説明

断熱箱体の製造方法およびその断熱箱体を用いた冷蔵庫

【課題】断熱箱体を構成する内箱の肉厚を均一に確保し変形や破れを防止し、冷蔵庫等の断熱箱体の生産効率を向上させること。
【解決手段】断熱箱体を形成する内箱2で、前記内箱をシート押し出し、真空成型の順で成型する工法において、シート6を真空成型するとき、延伸倍率が高く肉厚が薄くなる部分をシート押し出し時にあらかじめその肉厚に対応して前記シートの厚みを厚めに設定形成させることにより、成型後に肉厚が均一にできるよう配慮できるため、仕切り部5などの肉厚が充分に確保でき、変形を防止でき、断熱箱体の強度を維持する効果を有することとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫等の断熱箱体を形成する成型方法に係わり、箱体を真空成型等で成型する前にあらかじめシート押し出し時に、仕切り部の部位に必要な厚みを確保した断熱箱体の製造方法およびその断熱箱体を用いた冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の断熱箱体の製造方法として、図5で示すように、内箱9を真空成型などで成型時に仕切り部9aを同時に成型する方法がある。
【0003】
また図6で示すように、内箱9を真空成型などで成型時に仕切り部にあらかじめ仕切り部品11を真空成型金型10に挿入し、シート8を成型時に同時に仕切り部品11を巻き込み成型する方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭60−42863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の方法は、厚みが均一なシートを仕切り部と内箱と同時に一体成型するため、シート肉厚が仕切り部で大きく伸ばされ薄肉になり、組み立て時や断熱材発泡時に変形する等の課題を有し、これを防ぐ為には、薄肉部に補強の為のテープを貼り付けたり、またシートの元板厚を厚くすることで対処していたが、非常に工数が高くなり、直材も上がり、不経済的であった。
【0006】
また、別の前記従来の構成では、仕切り部品の真空成型時の成型熱による変形防止対策が必要で、かつ真空成型設備、金型の大きな改造が必要で、膨大な投資が必要であるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、シートを真空成型するとき、延伸倍率が高く肉厚が薄くなる部分をシート押し出し時にあらかじめその肉厚に対応して前記シートの厚みを厚めに設定形成させて、真空成型後に、内箱が均一な厚みになるように配慮した断熱箱体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の断熱箱体の製造方法は、断熱箱体を形成する内箱で、前記内箱をシート押し出し、真空成型の順で成型する工法において、シートを真空成型するとき、延伸倍率が高く肉厚が薄くなる部分をシート押し出し時にあらかじめその肉厚に対応して前記シートの厚みを厚めに設定形成させることを特徴としたものである。
【0009】
これによって、内箱は真空成型後、均一な肉厚分布になり、仕切り部の強度、勘合は最適になり、材料費および生産にかかる工数も低減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の断熱箱体の製造方法は、冷蔵庫等の断熱箱体を構成する内箱をシート押し出し時に、あらかじめ、仕切り部などを厚めに設定したもので、このことより、真空成型後、
全体の肉厚が均一で、局部的変形を防止でき、断熱箱体の強度を維持する効果も有することができる。また、設備の改造などの投資が不要で、各機種、モデルごとの適切な肉厚分布を選択でき、大きな品質向上、原価低減、生産性向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1における断熱箱体の断面図
【図2】本発明の実施形態1における断熱箱体の製造方法を示す断面図
【図3】本発明の実施形態1における断熱箱体のシート押出しの金型の概略図
【図4】本発明の実施形態1における断熱箱体の寸法関係を示す概略図
【図5】従来の断熱箱体の製造方法の概略図
【図6】従来の断熱箱体の製造方法の概略図
【図7】従来の断熱箱体のシート押出しの金型の概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、断熱箱体を形成する内箱で、前記内箱をシート押し出し、真空成型の順で成型する工法において、シートを真空成型するとき、延伸倍率が高く肉厚が薄くなる部分をシート押し出し時にあらかじめその肉厚に対応して前記シートの厚みを厚めに設定形成させることにより、真空成型後の肉厚が充分な内箱が得られ、組み立て時、薄肉部の変形防止の補強、発泡断熱材を注入の熱による変形防止対策が不要になり、発泡断熱材の洩れがなくなり品質が安定しかつ経済的な断熱箱体を形成させることができる。
【0013】
第2の発明は、断熱箱体を形成する内箱で、前記内箱をシート押し出し、真空成型の順で成型する工法において、シートを真空成型するとき、欲しい肉厚を逆算してシート押し出し時にあらかじめその肉厚に対応して前記シートの厚みを設定形成させることにより、真空成型後の肉厚が設定でき、強度的に充分な内箱が得られ、組み立て時、薄肉部の変形防止の補強、発泡断熱材を注入の熱による変形防止対策が不要になり、発泡断熱材の洩れがなくなり品質が安定しかつ経済的な断熱箱体を形成させることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の断熱箱体の製造方法において、内箱は貯蔵室の仕切り部を一体成型するもので、シート押し出し時にあらかじめ真空成型後の肉厚を想定し、仕切り部の板厚を厚めに設定形成させることにより、真空成型後仕切り部の肉厚が充分な内箱が得られ、組み立て時、薄肉部の変形防止の補強、発泡断熱材を注入の熱による変形防止対策が不要になり、発泡断熱材の洩れがなくなり品質が安定しかつ経済的な断熱箱体を形成させることができる。
【0015】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の製造方法により製造した断熱箱体を用いた冷蔵庫である。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における断熱箱体の断面図である。
【0018】
図1において、冷蔵庫等の製品は外箱1と内箱2によって、箱体が構成されており、外箱1と内箱2の間に断熱材3が注入、固化され断熱箱体が形成できる。製品の各貯蔵室4は仕切り壁5によって仕切られている。
【0019】
図2は、本発明の断熱箱体を構成する内箱2と内箱2に対応するシート材料の断面図である。6は、内箱を真空成型する前のシート材料である。6aは、シート材料の厚肉部で
真空成型後に仕切り部になる部分である。厚肉部のシート長をYとする。また2aは内箱仕切り部であるが、内箱中央部の仕切り部長さをCとする。
【0020】
図3は、シート押し出し金型7とその厚み調整用リップ7aの一例である。シート材料の肉厚部の厚みをt2とし、他の部分の厚みをt1とする。
【0021】
図4は、内箱の寸法関係を示す概略図である。内箱の幅はWであり、奥行き寸法はDである。また仕切り壁の位置は天面からa、底面からbの位置とする。
【0022】
以上のように構成された断熱箱体および冷蔵庫について、その製造方法を説明する。
【0023】
まず、シート材料6をシート押し出し成型時に、あらかじめ仕切り部になる部分のシート6aの厚みを金型の厚み調整用リップ7aを調整し、厚めにしておく。これにより次工程で真空成型すれば、仕切り部は、極端な薄肉部にはならず、肉厚が均一な内箱が成型できる。
【0024】
実際の設計においては、内箱の奥行き寸法Dと、内箱の幅W、仕切り部の位置aの寸法の大小関係により、その成形性は左右され、延伸倍率は決まる。このDに対するW、aとbの比率により、肉厚部の厚みt2とそのシート長Yは決まる。(表1)に最適値を示す。
【0025】
【表1】

【0026】
また、このDに対するa、aとbの比率を変化させた場合の肉厚部の厚みt2とそのシート長Yの最適値を(表2)に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
このように仕切り部の厚みt2と他の部分の厚みt1、さらに、仕切り部に相当するシート材料の厚肉部のシート長Yを上記条件設定で真空成型を行った場合、仕切り部と他の部分での内箱の厚さは均一となり、真空成型後の肉厚が充分な内箱が得られ、組み立て時、薄肉部の変形防止の補強、発泡断熱材を注入の熱による変形防止対策が不要になり、発泡断熱材の洩れがなくなり品質が安定しかつ経済的な断熱箱体を形成させることができた。
【0029】
よって、内箱の詳細な形状、例えば棚の位置、形状さらに、真空成型時の条件(温度・サイクル・プラグの下降タイミング)によって詳細は異なるが、概ね(表1)、(表2)の計算式により、最適なt2、Yは決まる。
【0030】
以上のように本実施の形態においては、シート材料が真空成型後の肉厚を考慮し、あらかじめ仕切り部になる部分をあらかじめ厚くしておく。これにより従来は、内箱成型後の肉厚が0.3mm以下になると、内箱の剛性が大きく低下し、補強の部材が必要で、かつ断熱材などが透けるため、透け防止のテープなどが必要であったがこれらが不要になる。
【0031】
また、肉厚が充分あるため、仕切り部の部品との勘合精度も向上し、発泡断熱箱材注入時のリークなどもなくなり、非常に品質が向上しかつ経済的な内箱を形成することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、シート押し出し時のあらかじめ厚めにしておく部分は、仕切る部分だけでなく、内箱の各機種ごとの欲しい部分を逆算し、設定することにより機種・モデルの最適な内箱を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかる断熱箱体の製造方法およびその断熱箱体を用いた冷蔵庫は、設備の改造などの投資が不要で、各機種、モデルごとの適切な内箱の肉厚分布が得られ、品質が安定し、大きな原価低減、生産性向上につながることが可能になるので、家庭用又は業務用冷蔵庫あるいはショーケース等の断熱発泡の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 外箱
2 内箱
2a 仕切り部
3 断熱材
4 貯蔵室
5 仕切り壁(仕切り部)
6 シート材料
7 シート押し出し金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱箱体を形成する内箱で、前記内箱をシート押し出し、真空成型の順で成型する工法において、シートを真空成型するとき、延伸倍率が高く肉厚が薄くなる部分をシート押し出し時にあらかじめその肉厚に対応して前記シートの厚みを厚めに設定形成させることを特徴とする断熱箱体の製造方法。
【請求項2】
断熱箱体を形成する内箱で、前記内箱をシート押し出し、真空成型の順で成型する工法において、シートを真空成型するとき、欲しい肉厚を逆算してシート押し出し時にあらかじめその肉厚に対応して前記シートの厚みを設定形成させることを特徴とする断熱箱体の製造方法。
【請求項3】
内箱は貯蔵室の仕切り部を一体成型するもので、シート押し出し時にあらかじめ真空成型後の肉厚を想定し、仕切り部の板厚を厚めに設定形成させることを特徴とする請求項1または2に記載の断熱箱体の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つの製造方法により製造した断熱箱体を用いた冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−148176(P2011−148176A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10805(P2010−10805)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】