説明

断熱パネル

【課題】パネル同士の結合部の物理的強度が高く、かつ断熱性能に優れる断熱パネルを提供する。
【解決手段】断熱パネル1は表面材2、裏面材3、及び断熱材層5を有する。断熱パネル1の側面には、木質材料又は硬質樹脂からなる結合部6,8が設けられている。結合部6には雄実7が立設されている。結合部8には雌実10の一部が形成されている。結合部6,8と表面材2との間には空間(断熱空間部11)があり、発泡ウレタン等からなる断熱材が保持されている。断熱パネル1では、表面材2の裏側全体が断熱材で直接満たされており、断熱効果が高い。一方、断熱パネル1同士の結合部分には、発泡ウレタン等の軟質材料は介在していないので、結合部分の物理的強度が高く、断熱パネル1がより安定に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断熱パネルに関する。本発明の断熱パネルは、パネル同士の結合部の物理的強度が高く、かつ断熱性能に優れるものである。
【背景技術】
【0002】
木質材料等からなる表面材と裏面材を有し、その間に断熱材層を設けた断熱パネルが広く知られている。また断熱パネルにおいては、その側面に実部等を有する凹凸嵌合可能な結合部が形成されることが多い。
【0003】
例えば、図3(a),(b)に示す従来技術の断熱パネル101は、表面材102と裏面材103との間に断熱材層105が形成されてなるものである。そして、断熱パネル101の側面には、凸状の結合部106と凹状の結合部108が設けられている。結合部106には雄実107が形成され、結合部には雌実110が形成されている。雄実107と雌実110とは、互いに嵌合可能な形状を有している。結合部106,108によって、断熱パネル101の側面全体を囲む枠体が形成されている。なお、断熱パネル101を躯体に固定する際には、雄実107の表面材102側の根元から内側斜め方向に釘112を打つ。
【0004】
断熱材層105を構成する断熱材として、真空断熱材、グラスウール、発泡ウレタン等が用いられている。一方、結合部106,108を構成する材料として、例えば、木質材料、硬質樹脂、発泡ウレタン等が用いられている。ここで、木質材料や硬質樹脂は物理的強度が高いので、これらの材料で構成された結合部106,108は壊れにくく、断熱パネル101を安定的に固定することができる。さらに、上記のように、断熱パネル101を躯体に固定する際には結合部106の雄実107の根元から釘112を打つこととなるが、これらの材料で構成された結合部106は物理的強度が高いので、釘112の固定強度を容易に確保することができる。しかし、木質材料や硬質樹脂は断熱性能が低いので、図3(a),(b)に示すような結合部106,108は、ヒートブリッジとなって断熱効果が低下させるおそれがある。
【0005】
一方、結合部106,108を発泡ウレタンで構成すると、発泡ウレタンは断熱性能に優れるので、ヒートブリッジを効率的に防止することができる。しかし、発泡ウレタンは柔らかく物理的強度に劣る。そのため、発泡ウレタンで構成された結合部106,108は壊れやすく、断熱パネル101を安定に固定することが難しい。釘112を結合部106から打ち込んで断熱パネル101を躯体に固定する際にも、釘112の固定強度を確保することが難しい。
【0006】
そこで、断熱パネルの結合部において、物理的強度と断熱性能の両立を目的として、種々の工夫がなされている。特許文献1には、側面に雄実と雌実を備えた床材において、合板と樹脂成形体が積層された雄実が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−85609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の床材における実部は、樹脂成形体と木質材料とを併用したものであり、両者の利点を全て発揮しているとはいい難い。そこで本発明は、物理的強度と断熱性能の両方に優れた結合部を有する断熱パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、凹凸嵌合可能な結合部を側面に有し、表面板と裏面板との間に形成された中空部に断熱材層を充填形成してなる断熱パネルであって、前記結合部は木質材料又は硬質樹脂からなり、前記結合部と前記表面板との間に断熱空間部を形成し、当該断熱空間部に断熱材を保持させたことを特徴とする断熱パネルである。
【0010】
本発明の断熱パネルは、凹凸嵌合可能な結合部を側面に有しており、結合部が木質材料又は硬質樹脂からなる。そのため結合部の物理的強度が高く、釘の固定強度が確保でき、パネルの固定信頼性を向上させることができる。一方、本発明の断熱パネルでは、結合部と表面板との間に断熱材を保持させている。そのため、木質材料又は硬質樹脂の結合部が表面板の裏側に直接触れることがなく、表面板の裏側全てを断熱材で構成することができ、表面側のヒートブリッジを効率よく防止することができる。すなわち本発明の断熱パネルによれば、高い断熱性能と、結合部における高い物理的強度を両立することができる。
【0011】
凹凸嵌合可能な結合部の例としては、凸状の雄実を有する結合部と、当該雄実に嵌合可能な形状を有する凹状の雌実を有する結合部との組み合わせが挙げられる。
【0012】
請求項1に記載の断熱パネルにおいて、結合部と断熱材層との間に、前記断熱空間部と連通する連通空間部を形成し、前記断熱空間部と前記連通空間部に断熱材を保持させた構成としてもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0013】
本発明の断熱パネルによれば、高い断熱性能と、結合部における高い物理的強度を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る断熱パネルの断面構造を示す断面図、(b)は(a)の断熱パネル同士を結合した状態を示す断面図である。
【図2】(a)は本発明の第2実施形態に係る断熱パネルの断面構造を示す断面図、(b)は(a)の断熱パネル同士を結合した状態を示す断面図である。
【図3】(a)は従来技術の断熱パネルの断面構造を示す断面図、(b)は(a)の断熱パネル同士を結合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、発明の理解を容易にするために、各図面において、各部材の大きさや厚みについては一部誇張して描かれており、実際の大きさや比率等とは必ずしも一致しないことがある。また、上下方向、左右方向の基準は、図1,2に示す姿勢を基準とする。さらに、本発明が以下の実施形態に限定されないことは勿論である。
【0016】
図1(a)に示すように、本発明の第1実施形態に係る断熱パネル1は、表面材1と裏面材3を有し、かつ表面材1と裏面材3との間に断熱材層5を有するものである。さらに、断熱パネル1は、その側面に凸状の結合部6と凹状の結合部8を有している。
【0017】
表面材2と裏面材3は木質材料からなる板体である。断熱パネル1の施工時において、表面材2が手前側、裏面材3が躯体側に位置する。
【0018】
表面材2と裏面材3との間には、断熱材層5が形成されている。断熱材層5は、表面材2と裏面材3との間に形成された中空部に断熱材を充填し、形成したものである。断熱材層5は、断熱パネル1の前記中空部における周縁部以外の領域を占めており、断熱パネル1の断熱性能の中核を担っている。断熱材層5を構成する断熱材としては、真空断熱材、グラスウール、発泡ウレタン等が挙げられる。
【0019】
断熱パネル1の側面には、凸状の結合部6と凹状の結合部8が設けられている。結合部6,8によって、断熱パネル1の側面全体を囲む枠体が形成されている。
【0020】
結合部6は全体形状が棒状であり、その長手側面に凸形状の雄実7を有している。詳細には、結合部6は、断面長方形状の棒状部材における1つの長手側面に、断面長方形状の突条たる雄実7を長手方向全体に立設したような形状である。そして、当該突状(雄実7)の立設位置は、前記長手側面における1つの長辺(図1(a)における下側の長辺)に沿う位置である。すなわち、結合部6の下面(表面材3側の面)には段差がなく、略面一である。
【0021】
結合部6は裏面板3に接触しているが、表面板2には接触していない。すなわち、結合部6の上下方向の厚みは断熱材層5の厚みよりも小さく、結合部6と表面材2との間には空間(断熱空間部11)が形成されている。
【0022】
結合部6における雄実7と反対側の長手側面は、断熱材層5と接触している。換言すれば、結合部6と断熱材層5との間には、空間はない。
【0023】
結合部8は全体形状が棒状であり、その長手側面に凹形状の雌実10の一部を有している。詳細には、結合部8は断面L字状であり、直方体状の棒材の長手側面の一部を断面長方形状に切り欠いたような形状である。そして、当該切り欠き部が雌実10の一部を構成している。
【0024】
結合部8は裏面板3に接触しているが、表面板2には接触していない。すなわち、結合部8の上下方向の厚みは断熱材層5の厚みよりも小さく、結合部8と表面材2との間には空間(断熱空間部11)が形成されている。
【0025】
結合部8における雌実10と反対側の長手側面は、断熱材層5と接触している。換言すれば、結合部8と断熱材層5との間には、空間はない。
【0026】
結合部8と断熱空間部11に保持された断熱材(後述)とによって、断面コ字状の雌実10が形成される。
【0027】
雄実7と雌実10は、互いに嵌合可能な形状である。すなわち、結合部6と結合部8は凹凸嵌合可能である。
【0028】
また、結合部6,8は木質材料又は硬質樹脂で構成されており、物理的強度が高いものである。ここで、断熱パネル1を躯体に固定する際の釘12は、図1(a)に示すように、雄実7の表面材2側の根元から内側斜め方向に向かって打たれる。すなわち、釘12は物理的強度が高い結合部6のみを介して打たれるので、釘12の固定強度が容易に確保される。
【0029】
表面材2と結合部6,8との間には断熱空間部11があり、断熱空間部11に断熱材が保持されている。すなわち、断熱パネル1においては、表面材2の裏側全体が断熱材で直接満たされており、断熱効果が低い木質材料等は介在していない。断熱空間部11に保持させる断熱材としては、真空断熱材、グラスウール、発泡ウレタン等が挙げられるが、発泡ウレタンが好ましく用いられる。
【0030】
断熱パネル1を施工する際には、断熱パネル1の端部同士を突き当て、雄実7と雌実10とを嵌合させる。断熱パネル1同士を接合した状態を図1(b)に示す。すなわち、施工後の断熱パネル1においても、表面材2の裏側全体が断熱材で直接満たされており、断熱効果が低い木質材料等は介在していない。そのため、断熱性能が高く、ヒートブリッジが防止される。
【0031】
一方、断熱パネル1同士の結合部分は、木質材料等からなる結合部6と結合部8のみで構成されており、発泡ウレタン等の軟質材料は介在していない。そのため、結合部分の物理的強度が高く、断熱パネル1がより安定に固定される。
【0032】
上記した実施形態では、結合部6,8と断熱材層5とが接触しているが、結合部6,8と断熱材層5との間に空間を設け、当該空間に断熱材を保持させてもよい。図2(a)に示す第2実施形態に係る断熱パネル21は、結合部の構成が第一実施形態と異なる。詳細には、断熱パネル21は、第1実施形態と同様に、表面材2、裏面材3、及び断熱材層5を有している。そして、断熱パネル21の側面には、凸状の結合部26と凹状の結合部28が設けられている。
【0033】
結合部26は、図1(a)に示す結合部6と同様の棒状の部材からなるが、結合部6と比べて奥行き(図2(a)における左右方向)の長さが短い。同様に、結合部28は、図1(a)に示す結合部8と同様の棒状の部材からなるが、結合部8と比べて奥行きの長さが短い。そのため、結合部26,28と断熱材層5との間には、断熱空間部11と連通する空間(連通空間部24)がある。そして連通空間部24には、断熱空間部11と同様に発泡ウレタン等の断熱材が保持されている。つまり、連通空間部24と断熱空間部11とで断面L字状の空間が形成され、当該空間に断熱材が保持されている。
【0034】
なお第1実施形態と同様に、結合部26の長手側面には雄実7が設けられ、結合部28の長手側面には雌実10の一部が形成されている。
【0035】
第1実施形態と同様に、断熱パネル21においても表面材2の裏側全体が断熱材で直接満たされており、断熱効果が低い木質材料等は介在していない。また、断熱パネル1を躯体に固定する際の釘12は、図2(a)に示すように、物理的強度が高い結合部26のみを介して打たれるので、釘12の固定強度が容易に確保される。
【0036】
断熱パネル21の施工後の状態を図2(b)に示す。第1実施形態と同様に、施工後の断熱パネル21においても、表面材2の裏側全体が断熱材で直接満たされており、断熱効果が低い木質材料等は介在していない。そのため、断熱性能が高く、ヒートブリッジが防止される。
【0037】
一方、断熱パネル21同士の結合部分は、木質材料等からなる結合部26と結合部28のみで構成されており、発泡ウレタン等の軟質材料は介在していない。そのため、結合部分の物理的強度が高く、断熱パネル21がより安定に固定される。
【0038】
上記した実施形態では、凹凸嵌合可能な結合部が断熱パネルの側面を囲んで枠体を形成しているが、断熱パネルの一対の側面(2面)のみに結合部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 断熱パネル
2 表面材
3 裏面材
5 断熱材層
6 結合部
8 結合部
11 断熱空間部
21 断熱パネル
24 連通空間部
26 結合部
28 結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸嵌合可能な結合部を側面に有し、表面板と裏面板との間に形成された中空部に断熱材層を充填形成してなる断熱パネルであって、
前記結合部は木質材料又は硬質樹脂からなり、
前記結合部と前記表面板との間に断熱空間部を形成し、当該断熱空間部に断熱材を保持させたことを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
結合部と断熱材層との間に、前記断熱空間部と連通する連通空間部を形成し、前記断熱空間部と前記連通空間部に断熱材を保持させたことを特徴とする請求項1に記載の断熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−23965(P2013−23965A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161581(P2011−161581)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、環境省、地球温暖化対策技術開発事業「既存住宅における断熱性向上のための薄型断熱内装建材に関する技術開発」委託契約業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】