説明

新規なオルガノシラン、および該オルガノシランに共有結合した基体、並びに合成および使用方法

本発明は、新規なケイ素化合物、これらの新規ケイ素化合物の製造方法、基体に結合したこれらの新規なケイ素化合物を含む組成物、これら新規なケイ素化合物の基体への結合方法、および各種クロマトグラフィー用途における上記組成物の使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に、新規なケイ素化合物、これらの新規ケイ素化合物の製造方法、基体に結合したこれらの新規なケイ素化合物を含む組成物、これら新規なケイ素化合物の基体への結合方法、および各種クロマトグラフィー用途における上記組成物の使用方法に関する。
【0002】
(背景技術)
通常の逆相シリカカラム(例えば、ODS)は、クロマトグラフィー分離用の一般目的の静置相として広く使用されている(Neue, "HPLC Columns - Theory, Technology, and Practice," WILEY-VCH, New York, 1997, 183-203)。しかしながら、例えば、高水性環境における“相崩壊”(即ち、ディウェッティング(dewetting))、イオン性化合物の弱い保持力、および塩基性分析物のピークテーリングをもたらす残留シラノール活性のような幾つかの欠点は、ある種の用途において通常の逆相シリカカラムの使用を妨げている。
極性埋込み相は、塩基性分析物のピーク形状を改善し、高水性環境において逆相HPLCカラムの操作を可能にしている(O'Gara et al, LC-GC 2001, 19 (6):632-641)。一般的に使用される極性基としては、例えば、アミド、尿素、エーテルおよびカルバメートがある。一般に、極性埋込み相は、一般目的の逆相と比較したとき、塩基性分析物の優れたピーク形状を与え、高水性環境とより適合性である。さらに、極性埋込み相は、多くの場合、通常のC-18充填物が示す選択性とは実質的に異なる選択性を有する。
界面活性剤は、各種の消費者用、工業用、農業用および製薬用製品の重要な成分である。界面活性剤分析は、多くの場合、通常のクロマトグラフィーを使用して解決することが困難である混合物の存在によって複雑である。界面活性剤は、逆相カラム(例えば、C18、C8、シアノ、フェニル等)、順相カラム、イオン交換カラムおよびサイズ排除カラム(Schmitt, “Analysis of Surfactants,” 2nd edition, Marcel Dekker, Inc, New York, 2001, 197-292)上での液体クロマトグラフィーによって分析されている。C18カラムは、とりわけアニオン性界面活性剤において、妥当性のある分離、ピーク効率および非対称性を与えている。しかしながら、シリカ系逆相カラム上の誘導体化されていないシラノール類の存在は、多くの場合、カチオン性界面活性剤の満足な分解を妨げている。例えば、C18逆相カラムは、ポリエチレングリコール(PEG)系界面活性剤の個々のオリゴマーを分離し得ていない。さらに、高水性移動相の必然的な使用によって生じる“ディウェッティング”のために、通常の高密度C18カラムは、高親水性ヒドロトープ類(例えば、ナフタレンスルホン酸ナトリウムおよびキシレンスルホン酸ナトリウム)の分析には適し得ない。複数の種々の条件を使用して広範囲の界面活性剤を分析する各種HPLCカラムが入手可能であるにもかかわらず、単一カラムを使用して、1回の操作で、簡単で且つ揮発性の質量分析に匹敵し得る移動相を使用してカチオン性、ノニオン性およびアニオン性界面活性剤を分離することはできていない。
従って、疎水性および極性の双方の機能を有する新規なシラン化合物、これら新規なシラン化合物によって官能化された基体、並びにカチオン性、ノニオン性およびアニオン性界面活性剤を同時に分離するためのこれら新規な官能化基体の使用が求められている。
【0003】
(発明の開示)
本発明は、疎水性および極性機能を有する新規な群のシラン化合物、これら新規なシラン化合物によって官能化された基体、並びにカチオン性、ノニオン性およびアニオン性界面活性剤を同時に分離するためのこれら新規な官能化基体の使用を提供することによって上記および他の要求を満たす。
1つの局面においては、下記の式(I)で示される化合物、またはその塩類、溶媒和物もしくは水和物を開示する:
【化1】

式(I)の化合物は、少なくとも1個の活性化シリル基(例えば、Si(OMe)3、-SiMe(OMe)2、-SiMe2(OMe)、-Si(OEt)3、-SiMe(OEt)2、-SiMe2(OEt)、-SiMe2NMe2、-SiCl3等)、少なくとも1個の極性基(例えば、アミド、スルホンアミド、カルバメート、尿素、エステル等)、および該極性基に結合した短ヘッド鎖(例えば、(C1〜C6)アルキル)を有する。
【0004】
もう1つの局面においては、下記の構造式(II)を有する化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を提供する:
【化2】

(式中、R1、R2およびR3は、個々に、適宜1個以上のR12基によって置換されたアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、アミノ、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールスルホニルオキシ、ハロまたはヒドロキシルであるが、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、アルキル、アリールまたはヒドロキシルでないことを条件とし;
L1は、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アリールジイルまたはヘテロアリールジイルであり;
Yは、-C(O)N(R4)(R5)、-N(R4)C(O)R7、-N(R4)S(O2)R7、-S(O2)N(R4)(R5)、-OC(O)R7、-OC(O)N(R4)(R5)、-N(R4)C(O)OR7、-N(R4)C(O)N(R5)(R6)または-N(R4)S(O2)N(R5)(R6)であり;そして、
R4、R5およびR6は、個々に、水素、適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C1〜C6)アルキル、または適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C5〜C7)アリールであり;
R7は、適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C1〜C6)アルキル、または適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C5〜C7)アリールであり;そして、
R14は、(C1〜C6)アルキルであり;
R4、R5およびR6の1つは、水素でないことを条件とする)。
もう1つの局面においては、基体に共有結合した式(II)の化合物を含む組成物を提供する。ある実施態様においては、上記組成物は、逆相クロマトグラフィー媒体を使用するのに適するフルースロー床内にある。
【0005】
さらにもう1つの局面においては、基体に共有結合した構造式(II)の化合物および該基体に共有結合した下記の構造式(IV)の化合物を含む組成物を提供する:
【化3】

(式中、R8、R9およびR10は、個々に、適宜1個以上の同じまたは異なるR14基によって置換されたアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、アミノアリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールスルホニルオキシ、ハロまたはヒドロキシルであるが、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、アルキル、アリールまたはヒドロキシルでないことを条件とし;
R15は、(C1〜C6)アルキルであり;
L2は、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アリールジイルまたはヘテロアリールジイルであり;そして、
Wは、イオン化可能な基である)。
さらにもう1つの局面においては、クロマトグラフィー法を提供する。水性液体を、基体に共有結合した式(II)の化合物を含有する組成物或いは基体に共有結合した構造式(II)の化合物および該基体に共有結合した構造式(IV)の化合物を含む組成物のいずれかを含む分離媒体の床に流入させる。
さらにもう1つの局面においては、液体サンプル中の分析物のクロマトグラフィー分離方法を提供する。液体サンプルを、基体共有結合した式(II)の化合物を含有する組成物或いは基体に共有結合した構造式(II)の化合物および該基体に共有結合した構造式(IV)の化合物を含む組成物を含む媒体に流入させる。
さらにもう1つの局面においては、液体サンプル中の無機分析物および有機分析物の同時分析方法を提供する。液体サンプルを、基体に共有結合した式(II)の化合物を含有する組成物或いは基体に共有結合した構造式(II)の化合物および構造式(IV)の化合物の組成物を含む媒体に流入させる。
【0006】
(発明を実施するための最良の形態)
定義
それ自体または他の置換基の1部としての“アルキル”とは、親アルカン、アルケンまたはアルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される飽和または不飽和の枝分れ、直鎖または環状の1価の炭化水素基を称する。典型的なアルキル基としては、限定するものではないが、メチル;エタニル、エテニル、エチニルのようなエチル類;プロパン-1-イル、プロパン-2-イル、シクロプロパン-1-イル、プロプ-1-エン-1-イル、プロプ-1-エン-2-イル、プロプ-2-エン-1-イル(アリル)、シクロプロプ-1-エン-1-イル、シクロプロプ-2-エン-1-イル、プロプ-1-イン-1-イル、プロプ-2-イン-1-イル等のようなプロピル類;ブタン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イル、シクロブタン-1-イル、ブト-1-エン-1-イル、ブト-1-エン-2-イル、2-メチル-プロプ-1-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブト-1-エン-1-イル、シクロブト-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブト-1-イン-1-イル、ブト-1-イン-3-イル、ブト-3-イン-1-イル等のようなブチル類等がある。
用語“アルキル”は、とりわけ、任意の飽和度合または飽和レベルを有する基、即ち、専ら一重炭素-炭素結合を有する基、1個以上の二重炭素-炭素結合を有する基、1個以上の三重炭素-炭素結合を有する基、並びに一重、二重および三重炭素-炭素結合の混合物を有する基を包含することを意図する。特定の飽和レベルを意図する場合、表現“アルカニル”、“アルケニル”および“アルキニル”を使用する。ある実施態様においては、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を含む。他の実施態様においては、アルキル基は、1〜10個の炭素原子を含む。
【0007】
それ自体または他の置換基の1部としての“アルカニル”とは、親アルカンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される飽和の枝分れ、直鎖または環状アルキル基を称する。典型的なアルカニル基としては、限定するものではないが、メタニル;エタニル;プロパン-1-イル、プロパン-2-イル(イソプロピル)、シクロプロパン-1-イル等のようなプロパニル類;ブタン-1-イル、ブタン-2-イル(sec-ブチル)、2-メチル-プロパン-1-イル(イソブチル)、2-メチル-プロパン-2-イル(t-ブチル)、シクロブタン-1-イル等のようなブタニル類等がある。
それ自体または他の置換基の1部としての“アルケニル”とは、親アルケンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する不飽和の枝分れ、直鎖または環状アルキル基を称する。この基は、二重結合の周りのシスまたはトランス構造のいずれかであり得る。典型的なアルケニル基としては、限定するものではないが、エテニル;プロプ-1-エン-1-イル、プロプ-1-エン-2-イル、プロプ-2-エン-1-イル(アリル)、プロプ-2-エン-2-イル、シクロプロプ-1-エン-1-イル、シクロプロプ-2-エン-1-イルのようなプロペニル類;ブト-1-エン-1-イル、ブト-1-エン-2-イル、2-メチル-プロプ-1-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-1-イル、ブト-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブト-1-エン-1-イル、シクロブト-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル等のようなブテニル類等がある。
それ自体または他の置換基の1部としての“アルキニル”とは、親アルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する不飽和の枝分れ、直鎖または環状アルキル基を称する。典型的なアルキニル基としては、限定するものではないが、エチニル;プロプ-1-イン-1-イル、プロプ-2-イン-1-イル等のようなプロピニル類;ブト-1-イン-1-イル、ブト-1-イン-3-イル、ブト-3-イン-1-イル等のようなブリニル類等がある。
【0008】
それ自体または他の置換基の1部としての“アルキルジイル”とは、親アルカン、アルケンまたはアルキンの2個の異なる炭素原子の各々から1個の水素原子を除去することによって或いは親アルカン、アルケンまたはアルキンの1個の炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される飽和または不飽和の枝分れ、直鎖または環状の2価炭化水素基を称する。2個の1価の基中心または2価の基中心の各原子価は、同じまたは異なる原子(1個以上)との結合を形成し得る。典型的なアルキルジイル基としては、限定するものではないが、メタンジイル;エタン-1,1-ジイル、エタン-1,2-ジイル、エテン-1,1-ジイル、エテン-1,2-ジイルのようなエチルジイル類;プロパン-1,1-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、シクロプロパン-1,1-ジイル、シクロプロパン-1,2-ジイル、プロプ-1-エン-1,1-ジイル、プロプ-1-エン-1,2-ジイル、プロプ-2-エン-1,2-ジイル、プロプ-1-エン-1,3-ジイル、シクロプロプ-1-エン-1,2-ジイル、シクロプロプ-2-エン-1,2-ジイル、シクロプロプ-2-エン-1,1-ジイル、プロプ-1-イン-1,3-ジイル等のようなプロピルジイル類;ブタン-1,1-ジイル、ブタン-1,2-ジイル、ブタン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ブタン-2,2-ジイル、2-メチル-プロパン-1,1-ジイル、2-メチル-プロパン-1,2-ジイル、シクロブタン-1,1-ジイル、シクロブタン-1,2-ジイル、シクロブタン-1,3-ジイル、ブト-1-エン-1,1-ジイル、ブト-1-エン-1,2-ジイル、ブト-1-エン-1,3-ジイル、ブト-1-エン-1,4-ジイル、2-メチル-プロプ-1-エン-1,1-ジイル、2-メタニリデン-プロパン-1,1-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,1-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,2-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,3-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,4-ジイル、シクロブト-1-エン-1,2-ジイル、シクロブト-1-エン-1,3-ジイル、シクロブト-2-エン-1,2-ジイル、シクロブタ-1,3-ジエン-1,2-ジイル、シクロブタ-1,3-ジエン-1,3-ジイル、ブト-1-イン1,3-ジイル、ブト-1-イン1,4-ジイル、ブタ-1,3-ジイン-1,4-ジイル等のようなブチルジイル類等がある。特定の飽和レベルを意図する場合、命名法アルカニルジイル、アルケニルジイルおよび/またはアルキニルジイルを使用する。ある実施態様においては、アルキルジイル基は、(C1〜C20)アルキルジイルである。他の実施態様においては、アルキルジイル基は、(C1〜C10)アルキルジイルである。さらに他の実施態様においては、アルキルジイル基は、基中心が末端炭素に存在する飽和の非環式アルカニルジイル基、例えば、メタンジイル(メタノ);エタン-1,2-ジイル(エタノ);プロパン-1,3-ジイル(プロパノ);ブタン-1,4-ジイル(ブタノ)等(下記で定義するアルキレノ(alkyleno)とも称する)。
【0009】
それ自体または他の置換基の1部としての“アルキレノ”とは、直鎖の親アルカン、アルケンまたはアルキンの2個の末端炭素原子の各々から1個の水素原子を除去することによって誘導される2個の末端1価基中心を有する直鎖アルキルジイル基を称する。典型的なアルキレノ基としては、限定するものではないが、メタノ;エタノ、エテノ、エチノのようなエチレノ類;プロパノ、プロプ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロプ[1]イノ等のようなプロピレノ類;ブタノ、ブト[1]エノ、ブト[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブト[1]イノ、ブト[2]イノ、ブト[1,3]ジイノ等のようなブチレノ類等がある。特定の飽和レベルを意図する場合、命名法アルカノ、アルケノおよび/またはアルキノを使用する。ある実施態様においては、アルキレノ基は、(C1〜C20)アルキレノである。他の実施態様においては、アルキレノ基は、(C1〜C10)アルキレノである。さらに他の実施態様においては、アルキレノ基は、直鎖の飽和アルカノ基、例えば、メタノ、エタノ、プロパノ、ブタノ等である。
それ自体または他の置換基の1部としての“アルキルスルホニルオキシ”とは、基 -OS(O)2R30 (R30は、本明細書において定義しているようなアルキルまたはシクロアルキル基を示す)を称する。
それ自体または他の置換基の1部としての“アルコキシ”とは、基 -OR31 (R31は、本明細書において定義しているようなアルキルまたはシクロアルキル基を示す)を称する。代表的な例としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ等がある。
それ自体または他の置換基の1部としての“アルコキシカルボニル”とは、基 C(O)OR32 (R32は、本明細書において定義しているようなアルキルまたはシクロアルキル基を示す)を称する。
【0010】
それ自体または他の置換基の1部としての“アリール”とは、親芳香環系の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される1価の芳香族炭化水素基を称する。典型的なアリール基としては、限定するものではないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレン等に由来する基がある。ある実施態様においては、アリール基は、5〜20個の炭素原子を含む。他の実施態様においては、アリール基は、5〜12個の炭素原子を含む。
それ自体または他の置換基の1部としての“アリールジイル”とは、親芳香族系の2個の異なる炭素原子の各々から1個の水素原子を除去することによって或いは親芳香族系の1個の炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される2価の炭化水素基を称する。2個の1価の基中心または2価の基中心の各原子価は、同じまたは異なる原子(1個以上)との結合を形成し得る。典型的なアリールジイル基としては、限定するものではないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレン等に由来する基がある。ある実施態様においては、アリールジイル基は、5〜20個の炭素原子を含む。他の実施態様においては、アリールジイル基は、5〜12個の炭素原子を含む。
【0011】
それ自体または他の置換基の1部としての“アリールオキシカルボニル”とは、基 C(O)OR33 (R33は、本明細書において定義しているようなアリール基を示す)を称する。
それ自体または他の置換基の1部としての“アリールスルホニルオキシ”とは、基 OS(O)2R35 (R35は、本明細書において定義しているようなアルキルまたはシクロアルキル基を示す)を称する。
それ自体または他の置換基の1部としての“シクロアルキル”とは、飽和または不飽和の環状アルキル基を称する。特定の飽和レベルを意図する場合、命名法“シクロアルカニル”または“シクロアルケニル”を使用する。典型的なシクロアルキルとしては、限定するものではないが、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン等に由来する基がある。ある実施態様においては、シクロアルキル基は、(C3〜C10)シクロアルキルである。他の実施態様においては、シクロアルキル基は、(C3〜C7)シクロアルキルである。
それ自体または他の置換基の1部としての“ヘテロアルキル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルカニル、ヘテロアルキルジイルおよびヘテロアルキレノ”とは、それぞれ、炭素原子(および任意の結合水素原子)の1個以上が、各々個々に、同じまたは異なるヘテロ原子基によって置換されているアルキル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アルキルジイルおよびアルキレノ基を称する。これらの基に含ませ得る典型的なヘテロ原子基としては、限定するものではないが、-O-、-S-、-O-O-、-S-S-、-O-S-、-NR35R36、=N-N=、-N=N-、-N=N-NR37R38、-PR39、-P(O)2-、-POR40、-O-P(O)2-、-SO-、-SO2-、-SnR41R42等があり、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41およびR42は、個々に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたは置換ヘテロアリールアルキルである。
【0012】
それ自体または他の置換基の1部としての“ヘテロアリール”とは、親ヘテロ芳香族環系の1個の原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される1価のヘテロ芳香族基を称する。典型的なヘテロアリール基としては、限定するものではないが、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテン等に由来する基がある。ある実施態様においては、ヘテロアリール基は、5〜20員のヘテロアリールである。他の実施態様においては、ヘテロアリール基は、5〜10員のヘテロアリールである。さらに他の実施態様においては、ヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾールおよびピラジンに由来する基である。
それ自体または他の置換基の1部としての“ヘテロアリールジイル”とは、親へテロ芳香族系の2個の異なる炭素原子の各々から1個の水素原子を除去することによって或いは親芳香族環系の1個の炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導される2価の基を称する。2個の1価の基中心または2価の基中心の各原子価は、同じまたは異なる原子(1個以上)との結合を形成し得る。典型的なヘテロアリールジイル基としては、限定するものではないが、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテン等に由来する基がある。ある実施態様においては、ヘテロアリールジイル基は、5〜20個の炭素原子を含む。他の実施態様においては、ヘテロアリールジイル基は、5〜12個の炭素原子を含む。
【0013】
それ自体または他の置換基の1部としての“親芳香族環系”とは、共役π電子系を有する不飽和の環状または多環式環系を称する。“親芳香族環系”の定義にとりわけ属するのは、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレン等のような1個以上の環が芳香族であり且つ1個以上の環が飽和または不飽和である縮合環系である。典型的な親芳香族環系としては、限定するものではないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ-2,4-ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレン等がある。
それ自体または他の置換基の1部としての“親へテロ芳香族環系”とは、1個以上の炭素原子(および任意の結合水素原子)の1個以上が、個々に、同じまたは異なるヘテロ原子によって置換されている親芳香族環系を称する。炭素原子を置換する典型的なヘテロ原子は、限定するものではないが、N、P、O、S、Si等である。“親へテロ芳香族環系”の定義にとりわけ属するのは、例えば、アリシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテン等のような1個以上の環が芳香族であり且つ1個以上の環が飽和または不飽和である縮合環系である。典型的な親へテロ芳香族環系としては、限定するものではないが、アルシンドール、カルバゾール、β-カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテン等がある。
【0014】
“置換された”とは、1個以上の水素原子が、個々に、同じまたは異なる置換基(1個以上)によって置換された基を称する。典型的な置換基としては、限定するものではないが、-M、-R60、-O-、=O、-OR60、-SR60、-S-、=S、-NR60R61、=NR60、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2O-、-S(O)2OH、-S(O)2R60、-OS(O2)O-、-OS(O)2R60、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(S)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR60R61、-C(O)O-、-C(S)OR60、-NR62C(O)NR60R61、-NR62C(S)NR60R61、-NR62C(NR63)NR60R61および-C(NR62)NR60R61があり、Mは、個々に、ハロゲンであり;R60、R61、R62およびR63は、個々に、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロへテロアルキル、置換シクロへテロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり、或いは、適宜、R60およびR61は、これらの基が結合している窒素原子と一緒になって、シクロへテロアルキルまたは置換シクロへテロアルキル環を形成しており;そして、R64およびR65は、個々に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロへテロアルキル、置換シクロへテロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり、或いは、適宜、R64およびR65は、これらの基が結合している窒素原子と一緒になって、シクロへテロアルキルまたは置換シクロへテロアルキル環を形成している。置換基としては、好ましくは、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-S-、=S、-NR60R61、=NR60、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-S(O)2R60、-OS(O2)O-、-OS(O)2R60、-P(O)(O-)2、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(S)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR60R61、-C(O)O-、-NR62C(O)NR60R61;より好ましくは、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-NR60R61、-CF3、-CN、-NO2、-S(O)2R60、-P(O)(OR60)(O-)、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(O)OR60、-C(O)NR60R61、-C(O)O-;最も好ましくは、-M、-R60、=O、-OR60、-SR60、-NR60R61、-CF3、-CN、-NO2、-S(O)2R60、-OP(O)(OR60)(OR61)、-C(O)R60、-C(O)OR60、-C(O)O-があり;R60、R61およびR62は、上記で定義したとおりである)。
【0015】
オルガノシラン類およびその基体
本発明は、疎水性およびイオン性の双方の機能を有する新規なシラン化合物を提供する。新規なシラン化合物の1末端においてシリル基が存在し、このシリル基は、基体に共有結合し得る。新規なシラン化合物の他の末端においては、短ヘッド鎖(例えば、(C1〜C6)アルキル)が存在する。シリル基と短ヘッド鎖は、リンカーを介して極性基に連結している。リンカーは、アルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロアルキル基であり得;一方、極性基は、アミド、カルバメート、尿素、スルホンアミド等であり得る。
1つの局面においては、下記の式(I)で示される化合物、またはその塩類、溶媒和物もしくは水和物を提供する:
【化4】

式(I)の化合物は、少なくとも1個の活性化シリル基、極性基に結合したリンカーによって連結したヘッド鎖を有する。
“活性化シリル基”とは、基体の表面と反応して該表面との共有結合を形成することのできるケイ素成分を称する。例えば、活性化シリル基は、表面Si-OH基を含むシリカ基体の表面と反応して、式(I)の化合物と基体間にシロキサン結合を形成し得る。活性化シリル基の例としては、限定するものではないが、-Si(OMe)3、-SiMe(OMe)2、-SiMe2(OMe)、-Si(OEt)3、-SiMe(OEt)2、-SiMe2(OEt)、-SiMe2NMe2および-SiCl3がある。“リンカー”とは、アルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基を称する。“極性基”とは、アミド、スルホンアミド、カルバメート、尿素、エステル等を称する。式(I)の化合物のリンカーは、活性化シリル基と極性基間のスペーサーとして作用する。
【0016】
ある実施態様においては、下記の構造式(II)を有する化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を提供する:
【化5】

(式中、R1、R2およびR3は、個々に、適宜1個以上のR14基によって置換されたアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、アミノ、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールスルホニルオキシ、ハロまたはヒドロキシルであるが、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、アルキル、アリールまたはヒドロキシルでないことを条件とし;
L1は、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アリールジイルまたはヘテロアリールジイルであり;
Yは、-C(O)N(R4)(R5)、-N(R4)C(O)R7、-N(R4)S(O2)R7、-S(O2)N(R4)(R5)、-OC(O)R7、-OC(O)N(R4)(R5)、-N(R4)C(O)OR7、-N(R4)C(O)N(R5)(R6)または-N(R4)S(O2)N(R5)(R6)であり;そして、
R4、R5およびR6は、個々に、水素、適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C1〜C6)アルキル、または適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C5〜C7)アリールであり;
R7は、適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C1〜C6)アルキル、または適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C5〜C7)アリールであり;そして、
R14は、(C1〜C6)アルキルであり;
R4、R5およびR6の1つは、水素でないことを条件とする)。
【0017】
ある実施態様においては、R1、R2およびR3は、個々に、アルキル、アルコキシまたはハロである。他の実施態様においては、R1、R2およびR3は、アルコキシである。さらに他の実施態様においては、R1、R2およびR3は、アルキルまたはアルコキシである。さらに他の実施態様においては、R1、R2およびR3は、エトキシまたはメチルである。
ある実施態様においては、L1は、アルキルジイルである。他の実施態様においては、L1は、アルカニルジイルである。さらに他の実施態様においては、L1は、アルキレノである。さらに他の実施態様においては、L1は、(C6〜C20)アルカニレノである。さらに他の実施態様においては、L1は、(C8〜C15)アルカニレノである。さらに他の実施態様においては、L1は、(C10〜C11)アルカニレノである。
ある実施態様においては、R4、R5およびR6は、個々に、水素、アルキルまたはアリールである。他の実施態様においては、R4、R5およびR6は、個々に、アルキルまたはアリールである。さらに他の実施態様においては、R4、R5およびR6は、個々に、メチルまたはフェニルである。さらに他の実施態様においては、R4、R5およびR6は、メチルである。
ある実施態様においては、R1、R2およびR3は、個々に、アルキル、アルコキシまたはハロであり;L1は、アルカニルジイルであり;そして、R4、R5およびR6は、個々に、水素、アルキルまたはアリールである。他の実施態様においては、R1、R2およびR3は、アルキルまたはアルコキシであり;L1は、(C8〜C15)アルカニレノであり;そして、R4、R5およびR6は、個々に、アルキルまたはアリールである。さらに他の実施態様においては、R1、R2およびR3は、エトキシまたはメチルであり;L1は、(C10〜C11)アルカニレノであり;そして、R4、R5およびR6は、個々に、メチルまたはフェニルである。
ある実施態様においては、R4、R5およびR6は、メチルである。他の実施態様においては、R5は、フェニルである。
【0018】
ある実施態様においては、式(II)の化合物は、下記の構造を有する:
【化6】

【0019】
本明細書において説明する化合物の合成方法の例は、下記の方式1〜4に提示している。本明細書において説明する化合物の調製において有用な出発物質は、商業的に入手し得るか、或いは周知の合成方法により調製し得る。本明細書において説明する化合物の他の合成方法は、当業者にとっては容易に明らかであろう。従って、本明細書における方式1〜4において提示する方法は、包括的と言うよりはむしろ例示である。
さて、図1に関しては、10-ウンデセノイルクロライド10をジメチルアミン11と反応させてアミド12を得ている。その後、アミド12を、パラジウム触媒の存在下に、シラン13によってヒドロシリル化して化合物1を得ている。
図2に関しては、ウンデシレンアルデヒド14のイミンをメチルアミン15で処理して形成させる。イミン16を水素化ホウ素ナトリウム17で還元してアミン18を得、これを、パラジウム触媒の存在下に、シラン13によりヒドロシリル化してモノメチル化アミン19を得る。アミン19を、塩化アセチル20、ベンゼンスルホニルクロライド21、エチルクロロホルメート22、N,N-ジメチルカルバミルクロライド23またはN,N-ジメチルスルファモイルクロライド24と反応させて、それぞれ、ケイ素化合物3、4、5、6および7を得ることができる。
図3に関しては、10-ウンデセン-1-オール25を、パラジウム触媒の存在下に、シラン13によってヒドロシリル化してシリルアルコール26を得る。シリルアルコール26を塩化アセチル20またはN,N-ジメチルカルバミルクロライド23によりアシル化して、それぞれ、ケイ素化合物8および9を得る。
図4に関しては、臭化物37をジメチルアミン11により置換してアミン38を得、その後、これを、パラジウム触媒の存在下に、シランでヒドロシリル化してシリルアミン39を得る。化合物39は、混合方式のクロマトグラフィー支持体のイオン化可能成分として使用し得る。
【0020】
当業者であれば、上記で開示した合成方法を、出発アミン、塩化アシルまたはハロゲン化アルキルを変えることにより、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロアルキルリンカーを含むシラン類を製造するように容易に適応化し得ることは認識しているであろう。さらに、上記の転換(またはその等価法)を達成するための種々の方法が、当業者にとって既知であり、有機合成のあらゆる概論において見出し得る(例えば、Harrison et al., "Compendium of Synthetic Organic Methods", VoIs. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996);"Beilstein Handbook of Organic Chemistry", Beilstein Institute of Organic Chemistry, Frankfurt, Germany; Feiser et al. , "Reagents for Organic Synthesis," Volumes 1-17, Wiley Interscience; Trost et al, "Comprehensive Organic Synthesis," Pergamon Press, 1991;"Theilheimer's Synthetic Methods of Organic Chemistry" , Volumes 1-45, Karger, 1991;March, "Advanced Organic Chemistry," Wiley Interscience, 1991;Larock "Comprehensive Organic Transformations", VCH Publishers, 1989;およびPaquette, “Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis”, John Wiley & Sons, 1995を参照されたい)。
上記で開示した化合物は、基体と反応させて官能化基体を形成させることができ、この基体は、広範囲の種々の用途において使用し得る。上記で開示した化合物は、1つの分子構造体中に疎水性および極性部位の双方を取込んでおり、基体表面との反応において再現性のある表面化学性を有する。
【0021】
ある実施態様においては、構造式(II)の化合物を基体に共有結合させる。他の実施態様においては、構造式(II)の化合物を、R1、R2およびR3基の1個以上を、例えば、シラノール、アルコキシシラン、ハロシランまたはアミノシランのような基体上の反応基と反応させることにより、基体に共有結合させる。
ある実施態様においては、構造式(II)の化合物を、構造式(II)のもう1つの化合物に、該他の化合物上のシラノール、アルコキシシランまたはハロシランからなる群から選ばれる反応基との反応により、SiR1(R2)(R3)基を介して共有結合させる。この実施態様においては、上記2つの化合物は、双方とも基体に共有結合させる。
ある実施態様においては、下記の構造式(III)の組成物を提供する:
【化7】

(式中、R1、R3、LおよびYは、上記で定義したとおりである)。
【0022】
他の実施態様においては、下記の構造を有する組成物を提供する:
【化8】

【0023】
さらに他の実施態様においては、基体に共有結合した構造式(II)の少なくとも1種の化合物および下記の構造式(IV)の少なくとも1種の化合物の組成物を提供する:
【化9】

(式中、R8、R9およびR10は、個々に、適宜1個以上の同じまたは異なるR15基によって置換されたアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、アミノ アリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールスルホニルオキシ、ハロまたはヒドロキシルであるが、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、アルキル、アリールまたはヒドロキシルでないことを条件とし;
R15は、(C1〜C6)アルキルであり;
L2は、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アリールジイルまたはヘテロアリールジイルであり;そして、
Wは、イオン化可能な基である)。
【0024】
他の実施態様においては、下記の構造式の組成物(V)を提供する:
【化10】

(式中、R1、R3、L1、L2、YおよびWは、上記で定義したとおりである)。
ある実施態様においては、R8、R9およびR10は、個々に、アルキル、アルコキシまたはハロである。他の実施態様においては、R8、R9およびR10は、アルコキシである。さらに他の実施態様においては、R8、R9およびR10は、アルキルまたはアルコキシである。さらに他の実施態様においては、R8、R9およびR10は、エトキシまたはメチルである。
ある実施態様においては、L1は、アルキルジイルである。他の実施態様においては、L2は、アルカニルジイルである。さらに他の実施態様においては、L2は、アルキレノである。さらに他の実施態様においては、L2は、(C6〜C20)アルカニレノである。さらに他の実施態様においては、L2は、(C8〜C15)アルカニレノである。さらに他の実施態様においては、L2は、(C10〜C11)アルカニレノである。
ある実施態様においては、Wは、-CO2-、-SO3-、-P(O)(OR11)O-、-NR11R12または-N+R11R12R13であり;R11、R12およびR13は、個々に、水素または(C1〜C6)アルキルである。他の実施態様においては、Wは、-NR11R12または-N+R11R12R13であり;R11、R12およびR13は、メチルである。
【0025】
ある実施態様においては、R1、R2、R3、R8、R9およびR10は、個々に、アルキル、アルコキシまたはハロであり;L1およびL2は、アルキルジイルであり;R4、R5およびR6は、個々に、水素、アルキルまたはアリールであり;Wは、-NR11R12または-N+R11R12R13であり;R11、R12およびR13は、個々に、(C1〜C6)アルキルである。
ある実施態様においては、R1、R2、R3、R8、R9およびR10は、アルキルまたはアルコキシであり;L1およびL2は、(C8〜C15)アルカニレノであり;R4、R5およびR6は、個々に、アルキルまたはアリールであり;Wは、-NR11R12または-N+R11R12R13であり;R11、R12およびR13は、個々に、(C1〜C6)アルキルである。他の実施態様においては、R1、R2、R3、R8、R9およびR10は、エトキシまたはメチルであり;L1およびL2は、(C10〜C11)アルカニレノであり;R4、R5およびR6は、個々に、メチルまたはフェニルであり;Wは、-NR11R12または-N+R11R12R13であり;R11、R12およびR13は、メチルである。さらに特定の実施態様においては、R4、R5およびR6は、メチルである。もう1つのさらに特定の実施態様においては、R5は、フェニルである。
【0026】
ある実施態様においては、式(II)の化合物と式(IV)の化合物を、R1、R2およびR3の1個以上とR8、R9およびR10の1個以上をシラノール、アルコキシシラン、ハロシランまたはアミノシランからなる群から選ばれる基体上の反応基と反応させることにより、基体に共有結合させる。他の実施態様においては、R2およびR9は、-OEtである。さらに他の実施態様においては、式(II)の化合物が、下記:
【化11】

であり;式(IV)の化合物が、下記:
【化12】

である組成物を提供する。
さらに他の実施態様においては、下記の構造を有する組成物を提供する:
【化13】

【0027】
ある実施態様においては、式(I)および(II)の各化合物を、上記で示すようにして、基体に共有結合させる。これらの実施態様においては、極性基を基体の表面から処理し、それによって官能化基体の加水分解安定性を改良し得る。式(I)および(II)の各化合物を基体(例えば、シリカ)に結合させて、界面活性剤の逆相分離のような種々のクロマトグラフィー分離用の官能化静置相を得ることができる。さらに、式(I)および(II)の各化合物は、基体と反応させる前に、1個以上のイオン交換官能基を含有するシリルリガンド(例えば、式(IV)の化合物)と混合して、種々の選択性を有する混合形式の基体を得ることができ、この基体も界面活性剤の逆相分離において使用し得る。
式(I)、(II)および(IV)の各化合物は、上記Si官能基のR1、R2またはR3をシラノール、アルコキシシラン、ハロシランまたはアミノシラン成分からなる群から選ばれる基体上の反応基と反応させることにより、基体に共有結合させ得る。ある実施態様においては、基体に共有結合させた式(I)、(II)および(IV)の各化合物は、式(I)、(II)および(IV)の1種以上の化合物に、式(I)、(II)および(IV)の他の化合物上のシラノール、アルコキシシランまたはハロシランからなる群から選ばれる反応基と反応させることによって架橋させ得る。
式(I)、(II)および(IV)の各化合物は、種々の基体に共有結合させ得る。基体の例としては、式(I)、(II)および(IV)の各化合物中の活性化シリル基と反応し得る官能基を有する材料がある。即ち、式(I)、(II)および(IV)の各化合物は、例えば、ガラス表面のようなシリカ系材料、または他の酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウム系材料の表面;さらにまた、活性化シリル基と反応するための適切な官能基を含有する種々の炭化材料、金属類、架橋および非架橋ポリマーの表面に結合させ得る。適切な官能基の例としては、シラノール、アルコキシシラン、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム等がある。また、式(I)、(II)および(IV)の各化合物は、反応性ケイ素官能基を使用することにより、高分子またはゾル-ゲルネットワーク中に取込ませ得る。ラジカルおよび/またはイオンラジカルおよび/またはイオンに転化し得る重合性の単数または複数の基を含有する式(I)、(II)および(IV)の各化合物は、それらの基および/または反応性ケイ素官能基を使用することにより、高分子材料の製造および表面グラフト化において使用し得る。得られる材料は、吸着剤、膜、フィルター、マイクロ流体装置、マイクロチップ並びに各種タイプの分離、検出および分析用の官能化表面の開発において応用し得る。
【0028】
ある実施態様においては、単層および多層型表面を、シリカ基体を式(I)、(II)および/または(IV)の化合物で処理することによって製造する。式(I)、(II)および/または(IV)の化合物は、シリカゲル、ジルコニア、ハイブリッドゾル-ゲル/ポリマーまたはガラスプレートのような各種基体に共有結合させ得る。適切なシリカゲルは、好ましくは20Å〜3000Å、より好ましくは60Å〜3000Åの種々の孔サイズおよび好ましくは0.2μm〜1000μm、より好ましくは2μm〜50μmの種々の粒度を有する非多孔質および多孔質シリカ粒子を含む。結合反応は、トルエンのような不活性溶媒中のシリカゲルのスラリー中で昇温下に実施し得る。水、酸または塩基触媒を使用し、分離媒体において所望される性質のタイプに応じて、表面被覆率を向上させ得る。
また、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンのようなアミノシラン化合物を使用して、反応性アミノ基を表面上に取込ませることにより、誘導体していないシリカゲルを改変させることもできる。その場合、適切な官能基を含有する、塩化アシル、塩化カルバミル、塩化スルホニルまたはイソシアネートのような試薬を上記アミノ化シリカゲルと反応させて相応する結合相を形成させ得る。
本明細書において説明する組成物は、クロマトグラフィーカラム用の充填物として使用し得る。該充填物は、クロマトグラフィーカラム用に適するハウジング内に装填する粒子、モノリス(即ち、孔を含む物質)または充填床樹脂であり得る。
また、1つの基体に共有結合した構造式(I)の化合物ともう1つの基体に結合した構造式(IV)の化合物の充填物も提供する。ある実施態様においては、基体は、シリカ基体である。
本明細書において説明する組成物は、種々の化合物を分解するのに使用し得る。一般に、本明細書において説明する組成物は、界面活性剤を分離するのに使用し得る。また、本明細書において説明する組成物は、ある状況においては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤および中性界面活性剤を含む混合物を1回のクロマトグラフィー操作において分解するのに使用し得る。
本発明は、優れた加水分解安定性を有する種々の新規な固形支持体を製造する簡単で且つ多目的の方法を提供する。上記の合成方法は、基体、とりわけシリカ基体の表面上への種々の官能性の効率な取込みを可能にする。得られる材料は、吸着剤、膜、フィルター、マイクロ流体装置、マイクロチップ並びに各種タイプの分離、検出および分析用の官能化表面の開発において応用し得る。
【0029】
(実施例)
以下の実施例は、例示としてのみ提示するものであり、限定するものではない。当業者であれば、本質的に同様な結果を得るために変更または改変し得る種々の非臨界的なパラメーターは、容易に認識していることであろう。
化合物1の調製
ジメチルアミンを無水CH2Cl2中の過剰のトリエチルアミン(2.0当量)と混合し、約0℃〜約5℃で20分間保った。その後、CH2Cl2中の10-ウンデセノイルクロライド(1.0当量)の溶液を滴下により添加し、混合物を周囲温度で12時間撹拌した。反応混合物を水洗し、Na2SO4上で乾燥させ、溶媒を真空中で除去して10-ウンデセン酸のジメチルアミドを得た。過剰のジメチルエトキシシラン(10当量)を上記アミンに添加し、次いで、触媒溶液(0.1モル%) (例えば、最少量のエタノール中のヘキサクロロ白金酸)を添加した。50℃で24時間撹拌した後、シランと溶媒を真空中で除去して化合物1を得た。
【0030】
実施例2:化合物3、4、5、6および7の調製
無水メタノール中の10-ウンデシレンアルデヒド(1当量)の溶液に、無水メタノール中の過剰のメチルアミン(3当量)を添加した。周囲温度で6時間後、反応混合物を濾過し、次いで、真空濃縮してイミン16を得た。
その後、イミン16を、メタノール中の水素化ホウ素ナトリウムにより周囲温度で24時間還元した。全ての揮発物を真空中で除去した後、アミン18を、残留物をEt2OとH2O間に分配し、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で濃縮することによって得た。
その後、過剰のジメチルエトキシシラン(10当量)を化合物18に添加し、次いで、触媒溶液(0.1モル%) (例えば、最少量のエタノール中のヘキサクロロ白金酸)を添加した。50℃で24時間撹拌した後、シランと溶媒を真空中で除去してシリル化合物19を得た。
化合物19を無水CH2Cl2中の過剰のトリエチルアミン(2.0当量)と混合し、約0℃〜約5℃で20分間保った。その後、無水CH2Cl2中の塩化アセチル(1.2当量)の溶液を滴下により添加し、混合物を周囲温度で12時間撹拌した。全ての揮発分を真空中で除去し、ヘキサンを添加してトリエチルアンモニウムクロライド塩を沈降させた。化合物3を、濾過および真空中での溶媒の除去後に得た。
同様に、化合物4、5、6および7は、それぞれ、化合物19を塩化スルホニル、エチルクロロホルメート、N,N-ジメチルカルバミルクロライドおよびN,N-ジメチルスルファモイルクロライドと反応させることよって調製し得る。
【0031】
実施例3:化合物8および9の調製
過剰のジメチルエトキシシラン(10当量)を10-ウンデセン-1-オール(25)に添加し、次いで、触媒溶液(0.1モル%) (例えば、最少量のエタノール中のヘキサクロロ白金酸)を添加した。50℃で24時間撹拌した後、シランと溶媒を真空中で除去してシリル化合物26を得た。
化合物26を無水CH2Cl2中の過剰のトリエチルアミン(2.0当量)と混合し、約0℃〜約5℃で20分間保った。その後、無水CH2Cl2中の塩化アセチル(1.2当量)の溶液を滴下により添加し、混合物を周囲温度で12時間撹拌した。全ての揮発分を真空中で除去し、ヘキサンを添加してトリエチルアンモニウムクロライド塩を沈降させた。化合物8を、濾過および真空中での濃縮後に得た。
同様に、化合物9は、化合物26をN,N-ジメチルカルバミルクロライドと反応させることによって調製し得る。
【0032】
実施例4:化合物39の調製
THF中の11-ブロモ-1-ウンデセンの5℃溶液を、THF中ジメチルアミン(10当量)の溶液に滴下により添加し、周囲温度で12時間撹拌した。揮発分を真空中で除去し、残留物をCH2Cl2とH2O間に分配し、Na2SO4上で乾燥させ、真空中で溶媒を除去して38を得た。
過剰のジメチルエトキシシラン(10当量)を化合物38に添加し、次いで、触媒溶液(0.1モル%) (例えば、最少量のエタノール中のヘキサクロロ白金酸)を添加した。50℃で24時間撹拌した後、シランと溶媒を真空中で除去してシリル化合物39を得た。
【0033】
実施例5:組成物27、28、29、30、31、32、33、34および35の合成
不活性溶媒(例えば、昇温下のトルエン)中の化合物27、28、29、30、31、32、33、34または35を、以下の物理的性質を有する選定した原料シリカゲルのスラリーと反応させた:平均粒度、5.0μm;比表面積、300m2/g;平均孔サイズ、120Å;孔容積、1.00mL/g。水、酸または塩基触媒の添加を利用して表面積被覆率を制御することができる。一定時間(3時間〜6日間)後、反応スラリーを濾過し、アセトンで洗浄し、50℃の真空炉内で5時間乾燥させた。また、トリアルキルシリルクロライドのような適切なエンドキャップ用試薬も、クロマトグラフィー分離用の充填材料を製造するには必要とし得る。
【0034】
実施例6:組成物36の合成
化合物27および39を、適切な比率で、昇温下のトルエンのような不活性溶媒中で混合した。その後、実施例6において述べた特性を有する原料シリカを上記混合物に添加して反応スラリーを調製し、このスラリーを昇温下に3日間保った。反応スラリーを濾過し、アセトンで洗浄し、50℃の真空炉内で5時間乾燥させて組成物36の官能化シリカを得た。また、トリアルキルシリルクロライドのような適切なエンドキャップ用試薬も、逆相クロマトグラフィー分離用の充填材料を製造するには必要とし得る。
【0035】
実施例7:極性試験
4.6×150mmステンレススチール管中に伝統的な高圧スラリー法を使用して充填した組成物27上での、ウラシル、p-ブチル安息香酸およびフェナントレンを含有する試験混合物のHPLCクロマトグラフィーにより、図1に示す結果が得られた。混合物(約5μLの注入容量)は、CH3CN/25mMリン酸緩衝液(約pH 3.2)により、約30℃にて約1mL/分の流量で溶出させ、210nmで検出した。比較として、同じカラム寸法を有し、同じシリカ基体を使用して製造したC8カラムも、試験混合物のクロマトグラフィーにおいて使用した。
図1は、中性化合物フェナントレンに対する極性化合物p-ブチル安息香酸の相対的保持力が、C8カラムの方が低炭素含有量を有するという事実にもかかわらず、C8カラム上での相対的保持力よりも組成物27上で高いことから、組成物27の高極性を例証している。極性の増強は、シリカ表面から除去された最も遠いリガンド末端での極性基の置換に基づき得る。
【0036】
実施例8:カチオン性、ノニオン性およびアニオン性界面活性剤の分離
4.6×150mmステンレススチール管中に伝統的な高圧スラリー法を使用して充填した組成物36上での、2種のカチオン性界面活性剤(ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドおよびオクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)、4種のアニオン性界面活性剤(キシレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホン酸ドデシルベンゼン、硫酸デシルおよび硫酸ドデシル)および1種のノニオン性界面活性剤(Triton X-100)を含む7種類の一般的界面活性剤を含有する試験混合物のHPLCクロマトグラフィーにより、図6に示す結果が得られた。試験混合物(約25μLの注入容量)は、CH3CN (A)と約pH 5.8の0.1M NH4OAc (B)との移動相により、勾配法(30分内の25%から85%Aへ、次いで、85%Aでさらに10分間保持)を使用して、約30℃にて約1mL/分の流量で溶出させ、蒸発光散乱検出法(ELS)により検出した。
【0037】
実施例9:クロマトグラフ比較:エトキシ化界面活性剤の分析
図7に示すように、組成物36を充填したカラムを、同じカラム寸法(5μm、4.6×150mmステンレススチール管中)の通常のC18カラムと、エトキシ化ノニオン性界面活性剤Triton X-100の分析において比較した。サンプル(約10μLの注入容量)は、CH3CNおよび約pH 5.4の0.1M NH4OAc (定組成移動相)により、約30℃にて約1mL/分の流量で溶出させ、225nmでUVにより検出した。
【0038】
実施例10:クロマトグラフ比較:選択性
4.6×150mmステンレススチール管中に伝統的な高圧スラリー法を使用して充填した組成物36上での、4種のアニオン性界面活性剤(キシレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホン酸ドデシルベンゼン、硫酸デシルおよび硫酸ドデシル)および1種のノニオン性界面活性剤(Triton X-100)を含む5種類の一般的界面活性剤を含有する試験混合物のHPLCクロマトグラフィーにより、図8に示す結果が得られた。試験混合物(約25μLの注入容量)は、CH3CN (A)と約pH 5.8の0.1M NH4OAc (B)との移動相により、勾配法(30分内の25%から85%Aへ、次いで、85%Aでさらに10分間保持)を使用して、約30℃にて約1mL/分の流量で溶出させ、蒸発光散乱検出器により検出した。比較として、同じ試験混合物を、同じカラム寸法を有するC18カラム上でもクロマトグラフィー処理した。
【0039】
実施例11:クロマトグラフ比較:カチオン性活性剤の分析
図9に示すように、組成物36を充填したカラムを、同じカラム寸法(5μm、4.6×150mmステンレススチール管中)の通常のC18カラムと、カチオン性界面活性剤ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの分析において比較した。サンプル(約5μLの注入容量)は、CH3CNおよびpH 5.4の0.1M NH4OAc (定組成移動相)により、約30℃にて約1mL/分の流量で溶出させ、ELSにより検出した。組成物36を充填したカラムは、C18カラムを上回る優れたピーク形状を示している。
【0040】
実施例12:クロマトグラフ比較:キシレンスルホン酸ナトリウムの分析
図10に示すように、組成物36を充填したカラムを、同じカラム寸法(5μm、4.6×150mmステンレススチール管中)の通常のC18カラムと、高親水性界面活性剤キシレンスルホン酸ナトリウムの分析において比較した。サンプル(約5μLの注入容量)は、CH3CN/0.1M NH4OAc (約pH 5.4) v/v 30/70 (定組成移動相)により、約30℃にて約1mL/分の流量で溶出させ、約225nmでUVにより検出した。組成物36を充填したカラムは、異性体間で、適正な保持時間でもって優れた分解能を示している。
【0041】
本発明を、理解を明確にする目的の説明図および実施例により、かなり詳細に説明してきたが、当業者にとっては、本発明の教示に照らして、ある種の変更および修正を、特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対してなし得ることは、容易に明白であろう。
本明細書において引用した全ての刊行物および特許文献は、その全体を参考として本明細書に合体させる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】式(II)のアミドの合成を例示する。
【図2】式(II)のアミン誘導体の合成を例示する。
【図3】式(II)のアルコール誘導体の合成を例示する。
【図4】式(IV)の化合物の合成を例示する。
【図5】C8カラムおよび組成物27を充填したカラムによるウラシル、p-ブチル安息香酸およびフェナンスレンの分離を例示する。
【図6】組成物36を充填したカラムによる多種の界面活性剤の分離を例示する。
【図7】通常のC18カラムおよび組成物36を充填したカラムによるTriton X-100の分離を例示する。
【図8】通常のC18カラムおよび組成物36を充填したカラムによる多種の界面活性剤の分離を例示する。
【図9】通常のC18カラムおよび組成物36を充填したカラムによるラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの分離を例示する。
【図10】通常のC18カラムおよび組成物36を充填したカラムによるキシレンスルホン酸ナトリウムの分離を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式(II)を有する化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物:
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は、個々に、適宜1個以上のR14基によって置換されたアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、アミノ、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールスルホニルオキシ、ハロまたはヒドロキシルであるが、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、アルキル、アリールまたはヒドロキシルでないことを条件とし;
L1は、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アリールジイルまたはヘテロアリールジイルであり;
Yは、-C(O)N(R4)(R5)、-N(R4)C(O)R7、-N(R4)S(O2)R7、-S(O2)N(R4)(R5)、-OC(O)R7、-OC(O)N(R4)(R5)、-N(R4)C(O)OR7、-N(R4)C(O)N(R5)(R6)または-N(R4)S(O2)N(R5)(R6)であり;そして、
R4、R5およびR6は、個々に、水素、適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C1〜C6)アルキル、または適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C5〜C7)アリールであり;
R7は、適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C1〜C6)アルキル、または適宜1個以上のヒドロキシもしくはシアノ基によって置換された(C5〜C7)アリールであり;そして、
R14は、(C1〜C6)アルキルであり;
R4、R5およびR6の1つは、水素でないことを条件とする)。
【請求項2】
下記の構造を有する、請求項1記載の化合物:
【化2】

【請求項3】
基体に共有結合した請求項1記載の化合物を含む組成物。
【請求項4】
前記化合物が、前記基体に、R1、R2およびR3の1個以上と前記基体上のシラノール、アルコキシシラン、ハロシランまたはアミノシランからなる群から選ばれた反応基との反応によって共有結合している、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
-SiR1(R2)(R3)が、請求項1記載のもう1つの化合物に、該他の化合物上のシラノール、アルコキシシランまたはハロシランからなる群から選ばれた反応基との反応によって共有結合している、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
下記の構造式(III)を有する請求項3記載の組成物:
【化3】

(式中、R1、R3、LおよびYは、請求項1において定義したとおりである)。
【請求項7】
下記の構造を有する、請求項3記載の組成物:
【化4】

【請求項8】
基体に共有結合した請求項1記載の化合物および該基体に共有結合した下記の構造式(IV)の化合物を含む組成物:
【化5】

(式中、R8、R9およびR10は、個々に、適宜1個以上の同じまたは異なるR15基によって置換されたアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、アミノアリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールスルホニルオキシ、ハロまたはヒドロキシルであるが、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、アルキル、アリールまたはヒドロキシルでないことを条件とし;
R15は、(C1〜C6)アルキルであり;
L2は、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アリールジイルまたはヘテロアリールジイルであり;そして、
Wは、イオン化可能な基である)。
【請求項9】
下記の構造式(V)を有する請求項8記載の組成物:
【化6】

【請求項10】
下記の構造を有する請求項8記載の組成物:
【化7】

【請求項11】
前記基体が、シリカ基体である、請求項3または請求項8記載の組成物。
【請求項12】
前記シリカ基体が、シリカゲルである、請求項3または請求項8記載の組成物。
【請求項13】
前記基体が、ガラス、ゾル-ゲルポリマーまたはハイブリッドゾル-ゲルポリマーである、請求項3または請求項8記載の組成物。
【請求項14】
逆相クロマトグラフィー媒体中での使用に適する、フロースルー床内の請求項3または請求項8記載の組成物。
【請求項15】
マルチモードクロマトグラフィー媒体中での使用に適する、フロースルー床内の請求項3または請求項8記載の組成物。
【請求項16】
水性液体を、請求項3または請求項8記載の組成物を含む分離媒体の床に流入させることを特徴とする、クロマトグラフィー法。
【請求項17】
液体サンプルを、請求項3または請求項8記載の組成物を含む分離媒体に流入させることを特徴とする、液体サンプル中の分析物のクロマトグラフィー分離方法。
【請求項18】
液体サンプルを、請求項3または請求項8記載の組成物を含む媒体に流入させることを特徴とする、カチオン性、中性およびアニオン性界面活性剤の同時分析方法。
【請求項19】
適切なハウジング内に充填した請求項3または請求項8記載の組成物を含む、クロマトグラフィーカラム。
【請求項20】
第1基体に共有結合した請求項1記載の化合物および第2基体に結合した下記の構造式(IV)の化合物を含む充填物:
【化8】

(式中、R8、R9およびR10は、個々に、適宜1個以上の同じまたは異なるR13基によって置換されたアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニルオキシ、アミノアリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールスルホニルオキシ、ハロまたはヒドロキシルであるが、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、アルキル、アリールまたはヒドロキシルでないことを条件とし;
R13は、(C1〜C6)アルキルであり;
L2は、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アリールジイルまたはヘテロアリールジイルであり;そして、
Wは、イオン化可能な基である)。
【請求項21】
前記第1基体および第2基体が、シリカ基体である、請求項19記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−530209(P2008−530209A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556219(P2007−556219)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/004882
【国際公開番号】WO2006/088760
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】