。断熱パネル6000の固定部材360は、嵌合部38aを有している。本実施の形態における嵌合部38aにおいては、略同一平面上の表面を有する端面部38a1,38a1と、外側(紙面右方向)に向かって突出する凸部38a2とが設けられている。
【0131】
断熱パネル6000の固定部材362は、嵌合部38bを有している。本実施の形態における嵌合部38bにおいては、略同一平面上の表面を有する端面部38b1,38b1と、内側(紙面右方向)に向かって窪んでいる凹部38b2とが設けられている。
【0132】
固定部材360の端面部38a1,38a1および凸部38a2は、同一の形状を有する他の断熱パネルにおける固定部材362の端面部38b1,38b1および凹部38b2と嵌合することができる。図21に示すように、凸部38a2(および凹部38b2)の形状はたとえば直方体である。図22に示すように、凸部38a2(および凹部38b2)の形状は、三角柱状であってもよい。
【0133】
(作用・効果)
固定部材360の嵌合部38aおよび固定部材362の嵌合部38bを利用して、断熱パネル6000を他の断熱パネル(6000a)とより強固に連結させた状態で、固体対象部材に固定することができる。
【0134】
具体的には、断熱パネル6000と、断熱パネル6000と同一の構成を有する断熱パネル6000aとを準備する。
【0135】
まず断熱パネル6000を、図示しない締結手段を用いて固定対象部材に固定する。次に、断熱パネル6000aを固定対象部材の表面に配置する。断熱パネル6000の嵌合部38bと断熱パネル6000aの嵌合部38aとを嵌合させる。このとき、断熱パネル6000aの凹部38b2を断熱パネル6000の凸部38a2に嵌め込む。
【0136】
断熱パネル6000aは、断熱パネル6000により矢印AR1方向における移動が規制される。この状態で、断熱パネル6000aを、図示しない締結手段を用いて固定対象部材に固定する。断熱パネル6000aの矢印AR1方向における移動が規制されているため、断熱パネル6000aを固定対象部材に対してより簡便に固定することができ、作業効率が良くなる。さらに、凸部38a2および凹部38b2の嵌合により、断熱パネル6000と断熱パネル6000aとをより強固に連結させた状態で、固定対象部材に固定することができる。
【0137】
(実施の形態7:断熱パネル7000)
図23〜図26を参照して、本発明に基づいた実施の形態7について説明する。図23(紙面手前側)を参照して、本実施の形態における断熱パネル7000は、真空断熱材100と、外被材200と、固定部材370と、固定部材372とを備えている。
【0138】
断熱パネル7000は、断熱パネル6000(実施の形態6:図21参照)の構成と略同様であるが、次の点において相違している。断熱パネル7000の外被材200は、さらに他の嵌合部27,29を有している。
【0139】
図24を参照して、具体的には、外被材200の端面21上に、嵌合部27が設けられている。嵌合部27は、外被材200の端面21上において、外被材200の厚さ方向の略半分の領域(紙面下方)に設けられている。嵌合部27の形状はたとえば直方体である。
【0140】
外被材200の端面23上に、嵌合部29が設けられている。嵌合部29は、外被材200の端面23上において、外被材200の厚さ方向の略半分の領域(紙面上方)に設けられている。ここでは、嵌合部29の形状は上記嵌合部27と同様な直方体である。
【0141】
外被材200の嵌合部27は、同一の形状を有する他の断熱パネルにおける外被材200の嵌合部29と嵌合することができる。
【0142】
(作用・効果)
外被材200の嵌合部27および外被材200の嵌合部29を利用して、断熱パネル7000を他の断熱パネル(7000a)と嵌合させた状態で、固体対象部材に固定することができる。
【0143】
図23および図25を参照して、具体的には、断熱パネル7000と、断熱パネル7000と同一の構成を有する断熱パネル7000aとを準備する。図23および図25において、断熱パネル7000aにおける端面21a,23a、表面25a,26a、嵌合部27a,29aは、断熱パネル7000における端面21,23、表面25,26、嵌合部27,29に対応している。
【0144】
断熱パネル7000を、図示しない締結手段を用いて固定対象部材に固定する。次に、断熱パネル7000aを固定対象部材の表面に配置する。断熱パネル7000の嵌合部29と断熱パネル7000aの嵌合部27aを嵌合させる。この状態で、断熱パネル7000aを、図示しない締結手段を用いて固定対象部材に固定する。
【0145】
断熱パネル7000と断熱パネル7000aとの間には、隙間が生じる場合がある。嵌合部29と嵌合部27aとが嵌合することにより、当該隙間における流体の抵抗が増し、高い断熱性能を得ることができる。
【0146】
図26を参照して、断熱パネル7000と、断熱パネル7000と同一の構成を有する複数の断熱パネル7000a〜7000cとを準備する。締結手段70により、外壁材90の表面における任意の方向に連続してこれらの断熱パネルを固定することができる。
【0147】
(建物)
図27を参照して、上記の実施の形態1〜7において説明した断熱パネル1000〜7000を、建物10に固定する場合について説明する。実施の形態1,2における断熱パネル1000,2000は、柱80,80および梁81,81間に固定されるとよい。実施の形態3〜7における断熱パネル3000〜7000は、外壁材90の表面に、鉛直方向に連結された状態で設けられるとよい。
【0148】
図27においては、板状に形成されている各断熱パネル(たとえば断熱パネル3000〜7000)について、その長手方向が鉛直方向(重力方向)に沿うように固定されているが、これに限られない。各断熱パネルの長手方向が水平方向に沿うように固定されてもよい。
【0149】
(実施の形態8:断熱パネル1000の製造方法)
図28および図29を参照して、本発明に基づいた実施の形態8について説明する。図28を参照して、本実施の形態における断熱パネル1000の製造方法は、次の各工程を備えている。なお、当該製造方法により得られる断熱パネル1000は、上述の実施の形態1における断熱パネル1000に相当している。
【0150】
まず、真空断熱材100と、固定部材310と、外被材(200)の原料である液体原料77と、金型72,73とを準備する。
【0151】
真空断熱材100は、芯材14と、芯材14を内部に密閉封止するガスバリア性フィルム12とを有している。ガスバリア性フィルム12は芯材14を覆うとともに、芯材14が覆われている部分を真空状態に封止している。
【0152】
固定部材310は、当該製造方法によって得られる断熱パネル1000を固定対象部材に固定する。固定部材310は、ベース部30と立壁部32,32とを有している。立壁部32,32は、ベース部30の両端部からベース部30に対して略直交する方向に向かって延びて設けられている。
【0153】
ベース部30の立壁部32,32が延びている方(紙面右側)の面に、耐候性を有する塗装を施してもよい。ベース部30の立壁部32,32が延びている方(紙面右側)の面に、液体原料77に対して非接着性を有する塗装を施してもよい。ベース部30の立壁部32,32が延びている方とは反対側(紙面左側)の面は、液体原料77との接着性を良くするための表面処理が施されているとよい。
【0154】
図29を参照して、当該製造方法に使用される金型72,73はいわゆる合わせ型であり、金型72と金型73とを組合わせることによって、上部に開口部79と、内部に所定の空間Sとを形成することができる。空間Sの形状は、たとえば直方体である。金型72,73の上記空間Sを形成する表面には、離型剤が塗布されているとよい。説明の便宜上、空間Sは、表面S1,S3および端面S2,S4を有しているとする。
【0155】
金型72には、逃がし部72a,72aが設けられている。逃がし部72aは、金型72の表面72bから、上記空間Sが形成される側と反対方向に延びて所定の深さH1で設けられている。所定の深さH1は、固定部材310(図28)の立壁部32の長さと略同等にするとよい。逃がし部72aの内部に、他の空間S10が形成されている。
【0156】
図28中には記載していないが、ガスバリア性フィルム12の内部の芯材14に隣接させて、吸着剤を挿入してもよい。吸着剤とはたとえばゼオライト、活性炭または金属酸化物である。外被材200の内部に多く含まれる二酸化炭素、炭酸水素ガス、または水分などが、ガスバリア性フィルム12を透過して、封止されている真空断熱材100の内部にまで侵入する場合がある。この場合、吸着剤をガスバリア性フィルム12の内部の芯材14に隣接させて挿入することにより、二酸化炭素はゼオライトに、炭化水素ガスは活性炭に、水分は金属酸化物またはゼオライトに吸着される。したがって、吸着剤を挿入することにより、真空断熱材100としての真空度を保持することが可能となり、結果として断熱パネル1000としての断熱性能の向上を図ることができる。
【0157】
次に固定部材310を、金型72,73により形成された空間Sの内部に挿入する。図28に示すように、固定部材310の立壁部32,32を、金型72の逃がし部72a,72a(空間S10,S10)の内部にそれぞれ配置する。
【0158】
次に真空断熱材100を、金型72,73により形成された空間Sの内部に挿入する。プラスチックフォーム76,76を用いて、ベース部30の立壁部32,32が延びている方の面と反対側の面に、真空断熱材100を保持する。真空断熱材100が保持されることにより、ベース部30の立壁部32,32が延びている方の面が、空間Sの内部の表面S1(図29参照)に沿って保持される。
【0159】
次に液体原料77をノズル75を用いて開口部79から空間Sの内部に向かって充填する。液体原料77がウレタン系である場合、金型72,73を予め約50℃にしておくとよい。温度が低いと、形成された外被材200の表面が脆くなり、接着性も低下する可能性があるためである。液体原料77が真空断熱材100の全体を覆うまで充填されたあと、蓋材74を用いて開口部79を塞ぐ。蓋材74は、液体原料77を適宜押圧するように開口部79を塞ぐとよい。
【0160】
この状態で所定の時間が経過すると、液体原料77は固形化し、外被材200に変化する。液体原料77がウレタン系である場合、約3分〜約10分で液体原料77は固形化する。液体原料77がウレタン系である場合、形成された外被材200(ウレタンフォーム)のコア密度が約30kg/mのとき、熱伝導率は約0.019W/mKとなる。
【0161】
外被材200のコア密度が上がると、外被材200の剛性が高くなる。外被材200のコア密度を上げるためには、液体原料77の充填量を上げるか、若しくは、液体原料77中の発泡剤に対して、事前にブレンドされるプレミックス液(ポリオール、触媒、整包剤、発泡剤)の量を減らしつつ、イソシアネート液の量を増加させて混合割合を調整する。なお、液体原料77の充填量を上げると、発泡圧が高くなるため蓋材74による押圧力を上げる必要がある。なお、外被材200のコア密度と外被材200の熱伝導率とは反比例の関係にあるため、断熱パネルを使用する環境などに応じて、最適なパラメータを選定するとよい。
【0162】
建築部材として断熱パネル1000を使用するときは、次のようなパラメータにするとよい。ウレタンフォームを用いて外被材200を構成する場合、コア密度は約25kg/m以上〜約50kg/m以下にするとよい。水発砲系の材料を用いて外被材200を構成する場合、コア密度は約35kg/m以上〜約50kg/m以下にするとよい。HFC365などの沸点の低い発泡剤を用いて外被材200を構成する場合は、コア密度は約25kg/m以上〜約40kg/m以下にするとよい。
【0163】
最後に、外被材200および固定部材310から金型72,73を剥離(脱型)することで、断熱パネル1000を得ることができる。なお、液体原料77の性質および固定部材310として使用する各材料によっては、形成された外被材200と固定部材310との接着力が弱い場合がある。外被材200と固定部材310とが接着されない場合には、外被材200と固定部材310との間に接着剤などを塗布してこれらを接着するとよい。
【0164】
(実施の形態8の他の形態)
実施の形態8において、金型72とは異なる他の金型を用いてもよい。具体的には、金型72において、逃がし部72a,72aを有していなくてもよい。当該構成により、たとえば上述の実施の形態3における断熱パネル3000(図12参照)を得ることができる。
【0165】
具体的には、断熱パネル3000を構成する固定部材330(図13参照)を、金型72,73の内部に形成された空間Sの端面S4(図29)に沿って配置する。次に、真空断熱材100を固定部材330の上方の空間に、プラスチックフォームなどで保持する。液体原料を充填し、固形化させることで、上述の実施の形態3における断熱パネル3000(図12参照)を得ることができる。
【0166】
(実施の形態9:断熱パネル2000の製造方法)
図30および図31を参照して、本発明に基づいた実施の形態9について説明する。図30を参照して、本実施の形態における断熱パネル2000の製造方法は、次の各工程を備えている。なお、当該製造方法により得られる断熱パネル2000は、上述の実施の形態2における断熱パネル2000に相当している。
【0167】
まず、真空断熱材100と、固定部材320と、外被材(200)の原料である液体原料77と、金型78とを準備する。
【0168】
固定部材320は、当該製造方法によって得られる断熱パネル2000を固定対象部材に固定する。固定部材320は帯状に形成されており、その両端には延在部36,36が規定されている。延在部36,36は、固定部材320と、液体原料77を固形化することによって形成される外被材(200)とが接着された後、外被材の表面からさらに外側(紙面上下方向)に向かってはみ出す部分である。
【0169】
図31を参照して、金型78は、上部に開口部79と、内部に所定の空間Sを形成している。空間Sの形状は、たとえば直方体である。金型78の上記空間Sを形成する表面には、離型剤が塗布されているとよい。説明の便宜上、空間Sは、表面S1,S3および端面S2,S4を有しているとする。
【0170】
金型78には、逃がし部78aが設けられている。逃がし部78aは、金型78の端面78bから、上記空間Sが形成されている側と反対方向に延びて所定の深さH2で設けられている。所定の深さH2は、固定部材320(図30)の延在部36の長さと略同等である。逃がし部72aの内部に、他の空間S12が形成されている。
【0171】
本実施の形態においては、蓋材74にも、逃がし部74aが設けられている。逃がし部74aは、蓋材74の端面74bから、上記空間Sが形成される側と反対方向に延びて所定の深さH2で設けられている。逃がし部74aの内部に、他の空間S13が形成されている。
【0172】
図30を参照して、次に固定部材320を、金型78の内部に挿入する。固定部材320の一方の延在部36を、金型78の逃がし部78a(他の空間S12)の内部に配置する。
【0173】
次に真空断熱材100を、金型78の内部に挿入する。プラスチックフォーム76,76を用いて、固定部材340の(紙面上下方向における)略中央に真空断熱材100を保持する。真空断熱材100が保持されることにより、固定部材320が、空間Sの内部の表面S1(図31参照)に沿って保持される。
【0174】
次に液体原料77をノズル75を用いて開口部79から空間Sの内部に向かって充填する。液体原料77が真空断熱材100の全体を覆うまで充填し、蓋材74を用いて開口部79を塞ぐ。このとき、蓋材74の逃がし部74a(他の空間S13)の内部に、固定部材320の他方の延在部36が配置される。
【0175】
この状態で所定の時間が経過すると、液体原料77は固形化し、外被材200に変化する。最後に、外被材200および固定部材320から金型78を剥離(脱型)することで、断熱パネル2000を得ることができる。
【0176】
(実施の形態10:断熱パネル4000などの製造方法)
図32を参照して、本発明に基づいた実施の形態10について説明する。本実施の形態における断熱パネル4000の製造方法は、次の各工程を備えている。なお、当該製造方法により得られる断熱パネル4000は、上述の実施の形態4における断熱パネル4000に相当している。
【0177】
まず、真空断熱材100と、固定部材340,342と、外被材(200)の原料である液体原料77と、下面材53と、上面材55とを準備する。
【0178】
固定部材340,342は、当該製造方法によって得られる断熱パネル4000を固定対象部材に固定する。
【0179】
下面材53は、予めローラー52に巻かれており、連続して供給されることができる。下面材53は、上述の実施の形態4の断熱パネル4000における表面材60(図14参照)に相当している。上面材55も、予めローラー54に巻かれており、連続して供給されることができる。上面材55には、水分に対してバリアー性を有しているものとして、たとえばプラスチック製のシート、ABS樹脂板、またはアルミ蒸着PETフィルムなどを使用することができる。下面材53と上面材55は、連続して供給されながら、対向して配置される。
【0180】
次に、連続して水平方向(紙面右方向)に下面材53を供給する。下面材53の表面に、真空断熱材100を載置する。下面材53が供給される方向(水平方向)において、真空断熱材100の前方に固定部材342を配置する。下面材53が供給される方向(水平方向)において、真空断熱材100の後方に固定部材340を配置する。
【0181】
次に、真空断熱材100に向かって液体原料77を散布する。液体原料77が真空断熱材100の全体を覆うまで、液体原料77を散布する。真空断熱材100が(紙面右方向に)搬送された後、散布された液体原料77の表面に対して連続して上面材55を供給する。
【0182】
鉛直方向に所定の間隔を空けて配置されたローラー56,57を用いて、下面材53と上面材55とを鉛直方向に適宜押圧するとよい。
【0183】
この状態で所定の時間が経過すると、液体原料77は固形化し、外被材200に変化する。最後に、裁断機58,58などを用いて、下面材53と上面材55とを裁断することにより、断熱パネル4000を得ることができる。
【0184】
得られた断熱パネル4000の、固定部材340,342が設けられていない側の端面に、適宜切削などの加工を施してもよい。切削により嵌合部などを設けることで、断熱パネル7000(実施の形態7)と略同様のものを得ることができる。
【0185】
(実施の形態10の他の構成)
実施の形態10の他の構成について説明する。当該他の構成は、断熱パネル3000(実施の形態3)または断熱パネル5000(実施の形態5)の製造方法に採用できる。
【0186】
上述の実施の形態10において、固定部材342を下面材53に載置する代わりに、液体原料77に対して非接着性を有する部材を載置することもできる。液体原料77が固形化し、外被材200に変化した後、当該部材を外被材200から剥離する。当該部材に、予め適宜嵌合部などを設けておいてもよい。外被材200から当該部材を剥離した端面を切削し、嵌合部などを設けてもよい。
【0187】
以上、本発明の発明を実施するための形態について説明したが、今回開示された形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0188】
1,1000,1001,1002,1003,2000,2001,3000,3000a,4000,4000a,4000b,5000,5000a,5000b,6000,6000a,7000,7000a〜7000c 断熱パネル、10 建物、12 ガスバリア性フィルム、14 芯材、21〜24,21a,23a,74b,78b,S2,S4 端面、25,25a,26,26a,72b,82,S1,S3 表面、27,27a,28,29,29a,38,38a,38aa,38b 嵌合部、30 ベース部、32 立壁部、34,79 開口部、36 延在部、38a1,38b1 端面部、38a2 凸部、38b2 凹部、40 軟質発泡体、42 接着剤、50 保護板、52,54,56,57 ローラー、53 下面材、55 上面材、58 裁断機、60 表面材、70,71 締結手段、72,73,78 金型、72a,74a,78a 逃がし部、74 蓋材、75 ノズル、76 プラスチックフォーム、77 液体原料、80 柱、81 梁、83 シリコンシート、84 温度センサー、84S 熱流センサー、85 断熱容器、86 水、87 ヒーター、88 氷、89 銅板、90 外壁材、92 内壁材、94 パネル、100 真空断熱材、102 周縁部、104 発泡体、200,210 外被材、310,310a,310b,314,320,320a,320b,330,340,342,344,350,352,360,362,370,372 固定部材、AR1 矢印、S,S10,S12,S13 空間、W1〜W5 幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱材と、
前記真空断熱材を覆う外被材と、
当該断熱パネルを固定対象部材に固定するため、前記外被材の表面上または前記外被材の端面上に沿って接着された固定部材と
を備える、断熱パネル。
【請求項2】
前記固定部材は、ベース部と立壁部とを有し、
前記ベース部の表面は、前記外被材の前記表面上に接着され、
前記立壁部は、前記ベース部の端部から、前記外被材が接着されている面と反対側に向かって延びて設けられる、
請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項3】
前記固定部材は、前記外被材の前記表面上に接着され、
前記固定部材は、前記外被材に接着された状態で、前記外被材の前記表面からさらに外側に向かってはみ出す延在部を有する、
請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項4】
当該断熱パネルの固定後に生じる当該断熱パネルと前記固定対象部材との間の隙間を減らすため、前記外被材上の前記固定対象部材と向かい合う領域上に軟質発泡体が設けられている、
請求項2または3に記載の断熱パネル。
【請求項5】
前記軟質発泡体上の前記固定対象部材と向かい合う領域に接着剤が塗布されている、
請求項4に記載の断熱パネル。
【請求項6】
前記固定部材は、前記外被材の前記端面上に接着され、
前記固定部材は嵌合部を有し、
第1の当該断熱パネルにおける前記嵌合部と、第2の当該断熱パネルにおける前記嵌合部とを嵌合させることにより、第1および第2の当該断熱パネルどうしを連結することができる、
請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項7】
前記固定部材は、前記外被材の前記端面上に接着され、
前記固定部材は嵌合部を有し、
前記外被材の前記端面上には、前記固定部材が接着されていない部分を含むように他の嵌合部が設けられ、
第1の当該断熱パネルにおける前記嵌合部と、第2の当該断熱パネルにおける前記他の嵌合部とを突き合わせることにより、第1および第2の当該断熱パネルどうしを嵌合させることができる、
請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項8】
前記固定部材は、前記外被材の前記端面上に接着され、
前記外被材の前記端面上において、前記固定部材が接着されていない部分を含むように嵌合部が設けられ、
第1の当該断熱パネルにおける前記嵌合部と、第2の当該断熱パネルにおける前記嵌合部とを突き合わせることにより、第1および第2の当該断熱パネルどうしを嵌合させることができる、
請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項9】
真空断熱材と、当該断熱パネルの製造方法により製造される断熱パネルを固定対象部材に固定するための固定部材と、液体原料と、所定の形状の空間を内部に形成することができる金型と、を準備する工程と、
前記固定部材を前記空間の内部に挿入するとともに、前記固定部材を前記空間の内部の表面若しくは前記空間の内部の端面に沿うように保持する工程と、
前記真空断熱材を前記空間の内部に挿入する工程と、
前記液体原料を前記空間の内部に充填する工程と、
前記液体原料を固形化することにより、前記真空断熱材を覆う外被材を形成する工程と、
前記外被材から前記金型を剥離する工程と
を備える、断熱パネルの製造方法。
【請求項10】
前記固定部材は、ベース部と、前記ベース部の端部から前記ベース部の一方の面に向かって延びて設けられる立壁部とを有し、
前記金型は、前記空間の内部の前記表面から前記空間と反対方向に前記立壁部を逃がすための他の空間をさらに有し、
前記立壁部が前記他の空間の内部に配置されるように、前記固定部材は前記空間の内部に挿入される、
請求項9に記載の断熱パネルの製造方法。
【請求項11】
前記固定部材は、前記外被材に接着された後の状態で、前記外被材の前記表面からさらに外側に向かってはみ出す延在部を有し、
前記金型は、前記空間の内部の前記端面から前記空間と反対方向に前記延在部を逃がすための他の空間をさらに有し、
前記延在部が前記他の空間の内部に配置されるように、前記固定部材は前記空間の内部に挿入される、
請求項9に記載の断熱パネルの製造方法。
【請求項12】
真空断熱材と、当該断熱パネルの製造方法により製造される断熱パネルを固定対象部材に固定するための固定部材と、液体原料と、対向して配置される上面材および下面材と、を準備する工程と、
連続して前記下面材を供給する工程と、
前記下面材の表面に前記真空断熱材を載置する工程と、
載置される前記真空断熱材の、前記下面材の供給方向における前方および/または後方に前記固定部材を配置する工程と、
前記真空断熱材に向かって前記液体原料を散布する工程と、
散布された前記液体原料の表面に対して連続して前記上面材を供給する工程と、
前記液体原料を固形化することにより、前記真空断熱材を覆う外被材を形成する工程と、
前記外被材を所定の形状に裁断する工程と
を備える、断熱パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2011−111754(P2011−111754A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267265(P2009−267265)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】