説明

新聞用紙

【課題】パルプとして利用することが困難であったスギ材を原料とした機械パルプを用いて高不透明度で、かつ強度を備える新聞用紙の提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明は、原料パルプに填料を内添した新聞用紙であって、原料パルプとして、スギ属とマツ属の木材チップを原料とした機械パルプが用いられ、このスギ属の木材チップとマツ属の木材チップとの絶乾重量比が、5:95以上50:50以下であり、填料として、体積平均粒子径が、15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと1.7μm以上12.5μm以下の無機粒子であることを特徴とする、新聞用紙。前記無機粒子は、製紙スラッジを主原料として、脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られた再生粒子の表面にシリカを複合したシリカ複合再生粒子であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い不透明性と強度兼ね備え、コールドオフセット輪転印刷に好適に用いられる新聞用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
新聞用紙は、物流コスト、省資源化等の観点から軽量化の需要が非常に高い。しかしながら、紙を軽量化すると紙の厚みが小さくなり、不透明度、特に印刷後のいわゆる印刷不透明度が大きく低下する。印刷不透明度の低下は、反対面から透けて見える現象、いわゆる裏抜けを引き起こし、印刷裏面の印面品質を低下させる問題を有する。
【0003】
従来、新聞用紙の不透明度を向上させるために、原料パルプとして、不透明度向上効果が高い太い繊維を有する機械パルプが多用されてきた。特に、太く長い繊維を有するラジアータパイン等、マツ属の木材チップを原料とする機械パルプが好適に用いられてきた。しかし、リサイクルの観点から古紙パルプの高配合化が進み、おのずと機械パルプの配合量が減少し新たな不透明度向上策が求められている。さらに、古紙パルプの普及に伴って、近年では古紙パルプが配合された再生紙を再利用することになり、古紙パルプを繰り返し再利用している状況にあることからも、得られる新聞用紙の強度、不透明度の低下を招き、印刷時の裏抜けや隠蔽性を低下させるとともに、印面のかすれや網点の欠落等、見栄えが低下するなどの不都合を生じさせている。
【0004】
製紙業界では、新聞用紙の軽量化に伴う不透明度対策として、填料の増量や、古紙パルプ由来の灰分量を増量することで、不透明度を向上させることが試みられている。不透明度を高めるための填料としては、例えばホワイトカーボンや炭酸カルシウムなどが一般的に用いられている。しかしながら、ホワイトカーボンや炭酸カルシウムの単なる増量では不透明度の向上が頭打ちになるとともに、強度低下や紙粉が増加する問題が生じる。
【0005】
特許文献1には、当該問題を解決する手段として、例えば細孔容積が大きい微細粒子形状のホワイトカーボンを用いる技術が開示されている。この特許文献1に開示されているホワイトカーボンは珪酸ソーダを硫酸で中和して得られる微細なものであり、従来のホワイトカーボン粒子より粒径が小さいため、光の散乱性が良好で、白紙の不透明性を向上させることができるとするものである。しかしながら、この技術に係るホワイトカーボンは微細な形状をしており、使用に際しては硫酸バンド等で凝集させ原料パルプに定着させる必要があり、そのためウェットエンドでの安定性が低下し、操業時の品質管理が困難であるという不都合がある。
【0006】
また、別の技術として、特許文献2には、ホワイトカーボンと炭酸カルシウムとを主体とし、これらを灰分の原子吸光分析における割合が9:1〜5:5になるように含有している新聞用紙も提案されている。この新聞用紙は、安価な炭酸カルシウムを使用し、ホワイトカーボンの歩留まりが良好なpH6〜8で処理することで不透明度向上を低いコストで実施する技術が開示されている。しかしながら、この新聞用紙は不透明度向上効果は有するものの、二次凝集により巨大化したホワイトカーボン粒子相互間およびホワイトカーボン粒子とパルプ繊維との間には空隙が多く存在し、この空隙を光が透過するため、不透明度の向上効果は十分とは言えない。
【0007】
ところで、日本国内に非常に多く植林されているスギは、古くから建築用材や土木材などの様々な用途で利用されてきたが、近年は輸入材が大量にしかも安価に入手できることから輸入材に取って代わられ、スギ材の利用は減少してきている。この状況から、近年では、国内資源であるスギ林の荒廃を避ける観点からもスギの間伐材などの有効利用が強く望まれている。
【0008】
製紙業界においても、スギ材をパルプ原料として用いることが試みられているものの、スギ材はリグニン含有量が極めて高く難蒸解性かつ難漂白性であること、スギ材の繊維形態は、他の針葉樹材に比較して繊維長が短く、繊維幅が小さいなどの欠点を有していること等の理由でスギ材はパルプの原料に適していないとされてきた。
【0009】
このような中、スギ材を原料としてパルプを製造する方法として、特許文献3には、スギ材100%のチップ原料を、(初期pH=7.0〜9.5の亜硫酸ナトリウムによるチップの予備処理)−(4〜5段のダムを有するリファイナセグメントを装着した一次リファイニングによる解繊)−(二次リファイニングによる叩解)から成る工程を含むケミサーモメカニカルパルプの製造工程で処理し、高収率、高品質のケミサーモメカニカルパルプを得る技術が提案されている。しかしながら、この方法は化学処理によって解繊を促進させるため、リグニンの流出に伴う不透明度の低下が生じるため、新聞用紙への配合には新たな不透明度向上対策が望まれている。また、チップ原料の薬品処理を行なうため、新たな設備投資が必要になるとともに薬品コストが上昇する不具合も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許2960001号公報
【特許文献2】特開2002−201590号公報
【特許文献3】特開2004−225201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、パルプとして利用することが困難であったスギ材を原料とした機械パルプを用いながら、高不透明度で、かつ強度を備える新聞用紙の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
〔請求項1記載の発明〕
原料パルプとして、スギ属(Cryptomeria)の木材チップと、マツ属(Pinus)の木材チップを原料とし、このスギ属とマツ属の木材チップとの絶乾重量比が、5:95以上50:50以下からなる機械パルプと、填料として、体積平均粒子径が15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと、体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の無機粒子を含むことを特徴とする、新聞用紙。
【0013】
当該新聞用紙は、機械パルプの原料として一般的に使用されている長繊維かつ繊維幅の太いマツ属由来のパルプに加え、短繊維かつ繊維幅が細くて不透明度の高いスギ属由来のパルプを上記の絶乾重量比で混合して用いている。従って、当該新聞用紙は、太く長いマツ属由来のパルプ繊維が形成する網目間に、細く短いスギ属由来のパルプ繊維が絡み合ってその隙間を埋めるように抄紙されるため、光散乱性が上がると共に光透過性を下げるため、不透明度が向上する。また、当該新聞用紙は、太く長いマツ属由来のパルプ繊維が形成する網目間に、細く短いスギ属由来のパルプ繊維が絡み合ってその隙間を埋めるように抄紙されるため、スギ属由来のパルプ繊維の欠点である引裂強度の低下を抑え、リグニン等樹脂成分が多いスギ由来のパルプ繊維を配合させることで、多種類の異なる繊維間の摩擦効果が発揮され、引張強度を向上させることができ、高い強度を備えている。
【0014】
また、当該新聞用紙は、内添する填料として、レーザー法で測定した体積平均粒子径が、15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと、体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の無機粒子とを含有している。体積平均粒子径が15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の無機粒子とを併用すると、粒径の大きい填料の隙間に粒径の小さな填料が組み合わされる。この組み合わせにより不透明度の高い新聞用紙が得られる。すなわち、粒径の小さい粒子は、粒径の大きい粒子が固着することができない細かいパルプ繊維間及びパルプ繊維と粒径の大きい粒子とによって形成された網目間を埋めるように固着されるため、高い不透明度を有することとなる。本件発明者等の知見では、上記不透明度の向上効果に加えて、レーザー法で測定した体積平均粒子径が、15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと、体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の無機粒子とを併用することで、紙粉落ちが減少するとともに、製造工程におけるマシン系内の汚れを低減すること、マシン操業性を向上させることができることを見出している。さらに、当該新聞用紙は、太く長いマツ属由来のパルプ繊維及び細長い古紙脱墨パルプ繊維が形成する網目間に、細く短いスギ属由来のパルプ繊維が絡み合ってその隙間を埋めるように抄紙されており、このような繊維構造と粒子径の異なる填料を組み合わせることで填料の歩留りが向上し、極めて高い不透明度を有している。
【0015】
〔請求項2記載の発明〕
前記無機粒子が、製紙スラッジを主原料として、脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られた再生粒子にシリカを複合させたシリカ複合再生粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の新聞用紙。
【0016】
前記無機粒子が、脱墨フロスや製紙スラッジを主原料として、脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られた再生粒子の表面にシリカを複合したシリカ複合再生粒子であるとよい。シリカ複合再生粒子は表面が多孔質形状を有するため、当該新聞用紙は、極めて高い吸油機能を発揮することができ、加えて、高い光散乱性から不透明度を更に高めることができる。また、シリカ複合再生粒子が、元来不透明度が高い再生粒子を核として用いているので、不透明度向上と製造コストの削減を図ることができる。
【0017】
〔請求項3記載の発明〕
前記新聞用紙に含まれる酸化物換算のシリカの含有量が4.0質量%〜7.2質量%であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の新聞用紙。
【0018】
前記新聞用紙のJIS P 8251に準拠した灰分と、前記新聞用紙をJIS P 8251に準拠して灰化した残さをX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)堀場製作所製)による元素分析をして得られた、酸化物換算した元素中の酸化物換算したシリカの質量割合とから下記式で算出される新聞用紙のシリカの含有量(酸化物換算)が、4.0質量%以上7.2質量%以下であることが好ましい。
新聞用紙のシリカ含有量(酸化物換算、質量%)=灰分(質量%)×灰化残さ中のシリカ含有率(酸化物換算、質量%)÷100
当該新聞用紙によれば、内添する填料として、レーザー法で測定した体積平均粒子径が、15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと、体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の無機粒子とを含有することに加え、酸化物換算のシリカ含有量が上記範囲であることで、パルプ繊維の空隙間に効果的にホワイトカーボン、無機粒子が固着され、極めて高い不透明度を有することができ、紙粉落ちを減少させることができる。酸化物換算のシリカ含有量が上記範囲未満では、十分な不透明度向上効果を発揮できず、上記範囲を越えると不透明度は高くなるものの、填料の添加量が多すぎ、紙力の低下や、紙粉落ちの原因となる恐れがある。
【0019】
〔請求項4記載の発明〕
前記機械パルプは、スリット幅0.15mm以下のスクリーンで処理されたパルプであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の新聞用紙。
【0020】
前記機械パルプが、スリット幅0.15mm以下のスクリーンで精選処理されていることが好ましい。機械パルプの精選工程において、上記範囲のスリット幅を有するスクリーンを用いてパルプを精選処理することで、シャイブ率を好適な範囲に調整することができる。この結果、当該新聞用紙は、適度にシャイブを含むため、高い不透明度を備えることができる。シャイブとは、パルプ繊維中の解繊されていない結束部分をいう。
【0021】
〔請求項5記載の発明〕
原料パルプとしてスギ属とマツ属の木材チップとの絶乾重量配合比が5:95〜50:50となるように配合し機械パルプ化した後、スリット幅0.15mm以下のスクリーンにて精選処理した機械パルプ10〜40%に脱墨古紙パルプを60〜90%配合し、灰分が5〜15質量%、新聞用紙に含まれる酸化物換算のシリカ含有量が4.0質量%〜7.2質量%となるように、填料として、体積平均粒子径が15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の無機粒子を添加して抄造されることを特徴とする、新聞用紙の製造方法。
【0022】
当該新聞用紙は、上記の製造方法を採用することで、オフセット輪転印刷用の新聞用紙として高不透明度で、かつ強度を備える新聞用紙とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、パルプとして利用することが困難であったスギ材を原料とした機械パルプを用いながら、高不透明度で、かつ強度を備える新聞用紙の提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明で好適に用いる、再生粒子または再生粒子凝集体の製造設備の概要図である。
【図2】第2燃焼炉の概要図で、(a)は縦断面図、(b)は内面の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明の新聞用紙は、原料パルプとして、機械パルプと2種類の填料としてホワイトカーボン及び無機粒子とを含有している。
【0027】
この機械パルプの原料として、スギ属(Cryptomeria)の木材チップと、マツ属(Pinus)の木材チップとが用いられている。このスギ属の木材チップと、マツ属の木材チップとの絶乾重量比としては、5:95以上50:50以下が好ましく、10:90以上40:60が特に好ましく、15:85以上25:75以下であることが更に好ましい。
【0028】
マツ属の繊維形態は繊維長が長く(通常5mm程度)、繊維幅が太い(通常50μm程度)といった特徴を有している。一方、スギ属の繊維形態は繊維長が短く(通常3mm程度)、繊維幅が細い(通常30μm程度)といった特徴を有している。上記絶乾重量比からなる2種類の木材チップを原料とした機械パルプを含む当該新聞用紙によれば、太く長いマツ属由来のパルプ繊維が形成する網目間に、細く短いスギ属由来のパルプ繊維が絡み合ってその隙間を埋めるように抄紙されるため、光散乱性が上がると共に光透過性を下げるため、不透明度が向上する。また、リグニン等樹脂成分が多いスギ由来のパルプ繊維を配合させることで、スギ属とマツ属のパルプ繊維の間の高い摩擦効果が発揮され、引張強度を向上させることができる。
【0029】
スギ属の木材チップの絶乾重量比が5:95より小さいと、パルプ繊維とした際に、マツ属由来のパルプ繊維が形成する網目間をスギ由来のパルプ繊維が埋めきることができず、不透明度が十分に向上しない。また、リグニン等樹脂成分の多いスギ属パルプ混合による繊維間の摩擦向上効果が十分ではなく、引張強度の向上が小さい。逆に、スギ属の木材チップの絶乾重量比が50:50より大きいと、太く長いマツ属由来のパルプ繊維量が低下するため、引裂強度等の紙力が低下する。また、スギ属の木材チップの絶乾重量比が上記上限より大きいと、後述するシャイブの発生量が増加し、パルプの品質が低下する恐れがある。
【0030】
上記機械パルプのシャイブ率としては、0.018%以上0.072%以下が好ましく、0.018%以上0.066%以下が特に好ましい。シャイブとは、パルプ繊維中の解繊されていない結束部分をいう。この「シャイブ率」は、TAPPI T275sp98に準拠して、0.15mmのスリット幅のスクリーンプレートを用い、サンプル量絶乾100gのパルプをフラットスクリーンで処理したものを用いて測定した値である。
【0031】
スギ属の木材は、リファイナセグメントで処理すると、スギ材属特有のシャイブが発生する。このスギ属特有のシャイブは他の樹種で発生するシャイブよりも固く、解繊しにくいという特性を有している。当該新聞用紙は、この主にスギ材から生じるスギ属特有のシャイブを積極的に利用し、シャイブの量を0.018%以上から0.072%、好ましくは0.018%以上0.066%以下とすることにより高い不透明度を実現させている。すなわち、このシャイブは、パルプ繊維が解繊されていない結束部分を有することで枝状形状を有している。この枝状形状のシャイブは、主にマツ属由来のパルプ繊維が形成する比較的大きな網目間に好適に収まることができ、その結果、不透明度を高めることができる。更に、この結束部分にはリグニン等の樹脂成分を他より多く含有しており、これが微細な填料と同様の不透明度向上剤としての機能を発揮させ、光を散乱させることで、不透明度を高めることができるとともに、この樹脂分が繊維間の接着性を高めるために紙の強度が向上する。
【0032】
機械パルプのシャイブ率が上記下限より小さいと、枝状形状を有するパルプ繊維の含有量が少なくなるため、スギ由来パルプ繊維がマツ属由来のパルプ繊維が形成する網目間を埋めることが少なくなり、不透明度の上昇が小さい。また、付随するリグニン等の樹脂成分量も低下するため、この樹脂成分による不透明度上昇機能及び紙力向上機能が十分に発揮されない。
【0033】
逆に、機械パルプのシャイブ率が上記上限より大きいと、シャイブが得られる新聞用紙中において視認可能な量となり、品質が低下する恐れがある。具体的には、このシャイブは、紙表面に金属のような光沢を有する異物として散見され、紙品質を低下させる恐れがある。
【0034】
この機械パルプの原料となるスギ属(Cryptomeria)の木材チップとしては公知のものを用いることができる。スギは、日本国内にはCryptomeria japonicaの一種類であり、これを有効に用いることができる。なお、このCryptomeria japonicaは、挿し木が比較的容易であることから品種改良が進められ、現在では植物学的にみても9変種が存在し、林業的品種が非常に多い樹種となっている。更に細かい品種で言えば、ホウライジスギ、エンドウスギ、ヤナセスギ等、約100品種が存在していると言われている。スギの生育地は本州、四国、九州などの全国各地にまたがり、天然樹林や植林の形で存在する。
【0035】
本件発明において、スギ材と併用して好適に用いられるマツ属の木材チップとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、アカマツ、クロマツ、エゾマツ、トドマツ、ラジアータパインなどが挙げられるが、流通量、コスト面及びパルプ加工の容易さの点からラジアータパインが好適に用いられる。
【0036】
この機械パルプの製造方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、一次リファイニングによる解繊工程−二次リファイニングによる叩解工程−精選工程−漂白工程から成る製造工程を採ることができる。
【0037】
スギ属の木材チップと、マツ属の木材チップとが混合された木材チップは、まず一次リファイニング処理される。この処理に用いる装置は、加圧もしくは大気圧リファイニング装置であり、公知の条件でパルプ繊維に解繊される。リファイニングは一般の解繊装置で充分であり、好ましくは、シングルディスクリファイナー、コニカルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、ツインディスクリファイナー等で解繊される。リファイニング工程中のチップの濃度としては約20〜60固形分質量%で実施するのが好ましく、処理温度は100〜150℃が好ましい。更に好ましくは120〜135℃である。また、解繊を良好とする目的で、一次リファイニングに先立ってプレヒーターで予熱処理することが好ましい。この場合の温度は100〜135℃が好ましい。
【0038】
次いで、解繊パルプは二次リファイニング処理される。この装置としては、公知のリファイニング装置を用い、公知の条件で精砕し、所望のパルプ濾水度まで低下させる。この工程は加圧、或いは常圧下で行い、リファイニング装置は一般の加圧または常圧型解繊装置を用いるのが好ましく、濃度は約10〜60%で実施することができる。
【0039】
次いで、濃度1〜5%に希釈し、精選スクリーンにて未叩解の繊維やシャイブを除去する。なお、精選工程において、スリット幅0.15mm以下のスクリーンで精選処理されていることが好ましい。通常のスクリーンはスリット幅が0.20mm程度のものが用いられるが、0.15mm以下のスリット幅を有するスクリーンを用いてパルプを精選処理することで、スギ材に多く含まれるシャイブを多めに取り除くことができ、当該新聞用紙に好適なシャイブ率0.018%以上0.072%以下に調整することができる。この結果、当該新聞用紙は、適度な量のシャイブを含み、高い不透明度を備えることができる。また、スリット幅が0.10mm以下では、スクリーンの目孔が小さすぎてスクリーンでの目詰まりや処理量が低下するおそれがある。
【0040】
当該新聞用紙の原料パルプは上記機械パルプと併用して脱墨古紙パルプを含有することが好ましい。原料パルプにおける上記機械パルプの含有量としては、10質量%以上40質量%以下が好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。機械パルプの含有量が上記範囲未満では、不透明度の向上を得ることが困難なばかりか、嵩が出ず腰のない新聞用紙になり、搬送性や作業性が低下するおそれがある。また、機械パルプの含有量が上記範囲を越えると、嵩が高くなり軽量化に伴う紙厚を所定の範囲とすることが困難になるとともに、脱墨古紙パルプの含有量が減り、資源の有効利用等の環境性が低下する。
【0041】
原料パルプにおける脱墨古紙パルプの含有量としては、60質量%以上90質量%以下が好ましく、70質量%以上90質量%以下が特に好ましく、80質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。原料パルプ中の古紙脱墨パルプの含有量を上記範囲とすることで、資源の有効利用等の環境性が向上し、さらにインキ着肉性等の印刷適性も向上する。当該新聞用紙によれば、太く長いマツ属由来のパルプ繊維及び細長い古紙脱墨パルプ繊維が形成する網目間に、細く短いスギ属由来のパルプ繊維が絡み合ってその隙間を埋めるように抄紙されるため、光散乱性が上がると共に光透過性を下げるため、不透明度が向上する。
【0042】
好適には、脱墨古紙パルプの中でも新聞古紙由来の新聞古紙パルプ、雑誌古紙由来の雑誌古紙パルプ等が好ましく、新聞古紙パルプ及び雑誌古紙パルプを混合して用いることが特に好ましい。かかる新聞古紙パルプ及び雑誌古紙パルプは、古紙の回収率が高く、各製紙メーカーで新聞用紙、雑誌用紙を構成する原料パルプ種や填料類が近似していることから、原料構成の変動を抑えることができる点で好適である。特に、新聞古紙パルプ中には、一般的に再生された古紙パルプを既に50%以上含有し、バージンの機械パルプやクラフトパルプの含有量が少なく、また、バージンの各種パルプが新聞用紙に用いられていても、一度抄紙され、古紙処理により古紙パルプ化されているため、その性状は均質化し、ほぼ一定の性状を有している点で本件発明における機械パルプと組み合わせて用いるうえで特に好ましい。
【0043】
当該新聞用紙の原料となる他のパルプとしては、上記機械パルプ、脱墨古紙パルプに加え、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、等の任意のバージンパルプを適宜用いることができる。
【0044】
当該新聞用紙は、填料として体積平均粒子径が15μm以上25μm以下、好ましくは18μm以上22μm以下のホワイトカーボン、及び体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下、好ましくは5.5〜11.0μmの無機粒子を含有している。このようにホワイトカーボンの体積平均粒子径より小さい体積平均粒子径を有する無機粒子は、ホワイトカーボンやパルプ繊維が作る空隙に配在されることになる。すなわち、上記パルプ繊維同士が相互に作り出す網目構造の目の部分、ホワイトカーボンとパルプ繊維との隙間、及びホワイトカーボン同士が相互に作り出す隙間が前記空隙と定義でき、この空隙を通って光が紙を通過し、不透明度を低下させていると考えられる。従って、このような空隙に無機粒子が引っかかり、この空隙を無機粒子が充填することで不透明度が向上することとなる。更に本件発明者等の知見では、スギ材とマツ材からなる機械パルプによる網目状の原料パルプ構成と組み合わせることで、上記ホワイトカーボンと無機粒子の網目構造との相乗効果により、更に不透明度を向上させることが可能となる。
【0045】
これらの填料の添加量を調整することで、当該新聞用紙における灰分が調整される。当該新聞紙における、JIS P 8251に準拠した灰分は、5質量%以上15質量%以下が好ましく、6質量%以上13質量%以下が特に好ましい。灰分が上記範囲であることで、当該新聞紙は高い不透明度を備えることができる。灰分が上記下限より小さいと不透明度が低くなる。逆に、灰分が上記上限を超えると、不透明度は高くなるものの、パルプ繊維間の密着性が低下し、紙力の低下に繋がる。
【0046】
本発明に用いられるホワイトカーボンとしては、高吸油性填料として製紙用に一般に使用される、例えば湿式シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等があげられる。
【0047】
このホワイトカーボンの体積平均粒子径は、15μm以上25μm以下が好ましく、18μm以上22μm以下が特に好ましい。なお、ホワイトカーボンの一次粒子径は上記平均粒子径よりも小さい(例えば0.01μm以上0.05μm以下程度)ものであるが、通常高次に凝集して二次粒子を形成している。本発明におけるホワイトカーボンの平均粒子径も、この凝集した二次粒子の平均粒子径を指す。
【0048】
ホワイトカーボンの体積平均粒子径が上記下限より小さいと、パルプ繊維同士が相互に作り出す網目構造の目のサイズと比して小さくなるため、この部分を通過する粒子の割合が増え、固着率が低下する。逆に、ホワイトカーボンの体積平均粒子径が上記上限を超えると、パルプ繊維同士が相互に作り出す網目構造の目のサイズと比して大きくなるため、この部分に入り込んで固着することが困難となる。
【0049】
ホワイトカーボンの添加量は、原料パルプに対して固形分換算で1質量%以上4質量%以下が好ましく、1.5質量%以上3質量%以下が特に好ましい。ホワイトカーボンの添加量が上記下限より小さいと、発生する空隙が大きすぎ、かつ多すぎるため、シリカ含有粒子によってもその空隙を埋めきることができず、不透明度の向上機能が低い。逆に、ホワイトカーボンの添加量が上記上限を超えると、パルプ繊維同士で形成される空隙のサイズに対して、ホワイトカーボンの量が多すぎるために、空隙間に確実に埋め込まれることができず、製造及び使用中に脱落する填料が多くなるおそれがある。また、ホワイトカーボンの添加量が多すぎることによって、パルプ繊維間強度が低下し、紙力強度が低下することとなる。
【0050】
本発明に用いられる無機粒子は、上述のホワイトカーボンよりも小さい体積平均粒子径を有するものである。
【0051】
無機粒子としては、一般に製紙用に用いられる填料から選ぶことができる。例えば、クレー、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、ホワイトカーボン、炭酸カルシウムなどがあげられるが、製紙用途で使用する一般的な填料、すなわち、炭酸カルシウム(重質および軽質)、クレー、タルクなどをシリカで複合したシリカ複合無機粒子を用いることが好ましい。さらに好ましくは、後述の再生粒子または再生粒子凝集体の表面をシリカで複合したシリカ複合再生粒子またはシリカ複合再生粒子凝集体を用いると、より嵩高で不透明度が高い粒子となるため、本件発明におけるスギ材及びマツ材とからなる機械パルプと組み合わせて用いることで高い不透明性を有する新聞用紙を得ることができる。
【0052】
この無機粒子の体積平均粒子径は、1.7μm以上12.5μm以下が好ましく、5.5μm以上11.0μm以下が特に好ましい。無機粒子が上記範囲の体積平均粒子径を有することで、パルプ繊維やホワイトカーボン粒子が作る空隙に入り込み、固着することができる。従って、当該新聞用紙によれば、高い不透明度を備えることができる。また、このような粒子径を有する無機粒子を用いることで空隙への固着性が高まるため、製造工程において一度固着した粒子がこぼれ落ちる、すなわち紙粉の量を減少させることができ、そのため製造工程におけるマシン系内の汚れを低減するとともに、マシン操業性を向上させることができる。
【0053】
無機粒子の体積平均粒子径が上記上限を超えると、この空隙に対して粒子径が大きすぎるために、空隙の中に入り込むことができず、固着性が低下し、ひいては不透明度の向上に寄与しない。逆に、無機粒子の体積平均粒子径が上記下限より小さいと、この空隙に対して粒子径が小さすぎるために、空隙を通り抜けやすくなり、固着性が低下する。また、このように粒子径が小さいと、固着しても光散乱作用が小さいため、不透明度の向上への寄与は小さい。更には、固着しても強度が弱く落ちやすいため、製造工程において脱落する割合が高まり、製造工程におけるマシン系内の汚れを発生させることによりマシン操業性を低下させる恐れがある。
【0054】
無機粒子の添加量は、原料パルプに対して、固形分換算で0.7質量%以上5.5質量%以下が好ましく、1.5質量%以上4.0質量%以下が特に好ましい。無機粒子の添加量が上記下限より小さいと、生じる空隙を埋めきることができず、不透明度の向上機能が充分に発揮されない。逆に、無機粒子の添加量が上記上限を超えると、生じる空隙の容積に対して、添加量が多すぎるため、強固な固着ができず、填料の脱落が生じてしまう。更には、填料の増大によりパルプ繊維間の密着性を弱め、その結果、当該新聞用紙の強度が低下することとなる。この無機粒子の添加量をホワイトカーボン添加量の1.5倍以上とすることでホワイトカーボン同士の隙間を効率良く無機粒子が埋めることができ、不透明度が向上するため好ましい。
【0055】
(再生粒子)
次に、無機粒子として好適に用いられる不透明度に優れたシリカと無機粒子とからなる複合粒子について説明する。無機粒子としては再生粒子または再生粒子凝集体を使用すると、より不透明度に優れた新聞用紙が得られるため、特に好ましい。シリカと再生粒子または再生粒子凝集体とからなる複合粒子は、従来一般に使用される炭酸カルシウムやタルク、クレーとは、その構成成分や形状が異なり不透明性に優れるため、新聞用紙の不透明性を高め、不透明度を維持しながら填料の使用量を低減できる。
【0056】
(再生粒子および再生粒子凝集体の製造工程)
再生粒子は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスや、製紙工場の排水から分離された製紙スラッジを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られる。製造方法は、例えば特許第3869455号公報の記載の製法を用いることができる。内添填料として用いる場合は、公知の粉砕方法により粒子径を1.0〜10.0μmにまで粉砕して粒子径を調整することが好ましい。粒子径が1.0μmよりも小さいと歩留りが悪く抄紙機系内において異物化しやすいため好ましくなく、10.0μmよりも大きいと地合が悪化したり、強度(引張強度や引裂強度)が低下する可能性があるため好ましくない。
ここで再生粒子の粒子径は、レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製により測定した体積平均粒子径である。
【0057】
上記方法で製造した再生粒子は、個々の粒子が幾つか集まって凝集した再生粒子凝集体を形成しており、ランチュウの肉瘤状のような、不定形な形をしている。この不定形性により、新聞用紙に含有させた場合は紙厚が出やすく、また、高不透明度の粒子であるため新聞用紙の印刷不透明度を高めることができる。
【0058】
これら再生粒子は、カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:5〜40:13〜30の質量割合で含むことが好ましく、より好ましくは、40〜60:25〜40:18〜25の質量割合である。カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:5〜40:13〜30の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑えられるため、脱水工程における脱水性が良好である。
【0059】
焼成工程において、再生粒子または再生粒子凝集体のカルシウム、シリカ及びアルミニウムの酸化物換算割合を調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・分級工程、焼成工程において、出所が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。
【0060】
例えば、再生粒子や無機粒子凝集体中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、ケイ素の調整には、不透明度向上剤としてホワイトカーボンなどが多量に添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、タルク使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを適宜用いることができる。
【0061】
〔付帯工程〕
製造設備においては、再生粒子や再生粒子凝集体以外の異物を除去することが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、更に、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
【0062】
〔シリカ複合再生粒子、シリカ複合再生粒子凝集体〕
本発明においては、一般に製紙用途で使用する填料、すなわち、炭酸カルシウム(重質および軽質)、クレー、タルクなどをシリカで複合したシリカ複合無機粒子を用いることが好ましく、上述の再生粒子または再生粒子凝集体の表面をシリカで複合したシリカ複合再生粒子またはシリカ複合再生粒子凝集体を用いると、より嵩高で不透明度が高い粒子となるため特に好ましく、高い不透明性を有する新聞用紙を得ることができる。
【0063】
再生粒子または再生粒子凝集体にシリカを析出させる好適な方策としては、特許第3907688号公報や、特許第3935496号公報に記載の方法で行うことが出来る。但し、次のとおり行うことで、より不透明性に優れたシリカ複合再生粒子またはシリカ複合再生粒子凝集体が得られるため好ましい。
【0064】
<シリカ複合粒子>
次に本発明のシリカ複合粒子について、シリカ複合再生粒子を例に取り、製造方法も示しながらさらに詳説する。
【0065】
(シリカ複合処理工程)
上述のようにして製紙スラッジや脱墨フロスを主原料とする再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーとするとともに、撹拌しながら50℃〜100℃の温度範囲で、鉱酸を添加する。より望ましくは少なくとも2段階に分けて添加し、シリカ複合の反応を行う。
【0066】
本形態の再生粒子の填料用途等への好適な粒子径は、粒子径1.0μm〜10.0μmである。粉砕工程後における再生粒子の粒子径は、レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製により測定した体積平均粒子径である。
【0067】
再生粒子の粒子径が1.0μmより過度に小さいと、シリカ複合時に十分な粒度がえられないおそれがあるほか、シリカを複合させる際にガラス状に目詰まりさせるおそれがある。本発明の範囲内であると、シリカ複合反応を十分に促進できる。他方、過度に大きい粒子径では過大なシリカ複合再生粒子が生じやすく、不透明性が低下する恐れがある。
【0068】
シリカ複合は、再生粒子表面に粒子径10〜20nm(走査型電子顕微鏡による実測の粒子径)のシリカゾル粒子を生成させる反応操作である。シリカゾル粒子の粒子径は、反応時の撹拌条件、鉱酸の添加条件などによりコントロール可能である。
【0069】
本発明者等は、従来は内添する微細粒子の全細孔による細孔容積が吸油量や不透明度の指標とされていた知見を越えて、実質の吸油性は無機微粒子の細孔容積だけでなく、無機微粒子の粒子間に油を保持する能力の寄与が高いことを知見し、鋭意検討を重ね、本発明にて好適に用いることができるシリカ複合再生粒子においては、細孔半径が10,000オングストローム以下の細孔が前記の実質の吸油性に大きく寄与していることを見出している。
【0070】
本発明において得られるシリカ複合再生粒子の細孔容積は、水銀圧入式ポロシメーター(テルモ社製「PASCAL 140/240」)を用いた測定値で、10,000Å以下の領域の細孔容積が0.5〜1.5cc/gであり、好適には0.68〜1.45cc/g、より好ましくは0.70〜1.35cc/gである。
【0071】
10,000Å以下の領域の細孔の細孔容積が0.5cc/g未満では、十分な吸油量の発現がえられず、1.5cc/gを超えると吸油量の向上が見られるものの、不透明度の低下が生じやすい。
【0072】
本発明における好適な態様においては、得られるシリカ複合再生粒子の粒子径を1.7〜12.5μmの範囲とすること、さらにはシリカ複合再生粒子に含まれる酸化物換算でのシリカの比率を10.0〜50.0質量%とすることで、高い吸油量と不透明度向上効果を得ることができる。
【0073】
珪酸アルカリ水溶液に関しては特に限定されないが、珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が入手に容易である点で望ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度は水溶液中の珪酸分(SiO換算)で3〜10質量%が好適である。10質量%を超えると形成される再生粒子とシリカが被覆された複合体は無機微粒子・シリカ複合凝集体ではなく、再生粒子がホワイトカーボンで被覆されてしまい、芯部の再生粒子の多孔性、光学的特性が発揮されなくなってしまう危険性がある。また、3質量%未満では複合粒子中のシリカ成分が低下するため、シリカが複合された再生粒子が形成しにくくなってしまう。
【0074】
再生粒子または再生粒子凝集体を珪酸アルカリ水溶液に添加、分散しスラリーを調製する場合におけるスラリー濃度は、8〜14質量%が望ましい。スラリー濃度を調整することにより、形成される再生粒子のシリカ複合再生粒子の粒径がコントロールされると同時に再生粒子とシリカの組成比率が調整される。本発明で使用される鉱酸としては希硫酸、希塩酸、希硝酸などの鉱酸の希釈液等が挙げられるが、価格、ハンドリングの点で希硫酸が最も望ましい。さらに、希硫酸を使用する場合の添加時の濃度は、生産効率と複合シリカの均質性の面から4〜10N程度の濃度で鉱酸を添加することが好ましい。4N未満では反応が遅く、10Nを超えると局部的な反応が生じ、不定形や偏在するシリカ複合粒子が発生しやすい問題が生じる場合がある。また、鉱酸添加量が多いほど短時間内にシリカが析出するので、それらの条件に合わせて添加速度を調整することが望ましい。5分以内の添加は、均一な反応系の構成が不十分になる。
【0075】
本発明で好適に用いる再生粒子または再生粒子凝集体は、カルシウム、アルミニウム、シリカを構成元素として含有しているために、過度の濃度の鉱酸添加は、再生粒子の変質を生じる恐れがある。
【0076】
前述のように、本発明は、再生粒子または再生粒子凝集体に対して珪酸アルカリ水溶液を固形分比で、100:5から100:20の割合で添加・分散しスラリーとするとともに、撹拌しながら50〜100℃の温度範囲で、鉱酸を少なくとも2段階に分けて添加し、シリカ複合の反応を行うものである。
【0077】
再生粒子または再生粒子凝集体に対する珪酸アルカリ水溶液の割合が、固形分比で100:5より少ないと、得られるシリカ複合再生粒子のシリカ複合効果が低く不透明性の向上効果がえられにくく、100:20を超える割合では、吸油量が増加し、インクの吸収性が高いためインクの沈みこみ、いわゆる発色性が劣る問題が生じる場合がある。
【0078】
再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加する段階において、珪酸アルカリ水溶液の温度を50℃以上の温度に加温することもできるし、その後に加熱することもできる。予め、珪酸アルカリ水溶液の温度を50℃以上の温度に加温した状態で、多孔性の再生粒子を添加すると、加熱による流動性が向上するため、スラリーを均質化させることが容易になり、より均質な珪酸アルカリおよび再生粒子の混合スラリーを得ることができる。
【0079】
他方で、均質化した珪酸アルカリと再生粒子のスラリーを調製した後に、加熱撹拌することもできる。この場合の熱源としては、公知の熱源が利用できるが、例えば工場内の生蒸気(例として13kg/cm、120℃)を吹き込むことにより、昇温時間の短縮が図れるとともに、再生粒子スラリーを添加した際の温度低下を防ぎ、迅速に昇温と反応を進めることが可能になり、生産効率向上が図れる。
【0080】
本発明でのシリカ複合再生粒子の製造時の反応温度に関しては、50〜100℃のスラリー温度範囲、特に50〜98℃のスラリー温度範囲が望ましい。本発明者らの鋭意検討の結果から、本発明に使用する再生粒子との反応温度はシリカの生成、結晶成長速度および形成されたシリカ複合再生粒子の力学的強度に影響を及ぼす。反応温度が50℃未満ではシリカの生成・成長速度が生じないかまたは遅く、シリカ複合再生粒子のシリカ複合性に劣り、充分に複合しにくく、填料内添紙の抄造時にかかる剪断力で複合が壊れやすい。100℃を超えると、水系反応であるためオートクレーブを使用しなければならないため反応工程が複雑になってしまう。しかも、過度に反応が進み、緻密なシリカ複合再生粒子形態となり、得られるシリカ複合再生粒子の不透明度が低下し目的のものが行われにくい。
【0081】
本発明では、鉱酸の少なくとも2段の添加と、その際の温度管理を行うのが望ましい。すなわち、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー温度が50〜75℃であり、第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー温度が少なくとも第1段階目よりも10℃以上昇温することが望ましい。具体的に望ましい温度条件としては、第1段階の液温を50〜75℃、第2段階を70以上〜100℃と鉱酸の添加段数に併せて昇温させること、反応の最終段階で90℃以上で98℃以下の温度状態にすることであり、これらの温度条件によって、より均質なシリカ複合再生粒子を得ることができる。
【0082】
最終反応液のpHは8.0〜11.0が好ましく、8.3〜10.0がより好ましく、8.5〜9.0が最も好ましい。
【0083】
従来の珪酸アルカリと鉱酸を反応させて得られるホワイトカーボンの製造においては、珪酸アルカリと鉱酸の反応を完了させるため、pH5.5〜7.0になるまで珪酸アルカリ中に鉱酸を添加する方法が採用されているが、pHが7.0以下と酸性領域になるまで鉱酸を添加すると、再生粒子に含まれるカルシウム成分が水酸化カルシウムに変化しやすくなり、得られるシリカ複合再生粒子の粒子径が過度に低下したり、形状が不均質になり、紙への歩留り低下や紙粉の発生、十分な不透明性が得られにくくなるため好ましくない。pHが11.0を超えると、珪酸アルカリと鉱酸の反応が鈍り、再生粒子表面にシリカが複合しにくくなるため、十分な不透明性が得られにくい問題が生じやすい。
【0084】
鉱酸の添加を1段階で行う場合、鉱酸の添加時間を、pHが1低下するのに40分以上添加時間がかかるように添加量を設定することが好ましい。
【0085】
本発明において前述のように鉱酸は2段階以上で添加するのが望ましい。この場合、各段階における鉱酸の添加量を均等に添加することが均質なシリカ複合を得るうえで好ましい。また、1段階の添加(珪酸アルカリ水溶液に対して鉱酸が20〜50%の中和率となるまでの添加)後に、5分〜20分程度の保留時間を作ることで、シリカ複合反応に保留状態を設け、再生粒子表面に均質にシリカを複合させ、第2段階目の鉱酸添加により、さらにシリカの積層複合化を促進させることが可能になり、再生粒子の表面に、より均一にシリカを複合することができる。
【0086】
1段階の鉱酸添加時間は、10分〜45分の時間がかかるように添加量を設定することが、再生粒子表面にシリカを均等に複合させるにおいて好ましい。2段階以上で鉱酸を添加する場合も、鉱酸の添加時間をpHの変動においてpHが1低下するのに10〜120分程度の時間がかかるように添加量を設定することが、均質なシリカ複合に好ましい。
【0087】
本反応工程における撹拌は、例えば未反応ゾーンを作らないため、撹拌羽根を逆転させるなどして乱流を生じさせ、あるいは邪魔板を撹拌槽内に設けるなどの撹拌手段を採用することが好ましい。
【0088】
得られるシリカ複合再生粒子の粒子径は1.7〜12.5μm、より好適には5.5〜11.0μmである。シリカ複合再生粒子の粒子径が1.7μm未満では、シリカ複合の効果が十分に発現できず、吸油量及び不透明度の向上効果が得にくい。シリカ複合再生粒子の粒子径が12.5μmを超えると、本発明では、ホワイトカーボンの平均粒子径に近くなり、ホワイトカーボンやパルプ繊維が作る空隙に入り込むことができず、固着性が低下し、ひいては不透明度が向上しにくくなる。
【0089】
シリカ複合再生粒子は、カルシウム、シリカおよびアルミニウムを、酸化物換算で30〜80:10〜50:7〜20の質量%割合とすることが好ましい。この成分分析は、堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用い、加速電圧(15KV)にて元素分析を行い、構成成分より酸化物換算した値である。
【0090】
粉砕工程後の再生粒子の体積平均粒子径と再生粒子そのものの元素構成に依存するが、シリカ成分を複合させた後における、酸化物換算でのシリカ(珪素)の比率を10.0〜50.0質量%とすることで、得られるシリカ複合再生粒子を用いた新聞用紙の印刷不透明度向上を得ることができる。
【0091】
好適にはシリカ成分の割合を41.0〜49.0質量%、さらに好適には42.0〜48.0質量%とすることが好ましい。シリカ成分の比率が10.0質量%未満では、十分にシリカ被覆が行なえていないため、吸油量、不透明度の向上が得られず、シリカ成分の比率が50.0質量%を超えると微細なシリカ粒子の充填が過度となり吸油量、不透明度の低下をまねく問題が生じる場合がある。
【0092】
シリカ複合による付随効果として、シリカ複合により、白色度が向上する。白色度向上により白紙不透明度は低下する傾向が生じるものの、高い吸油量を有するシリカ複合再生粒子を用いることで、新聞印刷用の吸収乾燥型印刷インクを用紙表面で保持乾燥できるため、軽量な新聞用紙の印刷不透明度をさらに向上させることができる。
【0093】
シリカを再生粒子に複合させることで、再生粒子のもつカチオン性とシリカのアニオン性により繊維間結合を適度に阻害し、嵩高性を発揮する。
【0094】
(用途または適用)
本発明のシリカ複合再生粒子は、元来ポーラスな再生粒子の表面をシリカで複合したものであることから比表面積が大きく、これを内添用の填料として使用すると、白色度と不透明度が高い紙を得ることもできる。
【0095】
さらに、シリカ複合再生粒子の吸油量は、50〜180ml/100gの範囲が好ましい。これは、この範囲のシリカ複合再生粒子を内添填料として使用する場合、紙層中において、シリカ複合再生粒子が紙層中に含浸されるインクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収し、用紙の印刷不透明度が低下するのを抑制し、また、インクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収することで、インク乾燥性やニジミの防止効果が顕著になるためである。一方、吸油量が50ml/100g未満の場合には上記の効果が十分でなく、シリカ複合再生粒子がインクの吸収・乾燥性を阻害する傾向が生じる場合がある。また吸油量が180ml/100gを超えると、インクの吸収性が高いためインクの沈みこみ、いわゆる発色性が劣る問題が生じる場合がある。
【0096】
シリカ複合粒子の吸油量は、シリカ複合反応工程における反応温度、添加時間、保留時間、pH、粘度調整や、用いる再生粒子の燃焼手段、粒子径などにより調整可能であるが、シリカ複合反応において10,000Å以下の細孔容積が0.5〜1.5cc/gとなるように調整すると、高い吸油量を示し、紙の不透明度を向上できるシリカ複合再生粒子を得ることができ、このシリカ複合再生粒子を含有したシリカ複合再生粒子内添紙においては、高い不透明度を得ることができる。
【0097】
以上、再生粒子を例にシリカ複合再生粒子の製造方法を詳述したが、再生粒子の代わりに再生粒子凝集体や、従来一般に製紙用途で填料として使用している炭酸カルシウム(重質および軽質)、タルク、クレー等を用いて、シリカ複合無機粒子を製造し、新聞用紙に内添することができる。
このようにシリカを複合した粒子は、粒子表面がシリカで複合されているためワイヤー磨耗度が低くでき、填料として好適に使用することができる。紙に内添する無機粒子においては、粒子が硬いと抄紙機のワイヤー(網部)を傷つけやすくなり、ワイヤー寿命を縮めるため好ましくない。しかしながら本発明のごとく、ワイヤーを傷つけにくい柔らかい無機粒子である、シリカで複合した無機粒子、好ましくはシリカ複合再生粒子やシリカ複合再生粒子凝集体を用いることで、ワイヤー寿命を延長させることができる。
【0098】
ワイヤー磨耗度は、フィルコン式ワイヤー磨耗度試験で評価することができる。シリカと複合させる無機粒子として、磨耗度が約80mgの再生粒子凝集体を用いると、シリカ複合により磨耗度を約20〜70mgにまで低下させることができ、内添填料として充分に使用可能な粒子を得ることができる。尚、重質炭酸カルシウムのワイヤー磨耗度は100mg以上、軽質炭酸カルシウムは約50mg、ホワイトカーボンは約15mgであり、おおむね70mg以下であれば、内添填料として使用できる。
【0099】
上述のとおり、填料として、シリカおよびシリカ以外の無機粒子からなる複合粒子、好ましくはシリカ複合再生粒子凝集体を用いると、高い不透明性を有する新聞用紙を得ることができるため好ましい。
【0100】
本発明の新聞用紙を構成する基紙を得るには、前記パルプからなるパルプスラリーをマシンチェストで、例えば好適にはpH6.0〜10.0、さらに好適にはpH6.5〜9.5の中性〜アルカリ性となるようにpH等の条件を調整した後、種箱、第1ファンポンプ、クリーナー、スクリーンへ送り、次の第2ファンポンプへ供給される前の段階で本件発明で用いる填料を添加した後、ヘッドボックスを介して長網型抄紙機、ツインワイヤー型抄紙機等の通常の抄紙機にて抄紙する方法を採用することが、填料の歩留向上、光学的性質を向上するという点から好ましい。すなわち、抄紙pHが中性〜アルカリ性であると、酸性の場合と比べて、繊維1本1本が膨潤し易く、外部フィブリル化、内部フィブリル化された繊維相互の水素結合を形成する領域が増加する。したがって、本件発明のスギ材とマツ材とからなる網目状のパルプ構成においては、灰分が酸性新聞用紙と同程度においても、中性新聞用紙の紙力の方が高くなる。この結果、例えば35〜50g/m2といった低坪量の新聞用紙であっても、高速オフセット印刷に耐え得る充分な品質を確保することができる。
【0101】
また本発明においては、基紙を得る際、パルプの調製段階で凝結剤を添加し、さらに該パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で凝集剤を添加することが、パルプ懸濁液中に混在する微細な無機粒子の凝集を推進し、さらに原料パルプに無機粒子を付着させて填料歩留りを向上させる、濾水性が向上してウェットエンドの安定性が得られるといった利点があるので好ましい。
【0102】
本発明に用いられる原料パルプは、機械パルプを含有しており、パルプ表面が比較的高いアニオン性を呈するので、パルプの調製段階で凝結剤を添加し、さらに該パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で凝集剤を添加することが、パルプ繊維間に、物理的、化学的に填料を付着させて填料歩留りを向上させ、また、濾水性の向上によりウェットエンドの安定性を得ることができる点から好適である。
【0103】
前記のごとくパルプの調製段階で添加することが好ましい凝結剤としては、例えばポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)等の有機高分子系凝結剤や、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝結剤があげられる。これらの中でも、填料の歩留り向上効果が高いため、カチオン性有機高分子系凝結剤が好ましい。カチオン性有機高分子系凝結剤としては、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンから選択された一種以上のアミン類と、ポリカチオン物質と、重量平均分子量10000〜70000のポリアルキレンイミンとを反応させたポリアルキレンイミン変性物が好ましい。カチオン性有機高分子凝結剤を用いることで、本件発明におけるスギ材とマツ材からなる機械パルプと所定の二種類の填料との併用において効果的に不透明度の高い紙層を形成できる。
【0104】
カチオン性有機高分子系凝結剤の固形分配合量としては、0.1〜1.0kg/絶乾パルプトンが好ましく、0.15〜0.60kg/絶乾パルプトンが特に好ましい。カチオン性有機高分子系凝結剤の配合量が上記範囲より小さいと、十分なアニオントラッシュの凝結やイオン性の中和効果がみられず、填料の歩留り向上が得られにくい。
逆に、カチオン性有機高分子系凝結剤の配合量が上記範囲を超えると、原料パルプ系内のイオン性がカチオン性過度になり、不要な凝結やサイズ効果にムラが生じ、過剰の添加においても填料歩留まりの悪化、さらには地合い不良も発現する問題が生じる。
また、カチオン性有機高分子系凝結剤に加え、無機系凝結剤例えば硫酸バンド等を添加することができる。無機系凝結剤の固形分配合量は、0.3〜14.0kg/絶乾パルプトンが好ましく、0.5〜8.0kg/絶乾パルプトンがさらに好ましく、1.0〜5.0kg/絶乾パルプトンが特に好ましい。
【0105】
本発明においては、前記したように、パルプの調製段階で凝結剤を添加することが好ましいが、例えば、前記パルプ、並びに必要に応じて内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤、消泡剤等の各種製紙助剤等は、配合チェストで混合されて完成原料となる。したがって、配合チェストからマシンチェストの間で凝結剤が添加されることが好ましく、該凝結剤を完成原料に充分に混合するには、配合チェストへ添加することがより好ましい。
【0106】
さらに本発明においては、前記パルプの調製段階で凝結剤を添加した後、該パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で凝集剤を添加することが好ましい。
【0107】
前記凝集剤として、カチオン性凝集剤が填料の歩留り向上の面から好ましい。カチオン性凝集剤としては、具体的には、カチオン性ポリアミン樹脂、カチオン性ポリアミンポリアミド樹脂、カチオン性ポリアクリルアマイド、カチオン変性澱粉、スチレンアクリル系樹脂、カチオン性熱硬化性樹脂等を挙げることができる。カチオン性凝集剤を抄紙工程前段で添加することで、先の凝結剤にてスギ材とマツ材とからなる機械パルプと所定の二種類の填料をより密接化させた紙層を形成でき、不透明度を更に向上できる。
【0108】
カチオン性凝集剤の添加量としては、純分で50〜400ppmが好ましく、80〜200ppmが特に好ましい。カチオン性凝集剤の添加量が上記範囲より小さいと、タルク、ホワイトカーボン、シリカ含有粒子等の歩留まり向上の効果が得られ難くなり、逆に、カチオン性凝集剤の添加量が上記範囲を超えると、地合いが悪化するおそれがある。かかるカチオン性凝集剤としては、例えば重量平均分子量が800万〜1200万、さらには850万から1100万であり、かつカチオン性単量体の割合が5〜100モル%、好適には10〜100モル%のカチオン性水溶性重合体又は共重合体を使用することができる。かかるカチオン性凝集剤の代表例としては、例えばPAM等があげられる。カチオン性凝集剤の重量平均分子量が800万未満であると、該カチオン性凝集剤を用いた効果が充分に発現されない恐れがあり、一方1200万より大きくても、所望の効果の向上があまり望めず、コスト高となる恐れがある。
【0109】
原料パルプから紙料スラリーを調整して抄紙して抄紙した後、新聞用紙の表裏面に、表面サイズ剤を塗工するとよい。表面サイズ剤としては、例えば酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸、及び/またはメタクリル酸」を意味する。)、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体等、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子、ロジン、トール油とフタル酸等のアルキド樹脂ケン化物、石油樹脂とロジンのケン化物等のアニオン性低分子化合物、イソジアネート系ポリマー等のカチオン性ポリマーなどが挙げられ、これらは単独で又は同時に用いることができる。これにより、コールドセット型オフセットインキのビヒクル分が素早く吸収され、輪転機の高速化や両面カラー用タワープレス機の使用によって印刷インキ量が増加しても、充分な吸収乾燥性が発現され、また、填料が確実に繊維に固着されるため、填料の脱落を防止し、優れた印刷不透明度、印刷適性等を確保することができる。
【0110】
これらの表面サイズ剤の中でも、水溶性高分子が好ましく、特に澱粉が好ましい。
【0111】
なお、本発明に用いられる酸化澱粉としては、従来から使用されている化工澱粉が好適に例示され、例えば次亜塩素酸ナトリウム等による酸化反応によって、低分子量化と、分子中へのカルボキシル基、アルデヒド基、カルボニル基等の導入とを行ったものがあげられる。
【0112】
なお、澱粉の重量平均分子量としては、30万〜300万が好ましい。かかる重量平均分子量を有する澱粉は、用紙表面の被覆性に加え、インキ成分を用紙表面に留めつつ、溶媒成分を紙中に取り込んで吸収乾燥性を向上させる。また、澱粉の粘度(10%)としては、30×10−3Pa・s以下が好ましく、15×10−3〜25×10−3Pa・sが特に好ましい。かかる粘度の澱粉類は、粘度が高いことから紙中に浸透せず、紙表面に留まることができ、填料の固着性を向上させ、填料の脱落を防止し、不透明度を高めることができる。
【0113】
また、サイズ性を更に向上させ、オフセット輪転印刷におけるインクとの相性、及び填料の脱落防止効果の点から、スチレン系ポリマーを澱粉と併用することが好ましい。
表面サイズ剤として、酸化澱粉とスチレン系ポリマーを用いると、澱粉を均一に塗工でき、表面強度を向上させ、填料の脱落を防止できる。酸化澱粉とスチレン系サイズ剤の配合比は、固形分で酸化澱粉100部に対し、スチレン系サイズ剤10〜15部が好ましい。スチレン系サイズが10部を下回ると、紙のサイズ性及び表面強度の向上が充分に得られにくく、15部を上回ると、コスト高となったり、不透明度やインク乾燥性の低下を招く恐れがある。
【0114】
スチレン系ポリマーとしては、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸、及び/またはメタクリル酸」を意味する。)、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体等が例示される。
【0115】
当該新聞用紙の表面サイズ剤の固形分塗工量としては、片面あたり0.1g/m以上1.0g/m以下が好ましく、0.2g/m以上0.75g/m以下が特に好ましい。表面サイズ剤の塗工量が上記範囲より小さいと、充分な被膜性が得られず、表面強度を充分に向上させにくい。一方、表面サイズ剤の塗工量が上記範囲を超えると、塗布設備周辺に表面サイズ剤を含んだ塗工液のミストが多量に発生し、周辺機器を汚損するとともに、汚れに起因する断紙、用紙の欠陥が生じる恐れがある。
【0116】
表面サイズ剤の塗工手段としては、特に限定されず、例えばトランスファロールコーター、エアドクタコーター、ブレードコーター、ロッドコーター等が使用される。これらのコーターの中でも、トランスファロールコーター方式の塗布装置が好ましく、ゲートロールコーターが特に好ましい。フィルムトランスファー方式による塗工、特にゲートロールによる塗工は、他の塗工方法とは異なり、低塗工量でも当該新聞用紙表面に被覆性の高い層の形成に好適であり、また塗工液に急激なせん断力がかからないので、循環使用する塗工液の安定性に優れ、高速で均質な被膜を得ることができる。その結果、例えばコールドセット型インキを使用して多色オフセット輪転印刷をする場合、インキ濃度、インキセット性、インキ着肉性等の印刷適性に優れ、新聞用紙表面でのインキセット性を向上できるため、本件発明におけるスギ材とマツ材からなる機械パルプと所定の二種類の填料と組み合わせることで不透明度を向上できる。
【0117】
さらに、当該新聞用紙には、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー設備で平坦化処理を施すことも可能である。かかるカレンダー設備による平坦化処理を施すことで、当該新聞用紙の印刷適性をさらに向上することができる。なお、カレンダー設備としては、特に限定されないが、古紙パルプの配合割合が高い当該新聞用紙においては、低ニップ圧で同一緊度であり、高い平滑性ひいては軽量化及びカラー印刷適性に優れるソフトカレンダーが特に好ましい。
【0118】
このようにして得られる本発明の新聞用紙は、輸送における労力の軽減、軽量化の点から、JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠した坪量が、好ましくは35g/m2以上、さらに好ましくは38g/m2以上、また好ましくは50g/m2以下、さらに好ましくは48g/m2以下の軽量なものである。かかる坪量が35g/m2未満では不透明度の確保が不充分となり、例えば17〜18万部/時間にも及ぶ近年の高速印刷においては特に、断紙やシワが生じ易く、操業性、品質に問題が発生する恐れがある。一方坪量が50g/m2を超えると、充分な不透明度を確保し易くなるものの、軽量な新聞用紙として扱い難くなる。内添される填料として粒子径の異なるホワイトカーボンとシリカ含有粒子を備えているためホワイトカーボンとパルプ繊維によって形成される細かな空隙にシリカ含有粒子を固着させることができる。さらに、機械パルプの原料として、スギ属の木材チップと、マツ属の木材チップとの重量比を5:95以上50:50以下とした機械パルプは、不透明度、強度、嵩が高い機械パルプとなるため、前記、機械パルプを配合することで、軽量化しても不透明度を確保した新聞用紙が得られる。
【0119】
また新聞用紙の密度は、JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に記載の方法に準拠して測定して、0.56〜0.70g/cm3であることが好ましい。かかる密度が0.56g/cm3未満であると紙質強度が低下して高速輪転印刷における断紙の原因になる恐れや、紙粉が発生するという問題が生じる恐れがある。一方、密度が0.70g/cm3を超えると、印刷後の裏抜けが生じやすくなり、剛度が低下して印刷作業性も低下する恐れがある。
【0120】
また新聞用紙の白色度は、JIS P 8212に記載の「パルプ−拡散青色光反射率(ISO白色度)の測定方法」に準拠して測定して、53%以上、さらには54〜58%であることが好ましい。かかる白色度が53%未満であると、印刷前の白紙外観が低下する恐れがあるだけでなく、オフセット印刷後、特にカラー印刷後の印刷物の見映えも低下する恐れがある。
【0121】
新聞用紙の不透明度は、JIS P 8149に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)」に準拠して測定して、90%〜96%であることが好ましく、さらには92〜95%であることがより好ましい。かかる不透明度が90%未満であると、印刷前の白紙外観が低下するだけでなく、オフセット印刷後の印刷物の見映えも低下する恐れがある。機械パルプの原料としてスギ属の木材チップと、マツ属の木材チップとの配合比を、5:95以上50:50以下とした機械パルプは、不透明度、強度、嵩の高い機械パルプとなるため、前記、機械パルプを配合することで、軽量化しても不透明度の高い新聞用紙が得られる。さらに、体積平均粒子径が15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと、体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の再生粒子の表面にシリカを複合したシリカ複合再生粒子と組み合わせることで、太く長いマツ属由来のパルプ繊維と、細く短いスギ属由来のパルプ繊維の隙間を埋めるようにホワイトカーボンやシリカ複合再生粒子が抄紙されることに加え、填料歩留りが向上することで、光散乱性が上がると共に光透過性を下げるため、極めて高い不透明度を得ることができる。
【0122】
新聞用紙の印刷不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から印刷不透明度は高いものが求められるが、後述する印刷不透明度試験方法に準拠して測定した下限として90%が好ましく、91%が特に好ましい。また、印刷不透明度の上限としては、95%が好ましく、94%が特に好ましい。印刷不透明度が上記下限未満であると裏抜けが生じやすくなる。逆に、印刷不透明度が上記上限を超えると、必要な填料が増大し、その結果パルプ繊維間の密着性が低下し、新聞用紙の強度が低下したり、紙表面からの填料の脱落によって印刷時の紙紛が増加し印刷作業性が低下する。機械パルプの原料として、スギ属の木材チップと、マツ属の木材チップとの配合比を、5:95以上50:50以下とした機械パルプは、不透明度、強度、嵩が高い機械パルプとなるため、前記、機械パルプを配合することで、軽量化しても印刷不透明度の高い新聞用紙が得られる。さらに、体積平均粒子径が15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと、体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の再生粒子とシリカを複合したシリカ複合再生粒子とを組み合わせることで、太く長いマツ属由来のパルプ繊維と、細く短いスギ属由来のパルプ繊維の隙間を埋めるように吸油性の高いホワイトカーボンやシリカ複合再生粒子が抄紙されることに加え、填料歩留りが向上することで、光散乱性が上がると共に光透過性を下げるため、極めて高い印刷不透明度を得ることができる。
【0123】
新聞用紙の横方向の引裂強度は、JIS P 8116に記載の「紙−引裂強さ試験方法−エレメンドルフ形引裂試験機法」に準拠して測定して、300mN以上が印刷時の断紙等の作業性を考慮すると、好ましい。かかる引裂強度(横)が300mN未満では、新聞用紙のオフセット輪転印刷時に断紙が発生する恐れがある。機械パルプの原料として、スギ属の木材チップと、マツ属の木材チップとの重量比を、5:95以上50:50以下とした機械パルプは、不透明度、強度、嵩が高い機械パルプとなるため、前記、機械パルプを配合することで、高不透明度で引裂強度(横)を備えた新聞用紙とすることができる。
【0124】
新聞用紙の縦方向の引張強度は、JIS P 8113に記載の「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準拠して測定して、2.6kN/m以上が好ましい。かかる引張強度(縦)が2.6kN/m未満では、新聞用紙のオフセット輪転印刷時に断紙やシワが発生する恐れがある。機械パルプの原料として、スギ属の木材チップと、マツ属の木材チップとの重量比を、5:95以上50:50以下とした機械パルプは、不透明度、強度、嵩が高い機械パルプとなるため、前記、機械パルプを配合することで、高不透明度で引張強度(縦)を備えた新聞用紙とすることができる。
【実施例】
【0125】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳説するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0126】
[再生粒子の製造]
被処理物(原料)として、製紙スラッジまたは脱墨フロスを予め分別して用い、脱水工程を経て、図1および図2の製造設備により、表1に示す条件にて、有機成分の熱処理工程、第1燃焼工程および第2燃焼工程を適宜用い順次経て、湿式粉砕処理を施し、再生粒子を得た。製造例2、3および製造例6、7の有機成分の熱処理工程において用いた内熱キルンは、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、この内熱キルン炉一端の原料供給口から、製紙スラッジを供給するとともに熱風を吹き込む並流方式を採用した。
【0127】
また、第1燃焼工程において用いた内熱キルンは、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である。さらに、第2燃焼工程において用いた外熱キルン炉は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉であり、この外熱キルン炉としては、特に内部に平行リフターを有する外熱電気方式のキルン炉を採用した。湿式粉砕処理は、セラミックボールミルを用いて行った。製造例4における脱墨フロスは、上級古紙脱墨フロスを製紙スラッジに混在する前に予め分別して用いた。
【0128】
1次燃焼温度は、1次燃焼炉出口温度を測定した。2次燃焼温度は、2次燃焼炉出口温度を測定した。酸素濃度は、1次燃焼炉出口酸素濃度、2次燃焼炉出口酸素濃度を測定した。
【0129】
[シリカ複合再生粒子の製造]
表2に示す条件で、珪酸アルカリ水溶液として珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)38%濃度、再生粒子スラリー20%濃度を混合し、希釈水を加え表2に示すとおり珪酸アルカリと再生粒子からなるスラリーを所定の反応開始濃度、反応開始pHに調整したのち、鉱酸として硫酸を添加、撹拌しシリカ複合再生粒子を製造した。スラリーの撹拌は公知のミキサーを使用し。スラリーのpHは、堀場製作所製のpH計にて、反応温度は公知の温度計にて測定した。1次反応工程では、珪酸アルカリ水溶液と鉱酸の中和率が表2に示す割合になるように鉱酸を添加した。
【0130】
保留時間は、1次反応工程で行なう鉱酸の添加を終え、2次反応工程で鉱酸を再び添加するまでの時間をいう。
【0131】
2次反応工程においては、反応終了pHになるように、所定の時間をかけて1次反応工程と同じ鉱酸を添加した。表2に示す、完成原料の10%濃度スラリー粘度は、2次反応工程を経て反応を終えたシリカ複合再生粒子スラリーを脱水濾過し、固形分濃度を10%に調整したスラリーをB型粘度計により測定した値(測定温度25℃)である。
【0132】
[再生粒子およびシリカ複合再生粒子の測定]
再生粒子およびシリカ複合再生粒子の成分分析結果を表1および表3に示す。各工程の無機構成成分は堀場製作所製のX線マイクロアナライザーを用い、加速電圧(15KV)にて元素分析を行い、構成成分より酸化物換算した。
【0133】
比表面積および細孔容積は、水銀圧入式ポロシメーター(テルモ社製「PASCAL 140/240」)を用い、試料を濾過した後、真空乾燥して測定した。
【0134】
吸油量はJIS K 5101−13−2記載の練り合わせ法によるものである。すなわち105℃〜110℃で2時間乾燥した試料2g〜5gをガラス板に取り、精製アマニ油(酸化4以下のもの)をビュレットから少量ずつ試料の中央に滴下しその都度ヘラで練り合わせる。滴下練り合わせの操作を繰り返し、全体が初めて1本の棒状にまとまったときを終点として、精製アマニ油の滴下量を求め、次の式によって吸油量を算出する。
吸油量=[アマニ油量(ml)×100]/試料(g)
【0135】
粒子径は、レーザー粒度分布測定装置(レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製)にて粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になるときの粒子径(d50)として求められる。測定試料の調製は、0.1%ヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液に、シリカ複合再生粒子を添加し、超音波で1分間分散した。
【0136】
硬質物質の測定には、X線回析装置(理学電気製、RAD2X)を用いた。測定条件:Cu−Kα−湾曲モノクロメーター 40KV−40mA、発散スリット・1mm SS・1mm RS・0.3mm、走査速度・0.8度/分、走査範囲・2シータ=7〜85度、サンプリング・0.02度である。
【0137】
表3に示す生産性は、得られたシリカ複合再生粒子の濾液中に含まれる未反応薬品量から換算したシリカ複合反応の歩留りから、歩留り95%以上を◎、80%以上95%未満を○、70%以上80%未満を△、70%未満を×とした。
【0138】
【表1】

【0139】
【表2】

【0140】
【表3】

【0141】
[ホワイトカーボンの製造]
本発明で用いたホワイトカーボンは以下のとおり調製した。
二酸化ケイ素(シリカ)換算における濃度を195g/Lに調整した珪酸ナトリウム水溶液2500L、清水4800L及び無水硫酸ナトリウム170kgを、容積10mの反応槽へ投入した。
【0142】
反応槽内の溶液温度を40℃とした後、攪拌しながら、珪酸ナトリウムを中和するのに必要な全硫酸量の32.5質量%に相当する硫酸(濃度:20質量%)410Lを12分間かけて連続添加した。硫酸添加後、反応溶液を攪拌しながら35分間かけて90℃まで昇温し、その後90℃のままで10分熟成した。
【0143】
次いで残りの硫酸(濃度:20質量%)850Lを、25分間かけて連続的に添加した。さらに温度を維持しながら20分間熟成を行った。その後硫酸を連続的に添加し、スラリーのpHを5.2に調整した。このpHを調整したスラリーをろ過洗浄後、湿式粉砕を行い、水和珪酸(2次凝集体)を得た。得られたホワイトカーボンの体積平均粒子径は20μmであった。
【0144】
なお、以上の製造手段を踏襲しながら、初期珪酸ナトリウム水溶液の濃度、無水硫酸ナトリウムの添加量、珪酸ナトリウムと硫酸とのモル比、反応温度、添加する薬品の添加速度や量を適宜変更、調整し、実施例10、実施例11、比較例7、比較例8に用いた体積平均粒子径のホワイトカーボンを製造した。
【0145】
(実施例1)
絶乾質量で、ラジアータパインチップ95質量%と、スギチップ5質量%とを配合した混合チップを用いて解繊、叩解し、精選工程でスリット幅0.15mmのスクリーンを用いて精選処理して、機械パルプを製造し、この機械パルプと、脱墨古紙パルプとを20:80の絶乾質量比で配合し原料パルプスラリーを得た。このパルプスラリーに対し、硫酸バンドでpHを6〜7になるよう調整後、カチオン性有機高分子系凝結剤(ハイモ(株)製ハイマックスSC924)を固形分で0.4Kg/パルプトン添加した。このパルプスラリーに、パルプ固形分1tに対してアルキルケテンダイマーサイズ剤(品名:AD−1624、日本PMC(株)製)0.3kg(固形分)/パルプトン添加した後、シリカ含有粒子としてシリカ複合再生粒子(製造例1、体積平均粒子径8.5μm)を30Kg(固形分)/パルプトン、ホワイトカーボン(体積平均粒子径20μm)を20Kg(固形分)/パルプトン添加した。次いで、絶乾パルプに対し固形分で110ppmの凝集剤(ハイモ(株)製ハイモロックND270)を添加してツインワイヤー抄紙機で坪量42.5g/mの基紙を得た。更に、表面サイズ剤として酸化澱粉とスチレン系ポリマー(星光PMC(株)製SS2712)を固形分で酸化澱粉100部に対しスチレン系ポリマーが30部になるよう混合し、水を加えて濃度調整して塗工液を作成した後、乾燥質量で片面あたり0.5g/m(両面で1.0g/m)塗工して実施例1の新聞用紙を得た。
なお、本発明でのパルプトンとは、絶乾パルプトンである。
【0146】
(実施例2)
ラジアータパインチップを90質量%、スギチップを10質量%配合した以外は実施例1と同様にして実施例2の新聞用紙を得た。
【0147】
(実施例3)
ラジアータパインチップを85質量%、スギチップを15質量%配合した以外は実施例1と同様にして実施例3の新聞用紙を得た。
【0148】
(実施例4)
ラジアータパインチップを80質量%、スギチップを20質量%配合した以外は実施例1と同様にして実施例4の新聞用紙を得た。
【0149】
(実施例5)
シリカ複合再生粒子の体積平均粒子径が1.7μmであること(表3記載の製造例6)以外は実施例4と同様にして実施例5の新聞用紙を得た。
【0150】
(実施例6)
シリカ複合再生粒子の体積平均粒子径が5.5μmであること(表3記載の製造例2)以外は実施例4と同様にして実施例6の新聞用紙を得た。
【0151】
(実施例7)
シリカ複合再生粒子の体積平均粒子径が11.0μmであること(表3記載の製造例5)以外は実施例4と同様にして実施例7の新聞用紙を得た。
【0152】
(実施例8)
シリカ複合再生粒子の体積平均粒子径が12.5μmであること(表3記載の製造例3)以外は実施例4と同様にして実施例8の新聞用紙を得た。
【0153】
(実施例9)
シリカ複合再生粒子の添加量が10Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例9の新聞用巻取紙を得た。
【0154】
(実施例10)
ホワイトカーボンの体積平均粒子径が15μmであること以外は実施例4と同様にして実施例10の新聞用紙を得た。
【0155】
(実施例11)
ホワイトカーボンの体積平均粒子径が25μmであること以外は実施例4と同様にして実施例11の新聞用紙を得た。
【0156】
(実施例12)
ホワイトカーボンの添加量が7Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例12の新聞用紙を得た。
【0157】
(実施例13)
シリカ複合再生粒子の添加量が5Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例13の新聞用紙を得た。
【0158】
(実施例14)
シリカ複合再生粒子の添加量が15Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例14の新聞用紙を得た。
【0159】
(実施例15)
シリカ複合再生粒子の添加量が15Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例15の新聞用紙を得た。
【0160】
(実施例16)
ホワイトカーボンの添加量が10Kg/パルプトン、シリカ複合再生粒子の添加量が10Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例16の新聞用紙を得た。
【0161】
(実施例17)
ホワイトカーボンの添加量が16Kg/パルプトン、シリカ複合再生粒子の添加量が25Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例17の新聞用紙を得た。
【0162】
(実施例18)
ホワイトカーボンの添加量が30Kg/パルプトン、シリカ複合再生粒子の添加量が40Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例18の新聞用紙を得た。
【0163】
(実施例19)
ホワイトカーボンの添加量が40Kg/パルプトン、シリカ複合再生粒子の添加量が55Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例19の新聞用紙を得た。
【0164】
(実施例20)
ホワイトカーボンの添加量が45Kg/パルプトンであること以外は実施例4と同様にして実施例20の新聞用紙を得た。
【0165】
(実施例21)
シリカ複合再生粒子の代わりに体積平均粒子径8.5μmのシリカ複合炭酸カルシウムを30Kg/パルプトン添加した以外は実施例4と同様にして実施例21の新聞用紙を得た。なお、シリカ複合炭酸カルシウムは、再生粒子の代わりに炭酸カルシウム(商品名:TP−121−6S、奥多摩工業(株)製、体積平均粒子径2.1μm)を用いて表2記載の製造例1の条件に従って製造した。
【0166】
(実施例22)
ラジアータパインチップを75質量%、スギチップを25質量%配合した以外は実施例1と同様にして実施例22の新聞用紙を得た。
【0167】
(実施例23)
ラジアータパインチップを70質量%、スギチップを30質量%配合した以外は実施例1と同様にして実施例23の新聞用紙を得た。
【0168】
(実施例24)
ラジアータパインチップを60質量%、スギチップを40質量%配合した以外は実施例1と同様にして実施例24の新聞用紙を得た。
【0169】
(実施例25)
ラジアータパインチップを50質量%、スギチップを50質量%配合した以外は実施例1と同様にして実施例25の新聞用紙を得た。
【0170】
(実施例26)
スリット幅0.20mmのスクリーンを用いて精選処理したこと以外は、実施例4と同様にして実施例26の新聞用紙を得た。
【0171】
(実施例27)
機械パルプの配合量を10質量%、脱墨古紙パルプの配合量を90質量%とした以外は、実施例4と同様にして実施例27の新聞用紙を得た。
【0172】
(実施例28)
機械パルプの配合量を40質量%、脱墨古紙パルプの配合量を60質量%とした以外は、実施例4と同様にして実施例28の新聞用紙を得た。
【0173】
(比較例1)
スギチップを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の新聞用紙を得た。
【0174】
(比較例2)
ラジアータパインチップを97質量%、スギチップを3質量%配合した以外は実施例1と同様にして比較例2の新聞用紙を得た。
【0175】
(比較例3)
ラジアータパインチップを40質量%、スギチップを60質量%配合した以外は実施例1と同様にして比較例3の新聞用紙を得た。
【0176】
(比較例4)
ラジアータパインを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例4の新聞用紙を得た。
【0177】
(比較例5)
シリカ複合再生粒子の体積平均粒子径が1.5μmであること(表3記載の製造例7)以外は実施例4と同様にして比較例5の新聞用紙を得た。
【0178】
(比較例6)
シリカ複合再生粒子の体積平均粒子径が18.5μmであること(表3記載の製造例4)以外は実施例4と同様にして比較例6の新聞用紙を得た。
【0179】
(比較例7)
ホワイトカーボンの体積平均粒子径が5μmであること以外は実施例4と同様にして比較例7の新聞用紙を得た。
【0180】
(比較例8)
ホワイトカーボンの体積平均粒子径が30μmであること以外は実施例4と同様にして比較例8の新聞用紙を得た。
【0181】
(比較例9)
シリカ複合再生粒子を添加しなかった以外は実施例4と同様にして比較例9の新聞用紙を得た。
【0182】
実施例1〜28及び比較例1〜9の新聞用紙及び機械パルプスラリーについて、以下の基準により性能評価を行った。フリーネス及びシャイブ率は機械パルプについての値である。その結果を表1に示す。
【0183】
〔評価〕
【0184】
(1)体積平均粒子径
体積平均粒子径は、レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製により測定した。
【0185】
(2)新聞用紙のシリカ含有量(酸化物換算)
新聞用紙のシリカ含有量(酸化物換算)は、新聞用紙のJIS P 8251に準拠した灰分と、前記新聞用紙をJIS P 8251に準拠して灰化した残さをX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)堀場製作所製)を用い加速電圧(15KV)にて元素分析をして得られた、酸化物換算した元素中の酸化物換算したシリカの質量割合とから下記式で算出して求めた。
新聞用紙のシリカ含有量(酸化物換算、質量%)=新聞用紙の灰分(質量%)×灰化残さ中のシリカ含有率(酸化物換算、質量%)÷100
【0186】
(3)坪量
JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0187】
(4)灰分
JIS P 8251に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法」に準拠して測定した。
【0188】
(5)印刷不透明度
JAPAN TAPPI No.45に準拠して測定した。
【0189】
(6)不透明度
JIS P 8149に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)」に準拠して測定した。
【0190】
(7)白色度
JIS P 8148に記載の「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)」に準拠して測定した。
【0191】
(8)密度
密度は、JIS P 8124に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」及びJIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0192】
(9)引張強度(縦)
JIS P 8113に記載の「紙及び板紙−引張特性の試験方法」に準拠して、新聞用紙の縦方向について測定した。
【0193】
(10)引裂強度(横)
JIS P 8116に記載の「紙−引裂強さ試験方法−エレメンドルフ形引裂試験機法」に準拠して、新聞用紙の横方向について測定した。
【0194】
(11)作業性
オフセット輪転印刷機(型番:LITHOPIA BTO−4、三菱重工業(株)製)
を使用し、50連巻きの新聞用紙にて印刷を行った。ブランケット非画像部における紙粉
発生・堆積の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が全く認められない。
○:紙粉の発生がわずかに認められるがブランケット上での堆積は全く認められない。
△:紙粉の発生が認められ、ブランケット上に堆積している。
×:ブランケット上での紙粉の堆積が著しい。
【0195】
(12)フリーネス(機械パルプ)
JIS P 8121(1995)に記載の「パルプのろ水度試験方法」に準拠して測定した。
【0196】
(13)シャイブ率(機械パルプ)
TAPPI T275sp98に準拠して、0.15mmのスリット幅のスクリーンプレートを用い、サンプル量絶乾100gのパルプをフラットスクリーンで処理したものを用いて測定した。
【0197】
【表4】

【表5】

【表6】

【0198】
表4、5、6に示されるように、実施例1〜28の新聞用紙は、高い不透明度(印刷不透明度及び白紙不透明度)を有している。スギの重量比を高くすると不透明度が増加し、さらにホワイトカーボンとホワイトカーボンよりも体積平均粒子径の小さなシリカ複合再生粒子を含有すると極めて高い不透明度を示している。スギの重量比を増加させると、不透明度の増加に加えて、引張強度も増加するが、引裂強度が低下する。一方、スギの重量比を低くする(ラジアータパインの重量比を高くする)と不透明度及び引張強度が低下し、引裂強度が増加する。特に、スギとマツの重量比を15:85〜25:75とし、ホワイトカーボンとシリカ複合再生粒子を含有した新聞用紙が、高い不透明度を示し、かつ引張強度及び引裂強度ともに満足する値を有している。
【0199】
一方、比較例1〜4の新聞用紙は、スギの重量比が低く不透明度が低いか、スギの重量比が高すぎて引裂強度が低くなっている。また、比較例5は、シリカ複合再生粒子の体積平均粒子径が小さすぎて、パルプ繊維中の空隙間を通り抜け固着しにくくなるため、不透明度が向上しない。比較例6の新聞用紙は、シリカ複合再生粒子の体積平均粒子径が大きすぎて、パルプ繊維中の空隙間に入りにくくなり、不透明度が向上せず、紙面からの填料の脱落による印刷作業性が悪い。また、比較例7の新聞用紙は、ホワイトカーボンの体積平均粒子径が15μmよりも小さくシリカ複合再生粒子の粒子径と近いため、不透明度が向上しない。比較例8の新聞用紙は、ホワイトカーボンの体積平均粒子径が大きすぎるため、紙面からの填料の脱落により印刷作業性が悪い。シリカ含有粒子を含有しなかったもの(比較例9)は、印刷不透明度が低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明の新聞用紙は、例えば17〜20万部/時間といった高速でのオフセット輪転印刷等に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0201】
10…原料、12…貯槽、14…第1燃焼炉(内熱キルン炉)、20…熱風発生炉、22…再燃焼室、26…熱交換器、28…誘引ファン、30…煙突、31…外熱ジャケット、32…第2燃焼炉(外熱キルン炉)、34…冷却機、36…粒径選別機、42…熱処理炉(内熱キルン炉)、43…熱風発生炉。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料パルプとして、スギ属(Cryptomeria)の木材チップと、マツ属(Pinus)の木材チップを原料とし、このスギ属とマツ属の木材チップとの絶乾重量比が、5:95以上50:50以下からなる機械パルプと、填料として、体積平均粒子径が15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと、体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の無機粒子を含むことを特徴とする、新聞用紙。
【請求項2】
前記無機粒子が、製紙スラッジを主原料として、脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られた再生粒子にシリカを複合させたシリカ複合再生粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の新聞用紙。
【請求項3】
前記新聞用紙に含まれる酸化物換算のシリカの含有量が4.0質量%〜7.2質量%であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の新聞用紙。
【請求項4】
前記機械パルプは、スリット幅0.15mm以下のスクリーンで処理されたパルプであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の新聞用紙。
【請求項5】
原料パルプとしてスギ属とマツ属の木材チップとの絶乾重量配合比が5:95〜50:50となるように配合し機械パルプ化した後、スリット幅0.15mm以下のスクリーンにて精選処理した機械パルプ10〜40%に脱墨古紙パルプを60〜90%配合し、灰分が5〜15質量%、新聞用紙に含まれる酸化物換算のシリカ含有量が4.0質量%〜7.2質量%となるように、填料として、体積平均粒子径が15μm以上25μm以下のホワイトカーボンと体積平均粒子径が1.7μm以上12.5μm以下の無機粒子を添加して抄造されることを特徴とする、新聞用紙の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−102446(P2011−102446A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257589(P2009−257589)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】