説明

断熱性能検査方法と検査装置

【課題】熱流束センサーの精度の面から低熱伝導率の被測定物は、センサーのサイズが大きくないと測定ができず、熱流束センサーの精度から測定できる熱伝導率と被測定物の大きさに制限がある。
【解決手段】予め算出した被測定物3の熱貫流率と被測定物3両面での温度差との相関関係を準備し、所定温度の熱源と接した被測定物3の熱源接触面と対向する測定面との温度差を測定し、測定した温度差から前記相関関係を用いて熱貫流率を導き、所定の基準値と比較して被測定物3の断熱性能を判定するので、被測定物3の表面温度を測定するだけであり、被測定物3の表面に凹凸があっても断熱性能を判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物が所定の断熱性能を有しているか否かを検査する断熱性能検査方法と、それを実行する断熱性能検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の断熱性能検査装置は、被測定物の両面を温度制御して温度差をつけ、熱流束と温度差、厚みを測定することにより熱伝導率を求めている。
【0003】
また、被測定物と熱抵抗材の間で熱を発生させて、被測定物内部と熱抵抗材内部に熱を流し、熱抵抗材の少なくとも2箇所の温度差から被測定物の熱伝導率を求める装置もある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図14は、特許文献1に記載された従来の熱伝導率測定方法の検査装置の概略断面図である。
【0005】
構成は、図14に示すように、熱抵抗を有する熱抵抗材1と、熱抵抗材1の表面に配置される熱発生装置2から構成されおり、被測定物3の表面に熱発生装置2が接するように熱伝導率発生装置1を設置する。熱抵抗材1は、内部の温度差を測定するためのものである。
【0006】
以上のように構成された検査装置について、以下その動作を説明する。図15にフローチャートを示す。
【0007】
まず、熱発生装置2により被測定物3と熱抵抗材1の間で熱を発生させて、被測定物3内部と熱抵抗材1内部に熱を流し、熱抵抗材1の内部を流れる熱流によって生じる熱抵抗材1の少なくとも2箇所の温度差から被測定物3の熱伝導率を求めることができる。
【0008】
例えば、被測定物3の熱伝導率が高いと、熱抵抗材1に流れる熱量が少なくなるので、熱抵抗材1の内部の温度差が小さくなる。逆に、被測定物3の熱伝導率が小さいと、熱抵抗材1に流れる熱量が多くなるので、熱抵抗材1の内部の温度差が大きくなる。この原理を利用して、間接的に被測定物3の熱伝導率を測定することができる。
【特許文献1】特開2002−131257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の構成では、被測定物3の表面に熱発生装置2を密着させる必要があり、被測定物3の表面に凹凸があると測定精度が落ちてしまう問題があった。
【0010】
また、被測定物3として、金属フィルムや金属と樹脂のラミネートフィルムで被覆した真空被測定物においては、横方向のヒートブリッジを起こしやすいため、副熱発生部を熱発生装置の周囲に設けてヒートブリッジを防いで測定する必要がある。
【0011】
ヒートブリッジを防がずに測定すると、横に逃げる熱が発生し、測定精度が落ちてしまう。そのため、被測定物3が小さいと副熱発生部を設けられず、測定精度が落ちてしまう問題があった。
【0012】
また、2箇所の温度差から熱伝導率を出すため、熱抵抗材1での2箇所間の温度差と熱伝導率の関係を実測してだす必要がある。そのため、測定の工数が増えてしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために、本発明は、予め算出した被測定物の熱貫流率と被測定物の両面の温度差との相関関係を準備し、所定温度の熱源と接した状態の被測定物の熱源接触面と対向する測定面の温度を測定し、前記熱源の温度と前記測定した測定面の温度との温度差を計算し、前記計算した温度差から前記相関関係を用いて前記被測定物の熱貫流率を導き出し、前記導き出した熱貫流率の値と所定の基準値と比較して被測定物の断熱性能の良否を判定するのである。
【0014】
これによって、被測定物の断熱性能と相関関係のある表面温度を測定するだけなので、被測定物の表面に凹凸があっても断熱性能を判定することができる。
【0015】
また、測定方法が違うので、従来のような横方向のヒートブリッジの問題は発生しない。代わりに、熱源からの横方向のヒートリークが発生する問題があるが、ヒートリークを含めた被測定物の断熱性能として判定するので問題なく、小サイズや、様々な形状の被測定物の断熱性能を判定することができる。
【0016】
また、前もって温度差と熱貫流率の関係を実測することなく、関係式より温度差と熱貫流導率の相関関係が導けるので、検査の準備工数が少なくて済む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の検査装置は、小サイズや、様々な形状の被測定物の断熱性能を簡単に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
請求項1に記載の発明は、予め算出した被測定物の熱貫流率と被測定物の両面の温度差との相関関係を準備し、所定温度の熱源と接した状態の被測定物の熱源接触面と対向する測定面の温度を測定し、前記熱源の温度と前記測定した測定面の温度との温度差を計算し、前記計算した温度差から前記相関関係を用いて前記被測定物の熱貫流率を導き出し、前記導き出した熱貫流率の値と所定の基準値と比較して被測定物の断熱性能の良否を判定することを特徴とする断熱性能検査方法であり、被測定物の表面温度を測定するだけなので、被測定物の表面に凹凸があっても断熱性能を判定することができる。
【0019】
また、従来とは測定方法が違い、横方向のヒートブリッジの問題は発生しないので、小サイズや、様々な形状の被測定物の断熱性能を判定することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明は、所定温度の熱源と接した状態の被測定物の熱源接触面と対向する測定面の温度と被測定物の周囲温度とをそれぞれ測定し、前記測定により得られた前記測定面の温度および前記周囲温度と予め分かっている前記熱源の温度および熱伝達率を基に前記被測定物の熱貫流率を計算し、前記計算して得られた熱貫流率の値と所定の基準値と比較して被測定物の断熱性能の良否を判定することを特徴とする断熱性能検査方法であり、被測定物の表面温度と周囲温度とを測定するだけなので、被測定物の表面に凹凸があっても断熱性能を判定することができる。
【0021】
また、従来とは測定方法が違い、横方向のヒートブリッジの問題は発生しないので、小サイズや、様々な形状の被測定物の断熱性能を判定することができる。
【0022】
また、前もって温度差と熱貫流率の関係を実測することなく、(熱貫流導率)×((熱源の温度)−(被測定物の測定面の温度))=(熱伝達率)×((被測定物の測定面の温度)−(周囲温度))の関係式を用いて、熱貫流率を計算できるので、検査の準備工数が少なくて済む。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の検査方法において、予め所定温度の熱源と接した被測定物の対向する面である測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束と、測定面温度との相関関係を準備し、測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束を測定し、測定した最大熱流束から前記相関関係を用いて測定面の温度を測定したことを特徴とする断熱性能検査方法であり、被測定物の測定面を断熱した瞬間の測定面の温度差に基づく熱流束を測定し、その熱流束を被測定物の表面温度に変換する。これにより、測定面が対流の影響を受けなくなるので、測定値のバラツキをなくすことができ、測定精度が向上する。
【0024】
また、従来では熱流束センサーの精度の問題で、低熱伝導率の被測定物を測定するためには、大サイズの熱流束センサーが必要であった。そこで、従来と熱流束の利用の仕方を変え、熱流束を利用して被測定物の熱源接触面に対向する面の温度を測定し、熱貫流率を求めた。これにより、従来より測定精度は落ちるが、熱流束センサーのサイズの問題で測定できない低熱伝導率の小サイズの被測定物を検査することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、予め所定温度の熱源と接した被測定物の対向する面である測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束と、被測定物の熱貫流率との相関関係を準備し、測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束を測定し、測定した最大熱流束から前記相関関係を用いて被測定物の熱貫流率を導き、所定の基準値と比較して被測定物の断熱性能を判定することを特徴とする断熱性能検査方法であり、被測定物の熱源接触面に対向する面を断熱したときの対向する面の温度差に基づく熱流速の、最大熱流束から直接に被測定物の熱貫流率を判定できるので、相関を複数経ることがなく、精度よく検査することができる。
【0026】
また、被測定物の熱源接触面に対向する面を断熱するので、測定部が対流の影響を受けなくなるので、測定値のバラツキをなくすことができ、測定精度が向上する。
【0027】
請求項5に記載の発明は、被測定物の熱貫流率が25W/m2K以下である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の断熱性能検査方法であり、熱貫流率に対する被測定物表面と裏面との温度差の傾きが大きいので、測定バラツキの微かな温度差が熱貫流率の変換に影響し難くなり、検査精度が向上する。
【0028】
請求項6に記載の発明は、被測定物の厚みが5mm以下である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の断熱性能検査方法であり、熱貫流率に対する被測定物表面と裏面との温度差の傾きが大きいので、測定バラツキの微かな温度差が熱貫流率の変換に影響し難くなり、検査精度が向上する。
【0029】
請求項7に記載の発明は、熱源と接した被測定物の熱源接触面とその面に対向する面から諸データを測定する検出部と、測定した値を相関関係より変換する変換部と、変換された値と基準値を比較して被測定物の断熱性能を判定する判定部とからなり、請求項1から請求項6のいずれか一項の断熱性能検査方法を用いて検査する断熱性能検査装置であり、断熱性能の検査を行うことができる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、周囲の温度を測定する温度センサーを備え、測定した周囲温度から熱貫流率と被測定物表面と裏面との温度差の相関関係データを補正する補正部を備えた請求項7に記載の断熱性能検査装置であり、測定時の周囲温度がわかることにより、前述の計算式より、熱伝導率と両面の温度差の相関関係データを補正することができるので、検査精度を向上できる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、検査装置をケースで覆った請求項7または請求項8に記載の断熱性能検査装置であり、熱伝達率を一定にできるので、前述の計算式より、算出できる熱貫流率と被測定物表面と裏面との温度差の相関関係と実測温度差との差が少なくでき、検査精度を向上できる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、検出部に温度センサーを被測定物の少なくとも片面に2つ以上設けた請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の断熱性能検査装置であり、2点以上で温度を測定することにより、被測定物の表面の段差や、密度差などのバラツキによる測定温度バラツキを低減できるので、検査精度を向上することができる。
【0033】
請求項11に記載の発明は、被測定物の厚みを測定するセンサーを備えた請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の断熱性能検査装置であり、製品規格外の厚みの被測定物を抽出することができるので、検査効率が向上する。また、厚みから熱貫流率と被測定物表面と裏面との温度差との相関関係を補正することができるので、検査精度が向上する。
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における検査装置の検出部の概略図である。図2は、本発明の実施の形態1における熱貫流率と被測定物両面温度差との相関関係を示す特性図である。図3は、本発明の実施の形態1における検査装置の構成図である。図4は、本発明の実施の形態1における熱伝導率と被測定物両面の温度差との相関関係を示す特性図である。
【0036】
構成として、図1、図2、図3、図4のように、検査装置は、検出部9と、変換部と判定部を備えたPC10よりなる。検出部9は、風による影響を防ぐケース4と、被測定物3の片面に接触し温度制御する熱源5と、被測定物3の測定面から挟みこむ放熱器6を備え、被測定物3の両面の温度を測定する熱電対7と、被測定物3の厚みを測定する厚みセンサー8から構成される。
【0037】
また、熱電対7は、好ましくはひとつの被測定物3の片面に少なくとも2点以上備える。また、好ましくは被測定物3の熱貫流率が25W/m2K以下である。また、好ましくは被測定物3の厚みが5mm以下である。
【0038】
以上のように構成された検査装置について、以下その手順を説明する。図5にフローチャートを示す。
【0039】
まず、検出部9aにおいて、被測定物3の片面を熱源5により温度制御し、もう一方の面から放熱器6で押える。次に、被測定物3の温度が定常状態になったときの両面の温度を熱電対7により測定する。次に、変換部において、その測定した温度差を図2の被測定物3の熱貫流率と温度差の相関関係より熱貫流率に変換する。最後に、判定部において、熱貫流率を所定値と比べることにより、被測定物3の断熱性能を判定することができる。
【0040】
以上のように、本実施の形態においては、予め算出した被測定物3の熱貫流率と被測定物3両面での温度差との相関関係を準備し、所定温度の熱源と接した被測定物3の熱源接触面と対向する測定面との温度差を測定し、測定した温度差から前記相関関係を用いて熱貫流率を導き、所定の基準値と比較して被測定物3の断熱性能を判定する。被測定物3の断熱性能と両面の温度差には図2のような相関関係があるので、温度差を測定することにより、断熱性能を判定することができる。
【0041】
また、測定としては被測定物3の表面温度を測定するだけであり、被測定物3の表面に凹凸があっても断熱性能を判定することができる。
【0042】
また、従来とは測定方法が違い、横方向のヒートブリッジの問題は発生しないので、小サイズや、様々な形状の被測定物3の断熱性能を判定することができる。
【0043】
また、被測定物3の熱貫流率が25W/m2K以下なら、図2よりわかるように熱貫流率に対する被測定物3両面の温度差の傾きが大きいので、測定バラツキの微かな温度差が熱貫流率の変換に影響し難くなり、検査精度が向上する。1mmの被測定物の場合、ウレタンフォームとほぼ同等の0.025W/mK以下の被測定物を指しており、この検査方法においてウレタンフォーム以下の熱伝導率のものを検査するのに向いているといえる。
【0044】
また、被測定物3の厚みが5mm以下なら、図2に厚みのファクターを入れた図4や(表1)からみると、熱伝導率に対する被測定物3両面との温度差の傾きが大きいので、測定誤差によりかすかに温度差がばらついても、熱伝導率の変換に影響し難くなり、検査精度が向上する。また、薄いことにより被測定物3の温度が定常状態になる時間が短く、検査時間を短縮できる。
【0045】
【表1】

また、風による影響を減らすケース4を備えており、熱伝達率を一定にできるので、予め算出した熱貫流率と被測定物3表面と裏面との温度差の相関関係と実測温度差との差が少なくでき、検査精度を向上できる。
【0046】
また、厚みの測定ができることにより、被測定物3個々の正確な厚みがわかり、製品規格外の厚みの被測定物3を抽出することができるので、検査効率が向上する。また、厚みから熱貫流率と被測定物3表面と裏面との温度差との相関関係を補正することができるので、検査精度が向上する。
【0047】
また、測定点一箇所につき複数の熱電対7をもちいることにより、被測定物3の表面の段差や、被測定物3の密度差などのバラツキによる測定温度バラツキを低減でき、検査精度を向上することができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、被測定物3の片面に放熱器6を接触させているが、それを空気に換えることも可能である。空気に換えることにより、測定温度の安定するまでの時間が短くなり、検査効率が向上する。また、相関関係において熱貫流率を用いているが、これは熱を示すひとつの指標であり、これが熱伝導率、熱流束等であっても同様のことが行える。
【0049】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における検査装置の検出部概略図である。
【0050】
構成として、本実施の形態は、実施の形態1の検出部9bである図1に周囲温度を測定する周囲温度センサー11を備えたものである。
【0051】
以上のように構成された検査装置について、以下その手順を説明する。図7にフローチャートを示す。
【0052】
図5に記載の実施の形態1の手順を一部変更したものであり、相関データの測定をなくし、代わりに周囲温度を測定することにより、相関を導出できるようにした。
【0053】
以上のように、本実施の形態においては、所定温度の熱源と接した状態の被測定物3の熱源接触面と対向する測定面の温度と被測定物3の周囲温度とをそれぞれ測定し、前記測定により得られた前記測定面の温度および前記周囲温度と予め分かっている前記熱源の温度および熱伝達率を基に前記被測定物3の熱貫流率を前述の計算式で計算し、前記計算して得られた熱貫流率の値と所定の基準値と比較して被測定物3の断熱性能の良否を判定することを特徴とする断熱性能検査方法であり、前もって温度差と熱貫流率の関係を実測することなく、被測定物3の表面温度と周囲温度とを測定するだけなので、被測定物3の表面に凹凸があっても断熱性能を判定することができ、検査の準備工数が少なくて済む。
【0054】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3における検査装置の検出部の概略図である。図9は、本発明の実施の形態3における温度差と、最大熱貫流率との相関関係を示す特性図である。
【0055】
構成として、本実施の形態の検査装置は、実施の形態1の図1の検出部9aを図8の検出部9cに変更したものである。検査装置の検出部9cは、被測定物3の片面に接触し温度制御する熱源5と、片側を断熱性部材13で断熱した熱流束センサー12とから構成される。
【0056】
以上のように構成された検査装置について、以下その手順を説明する。図10にフローチャートを示す。
【0057】
検出部9cにおいて、被測定物3の片面を熱源5により温度制御し、被測定物3の温度が定常状態になるまで待つ。次に、定常状態になった被測定物3の対になる測定面に、片面を断熱した熱流束センサー13を接触させる。次に、熱流束センサー13は、接触した瞬間の測定面の温度と断熱性部材13の温度との差に比例した熱流束を測定する。熱流束値の測定結果は、図11に示す。
【0058】
ここで、断熱性部材14の接触寸前の温度を把握しておけば、測定面の温度を知ることができる。次に、測定面の温度が分かれば、実施の形態1で述べたとおり、図2の被測定物の熱貫流率と温度差の相関関係より熱貫流率に変換し、熱貫流率を所定値と比べることにより、被測定物3の断熱性能を判定することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態においては、予め所定温度の熱源と接した被測定物の対向する面である測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束と、測定面温度との相関関係を準備し、測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束を測定し、測定した最大熱流束から前記相関関係を用いて測定面の温度を測定している。
【0060】
測定面の温度がわかることにより、実施の形態1のようにして断熱性能を判定することができる。
【0061】
また、実施の形態1では、温度の測定において対流の影響を減らし、かつ熱電対7を被測定物3に固定するため、被測定物3に放熱器6等の熱容量のある部材を接触させて温度を測定していたが、放熱器6温度が安定状態になるまで待つ必要があり、連続して検査するのに時間がかかった。逆に、本実施の形態のように熱容量の少ない断熱性部材で押えると、熱がこもって温度が上がってしまい、測定できない問題があった。
【0062】
しかし、本実施の形態では、熱流束センサー12を被測定物3に押さえつけて測定するので、対流の影響がなく、固定することも容易である。また、接触させた瞬間に測定でき、安定状態になるまで待つ必要もないので、連続して多くの被測定物3を短時間で検査することができる。
【0063】
熱流束センサーを用いた性能測定装置として、被測定物の両面の温度を制御して、熱流束を測定し、熱伝導率を求める装置があった。しかし、熱流束センサーの精度の問題で、低熱伝導率の被測定物を測定するためには、大サイズの熱流束センサーが必要であり、それより小さいサイズの被測定物の性能を測定することができなかった。
【0064】
本実施の形態では、小サイズの被測定物を判定するために、小サイズの熱流束センサーを用いているが、熱伝導率を知るための熱流束を測定するのではなく、被測定物の測定面の温度を知るために熱流束を測定する。
【0065】
これにより、従来より測定精度は落ちるが、熱流束センサー12のサイズの問題で測定できない低熱伝導率の小サイズの被測定物3を検査することができる。また、被測定物の両面を温度制御するのではなく、片面のみの温度制御なので、コストが安く済む。
【0066】
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4における最大熱流束と、熱貫流率との相関関係を示す特性図である。
【0067】
構成として、本実施の形態の検査装置は、実施の形態3の変換部である図8記載の相関を図12記載の相関に変更したものである。
【0068】
以上のように構成された検査装置について、以下その手順を説明する。図13にフローチャートを示す。
【0069】
被測定物3の片面を熱源5により温度制御し、被測定物3の温度が定常状態になるまで待つ。次に、定常状態になった被測定物3のもう一方の面に、片面を断熱した熱流束センサー12を接触させ、接触した瞬間の被測定物3の測定面の温度と断熱性部材13の温度差に比例した熱流束を測定する。
【0070】
ここで、断熱性部材13の接触寸前の温度を把握しておけば、被測定物3の対になる面の表面温度に比例した熱流束を知ることができる。次に、表面温度がわかれば被測定物3の断熱性能が分かるので、図8のように熱流束と断熱性能の相関を準備しておくことにより、熱流束から熱貫流率に変換し、熱貫流率を所定値と比べることにより、被測定物3の断熱性能を判定することができる。
【0071】
以上のように、予め所定温度の熱源と接した被測定物3の対向する面である測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束と、被測定物3の熱貫流率との相関関係を準備し、測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束を測定し、測定した最大熱流束から前記相関関係を用いて被測定物3の熱貫流率を導き、所定の基準値と比較して被測定物3の断熱性能を判定している。実施の形態3の効果に加え、被測定物3の熱源接触面に対向する面に断熱性部材13を接触させたときの、被測定物3と断熱性部材13の温度差に基づく最大熱流束から直接に被測定物3の熱貫流率を判定でき、相関を複数経ることがないので、精度よく検査することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかる検査装置は、被測定物の両面に温度差を付け、両面の温度を測定することで熱貫流率、熱伝導率が所定範囲にあることがわかり、被測定物の断熱性能を短時間で簡単に検査することが可能となるので、真空被測定物の生産ラインでの検査に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態1における検査装置の検出部の概略図
【図2】本発明の実施の形態1における熱貫流率と被測定物の両面の温度差との相関関係を示す特性図
【図3】本発明の実施の形態1における検査装置の構成図
【図4】本発明の実施の形態1における熱伝導率と被測定物の両面の温度差との相関関係を示す特性図
【図5】本発明の実施の形態1における検査方法のフローチャート
【図6】本発明の実施の形態2における検査装置の検出部の概略図
【図7】本発明の実施の形態2におけるフローチャート
【図8】本発明の実施の形態3における検査装置の検出部の概略図
【図9】本発明の実施の形態3における温度差と最大熱貫流率との相関関係を示す特性図
【図10】本発明の実施の形態3における検査装置のフローチャート
【図11】本発明の実施の形態3における熱流束の測定結果を示す特性図
【図12】本発明の実施の形態4における最大熱流束と熱貫流率との相関関係を示す特性図
【図13】本発明の実施の形態4における検査装置のフローチャート
【図14】従来の検査装置の概略断面図
【図15】従来の検査方法のフローチャート
【符号の説明】
【0074】
4 ケース
5 熱源
6 放熱器
7 熱電対
8 厚みセンサー
9 検出部
11 周囲温度センサー
12 熱流束センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め算出した被測定物の熱貫流率と被測定物の両面の温度差との相関関係を準備し、所定温度の熱源と接した状態の被測定物の熱源接触面と対向する測定面の温度を測定し、前記熱源の温度と前記測定した測定面の温度との温度差を計算し、前記計算した温度差から前記相関関係を用いて前記被測定物の熱貫流率を導き出し、前記導き出した熱貫流率の値と所定の基準値と比較して被測定物の断熱性能の良否を判定することを特徴とする断熱性能検査方法。
【請求項2】
所定温度の熱源と接した状態の被測定物の熱源接触面と対向する測定面の温度と被測定物の周囲温度とをそれぞれ測定し、前記測定により得られた前記測定面の温度および前記周囲温度と予め分かっている前記熱源の温度および熱伝達率を基に前記被測定物の熱貫流率を計算し、前記計算して得られた熱貫流率の値と所定の基準値と比較して被測定物の断熱性能の良否を判定することを特徴とする断熱性能検査方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の検査方法において、予め所定温度の熱源と接した被測定物の対向する面である測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束と、測定面温度との相関関係を準備し、測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束を測定し、測定した最大熱流束から前記相関関係を用いて測定面の温度を測定したことを特徴とする断熱性能検査方法。
【請求項4】
予め所定温度の熱源と接した被測定物の対向する面である測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束と、被測定物の熱貫流率との相関関係を準備し、測定面を断熱したときの測定面での最大熱流束を測定し、測定した最大熱流束から前記相関関係を用いて被測定物の熱貫流率を導き、所定の基準値と比較して被測定物の断熱性能を判定することを特徴とする断熱性能検査方法。
【請求項5】
被測定物の熱貫流率が25W/m2K以下である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の断熱性能検査方法。
【請求項6】
被測定物の厚みが5mm以下である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の断熱性能検査方法。
【請求項7】
熱源と接した被測定物の熱源接触面とその面に対向する面から諸データを測定する検出部と、測定した値を相関関係より変換する変換部と、変換された値と基準値を比較して被測定物の断熱性能を判定する判定部とからなり、請求項1から請求項6のいずれか一項の断熱性能検査方法を用いて検査する断熱性能検査装置。
【請求項8】
周囲の温度を測定する温度センサーを備え、測定した周囲温度から熱貫流率と被測定物表面と裏面との温度差の相関関係データを補正する補正部を備えた請求項7に記載の断熱性能検査装置。
【請求項9】
検査装置をケースで覆った請求項7または請求項8に記載の断熱性能検査装置。
【請求項10】
検出部に温度センサーを被測定物の少なくとも片面に2つ以上設けた請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の断熱性能検査装置。
【請求項11】
被測定物の厚みを測定するセンサーを備えた請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の断熱性能検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−78185(P2006−78185A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259193(P2004−259193)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】