説明

新規なホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体

【課題】α位にアルキル基等が置換したホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物、その製造方法、製造に有用な中間体、中間体の製造方法及びα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体を用いた複合膜の提供。
【解決手段】一般式(1)
【化1】


(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物。
【効果】本発明化合物は触媒分子として有用で、疎水性が高く、かつ一分子式量当たり2つのスルホン酸基を有していることから該基の示す高いイオン交換能に基づく各種の電気的特性を発揮できる。特に疎水性を要求されるような固体電解質に適用可能であり、適当な膜との膜複合体とすることによる更に性能の改良された固体電解質膜の製造への適用性をも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物、その製造方法、該α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体の製造に有用な中間体化合物、中間体化合物の製造方法及びα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体を用いた複合膜に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、α位が置換されていないホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムは、触媒として使用し得るものとして既に知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、α位が置換されたホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体(以下、「α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体」と記載する。)は一切知られていない。
【0003】
【非特許文献1】「触媒」,第37巻,623−629頁(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来知られていない、新規なα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体、特にα位にアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基が置換したホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物、その製造方法、該α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体の製造に有用な中間体化合物、中間体化合物の製造方法及びα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体を用いた複合膜を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記〔1〕乃至〔8〕の発明を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【0006】
〔1〕一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
【0009】
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物。
【0010】
〔2〕一般式(2)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
【0013】
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体の水溶液と、四価のジルコニウム塩を混合することを特徴とする、一般式(1)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
【0016】
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物の製造方法。
【0017】
〔3〕一般式(3)
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示す。)
【0020】
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体。
【0021】
〔4〕一般式(4)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示し、R、Rはアルキル基、又はアラルキル基を示し、RとRは同じでも異なっていてもよい。)
【0024】
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体。
【0025】
〔5〕一般式(5)
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、R、Rはアルキル基、又はアラルキル基を示し、RとRは同じでも異なっていてもよい)
【0028】
で表されるホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体と、一般式(6)
【0029】
【化7】

【0030】
(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基、Xはハロゲン原子、−OSOCH基、又は−OSOCF基を示す。)
【0031】
で表される化合物を、塩基存在下で反応させて、一般式(4)
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示し、R、Rはアルキル基、又はアラルキル基を示し、RとRは同じでも異なっていてもよい。)
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体とした後、このα−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体を加水分解することを特徴とする、一般式(3)
【0034】
【化9】

【0035】
(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示す。)
【0036】
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体の製造方法。
【0037】
〔6〕〔1〕項に記載のα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体とイオン伝導性を有する高分子化合物からなるプロトン伝導性組成物。
【0038】
〔7〕〔6〕項に記載のプロトン伝導性組成物からなることを特徴とするプロトン伝導性膜。
【0039】
〔8〕イオン伝導性を有する高分子化合物を含む溶液中で、一般式(3)
【0040】
【化10】

【0041】
(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示す。)
【0042】
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体と4価のジルコニウム塩化合物から一般式(1)
【0043】
【化11】

【0044】
(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
【0045】
で表されるホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物を形成させることを特徴とする複合化プロトン伝導性組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0046】
本発明により、新規なα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体、その製造方法、該α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体の製造に有用な中間体化合物、中間体化合物の製造方法及び該α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体を用いた複合膜が提供される。
【0047】
本発明のα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物は、ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムと同様に使用可能な新規の触媒分子として有用であるばかりでなく、分子中のスルホン酸基のα位に、アルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基のような疎水基が導入されている化合物であるため、ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムよりも疎水性の高められた分子となっており、かつ一分子式量当たり2つのスルホン酸基を含有していることから、スルホン酸基の示す高いイオン交換能に基づく各種の電気的特性を発揮することができ、例えばプロトン伝導性物質、特に疎水性を要求されるような固体電解質に適用可能な化合物であるばかりでなく、適当な膜との膜複合体とすることによる更に性能の改良された固体電解質膜の製造への適用性をも有する。従って、本発明のホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物は産業上きわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明に係るα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体(本発明〔1〕に相当する。)、およびその製造方法(本発明〔2〕に相当する。)について具体的に説明する。
【0049】
(α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物(本発明〔1〕に相当する。))
【0050】
本発明に係るα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0051】
【化12】

【0052】
一般式(1)中、Rは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ノニル基、n−ドデシル基、n−テトラコサニル基等の、炭素数1〜24(以下、置換基の炭素数については、例えば炭素数1〜24の場合には、これを「C1−C24」のように略記する。)の直鎖又は分岐C1−C24アルキル基;例えばジフロロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジヨードメチル基、トリフルオロメチル基、
ペンタフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、イソヘプタフルオロプロピル基、n−ノナフルオロブチル基、sec−ノナフルオロブチル基、t−ノナフルオロブチル基、1H,1H,2H,2H−n−パーフルオロブチル基(別称:3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基)、n−パーフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H−n−パーフルオロヘキシル基(別称:3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基)、n−パーフルオロドデシル基等の、置換基としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を包含するハロゲン原子(以下、単に「ハロゲン原子」と記載することがある。)を1以上有している、直鎖又は分岐C1−C24ハロアルキル基(すなわちハロゲン原子が1以上置換しているC1−C24アルキル基);ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、ナフチルメチル基、アンスラニルメチル基等の、アルキル基部分が例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖又は分岐C1−C6アルキル基であり、アリール基(芳香族炭化水素基)部分が例えばフェニル基(以下、「Ph」と略記することがある。)、ナフチル基、アンスラニル基等の、単環又は縮合環アリール基である、C1−C24アラルキル基を示す。
【0053】
上記一般式(1)で表される本発明に係るホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体としては、例えば、α−メチルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(CH)SOH)〕、α−エチルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(C)SOH)、α−(n−プロピル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n−C)SOH)〕、α−イソプロピルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(i−C)SOH)〕、α−(n−ブチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n−C)SOH)〕、α−(sec−ブチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(s−C)SOH)〕、α−(tert−ブチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(t−C)SOH)〕、α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n−C13)SOH)〕、α−(n−ノニル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n−C19)SOH)〕、α−(n−ドデシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n−C1225)SOH)〕、α−(n−テトラコサニル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n-C2449)SOH)〕、α−トリフルオロメチルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(CF)SOH)〕、α−ペンタフルオロエチルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(C)SOH)〕、α−(n−ヘプタフルオロエチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n-C)SOH)〕、α−(i−ヘプタフルオロエチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(i-C)SOH)〕、α−(n−ノナフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n-C)SOH)〕、α−(i−ノナフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(i−C)SOH)〕、α−(t−ノナフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(t−C)SOH)〕、α−(1H,1H,2H,2H−n−パーフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム(別称:α−(3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム)〔Zr(OPCH(CHCHCFCF)SOH)〕、α−(n−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n−C13)SOH)〕、α−(1H,1H,2H,2H−n−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム(別称:α−(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム)〔Zr(OPCH(CHCHCFCFCFCF)SOH)〕、α−(n−パーフルオロドデシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(n−C1225)SOH)〕、α−ベンジルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(CHPh)SOH)〕、α−フェネチルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(CHCHPh)SOH)〕、α−フェニルプロピルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム〔Zr(OPCH(CHCHCHPh)SOH)〕等を挙げることができる。
【0054】
本発明〔1〕に係る発明は、一般式(1)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体、及び、一般式(1)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体及びその水和物を包含する。本発明のα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体が水和物である場合の水和数に関しては、ある特定の値に限定されるものではなく、各々のホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体の親水性の程度や製造法によって変化するために一概には規定できないが、通常は、水和物は0.5〜10水和物として得られる。具体的には例えば、実施例1で合成した、α−(n−ドデシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムZr(OPCH(n-C1225)SOH)では4分子程度の水和水を有していた。
【0055】
(α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体(水和物を包含する。)の製造法(本発明〔2〕に相当する。))
【0056】
本発明に係るα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体(水和物を包含する。)は、一般式(2)
【0057】
【化13】

【0058】
(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
【0059】
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体の水溶液に、四価のジルコニウム塩を混合することにより得られるものであり、その製造においては必要に応じ加熱しても差し支えない。
【0060】
ここで、四価のジルコニウム塩としては、例えばオキシ塩化ジルコニウム八水和物に代表されるオキシ塩化ジルコニウム化合物;オキシ硝酸ジルコニウム二水和物に代表されるオキシ硝酸ジルコニウム化合物;硫酸ジルコニウム四水和物に代表される硫酸ジルコニウム化合物;アモルファスリン酸ジルコニウム、α型リン酸ジルコニウム、γ型リン酸ジルコニウム、ε型リン酸ジルコニウム等に代表されるリン酸ジルコニウム化合物等の、四価のジルコニウム塩を挙げることできる。
【0061】
本発明のα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体(水和物を包含する。)は、α−置換−ホスホノメタンスルホン酸の水溶液に、四価のジルコニウム塩を室温で混合、もしくは混合、加熱還流することにより得られるが、この時、系内にフッ化水素酸、塩酸、又は硫酸等の強酸を少量加えて反応させることもでき、その場合に用いるフッ化水素酸、塩酸、又は硫酸等の強酸の量は、強酸からプロトンを除いたアニオン部分(F、Cl、SO2−等)をAとすると、そのモル比で、[A]:[Zr]が、(4:1)〜(6:1)にするのが好ましい。
【0062】
続いて、本発明の前記α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体の製造に有用な中間体である、α−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体(本発明〔3〕に相当する。)、α−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体(本発明〔4〕に相当する。)並びに該α−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体の製造方法(本発明〔5〕に相当する。)について説明する
【0063】
(α−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体(本発明〔3〕に相当する。))
【0064】
本発明に係るα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体は、下記一般式(3)で表される。
【0065】
【化14】

【0066】
一般式(3)中、Rは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ノニル基、n−ドデシル基等の、直鎖又は分岐C1−C13アルキル基;ジフロロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジヨードメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、イソヘプタフルオロプロピル基、n−ノナフルオロブチル基、sec−ノナフルオロブチル基、t−ノナフルオロブチル基、1H,1H,2H,2H−n−パーフルオロブチル基(別称:3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基)、n−パーフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H−n−パーフルオロヘキシル基(別称:3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基)、n−パーフルオロドデシル基等の直鎖又は分岐C1−C13ハロアルキル基、又はベンジル基を示す。
【0067】
上記一般式(3)で表される本発明に係るα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体としては、具体的には例えば、α−メチルホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(CH)SOH〕、α−エチルホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(C)SOH〕、α−(n−プロピル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(n−C)SOH〕、α−イソプロピルホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(i−C)SOH〕、α−(n−ブチル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(n−C)SOH〕、α−(sec−ブチル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(s−C)SOH〕、α−(tert−ブチル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(t−C)SOH〕、α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(n−C13)SOH〕、α−(n−ノニル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(n−C19)SOH〕、α−(n−ドデシル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(n−C1225)SOH〕、α−トリフルオロメチルホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(CF)SOH〕、ペンタフルオロエチルホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(C)SOH〕、α−(n−ヘプタフルオロプロピル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(n−C)SOH〕、α−(n−ヘプタフルオロイソプロピル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(i−C)SOH〕、α−(n−ノナフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(n−C)SOH〕、α−(i−ノナフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(i−C)SOH〕、α−(tert−ノナフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(t−C)SOH〕、α−(1H,1H,2H,2H−n−パーフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸(別称:α−(3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル)ホスホノメタンスルホン酸)〔(OH)OPCH(CHCHCFCF)SOH〕、α−(n−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(n−C13)SOH〕、α−(1H,1H,2H,2H−n−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸(別称:α−(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸)〔(OH)OPCH(CHCHCFCFCFCF)SOH〕、α−(n−パーフルオロドデシル)ホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(n−C1225)SOH〕、α−ベンジルホスホノメタンスルホン酸〔(OH)OPCH(CHPh)SOH〕等を挙げることができる。
【0068】
(α−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体(本発明〔4〕に相当する。))
【0069】
本発明に係るα−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体は、下記一般式(4)で表される。
【0070】
【化15】

【0071】
一般式(4)中、Rは前記と同様の意味を示し、R、Rは、例えば、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ノニル基、n−ドデシル基、n−テトラコサニル基等の、炭素数1〜24(以下、置換基の炭素数については、例えば炭素数1〜24の場合には、これを「C1−C24」のように略記する。)の直鎖又は分岐C1−C24アルキル基;例えばジフロロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、ジヨードメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、イソヘプタフルオロプロピル基、n−ノナフルオロブチル基、sec−ノナフルオロブチル基、t−ノナフルオロブチル基、1H、1H、2H、2H−n−パーフルオロブチル基(別称:3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基)、n−パーフルオロヘキシル基、1H、1H、2H、2H−n−パーフルオロヘキシル基(別称:3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基)、n−パーフルオロドデシル基等の、置換基としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を包含するハロゲン原子を1以上有している、直鎖又は分岐C1−C24ハロアルキル基(すなわちハロゲン原子が1以上置換しているC1−C24アルキル基);ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、ナフチルメチル基、アンスラニルメチル基等の、アルキル基部分が例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の直鎖又は分岐C1−C6アルキル基であり、アリール基(芳香族炭化水素基)部分が例えばフェニル基、ナフチル基、アンスラニル基等の、単環又は縮合環アリール基である、C1−C24アラルキル基を示し、RとRは同じでも異なっていてもよい。
【0072】
上記一般式(4)で表される本発明に係るα-アルキルホスホノメタンスルホン酸エステルとしては、以下の(表1)に例示するような化合物が挙げられる。なお、表1中の略号は各々下記の意味を有する。
【0073】
n−C:n−プロピル基
i−C:イソプロピル基
n−C:n−プロピル基
n−C:n−ブチル基
s−C:sec−ブチル基
t−C:tert−ブチル基
n−C13:n−ヘキシル基
n−C19:n−ノニル基
n−C1225:n−ドデシル基
n−C2449:n−テトラコサニル基
n−C:パーフルオロ−n−プロピル基
i−C:パーフルオロイソプロピル基
n−C:パーフルオロ−n−プロピル基
n−C:パーフルオロ−n−ブチル基
s−C:パーフルオロ−sec−ブチル基
t−C:パーフルオロ−tert−ブチル基
n−C13:パーフルオロ−n−ヘキシル基
n−C1225:パーフルオロ−n−ドデシル基
Ph:フェニル基
CHPh:ベンジル基
【0074】
【表1】

【0075】
(α−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体の製造法(本発明〔5〕に相当する。))
【0076】
【化16】

【0077】
本発明に係る、一般式(3)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体は、上記スキームの通り、一般式(5)
【0078】
【化17】

【0079】
(式中、R、Rは前記と同様の意味を示す。)
で表されるホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体と、一般式(6)
【0080】
【化18】

【0081】
(式中、Rは前記と同様の意味を示し、Xはハロゲン原子、−OSOCH基、−OSOCF基を示す。)
【0082】
で表される化合物を、塩基存在下で反応(アルキル化)させた後、エステル部位を加水分解することにより製造することができる。
【0083】
(アルキル化)
一般式(6)中、R、R、Rは前記と同様の意味を示し、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を包含するハロゲン原子、−OSOCH基、又は−OSOCF基を示すが、Xとして好ましくは臭素、ヨウ素、−OSOCH基、−OSOCF基を挙げることができる。
【0084】
当反応(アルキル化)で使用できる一般式(6)で表される化合物としては、具体的には、例えばヨウ化メチル、臭化メチル、メチル=メタンスルホネート、メチル=トリフルオロメタンスルホネート、ヨウ化エチル、ヨウ化−n−プロピル、ヨウ化−i−プロピル、ヨウ化−n−ブチル、ヨウ化−i−ブチル、ヨウ化−s−ブチル、ヨウ化−t−ブチル、ヨウ化−n−ヘキシル、ヨウ化−n−ノニル、ヨウ化−n−ドデシル、ヨウ化トリフルオロメチル、トリフルオロメチル=メタンスルホネート、トリフルオロメチル=トリフルオロメタンスルホネート、ヨウ化−パーフルオロエチル、ヨウ化パーフルオロプロピル、ヨウ化パーフルオロブチル、ヨウ化−1H,1H,2H,2H−パーフルオロブチル(別称:ヨウ化−3,3,4,4,4,−ペンタフルオロブチル)、ヨウ化パーフルオロヘキシル、ヨウ化−1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシル(別称:ヨウ化−3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)、ヨウ化パーフルオロドデシル、ヨウ化ベンジル、臭化ベンジル、ベンジル=メタンスルホネート、ベンジル=トリフルオロメタンスルホネート等を挙げることができる。
【0085】
当反応(アルキル化)は無溶媒でも実施できるが、好ましくは適当な溶媒中で実施する。当反応(アルキル化)に好適な溶媒の具体例としては、これらに限定されるものではないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド、等の非プロトン性極性溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサンのようなエーテル溶媒;又はこれらの混合物が挙げられる。該溶媒の使用量は一般式(5)で表されるホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体1モルに対して0.1〜5l(リットル)、好ましくは0.2〜3lの範囲を例示できる。
【0086】
当反応での使用に好適な塩基の具体例としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物、;カリウム(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド等のアミド類、ブチルリチウム等のアルキル金属が挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくはアルカリ金属水素化物であり、中でも水素化ナトリウムを用いるのが特に好ましい。
【0087】
当反応に用いる一般式(5)で表されるホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体と一般式(6)で表される化合物のモル比は、一般式(5)で表されるホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体1モルに対して、一般式(6)で表される化合物が0.2〜2モル、好ましくは0.5〜1.5モルの範囲内で設定する。
【0088】
また、当反応に用いる一般式(5)で表されるホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体と塩基のモル比は、一般式(5)で表されるホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体1モルに対して、塩基が0.5〜1.25モル、好ましくは0.5〜1.125モルの範囲内で設定する。
【0089】
当該反応の反応温度は、反応が進行すれば特にこだわらないが、好ましくは、−78℃〜80℃、より好ましくは−30℃〜50℃の範囲を例示できる。
【0090】
なお、原料となるホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体は、文献既知の方法により合成できる化合物であり、例えば、ケミーシェ ベリヒテ(Chem.Ber.)、第113巻,142頁(1980)を参照することができる。
【0091】
(エステル部位の加水分解)
【0092】
当加水分解は、酸(例えば濃塩酸、臭化水素酸等の鉱酸)を用いて行なうことも、また、塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属)を用いて行なうこともできる。
【0093】
当加水分解に用いる酸、塩基のモル比は、一般式(2)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体1モルに対し、0.3〜30モル、好ましくは3.0〜20モル、更に好ましくは1.0〜10モルの範囲を例示できる。
【0094】
当加水分解で使用に好適な溶媒の具体例としては、水;酢酸等のカルボン酸;エタノール、メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル:またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
当加水分解の反応温度は、反応が進行すれば特にこだわらないが、好ましくは、0℃〜130℃の範囲を例示できる。
【0096】
(プロトン伝導性組成物)(本発明〔6〕に相当する。))
【0097】
本発明に係るプロトン伝導性組成物は、イオン伝導性を有する高分子化合物及び上記本発明〔1〕のα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体とからなる。
【0098】
本発明で用いるイオン伝導性を有する高分子化合物はイオン交換基を有する高分子化合物(高分子電解質)であり、公知のプロトン伝導性高分子であってよい。例えば、パーフルオロアルキレンスルホン酸系高分子化合物(例えば、ナフィオン(イー・アイ・デュポン社の登録商標))、スルホン化ポリエーテルケトン系高分子化合物、スルホン化ポリアリーレン系高分子化合物、スルホン化ポリエーテル系高分子化合物、スルホン化ポリスルフィド系高分子化合物、スルホン化ポリエーテルスルホン系高分子化合物、スルホン化ポリスルホン系高分子化合物、スルホン化ポリイミド系高分子化合物、スルホン化ポリエーテル系高分子化合物、スルホン化ポリベンズイミダゾール系高分子化合物等が挙げられる。これらは2種類以上の混合物であってもよい。
【0099】
本発明に係るプロトン伝導性組成物において、一般式(1)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体は、イオン伝導性を有する高分子化合物100重量部に対して0.5〜50重量部であるのが好ましく、1〜40重量部であるのがより好ましい。0.5重量部未満ではプロトン伝導性が向上せず、50重量部を超えるとプロトン伝導性材料が脆くなる。
【0100】
(プロトン伝導性膜(本発明〔7〕に相当する。))
【0101】
本発明のプロトン伝導性組成物は、上記イオン伝導性を有する高分子化合物と、一般式(1)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体を混合して作製する。プロトン伝導性膜とする場合には、例えば、前記のイオン伝導性を有する高分子化合物を、適当な溶媒に溶解し、これに一般式(1)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体を添加し、十分に攪拌することにより均一に分散させた後、支持体に塗布して製膜する手法や、イオン伝導性を有する高分子化合物と一般式(1)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体を均一に混合した後、シートに流し込む手法等により製膜できる。得られた膜は、適宜、洗浄、イオン交換等を実施することによって、所望の初期性能を持たせることができる。
【0102】
本発明に係るプロトン伝導性膜は、その膜厚が、通常10〜300μm、好ましくは20〜200μmである。
【0103】
(プロトン伝導性組成物のin situ製造方法(本発明〔8〕に相当する。))
【0104】
本発明に関わるプロトン伝導性組成物は上記の製造方法のほかに、イオン伝導性を有する高分子化合物を含む溶液中(in situ)で、一般式(3)
【0105】
【化19】

【0106】
(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示す。)
【0107】
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体と四価のジルコニウム塩化合物から、一般式(1)
【0108】
【化20】

【0109】
(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
【0110】
で表されるホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物を形成させた後、該溶液を支持体に塗布して製膜する手法やシートに流し込むこと手法等により製膜できる。得られた膜は、適宜、洗浄、イオン交換等を実施することによって、所望の初期性能を持たせることができる。
【0111】
当製造方法で用いるイオン伝導性を有する高分子化合物はイオン交換基を有する高分子化合物(高分子電解質)であり、公知のプロトン伝導性高分子であってよい。例えば、パーフルオロアルキレンスルホン酸系高分子化合物(例えば、ナフィオン(イー・アイ・デュポン社の登録商標))、スルホン化ポリエーテルケトン系高分子化合物、スルホン化ポリアリーレン系高分子化合物、スルホン化ポリエーテル系高分子化合物、スルホン化ポリスルフィド系高分子化合物、スルホン化ポリエーテルスルホン系高分子化合物、スルホン化ポリスルホン系高分子化合物、スルホン化ポリイミド系高分子化合物、スルホン化ポリエーテル系高分子化合物、スルホン化ポリベンズイミダゾール系高分子化合物等が挙げられる。これらは2種類以上の混合物であってもよい。
【0112】
当製造方法で用いる四価のジルコニウム塩としては、例えばオキシ塩化ジルコニウム八水和物に代表されるオキシ塩化ジルコニウム化合物;オキシ硝酸ジルコニウム二水和物に代表されるオキシ硝酸ジルコニウム化合物;硫酸ジルコニウム四水和物に代表される硫酸ジルコニウム化合物;アモルファスリン酸ジルコニウム、α型リン酸ジルコニウム、γ型リン酸ジルコニウム、ε型リン酸ジルコニウム等に代表されるリン酸ジルコニウム化合物等の、四価のジルコニウム塩を挙げることできる。
【0113】
当製造方法の反応で使用に好適な溶媒の具体例としては、水;エタノール、メタノール等のアルコール類;アセトニトリル等のニトリル類:アセトン等のケトン類またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
また、当製造方法の反応に用いる一般式(3)で表されるホスホノメタンスルホン酸と四価のジルコニウム塩のモル比は、四価のジルコニウム塩1モルに対して一般式(3)で表されるホスホノメタンスルホン酸が1.0〜3.0モル、好ましくは1.5〜2.5モルの範囲内で設定する。
【0115】
本製造方法で製造される複合化プロトン伝導性組成物において、一般式(1)で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体含有量は、イオン伝導性を有する高分子化合物100重量部に対して0.5〜50重量部であるのが好ましく、1〜40重量部であるのがより好ましい。0.5重量部未満ではプロトン伝導性が向上せず、50重量部を超えるとプロトン伝導性材料が脆くなる。
【0116】
当製造方法の反応温度は、反応が進行すれば特にこだわらないが、好ましくは、0℃〜70℃、より好ましくは10℃〜50℃の範囲を例示できる。
【0117】
本製造方法により製造されるプロトン伝導性膜は、その膜厚が、通常10〜300μm、好ましくは20〜200μmである。
【実施例】
【0118】
実施例1
(1)α−ドデシルホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステルの合成
【0119】
【化21】

【0120】
1l四つ口フラスコに、水素化ナトリウム11.2g(0.28mol)、DMF560ml(2l/mol)を仕込み、窒素置換した後、−20℃に冷却し、ホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステル72.8g(0.28mol)を−20℃〜−18℃で滴下した。−20℃で0.5時間攪拌した後、ヨウ化−n−ドデシル83.0g(0.28mol)を−20℃で滴下し、0℃まで温度を上げ、0℃で16h熟成した。飽和食塩水700mlを加え、反応を停止させ、酢酸エチル2lで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー精製し(ヘキサン/酢酸エチル=5/5)、α−ドデシルホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステルを41.7g得た。(収率30.0%、GC全面積純度 99.7%)
【0121】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm);0.88(t,J=6.6Hz,3H)、 1.26(br,18H)、 1.40(dt,J=18.0Hz,J=7.2Hz,6H)、 1.62(br,2H)、 2.04−2.17(m,3H)、 2.28(s,2H)、 3.47(dt,J=19.8Hz,J=6.3Hz,1H)、 4.23 and 4.25(q×2,J=7.2Hz,4H)、 4.41(dq,J=7.2Hz,J=2.4Hz,2H)
31P−NMR(300MHz,DMSO)δ(ppm);17.2 (s)
MS(CI、CH);m/e 429(MH
【0122】
(2)α−ドデシルホスホノメタンスルホン酸の合成
【0123】
【化22】

【0124】
200ml四つ口フラスコに47%臭化水素酸水溶液81.9g(0.48mol)、α−ドデシルホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステル40.7g(0.095mol)を仕込み、4時間還流した。その後、液温が90℃になるまで低沸点留分を抜き出し、さらに4時間還流した。反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸90mlで再結晶し、α−ドデシルホスホノメタンスルホン酸を15.3g得た。(収率47.3%、GC全面積純度98.8%)
【0125】
H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ(ppm);0.86(t,J=6.6Hz,3H)、 1.24(br,18H)、 1.50(br,2H)、 1.66−1.94(m,2H)、 2.73(dt,J=18.0Hz,J=6.6Hz,1H)、 10.22(br,3H)
31P−NMR(300MHz,DMSO)δ(ppm);19.1 (s)
MS(CI、CH);m/e 387(MH)(ジアゾメタン処理)
【0126】
(3)α−(n−ドデシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムの合成
【0127】
【化23】

【0128】
オキシ塩化ジルコニウム0.48g(1.5×10−3mol)、α−ドデシルホスホノメタンスルホン酸0.78g(3.0×10−3mol)をそれぞれ10mlの精製水に溶解し、オキシ塩化ジルコニウム、α−ドデシルホスホノメタンスルホン酸の水溶液をそれぞれ調製した。調製したオキシ塩化ジルコニウム水溶液をテフロン(イー・アイ・デュポン社の登録商標)製の分液ロートに入れ、これに46%フッ化水素酸を0.27ml加えた。調製したα−ヘキシルホスホノメタンスルホン酸水溶液をテフロン製ビーカーに入れ、攪拌しながら60℃に温め、スターラーで攪拌したままオキシ塩化ジルコニウム水溶液の分液ロートから30分くらいかけてオキシ塩化ジルコニウム水溶液を滴下混合させた。得られた白色沈殿物を吸引ろ過により得て、さらに精製水、アセトン、エーテル各1lずつで充分に洗浄した後、風乾した。さらに減圧乾燥することによりα−(n−ドデシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムを得た(収率95%)。
【0129】
13C−MASNMR(75.5MHz)δ(ppm);15.3,24.8,32.1
【0130】
実施例2
(1)α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステルの合成
【0131】
【化24】

【0132】
1l四つ口フラスコに水素化ナトリウム10.4g(0.26mol)、DMF520ml(2l/mol)を仕込み、窒素置換した後、−20℃に冷却し、ホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステル67.2g(0.26mol)を−20℃〜−18℃で滴下した。−20℃で0.5時間攪拌した後、ヨウ化−n−ヘキシル55.2g(0.26mol)を−20℃で滴下し、0℃まで温度を上げ、0℃で18時間熟成した。飽和食塩水700mlを加え、反応を停止させ、酢酸エチル2lで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー精製し(ヘキサン/酢酸エチル=4/6)、α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステルを22.5g得た。(収率30.0%、GC全面積純度99.3%)
【0133】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm);0.88(t,J=6.6Hz,3H)、 1.24−1.45(m,12H)、 1.62(br,2H)、 1.91−2.20(m,3H)、 2.63(br,2H)、 3.47(dt,J=19.5Hz,J=6.3Hz,1H)、 4.23 and 4.25(q×2,J=7.2Hz,4H)、 4.41(dq,J=7.2Hz,J=2.4Hz,2H)
31P−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm);24.7(s)
MS(CI、CH);m/e 345(MH
【0134】
(2)α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸の合成
【0135】
【化25】

【0136】
200ml四つ口フラスコに47%臭化水素酸水溶液54.2g(0.32mol)、α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステル21.7g(0.063mol)を仕込み、4時間還流した。その後、液温が83℃になるまで低沸点留分を抜き出し、さらに4時間還流した。反応終了後、反応液を濃縮し、α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸を16.0g得た。(収率97.7%、GC全面積純度98.5%)
【0137】
H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ(ppm);0.88(t,J=6.6Hz,3H)、 1.24(br,6H)、 1.51(br,2H)、 1.70−1.95(m,2H)、 2.79(dt,J=18.0Hz,J=6.6Hz,1H)、 11.68(br,3H)
31P−NMR(300MHz,DMSO)δ(ppm);19.8 (s)
MS(CI、CH);m/e 303(MH)(ジアゾメタン処理)
【0138】
(3)α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムの合成
【0139】
【化26】

【0140】
α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸をα−(n−ドデシル)ホスホノメタンスルホン酸に変更した以外は実施例1と同様の方法で、α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホ酸ジルコニウムを合成した(収率96%)。
【0141】
13C−MASNMR(75.5MHz)δ(ppm);15.4、25.6、33.4
【0142】
実施例3
(1)α−ベンジルホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステルの合成
【0143】
【化27】

【0144】
1l四つ口フラスコに水素化ナトリウム7.6g(0.19mol)、DMF380ml(2l/mol)を仕込み、窒素置換した後、−20℃に冷却し、ホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステル49.4g(0.19mol)を−20℃〜−18℃で滴下した。−20℃で0.5時間攪拌した後、臭化ベンジル32.3g(0.19mol)を−20℃で滴下し、0℃まで温度を上げ、0℃で18時間熟成した。飽和食塩水500mlを加え、反応を停止させ、酢酸エチル1lで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー精製し(ヘキサン/酢酸エチル=2/8)、α−ベンジルホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステルを8.8g得た。(収率13.5%、GC全面積純度99.4%)
【0145】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm);1.28(dt,J=15.3Hz,J=7.2Hz,9H) 3.42−3.50(m,2H) 3.80(dt,J=19.5Hz,J=6.3Hz,1H) 4.00−4.34(m,6H) 7.30(s,5H)
31P−NMR(300MHz,DMSO)δ(ppm);16.3(s)
MS(CI、CH);m/e 507(MH
【0146】
(2)α−ベンジルホスホノメタンスルホン酸の合成
【0147】
【化28】

【0148】
50ml四つ口反応器に47%臭化水素酸水溶液21.3g(0.125mol)、α−ベンジルホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステル 8.8g(0.025mol)を仕込み、4時間還流した。その後、液温が90℃になるまで低沸点留分を抜き出し、さらに4時間還流した。反応終了後、反応液を濃縮し、α−ベンジルホスホノメタンスルホン酸を6.9g得た。(収率 定量的、GC全面積純度96.8%)
【0149】
H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ(ppm);3.00−3.28(m,3H)、 7.11−7.30(m,5H)、 8.33(br,3H)
31P−NMR(300MHz,DMSO)δ(ppm);19.3 (s)
MS(CI、CH);m/e 465(MH)(ジアゾメタン処理)
【0150】
(3)α−ベンジルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムの合成
【0151】
【化29】

【0152】
α−ヘキシルホスホノメタンスルホン酸をα−ベンジルホスホノメタンスルホン酸に変更した以外は実施例1と同様の方法でα−ベンジルホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムを合成した(収率95%)。
【0153】
実施例4
(1)α−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステルの合成
【0154】
【化30】

【0155】
1l四つ口フラスコに水素化ナトリウム7.6g(0.19mol)、DMF380ml(2l/mol)を仕込み、窒素置換した後、−20℃に冷却し、ホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステル49.4g(0.19mol)を−20℃〜−18℃で滴下した。−20℃で0.5時間攪拌した後、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ヨウ化ヘキサン71.1g(0.19mol)を−20℃で滴下し、0℃まで温度を上げ、16時間熟成した。飽和食塩水500mlを加え、反応を停止させ、酢酸エチル1lで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー精製し(ヘキサン/酢酸エチル=4/6)、α−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸エチルエステルを22.5g得た。(収率30.0%、GC全面積純度99.3%)
【0156】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm);1.42(dt,J=19.5Hz,J=6.9Hz,9H)、 2.40−2.62(m,4H)、 3.58(dt,J=20.1Hz,J=6.0Hz,1H)、 4.25 and 4.27(q×2,J=7.2Hz,4H)、 4.45(dq,J=7.2Hz,J=2.4Hz,2H)
31P−NMR(300MHz,DMSO)δ(ppm);15.6(s)
MS(CI、CH);m/e 351(MH
【0157】
(2)α−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸の合成
【0158】
【化31】

【0159】
50ml四つ口反応器に47%臭化水素酸水溶液23.5g(0.14mol)、α−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸トリエチルエステル14.0g(0.028mol)を仕込み、4時間還流した。その後、液温が90℃になるまで低沸点留分を抜き出し、さらに4時間還流した。反応終了後、反応液を濃縮し、α−1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシルホスホノメタンスルホン酸を10.2g得た。(収率 定量的、GC全面積純度97.1%)
【0160】
H−NMR(300MHz,DMSO−d6)δ(ppm);2.07−2.19(m,2H) 2.44−2.82(m,2H) 3.05(dt,J=18.6Hz,J=6.3Hz,1H) 11.85(br,3H)
31P−NMR(300MHz,DMSO)δ(ppm);18.1 (s)
MS(CI、CH);m/e 309(MH)(ジアゾメタン処理)
【0161】
(3)α−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムの合成
【0162】
【化32】

【0163】
α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸をα−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸に変更した以外は実施例1と同様の方法でα−(1H,1H,2H,2H−パーフルオロヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムを合成した(収率94%)。
【0164】
以下、実施例1〜4で得られたホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体の特性を示すべく、イオン交換容量測定例を示す。
【0165】
(イオン交換容量測定)
試料(実施例1〜4で製造したα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体)約50mgを正確に量りとり、0.1mol/dmの水酸化ナトリウム水溶液10mlを入れた三角フラスコに入れた。これを、1時間、超音波にかけて十分に攪拌、中和させた。これに、0.1mol/dmの塩酸を少しずつ加えpHを測定した。pH滴定曲線の変曲点から、下記の式(数1)によりイオン交換容量を計算し、測定値として(表2)に示した。なお、試料のα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体として、実施例1で得られたものを用いたものを測定例1、同様に実施例2で得られたものを用いたものを測定例2、実施例3で得られたものを用いたものを測定例3、実施例4で得られたものを用いたものを測定例4とした。
【0166】
【数1】

【0167】
なお、pH計としては、pH/Ion Meter255(岩城ガラス社製)を用いた。
【0168】
【表2】

【0169】
以下、実施例1〜4で得られたα−置換ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体とプロトン伝導性材料との複合膜のプロトン伝導度を示す。
【0170】
(実施例5〜7、電解質膜の作製)
イオン伝導性を有する高分子化合物100質量%に対し、α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体の含有量が5質量%となるように、ナフィオン(イオン伝導性を有する高分子化合物、高分子電解質)溶液(5wt%)にα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体を加え、均一になるまで十分に攪拌した後、3時間、超音波処理した。この溶液をテフロンシートに流しこみ、70℃、85℃でそれぞれ24時間減圧乾燥し高分子電解質/α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体複合膜を得た。この膜を3%H水溶液、精製水中でそれぞれ1時間煮沸した。次いで、1M−HPO水溶液、精製水中でそれぞれ1時間煮沸することでプロトン化し、45℃で24時間乾燥して、プロトン伝導性膜(電解質膜)を得た。試料のα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体として、実施例1で得られたものを用いたものの膜厚は104μm(実施例5)、同様に実施例2で得られたものを用いたものの膜厚は141μm(実施例6)、実施例4で得られたものを用いたものの膜厚は79.8μm(実施例7)であった。
【0171】
(導電率(プロトン伝導度)の測定−1)
実施例5〜7で作成した電解質膜を開放系セルに挟み、インピーダンスアナライザー(YHP 4192A、横河ヒューレットパッカード社製)を用いて複素インピーダンス法により、温度80℃の定温条件下で、相対湿度を変化させて導電率を測定した結果を(表3)に示した。なお、試料のα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体として、実施例1で得られたものを用いたものを測定例5、同様に実施例2で得られたものを用いたものを測定例6、実施例4で得られたものを用いたものを測定例7とした。
【0172】
【表3】

【0173】
(導電率(プロトン伝導度)の測定−2)
上記のごとく作成した電解質膜を開放系セルに挟み、インピーダンスアナライザー(YHP 4192A、横河ヒューレットパッカード社製)を用いて複素インピーダンス法により、相対湿度90%(90%RH)一定の相対湿度条件下で、温度を変化させて導電率を測定した結果を(表4)に示した。なお、試料のα−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体として実施例1で得られたものを用いたものを測定例8、同様に実施例2で得られたものを用いたものを測定例9、実施例4で得られたものを用いたものを測定例10とした。
【0174】
【表4】

【0175】
実施例8〜10
ナフィオン(5wt.%)溶液5.7gに、アセトン3mlにα−置換−ホスホノメタンスルホン酸(実施例8ではα−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸0.013gを、実施例9ではα−(n−ノニル)ホスホノメタンスルホン酸0.0145gを、実施例10ではα−(n−ドデシル)ホスホノメタンスルホン酸0.016gを、それぞれ使用した。)を溶かした溶液を加えて超音波攪拌し、さらにメタノール3mlにオキシ塩化ジルコニウム0.008gを溶かした溶液を加えて超音波攪拌した。これを5cm×5cmのテフロンシートに流し入れ、70℃で24時間乾燥、85℃で24時間減圧乾燥させた。その後、過酸化水素と精製水で煮沸洗浄し、1M塩酸と精製水で煮沸洗浄し乾燥させてナフィオン/α−置換−ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム5wt%膜内合成し、実施例5〜7と同様に製膜した。
【0176】
(導電率(プロトン伝導度)の測定)
実施例8〜10で作成した電解質膜を開放系セルに挟み、インピーダンスアナライザー(YHP 4192A、横河ヒューレットパッカード社製)を用いて複素インピーダンス法により、温度80℃の定温条件下で、相対湿度を変化させて導電率を測定した結果を、実施例8で作成した電解質膜を用いたものを測定例11、実施例9で作成した電解質膜を用いたものを測定例12、実施例10で作成した電解質膜を用いたものを測定例13として、(表5)に示した。
【0177】
【表5】

【0178】
実施例11
オキシ塩化ジルコニウム0.48g(1.5×10−3mol)、実施例2と同様に調製したα−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸0.78g(3.0×10−3mol)をそれぞれ10mlの精製水に溶解し、オキシ塩化ジルコニウム、α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸の水溶液をそれぞれ調製した。調製したオキシ塩化ジルコニウム水溶液をテフロン(イー・アイ・デュポン社の登録商標)製の分液ロートに入れ、これに35%塩酸を0.94ml加えた。調製したα−ヘキシルホスホノメタンスルホン酸水溶液をテフロン製ビーカーに入れ、攪拌しながら60℃に温め、スターラーで攪拌したままオキシ塩化ジルコニウム水溶液の分液ロートから30分くらいかけてオキシ塩化ジルコニウム水溶液を滴下混合させた。得られた白色沈殿物を吸引ろ過により得て、さらに精製水、エーテル各1lずつで充分に洗浄した後、風乾した。さらに減圧乾燥することによりα−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムを得た(収率92%)。
【0179】
実施例12
オキシ塩化ジルコニウム0.48g(1.5×10−3mol)、実施例2と同様に調製したα−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸0.78g(3.0×10−3mol)をそれぞれ10mlの精製水に溶解し、オキシ塩化ジルコニウム、α−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸の水溶液をそれぞれ調製した。調製したオキシ塩化ジルコニウム水溶液をテフロン(イー・アイ・デュポン社の登録商標)製の分液ロートに入れ、これに98%硫酸を0.90ml加えた。調製したα−ヘキシルホスホノメタンスルホン酸水溶液をテフロン製ビーカーに入れ、攪拌しながら60℃に温め、スターラーで攪拌したままオキシ塩化ジルコニウム水溶液の分液ロートから30分くらいかけてオキシ塩化ジルコニウム水溶液を滴下混合させた。得られた白色沈殿物を吸引ろ過により得て、さらに精製水、エーテル各1lずつで充分に洗浄した後、風乾した。さらに減圧乾燥することによりα−(n−ヘキシル)ホスホノメタンスルホン酸ジルコニウムを得た(収率、定量的)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
で表されるホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体の水溶液と、四価のジルコニウム塩を混合することを特徴とする、一般式(1)
【化3】

(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
で表されるホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物の製造方法。
【請求項3】
一般式(3)
【化4】

(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示す。)
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体。
【請求項4】
一般式(4)
【化5】

(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示し、R、Rはアルキル基、又はアラルキル基を示し、RとRは同じでも異なっていてもよい。)
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体。
【請求項5】
一般式(5)
【化6】

(式中、R、Rはアルキル基、又はアラルキル基を示し、RとRは同じでも異なっていてもよい)
で表されるホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体と、一般式(6)
【化7】

(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基、Xはハロゲン原子、−OSOCH基、又は−OSOCF基を示す。)
で表される化合物を、塩基存在下で反応させて、一般式(4)
【化8】

(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示し、R、Rはアルキル基、又はアラルキル基を示し、RとRは同じでも異なっていてもよい。)
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体とした後、このα−置換−ホスホノメタンスルホン酸エステル誘導体を加水分解することを特徴とする、一般式(3)
【化9】

(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示す。)
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体とイオン伝導性を有する高分子化合物からなるプロトン伝導性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のプロトン伝導性組成物からなることを特徴とするプロトン伝導性膜。
【請求項8】
イオン伝導性を有する高分子化合物を含む溶液中で、一般式(3)
【化10】

(式中、Rは炭素数13以下のアルキル基、炭素数13以下のハロアルキル基、又はベンジル基を示す。)
で表されるα−置換−ホスホノメタンスルホン酸誘導体と四価のジルコニウム塩化合物から一般式(1)
【化11】

(式中、Rはアルキル基、ハロアルキル基、又はアラルキル基を示す。)
で表されるホスホノメタンスルホン酸ジルコニウム誘導体又はその水和物を形成させることを特徴とする複合化プロトン伝導性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2007−262047(P2007−262047A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187467(P2006−187467)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000102049)イハラケミカル工業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】