説明

新しい触媒機能を有するL−ラムノースイソメラーゼの遺伝子配列およびその用途

イズモリング(第1図)の希少糖戦略の中で、多種類の希少アルドースに作用し、多種類の希少ケトースを生産するために最も効率のよいイソメラーゼを得ることによって、多種類の希少糖を生産する反応系を確立すること。 以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするDNA。Pseudomonas stutzerii由来のL−ラムノースイソメラーゼである上記のDNA。配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。上記のタンパク質を発現することができる発現系を含んでいる宿主細胞を培地に培養し、得られる培養物からL−ラムノースイソメラーゼ活性を有する組換えタンパク質を採取することを特徴とする組換えタンパク質の製造方法。第1図を希少糖生産に利用する方法であって、目的とする希少糖の、単糖の全体像中の位置を把握し、上記タンパク質を作用させるその最適な生産経路を設計することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、Pseudomonas stutzeriの生産するL−ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子配列、さらにこれまで見いだされていなかった新しい糖異性化反応を触媒する触媒機能を明らかにしたものであり、該新規遺伝子配列、該新規触媒機能、ならびに、該新規触媒機能の希少糖生産および生理活性探索への利用に関する。
本発明において、利用するイズモリング(Izumoring)連携図は、イズモリングC6(第5図、商願2003−1630)の中でのつながりと、イズモリングC5(第6図、商願2003−1631)の中でのつながりと、イズモリングC4の中でのつながりと、C4、C5、C6が全てつながっている第1図で示されるイズモリング全体図であり、出願前未公開のものである。
また、L−ラムノースイソメラーゼは各種の微生物から単離され、それをコードする遺伝子の配列も報告されている。本発明は、土壌より分離したバクテリア(Pseudomonas stutzeri)のL−ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子配列を決定したところ、これまで報告されている遺伝子配列との相同性のないもので、遺伝子的にも、蛋白質的に新規なものであることが明らかとなったものである。
この配列を利用することで、遺伝子操作を利用して酵素を大量生産しそれを用いる希少糖や、その他各種遺伝子工学的手法を用いた用途に利用できるものである。
さらにまた、Pseudomonas stutzeriの生産するL−ラムノースイソメラーゼがこれまで見いだされていなかった新しい糖異性化反応を触媒する触媒機能をもつことを明らかにしたものである。
L−ラムノースイソメラーゼは、希少糖D−アロースをD−プシコースから生産する時に有用な酵素である。本発明は遺伝子工学的な手法を用いて純粋な酵素を生産し検討した結果、これまで認めることのできなかった新しい異性化反応を触媒する能力を見いだしたもので、各種の希少糖の生産に利用できるものである。
【背景技術】
従来の未利用資源、特にバイオマス(例えば木材などの廃物)の有効利用は、それをブドウ糖へ加水分解しそれをアルコールへと変換することが大きな目標であった。しかしアルコールへ変換しても付加価値が低いため実用化は無理であった。また、多糖(未利用資源に無尽蔵に存在する)を原料として、中途半端に分解すると、オリゴ糖ができる。これも機能性のある付加価値のあるものとして用途が開発されている。
希少糖の生理活性に着目し、細胞を用いる実験によりその裏付けをすることは本発明者らによってはじめられた。21世紀は生命科学の世紀とも言われており、現在、国際的にDNA研究、タンパク質研究が進められている。ポストゲノム研究における糖と言えば糖鎖研究が中心であるが、本発明者らの属する香川医科大学(現 香川大学医学部)、香川大学農学部では、単糖に着目し、単糖に生理活性はないか等その応用研究を進めている。その背景としては、香川大学の農学部の方で希少糖の生産に関する網羅的な研究が長年積み重ねられてきて、近年になり一部の希少糖の大量生産技術が確立されたことが挙げられる。香川医科大学(現 香川大学医学部)においても糖に生理活性を探求する研究が数年前から開始されていた。その両者がドッキングした形で、香川大学農学部で生産された希少糖(単糖)を用いて生理活性を探求する研究が、1999年から地域先導研究として開始され、さまざまな生理活性を有することが発見されてきている。
単糖類は還元基(カルボニル基)の状態によりアルドース(カルボニル基としてアルデヒド基を持つ糖)、ケトース(カルボニル基としてケトン基を持つ糖)、糖アルコール(別名:ポリオール、カルボニル基を持たない糖)に大別される。単糖類には「希少糖」といわれるものがある。希少糖とは、国際希少糖学会の定義によれば自然界に希にしか存在しない糖と定義されており、その種類によっては、有機化学的合成方法における収量も少ないものも多い。このため、希少糖について未知の性質のものも多く、アロースを含めたアルドヘキソース(アルドース)希少糖においても未知の性質が多いというのが現状である。
糖の応用研究に関し、従来、糖と癌との関係については、例えば、特許文献1に記載されているように、癌の予防に有効である多糖類が知られている。また、オリゴ糖が整腸作用を持つことを利用して便秘を解消し大腸癌などになりにくい効果をもつことや、最近ではアガリスクなどの多糖体が癌抑制効果を持つことなどの報告、糖鎖と癌転移関連の報告もある。さらに、特許文献2には、D−アロースの誘導体を有効成分とする抗腫瘍剤は開示されている。一方、糖類の活性酸素に対する性質を利用したものでは、例えば、特許文献3に記載されているように、活性酸素を抑制する性質を有する多糖類を含有させた活性酸素産生抑制剤は知られている。
単糖類の中で、プシコースは、還元基としてケトン基を持つ六炭糖である。このプシコースには光学異性体としてD体とL体とが有ることが知られている。ここで、D−プシコースは既知物質であるが自然界に希にしか存在しないので、国際希少糖学会の定義によれば「希少糖」と定義されているが、このD−プシコースは、近年、エピメラーゼの出現(例えば、特許文献4参照)により高価ではあるが、比較的入手が容易となった。そして、この公報に従えば、調製されたD−プシコースは、甘味料、醗酵用炭素源、試薬、化粧品・医薬品の原料・中間体などとして有効に利用できることが示唆されている。この公報によれば、この甘味料としては、飲食物、飼料、歯磨き、内服薬など経口摂取物の甘味付け嗜好性向上に利用できる旨用途の方向性が記載されているにすぎない。D−プシコースの光学異性体であるL−プシコースについては、可食配合物として利用可能であることが、例えば、特許文献5で詳細に開示はされている。
一方、プシコースの試薬・医薬品等の中間原料としての応用例は、次に示される。例えば、非特許文献1によれば、D−プシコースを原料としたヒダントイン誘導体の合成例が報告されている。また、非特許文献2によれば、D−フラクトフラノシルヌクレオシドの合成例が開示されている。いずれの先行技術にもD−プシコースが医薬品等の原料・中間体として利用できることが報告されているにすぎない。
また、特許文献6には、構造中に六炭糖を有するコウジ酸配糖体はメラニン生成抑制作用が優れているとともに、安定性が高く、かつ水に対する溶解性が高く、美白外用剤の有効成分として適していると記載されているにすぎない。また、特許文献7には、プシコースは皮膚バリアー機能の回復を促進して、皮膚の表皮機能の低下による表皮増殖異常等を防止するために有用であることが記載され、保湿剤として有用性が記載されているにすぎない。また、D−タガトースを含むいくつかの糖類を有効成分とする過血糖付随疾患の予防および肥満防止用保健食が特許文献8で公開されているが、希少糖そのものの性能は記述されていない。また、特許文献9には、ケトヘキソースの一つであるD−ソルボースを含む、アラビノース、リボース、グルコースを主要構成糖とする複合多糖類について、抗高脂血症用剤としての用途が公表されているにすぎない。
しかし、「単糖」に着目し、希少糖の応用研究を進めるためにも、また、新規用途が完成された場合は一層、希少糖の大量生産技術の確立が必要となる。
一方、Pseudomonas stutzerii LL172の生産するL−ラムノースイソメラーゼは、非特許文献3で発表された以下の物理化学的性質を有する公知酵素である。
(イ)作用
L−ラムノースからL−ラムニュロースへの異性化反応ならびにL−ラムニュロースからL−ラムノースへの異性化を触媒する酵素である。D−アロースとD−プシコースの間の異性化にも作用することが既知であり(非特許文献3)、D−プシコースからD−アロースを生産することができる酵素である。異性化酵素はもっとも高い活性を示す基質を元に命名されるため、L−ラムノースイソメラーゼと同一で命名された酵素は、大腸菌および枯草菌から単離され、それをコードする遺伝子の配列が報告されている。
(ロ)基質特異性
L−ラムノースおよびL−ラムニュロースを基質とする。のみならず、L−リキソースおよびL−キシルロース、L−マンノースおよびL−フラクトース、D−リボースおよびD−リブロース、D−アロースおよびD−プシコースを基質とする。
(ハ)作用pHおよび至適pH
作用pHは7.0〜10.0であり、至適pHは9.0である。
(ニ)pH安定性
種々のpHで4℃、1時間保持した場合、pH6.0〜11.0の範囲で安定である。
(ホ)作用温度および至適温度
作用温度は40〜65℃であり、至適温度は60℃である。
(ヘ)温度安定性
40℃、10分では安定しており、50℃、10分でも90%以上残存している。
(ト)キレート剤の影響
キレート剤であるEDTA、EGTAを活性測定時に共存させても、ほとんど活性は阻害されない。
(チ)金属イオンの影響
1mMのコバルトイオンにより約30%阻害される。
(リ)SDS−PAGE法による分子量
約43,000である。
特許文献1 特開平5−112455号公報
特許文献2 特公昭59−40400号
特許文献3 特開平07−285871号公報
特許文献4 特開平6−125776号公報
特許文献5 特開昭57−129671号公報
特許文献6 特開平4−198115号公報
特許文献7 特開2000−103728号公報
特許文献8 特開平6−65080号公報
特許文献9 特開平2−286620号公報
非特許文献1 Tetrahedron、第47巻、No.12/13、第2133頁(1991年)
非特許文献2 Acta.Chem.Scand.Ser.B.第38巻,No.5,第367頁(1984)
非特許文献3 「ジャーナル・オブ・ファーメンテーション・アンド・バイオエンジニアリング(Journal of Fermentation and Bioengineering)」第85巻、539乃至541頁(1998年)
【発明の開示】
各種希少糖の生産法は、希少糖生産戦略イズモリング(第1図で示される生産過程と分子構造(D型、L型)により、炭素数の異なる単糖全てをつないだ連携図)によって生産できる設計図が、本発明者らにより完成している。その戦略の中のアルドースとケトース間を触媒するイソメラーゼは、希少アルドースおよび希少ケトースの生産に重要である。一般にアルドースイソメラーゼは基質特異性が比較的広い。すなわち、例えばD−キシロースイソメラーゼはD−キシロースとD−キシルロース間の異性化を触媒するが、この反応のみならず、D−グルコースとD−フラクトース間の異性化をも触媒する。基質特異性が広いといっても、基質となるアルドースは3〜4種が通常である。D−アラビノースイソメラーゼは、D−アラビノース、L−ガラクトースおよびL−フコース等に作用する等のように、構造が比較的類似したものに作用するのである。
そのため、第1図のイズモリングの種々の希少アルドース、希少ケトースの生産には、その構造を考慮した検討を行うことで目的とする希少糖を生産することが重要な検討課題となっている。
本発明は、第1図のイズモリング(イズモリング全体図)を希少糖生産に利用することを目的とする。
本発明は、多糖(未利用資源に無尽蔵に存在する)を原料として、ブドウ糖等単糖へ変換するところまでは従来法と同じであるが、それから先が酵母によるアルコール発酵ではなく、希少糖という付加価値の高いものへの最適な生産経路を設計し、希少糖大量生産技術を確立することを目的とする。
本発明は、Pseudomonas stutzeriの生産するL−ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子配列を提供すること、各種遺伝子工学的手法によりこれまで見いだされていなかった新しい糖異性化反応を触媒する触媒機能を発見すること、ならびに、新規触媒機能を希少糖生産および生理活性探索へ利用することを目的とする。
本発明は、新規かつ有用なL−ラムノースイソメラーゼ遺伝子の配列を提供し、遺伝子操作、さらに明らかにした新規触媒機能を利用した希少糖の生産や各種遺伝子工学的手法、あるいは該新規触媒機能を用いた用途に利用できるようにすることを目的とする。
本発明は、Pseudomonas stutzeriの生産するL−ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子配列を、さらに明らかにした新規触媒機能を、イズモリング全体図を用いて、希少糖生産に利用すること、さらに、希少糖の生理活性探索に寄与することを目的とする。
さらに、本発明は、イズモリング(第1図)の希少糖戦略の中で、多種類の希少アルドースに作用し、多種類の希少ケトースを生産するために最も効率のよいイソメラーゼを得ることによって、多種類の希少糖を生産する反応系を確立することを目的とする。
本発明はPseudomonas stutzeriiの生産するL−ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子配列を明らかにしたものである。L−ラムノースイソメラーゼは各種の微生物から単離され、それをコードする遺伝子の配列も報告されている。しかし、これらの起源由来のL−ラムノースイソメラーゼがD−プシコースに反応してD−アロースを作るという報告はない。
本発明は、土壌より分離したバクテリア(Pseudomonas stutzerii LL172)のL−ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子配列を決定したところ、これまで報告されている遺伝子配列との相同性のないもので、遺伝子的にも、蛋白質的に新規なものであることが明らかとなったものである。この配列を利用することで、遺伝子操作を利用して酵素を大量生産しそれを用いる希少糖や、その他各種遺伝子工学的手法を用いた用途に利用できるものである。
L−ラムノースからL−ラムニュロースへの異性化反応ならびにL−ラムニュロースからL−ラムノースへの異性化反応を触媒するPseudomonas stutzerii由来のL−ラムノースイソメラーゼをコードするDNAと、該DNAを用いる組換えDNA技術によるポリペプチドの製造方法を提供することにより解決する。
さらに、本発明者らは研究をすすめ、Pseudomonas stutzeriの生産するL−ラムノースイソメラーゼがこれまで見いだされていなかった新しい糖異性化反応を触媒する触媒機能をもつことを明らかにした。本発明においては、イズモリング(第1図)の中の、異性化反応を触媒する酵素をL−ラムノースイソメラーゼのもつ新たに発見された触媒能力を利用して各種希少糖を生産するものである。
これまでは個別の異性化反応を、個別の異なるイソメラーゼを用いて反応していたものを、L−ラムノースイソメラーゼの非常に広い基質特異性を利用することで、一つの酵素を用いて、多種類の希少糖を生産しようとするものである。
すなわち、本発明は、L−ラムノースイソメラーゼが多くの異性化反応を触媒することにより、これまで不可能であった希少糖の生産を一つの酵素を有効に利用して効率的に各種の希少糖の生産が可能になった。
すなわち、本発明は、以下のDNAを要旨とする。
(1)以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質
(2)配列番号1に示される塩基配列若しくはその相補的配列またはこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなるDNA。
(3)上記(2)のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、L−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(4)Pseudomonas stutzerii由来のL−ラムノースイソメラーゼである上記(1)、(2)または(3)のDNA。
(5)上記のL−ラムノースイソメラーゼは、以下の物理化学的性質を有する酵素である上記(4)のDNA。
(イ)作用
第7図,第8図,第9図に太い黒線で示される異性化反応を触媒する。
(ロ)作用pHおよび至適pH
作用pHは7.0〜10.0であり、至適pHは9.0である。
(ハ)pH安定性
種々のpHで4℃、1時間保持した場合、pH6.0〜11.0の範囲で安定である。
(ニ)作用温度および至適温度
作用温度は40〜65℃であり、至適温度は60℃である。
(ホ)温度安定性
40℃、10分では安定しており、50℃、10分でも90%以上残存している。
(ヘ)キレート剤の影響
キレート剤であるEDTA、EGTAを活性測定時に共存させても、ほとんど活性は阻害されない。
(ト)金属イオンの影響
1mMのコバルトイオンにより約30%阻害される。
(チ)SDS−PAGE法による分子量
約43,000である。
また、本発明は、以下のタンパク質を要旨とする。
(6)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(7)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質。
(8)L−ラムノースイソメラーゼ活性は、以下の物理化学的性質によって特定されるものである上記(6)または(7)のタンパク質。
(イ)作用
第7図,第8図,第9図に太い黒線で示される異性化反応を触媒する。
(ロ)作用pHおよび至適pH
作用pHは7.0〜10.0であり、至適pHは9.0である。
(ハ)pH安定性
種々のpHで4℃、1時間保持した場合、pH6.0〜11.0の範囲で安定である。
(ニ)作用温度および至適温度
作用温度は40〜65℃であり、至適温度は60℃である。
(ホ)温度安定性
40℃、10分では安定しており、50℃、10分でも90%以上残存している。
(ヘ)キレート剤の影響
キレート剤であるEDTA、EGTAを活性測定時に共存させても、ほとんど活性は阻害されない。
(ト)金属イオンの影響
1mMのコバルトイオンにより約30%阻害される。
(チ)SDS−PAGE法による分子量
約43,000である。
(9)上記(6)、(7)または(8)のタンパク質と、翻訳開始コドンタンパク質とを結合させた融合タンパク質。
また、本発明は、下記の(10)の組換えベクターを要旨とする。
(10)上記(1)ないし(5)のいずれか記載のDNAを含む組換えベクター。
また、本発明は、下記の(11)の宿主細胞を要旨とする。
(11)上記(6)、(7)または(8)のタンパク質を発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞。
また、本発明は、下記の(12)の組換えタンパク質の製造方法を要旨とする。
(12)上記(11)の宿主細胞を培地に培養し、得られる培養物からL−ラムノースイソメラーゼ活性を有する組換えタンパク質を採取することを特徴とする組換えタンパク質の製造方法。
さらにまた、本発明は、下記の(13)のイズモリング(Izumoring)連携図を希少糖生産に利用する方法を要旨とする。
(13)第1図で示される生産過程と分子構造(D型、L型)により、炭素数の異なる単糖全てをつないだ連携図を希少糖生産に利用する方法であって、目的とする希少糖の、単糖の全体像中の位置を把握し、上記(6)、(7)、(8)または(9)のタンパク質を作用させるその最適な生産経路を設計することを特徴とする方法。
(14)希少糖生産が希少糖大量生産である上記(13)の方法。
(15)希少糖生産が未利用資源からの希少糖生産である上記(13)または(14)の方法。
(16)目的とする希少糖が、生理活性が判明した希少糖である上記(13)、(14)または(15)の方法。
【発明の効果】
L−ラムノースイソメラーゼを遺伝子工学的手法によって、大量に生産することが可能となり、本酵素を用いたD−アロースを含む各種の希少糖の大量生産法を確立できる。
本発明は、最も安価に大量に入手できる原料はD−グルコース(ブドウ糖)である。このD−グルコースはほとんどすべての未利用植物に大量に存在する糖であり、これを有効に利用して目的とする希少糖への最適な生産経路を設計するツールを提供することができる。
また、本発明は、希少糖の生産分野ばかりではなく、希少糖の持つ生理活性を探索する研究においても有効なツールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、イズモリング(Izumoring)連携図である。
第2図は、本発明のPseudomonas stutzerii LL172由来のL−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子(DNA)の塩基配列とアミノ酸配列を示す図面である。
第3図は、本発明のPseudomonas stutzerii LL172菌由来のL−ラムノースイソメラーゼと公知のBacillus subtilis由来のL−ラムノースイソメラーゼのアミノ酸配列を比較する図面である。
第4図は、本発明のPseudomonas stutzeriiLL172菌由来のL−ラムノースイソメラーゼと公知のStreptmyces coelicolorまたはThermotoga maritima由来の未同定の推定イソメラーゼの相同性を説明する図面である。
第5図は、第1図の下段のイズモリングC6の説明図である。
第6図は、第1図の中段のイズモリングC5の説明図である。
第7図は、イズモリングを用いて示した、L−ラムノースイソメラーゼが触媒するヘキソースの異性化反応である。太い黒線が触媒することが確認された異性化反応である。太い点線が触媒反応が確認されなかった異性化反応である。
第8図は、イズモリングを用いて示した、L−ラムノースイソメラーゼが触媒するペントースの異性化反応である。太い黒線が触媒することが確認された異性化反応である。全ての異性化反応が確認された。
第9図は、イズモリングを用いて示した、L−ラムノースイソメラーゼが触媒するヘテトロースの異性化反応である。太い黒線が触媒することが確認された異性化反応である。全ての異性化反応が確認された。
第10図は、従来の単糖類のまとめ方の一例を示す図面である。
【発明を実施するための最良の形態】
Pseudomonas stutzeriiに属する菌株「Pseudomonas stutzerii LL172」は、上記文献に記載された公知菌であり、香川大学農学部生物資源食糧化学科 何森健研究室に保存されている。このたび国際出願をするに際し、本菌株を日本国独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に2004年1月6日に国際寄託している(IPOD FERM BP−08593)。なお、本菌株はLL172aとも表示することがあるが、LL172とLL172aは同一菌株である。
L−ラムノースイソメラーゼは、L−ラムノースからL−ラムニュロースへの異性化反応ならびにL−ラムニュロースからL−ラムノースへの異性化を触媒する酵素である。Pseudomonas stutzerii LL172の生産するL−ラムノースイソメラーゼは、D−アロースとD−プシコースの間の異性化にも作用するので、D−プシコースからD−アロースを生産することができる酵素である。ただし、D−プシコースからD−アロースを生産するためには、Pseudomonas stutzerii LL172由来の酵素が必要である。
Pseudomonas stutzerii LL172由来のL−ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子配列は、これまで報告されているL−ラムノースイソメラーゼの遺伝子配列との相同性のないもので、遺伝子的にも、蛋白質的に新規なものであることが明らかとなったものである。
本発明でいうL−ラムノースイソメラーゼは、Pseudomonas stutzerii LL172由来のL−ラムノースイソメラーゼであって、配列番号1に記載されるアミノ酸配列、またはそのアミノ酸配列の中の1個以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換され、欠失され、1個以上のアミノ酸が付加されてなるアミノ酸配列を有する。本発明でいう遺伝子(DNA)は、上記のL−ラムノースイソメラーゼをコードする塩基配列を有する。
すなわち、本発明の対象となるタンパク質としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(L−ラムノースイソメラーゼ)や、該配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質を挙げることができる。
また、上記L−ラムノースイソメラーゼ活性としては、好ましくはL−ラムノースからL−ラムニュロースへの異性化反応ならびにL−ラムニュロースからL−ラムノースへの異性化を触媒する酵素活性を挙げることができる。また、D−アロースとD−プシコースの間の異性化を触媒する酵素活性を挙げることができる。D−アロースをD−プシコースから生産できる活性は、Pseudomonas stutzerii LL172由来のL−ラムノースイソメラーゼ以外には報告されていない。
さらに、Pseudomonas stutzerii LL172の生産するL−ラムノースイソメラーゼは、以下の物理化学的性質を有する酵素であること明らかにした。
(イ)作用
L−ラムノースからL−ラムニュロースへの異性化反応ならびにL−ラムニュロースからL−ラムノースへの異性化を触媒する。D−アロースとD−プシコースの間の異性化にも作用し、D−プシコースからD−アロースを生産することができる酵素である。以上が既知の主たる作用である。さらに本発明者らによりこの度明らかとなったL−ラムノースイソメラーゼの新規触媒反応を含めた全ての異性化反応は、イズモリングの第7図,第8図,第9図に示される。基質特異性は表1,2,3参照。
L−ラムノースおよびL−ラムニュロースを基質とする。のみならず、L−リキソースおよびL−キシルロース、L−マンノースおよびL−フラクトース、D−リボースおよびD−リブロース、D−アロースおよびD−プシコースを基質とする。以上が既知の主たる基質特異性である。第7図,第8図,第9図よりL−ラムノースイソメラーゼが単糖の多くを基質とすることが理解できる。
すなわち、活性の大小はあるものの、L−ラムノースイソメラーゼが触媒することが確認された異性化反応は第7図中太い黒線で示したものである。一方、異性化反応が確認できなかったものは、太い点線で示した4種であることが一目瞭然に理解できる。
また、第9図、第10図に示すように、これも活性の大小はあるものの、ペントースおよびテトロースにおける全異性化活性を持つことを示している。
(ハ)作用pHおよび至適pH
作用pHは7.0〜10.0であり、至適pHは9.0である。
(ニ)pH安定性
種々のpHで4℃、1時間保持した場合、pH6.0〜11.0の範囲で安定である。
(ホ)作用温度および至適温度
作用温度は40〜65℃であり、至適温度は60℃である。
(ヘ)温度安定性
40℃、10分では安定しており、50℃、10分でも90%以上残存している。
(ト)キレート剤の影響
キレート剤であるEDTA、EGTAを活性測定時に共存させても、ほとんど活性は阻害されない。
(チ)金属イオンの影響
1mMのコバルトイオンにより約30%阻害される。
(リ)SDS−PAGE法による分子量
約43,000である。
本発明の対象となるDNAとしては、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質や、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAや、配列番号1に示される塩基配列またはその相補的配列並びにこれらの配列の一部または全部を含むDNAや、かかるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつL−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを好ましいものとして例示することができる。
これらDNAは、そのDNA配列情報等に基づき、遺伝子ライブラリーなどから公知の方法により調製することができる。また、配列番号1に示される塩基配列またはその相補的配列並びにこれらの配列の一部または全部をプローブとして、各種細胞由来のDNAライブラリーに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行ない、該プローブにハイブリダイズするDNAを単離することにより、L−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを得ることもできる。かかるDNAを取得するためのハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理を挙げることができ、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC,0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理をより好ましく挙げることができる。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、種々の要素を適宜組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
本発明の融合タンパク質としては、上記本発明のタンパク質と翻訳コドンタンパク質とが結合しているものであればどのようなものでもよく、翻訳コドンタンパク質としては、従来知られている翻訳コドンタンパク質であれば特に制限されるものではない。かかる融合タンパク質は、常法により作製することができ、当該分野の研究用試薬としても有用である。
本発明はまた、上記本発明のタンパク質を発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞に関する。かかる本発明のタンパク質をコードする遺伝子の宿主細胞への導入は、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,1986)及びSambrookら(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,2nd Ed.,Cold SpringHarbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法により行うことができる。そして、宿主細胞としては、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス等の細菌原核細胞等を挙げることができる。
また、発現系としては、上記本発明のタンパク質を宿主細胞内で発現させることができる発現系であればどのようなものでもよく、染色体、エピソーム及びウイルスに由来する発現系、例えば、細菌プラスミド由来、酵母プラスミド由来、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス由来のベクター、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来及びこれらの組合せに由来するベクター、例えば、コスミドやファージミドのようなプラスミドとバクテリオファージの遺伝的要素に由来するものを挙げることができる。この発現系は発現を起こさせるだけでなく発現を調節する制御配列を含んでいてもよい。
上記発現系を含んでなる宿主細胞を培養して得られる本発明のタンパク質は、D−アロースの生産に用いることができる。また、かかる本発明のタンパク質を細胞培養物から回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法、好ましくは、高速液体クロマトグラフィーが用いられる。
希少糖とは、自然界に希にしか存在しない単糖(アルドース、ケトースおよび糖アルコール)と定義づけることができるが、この定義は糖の構造や性質による定義ではないため、あいまいである。すなわち、一定量以下の存在量を希少糖というなどの量の定義はなされていないためである。しかし、一般に自然界に多量に存在するアルドースとしてはD−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−リボース、D−キシロース、L−アラビノースの6種類あり、それ以外のアルドースは希少糖と定義される。ケトースとしては、D−フラクトースが存在しており、他のケトースは希少糖といえる。また糖アルコールは単糖を還元してできるが、自然界にはD−ソルビトールが比較的多いがそれ以外のものは量的には少ないので、これらも希少糖といえる。
希少糖は、これまで入手自体が困難であったが、自然界に多量に存在する単糖から希少糖を生産する方法が開発されつつあり、その技術を利用して製造することができる。
以下、イズモリング(Izumoring)連携図について説明する。
第1図で示される生産過程と分子構造(D型、L型)により、炭素数4から6の単糖全てをつないだ連携図がイズモリング(Izumoring)の全体図である。すなわち、第1図から理解できることは、単糖は、炭素数4、5、6全てがつながっているということである。全体図は、イズモリングC6の中でのつながりと、イズモリングC5の中でのつながりと、イズモリングC4の中でのつながりと、C4、C5、C6が全てつながっていることである。この考え方は重要である。炭素数を減少させるには主に発酵法を用いる。炭素数の異なる単糖全てをつなぐという大きな連携図であることも特徴である。また、利用価値がないということも理解することができる。
炭素数が6つの単糖(ヘキソース)のイズモリングは、第1図の下段および第5図に示すように、炭素数が6つの単糖(ヘキソース)は全部で34種類あり、アルドースが16種類、ケトースが8種類、糖アルコールが10種類ある。これらの糖は、酸化還元酵素の反応、アルドース異性化酵素の反応、アルドース還元酵素の反応で変換できることは、本発明者らの研究を含めた研究で知られている。しかしながら、これまでの研究では上のグループ、真ん中のグループ、下のグループは酵素反応でつながっていなかった。つまり、上のグループに属しているD−グルコース(ブドウ糖)やD−フラクトースは自然界に多量に存在する糖であり安価であるが、これらから希少糖を合成することができなかった。ところが、本発明者らの研究の過程で、これを結ぶ酵素が発見された。それはガラクチトールからD−タガトースを合成する酵素を持つ菌の培養液中に、全く予期しなかったD−ソルボースが発見されたことに端を発する。その原因を調べた結果、この菌がD−タガトース3エピメラーゼ(DTE)という酵素を産生していることを発見した。第1図の下段および第6図に示すように、このDTEはこれまで切れていたD−タガトースとD−ソルボースの間をつなぐ酵素であることがわかる。
そしてさらに驚くことに、このDTEは全てのケトースの3位をエピ化する酵素であり、これまで合成接続できなかったD−フラクトースとD−プシコース、L−ソルボースとL−タガトース、D−タガトースとD−ソルボース、L−プシコースとL−フラクトース、に作用するという非常に幅広い基質特異性を有するユニークな酵素であることが分かった。このDTEの発見によって、すべての単糖がリング状につながり、単糖の知識の構造化が完成し、イズモリング(Izumoring)と名付けた。
この第5図をよく見てみると、左側にL型、右側にD型、真ん中にDL型があり、しかもリングの中央(星印)を中心としてL型とD型が点対称になっていることもわかる。例えば、D−グルコースとL−グルコースは、中央の点を基準として点対称になっている。しかもイズモリング(Izumoring)の価値は、全ての単糖の生産の設計図にもなっていることである。先の例で、D−グルコースを出発点としてL−グルコースを生産しようと思えば、D−グルコースを異性化→エピ化→還元→酸化→エピ化→異性化するとL−グルコースが作れることを示している。
炭素数が6つの単糖(ヘキソース)のイズモリング(Izumoring)を使って、自然界に多量に存在する糖と微量にしか存在しない希少糖との関係が示されている。D−グルコース、D−フラクトース、D−マンノースと、牛乳中の乳糖から生産できるD−ガラクトースは、自然界に多く存在し、それ以外のものは微量にしか存在しない希少糖と分類される。DTEの発見によって、D−グルコースからD−フラクトース、D−プシコースを製造し、さらにD−アロース、アリトール、D−タリトールを製造することができるようになった。
炭素数が6つの単糖(ヘキソース)のイズモリング(Izumoring)の意義をまとめると、生産過程と分子構造(D型、L型)により、すべての単糖が構造的に整理され(知識の構造化)、単糖の全体像が把握できること、研究の効果的、効率的なアプローチが選択できること、最適な生産経路が設計できること、欠落部分について予見できること、が挙げられる。
炭素数が5つの単糖(ペントース)のイズモリングは、第1図の中段および第6図に示すように、炭素数6のイズモリングよりも小さいリングである。しかし、C6のイズモリングと同じようにアルドース8個、ケトース4個および糖アルコール4個全てを含むことに変わりは無く、全てが酵素反応で結ばれる。異なる点は、酸化還元反応、異性化反応のみでリング状に全てが連結できることである。一方、DTEを用いることによって、さらに効率のよい生産経路が設計できることがわかる。
炭素数5のイズモリングの特徴は、特に第6図から明らかなように、炭素数6のイズモリングが点対象に全単糖が配置されているのに対し、左右が対象に配置されていることが大きな特徴である。これら全ペントースは、酵素反応により連結されていることから、炭素数6のイズモリングの場合と全く同様に、すべてのペントースが構造的に整理され(知識の構造化)、全体像が把握できること、研究の効果的、効率的なアプローチが選択できること、最適な生産経路が設計できること、欠落部分について予見できる意義を持っている。
炭素数が4つの単糖(テトロース)のイズモリングは、第1図の上段に示すように、テトロースの構造上の特性のため、リングが完成しないという特徴がある。炭素数5のイズモリング上部半分の構造を持っている。このリングの場合も、炭素数5,6の場合と同様の酸化還元および異性化反応によって連結されている。DTEが炭素数4のケトースに反応しないため、ケトース間の反応は現在のところ存在しない。しかし、新規のエピメラーゼの存在が予測され、この研究は現在研究途上である。
全体の配置は、炭素数5と同様に左右対称であり、アルドース4個、ケトース2個および糖アルコール3個全てを含んでいる。すなわち炭素数5,6のイズモリングと同様の意義が存在する。
イズモリングC6のD−グルコースは、イズモリングC5のD−アラビトールおよびイズモリングC4のエリスリトールとつながっている。この線は、発酵法によってD−グルコースからD−アラビトールおよびエリスリトールを生産できることを示している。すなわち、イズモリングC6,イズモリングC5およびイズモリングC4は連結されている。この連結は、炭素数の減少という主に発酵法による反応であり、このD−アラビトールおよびエリスリトールへの転換反応の二つ以外の発酵法によるイズモリングC6とイズモリングC5,C4との連結は可能である。例えばD−グルコースからD−リボースの生産も可能である。
このように、3つのイズモリングにより全ての炭素数4,5,6の単糖(アルドース、ケトース、糖アルコール)が連結されたことで、それぞれの単糖が全単糖の中でその存在場所を明確に確認できる。
最も有名なキシリトールは、未利用資源の木質から生産できるD−キシロースを還元することで容易に生産できることを明確に確認できる。
もしも特定の単糖が生物反応によって多量に得られた場合には、それを原料とした新たな単糖への変換の可能性が容易に見いだすことが可能である。すなわち、この全体像から全ての単糖の原料としての位置を確実につかむことができるため、有用な利用法を設計することができる。特に廃棄物や副産物から単糖が得られた場合の利用方法を容易に推定できるのである。
本発明は、イズモリング(第1図)の希少糖戦略の中で、上記のとおり、多種類の希少アルドースに作用し、多種類の希少ケトースを生産するために最も効率のよいイソメラーゼを得ることができ、それによって多種類の希少糖を生産する反応を確立することが可能となった。すなわち、さらに明らかとなった新規触媒機能を、イズモリング全体図を用いて、希少糖生産に利用すること、さらに、希少糖の生理活性探索に寄与することが可能となった。
イズモリングの第7図,第8図,第9図から明らかなように、イズモリングを用いて異性化反応を整理することが全体を理解する手段として如何に有効であるかを示している。さらに、L−ラムノースイソメラーゼが単糖の多くを基質とすることが理解できる。
すなわち、活性の大小はあるものの、L−ラムノースイソメラーゼが触媒することが確認された異性化反応は第7図中太い線で示したものである。一方、異性化反応が確認できなかったものは、太い点線で示した4種であることが一目瞭然に理解できる。
また、第8図、第9図に示すように、これも活性の大小はあるものの、ペントースおよびテトロースにおける全異性化活性を持つことを示している。
このようにイズモリングを利用することで、L−ラムノースイソメラーゼの触媒する反応を明確に示すことができると同時に、反応が確認できないものを明確に認識することが可能である。
新しく確認された各種の異性化活性はアルドースからの反応と、ケトースからの反応の結果が若干異なるなど詳細な反応機構を検討すること必要があるが、第7図,第8図,第9図が示すように非常に多くの希少糖の生産に利用できる可能性を持つことが明らかとなった。
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
L−ラムノースを大量に生産する方法の一つとして、遺伝子工学的手法での増産が考えられる。そこで従来の方法で本酵素をコードする遺伝子をクローン化し遺伝子配列およびアミノ酸配列を決定した。その結果が以下のとおりであった。
[配列決定]
Pseudomonas stutzerii LL172由来L−ラムノースイソメラーゼ遺伝子は、配列表1および第2図に示すとおり、ORF1,290−bpからなり430アミノ酸をコードする新規のL−ラムノースイソメラーゼ遺伝子である。配列表2のアミノ酸配列からの計算分子量は46,946とオーセンティックの酵素の分子量約43,000よりやや大きいものであった。
本遺伝子を大腸菌で組換え発現させると本酵素を活性発現し分子量も約43,000と一致した。
大腸菌に入れた実験の場合の酵素発現の結果は以下のとおりである。
従って配列表1および第2図に示した遺伝子配列は、L−ラムノースイソメラーゼのものであると確認された。
[本遺伝子配列の特徴]
L−ラムノースイソメラーゼの遺伝子はすでに大腸菌と枯草菌で構造が解析されているが、Pseudomonas stutzerii LL172菌由来のL−ラムノースイソメラーゼとのアミノ酸配列の相同性は第3図に示すとおり20%以下と低く、触媒部位も一致しないので同一の酵素ではないと断定した。
すなわちこれまで発表されているL−ラムノースイソメラーゼとは全く新しい遺伝子配列をもつ酵素であった。
アミノ酸配列の相同性をデータベースで用いて解析すると、第4図に示すとおり、未同定の推定イソメラーゼと40%程度の高い相同性を示すが、これらの菌の遺伝子はゲノムプロジェクトによりシークエンスされた結果であり、酵素としては同定されていない。
以上の結果から、本菌由来のL−ラムノースイソメラーゼ遺伝子は、新規の酵素をコードする遺伝子であると断定することができた。
[用途]
遺伝子配列が明確になったことで、この遺伝子配列を利用した分子生物学的手法による各種の実験が可能となる。
例えば、この遺伝子を大腸菌に形質転換し、大量に生産することが可能である。その他この遺伝子にさらに何か新たな遺伝子を結合させるなどして、新しい性質を持つ酵素を生産することが可能となる。
【実施例2】
<L−ラムノースイソメラーゼをコードするDNA>
1 L−ラムノースイソメラーゼの精製と部分アミノ酸配列の決定
Pseudomonas stutzerii LL172をトリプティックソイブロス培地で30℃2日間培養しポリエチレングリコール分画、陰イオン交換クロマトグラフィーにて精製後電気泳動で分子量と純度を確認する。分子量は約42,000に単一のバンドとして得られる。臭化シアンを用いて酵素を部分分解しN末端および4箇所の部分アミノ酸配列を決定した。
2 プローブの合成と染色体マッピング
上記の培地で培養後、定法に従いCTABを用いて染色体DNAを抽出する。部分アミノ酸配列を元にミックスプライマーを合成し組み合わせを変えて2回のPCRにより特異的に増幅されるPCR産物を得てプローブに用いる。プローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行いL−ラムノースイソメラーゼ遺伝子の染色体上の位置を決定した。
3 ゲノムライブラリーのスクリーニング
染色体マッピングにより制限酵素ApaIとSacIで消化した約4.6kbの断片に遺伝子が含まれていることが分かったのでクローニングベクターpBluescriptIISK+に連結しゲノムライブラリを構築してプローブを用いてスクリーニングした。
4 L−ラムノースイソメラーゼ遺伝子の解析
L−ラムノースイソメラーゼ遺伝子は配列表1および第2図に示すとおりORF 1,290−bpからなり430アミノ酸(配列表2)をコードする新規のL−ラムノースイソメラーゼ遺伝子である。アミノ酸配列からの計算分子量は46,946とC末端側に修飾を受ける元菌の酵素の分子量約42,000よりやや大きい。L−ラムノースイソメラーゼの遺伝子はすでに大腸菌と枯草菌で構造が解析されているが、本菌由来のL−ラムノースイソメラーゼとのアミノ酸配列の相同性は第3図に示すとおり20%以下と低く、触媒部位も一致しないので同一の酵素ではないと断定した。また、大腸菌のL−ラムノースイソメラーゼと放線菌のキシロースイソメラーゼで保存されている異性化酵素のコンセンサスアミノ酸残基9箇所のうち5箇所は保存されているがMn結合や基質結合部位は保存されていない。アミノ酸配列の相同性をデータベースで用いて解析すると第4図に示すとおり未同定の推定イソメラーゼと40%程度の高い相同性を示すが、これらの菌の遺伝子はゲノムプロジェクトによりシークエンスされた結果であり、酵素としては同定されていない。
以上の結果から本菌由来のL−ラムノースイソメラーゼ遺伝子は新規の酵素をコードする遺伝子であると断定した。
5 組換えL−ラムノースイソメラーゼの活性発現
L−ラムノースイソメラーゼの翻訳開始コドンと高発現ベクターpQE60の翻訳開始コドンを一致させるようプライマーを設計しPCRで増幅させたL−ラムノースイソメラーゼ遺伝子をpQE60に組み込んで大腸菌JM109を形質転換し組換え大腸菌を作成した。組換え大腸菌は通常培地で37℃一晩培養するとL−ラムノースイソメラーゼを活性発現しN末端アミノ酸配列、分子量、および、酵素学的諸性質は元菌由来の酵素と一致、酵素生産量は10倍以上上昇し高発現が可能となった。
【実施例3】
D−グルコースから希少糖であるD−リキソースの生産を行った。酵母Candida famata R28を用いてD−グルコースから50%の収率でD−アラビトールを生産した。この反応は発酵法で行った。生産したD−アラビトールを酢酸菌Acetobacter aceti IFO 3281によってほぼ100%の収率でD−キシルロースへ変換した。これをL−リボースイソメラーゼを用いて、D−リキソースへと異性化することができた。生産物はイオン交換クロマトグラフィー等により精製結晶化し、D−リキソースであることを機器分析によって確認した。
すなわち、D−グルコースを原料として発酵法により、炭素数の一つ少ないD−リキソールへ変換し、酸化反応、異性化反応によって希少糖D−リキソースを生産することが可能である。(Journal of Bioscience and Bioengineering,Vol.88,676,1999)
【実施例4】
D−グルコースを原料として発酵法で作られるエリスリトールから希少糖L−エリスロースの生産を行った。エリスリトールをGluconobacter frateurii IFO 3254を用いてL−エリスルロースに酸化した。この反応はほぼ100%の収率で得られた。反応液からL−エリスルロースを分離し、これを原料としてL−リボースイソメラーゼを作用させることで、希少糖L−エリスロースを生産できた。10gのエリスリトールから1.7gのL−エリスロースを生産することができた。(Journal of Bioscience and Bioengineering Vol.92,237,2001)
すなわち、D−グルコースを出発物質として、炭素数の2少ないエリスリトールを発酵法で生産し、それを原料として用いることで、酸化反応と異性化反応によって希少糖L−エリスロースを生産することが可能である。
【実施例5】
実施例2のPseudomonas stutzerii LL172由来のL−ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子にC末端に6個のHisを連結するように設計し、それを大腸菌に形質転換した。このHisを連結したL−ラムノースイソメラーゼを大量に発現させ、ニッケルNTAカラムを用いた親和力クロマトグラフィー法によって、純粋な酵素を大量に生産しそれぞれ固定化して用いることで新しい機能を発揮させることが可能となった。表1にはアルドース、表2にはケトースを基質として実験を行い、それぞれの反応時間後の反応液中の糖組成をHPLCによって分析した実験結果を整理して示した。すなわち、表1はL−ラムノースイソメラーゼの反応を基質として各種アルドースを用いて行った時の、反応後の生産物組成を示している。表2はL−ラムノースイソメラーゼの反応を基質として各種ケトースを用いて行った時の、反応後の生産物組成を示している。


【実施例6】
《酵素の各基質に対するKmおよびVmax》
実施例5と同様の条件で酵素を得た。KmおよびVmaxの測定には酵素を固定化することなく用いて測定を行った。その結果を表3に整理して示した。すなわち、表3は、精製したL−ラムノースイソメラーゼの各種基質に対するKmおよびVmaxを測定した結果である。

【実施例7】
《実施例5および6で使用した微生物の詳細な説明》
C末端にヒスタグを連結したL−ラムノースイソメラーゼ遺伝子を導入した大腸菌JM109を用いた。
《培地組成および培養条件》
ポリペプトン3.5%、酵母エキス2.0%、NaCl0.5%(pH7.0)の培地に大腸菌JM109を接種し、28℃12時間培養後終濃度1mMの1PTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を添加した。その後4時間培養を続け、遠心分離により菌体を集菌した。
《酵素の抽出、酵素の精製および酵素の精製と固定化》
菌体を0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0で2回洗浄した。洗浄菌体をアルミナ粉末とともに磨砕したのち遠心分離を行い、不溶性物質をアルミナ粉末とともに除去し粗酵素液をえた。その粗酵素液をNi−NTAカラムを用いてアフィニティークロマト法によって酵素を精製し純粋な酵素を得た。酵素を超純水に対して透析した後、凍結乾燥して粉末の純粋な酵素をえた。その酵素20mgをキトパール樹脂1gに吸着させることで固定化酵素を調製した。
《各種基質を用いた酵素反応条件》
上記固定化酵素3g、0.05MグリシンNaOH緩衝液(pH9.0)3.0mL,1M MnCl 3.0μLおよび各種基質60mg(終濃度20mg/mL)の酵素反応液組成で、42℃で反応を行った。
【産業上の利用可能性】
1.L−ラムノースイソメラーゼを遺伝子工学的手法によって、大量に生産することが可能となり、本酵素を用いたD−アロースを含む各種の希少糖の大量生産法を確立できる。
L−ラムノースイソメラーゼは各種の微生物から単離され、それをコードする遺伝子の配列も報告されている。本発明は、土壌より分離したバクテリア(Pseudomonas stutzeri)のL−ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子配列を決定したところ、これまで報告されている遺伝子配列との相同性のないもので、遺伝子的にも、蛋白質的に新規なものであることが明らかとなったものである。
この配列を利用することで、遺伝子操作を利用した希少糖に生産や各種遺伝子工学的手法を用いた用途に利用できるものである。
2.従来の未利用資源、特に植物性バイオマス(例えば木材や各種未利用植物資源等)の有効利用は、それをブドウ糖へ加水分解しそれをアルコールへと変換することが大きな目標であった。しかしアルコールへ変換しても付加価値が低いため実用化は無理であった。本発明の特徴は、ブドウ糖等単糖へ変換するところまでは従来法と同じであるが、それから先が酵母によるアルコール発酵ではなく、各種生物反応による希少糖への変換である。これによって、アルコールという付加価値の低いものから、希少糖という付加価値の高いものを生産することを可能にするプロセスを提供することができる。
3.多糖(未利用植物性資源に無尽蔵に存在する)を原料として、部分分解する方法等により、オリゴ糖が生産できる。これも機能性のある付加価値のあるものとして用途が開発されている。しかし、単糖という最小単位にまで分解するともう新しい展開はないと考えられていた。それを打破したのが、ひとつの単糖(希少糖)から新しい単糖(希少糖)へと次々に変換することを目標とした生産戦略ができたことが大きな意義と考えている。多糖を分解すると単糖になる、それを原料として次々に単糖(希少糖)を生産するという発想の新しさである。多糖は、上流の原料であり、それを分解して単糖として原料とするということである。これは、原料がたとえ、木(セルロース)であろうと、でんぷんであろうと、何であろうと、どんなに異なった多糖であろうと単糖まで分解すれば同じものとなるということがその基本的戦略である。
4.第1図から理解できることは、単糖は、炭素数4、5、6全てがつながっているということである。イズモリングC6の中でのつながりと、C4、C5、C6が全てつながっていることである。この考え方は重要である。炭素数を減少させるには主に発酵法を用いる。炭素数の異なる単糖全てをつなぐという大きな連携図であることも特徴である。どのような廃棄物あるいは、糖質副産物が得られてもこの図からその利用法を考察することができるのである。また、利用価値がないということも理解することができるのである。
5.単糖に関しての研究計画の中で、第1図のように全ての炭素数の異なるものを包括してとらえる考え方は存在しなかった(第10図参照)。個別の反応は、それぞれの目的によって行われてきた。個別の目的で進めてきた研究が総合的に関係づけられることで、相互の技術をつなぎ合わせる方向が見いだせる。たとえば、廃棄物あるいは副産物として邪魔者として扱われてきたものが、単糖であるかぎり、その全てについて価値判断が可能となる。そして何の原料になるかを直ぐに判断できる。このように、単糖全体を図・システムとしてとらえる新しい技術思想を提示することができる。
6.本発明のこの技術思想は、単糖を見直す、単糖の価値を評価する方法につながってゆく。単糖という一般には「自然界では最も単純な有機物」という概念を、単糖全体を考慮に入れることで、複雑でしかも可能性が大きく広がる有機物であることを直感できるシステムにつながる。
7.「単糖はこれだけしかない」、「単糖はこれが全てである」ということを認識できることの重要性がある。逆の見方からすると、これだけ全部を研究することで単糖全体を知ることが可能であるという研究計画を明確にできることを示している。限界を知ることは、可能性を知ることになるのである。
8.本発明は、希少糖の生産分野ばかりではなく、希少糖の持つ生理活性を探索する研究においても有効性を発揮する。例えば、ある希少糖に生理活性が判明したとき、第1図で示される連携図の存在位置を確認する。そして構造の近い希少糖に関しての生理活性との比較、あるいは、構造的に鏡像関係にある希少糖の生理活性を検討することで、生理活性の機構を分子の構造から類推する助けになるであろう。また、これまでランダムに試行錯誤に研究していた生理活性の研究を、イズモリングの全体像を把握することを基盤として、計画的に進めることに優位に利用できることが期待される。
9.本発明は希少糖の生産戦略としての有用性および、その用途、特に生理活性の研究においても有用性を発揮する。これは、従来の構造のみからの単糖の羅列的分類と個別的認識法から、酵素反応による個々の単糖の連結という生産面での体系化が可能となったこと。さらに、希少糖の生理機能を解析し、イズモリング上に性質を集積することにより、これまで単純な羅列的理解から、単糖全体を、「単糖の構造」、「単糖の生産法」、および「単糖の生理機能」を包括的に理解することに大いに利用できると期待される。
10.本発明において明らかとなったL−ラムノースイソメラーゼの新規触媒反応を含めて全ての異性化反応を、イズモリングの第7図,第8図,第9図に示した。図から明らかなように、イズモリングを用いて異性化反応を整理することが全体を理解する手段として如何に有効であるかを示している。さらに、L−ラムノースイソメラーゼが単糖の多くを基質とすることが理解できる。
すなわち、活性の大小はあるものの、L−ラムノースイソメラーゼが触媒することが確認された異性化反応は第7図中太い線で示したものである。一方、異性化反応が確認できなかったものは、太い点線で示した4種であることが一目瞭然に理解できる。
また、第8図、第9図に示すように、これも活性の大小はあるものの、ペントースおよびテトロースにおける全異性化活性を持つことを示している。
11.このようにイズモリングを利用することで、L−ラムノースイソメラーゼの触媒する反応を明確に示すことができると同時に、反応が確認できないものを明確に認識することが可能である。
12.新しく確認された各種の異性化活性はアルドースからの反応と、ケトースからの反応の結果が若干異なるなど詳細な反応機構を検討すること必要があるが、第7図,第8図,第9図が示すように非常に多くの希少糖の生産に利用できる可能性を持つことが明らかとなった。
【配列表】



【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項2】
配列番号1に示される塩基配列若しくはその相補的配列またはこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなるDNA。
【請求項3】
請求項2記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつL−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項4】
Pseudomonas stutzerii由来のL−ラムノースイソメラーゼである請求項1、2または3のDNA。
【請求項5】
上記のL−ラムノースイソメラーゼは、以下の物理化学的性質を有する酵素である請求項4のDNA。
(イ)作用
第7図,第8図,第9図に太い黒線で示される異性化反応を触媒する。
(ロ)作用pHおよび至適pH
作用pHは7.0〜10.0であり、至適pHは9.0である。
(ハ)pH安定性
種々のpHで4℃、1時間保持した場合、pH6.0〜11.0の範囲で安定である。
(ニ)作用温度および至適温度
作用温度は40〜65℃であり、至適温度は60℃である。
(ホ)温度安定性
40℃、10分では安定しており、50℃、10分でも90%以上残存している。
(ヘ)キレート剤の影響
キレート剤であるEDTA、EGTAを活性測定時に共存させても、ほとんど活性は阻害されない。
(ト)金属イオンの影響
1mMのコバルトイオンにより約30%阻害される。
(チ)SDS−PAGE法による分子量
約43,000である。
【請求項6】
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項7】
配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつL−ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項8】
L−ラムノースイソメラーゼ活性は、以下の物理化学的性質によって特定されるものである請求項6または7のタンパク質。
(イ)作用
第7図,第8図,第9図に太い黒線で示される異性化反応を触媒する。
(ロ)作用pHおよび至適pH
作用pHは7.0〜10.0であり、至適pHは9.0である。
(ハ)pH安定性
種々のpHで4℃、1時間保持した場合、pH6.0〜11.0の範囲で安定である。
(ニ)作用温度および至適温度
作用温度は40〜65℃であり、至適温度は60℃である。
(ホ)温度安定性
40℃、10分では安定しており、50℃、10分でも90%以上残存している。
(ヘ)キレート剤の影響
キレート剤であるEDTA、EGTAを活性測定時に共存させても、ほとんど活性は阻害されない。
(ト)金属イオンの影響
1mMのコバルトイオンにより約30%阻害される。
(チ)SDS−PAGE法による分子量
約43,000である。
【請求項9】
請求項6、7または8記載のタンパク質と、翻訳開始コドンタンパク質とを結合させた融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれか記載のDNAを含む組換えベクター。
【請求項11】
請求項6、7または8記載のタンパク質を発現することができる発現系を含んでいる宿主細胞。
【請求項12】
請求項11の発現系を含んでなる宿主細胞を培地に培養し、得られる培養物からL−ラムノースイソメラーゼ活性を有する組換えタンパク質を採取することを特徴とする組換えタンパク質の製造方法。
【請求項13】
第1図で示される生産過程と分子構造(D型、L型)により、炭素数の異なる単糖全てをつないだ連携図を希少糖生産に利用する方法であって、目的とする希少糖の、単糖の全体像中の位置を把握し、請求項6、7、8または9のタンパク質を作用させるその最適な生産経路を設計することを特徴とする方法。
【請求項14】
希少糖生産が希少糖大量生産である請求項13の方法。
【請求項15】
希少糖生産が未利用資源からの希少糖生産である請求項13または14の方法。
【請求項16】
目的とする希少糖が、生理活性が判明した希少糖である請求項13、14または15の方法。

【国際公開番号】WO2004/063369
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507992(P2005−507992)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000131
【国際出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】