断熱材
【課題】優れた断熱性を発揮でき、かつ環境に十分配慮した断熱材を提供する。
【解決手段】複数の板状体11が積層した積層体12からなる断熱材10であって、各板状体11は、発泡材料を押出発泡した、複数の棒状の発泡体13が一方向に配向して一体化され、かつ、積層方向に隣り合う板状体11が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層していることを特徴とする断熱材10。
【解決手段】複数の板状体11が積層した積層体12からなる断熱材10であって、各板状体11は、発泡材料を押出発泡した、複数の棒状の発泡体13が一方向に配向して一体化され、かつ、積層方向に隣り合う板状体11が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層していることを特徴とする断熱材10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床下、天井、壁、屋根等に施工される断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅等の建物の床下、天井、壁、屋根等には、断熱材が施工されている。例えば、床下の場合、大引きや根太等の間に断熱材が配置され、該断熱材の上に下地合板等が設置される。
【0003】
断熱材としては、例えば、ポリプロピレンと古紙とでんぷんとを含む発泡材料を押出発泡させた断熱材(特許文献1、2参照。)、発泡スチロール等の発泡合成樹脂を用いた断熱材(特許文献3参照。)、ポリスチレン樹脂やポリウレタン樹脂などの発泡樹脂系断熱材(特許文献4参照。)などが知られている。
特許文献1に記載の断熱材は、発泡材料を複数の小穴から押出すと共に発泡させた複数の発泡体を、板状に一体成形して製造される。このように、複数の発泡体を板状に一体成形して断熱材を製造する方法は、他にも提案されている(特許文献5〜7参照。)。
一方、特許文献2〜4に記載の断熱材は、発泡材料を板状に押出し成形して製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4069255号公報
【特許文献2】特開2003−41041号公報
【特許文献3】特開2006−291461号公報
【特許文献4】特開2008−196270号公報
【特許文献5】特許第3393341号公報
【特許文献6】特表2004−500998号公報
【特許文献7】特開2007−204590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の断熱材は、古紙やでんぷんを多く含むので環境に配慮しているものの、剛性が低かった。そのため、例えば大引きなどの枠体に配置すると自重により断熱材が撓んで中央が落ち込み、断熱材上に設置される下地合板との間に隙間が生じて、断熱性が低下することがあった。
特許文献3、4に記載の断熱材は、環境への配慮が必ずしも十分ではなかった。さらに、ポリスチレン樹脂を用いた断熱材は、断熱性が不十分となりやすかった。断熱性を向上させるには、断熱材を厚くすればよい。しかし、断熱材を厚くすると、この断熱材を配置する枠体自体の大きさも断熱材の厚さに応じて変えて、断熱材を収める空間を確保する必要があり、コストがかかりやすかった。
【0006】
また、特許文献1、5〜7に記載のように複数の発泡体を板状に一体成形したり、特許文献2〜4に記載のように発泡材料を板状に押出し成形したりして得られる断熱材では、剛性を十分に満足できなかった。そのため、枠体に配置すると自重により断熱材が撓んで中央が落ち込み、隙間が生じて断熱性が低下することがあった。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、優れた断熱性を発揮でき、かつ環境に十分配慮した断熱材を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の断熱材は、複数の板状体が積層した積層体からなる断熱材であって、各板状体は、発泡材料を押出発泡した、複数の棒状の発泡体が一方向に配向して一体化され、かつ、積層方向に隣り合う板状体が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層していることを特徴とする。
ここで、本発明の断熱材は、枠体の中に配置される。
また、前記積層体の側面のうち、枠体に接触する側面が傾斜していることが好ましい。
さらに、前記枠体に接触する側面は、積層体の上面または底面から、それに対向した底面または上面に向かって内側に傾斜し、かつ前記枠体に接触する側面のうち少なくとも1つが、積層体の上面と底面のうち広がっている方の面を含む板状体の発泡体の配向方向に直交する面であり、前記広がっている方の面を含む板状体は、該板状体の発泡体の両端側の側面近傍に、発泡体の配向方向に直交した溝が、前記両端側の側面に沿って形成されたことが好ましい。
【0009】
また、前記枠体が、互いに平行に延びる枠部材からなる場合、前記積層体の側面のうち、枠体に接触しない側面と、その反対側の側面が同じ方向に傾斜していることが好ましい。
さらに、前記枠体が、互いに平行に延びる枠部材からなる場合、積層方向に隣接する板状体のいずれかが、枠体に接触しない側面と、その反対側の側面を結ぶ方向にずれていることが好ましい。
また、前記枠体が、格子状である場合、各板状体は、発泡体の配向方向に平行な側面が傾斜していることが好ましい。
さらに、前記積層体の底面に、該底面に対向する上面を含む板状体の発泡体の配向方向に平行な方向に、断熱材の厚さより長くなるように延出して、透湿性を有する補強シートが貼り合わされたことが好ましい。
また、前記発泡材料が、ポリオレフィン樹脂と、セルロースと、でんぷんとを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた断熱性を発揮でき、かつ環境に十分配慮した断熱材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の断熱材が枠体に配置された状態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の断熱材の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す断熱材の側面図であり、(a)は図2に示す断熱材をA側から見たときの側面図であり、(b)は図2に示す断熱材をB側から見たときの側面図である。
【図4】図3のX円部の拡大図であり、(a)は第一および第二の可動片部が変形する前の状態を示す図であり、(b)は変形した後の状態を示す図である。
【図5】図2に示す断熱材をA側から見たときの断熱材と枠体との関係を示す断面図であり、(a)は断熱材が枠体に配置される前の状態を示す断面図であり、(b)は配置された後の状態を示す断面図である。
【図6】図2に示す断熱材をB側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図である。
【図7】断熱材の製造方法の一例を説明する工程図であり、(a)は板状体の積層工程を示す図であり、(b)は積層体の接触側面を切り取る工程を示す図であり、(c)は積層体の非接触側面を切り取る工程を示す図であり、(d)は積層体の底面に補強シートを貼り合わせる工程を示す図である。
【図8】(a)は図2に示す断熱材をB側から見たときの他の例を示す側面図であり、(b)は(a)に示す断熱材が枠材に配置された状態を示す断面図である。
【図9】枠体の他の例を示す斜視図である。
【図10】断熱材の他の例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)に示す断熱材をC側から見たときの側面図であり、(c)は(a)に示す断熱材をD側から見たときの側面図である。
【図11】(a)は図10(a)に示す断熱材をC側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図であり、(b)は図10(a)に示す断熱材をD側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図である。
【図12】断熱材の他の例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)に示す断熱材をE側から見たときの側面図であり、(c)は(a)に示す断熱材をF側から見たときの側面図である。
【図13】(a)は図12(a)に示す断熱材をE側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図であり、(b)は図12(a)に示す断熱材をF側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図である。
【図14】枠体の他の例を示す斜視図である。
【図15】断熱材の他の例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)に示す断熱材をG側から見たときの側面図であり、(c)は(a)に示す断熱材をH側から見たときの側面図である。
【図16】(a)は図15(a)に示す断熱材をG側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図であり、(b)は図15(a)に示す断熱材をH側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図である。
【図17】実施例および比較例で製造した断熱材を構成する各板状体の発泡体の配向方向を模式的に示す図であり、(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は実施例3、(d)は実施例4、(e)は比較例1である。
【図18】実施例および比較例で評価した撓み量の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。
[第一の実施形態]
図1は、本発明の断熱材が枠体に配置された床構造の一例を示す斜視図であり、断熱材10が、互いに平行に延びる枠部材(大引き)110からなる枠体100に配置されている。
図2は、図1に示す枠体100に配置される断熱材の一例を示す斜視図であり、図3は図2に示す断熱材の側面図である。
なお、本発明においては、以下に示す図3〜17において図2と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。また、なお、図1〜18においては、説明の便宜上、寸法比などは実際のものと異なったものである。
【0013】
図2に示す断熱材10は、3枚の板状体11が積層した積層体12からなる。なお、本発明においては、この例の積層体12を構成する3枚の板状体11を、上から順に第一の板状体11a、第二の板状体11b、第三の板状体11cとする。
各板状体11は、発泡材料を押出発泡した、複数の棒状の発泡体13が一方向に配向して一体化され、板状に形成されている。発泡材料としては、ポリオレフィン樹脂と、セルロールと、でんぷんとを含む材料を用いるのが好ましい。
【0014】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
セルロースとしては、新聞紙や雑誌等の古紙を原料として用いることができる。古紙は粉砕機により所望の大きさに粉砕されて用いられる。
でんぷんとしては、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、小麦澱粉、米澱粉などを用いることができる。
【0015】
発泡材料100質量%中の各成分の割合は、ポリオレフィン樹脂が30〜50質量%であることが好ましく、セルロースが10〜40質量%であることが好ましく、でんぷんが20〜40質量%であることが好ましい。
また、発泡材料には、必要に応じて酸化防止剤、防かび剤、顔料など、断熱材に用いられる各種添加剤を含有させてもよい。
本発明の断熱材10は、セルロース(古紙)やでんぷんを含む板状体11より構成されるので、環境に十分配慮している。
【0016】
板状体11は、例えば以下のようにして形成できる。
まず、上述した材料を複数の細孔を有するダイより押出しながら発泡させ、細孔の数に応じた複数の棒状の発泡体13が一方向に配向し、かつ各発泡体13が互いに隙間なく密着して一体化した集合体を得る。発泡の際は、発泡剤として水を用いるのが好ましい。
そして、集合体を板状に成形し、板状体11を得る。
板状体11の厚さは、5〜50mmが好ましく、20〜50mmがより好ましい。
【0017】
積層体12は、積層方向に隣り合う板状体11が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層して構成されている。
すなわち、図2に示す積層体12は、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と、第二の板状体11bの発泡体13bの配向方向とが略直交し、かつ第二の板状体11bの発泡体13bの配向方向と、第三の板状体11cの発泡体13cの配向方向とが略直交している。また、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と、第三の板状体11cの発泡体13cの配向方向は、同じ方向である。
なお、本発明において、「略直交」とは、90°±10°の範囲内を意味する。
【0018】
板状体11は、発泡体13の配向方向と平行な方向に対する剛性には優れるものの、配向方向と直交する方向に対する剛性が低く、直交方向から板状体に外力が加わると弾性変形して撓みやすい。
しかし、上述したように、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように、隣り合う板状体11同士を積層させると、断熱材10はいずれの方向に対しても優れた剛性を発現できる。
すなわち、各板状体11は、それぞれの発泡体13の配向方向と平行な方向に対して優れた剛性を発現できるので、発泡体13の配向方向が略直交するように各板状体11を積層すると、各板状体が剛性を発現する方向も略直交することになる。従って、例えば第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と平行な方向から断熱材10に外力が加わっても、第一の板状体11aおよび第三の板状体11cの剛性により断熱材10は撓みにくい。また、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と直交する方向から断熱材10に外力が加わっても、第二の板状体11bの剛性により断熱材10は撓みにくい。
【0019】
よって、本発明の断熱材10は、いずれの方向から外力が加わっても剛性に優れるので撓みにくい。そのため、枠体に配置したときに断熱材が撓んで中央が落ち込むことが軽減され、断熱材上に設置される下地合板との間に隙間が生じにくく、優れた断熱性を発揮できる。
【0020】
ここで、図1、2に示す断熱材10において、積層体12の側面14のうち、積層体12の上面15を含む第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向に直交する側面14a、14bを、枠体110に接触する側面(以下、「接触側面」という場合がある。)とし、発泡体13aの配向方向に平行な側面14c、14dを、枠体110に接触しない側面(以下、「非接触側面」という場合がある。)とする。
また、断熱材10を図中のA側(非接触側面14c側)から見たときの断熱材の側面図を図3(a)に、断熱材10を図中のB側(接触側面14a側)から見たときの断熱材の側面図を図3(b)に示す。
【0021】
図2に示す断熱材10は、積層体12の側面14のうち、接触側面14a、14bが、図3(a)に示すように、積層体12の上面15から、それに対向した底面16に向かって内側に傾斜している。また、非接触側面14c、14dが、図3(b)に示すように、同じ方向に傾斜している。
積層体12の接触側面14a、14b、および非接触側面14c、14dの傾斜の程度は、枠体を構成する枠部材の間隔などに応じて適宜設定されるので一概には決められないが、例えば接触側面14a、14bの傾斜角度αは5〜12°が好ましく、非接触側面14c、14dの傾斜角度βは5〜12°が好ましい。
【0022】
さらに、断熱材10は、図3(a)に示すように上面15が底面16よりも広がっている。そして、上面15を含む第一の板状体11aには、この第一の板状体11aの側面のうち、発泡体13aの両端側の側面17近傍に、発泡体13aの配向方向に直交した溝18が2本ずつ、前記両端側の側面17に沿って形成されている。
具体的には、図4(a)に示すように、第一の板状体11aのうち、第一の溝18aから外側の部分が第一の可動片部19a、第一の溝18aと第二の溝18bで囲まれた部分が第二の可動片部19b、第二の溝18bから内側の部分が非可動部19cとなっている。そして、前記両端側の側面17側から外力が加わると、図4(b)に示すように、第一の可動片部19aは変形して第二の可動片部19bに接触する。同時に、第二の可動片部19bは第一の可動片部19aに押されて変形し、非可動部19cに接触する。
【0023】
第一の板状体11aに形成される溝18の形成位置は、第一の溝18aから側面17までの距離d1が10〜50mmであること好ましく、第二の溝18bから側面17までの距離d2が55〜100mmであることが好ましい。
また、第一の溝18aおよび第二の溝18bの幅18wは2〜5mmであることが好ましい。なお、第一の溝18aおよび第二の溝18bの幅18wは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
さらに、第一の溝18aおよび第二の溝18bの深さ18hは、第一の板状体11aの厚さと同じであってもよいし、第一の板状体11aの厚さより浅くてもよいが、同じであることが好ましい。
【0024】
断熱材10は、図5(a)に示すように、積層体12の底面16の幅(図2の断熱材10をA側から見たときの幅)16wは枠部材110同士の距離110wよりも若干狭く、かつ接触側面14a、14bが上面15から底面16に向かって内側に傾斜している。そして、積層体12の上面15の幅(図2の断熱材10をA側から見たときの幅)15wは、枠部材110同士の距離110wよりも広く、枠部材110間からはみ出る部分が発生する。しかし、断熱材10は弾性を有するので、断熱材10が枠部材110間に挿入される際に、接触側面14a、14bが枠部材110に押し付けられ、前記はみ出る部分が枠部材110間に押し込まれる。従って、図5(b)に示すように、断熱材10がより隙間なく枠部材110間に配置される。
【0025】
なお、第二の板状体11bは、その側面のうち、発泡体の配向方向に平行な側面が接触側面14a、14bに相当する。板状体は発泡体の配向方向と直交する方向、すなわち発泡体の配向方向に平行な側面側からの外力に対する剛性が低いので、接触側面14a、14b側から外力が加わると第二の板状体11bは弾性変形しやすい。従って、断熱材10が枠部材110間に挿入されるときに接触側面14a、14bが押し付けられると、第二の板状体11bが弾性変形するので、断熱材10は枠部材110間に押し込まれやすい。
【0026】
一方、第一の板状体11aは、発泡体の配向方向に直交する側面が接触側面14a、14bに相当する。板状体は発泡体の配向方向と平行な方向、すなわち発泡体の配向方向と直交する側面側からの外力に対する剛性に優れるので、接触側面14a、14b側から外力が加わっても第一の板状体11aは第二の板状体11bに比べて弾性変形しにくい。
しかし、第一の板状体には、上述したように発泡体の配向方向に直交する側面(すなわち、発泡体の両端側の側面)近傍に溝18が形成されている。この溝18が形成されることで、断熱材10が枠部材110に押し付けられると、図4(b)に示すように、第一の可動片部19aおよび第二の可動片部19bが変形するので、断熱材10が枠部材110間に押し込まれやすくなる。
なお、第三の板状体11cは、第一の板状体11aと同様に接触側面14a、14b側から外力が加わっても弾性変形しにくい。しかし、積層体12の底面16を含む第三の板状体11cは、枠部材110間から殆どはみ出ることがないので、枠部材110間に容易に押し込むことができる。
【0027】
また、断熱材10は、図3(b)に示すように、積層体12の非接触側面14c、14dが同じ方向に傾斜している。従って、図1に示すように、枠部材110の長手方向に断熱材10を一列に並べて配置したときに、隣り合う断熱材同士が配列方向(左右方向)のみならず、上下方向からも押し付け合いながら互いに支持し合うので(図6参照)、より隙間なく断熱材10を配置することができる。
【0028】
さらに、断熱材10は、図2に示すように、積層体12の底面16に、補強シート20が貼り合わされている。
補強シート20は、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向に平行な方向に、断熱材10の厚さより長くなるように延出して、積層体12の底面16に貼り合わされている。図5(b)に示すように、補強シート20の延出部分20aは、断熱材10を枠部材110間に配置するときに、枠部材110にタッカーなどで釘打ちされて固定される。従って、断熱材10が枠部材110間から脱落するのを効果的に抑制できる。
【0029】
補強シート20としては、不織布が好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製などの不織布が好適である。
また、補強シート20は、引張強度が10N以上であることが好ましい。上述したように、断熱材10を枠部材110間に配置するときに、補強シート20はその延出部分20aが枠部材110に釘打ちされて固定される。そのため、補強シート20は引っ張られやすいが、引張強度が10N以上であれば、引っ張られても破れにくい。
なお、補強シート20の引張強度は、JIS L 1906により測定される。
【0030】
さらに、補強シート20は、透湿性を有することが好ましい。セルロースを含む断熱材や、該断熱材の上に設置される下地合板は吸湿性を有するので、室内の湿気等を含むと断熱材や下地合板が乾燥しにくいことがあった。また、特に2×4工法により建築する場合、建築途中で下地合板が雨に曝されると、雨水が下地合板と断熱材との間に溜まってしまうことがあった。
透湿性を有する補強シート20を積層体12の底面16に貼り合わせることで、断熱材10や下地合板が吸湿したときにその水分を逃がすことができ、断熱材や下地合板が乾きやすくなる。また、建築途中で下地合板が雨に曝されても、雨水が溜まりにくい。
【0031】
ついで、図2に示す断熱材10の製造方法の一例について説明する。
まず、板状体11を上述した方法により3枚作製する。
ついで、図7(a)に示すように、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と、第二の板状体11bの発泡体13bの配向方向とが、また第二の板状体11bの発泡体13bの配向方向と、第三の板状体11cの発泡体13cの配向方向とが、それぞれ略直交するように、各板状体を積層させ、積層体を得る。各板状体は、接着剤(例えば酢酸ビニル系接着剤)や、両面接着テープなどにより互いを貼り合わせることで積層させる。接着剤は、板状体同士が貼り合わさる(接触する)面の全面に塗布してもよいし、点状や線状に塗布してもよい。両面接着テープの貼着箇所についても、接着剤の塗布位置と同様である。
【0032】
ついで、得られた積層体12の接触側面14a、14bが、積層体12の上面15から底面16に向かって内側に傾斜するように、積層体12の接触側面14a、14bを切り取る(図7(b))。同様に、積層体12の非接触側面14c、14dが同じ方向に傾斜するように、積層体12の非接触側面14c、14dを切り取る(図7(c))。
さらに、図7(b)に示すように、第一の板状体11aの側面のうち、発泡体の両側端の側面17の近傍に、該発泡体の配向方向に直交し、かつ側面17に沿うようにして、溝18を2本ずつ形成する。
【0033】
ついで、図7(d)に示すように、積層体12の底面16に、第一の板状体11aの発泡体の配向方向に平行な方向に、断熱材10の厚さより長くなるように延出して、補強シート20を貼り合わせ、断熱材10を得る。
補強シート20は、接着剤(例えば酢酸ビニル系接着剤)、両面接着テープ、タッカーなどにより、積層体12の底面16に貼り合わされる。接着剤は、積層体12の底面16に、点状や線状に塗布するのが好ましい。断熱材10は、枠体に配置するときに枠体の大きさに合わせて切断することがある。粘着剤が積層体12の底面16の全面に塗布されていると、補強シート20はより強固に底面16に貼り合わされることになる。すなわち、補強シート20は、底面16から剥がれにくくなるので、断熱材10を切断する際に補強シート20も一緒に切断してしまうこととなる。接着剤を底面16に点状や線状に塗布しておけば、全面貼着に比べて補強シート20を底面16から意図的に剥がしやすくなるので、断熱材10を切断することがあっても、補強シート20を一緒に切断しなくてすむ。ただし、補強シート20が不用意に底面16から剥がれないようにするために、底面16の4箇所の角部全てには少なくとも接着剤を塗布するのが好ましい。
なお、両面接着テープの貼着箇所やタッカーの打ち付け位置についても、接着剤の塗布位置と同様である。
【0034】
以上説明した断熱材10は、セルロース(古紙)やでんぷんを含む板状体より構成されるので、環境に十分配慮している。
また、断熱材10は、積層方向に隣り合う板状体が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層しているので、いずれの方向に対しても優れた剛性を発現でき、撓みにくい。そのため、枠体に配置したときに断熱材が撓んで中央が落ち込むことが軽減され、断熱材上に設置される下地合板との間に隙間が生じにくく、優れた断熱性を発揮できる。
【0035】
本発明の断熱材は、上述した断熱材10に限定されない。
例えば、積層体を構成する板状体の数は3枚に限定されず、2枚であってもよいし、4枚以上であってもよいが、板状体の数が多くなるほど断熱材は優れた剛性を発現しやすくなる。ただし、板状体の数が多くなるとその分、断熱材が厚くなる。断熱材が厚くなると、枠体自体の大きさ(深さ)も断熱材の厚さに応じて変えて、断熱材を収める空間を確保する必要がある。そのため、板状体の数を増やす場合は、各板状体の厚さを薄くして、断熱材全体の厚さが厚くならないようにするのが好ましい。
【0036】
また、積層体は、接触側面が積層体の上面から底面に向かって内側に傾斜するものに限定されず、接触側面が底面から上面に向かって内側に傾斜していてもよい。
【0037】
さらに、積層体は、非接触側面が同じ方向に傾斜するものに限定されず、例えば図8(a)に示すように、積層方向に隣接する板状体11のいずれかが、枠体に接触しない側面(非接触側面)14cと、その反対側の側面(非接触側面)14dを結ぶ方向にずれていてもよい。板状体11のいずれかが非接触側面14c、14dを結ぶ方向にずれていることで、枠部材の長手方向に断熱材10を一列に並べて配置したときに、隣り合う断熱材10同士が図8(b)に示すように合いじゃくり状となるので、より隙間なく断熱材10を配置することができる。
【0038】
[第二の実施形態]
第一の実施形態では図1に示すように、断熱材10が、互いに平行に延びる枠部材(大引き)110からなる枠体100に配置される場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば断熱材が、図9に示すような、互いに平行に延びる枠部材210aと、これら枠部材210aを掛け渡すように互いに平行に延びる枠部材210bからなる格子状の枠体200に配置される場合、断熱材は積層体の全ての側面が枠体200に接触する。従って、図10(a)に示すように、断熱材30は、積層体12の全ての側面14が傾斜しているのが好ましい。傾斜の向きについては特に制限されないが、枠体に挿入しやすい点で、図10(b)、(c)に示すように、各側面14は積層体12の上面15から底面16に向かって内側に傾斜しているのが好ましい。
なお、図10(b)は図10(a)に示す断熱材30をC方向から見たときの側面図であり、図10(c)はD方向から見たときの側面図である。
【0039】
また、断熱材30は、図2に示す断熱材10と同様に、上面15を含む第一の板状体11aの側面のうち、発泡体13aの両端側の側面17近傍に、発泡体13aの配向方向に直交した溝18が2本ずつ、前記両端側の側面17に沿って形成されている。
【0040】
断熱材30は、積層体12の底面16の一方の幅(図10の断熱材30をC側から見たときの幅)16wおよび他方の幅(図10の断熱材30をD側から見たときの幅)16’wは、図9に示す枠体200の枠部材210a同士の距離210wおよび枠部材210b同士の距離210’wよりも若干狭く、かつ各側面14が上面15から底面16に向かって内側に傾斜している。そして、積層体12の上面15は枠体よりも大きいため、枠体からはみ出る部分が発生する。しかし、断熱材30は弾性を有するので、断熱材30が枠体に挿入される際に、各側面14が枠体に押し付けられ、前記はみ出る部分が枠体に押し込まれる。従って、断熱材30がより隙間なく枠体に配置される。
【0041】
なお、第一の板状体11aには、上述したように発泡体の配向方向に直交する側面(すなわち、発泡体の両端側の側面)近傍に溝18が形成されている。溝18が形成されていることで、断熱材30が格子状の枠体に挿入される際に、該枠体を構成する枠部材に押し付けられると、図4(b)に示すように、第一の可動片部19aおよび第二の可動片部19bが変形するので、断熱材30が枠体に押し込まれやすくなる。ここで、図10のC側から見たときの断熱材30が図9に示す枠体200に配置された状態を図11(a)に示す。
【0042】
また、第一の板状体11aの側面のうち、残りの側面(すなわち、発泡体13aの配向方向に平行な側面)は弾性変形しやすい。従って、断熱材30が格子状の枠体に挿入される際に、該枠体を構成する枠部材に押し付けられると、第一の板状体11aの前記残りの側面が弾性変形するので、断熱材30が枠体に押し込まれやすい。従って、第一の板状体11aの残りの側面近傍には、該側面に沿った溝を形成する必要がない。ここで、図10のD側から見たときの断熱材30が図9に示す枠体200に配置された状態を図11(b)に示す。
【0043】
[第三の実施形態]
図9に示すような格子状の枠体200に断熱材を配置する場合、断熱材としては図12に示す断熱材40でもよい。ここで、断熱材40について具体的に説明する。なお図12(a)は断熱材40の斜視図であり、図12(b)は図12(a)に示す断熱材40をE側から見たときの側面図であり、図12(c)は図12(a)に示す断熱材40をF側から見たときの側面図である。
【0044】
図12に示す断熱材40は、第一の板状体41aと第二の板状体41bとが、それぞれの発泡体の配向方向が略直交するように積層した積層体42からなる。
図12(b)、(c)に示すように、第一の板状体41aは、発泡体43aの配向方向に平行な側面411aが、第一の板状体41aの上面412aから底面413aに向かって内側に傾斜している。また、発泡体43aの配向方向に直交する側面414aは、上面412aおよび底面413aに対して垂直である。
一方、第二の板状体41bは、発泡体43bの配向方向に平行な側面411bが、第二の板状体41bの上面412bから底面413bに向かって内側に傾斜している。また、発泡体43bの配向方向に直交する側面414bは、上面412bおよび底面413bに対して垂直である。
そして、第一の板状体41aの側面(傾斜側面)411aは、第二の板状体41bの側面(垂直側面)414bよりも外側に迫り出し、第二の板状体41bの側面(傾斜側面)411bは、第一の板状体41aの側面(垂直側面)414aよりも外側に迫り出している。
【0045】
断熱材40は、第一の板状体41aの上面412aおよび底面413aの幅(図12の断熱材40をF側から見たときの幅)46wは、図9に示す枠体200の枠部材210a同士の距離210wよりも若干狭い。そして、第二の板状体41bの、第一の板状体41aの垂直側面414aよりも外側に迫り出した部分は、枠体からはみ出る。
また、断熱材40は、第二の板状体41bの上面412bおよび底面413bの幅(図12の断熱材40をE側から見たときの幅)46’wは、図9に示す枠体200の枠部材210b同士の距離210’wよりも若干狭い。そして、第一の板状体41aの、第二の板状体41bの垂直側面414bよりも外側に迫り出した部分は、枠体からはみ出る。
【0046】
しかし、上述したように、板状体は発泡体の配向方向と直交する方向、すなわち、発泡体の配向方向に平行な側面側からの外力に対する剛性が低く、弾性変形しやすい。
断熱材40が枠体に挿入されると、第二の板状体41bの迫り出した部分は、枠部材によって発泡体43bの配向方向と直交する方向へ押し付けられる。一方、第一の板状体41aの迫り出した部分は、枠部材によって発泡体43aの配向方向と直交する方向へ押し付けられる。その結果、各板状体の迫り出した部分が弾性変形し、断熱材40が枠体に押し込まれ、隙間なく配置される。
ここで、図12のE側およびF側から見たときの断熱材40が図9に示す枠体200に配置された状態を図13(a)、(b)にそれぞれ示す。
【0047】
図12に示す断熱材40は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、第一の板状体41aおよび第二の板状体41bを作製する。
ついで、第一の板状体41aの発泡体43aの配向方向に平行な側面411aを、上面412aから底面413aに向かって内側に傾斜するように切り取る。第二の板状体41bについても同様の操作を行う。
ついで、第一の板状体41aの発泡体43aの配向方向と、第二の板状体41bの発泡体43bの配向方向とが略直交するように、各板状体を積層させ、積層体42を得る。各板状体は、接着剤や両面接着テープなどにより互いを貼り合わせることで積層させる。
ついで、第二の板状体41bの底面413bに、第一の板状体41aの発泡体43aの配向方向に平行な方向に、断熱材40の厚さより長くなるように延出して、補強シート20を貼り合わせ、断熱材40を得る。補強シート20は、接着剤、両面接着テープ、タッカーなどにより、第二の板状体41bの底面413bに貼り合わされる。
【0048】
[第四の実施形態]
第一の実施形態〜第三の実施形態では、枠部材として大引きを想定して説明したが、本発明はこれに限定されない。
断熱材は、例えば図14に示すように、互いに平行に延びる大引き310と、該大引き310上に取り付けられ、大引き310に対して直交方向に延びる根太320とからなる枠体300に配置される場合もある。
このような枠体300に断熱材を配置する場合、断熱材としては上述した断熱材10(図2など)を用いてもよいが、例えば図15に示す断熱材50でもよい。ここで、断熱材50について具体的に説明する。なお図15(a)は断熱材50の斜視図であり、図15(b)は図15(a)に示す断熱材50をG側から見たときの側面図であり、図15(c)は図15(a)に示す断熱材50をH側から見たときの側面図である。
【0049】
断熱材50は、第一の板状体51aと第二の板状体51bからなる積層物52’に、第三の板状体51cが積層した積層体52である。
積層体52は、第一の板状体51aの発泡体53aの配向方向と、第二の板状体51bの発泡体53bの配向方向とが略直交し、かつ第二の板状体51bの発泡体53bの配向方向と、第三の板状体51cの発泡体53cの配向方向とが略直交している。
【0050】
断熱材50は、積層物52’の厚さと図14に示す枠体300を構成する根太320の厚さがほぼ一致し、第三の板状体31cの厚さと大引き310の厚さがほぼ一致している。
そして、断熱材50は、積層物52’が根太320に接触しつつ、根太320の長手方向に一列に配列される。
【0051】
断熱材50は、積層物52’の側面54のうち、根太320に接触する側面が、積層物52’の上面55から、それに対向した底面56に向かって内側に傾斜している。また、根太320に接触しない側面と、その反対側の側面が同じ方向に傾斜している。
なお、断熱材50において、積層物52’の側面54のうち、積層物52’の上面55を含む第一の板状体51aの発泡体53aの配向方向に直交する側面54a、54bを、根太320に接触する側面(以下、「接触側面」という場合がある。)とし、発泡体53aの配向方向に平行な側面54c、54dを、根太320に接触しない側面(以下、「非接触側面」という場合がある。)とする。
【0052】
さらに、第一の板状体51aには、この第一の板状体51aの側面のうち、発泡体53aの両端側の側面57近傍に、発泡体53aの配向方向に直交した溝58が2本ずつ、前記両端側の側面57に沿って形成されている。
【0053】
断熱材50は、図15(b)に示すように、積層物52’の底面56の一方の幅(図15の断熱材50をG側から見たときの幅)561wと、第三の板状体51cの発泡体53cの長さ562wとが一致している。
そして、積層物52’の底面56の一方の幅561w、および第三の板状体51cの発泡体53cの長さ562wは、図14に示す枠体300の根太320同士の距離320wよりも若干狭い。一方、積層物52’の上面55の幅(図15の断熱材50をG側から見たときの幅)55wは、根太320同士の距離320wよりも広く、根太320間からはみ出る部分が発生する。しかし、第一の板状体51aには上述した溝58が形成されているので、根太320に押し付けられると、図4(b)に示すように、第一の可動片部19aおよび第二の可動片部19bが変形する。また、第二の板状体51bは根太320に押し付けられると弾性変形しやすい。従って、図16(a)に示すように、断熱材50がより隙間なく根太320間に配置される。
【0054】
一方、図15(c)に示すように、積層物52’の底面56の他方の幅(図15の断熱材50をH側から見たときの幅)563wは、第三の板状体51cの幅(図15の断熱材50をH側から見たときの幅)564wよりも長く、積層物52’が第三の板状体51cから迫り出している。
そして、第三の板状体51cの幅564wは、図14に示す枠体300の大引き310同士の距離310wよりも若干狭い。
断熱材50が枠体300に挿入されると、図16(b)に示すように、第三の板状体51cが大引き310間に嵌るようにして、断熱材50が枠体300に配置される。
なお、断熱材50は、積層物52’の非接触側面54c、54dが同じ方向に傾斜しているので、根太320の長手方向に断熱材50を一列に並べて配置したときに、隣り合う断熱材50同士が配列方向(左右方向)のみならず、上下方向からも押し付け合いながら互いに支持し合うので、より隙間なく断熱材50を配置することができる。
【0055】
図14に示す断熱材50は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、第一の板状体51a、第二の板状体51b、第三の板状体51cをそれぞれ所望の大きさになるように作製する。
ついで、第一の板状体51aの発泡体53aの配向方向と、第二の板状体51bの発泡体53bの配向方向とが略直交するように、各板状体を積層させ、積層物52’を得る。各板状体は、接着剤や両面接着テープなどにより互いを貼り合わせることで積層させる。
ついで、得られた積層物52’の接触側面54a、54bが、積層物52’の上面55から底面56に向かって内側に傾斜するように、積層物52’の接触側面54a、54bを切り取る。同様に、積層物52’の非接触側面54c、54dが同じ方向に傾斜するように、積層物52’の非接触側面54c、54dを切り取る。
さらに、第一の板状体51aの側面のうち、発泡体の両側端の側面57の近傍に、該発泡体の配向方向に直交し、かつ側面57に沿うようにして、溝58を2本ずつ形成する。
ついで、接着剤や両面接着テープなどを用いて、第二の板状体51bの発泡体53bの配向方向と、第三の板状体51cの発泡体53cの配向方向とが略直交するように、績層物52’の底面56に第三の板状体51cを貼り合わせる。
ついで、第三の板状体51bの底面に、第一の板状体51aの発泡体53aの配向方向に平行な方向に、断熱材50の厚さより長くなるように延出して、補強シート20を貼り合わせ、断熱材50を得る。補強シート20は、接着剤、両面接着テープ、タッカーなどにより、第三の板状体51bの底面に貼り合わされる。
【0056】
以上説明した本発明の断熱材は、積層方向に隣り合う板状体が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層しているので、いずれの方向に対しても優れた剛性を発現でき、撓みにくい。そのため、枠体に配置したときに断熱材が撓んで中央が落ち込むことが軽減され、断熱材上に設置される下地合板との間に隙間が生じにくく、優れた断熱性を発揮できる。
【0057】
なお、本発明の断熱材は、床構造用の断熱材に限定されず、例えば壁用や天井用の断熱材としても好適である。
本発明の断熱材を壁用として用いる場合、断熱材は柱と柱の間、柱と間柱の間などに配置される。また、天井用として用いる場合、断熱材は垂木と垂木の間などに配置される。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
<板状体の作製>
ポリプロピレン樹脂45質量部と、セルロース35量部と、でんぷん20質量部とを混合し、発泡材料を調製した。
得られた発泡材料を複数の細孔を有するダイより押出しながら発泡させ、細孔の数に応じた複数の棒状の発泡体が一方向に配向し、かつ各発泡体が互いに隙間なく密着して一体化した集合体を得た。発泡の際には、発泡剤として水を用いた。
得られた集合体を板状(大きさ:縦820mm×横820mm×厚さ30mm)に成形し、板状体を作製した。
【0060】
<断熱材の製造>
得られた板状体3枚を、酢酸ビニル系接着剤を用いて貼り合わせて積層体(大きさ:縦820mm×横820mm×厚さ90mm、重さ:1400g)を作製し、これを断熱材とした。
なお、3枚の板状体を貼り合わせる際は、図17(a)に示すように、第一の板状体61aの発泡体の配向方向と、第二の板状体61bの発泡体の配向方向が直交し、第二の板状体61bの発泡体の配向方向と、第三の板状体61cの発泡体の配向方向とが直交するように、各板状体を積層させた。なお、各板状体の発泡体の配向方向を図中、矢印で示す。
【0061】
<撓み量の測定>
得られた断熱材を用い、以下のようにして撓み量を測定した。
図18(a)に示すように、互いに平行に延びる支持部材400(支持部材400間の距離400w:800mm)上に断熱材60を載せ、該断熱材60を支持した。断熱材60の向きは、第一の板状体61aの発泡体の配向方向と、支持部材400の延出方向が平行になるようにした。
そして、図18(b)に示すように、断熱材60が自重にて撓んだときの撓み量(最も落ち込んだ部分の落ち込み深さt(mm))を測定した。結果を表1に示す。
なお、断熱材を構成する各板状体の発泡体の配向方向を表1に示す。表1中「平行」とは、支持部材400の延出方向と平行な方向を意味し、「直交」とは、支持部材400の延出方向と直交する方向を意味する。
【0062】
[実施例2]
3枚の板状体の発泡体の配向方向を表1、および図17(b)に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして断熱材を製造し、撓み量を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例3、4]
厚さが45mmになるように変更した以外は、実施例1と同様にして板状体を作製した。
得られた板状体を2枚用い、各板状体の発泡体の配向方向を表1、および図17(c)、(d)に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして断熱材を製造し、撓み量を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
3枚の板状体の発泡体の配向方向を表1、および図17(e)に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして断熱材を製造し、撓み量を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1から明らかなように、各実施例で得られた断熱材は、自重による撓みを抑制できた。
特に、第一の板状体61aの発泡体の配向方向が、支持部材400の延出方向と直交する方向になるように各板状体を積層した実施例2、4の断熱材は、撓み量が0mmであり、より効果的に撓みを抑制できた。
また、実施例1、3を比較すると、板状体の数の多い実施例1の方が、実施例3に比べてより撓みを抑制できることが示唆された。
一方、各板状体の発泡体の配向方向が全て同じ方向になるように、3枚の板状体を積層した比較例1の断熱材は、撓み量が10mmと多く、自重による撓みが発生した。
【符号の説明】
【0067】
10、30、40、50、60:断熱材
11:板状体
11a、41a、51a:第一の板状体
11b、41b、51b:第二の板状体
11c、51c:第三の板状体
12、42、52:積層体
52’:積層物
13、13a、13b、13c、43a、43b、53a、53b、53c:発泡体
14、54:側面
14a、14b、54a、54b:側面(接触側面)
14c、14d、54c、54d:側面(非接触側面)
411a、411b:側面(傾斜側面)
414a、414b:側面(垂直側面)
15、412a、412b、55:上面
16、413a、413b、56:底面
17、57:第一の板状体の側面
18、58:溝
20:補強シート
100、200、300:枠体
110、210、310:枠部材(大引き)
320:根太
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床下、天井、壁、屋根等に施工される断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅等の建物の床下、天井、壁、屋根等には、断熱材が施工されている。例えば、床下の場合、大引きや根太等の間に断熱材が配置され、該断熱材の上に下地合板等が設置される。
【0003】
断熱材としては、例えば、ポリプロピレンと古紙とでんぷんとを含む発泡材料を押出発泡させた断熱材(特許文献1、2参照。)、発泡スチロール等の発泡合成樹脂を用いた断熱材(特許文献3参照。)、ポリスチレン樹脂やポリウレタン樹脂などの発泡樹脂系断熱材(特許文献4参照。)などが知られている。
特許文献1に記載の断熱材は、発泡材料を複数の小穴から押出すと共に発泡させた複数の発泡体を、板状に一体成形して製造される。このように、複数の発泡体を板状に一体成形して断熱材を製造する方法は、他にも提案されている(特許文献5〜7参照。)。
一方、特許文献2〜4に記載の断熱材は、発泡材料を板状に押出し成形して製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4069255号公報
【特許文献2】特開2003−41041号公報
【特許文献3】特開2006−291461号公報
【特許文献4】特開2008−196270号公報
【特許文献5】特許第3393341号公報
【特許文献6】特表2004−500998号公報
【特許文献7】特開2007−204590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の断熱材は、古紙やでんぷんを多く含むので環境に配慮しているものの、剛性が低かった。そのため、例えば大引きなどの枠体に配置すると自重により断熱材が撓んで中央が落ち込み、断熱材上に設置される下地合板との間に隙間が生じて、断熱性が低下することがあった。
特許文献3、4に記載の断熱材は、環境への配慮が必ずしも十分ではなかった。さらに、ポリスチレン樹脂を用いた断熱材は、断熱性が不十分となりやすかった。断熱性を向上させるには、断熱材を厚くすればよい。しかし、断熱材を厚くすると、この断熱材を配置する枠体自体の大きさも断熱材の厚さに応じて変えて、断熱材を収める空間を確保する必要があり、コストがかかりやすかった。
【0006】
また、特許文献1、5〜7に記載のように複数の発泡体を板状に一体成形したり、特許文献2〜4に記載のように発泡材料を板状に押出し成形したりして得られる断熱材では、剛性を十分に満足できなかった。そのため、枠体に配置すると自重により断熱材が撓んで中央が落ち込み、隙間が生じて断熱性が低下することがあった。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、優れた断熱性を発揮でき、かつ環境に十分配慮した断熱材を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の断熱材は、複数の板状体が積層した積層体からなる断熱材であって、各板状体は、発泡材料を押出発泡した、複数の棒状の発泡体が一方向に配向して一体化され、かつ、積層方向に隣り合う板状体が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層していることを特徴とする。
ここで、本発明の断熱材は、枠体の中に配置される。
また、前記積層体の側面のうち、枠体に接触する側面が傾斜していることが好ましい。
さらに、前記枠体に接触する側面は、積層体の上面または底面から、それに対向した底面または上面に向かって内側に傾斜し、かつ前記枠体に接触する側面のうち少なくとも1つが、積層体の上面と底面のうち広がっている方の面を含む板状体の発泡体の配向方向に直交する面であり、前記広がっている方の面を含む板状体は、該板状体の発泡体の両端側の側面近傍に、発泡体の配向方向に直交した溝が、前記両端側の側面に沿って形成されたことが好ましい。
【0009】
また、前記枠体が、互いに平行に延びる枠部材からなる場合、前記積層体の側面のうち、枠体に接触しない側面と、その反対側の側面が同じ方向に傾斜していることが好ましい。
さらに、前記枠体が、互いに平行に延びる枠部材からなる場合、積層方向に隣接する板状体のいずれかが、枠体に接触しない側面と、その反対側の側面を結ぶ方向にずれていることが好ましい。
また、前記枠体が、格子状である場合、各板状体は、発泡体の配向方向に平行な側面が傾斜していることが好ましい。
さらに、前記積層体の底面に、該底面に対向する上面を含む板状体の発泡体の配向方向に平行な方向に、断熱材の厚さより長くなるように延出して、透湿性を有する補強シートが貼り合わされたことが好ましい。
また、前記発泡材料が、ポリオレフィン樹脂と、セルロースと、でんぷんとを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた断熱性を発揮でき、かつ環境に十分配慮した断熱材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の断熱材が枠体に配置された状態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の断熱材の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す断熱材の側面図であり、(a)は図2に示す断熱材をA側から見たときの側面図であり、(b)は図2に示す断熱材をB側から見たときの側面図である。
【図4】図3のX円部の拡大図であり、(a)は第一および第二の可動片部が変形する前の状態を示す図であり、(b)は変形した後の状態を示す図である。
【図5】図2に示す断熱材をA側から見たときの断熱材と枠体との関係を示す断面図であり、(a)は断熱材が枠体に配置される前の状態を示す断面図であり、(b)は配置された後の状態を示す断面図である。
【図6】図2に示す断熱材をB側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図である。
【図7】断熱材の製造方法の一例を説明する工程図であり、(a)は板状体の積層工程を示す図であり、(b)は積層体の接触側面を切り取る工程を示す図であり、(c)は積層体の非接触側面を切り取る工程を示す図であり、(d)は積層体の底面に補強シートを貼り合わせる工程を示す図である。
【図8】(a)は図2に示す断熱材をB側から見たときの他の例を示す側面図であり、(b)は(a)に示す断熱材が枠材に配置された状態を示す断面図である。
【図9】枠体の他の例を示す斜視図である。
【図10】断熱材の他の例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)に示す断熱材をC側から見たときの側面図であり、(c)は(a)に示す断熱材をD側から見たときの側面図である。
【図11】(a)は図10(a)に示す断熱材をC側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図であり、(b)は図10(a)に示す断熱材をD側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図である。
【図12】断熱材の他の例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)に示す断熱材をE側から見たときの側面図であり、(c)は(a)に示す断熱材をF側から見たときの側面図である。
【図13】(a)は図12(a)に示す断熱材をE側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図であり、(b)は図12(a)に示す断熱材をF側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図である。
【図14】枠体の他の例を示す斜視図である。
【図15】断熱材の他の例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)に示す断熱材をG側から見たときの側面図であり、(c)は(a)に示す断熱材をH側から見たときの側面図である。
【図16】(a)は図15(a)に示す断熱材をG側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図であり、(b)は図15(a)に示す断熱材をH側から見たときの断熱材が枠体に配置された状態を示す断面図である。
【図17】実施例および比較例で製造した断熱材を構成する各板状体の発泡体の配向方向を模式的に示す図であり、(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は実施例3、(d)は実施例4、(e)は比較例1である。
【図18】実施例および比較例で評価した撓み量の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。
[第一の実施形態]
図1は、本発明の断熱材が枠体に配置された床構造の一例を示す斜視図であり、断熱材10が、互いに平行に延びる枠部材(大引き)110からなる枠体100に配置されている。
図2は、図1に示す枠体100に配置される断熱材の一例を示す斜視図であり、図3は図2に示す断熱材の側面図である。
なお、本発明においては、以下に示す図3〜17において図2と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。また、なお、図1〜18においては、説明の便宜上、寸法比などは実際のものと異なったものである。
【0013】
図2に示す断熱材10は、3枚の板状体11が積層した積層体12からなる。なお、本発明においては、この例の積層体12を構成する3枚の板状体11を、上から順に第一の板状体11a、第二の板状体11b、第三の板状体11cとする。
各板状体11は、発泡材料を押出発泡した、複数の棒状の発泡体13が一方向に配向して一体化され、板状に形成されている。発泡材料としては、ポリオレフィン樹脂と、セルロールと、でんぷんとを含む材料を用いるのが好ましい。
【0014】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
セルロースとしては、新聞紙や雑誌等の古紙を原料として用いることができる。古紙は粉砕機により所望の大きさに粉砕されて用いられる。
でんぷんとしては、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、小麦澱粉、米澱粉などを用いることができる。
【0015】
発泡材料100質量%中の各成分の割合は、ポリオレフィン樹脂が30〜50質量%であることが好ましく、セルロースが10〜40質量%であることが好ましく、でんぷんが20〜40質量%であることが好ましい。
また、発泡材料には、必要に応じて酸化防止剤、防かび剤、顔料など、断熱材に用いられる各種添加剤を含有させてもよい。
本発明の断熱材10は、セルロース(古紙)やでんぷんを含む板状体11より構成されるので、環境に十分配慮している。
【0016】
板状体11は、例えば以下のようにして形成できる。
まず、上述した材料を複数の細孔を有するダイより押出しながら発泡させ、細孔の数に応じた複数の棒状の発泡体13が一方向に配向し、かつ各発泡体13が互いに隙間なく密着して一体化した集合体を得る。発泡の際は、発泡剤として水を用いるのが好ましい。
そして、集合体を板状に成形し、板状体11を得る。
板状体11の厚さは、5〜50mmが好ましく、20〜50mmがより好ましい。
【0017】
積層体12は、積層方向に隣り合う板状体11が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層して構成されている。
すなわち、図2に示す積層体12は、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と、第二の板状体11bの発泡体13bの配向方向とが略直交し、かつ第二の板状体11bの発泡体13bの配向方向と、第三の板状体11cの発泡体13cの配向方向とが略直交している。また、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と、第三の板状体11cの発泡体13cの配向方向は、同じ方向である。
なお、本発明において、「略直交」とは、90°±10°の範囲内を意味する。
【0018】
板状体11は、発泡体13の配向方向と平行な方向に対する剛性には優れるものの、配向方向と直交する方向に対する剛性が低く、直交方向から板状体に外力が加わると弾性変形して撓みやすい。
しかし、上述したように、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように、隣り合う板状体11同士を積層させると、断熱材10はいずれの方向に対しても優れた剛性を発現できる。
すなわち、各板状体11は、それぞれの発泡体13の配向方向と平行な方向に対して優れた剛性を発現できるので、発泡体13の配向方向が略直交するように各板状体11を積層すると、各板状体が剛性を発現する方向も略直交することになる。従って、例えば第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と平行な方向から断熱材10に外力が加わっても、第一の板状体11aおよび第三の板状体11cの剛性により断熱材10は撓みにくい。また、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と直交する方向から断熱材10に外力が加わっても、第二の板状体11bの剛性により断熱材10は撓みにくい。
【0019】
よって、本発明の断熱材10は、いずれの方向から外力が加わっても剛性に優れるので撓みにくい。そのため、枠体に配置したときに断熱材が撓んで中央が落ち込むことが軽減され、断熱材上に設置される下地合板との間に隙間が生じにくく、優れた断熱性を発揮できる。
【0020】
ここで、図1、2に示す断熱材10において、積層体12の側面14のうち、積層体12の上面15を含む第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向に直交する側面14a、14bを、枠体110に接触する側面(以下、「接触側面」という場合がある。)とし、発泡体13aの配向方向に平行な側面14c、14dを、枠体110に接触しない側面(以下、「非接触側面」という場合がある。)とする。
また、断熱材10を図中のA側(非接触側面14c側)から見たときの断熱材の側面図を図3(a)に、断熱材10を図中のB側(接触側面14a側)から見たときの断熱材の側面図を図3(b)に示す。
【0021】
図2に示す断熱材10は、積層体12の側面14のうち、接触側面14a、14bが、図3(a)に示すように、積層体12の上面15から、それに対向した底面16に向かって内側に傾斜している。また、非接触側面14c、14dが、図3(b)に示すように、同じ方向に傾斜している。
積層体12の接触側面14a、14b、および非接触側面14c、14dの傾斜の程度は、枠体を構成する枠部材の間隔などに応じて適宜設定されるので一概には決められないが、例えば接触側面14a、14bの傾斜角度αは5〜12°が好ましく、非接触側面14c、14dの傾斜角度βは5〜12°が好ましい。
【0022】
さらに、断熱材10は、図3(a)に示すように上面15が底面16よりも広がっている。そして、上面15を含む第一の板状体11aには、この第一の板状体11aの側面のうち、発泡体13aの両端側の側面17近傍に、発泡体13aの配向方向に直交した溝18が2本ずつ、前記両端側の側面17に沿って形成されている。
具体的には、図4(a)に示すように、第一の板状体11aのうち、第一の溝18aから外側の部分が第一の可動片部19a、第一の溝18aと第二の溝18bで囲まれた部分が第二の可動片部19b、第二の溝18bから内側の部分が非可動部19cとなっている。そして、前記両端側の側面17側から外力が加わると、図4(b)に示すように、第一の可動片部19aは変形して第二の可動片部19bに接触する。同時に、第二の可動片部19bは第一の可動片部19aに押されて変形し、非可動部19cに接触する。
【0023】
第一の板状体11aに形成される溝18の形成位置は、第一の溝18aから側面17までの距離d1が10〜50mmであること好ましく、第二の溝18bから側面17までの距離d2が55〜100mmであることが好ましい。
また、第一の溝18aおよび第二の溝18bの幅18wは2〜5mmであることが好ましい。なお、第一の溝18aおよび第二の溝18bの幅18wは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
さらに、第一の溝18aおよび第二の溝18bの深さ18hは、第一の板状体11aの厚さと同じであってもよいし、第一の板状体11aの厚さより浅くてもよいが、同じであることが好ましい。
【0024】
断熱材10は、図5(a)に示すように、積層体12の底面16の幅(図2の断熱材10をA側から見たときの幅)16wは枠部材110同士の距離110wよりも若干狭く、かつ接触側面14a、14bが上面15から底面16に向かって内側に傾斜している。そして、積層体12の上面15の幅(図2の断熱材10をA側から見たときの幅)15wは、枠部材110同士の距離110wよりも広く、枠部材110間からはみ出る部分が発生する。しかし、断熱材10は弾性を有するので、断熱材10が枠部材110間に挿入される際に、接触側面14a、14bが枠部材110に押し付けられ、前記はみ出る部分が枠部材110間に押し込まれる。従って、図5(b)に示すように、断熱材10がより隙間なく枠部材110間に配置される。
【0025】
なお、第二の板状体11bは、その側面のうち、発泡体の配向方向に平行な側面が接触側面14a、14bに相当する。板状体は発泡体の配向方向と直交する方向、すなわち発泡体の配向方向に平行な側面側からの外力に対する剛性が低いので、接触側面14a、14b側から外力が加わると第二の板状体11bは弾性変形しやすい。従って、断熱材10が枠部材110間に挿入されるときに接触側面14a、14bが押し付けられると、第二の板状体11bが弾性変形するので、断熱材10は枠部材110間に押し込まれやすい。
【0026】
一方、第一の板状体11aは、発泡体の配向方向に直交する側面が接触側面14a、14bに相当する。板状体は発泡体の配向方向と平行な方向、すなわち発泡体の配向方向と直交する側面側からの外力に対する剛性に優れるので、接触側面14a、14b側から外力が加わっても第一の板状体11aは第二の板状体11bに比べて弾性変形しにくい。
しかし、第一の板状体には、上述したように発泡体の配向方向に直交する側面(すなわち、発泡体の両端側の側面)近傍に溝18が形成されている。この溝18が形成されることで、断熱材10が枠部材110に押し付けられると、図4(b)に示すように、第一の可動片部19aおよび第二の可動片部19bが変形するので、断熱材10が枠部材110間に押し込まれやすくなる。
なお、第三の板状体11cは、第一の板状体11aと同様に接触側面14a、14b側から外力が加わっても弾性変形しにくい。しかし、積層体12の底面16を含む第三の板状体11cは、枠部材110間から殆どはみ出ることがないので、枠部材110間に容易に押し込むことができる。
【0027】
また、断熱材10は、図3(b)に示すように、積層体12の非接触側面14c、14dが同じ方向に傾斜している。従って、図1に示すように、枠部材110の長手方向に断熱材10を一列に並べて配置したときに、隣り合う断熱材同士が配列方向(左右方向)のみならず、上下方向からも押し付け合いながら互いに支持し合うので(図6参照)、より隙間なく断熱材10を配置することができる。
【0028】
さらに、断熱材10は、図2に示すように、積層体12の底面16に、補強シート20が貼り合わされている。
補強シート20は、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向に平行な方向に、断熱材10の厚さより長くなるように延出して、積層体12の底面16に貼り合わされている。図5(b)に示すように、補強シート20の延出部分20aは、断熱材10を枠部材110間に配置するときに、枠部材110にタッカーなどで釘打ちされて固定される。従って、断熱材10が枠部材110間から脱落するのを効果的に抑制できる。
【0029】
補強シート20としては、不織布が好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製などの不織布が好適である。
また、補強シート20は、引張強度が10N以上であることが好ましい。上述したように、断熱材10を枠部材110間に配置するときに、補強シート20はその延出部分20aが枠部材110に釘打ちされて固定される。そのため、補強シート20は引っ張られやすいが、引張強度が10N以上であれば、引っ張られても破れにくい。
なお、補強シート20の引張強度は、JIS L 1906により測定される。
【0030】
さらに、補強シート20は、透湿性を有することが好ましい。セルロースを含む断熱材や、該断熱材の上に設置される下地合板は吸湿性を有するので、室内の湿気等を含むと断熱材や下地合板が乾燥しにくいことがあった。また、特に2×4工法により建築する場合、建築途中で下地合板が雨に曝されると、雨水が下地合板と断熱材との間に溜まってしまうことがあった。
透湿性を有する補強シート20を積層体12の底面16に貼り合わせることで、断熱材10や下地合板が吸湿したときにその水分を逃がすことができ、断熱材や下地合板が乾きやすくなる。また、建築途中で下地合板が雨に曝されても、雨水が溜まりにくい。
【0031】
ついで、図2に示す断熱材10の製造方法の一例について説明する。
まず、板状体11を上述した方法により3枚作製する。
ついで、図7(a)に示すように、第一の板状体11aの発泡体13aの配向方向と、第二の板状体11bの発泡体13bの配向方向とが、また第二の板状体11bの発泡体13bの配向方向と、第三の板状体11cの発泡体13cの配向方向とが、それぞれ略直交するように、各板状体を積層させ、積層体を得る。各板状体は、接着剤(例えば酢酸ビニル系接着剤)や、両面接着テープなどにより互いを貼り合わせることで積層させる。接着剤は、板状体同士が貼り合わさる(接触する)面の全面に塗布してもよいし、点状や線状に塗布してもよい。両面接着テープの貼着箇所についても、接着剤の塗布位置と同様である。
【0032】
ついで、得られた積層体12の接触側面14a、14bが、積層体12の上面15から底面16に向かって内側に傾斜するように、積層体12の接触側面14a、14bを切り取る(図7(b))。同様に、積層体12の非接触側面14c、14dが同じ方向に傾斜するように、積層体12の非接触側面14c、14dを切り取る(図7(c))。
さらに、図7(b)に示すように、第一の板状体11aの側面のうち、発泡体の両側端の側面17の近傍に、該発泡体の配向方向に直交し、かつ側面17に沿うようにして、溝18を2本ずつ形成する。
【0033】
ついで、図7(d)に示すように、積層体12の底面16に、第一の板状体11aの発泡体の配向方向に平行な方向に、断熱材10の厚さより長くなるように延出して、補強シート20を貼り合わせ、断熱材10を得る。
補強シート20は、接着剤(例えば酢酸ビニル系接着剤)、両面接着テープ、タッカーなどにより、積層体12の底面16に貼り合わされる。接着剤は、積層体12の底面16に、点状や線状に塗布するのが好ましい。断熱材10は、枠体に配置するときに枠体の大きさに合わせて切断することがある。粘着剤が積層体12の底面16の全面に塗布されていると、補強シート20はより強固に底面16に貼り合わされることになる。すなわち、補強シート20は、底面16から剥がれにくくなるので、断熱材10を切断する際に補強シート20も一緒に切断してしまうこととなる。接着剤を底面16に点状や線状に塗布しておけば、全面貼着に比べて補強シート20を底面16から意図的に剥がしやすくなるので、断熱材10を切断することがあっても、補強シート20を一緒に切断しなくてすむ。ただし、補強シート20が不用意に底面16から剥がれないようにするために、底面16の4箇所の角部全てには少なくとも接着剤を塗布するのが好ましい。
なお、両面接着テープの貼着箇所やタッカーの打ち付け位置についても、接着剤の塗布位置と同様である。
【0034】
以上説明した断熱材10は、セルロース(古紙)やでんぷんを含む板状体より構成されるので、環境に十分配慮している。
また、断熱材10は、積層方向に隣り合う板状体が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層しているので、いずれの方向に対しても優れた剛性を発現でき、撓みにくい。そのため、枠体に配置したときに断熱材が撓んで中央が落ち込むことが軽減され、断熱材上に設置される下地合板との間に隙間が生じにくく、優れた断熱性を発揮できる。
【0035】
本発明の断熱材は、上述した断熱材10に限定されない。
例えば、積層体を構成する板状体の数は3枚に限定されず、2枚であってもよいし、4枚以上であってもよいが、板状体の数が多くなるほど断熱材は優れた剛性を発現しやすくなる。ただし、板状体の数が多くなるとその分、断熱材が厚くなる。断熱材が厚くなると、枠体自体の大きさ(深さ)も断熱材の厚さに応じて変えて、断熱材を収める空間を確保する必要がある。そのため、板状体の数を増やす場合は、各板状体の厚さを薄くして、断熱材全体の厚さが厚くならないようにするのが好ましい。
【0036】
また、積層体は、接触側面が積層体の上面から底面に向かって内側に傾斜するものに限定されず、接触側面が底面から上面に向かって内側に傾斜していてもよい。
【0037】
さらに、積層体は、非接触側面が同じ方向に傾斜するものに限定されず、例えば図8(a)に示すように、積層方向に隣接する板状体11のいずれかが、枠体に接触しない側面(非接触側面)14cと、その反対側の側面(非接触側面)14dを結ぶ方向にずれていてもよい。板状体11のいずれかが非接触側面14c、14dを結ぶ方向にずれていることで、枠部材の長手方向に断熱材10を一列に並べて配置したときに、隣り合う断熱材10同士が図8(b)に示すように合いじゃくり状となるので、より隙間なく断熱材10を配置することができる。
【0038】
[第二の実施形態]
第一の実施形態では図1に示すように、断熱材10が、互いに平行に延びる枠部材(大引き)110からなる枠体100に配置される場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば断熱材が、図9に示すような、互いに平行に延びる枠部材210aと、これら枠部材210aを掛け渡すように互いに平行に延びる枠部材210bからなる格子状の枠体200に配置される場合、断熱材は積層体の全ての側面が枠体200に接触する。従って、図10(a)に示すように、断熱材30は、積層体12の全ての側面14が傾斜しているのが好ましい。傾斜の向きについては特に制限されないが、枠体に挿入しやすい点で、図10(b)、(c)に示すように、各側面14は積層体12の上面15から底面16に向かって内側に傾斜しているのが好ましい。
なお、図10(b)は図10(a)に示す断熱材30をC方向から見たときの側面図であり、図10(c)はD方向から見たときの側面図である。
【0039】
また、断熱材30は、図2に示す断熱材10と同様に、上面15を含む第一の板状体11aの側面のうち、発泡体13aの両端側の側面17近傍に、発泡体13aの配向方向に直交した溝18が2本ずつ、前記両端側の側面17に沿って形成されている。
【0040】
断熱材30は、積層体12の底面16の一方の幅(図10の断熱材30をC側から見たときの幅)16wおよび他方の幅(図10の断熱材30をD側から見たときの幅)16’wは、図9に示す枠体200の枠部材210a同士の距離210wおよび枠部材210b同士の距離210’wよりも若干狭く、かつ各側面14が上面15から底面16に向かって内側に傾斜している。そして、積層体12の上面15は枠体よりも大きいため、枠体からはみ出る部分が発生する。しかし、断熱材30は弾性を有するので、断熱材30が枠体に挿入される際に、各側面14が枠体に押し付けられ、前記はみ出る部分が枠体に押し込まれる。従って、断熱材30がより隙間なく枠体に配置される。
【0041】
なお、第一の板状体11aには、上述したように発泡体の配向方向に直交する側面(すなわち、発泡体の両端側の側面)近傍に溝18が形成されている。溝18が形成されていることで、断熱材30が格子状の枠体に挿入される際に、該枠体を構成する枠部材に押し付けられると、図4(b)に示すように、第一の可動片部19aおよび第二の可動片部19bが変形するので、断熱材30が枠体に押し込まれやすくなる。ここで、図10のC側から見たときの断熱材30が図9に示す枠体200に配置された状態を図11(a)に示す。
【0042】
また、第一の板状体11aの側面のうち、残りの側面(すなわち、発泡体13aの配向方向に平行な側面)は弾性変形しやすい。従って、断熱材30が格子状の枠体に挿入される際に、該枠体を構成する枠部材に押し付けられると、第一の板状体11aの前記残りの側面が弾性変形するので、断熱材30が枠体に押し込まれやすい。従って、第一の板状体11aの残りの側面近傍には、該側面に沿った溝を形成する必要がない。ここで、図10のD側から見たときの断熱材30が図9に示す枠体200に配置された状態を図11(b)に示す。
【0043】
[第三の実施形態]
図9に示すような格子状の枠体200に断熱材を配置する場合、断熱材としては図12に示す断熱材40でもよい。ここで、断熱材40について具体的に説明する。なお図12(a)は断熱材40の斜視図であり、図12(b)は図12(a)に示す断熱材40をE側から見たときの側面図であり、図12(c)は図12(a)に示す断熱材40をF側から見たときの側面図である。
【0044】
図12に示す断熱材40は、第一の板状体41aと第二の板状体41bとが、それぞれの発泡体の配向方向が略直交するように積層した積層体42からなる。
図12(b)、(c)に示すように、第一の板状体41aは、発泡体43aの配向方向に平行な側面411aが、第一の板状体41aの上面412aから底面413aに向かって内側に傾斜している。また、発泡体43aの配向方向に直交する側面414aは、上面412aおよび底面413aに対して垂直である。
一方、第二の板状体41bは、発泡体43bの配向方向に平行な側面411bが、第二の板状体41bの上面412bから底面413bに向かって内側に傾斜している。また、発泡体43bの配向方向に直交する側面414bは、上面412bおよび底面413bに対して垂直である。
そして、第一の板状体41aの側面(傾斜側面)411aは、第二の板状体41bの側面(垂直側面)414bよりも外側に迫り出し、第二の板状体41bの側面(傾斜側面)411bは、第一の板状体41aの側面(垂直側面)414aよりも外側に迫り出している。
【0045】
断熱材40は、第一の板状体41aの上面412aおよび底面413aの幅(図12の断熱材40をF側から見たときの幅)46wは、図9に示す枠体200の枠部材210a同士の距離210wよりも若干狭い。そして、第二の板状体41bの、第一の板状体41aの垂直側面414aよりも外側に迫り出した部分は、枠体からはみ出る。
また、断熱材40は、第二の板状体41bの上面412bおよび底面413bの幅(図12の断熱材40をE側から見たときの幅)46’wは、図9に示す枠体200の枠部材210b同士の距離210’wよりも若干狭い。そして、第一の板状体41aの、第二の板状体41bの垂直側面414bよりも外側に迫り出した部分は、枠体からはみ出る。
【0046】
しかし、上述したように、板状体は発泡体の配向方向と直交する方向、すなわち、発泡体の配向方向に平行な側面側からの外力に対する剛性が低く、弾性変形しやすい。
断熱材40が枠体に挿入されると、第二の板状体41bの迫り出した部分は、枠部材によって発泡体43bの配向方向と直交する方向へ押し付けられる。一方、第一の板状体41aの迫り出した部分は、枠部材によって発泡体43aの配向方向と直交する方向へ押し付けられる。その結果、各板状体の迫り出した部分が弾性変形し、断熱材40が枠体に押し込まれ、隙間なく配置される。
ここで、図12のE側およびF側から見たときの断熱材40が図9に示す枠体200に配置された状態を図13(a)、(b)にそれぞれ示す。
【0047】
図12に示す断熱材40は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、第一の板状体41aおよび第二の板状体41bを作製する。
ついで、第一の板状体41aの発泡体43aの配向方向に平行な側面411aを、上面412aから底面413aに向かって内側に傾斜するように切り取る。第二の板状体41bについても同様の操作を行う。
ついで、第一の板状体41aの発泡体43aの配向方向と、第二の板状体41bの発泡体43bの配向方向とが略直交するように、各板状体を積層させ、積層体42を得る。各板状体は、接着剤や両面接着テープなどにより互いを貼り合わせることで積層させる。
ついで、第二の板状体41bの底面413bに、第一の板状体41aの発泡体43aの配向方向に平行な方向に、断熱材40の厚さより長くなるように延出して、補強シート20を貼り合わせ、断熱材40を得る。補強シート20は、接着剤、両面接着テープ、タッカーなどにより、第二の板状体41bの底面413bに貼り合わされる。
【0048】
[第四の実施形態]
第一の実施形態〜第三の実施形態では、枠部材として大引きを想定して説明したが、本発明はこれに限定されない。
断熱材は、例えば図14に示すように、互いに平行に延びる大引き310と、該大引き310上に取り付けられ、大引き310に対して直交方向に延びる根太320とからなる枠体300に配置される場合もある。
このような枠体300に断熱材を配置する場合、断熱材としては上述した断熱材10(図2など)を用いてもよいが、例えば図15に示す断熱材50でもよい。ここで、断熱材50について具体的に説明する。なお図15(a)は断熱材50の斜視図であり、図15(b)は図15(a)に示す断熱材50をG側から見たときの側面図であり、図15(c)は図15(a)に示す断熱材50をH側から見たときの側面図である。
【0049】
断熱材50は、第一の板状体51aと第二の板状体51bからなる積層物52’に、第三の板状体51cが積層した積層体52である。
積層体52は、第一の板状体51aの発泡体53aの配向方向と、第二の板状体51bの発泡体53bの配向方向とが略直交し、かつ第二の板状体51bの発泡体53bの配向方向と、第三の板状体51cの発泡体53cの配向方向とが略直交している。
【0050】
断熱材50は、積層物52’の厚さと図14に示す枠体300を構成する根太320の厚さがほぼ一致し、第三の板状体31cの厚さと大引き310の厚さがほぼ一致している。
そして、断熱材50は、積層物52’が根太320に接触しつつ、根太320の長手方向に一列に配列される。
【0051】
断熱材50は、積層物52’の側面54のうち、根太320に接触する側面が、積層物52’の上面55から、それに対向した底面56に向かって内側に傾斜している。また、根太320に接触しない側面と、その反対側の側面が同じ方向に傾斜している。
なお、断熱材50において、積層物52’の側面54のうち、積層物52’の上面55を含む第一の板状体51aの発泡体53aの配向方向に直交する側面54a、54bを、根太320に接触する側面(以下、「接触側面」という場合がある。)とし、発泡体53aの配向方向に平行な側面54c、54dを、根太320に接触しない側面(以下、「非接触側面」という場合がある。)とする。
【0052】
さらに、第一の板状体51aには、この第一の板状体51aの側面のうち、発泡体53aの両端側の側面57近傍に、発泡体53aの配向方向に直交した溝58が2本ずつ、前記両端側の側面57に沿って形成されている。
【0053】
断熱材50は、図15(b)に示すように、積層物52’の底面56の一方の幅(図15の断熱材50をG側から見たときの幅)561wと、第三の板状体51cの発泡体53cの長さ562wとが一致している。
そして、積層物52’の底面56の一方の幅561w、および第三の板状体51cの発泡体53cの長さ562wは、図14に示す枠体300の根太320同士の距離320wよりも若干狭い。一方、積層物52’の上面55の幅(図15の断熱材50をG側から見たときの幅)55wは、根太320同士の距離320wよりも広く、根太320間からはみ出る部分が発生する。しかし、第一の板状体51aには上述した溝58が形成されているので、根太320に押し付けられると、図4(b)に示すように、第一の可動片部19aおよび第二の可動片部19bが変形する。また、第二の板状体51bは根太320に押し付けられると弾性変形しやすい。従って、図16(a)に示すように、断熱材50がより隙間なく根太320間に配置される。
【0054】
一方、図15(c)に示すように、積層物52’の底面56の他方の幅(図15の断熱材50をH側から見たときの幅)563wは、第三の板状体51cの幅(図15の断熱材50をH側から見たときの幅)564wよりも長く、積層物52’が第三の板状体51cから迫り出している。
そして、第三の板状体51cの幅564wは、図14に示す枠体300の大引き310同士の距離310wよりも若干狭い。
断熱材50が枠体300に挿入されると、図16(b)に示すように、第三の板状体51cが大引き310間に嵌るようにして、断熱材50が枠体300に配置される。
なお、断熱材50は、積層物52’の非接触側面54c、54dが同じ方向に傾斜しているので、根太320の長手方向に断熱材50を一列に並べて配置したときに、隣り合う断熱材50同士が配列方向(左右方向)のみならず、上下方向からも押し付け合いながら互いに支持し合うので、より隙間なく断熱材50を配置することができる。
【0055】
図14に示す断熱材50は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、第一の板状体51a、第二の板状体51b、第三の板状体51cをそれぞれ所望の大きさになるように作製する。
ついで、第一の板状体51aの発泡体53aの配向方向と、第二の板状体51bの発泡体53bの配向方向とが略直交するように、各板状体を積層させ、積層物52’を得る。各板状体は、接着剤や両面接着テープなどにより互いを貼り合わせることで積層させる。
ついで、得られた積層物52’の接触側面54a、54bが、積層物52’の上面55から底面56に向かって内側に傾斜するように、積層物52’の接触側面54a、54bを切り取る。同様に、積層物52’の非接触側面54c、54dが同じ方向に傾斜するように、積層物52’の非接触側面54c、54dを切り取る。
さらに、第一の板状体51aの側面のうち、発泡体の両側端の側面57の近傍に、該発泡体の配向方向に直交し、かつ側面57に沿うようにして、溝58を2本ずつ形成する。
ついで、接着剤や両面接着テープなどを用いて、第二の板状体51bの発泡体53bの配向方向と、第三の板状体51cの発泡体53cの配向方向とが略直交するように、績層物52’の底面56に第三の板状体51cを貼り合わせる。
ついで、第三の板状体51bの底面に、第一の板状体51aの発泡体53aの配向方向に平行な方向に、断熱材50の厚さより長くなるように延出して、補強シート20を貼り合わせ、断熱材50を得る。補強シート20は、接着剤、両面接着テープ、タッカーなどにより、第三の板状体51bの底面に貼り合わされる。
【0056】
以上説明した本発明の断熱材は、積層方向に隣り合う板状体が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層しているので、いずれの方向に対しても優れた剛性を発現でき、撓みにくい。そのため、枠体に配置したときに断熱材が撓んで中央が落ち込むことが軽減され、断熱材上に設置される下地合板との間に隙間が生じにくく、優れた断熱性を発揮できる。
【0057】
なお、本発明の断熱材は、床構造用の断熱材に限定されず、例えば壁用や天井用の断熱材としても好適である。
本発明の断熱材を壁用として用いる場合、断熱材は柱と柱の間、柱と間柱の間などに配置される。また、天井用として用いる場合、断熱材は垂木と垂木の間などに配置される。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
<板状体の作製>
ポリプロピレン樹脂45質量部と、セルロース35量部と、でんぷん20質量部とを混合し、発泡材料を調製した。
得られた発泡材料を複数の細孔を有するダイより押出しながら発泡させ、細孔の数に応じた複数の棒状の発泡体が一方向に配向し、かつ各発泡体が互いに隙間なく密着して一体化した集合体を得た。発泡の際には、発泡剤として水を用いた。
得られた集合体を板状(大きさ:縦820mm×横820mm×厚さ30mm)に成形し、板状体を作製した。
【0060】
<断熱材の製造>
得られた板状体3枚を、酢酸ビニル系接着剤を用いて貼り合わせて積層体(大きさ:縦820mm×横820mm×厚さ90mm、重さ:1400g)を作製し、これを断熱材とした。
なお、3枚の板状体を貼り合わせる際は、図17(a)に示すように、第一の板状体61aの発泡体の配向方向と、第二の板状体61bの発泡体の配向方向が直交し、第二の板状体61bの発泡体の配向方向と、第三の板状体61cの発泡体の配向方向とが直交するように、各板状体を積層させた。なお、各板状体の発泡体の配向方向を図中、矢印で示す。
【0061】
<撓み量の測定>
得られた断熱材を用い、以下のようにして撓み量を測定した。
図18(a)に示すように、互いに平行に延びる支持部材400(支持部材400間の距離400w:800mm)上に断熱材60を載せ、該断熱材60を支持した。断熱材60の向きは、第一の板状体61aの発泡体の配向方向と、支持部材400の延出方向が平行になるようにした。
そして、図18(b)に示すように、断熱材60が自重にて撓んだときの撓み量(最も落ち込んだ部分の落ち込み深さt(mm))を測定した。結果を表1に示す。
なお、断熱材を構成する各板状体の発泡体の配向方向を表1に示す。表1中「平行」とは、支持部材400の延出方向と平行な方向を意味し、「直交」とは、支持部材400の延出方向と直交する方向を意味する。
【0062】
[実施例2]
3枚の板状体の発泡体の配向方向を表1、および図17(b)に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして断熱材を製造し、撓み量を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
[実施例3、4]
厚さが45mmになるように変更した以外は、実施例1と同様にして板状体を作製した。
得られた板状体を2枚用い、各板状体の発泡体の配向方向を表1、および図17(c)、(d)に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして断熱材を製造し、撓み量を測定した。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
3枚の板状体の発泡体の配向方向を表1、および図17(e)に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして断熱材を製造し、撓み量を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1から明らかなように、各実施例で得られた断熱材は、自重による撓みを抑制できた。
特に、第一の板状体61aの発泡体の配向方向が、支持部材400の延出方向と直交する方向になるように各板状体を積層した実施例2、4の断熱材は、撓み量が0mmであり、より効果的に撓みを抑制できた。
また、実施例1、3を比較すると、板状体の数の多い実施例1の方が、実施例3に比べてより撓みを抑制できることが示唆された。
一方、各板状体の発泡体の配向方向が全て同じ方向になるように、3枚の板状体を積層した比較例1の断熱材は、撓み量が10mmと多く、自重による撓みが発生した。
【符号の説明】
【0067】
10、30、40、50、60:断熱材
11:板状体
11a、41a、51a:第一の板状体
11b、41b、51b:第二の板状体
11c、51c:第三の板状体
12、42、52:積層体
52’:積層物
13、13a、13b、13c、43a、43b、53a、53b、53c:発泡体
14、54:側面
14a、14b、54a、54b:側面(接触側面)
14c、14d、54c、54d:側面(非接触側面)
411a、411b:側面(傾斜側面)
414a、414b:側面(垂直側面)
15、412a、412b、55:上面
16、413a、413b、56:底面
17、57:第一の板状体の側面
18、58:溝
20:補強シート
100、200、300:枠体
110、210、310:枠部材(大引き)
320:根太
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状体が積層した積層体からなる断熱材であって、
各板状体は、発泡材料を押出発泡した、複数の棒状の発泡体が一方向に配向して一体化され、
かつ、積層方向に隣り合う板状体が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層していることを特徴とする断熱材。
【請求項2】
枠体の中に配置されることを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記積層体の側面のうち、枠体に接触する側面が傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の断熱材。
【請求項4】
前記枠体に接触する側面は、積層体の上面または底面から、それに対向した底面または上面に向かって内側に傾斜し、かつ前記枠体に接触する側面のうち少なくとも1つが、積層体の上面と底面のうち広がっている方の面を含む板状体の発泡体の配向方向に直交する面であり、
前記広がっている方の面を含む板状体は、該板状体の発泡体の両端側の側面近傍に、発泡体の配向方向に直交した溝が、前記両端側の側面に沿って形成されたことを特徴とする請求項3に記載の断熱材。
【請求項5】
前記枠体が、互いに平行に延びる枠部材からなり、
前記積層体の側面のうち、枠体に接触しない側面と、その反対側の側面が同じ方向に傾斜していることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の断熱材。
【請求項6】
前記枠体が、互いに平行に延びる枠部材からなり、
積層方向に隣接する板状体のいずれかが、枠体に接触しない側面と、その反対側の側面を結ぶ方向にずれていることを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の断熱材。
【請求項7】
前記枠体が、格子状であり、
各板状体は、発泡体の配向方向に平行な側面が傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の断熱材。
【請求項8】
前記積層体の底面に、該底面に対向する上面を含む板状体の発泡体の配向方向に平行な方向に、断熱材の厚さより長くなるように延出して、透湿性を有する補強シートが貼り合わされたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の断熱材。
【請求項9】
前記発泡材料が、ポリオレフィン樹脂と、セルロースと、でんぷんとを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の断熱材。
【請求項1】
複数の板状体が積層した積層体からなる断熱材であって、
各板状体は、発泡材料を押出発泡した、複数の棒状の発泡体が一方向に配向して一体化され、
かつ、積層方向に隣り合う板状体が、一方の板状体の発泡体の配向方向と、他方の板状体の発泡体の配向方向とが略直交するように積層していることを特徴とする断熱材。
【請求項2】
枠体の中に配置されることを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記積層体の側面のうち、枠体に接触する側面が傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の断熱材。
【請求項4】
前記枠体に接触する側面は、積層体の上面または底面から、それに対向した底面または上面に向かって内側に傾斜し、かつ前記枠体に接触する側面のうち少なくとも1つが、積層体の上面と底面のうち広がっている方の面を含む板状体の発泡体の配向方向に直交する面であり、
前記広がっている方の面を含む板状体は、該板状体の発泡体の両端側の側面近傍に、発泡体の配向方向に直交した溝が、前記両端側の側面に沿って形成されたことを特徴とする請求項3に記載の断熱材。
【請求項5】
前記枠体が、互いに平行に延びる枠部材からなり、
前記積層体の側面のうち、枠体に接触しない側面と、その反対側の側面が同じ方向に傾斜していることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の断熱材。
【請求項6】
前記枠体が、互いに平行に延びる枠部材からなり、
積層方向に隣接する板状体のいずれかが、枠体に接触しない側面と、その反対側の側面を結ぶ方向にずれていることを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の断熱材。
【請求項7】
前記枠体が、格子状であり、
各板状体は、発泡体の配向方向に平行な側面が傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の断熱材。
【請求項8】
前記積層体の底面に、該底面に対向する上面を含む板状体の発泡体の配向方向に平行な方向に、断熱材の厚さより長くなるように延出して、透湿性を有する補強シートが貼り合わされたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の断熱材。
【請求項9】
前記発泡材料が、ポリオレフィン樹脂と、セルロースと、でんぷんとを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の断熱材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−132716(P2011−132716A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292066(P2009−292066)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
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