説明

断熱材

【課題】焼却時に煤煙が発生することがなく、燃焼カロリーが低く、所望の寸法及び断熱性能を得ることができる断熱材を提供する。
【解決手段】30〜200μmの粒径を有する紙微粉体とデンプンとの混合物である紙ペレット7と、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリスチレンの混合物である容器リサイクルペレット8と、発泡性ポリプロピレン9と、水10とを押出機11において加熱混合して板状発泡体2を形成し、これを複数直交して重ね合わせて断熱材1を形成する。紙ペレット7が50〜65重量%、容器リサイクルペレット8が15〜25重量%、発泡性ポリプロピレン9が10〜30重量%であり、水10がこれら樹脂等に対して10〜20重量%の範囲となるようにする。板状発泡体2は気泡のない表皮層5aと気泡5cのある発泡層5bに別れ、表皮層5aにより機械的強度が高く、断熱性能も高いため、断熱材1の断熱性能が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の床等に用いられる断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、断熱材として、多くの種類の素材でできた断熱材が用いられている。例えば、住宅の断熱用に用いられる断熱材としては、グラスウールやロックウール等の鉱物系断熱材や、硬質ウレタンフォームや押出し法ポリスチレンフォーム等のプラスチック系断熱材、或いは、セルロースファイバーや炭化発泡コルク等の天然成分を用いた断熱材が用いられている。
【0003】
また、下記特許文献1には、住宅に用いられる断熱材として、根太、柱、野縁等の支持部材の間に嵌め込まれる板状の断熱材であって、発泡スチレン樹脂成形体、硬質ポリウレタン発泡体からなる断熱材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−74345号公報
【特許文献2】特開2003−41041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている断熱材はプラスチック系断熱材であり、製造時や廃棄時における環境に対する負荷が大きい。例えば発泡スチレン樹脂成形体は、分子構造上炭素数が多いので、酸素と反応できない残余の炭素が不完全燃焼し、炭素が煤となって焼却時に煤煙が発生する。また、発泡ポリスチレンは、燃焼カロリーが約9000〜10000cal/gであり、単位重量当たりの燃焼カロリーが高い。
【0006】
また、これらの断熱材では、原料に難燃材を混入することにより難燃性としているが、燃焼時には有毒ガスが発生する。このため、火災時には有毒ガスによる被害が生じるおそれがある。また、これらの断熱材は燃焼カロリーが高いため、廃棄時に焼却炉を損傷させるおそれがある。
【0007】
一方、本願発明者等は、特許文献2において、焼却時に煤煙が発生することがなく、燃焼カロリーが低い発泡部材およびその製造方法を提供している。当該発泡部材を上記住宅用断熱材として用いることができれば、製造時や廃棄時における環境負荷が小さい断熱材とすることができる。
【0008】
そこで、本願発明者等は、特許文献2に開示されている発泡部材を住宅用断熱材用の幅寸法を有する押出成形機で断熱材を押出成形することを試みた。具体的には、ポリプロピレンと平均粒径が30〜100μmの紙微粉体と平均粒径が5〜150μmのデンプンとを押出機に供給し、それらを加熱下に混合し、さらに、それらの高温溶融物に水を混入して断熱材を製造した。ポリプロピレンと紙微粉体とデンプンとの重量比は、ポリプロピレンが25重量%、紙微粉体が55重量%、デンプンが25重量%である。溶融物に対する水の重量比は、25重量%である。
【0009】
しかしながら、特許文献2で開示されている発泡部材を、前記押出成形機で成形した場合、所望の幅寸法に成形することができなかった。本願発明者等が原因を調査したところ、発泡体としての発泡量不足が原因であることが判明した。
【0010】
次に、本願発明者等は、発泡体の樹脂原料であるポリプロピレンを、発泡体に適した発泡性ポリプロピレンにしてみたところ、発泡量は十分となり、所望の寸法の断熱材を得ることができた。ところが、当該発泡体は、断熱性能が十分ではなく、住宅用の断熱材として用いることはできなかった。
【0011】
本発明は、焼却時に煤煙が発生することがなく、燃焼カロリーが低い断熱材であって、所望の寸法及び断熱性能を得ることができる断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者等がさらに鋭意研究を重ねた結果、発泡体の樹脂原料である発泡性ポリプロピレンに、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂とポリスチレン樹脂との混合物である再生樹脂を所定割合で混合させることにより、所望の発泡性及び断熱性能を得られることを知見した。
【0013】
本発明の断熱材は、30〜200μmの粒径を有する紙微粉体35〜50重量%と、親水性高分子50〜65重量%との混合物である紙ペレットと、再生ポリプロピレン樹脂55〜65重量%と、再生ポリエチレン樹脂30〜40重量%と、再生ポリスチレン樹脂1〜5重量%との混合物である再生樹脂と、発泡性ポリプロピレン樹脂と、水とを加熱混合してなり、前記紙ペレットが50〜65重量%、前記再生樹脂が15〜25重量%、前記発泡性ポリプロピレン樹脂が10〜30重量%であり、前記水が、前記紙ペレット、再生樹脂及び発泡性ポリプロピレン樹脂に対して10〜20重量%の範囲であり、水平方向に複数の孔を有するダイから押出成形された板状発泡体を用いた断熱材であって、複数の板状発泡体を前記ダイからの押出方向を直交させて互いに接着してなることを特徴とする。
【0014】
本発明の断熱材は、各原料の重量配分を上記範囲とすることにより、住宅用断熱材としての所望の寸法及び断熱性能を得ることができた。また、前記再生樹脂として、容器リサイクルペレット(以下「容リペレット」と省略する。)を用いて製造することができた。
【0015】
また、複数の板状発泡体を前記ダイからの押出方向を直交させて互いに接着することにより、機械的強度が強くなるため、断熱材を床下等に設置した際に撓みを抑えることができる。
【0016】
容リペレットは、食品容器や生活用品容器(例えばシャンプー、洗剤等)を洗浄等して再利用するために形成されたペレットであり、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリスチレンを不可避的に含んでいる。この、ポリプロピレンとポリエチレンは、同じポリオレフィン系樹脂であり、燃焼時に有毒なガスが出ないといわれ、食品容器や生活用品容器に大量に使用されているが、両樹脂は、混合しようとしても混合せず、混合物を成形することができない。
【0017】
従って、この両樹脂を不可避的に含む容リペレットは、近年のリサイクル活動の活発化により大量に生産されているものの、一般のプラスチック成形工場では原料として使用することができないため、容リペレットの需要は少ない。加えて、各樹脂それぞれに容器の用途に応じて種々の添加剤が加えられており、成形原料として使用すると成形品の品質が安定しないため、容リペレットは成形用の原料としては利用されていなかった。
【0018】
本発明の断熱材は、このような容リペレットを原料とするものであるが、ポリプロピレンとポリエチレンが均一に混合されており、品質にムラがない。また、単に発泡容ポリプロピレンを原料としただけでは断熱材としての所望の性能を得ることができなかったが、この容リペレットを用いることにより断熱性能が高い発泡体を得ることができた。
【0019】
このように、本発明の断熱材は、原料として燃焼カロリーの低い紙ペレットを50重量%以上含んでおり、燃焼カロリーが低い。また、本願発明者等が本発明の断熱材について燃焼試験を行ったところ、有害な煤煙は発生しなかった。また、本発明の断熱材は、所望の寸法及び断熱性能を得ることができる。さらに、従来需要が少なかった容リペレットを原料とすることができるため、容器リサイクルの循環を活性化できる。
【0020】
また、本発明の断熱材は、前記板状発泡体が、押出方向から見たときに、前記ダイの孔から押し出された複数の棒状体が、隣接する他の棒状体と表面同士が密着結合し、各棒状体の間に押出方向に延びる空隙が形成されるものであり、前記板状発泡体のうち、最上段に位置する板状発泡体が下方に位置する板状発泡体よりも幅広に形成されると共に、前記押出方向の前後端部近傍に前記押出方向と直交して厚さ方向に切り込みが設けられていることが好ましい。
【0021】
前記板状発泡体は、前記棒状体の結合体であるため、前記板状発泡体に押出方向から圧縮する力が加わっても、各棒状体の長さ方向に力が加わることになるので、板状発泡体の圧縮量は小さい。一方、押出方向とは直交する方向から板状発泡体を圧縮する力が加わった場合、各棒状体の間の空隙が容易に圧縮され、板状発泡体の圧縮量が大きくなる。
【0022】
このような板状発泡体を複数重ねた断熱材であって、最上段に位置する板状発泡体が下方のものよりも幅広となった形状では、断熱材を設置位置に設置する場合、この最上段に位置する板状発泡体に圧縮力が加わりやすい。このとき、板状発泡体の押出方向とは直交する方向から加わった圧縮力に対しては、板状発泡体が圧縮しやすいので、設置位置に容易に設置することができる。
【0023】
一方、前記板状発泡体の押出方向から加わる圧縮力に対しては板状発泡体が圧縮しにくいが、前記スリットが設けられているので、最上段に位置する板状発泡体が変形しやすくなり、設置位置に容易に設置することができる。
【0024】
また、本発明の断熱材においては、板状発泡体の組立体の下面と少なくとも一対の側面を覆うと共に、前記一対の側面の上端縁から外方に突出する突出部を有するシート部材が設けられていることが好ましい。
【0025】
前記シート部材は、前記突出部が前記断熱材の一対の側面の上端縁から外方に突出しているため、当該突出部を利用して断熱材を設置場所に設置することができる。当該構成により、設置場所への設置作業が容易な断熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の断熱材を示す説明図。
【図2】図1のIIから見た矢指拡大図。
【図3】断熱材を構成する板状発泡体を示す説明図。
【図4】板状発泡体の断面を示す拡大図。
【図5】断熱材を構成する板状発泡体の製造に用いられる押出機を示す説明図。
【図6】発泡体の断面及び表面を示す写真。
【図7】比較例である発泡体の断面及び表面を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図1乃至図6を参照して、本発明の断熱材について詳細に説明する。
【0028】
本実施形態の断熱材1は、住宅の床下の断熱を行うための断熱材であり、図1及び図2に示すように、押出成形された板状発泡体2を3枚重ねたものとなっている。また、断熱材1の底面と一対の側面とは、シート部材3により覆われている。なお、図1においては、断熱材1の構成を明らかにするために、手前側の側面1aからシート部材3を離した状態を示している。
【0029】
本実施形態の断熱材1は、図1及び図2に示すように、3枚の板状発泡体2(2a〜2c)を押出方向を交互に直交させて重ねている。また、それぞれの板状発泡体2a,2b及び2cの接触面には全体的に塩化ビニル系接着剤が塗布されて接着されている。
【0030】
また、板状発泡体2は、断熱材1の上面において、側面1a及び側面1bの近傍に、押出方向(棒状体5の長手方向)と直交するスリット4がそれぞれ1対、合計4本設けられている。このスリット4は、図1及び図2に示すように、最上段の板状発泡体2のみに設けられており、中段及び下段の板状発泡体2cにはスリット4は設けられていない。このスリット4は、本実施形態では約3mmの幅を有している。
【0031】
また、断熱材1は、図2に示すように、下側の板状発泡体2の寸法に比べて上側の板状発泡体2の寸法が徐々に大きくなるように、側面視で底辺が短い台形状に形成されている。具体的には、下側の板状発泡体2の下辺の長さが802mmであり、上側の板状発泡体2の上辺の長さが約808mmである。これらの寸法は、断熱材1が使用される部位によって適宜変更する。
【0032】
シート部材3は、本実施形態では厚さが約0.7mmの不織布を用いており、断熱材1の底面に複数の点で接着され、側面1a,1bには接着されていない。この接着部分は、必要に応じて施工現場等で剥すことができるようになっている。また、シート部材は、断熱材1の側面1c,1dは覆っていない。
【0033】
次に、本実施形態の断熱材1を構成する板状発泡体2について、図3及び図4を参照して説明する。板状発泡体2を構成する主原料は、紙ペレット7と、再生樹脂ペレット8と、発泡樹脂ペレット9であり、発泡用に水10を用いている(図5参照)。
【0034】
板状発泡体2は、図3に示すように、軸方向に延びる棒状体5が複数結合してなる板状の発泡体である。各棒状体5は、図4に示すように、表皮層5aと発泡層5bの2層構造となっており、発泡層5bには多数の気泡5cが存在している。また、各棒状体5は、表面の表皮層5a同士が密着結合した状態となっている。また、図4に示すように、各棒状体5の間には空隙6aが形成されており、板状発泡体2の表面では溝6bとなっている。
【0035】
紙ペレット7は、古紙を粉砕して微粉体とした紙微粉体35〜50重量%と、親水性高分子であるデンプン50〜65重量%とを混合して製造する。その際、酸化防止剤や防かび剤等、目的や用途に応じて添加物を添加する。古紙は、例えば産業廃棄物となったロール紙を約2mm角程度に粗粉砕し、図示しない竪型ローラミルを使用して粒径を30〜200μmに微粉砕したものを用いる。デンプンは、一般に用いられている工業用デンプンを使用する。
【0036】
再生樹脂ペレット8は、合成樹脂製容器をリサイクルした容リペレットを用いている。この再生樹脂ペレット8は、再生する容器の種類によって若干成分比率が異なっているが、本実施形態では、ポリプロピレン55〜65重量%と、ポリエチレン30〜40重量%と、ポリスチレン1〜5重量%との混合物であり、ペレット形状に成形されている。
【0037】
発泡樹脂ペレット9は、本実施形態では発泡性ポリプロピレンを用いている。一般に、ポリプロピレンは溶融状態での張力が乏しいため、発泡性が低く、発泡体に用いるのには適していないが、近年では溶融張力を強化した発泡性ポリプロピレンも開発されている。本実施形態では、この発泡性ポリプロピレンとして、日本ポリプロ株式会社製「ニューフォーマー」を用いている。
【0038】
本実施形態では、これら主原料の割合を、紙ペレット7が50〜65重量%、再生樹脂ペレット8が15〜25重量%、発泡樹脂ペレット9が10〜30重量%、水10が10〜20重量%の範囲となるようにしている。本実施形態では、これら主原料の割合を上記範囲とすることにより、発泡倍率が30〜50倍である発泡体を得た。板状発泡体2は、上記発泡倍率を有しているので、住宅用の断熱材として必要な幅0.3m〜1.0m以上の各種の板状発泡体を成形することができる。
【0039】
次に、図5を参照して、板状発泡体2の製造方法について説明する。板状発泡体2は、紙ペレット7と再生樹脂ペレット8と発泡樹脂ペレット9とを押出機11に投入し、押出機11内でこれらの原料を溶融混練しながら水を加えて発泡させ、調厚ローラー12で厚さを調節して製造する。
【0040】
押出機11は、原料を投入するホッパー13と、内部に2軸のスクリュー14を備えたシリンダー15と、シリンダー15の下流端に設けられたダイ16とを備えている。また、シリンダー15の中間位置には、内部の混合物にタンク17内の水10を混合する給水路18が設けられている。また、シリンダー15には、シリンダー15の内部を加熱するヒーター19がシリンダー15の軸方向に向けて複数設けられている。また、シリンダー15の上流側には、スクリュー14を回転させるモーター20が設けられている。
【0041】
ダイ16は、シリンダー15の出口から押し出された溶融原料を図示しない小孔から外部に押し出し、板状発泡体2を形成するものである。ダイ16の先端から下流側には、調厚ローラー12が設けられている。調厚ローラー12は、上下に配置された金属製のローラーの間隔と押し付ける弾性力とにより、ローラー間を通過する通過物の厚さを調節するものである。
【0042】
押出機11のホッパー13には、図示しない原料供給装置から供給量が調節された上記原料が投入される。ホッパー13に投入された原料は、シリンダー15内に供給され、シリンダー15内で2本のスクリュー14によって撹拌されながらヒーター19によって加熱され、溶融混合される。
【0043】
この状態で、原料である紙ペレット7と、再生樹脂ペレット8と、発泡樹脂ペレット9とが混練され、紙ペレット7に含まれる紙微粉体及びデンプンと、再生樹脂ペレット8に含まれるリサイクルされたポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリスチレンと、発泡樹脂ペレット9に含まれる発泡性ポリプロピレンとが混練される。また、シリンダー15内の原料は、ヒーター19により加熱されながらスクリュー14によって溶融混練され、下流側に運搬される。このとき、紙微粉体と、デンプン及び各種合成樹脂の溶融混合物が均一に混練され、紙微粉体が混合物全体に均一に拡散される。
【0044】
また、給水路18から加熱された水10が供給され、溶融混合された原料と混合される。原料内に供給された水10は、溶融された原料及びヒーター19によって加熱され、気化することで原料内部に多数の気泡5cを形成する。
【0045】
このように、水10が加えられた原料は、ダイ16から外部に押し出される。ダイ16の図示しない小孔から押し出された原料は、大気圧下に開放されるため、原料内の気泡5cが膨張し、複数の棒状体5となる。棒状体5は、ダイ16の小孔から押し出された際に、表皮層5aと発泡層5bが形成されると見られている。そして、隣り合う棒状体5の表皮層5a同士が互いに接触するが、表皮層5aを形成する原料はまだ溶融状態にあるため、隣接する棒状体5同士が密着結合し、板状発泡体2が形成される。
【0046】
その後、板状発泡体2は調厚ローラー12で厚さが一定にされつつ冷却され、下流側に搬送され、その後、所望の長さに切断される。
【0047】
次に、板状発泡体2の具体例について以下に説明する。板状発泡体2は、紙ペレット7の紙微粉体が板状発泡体2全体の20重量%、デンプンが37重量%となっている。また、再生樹脂ペレット8は、板状発泡体2全体の13重量%となっている。同様に、発泡樹脂ペレット9は、板状発泡体2全体の30重量%である。また、その他に、酸化防止剤として株式会社アデカ製「アデカスタブ」を1重量%、防かび剤としてホタテ貝殻焼成カルシウムを1重量%含んでいる。
【0048】
紙微粉体の原料は、産業廃棄物扱いとなったロール紙を用いた。デンプンは、一般に広く用いられている工業用デンプンを用いた。
【0049】
再生樹脂ペレット8は、ペレット自体の配合が、ポリプロピレンが60重量%、ポリエチレンが35重量%、ポリスチレンが5重量%であった。また、上記紙微粉体とデンプンと各種合成樹脂の混合体に対し、水10を16重量%加えて発泡させている。
【0050】
板状発泡体2の断面の状態を図6(a)に、表面の状態を図6(b)に示す。図6(a)に示すように、表皮層5aの表面には気泡が開口しておらず滑らかとなっている。表皮層5aの厚さは、図6(a)を用いて計測した結果、平均で約20μmとなっている。また、図6(a)をもとに計測した発泡層5b内の気泡5cの直径は、平均径が200μmとなっている。また、図6(a)を見ても明らかなように、気泡のほとんどが独立気泡となっている。
【0051】
また、板状発泡体2の表皮層5aと発泡層5bの成分について、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターにて赤外線吸収スペクトルを用いて解析を行った。その結果は、表皮層5aも発泡層5bも、共に同一のスペクトル波形を示しており、原料であるポリプロピレン、ポリエチレン及びポリスチレンが均一に混合されていることが判明した。
【0052】
このように、板状発泡体2においては、従来は均一な混合が困難であるとされていたポリプロピレンとポリエチレンが均一に混合されている。従って、本発明によって、両合成樹脂を不可避的に含有する容リペレットを原料とした場合であっても、品質の安定した発泡体が得られることが明らかになった。
【0053】
また、板状発泡体2は、断熱材として用いた場合、熱伝導率が平均で0.035W/mKであった。板状発泡体2は、厚さが30mm、即ち0.03mであるので、熱抵抗値に換算すると0.86となる。
【0054】
従って、板状発泡体2は、27mmの厚さの板状発泡体2a〜2cを3枚重ねて厚さを81mmとすることにより、熱抵抗値を2.32とすることができる。当該熱抵抗値を有する板状発泡体2は、次世代省エネ住宅用の床の断熱材としての基準(2.2)をクリアすることができる。
【0055】
このように、本実施形態の断熱材1は、上記構成を有する板状発泡体2a〜2cを用いているため、断熱性が高い。また、シート部材3を有していることにより、例えば断熱材1を根太レス工法の床下の断熱材に使用したときには、各梁の上にシート部材3を敷設し、シート部材3を各梁に釘やねじ等で固定することにより、設置作業が容易となる。
【0056】
また、断熱材1がシート部材3を有していることにより、設置場所に設置された際にシート部材3で断熱材1にかかる力を梁等に分散できるので、断熱材1の撓みが抑えられ、断熱材1の耐久性を向上させることができる。
【0057】
ここで、原料に再生樹脂ペレット8を用いずに発泡樹脂ペレット9のみを用い、他の原料及び製造方法を上記実施例と同様とした比較例について説明する。比較例となる発泡体21は、図5(a)に示すように、板状発泡体2と同様に棒状体52が表皮層23と発泡層24とに別れているが、表皮層23の厚さは約10μm以下となっており、非常に薄くなっている。
【0058】
また、発泡体21の表面の状態は、図5(b)に示すように、表面に気泡25が開口していないものの、内部の気泡25が外部から目視可能となっている。図5(a)をもとに計算した発泡層24内の気泡25の直径が平均で約100μmであった。
【0059】
また、発泡体21は、各棒状体52がほぼ隙間なく密着しており、板状発泡体2に見られるような空隙26aはほぼ見られず、表面の溝26bも本実施例の溝6bに比べて幅がなく、浅くなっている。
【0060】
当該発泡体21の断熱性能は、上記実施例に比べて大幅に低く、発泡体21を3枚重ねた場合であっても、次世代省エネ住宅用の床の断熱材としての基準(2.2)をクリアすることができないものであった。
【0061】
また、板状発泡体2の機械的強度を測定したところ、曲げ強度は0.058MPaであった。一方、比較例の発泡体21の曲げ強度は上記実施例を大きく下回った。このように、板状発泡体2は、発泡樹脂ペレット9のみを用いた場合に比べて、複数の棒状体5の表皮層5a同士が強固に密着結合しているため、機械的強度が高い。
【0062】
また、板状発泡体2で、各棒状体5に分離しようと力を加えても容易には各棒状体5に分離しないが、比較例の発泡体21では、比較的容易に棒状体52毎に分離することができた。
【0063】
また、板状発泡体2は、紙ペレット7が板状発泡体2の全重量の50%以上を占めているため、板状発泡体2としては容器包装リサイクル法におけるリサイクル対象の成分とはならず、一般廃棄物として処分することが可能である。また、板状発泡体2の燃焼カロリーを計算したところ、約5900cal/gであった。このように、板状発泡体2は燃焼カロリーが低いため、焼却処理する場合であっても焼却炉を傷めるおそれがない。
【0064】
なお、上記実施形態では、紙微粉体を産業廃棄物のロール紙を用いているが、紙微粉体の原料はこれに限らず、新聞古紙、雑誌古紙、印刷古紙、包装古紙、段ボール古紙、OA古紙などの各種古紙、バージン紙の製造時に発生した破紙や損紙、雑誌などの裁断屑、研摩粉、シュレッダー屑等が含まれる。廃紙は、オフィス、出版社、製紙会社などから大量に排出され、環境負荷が実質ゼロであると評価される。なお、紙粉の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(Marvern Instruments Ltd.製、Mastersizer S型)により測定するものとする。
【0065】
また、上記実施形態では、親水性高分子としてデンプンを用いているが、デンプンには、特に限定はなく、とうもろこし、さつまいも、バレイショ、小麦、大麦、米等に含まれるデンプンを使用することができる。また、親水性天然高分子には、デンプンの他に、ニカワや天然ゴム、寒天を使用することもできる。
【0066】
また、板状発泡体2は、上記実施形態では住宅用の断熱材として好適な寸法としているが、板状発泡体2の用途は住宅用の断熱材に限られず、各種緩衝材、遮音材、保冷材等多くの用途に用いることができる。また、板状発泡体2の形状も、用途に応じて種々の形状に成形が可能である。
【0067】
また、上記実施形態では、発泡性ポリプロピレンとして、日本ポリプロ株式会社製「ニューフォーマー」を用いているが、これに限らず、同等の性質を有する発泡性ポリプロピレンを用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…断熱材、2…板状発泡体、7…紙ペレット、8…再生樹脂ペレット、9…発泡樹脂ペレット、10…水、11…押出機、12…調厚ローラ、16…ダイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜200μmの粒径を有する紙微粉体35〜50重量%と、親水性高分子50〜65重量%との混合物である紙ペレットと、
再生ポリプロピレン樹脂55〜65重量%と、再生ポリエチレン樹脂30〜40重量%と、再生ポリスチレン樹脂1〜5重量%との混合物である再生樹脂と、
発泡性ポリプロピレン樹脂と、
水とを加熱混合してなり、
前記紙ペレットが50〜65重量%、前記再生樹脂が15〜25重量%、前記発泡性ポリプロピレン樹脂が10〜30重量%であり、
前記水が、前記紙ペレット、再生樹脂及び発泡性ポリプロピレン樹脂に対して10〜20重量%の範囲の混合物を、水平方向に複数の孔を有するダイから押出成形してなる板状発泡体を用いた断熱材であって、
複数の板状発泡体を前記ダイからの押出方向を直交させて互いに接着してなることを特徴とする断熱材。
【請求項2】
前記板状発泡体は、押出方向から見たときに、前記ダイの孔から押し出された複数の棒状体が、隣接する他の棒状体と表面同士が密着結合し、各棒状体の間に押出方向に延びる空隙が形成されるものであり、
前記板状発泡体のうち、最上段に位置する板状発泡体が下方に位置する板状発泡体よりも幅広に形成されると共に、前記押出方向の前後端部近傍に前記押出方向と直交して厚さ方向に切り込みが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
板状発泡体の組立体の下面と少なくとも一対の側面を覆うと共に、前記一対の側面の上端縁から外方に突出する突出部を有するシート部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−214371(P2011−214371A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85980(P2010−85980)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【特許番号】特許第4621804号(P4621804)
【特許公報発行日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(597022540)株式会社環境経営総合研究所 (23)
【Fターム(参考)】