説明

新規な光反応性ポリマー

【課題】 製造が容易であり且つ広範囲の放射線硬化可能な組成物と容易に適合性にされ得る新規な種類の光反応性ポリマーを提供すること、この新規な種類の非常に有効な光反応性ポリマーの中の少なくとも1種の光反応性ポリマーを含んでなる放射線硬化可能な組成物を提供することならびに食品包装上におけるインキ−ジェット印刷に適した新規な種類の非常に有効な光反応性ポリマーの中の少なくとも1種の光反応性ポリマーを含んでなる放射線硬化可能なインキ−ジェットインキを提供すること。
【解決手段】 少なくとも1個の開始官能基及び少なくとも1個の共−開始官能基を有する樹枝状ポリマーコアを含んでなる新規な光反応性ポリマーを開示する。
光反応性ポリマーは、ワニス、ラッカー、印刷インキ及び放射線硬化可能なインキ−ジェットインキのような放射線硬化可能な組成物において有用である。樹枝状ポリマーコアは、好ましくは高分枝ポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワニス、ラッカー及び印刷インキのような放射線硬化可能な組成物において有用な、そして放射線硬化可能なインキ−ジェットインキにおいて特に有用な新規な光反応性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
市販の放射線硬化可能な組成物の大多数は低分子量光−開始剤(photo−initiators)及び共−開始剤(co−initiators)を含有する。低分子量生成物がポリマー網目中に組み込まれないと、それらは硬化された組成物から拡散して出る傾向があり、容易に抽出され得る。放射線硬化可能な組成物が食品包装又は歯科的用途で用いられる場合、抽出可能な残留物の量は重大な問題であり、最小にする必要がある。
【0003】
特にノリッシュII型(Norrish type II)開始剤は、抽出可能な残留物に関して心配な点である。ノリッシュII型光−開始剤は常に共−開始剤を必要とする。共−開始剤又は相乗剤は基本的に、励起された状態のノリッシュII型開始剤に水素原子を転移させることができる分子である。脂肪族第3級アミン、芳香族アミン及びチオールは好ましい共−開始剤の例である。ノリッシュII型開始剤への水素原子の転移の後、相乗剤上に生成するラジカルは重合を開始させる。理論的には、共−開始剤はポリマー網目中に組み込まれる。しかしながら、水素転移及び開始反応の両方の収率が100パーセントであることは、非常にありそうもないことである。おそらく副反応が起こり、未反応相乗剤及び副生成物を組成物中に残す。そのような放射線硬化可能な組成物を用いて上に印刷された食品包装において、これらの低分子量残留物は移動性であり続け、毒性であれば、食品中に抽出されると健康上の危険を引き起こすであろう。
【0004】
これらの問題の解決における1つの方法は、高分子量を有する共−開始剤及びノリッシュII型開始剤を設計することである。
【0005】
特許文献1(TOYO INK)は、(メタ)アクリロイル基又はビニルエーテル基を保有する500より大きい数平均分子量を有する不飽和モノマーと第1級もしくは第2級アミンの反応生成物を、放射線硬化可能な組成物における共−開始剤として使用することを開示している。しかしながら、この方法を用い、低い官能価を有する共−開始剤を得ることができるのみである。
【0006】
特許文献2(UNION CARBIDE)は、放射線硬化可能な組成物中における共−開始剤としてのアミノ末端ポリオキシアルキレンの使用を開示している。特許請求されているポリオキシアルキレンも低い官能価を有し、低分子量共−開始剤と比較して多量の非反応性ポリマーをマトリックス中で用いることを必要とする。
【0007】
特許文献3(PERSTORP SPECIALTY CHEM)は、放射線硬化可能な樹枝状オリゴマー又はポリマーが通常少なくとも1個の式(A):
【0008】
【化1】

【0009】
の末端基及び通常少なくとも1個の式(B):
【0010】
【化2】

【0011】
の末端基を有し、ここでR1及びR2はそれぞれ水素又はメチルであり、且つここでR3及びR4はそれぞれアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルアルコキシ、アリールアルコキシであり、該アルキル及び/又は該アリールは場合により1個もしくはそれより多いヒドロキシル基を有していることができることを特徴とする放射線硬化可能な樹枝状オリゴマー又はポリマーを開示している。樹枝状ポリマー(dendritic polymer)は、通常の硬化可能な樹枝状オリゴマーと比較して空気下における硬化のために特に興味深いものであると主張されている。しかしながら、これらのオリゴマー性共−開始剤は、非特許文献1及び非特許文献2に記載されている通り、アクリレートを含有しないポリマーにカップリングされるとそれらの有効性を失う傾向がある。
【0012】
ポリマー性開始剤は、非特許文献3及び非特許文献4に開示された。すべての開示されたポリマー性開始剤は、通常の線状の分子形状を有する。放射線硬化可能な組成物の溶液粘度はこれらのポリマー性開始剤を用いて有意に影響される。
【0013】
特許文献4(COATES BROTHERS PLC)は、以下の一般的構造:
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、nは1〜6の数であり;R3は水素、メチル又はエチルであり;Aは式−[O(CHRCHR−、−[O(CHCO]又は−[O(CHCO](y−1)−[O(CHRCHR]−(ここでR及びRの1つは水素であり、他は水素、メチル又はエチルである)の基を示し;aは1〜2であり;bは4〜5であり;yは3〜10であり;Qは2〜6個のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物の残基であり;そしてxは1より大きいがQ中の利用可能なヒドロキシル基の数より大きくない]
を有する多官能基性ベンゾフェノン開始剤を開示している。
【0016】
特許文献5(COATES BROTHERS PLC)は、以下の構造:
【0017】
【化4】

【0018】
[式中、nは1〜6の数であり;R3は水素、メチル又はエチルであり;Aは式−[O(CHRCHR−、−[O(CHCO]又は−[O(CHCO](y−1)−[O(CHRCHR]−(ここでR及びRの1つは水素であり、他は水素、メチル又はエチルである)の基を示し;aは1〜2であり;bは4〜5であり;yは3〜10であり;Qは2〜6個のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物の残基であり;そしてxは1より大きいがQ中の利用可能なヒドロキシル基の数より大きくない]
を有する類似のポリマー性開始剤を開示している。
【0019】
特許文献4(COATES BROTHERS PLC)及び特許文献5(COATES BROTHERS PLC)の両方は、多官能基性開始剤の分子量が最も好ましくは800より小さく、それはそれより大きい分子量が放射線硬化可能な調製物の粘度において望ましくない上昇を引き起こすからであると記載している。これは多官能基性開始剤の官能価を制限し且つ種々の放射線硬化可能な組成物との適合性のような物理的性質を最適化するためのQの選択への可能性を制限する。物理的性質の最適化のための部分の導入のためにコアのヒドロキシル基の一部を用いることは、低い官能価を有する多官能基性開始剤を生ずるであろう。その場合、必要な硬化感度を得るために高濃度の光開始剤が必要であり、かくして組成物に関する可能性を制限し且つ組成物の性質及び最終的結果への大きな影響を有する。
【0020】
特許文献6(COATES BROTHERS PLC)は、2個もしくはそれより多い反応性基を含有する多官能基性コア材料と光開始剤又はその誘導体の反応により得られる種々の型の多官能基性開始剤を開示している。光開始剤又はその誘導体は、多官能基性コアの反応性基と反応できる反応性基を有する。特許文献6(COATES BROTHERS PLC)において開示されている光開始剤は、6の最大官能価を有する低分子量化合物である。多官能基性開始剤の官能価に依存して、コアの分子量は、好ましくは二官能基性開始剤の場合には500未満、好ましくは四官能基性開始剤の場合には1000未満、そして六官能基性開始剤の場合には1500未満である。インキ−ジェット用途の場合、分子量がそれより増加すると、放射線硬化可能なインキ−ジェットインキの許容され得ない粘度を生ずる。
【0021】
特許文献7(LAMBSON FINE CHEMICALS)は、光反応性部分及び側鎖基を含んでなる光開始剤を開示しており、光反応性部分は芳香族部分を含み、側鎖基には少なくとも1個の場合により置換されていることができるポリ(アルキレングリコール)部分が導入されている。好ましい光反応性部分は、150〜900の範囲内の平均分子量のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール部分で置換された場合により置換されていることができるベンゾフェノン、チオキサントン及びアントラキノン化合物を含む。これらの型の開始剤は本質的に一官能基性である。光反応性部分当たりの分子量は高い。等しいモル開始剤濃度のために、低分子量の相手と比較して、これらの巨大分子状開始剤の高い重量パーセンテージが必要である。結局、多量の非反応性ポリマーが放射線硬化可能な調製物中に導入され、スクラッチ抵抗性のような物理的性質に負の影響を有する。
【0022】
特にインキ−ジェット用途において、インキ−ジェットインキを噴射可能に保つために、溶液粘度における有意な上昇は避けられねばならない。これらのポリマー性開始剤及び共−開始剤により引き起こされる高い粘度及び低い官能価の問題を軽減するための1つの方法は、同じ巨大分子内で開始剤及び共−開始剤を結びつけることである。
【0023】
ポリマー中における共−開始剤と開始剤のいくつかの組み合わせが記載されている。チオキサントン部分で誘導体化されたポリ(エチレンイミン)はJiang et al.により報告された(非特許文献5)。
【0024】
他の方法において、Jiang及びYinは、同じポリマー中におけるノリッシュII型光開始剤と相乗剤の組み合わせとしての特定のチオキサントン−誘導体とアミンの重縮合生成物を報告した(非特許文献6)。
【0025】
アミン改質ポリエーテルイミドはDavidson et al.により報告されたが(非特許文献7)、Angiolini et al.は、開始部分及び第3級アミンの両方を有するアクリレートコポリマーを報告した(ベンゾインメチルエーテル及び第3級アミン:非特許文献8;ベンゾフェノン及び第3級アミン:非特許文献9;カンファーキノン及び第3級アミン:非特許文献10;チオキサントン及びα−モルホリノケトン:非特許文献11)。
【0026】
2つの最近の総説でも、開始及び共−開始部分の両方を有するポリマーが報告された(非特許文献12及び非特許文献13)。
【0027】
これらのポリマーのいくつかは興味深い光化学的性質を示すが、それらのすべてが線状の形状を有する。これらの光反応性ポリマーを用い、溶液粘度はまだ放射線硬化可能な組成物を用いる多数の用途、例えばインキ−ジェットインキ及びラッカーのために望ましくないレベルまで上昇する。
【0028】
従って食品中に抽出され得ないか、あるいは包装材料の物理的性質に悪影響を及ぼさない、食品包装上における使用のための放射線硬化可能な組成物に適した安価で有効な光反応性ポリマーを提供することが必要である。光反応性ポリマーは製造が容易でなくてはならず、且つ高い溶液粘度を引き起こさずに広範囲の放射線硬化可能な組成物と適合性でなければならない。
先行技術
これまでに、本発明の特許性に関連する以下の文書が既知である:
2002年3月21日に公開された特許文献3
1999年2月18日に公開された特許文献8
2000年6月29日に公開された特許文献9
2004年1月8日に公開された特許文献10
2003年7月31日に公開された特許文献11
2002年2月7日に公開された特許文献12
【特許文献1】特開2000−086713号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第434098A号明細書
【特許文献3】国際公開第02/22700号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/033452号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/033492号パンフレット
【特許文献6】国際公開第97/17378号パンフレット
【特許文献7】国際公開第97/49664号パンフレット
【特許文献8】国際公開第99/07746号パンフレット
【特許文献9】独国特許第19947631号明細書
【特許文献10】国際公開第2004/003542号パンフレット
【特許文献11】国際公開第03/062306号パンフレット
【特許文献12】国際公開第02/10189号パンフレット
【非特許文献1】Davidson,Stephen R.著,Exploring the Science Technology and Applications of UV and EB−curing.LONDON UK:SITA Technology Ltd,1999年,p.141
【非特許文献2】Davidson,Stephen R.et al.著,Type II polymeric photoinitiators(polyetherimides) with built−in amine synergist.Journal of Photochemistry and Photobiology,A:Chemistry.vol.91,no.2,1995年,p.153−163
【非特許文献3】Crivello,J.V.,et al.著,Photoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Photopolymerisation.Surface Coatings Technology.vol III,1998年,p.208−224
【非特許文献4】Corrales,T.,et al.著,Free Radical macrophotoinitiators:an overview on recent advances.Journal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry.vol.159,no.2,2003年,p.103−114
【非特許文献5】Jiang et al.著,Polymer,45,2004年,133−140
【非特許文献6】Jiang and Yin著,Polymer,45,2004年,5057−5063
【非特許文献7】Davidson et al.著,Journal of Photochemistry and Photobiology,A:Chemistry,91(2),1995年,153−163
【非特許文献8】Angiolini et al.著,Polymers for Advanced Technologies,4(6),1993年,375−384
【非特許文献9】Angiolini et al.著,New Polymeric Materials,1(1),1987年,63−83
【非特許文献10】Angiolini et al.著,Macromolecular Chemistry and Physics,201(18),2000年,2646−2653
【非特許文献11】Angiolini et al.著,Polymer,36(21),1995年,4055−60
【非特許文献12】Corrales et al.著,Journal of Photochemstry and Photobiology,A:Chemistry,159(2),2003年,103−114
【非特許文献13】Carlini et al.著,Polymers for Advanced Technologies,7(5&6),1996年,379−384
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
発明の目的
本発明の目的は、新規な種類の非常に有効な光反応性ポリマーを提供することである。
【0030】
本発明のさらなる目的は、製造が容易であり且つ広範囲の放射線硬化可能な組成物と容易に適合性にされ得る新規な種類の光反応性ポリマーを提供することである。
【0031】
この新規な種類の非常に有効な光反応性ポリマーの中の少なくとも1種の光反応性ポリマーを含んでなる放射線硬化可能な組成物を提供することも本発明の目的である。
【0032】
食品包装上におけるインキ−ジェット印刷に適した新規な種類の非常に有効な光反応性ポリマーの中の少なくとも1種の光反応性ポリマーを含んでなる放射線硬化可能なインキ−ジェットインキを提供することも本発明の目的である。
【0033】
本発明のこれらの及び他の目的は、下記の記述から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0034】
発明の概略
驚くべきことに、上に開始及び共−開始官能基を有する高分枝ポリマー(hyperbranced polymer)コアを有する光反応性ポリマーが、低分子量開始剤及び共−開始剤の両方の組み合わせと少なくとも同じくらい有効であることが見出された。光反応性ポリマーは高い官能価を有したが、それらは粘度への限られた影響を示し、それは放射線硬化可能なインキ−ジェットインキの構成のための選択肢を広げた。
【0035】
本発明の目的は、少なくとも1個の開始官能基及び少なくとも1個の共−開始官能基を有する樹枝状ポリマーコアを含んでなる光反応性ポリマーを用いて実現される。
【0036】
本発明の目的は、少なくとも1個の開始官能基及び少なくとも1個の共−開始官能基を有する樹枝状ポリマーコアを含んでなる光反応性ポリマーを含有する放射線硬化可能な組成物を用いても実現される。
【0037】
本発明の目的は、少なくとも1個の開始官能基及び少なくとも1個の共−開始官能基を有する樹枝状ポリマーコアを含んでなる光反応性ポリマーを含有する放射線硬化可能なインキ−ジェットインキを用いても実現される。
【0038】
本発明の目的は、
a)樹枝状ポリマーコアを準備し、そして
b)少なくとも1個の共−開始剤又は共−開始剤誘導体を該樹枝状ポリマーコアに結合させ、そして
c)少なくとも1個の開始剤又は開始剤誘導体を該樹枝状ポリマーコアに結合させる
段階を含んでなる、光反応性ポリマーの製造方法を用いても実現される。
【0039】
本発明の目的は、
a)共−開始剤が樹枝状ポリマーコアの一部である樹枝状ポリマーコアを準備し、そして
b)少なくとも1個の開始剤又は開始剤誘導体を該樹枝状ポリマーコアに結合させる
段階を含んでなる、光反応性ポリマーの製造方法を用いても実現される。
【0040】
本発明のさらなる利点及び態様は、以下の記述から明らかになるであろう。
発明の詳細な記述
定義
本発明の開示において用いられる「化学線」(“actinic radiation”)という用語は、光化学的反応を開始させることができる電磁線を意味する。
【0041】
本発明の開示において用いられる「紫外線」という用語は、4〜400ナノメーターの波長領域内の電磁線を意味する。
【0042】
「UV」という用語は本出願の開示において、紫外線の略語として用いられる。
【0043】
本発明の開示において用いられる「開始剤」という用語は、ノリッシュI型開始剤、ノリッシュII型開始剤又はフォト−酸生成物質(photo−acid generator)を意味する。
【0044】
本発明の開示において用いられる「ノリッシュI型開始剤」という用語は、励起の後に開裂し、直後に開始ラジカルを与える開始剤を意味する。
【0045】
本発明の開示において用いられる「ノリッシュII型開始剤」という用語は、化学線により活性化されて第2の化合物からの水素引抜き又は電子抽出によりフリーラジカルを形成する光開始剤を意味し、第2の化合物が実際の開始フリーラジカルになる。
【0046】
本発明の開示において用いられる「共−開始剤」という用語は、励起状態のノリッシュII型開始剤に水素を転移させ且つ放射線硬化可能な組成物のラジカル重合を開始させることができる分子を意味する。
【0047】
本発明の開示において用いられる「分枝ポリマー」(“branched polymer”)という用語は、3つもしくはそれより多いポリマー鎖セグメントを連結する分枝点を有するポリマー鎖を意味する。
【0048】
「DB」という用語は、本出願の開示において、分枝度のための略語として用いられる。
【0049】
本発明の開示において用いられる「樹枝状ポリマー」(“dendritic polymer”)という用語は、デンドリマー及び高分枝ポリマーを含んでなる。
【0050】
本発明の開示において用いられる「高分枝ポリマー」(“hyperbranched polymer”)という用語は、複数の分枝点及びポリマーの成長とともにさらなる分枝に導く多官能基性の枝を有するポリマーを意味する。高分枝ポリマーは一−段階重合法により得られ、種々の分枝度を有する多分散系を形成する(DB<100%)。
【0051】
本発明の開示において用いられる「デンドリマー」(“dendrimers”)という用語は、すべての分枝点が使用されている十分に定義された単分散構造を意味する(DB=100%)。デンドリマーは多−段階合成により得られる。
【0052】
本発明の開示において用いられる「官能基」という用語は、炭化水素分子中の水素原子に取って代わっており、その存在がこの分子に特徴的な性質を与える原子又は単位として作用する原子の群を意味する。
【0053】
本発明の開示において用いられる「低官能価」(“low functionality”)という用語は、5個以下の官能基を有することを意味する。
【0054】
本発明の開示において用いられる「末端基」という用語は、枝上の末端の基を意味する。デンドリマー又は高分枝ポリマーの場合、複数の末端基が存在する。
【0055】
本発明の開示において用いられる「開始官能基」(“initiating functional group”)という用語は、分子を開始剤として機能できるようにする官能基を意味する。
【0056】
本発明の開示において用いられる「共−開始官能基」(“co−initiating functional group”)という用語は、分子を共−開始剤として機能できるようにする官能基を意味する。
【0057】
本発明の開示において用いられる「着色剤」(“colorant”)という用語は、染料及び顔料を意味する。
【0058】
本発明の開示において用いられる「染料」という用語は、それが適用される媒体中で、且つ関連する周囲条件下で、10mg/Lかもしくはそれより高い溶解度を有する着色剤を意味する。
【0059】
「顔料」という用語は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となるDIN 55943に、関連する周囲条件下で適用媒体中に実質的に不溶性であり、従ってその中で10mg/L未満の溶解度を有する無機もしくは有機、有彩もしくは無彩着色剤として定義されている。
【0060】
「アルキル」という用語は、アルキル基中の炭素原子の各数に関して可能なすべての変形、すなわち3個の炭素原子の場合:n−プロピル及びイソプロピル;4個の炭素原子の場合:n−ブチル、イソブチル及び第3級−ブチル;5個の炭素原子の場合:n−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピル及び2−メチル−ブチルなどを意味する。
【0061】
本発明の開示において用いられる「アシル基」という用語は、−(C=O)−アリール基、−(C=O)−アルキル基、−(C=O)−複素環式基及び−(C=O)−複素芳香族基を意味する。
【0062】
本発明の開示において用いられる「脂肪族基」という用語は、飽和直鎖状、分枝鎖状及び脂環式炭化水素基を意味する。
【0063】
本発明の開示において用いられる「アリール基」という用語は、大きな共鳴エネルギーにより特徴付けられる環状共役炭素原子の集まり、例えばベンゼン、ナフタレン及びアントラセンを意味する。「芳香族基」という用語は、「アリール基」という用語に関する同義語である。
【0064】
「脂環式炭化水素基」という用語は、芳香族基を形成しない環状共役炭素原子の集まり、例えばシクロヘキサンを意味する。
【0065】
本発明の開示において用いられる「置換された」という用語は、脂肪族基、芳香族基又は脂環式炭化水素基中の1個もしくはそれより多い炭素原子及び/又は1個もしくはそれより多い炭素原子の水素原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子により置き換えられていることを意味する。そのような置換基にはヒドロキシル基、エーテル基、カルボン酸基、エステル基、アミド基及びアミン基が含まれる。
【0066】
「複素芳香族基」という用語は、環状共役炭素原子の少なくとも1個が酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子により置き換えられている芳香族基を意味する。
【0067】
「複素環式基」という用語は、環状共役炭素原子の少なくとも1個が酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子により置き換えられている脂環式炭化水素基を意味する。
樹枝状ポリマー
本発明に従う光反応性ポリマーは、樹枝状ポリマー、例えばデンドリマー又は高分枝ポリマーのコアを含有する。本発明に従う光反応性ポリマーは、好ましくは高分枝ポリマーのコアを含有する。
【0068】
デンドリマーはカスケード−型分枝、すなわち枝−上−枝トポロギー(branch−on−branch topology)により特徴付けられる。デンドリマーは、Newcome.G.R.,et al.著,Dendritic Molecules:Concepts,Synthesis,Perspectives.VCH:Weinheim,2001年により開示されているような繰り返し分枝及び脱保護案に基づく多−段階合成で製造される。最近報告された例で、ある割合の不完全に分枝した種が(望ましくない)副生成物として報告されたが、デンドリマー合成戦略は一般に完全に分枝したポリマーを目的とする。適したデンドリマーは、Tomalia,et al.著,A New class of polymers:starburst−dendritic macromolecules.Polym.J.,vol.17,1985年,p.117により開示されているポリアミドアミン(PAMAM)StarburstTMデンドリマー及びHawker,et al.著,Preparation of polymers with controlled molecular architecture.A new convergent approach to dendritic macromolecules.J.Am.Chem.Soc.,vol.112,1990年,p.7638により開示されているような集中的に(convergently)製造されるポリベンジルエーテルデンドリマーである。
合成
現在デンドリマーの製造のための唯一の戦略に相当する段階的製造は、ほとんどの用途に関する制限因子である。デンドリマーと対照的に、構造的に不規則な、すなわち高分枝ポリマーは1回の合成段階で得られる。
【0069】
本発明においては、厳密な高分枝重合により得られるポリマーならびに例えばA+B型のモノマーの限界以下の(subcritical)重合により得られるポリマーの両方を高分枝と考える。
【0070】
厳密な高分枝重合に関する厳重な基準は、Burchard,W.,et al.著,Solution properties of branched macromolecules.Advances in Polymer Science,vol.143,no.II,1999年,p.113−194により開示されている通り、系のゲル化が起こって網目構造が得られる限界転換(critical conversion)pが存在し得ないことである。
【0071】
かくして、高分枝材料は、相補的官能基A及びBを有するAB又はAB−型モノマーの重縮合により得ることができ、系中の唯一のカップリング反応はAとBの結合である。この型の多官能基性重縮合についての詳細は、Flory,P.J.,et al.著,Molecular size distribution in three−dimentional polymers.VI.Branched polymer containing A−R−Bf−1−type units.Journal of the American Chemical Society,vol.74,1952年,p.2718−2723により開示されている。
【0072】
米国特許第4857630号明細書(DU PONT)及びKim,Y.H.,et al.著,Hyperbranched polyphenylenes.Polymer Preprints(American Chemical Society,Division of Polymer Chemistry),vol.29,no.2,1988年,p.310−311は、高分枝ポリフェニレンの製造のための合成方法を開示している。
【0073】
AB−モノマーの重縮合に基づく高分枝ポリマーの製造方法はさらに、米国特許第5196502号明細書(KODAK)、米国特許第5225522号明細書(KODAK)及び米国特許第5214122号明細書(KODAK)に開示されている。
【0074】
高分枝ポリマー構造の製造のための他の適した方法は、線状AB−型イニマーの重合である。イニマーは、通常の線状に重合可能な部分、例えばビニル基又は束縛された環状成分ならびに開始基を同じ分子中に有する化合物である。環状イニマーは、Vandenberg,E.J.,et al.著,Polymerization of glycidol and its derivatives:a new rearrangement polymerization.Journal of Polymer Science.vol.23,no.4,1985年,p.915−949、Frechet,J.,et al.著,Selfcondensing vinyl polymerization:an approach to dentritic materials.Science(Washington,D.C.).vol.269,no.5227,1995年,p.1080−1083及び欧州特許出願公開第791021A号明細書(CORNELL RES FOUDATION INC)により、高分枝構造の製造において用いられた。
【0075】
通常「線状コモノマー」と呼ばれる線状AB型化合物ならびに通常「コア分子」と呼ばれるB−構造の多−B−官能基性化合物が存在することができる。高分枝ポリマーの構造的可能性ならびに分枝度DBに関する厳重な定義、官能価のための関連パラメーターの概覧は、Holter,et al.著,Degree of branching in hyperbranched polymers.Acta Polymerica.vol.23,no.48,1997年,p.30−35、Holter,et al.著,Degree of branching (DB) in hyperbranched plymers.Part 2.Enhancement of the DB.Scope and limitations.Acta Polymerica.vol.48,no.8,1997年,p.298−309及びFrey,H.,et al.著,Degree of branching in hyperbanched polymers.Part 3.Copolymerization of ABm monomers with AB and ABn monomers.Journal of Polymer Science.vol.50.no.2−3,1999年,p.67−76により開示されている。
【0076】
高分枝ポリマー研究における技術の現状は:
(a)Jikei,M.,et al著,Hyperbranched polymers:a promising new class of materials.Progress in Polymer Science,vol.26,no.8,2001年,p.1233−1285.
(b)Newcome,G.R.,et al.著,Dendritic Molecules:Concepts,Synthesis,Perspectives.VCH:Weinheim,2001年.
(c)Kim,Y.,et al.著,Hyperbranched polymers 10 years after.Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry.vol.36,no.11,1998年,p.1685−1698.
(d)Voit,B.,et al.著,New developments in hyperbranched polymers.Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry.vol.38,no.14,2000年,p.2505−2525.
(e)Sunder,A.,et al.著,Controlling the growth of polymer trees:concepts and perspectives for hyperbranched polymers.Chemistry−A European Journal.vol.6,no.14,2000年,p.2499−2506
において考察された。
これらの考察から、高分枝ポリマーが、規則的に分枝したデンドリマーならびに限界以下のレベルで重合が停止されないと必然的にゲル化、すなわち網目生成を生ずる2種の多官能基性モノマーのA+B重合に基づく分枝構造から明白に区別され得ることが明らかである。
【0077】
高分枝ポリマーは通常広い分子量分布を有する。多分散性(polydispersity)M/Mは通常5より大きく、もっと多くの場合には10より大きい。最近、適した反応性のAB又は潜在性ABモノマーの多官能基性(B)コア分子へのゆっくりした添加に基づく新しい概念が導入された。方法は、Radke,W.,et al.著,Effect of Core−Forming Molecules on Molecular Weight Distribution and Degree of Branching in the Synthesis of Hyperbranched Polymers.Macromolecules.vol.31,no.2,1998年,p.239−248及びHanselmann,R.,et al.著,Hyperbranched Polymers Prepared via the Core−Dilution/Slow Addition Technoque:Computer Simulation of Molecular Weight Distribution and Degree of Branching.Macromolecules.vol.31,no.12,1998年,p.3790−3801により開示されている。
高分枝ポリマーコア
本発明に従う光反応性ポリマーのための高分枝ポリマーコアの寸法は、選ばれる用途により決定される。ほとんどのインキ−ジェット用途は、通常100mPa.sより低い低粘度を有するインキ−ジェットインキを必要とする。従ってインキ−ジェット用途のために、高分枝ポリマーは好ましくは100,000より小さい、より好ましくは50,000より小さい、そして最も好ましくは20,000より小さいMを有する。
【0078】
本発明に従う光反応性ポリマーのための高分枝ポリマーコアは、好ましくはゆっくりしたモノマー添加の方法により得られる。これは高分枝ポリマーの狭い多分散性を生ずる。本発明において特に好ましいのは、3より小さい多分散性M/Mを有する高分枝ポリマーである。
【0079】
適した高分枝ポリマーコアは、Gao,C.,et al.著,Hyperbranched polymers:from synthesis to applications.Progress in Polymer Science,vol.29,no.3,2000年,p.183−275に開示されている。
【0080】
他の適した高分枝ポリマーコアを表1に示すが、それらに制限されるものではない。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
高分枝ポリマーコアを、反応性共−開始剤(誘導体)及び開始剤(誘導体)を用いる誘導体化の前に、末端グラフト化のためのコアとして用いることができる。これは高分枝マルチプルアームグラフトスターコポリマー(hyperbranched multiple arm graft star copolymer)を与え、それも高分枝ポリマーコアであると考えられる。この型のポリマーの適した例はSunder,A.,et al.著,Hyperbranched Polyether−Polyols Based on Polyglycerol:Polarity Design by Block Copolymerization with Propylene Oxide.Polyglycerol:Polarity Design by Bolck Copolymerization with Propylene Oxide.Macromolecules.vol.22,no.3,2000年,p.309−314及びMaier,S.,et al.著,Synthesis of poly(glycerol)−block−poly(methyl acrylate)multi−arm star polymers.Macromolecular Rapid Communications,vol.21,no.5,2000年,p.226−230に開示されている。
【0086】
光反応性ポリマー中のポリマーコアとして、いずれの高分枝ポリマーを用いることもできるが、高分枝ポリグリシドール又はグリシドールと他のエポキシドの高分枝コポリマーが特に好ましい。それらは、広範囲の分子量に及ぶ商業的に入手可能なモノマーから一段階法で狭い分子量分布を以って容易に製造することができる。これらのコアポリマーと少なくとも1種の共−開始剤又は共−開始剤誘導体及び少なくとも1種の開始剤又は開始剤誘導体との反応は、本発明に従う特に好ましい種類の高分枝光反応性ポリマーを与える。
【0087】
グリセロール単位に基づく分枝ポリオールは通常、触媒としての日本特許第61043627A号明細書(DAICEL CHEM IND.)により開示されているような無機酸あるいは日本特許第58198429A号明細書(NIPPON YUSHI)により開示されているような有機酸の存在下でグリシドールを水素−含有化合物(例えばグリセロール)と反応させることにより製造される。Tokar,R.,et al.著,Cationic polymerisation of glycidol:coexistence of the activated monomer and active chain end mechanism.Macromolecules.vol.27,1994年,p.320及びDworak,A.,et al.著,Cationic polymerization of glycidol.Polymer structure and polymerization mechanism.Macromolecular Chemistry and Physics.vol.196,no.6,1995年,p.1963−1970により開示されているように、BFのようなカチオン性開始剤を用いるカチオン重合を介してグリシドールの重合を達成することもできる。しかしながらカチオン重合法は、3より大きい多分散性を有する高分枝ポリマーを生じ、分子量を制御できない。
【0088】
制御された分子量を有する高分枝ポリグリセロールの製造のための適した方法は、独国特許出願公開第19947631A号明細書(BAYER)において開示されている。これは、Sunder,A.,et al.著,Controlled Synthesis of Hyperbranched Polyglycerols by Ring−Opening Multibranching Polymerization.Macromolecules,vol.92,no.13,1999年,p.4240−4246において開示されているように、炭化水素又はエーテル中で希釈されたグリシドールを、ジグリム又は他の炭化水素中に溶解された適したポリオール開始剤に加えることにより達成される。モノマーは、20〜99.9重量%、例えば60%〜90%のTHFを含有する溶液として加えられる。多官能基性開始剤の使用により、開始剤の完全な導入が助長される。
光反応性ポリマー
本発明に従う光反応性ポリマーは、少なくとも1個の開始官能基及び少なくとも1個の共−開始官能基を有する樹枝状ポリマーコアを含んでなる。
【0089】
第1の態様において、本発明に従う光反応性ポリマーは、少なくとも1個の光開始剤又はその誘導体及び少なくとも1個の共−開始剤又はその誘導体で誘導体化された樹枝状ポリマーコアを含んでなる。
【0090】
第2の態様において、共−開始剤は樹枝状ポリマーコアの一部であることができ、それは光開始剤又はその誘導体のみで誘導体化される。
【0091】
光反応性ポリマーはさらに他の官能基、例えば適合化部分で誘導体化されることができる。例えば適合化部分は、光反応性ポリマーが水中又は水に基づく放射線硬化可能なインキ−ジェットインキのような水溶液中で容易に溶解できるように、樹枝状ポリマーコア上にイオン性基を導入することができる。
【0092】
光反応性ポリマーは、好ましくは少なくとも3個の共−開始官能基を樹枝状ポリマーコア上に、より好ましくは少なくとも5個の共−開始官能基を樹枝状ポリマーコア上に、そして最も好ましくは少なくとも7個の共−開始官能基を樹枝状ポリマーコア上に有する。
【0093】
光反応性ポリマーは、好ましくは少なくとも3個の開始官能基を樹枝状ポリマーコア上に、より好ましくは少なくとも5個の開始官能基を樹枝状ポリマーコア上に、そして最も好ましくは少なくとも7個の開始官能基を樹枝状ポリマーコア上に有する。
【0094】
本発明において、先行技術において既知のいずれの光−開始部分を用いることもできる。本発明に従う光反応性ポリマーのための光−開始部分は、好ましくはノリッシュI型−開始剤、ノリッシュII型−開始剤及びフォト酸(photoacid)より成る群から選ばれる。より好ましくは、光−開始部分はノリッシュII型−光開始剤である。
【0095】
好ましいノリッシュII型−開始剤は、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,2−ジケトン及びアントラキノンより成る群から選ばれる。
【0096】
適したノリッシュII型−開始剤は、Crivello,J.V.,et al.著,VOLUME III:Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization.2ndth edition.Edited by Bradley,G.,London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998年,p.287−294において開示されている。
【0097】
樹枝状ポリマーコアと反応することができる光−開始部分の適した例を表2に示すが、それらに制限されるものではない。
【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【0100】
【表7】

【0101】
樹枝状ポリマーコアの誘導体化のために、先行技術において既知のいずれの共−開始部分を用いることもできる。より好ましい態様において、共−開始部分は脂肪族アミン、芳香族アミン及びチオールより成る群から選ばれる。さらにもっと好ましい態様において、共−開始部分は第3級アミン、4−ジアルキルアミノ安息香酸誘導体及び複素環式チオールより成る群から選ばれる。
【0102】
樹枝状ポリマーコアと反応することができる共−開始部分の適した例を表3に示すが、それらに制限されるものではない。
【0103】
【表8】

【0104】
【表9】

【0105】
樹枝状ポリマーコアを完全に、又は部分的に誘導体化することができる。
【0106】
光−開始部分及び共−開始部分を用いる樹脂状ポリマーコアの誘導体化のために、多くの型の誘導体化の化学を用い得ることは、当該技術分野における熟練者に明らかである。高分枝ポリグリシドールの場合、エステル化及びエーテル化が特に好ましい。
【0107】
好ましい態様において、光反応性ポリマーは適合化基を用いてさらに誘導体化される。適合化基は、光反応性ポリマーを特定の放射線硬化可能な組成物中でより溶解性とする官能基として定義される。
【0108】
適合化基の適した例を表4に示すが、これらに限られるものではない。
【0109】
【表10】

【0110】
【表11】

【0111】
第1の態様に従う光反応性ポリマーの適した例を下記に示すが、これらに限られない。示される構造は、それぞれ製造される試料中で見られる分布からのある誘導体化度を有するある分子量を示す。構造はより一般的な構造を、種々の分子量及び置換度に関する特定の例として示す。各ポリマー試料は、分子量及び置換度の両方において異なる類似の個々の化合物の混合物であり、広範囲の分子量に及んで化学を拡大できることは、当該技術分野における熟練者に明らかである。
【0112】
高分枝ポリエステルコアを有する、本発明に従う適した光反応性ポリマーを表5に開示する。高分枝ポリエステルコアの構造:
【0113】
【表12】

【0114】
高分枝ポリエステル−アミンコアを有する、本発明に従う適した光反応性ポリマーを表6に開示する。高分枝ポリエステル−アミンコアの構造:
【0115】
【表13】

【0116】
高分枝ポリエーテルコアを有する、本発明に従う適した光反応性ポリマーを表7に開示する。高分枝ポリエーテルコアの構造:
【0117】
【表14】

【0118】
本発明の第2の態様において、共−開始剤は高分枝ポリマーコアの一部であり、末端基が光−開始剤又はその誘導体で誘導体化される。高分枝ポリマーコアは、デンドリマーのような規則的な高分枝ポリマー又は無作為な高分枝ポリマーの両方であることができる。
【0119】
デンドリマーの樹枝状ポリマーコア又は高分枝ポリマーの樹枝状ポリマーコアを有する、本発明に従う光反応性ポリマーの適した例を下記に示すが、それらに限られない。
【0120】
デンドリマーの樹枝状ポリマーコアを有する第2の態様に従う光反応性ポリマーを表8に開示する。デンドリマーの樹枝状ポリマーコアの構造:
【0121】
【表15】

【0122】
高分枝ポリマーの樹枝状ポリマーコアを有する第2の態様に従う光反応性ポリマーを表9に開示する。高分枝ポリマーの樹枝状ポリマーコアの構造:
【0123】
【表16】

【0124】
放射線硬化可能な組成物
本発明に従う光反応性ポリマーを、ワニス、ラッカー及び印刷インキのようないずれの放射線硬化可能な組成物中で用いることもできるが、放射線硬化可能なインキ−ジェットインキにおいて特に有用である。
【0125】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、好ましくは紙、コート紙、ポリオレフィンコート紙、板紙、木材、複合板、プラスチック、コーティングされたプラスチック、キャンバス、編織布、金属、ガラス、植物繊維製品、皮革、磁気材料及びセラミックスより成る群から選ばれるインキ−ジェット記録要素上に噴射される。
【0126】
インキ−ジェット記録要素上に噴射される放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、未硬化印刷画像を生ずる。この印刷画像を放射線又は電子ビーム露出により硬化する。放射線硬化の好ましい手段は紫外光である。
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキ
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、少なくとも3つの成分:(i)放射線硬化可能な化合物、(ii)着色剤(すなわち顔料又は染料)及び(iii)本発明に従う光反応性ポリマーを含有する。光反応性ポリマーの好ましい量は、全インキ重量の1〜50重量%、そしてより好ましくは全インキ重量の1〜25重量%である。
【0127】
放射線硬化可能な化合物は、インキ−ジェットプリンターの硬化手段により重合することができるモノマー及び/又はオリゴマーから選ばれることができる。
【0128】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、熱又は化学線による重合を制限するための重合抑制剤を含有することができる。インキ−ジェットインキの調製の間に抑制剤を加えるのが好ましい。
【0129】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、インキ−ジェットインキ中における着色剤の安定した分散を得るために、少なくとも1種の樹脂をさらに含有することができる。
【0130】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、好ましくは少なくとも1種の界面活性剤をさらに含有する。
【0131】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、好ましくは少なくとも1種の溶媒をさらに含有する。
【0132】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、好ましくは少なくとも1種の殺生物剤をさらに含有する。
【0133】
インキ−ジェットプリンターは一般に、複数の放射線硬化可能なインキ−ジェットインキより成る放射線硬化可能なインキ−ジェットインキセットを用いる。
放射線硬化可能な化合物
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、インキ−ジェットプリンターの硬化手段により重合するモノマー及び/又はオリゴマーを含有する。モノマー、オリゴマー又はプレポリマーは、種々の程度の官能価を有することができ、一−、二−、三−及びもっと高い官能価のモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を用いることができる。これらの成分は硬化可能、典型的には光−硬化可能、例えばUV硬化可能であり、印刷後にインキ−受容体表面に付着して着色剤を結合させるように働かなければならない。同じ官能価の2種もしくはそれより多いモノマーの混合物が好ましく、2種の二−官能基モノマーの混合物が特に好ましい。
【0134】
モノマーとオリゴマーの間の比率を変えることにより、放射線硬化可能なインキ−ジェットインキの粘度を調整することができる。
【0135】
通常のラジカル重合、フォト酸又はフォト塩基(photo base)生成物質の使用を含む光−硬化系又は光誘導交互共重合のいずれの方法を用いることもできる。一般にラジカル重合及びカチオン重合が好ましく、開始剤を必要としない光誘導交互共重合を用いることもできる。さらに、これらの系の組み合わせの混成系も有効である。
【0136】
カチオン重合は、酸素による重合の妨害がないために、有効性において優れているが、それは遅く且つ高価である。カチオン重合を用いる場合、重合の速度を増すためにオキセタン化合物と一緒にエポキシ化合物を用いるのが好ましい。ラジカル重合は好ましい重合法である。
【0137】
当該技術分野において通常既知の重合可能な化合物を用いることができる。放射線硬化可能なインキ−ジェットインキ中の放射線硬化可能な化合物として用いるのに特に好ましいのは、一官能基性及び/又は多官能基性アクリレートモノマー、オリゴマー又はプレポリマー、例えばイソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソアミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、米国特許第6310115号明細書(AGFA)に記載されているようなビニルエーテルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリルオキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン改質柔軟性アクリレート及びt−ブチルシクロヘキシルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4ブタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、1,9ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノール A EO(エチレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノール A PO(プロピレンオキシド)付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバレートネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコキシル化ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート及びポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO改質トリメチロールプロパントリアクリレート、トリ(プロピレングリコール)トリアクリレート、カプロラクトン改質トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールエトキシテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクタム改質ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、N−ビニルアミド、例えばN−ビニルカプロラクタム又はN−ビニルホルムアミド;あるいはアクリルアミド又は置換アクリルアミド、例えばアクリロイルモルホリン;ならびに米国特許第6300388号明細書(AGFA)に記載されているようなアミノ官能基化ポリエーテルアクリレートである。
【0138】
さらに、上記のアクリレートに対応するメタクリレートをこれらのアクリレートと一緒に用いることができる。メタクリレートの中で、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、4−(ビニルオキシ)ブチルメタクリレート、米国特許第6310115号明細書(AGFA)に記載されているようなビニルエーテルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート及びポリエチレングリコールジメタクリレートが、それらの比較的高い感度及びインキ−受容体表面への高い付着性のために好ましい。
【0139】
さらに、インキ−ジェットインキは重合可能なオリゴマーを含有することもできる。これらの重合可能なオリゴマーの例にはエポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート及び直鎖状アクリルオリゴマーが含まれる。
着色剤
着色剤は染料であることができるが、好ましくは顔料又はその組み合わせである。有機及び/又は無機顔料を用いることができる。
【0140】
顔料粒子は、インキ−ジェット印刷装置を介する、特に通常10μm〜50μmの範囲の直径を有する噴射ノズルにおけるインキの自由な流れを許すのに十分に小さくなければならない。粒度は顔料分散液の安定性にも影響を有する。最大色濃度のためにも小さい粒子を用いるのが望ましい。インキ−ジェットインキ中に分散される顔料の粒子は、10μm未満、好ましくは3μm未満、そして最も好ましくは1μm未満の粒度を有していなければならない。顔料粒子の平均粒度は好ましくは0.05〜0.5μmである。
【0141】
適した顔料には、赤もしくはマゼンタ顔料として:Pigment Red 3,5,19,22,31,38,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257,Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50及び88;青もしくはシアン顔料として:Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36及び60;緑顔料として:Pigment green 7,26,36及び50;黄色顔料として:Pigmet Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,128,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,177,180,185及び193;白色顔料として:Pigment White 6,18及び21が含まれる。
【0142】
さらに、Herbst,W,et al著,Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications,第2版,VCH,1997年により開示されているものから顔料を選ぶことができる。
【0143】
最も好ましい顔料は、Pigment Yellow 1,3,128,109,93,17,14,10,12,13,83,65,75,74,73,138,139,154,151,180,185;Pigment Red 122,22,23,17,210,170,188,185,146,144,176,57:1,184,202,206,207;Pigment Blue 15:3,Pigment Blue 15:2,Pigmnet Blue 15:1,Pigment Blue 15:4,Pigment Blue 15:6,Pigment Blue 16及びPigment Violet 19である。
【0144】
カーボンブラックは通常黒色インキ中で着色材料として用いられる。適した黒色顔料材料にはPigment Black 7(例えばMITSUBISHI CHEMICALからのCarbon Black MA8TM)、CABOT Co.からのRegalTM 400R、MogulTM L、ElftexTM 320あるいはDEGUSSAからのCarbon Black FW18,Special Black 250,Special Black 350,Special Black 550,PrintexTM 25,PrintexTM 35,PrintexTM 55,PrintexTM 90,PrintexTM 150Tのようなカーボンブラックが含まれる。
【0145】
適した顔料の追加の例は米国特許第5389133号明細書(XEROX)に開示されている。
【0146】
顔料は、放射線硬化可能なインキ−ジェットインキの全重量に基づいて0.1〜10重量%の範囲内、好ましくは1〜5重量%の範囲内で存在する。
【0147】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキに適した染料には、直接染料、酸性染料、塩基性染料及び反応性染料が含まれる。
【0148】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキに適した直接染料には:
・C.I.Direct Yellow 1,4,8,11,12,24,26,27,28,33,39,44,50,58,85,86,100,110,120,132,142及び144
・C.I.Direct Red 1,2,4,9,11,134,17,20,23,24,28,31,33,37,39,44,47,48,51,62,63,75,79,80,81,83,89,90,94,95,99,220,224,227及び343
・C.I.Direct Blue 1,2,6,8,15,22,25,71,76,78,80,86,87,90,98,106,108,120,123,163,165,192,193,194,195,196,199,200,201,202,203,207,236及び237
・C.I.Direct Black 2,3,7,17,19,22,32,38,51,56,62,71,74,75,77,105,108,112,117及び154
が含まれる。
【0149】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキに適した酸性染料には:
・C.I.Acid Yellow 2,3,7,17,19,23,25,20,38,42,49,59,61,72及び99
・C.I.Acid Orange 56及び64
・C.I.Acid Red 1,8,14,18,26,32,37,42,52,57,72,74,80,87,115,119,131,133,134,143,154,186,249,254及び256
・C.I.Acid Violet 11,34及び75
・C.I.Acid Blue 1,7,9,29,87,126,138,171,175,183,234,236及び249
・C.I.Acid Green 9,12,19,27及び41
・C.I.Acid Black 1,2,7,24,26,48,52,58,60,94,107,109,110,119,131及び155
が含まれる。
【0150】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキに適した反応性染料には:
・C.I.Reactive Yellow 1,2,3,14,15,17,37,42,76,95,168及び175
・C.I.Reactive Red 2,6,11,21,22,23,24,33,45,111,112,114,180,218,226,228及び235
・C.I.Reactive Blue 7,14,15,18,19,21,25,38,49,72,77,176,203,220,230及び235
・C.I.Reactive Orange 5,12,13,35及び95
・C.I.Reactive Brown 7,11,33,37及び46
・C.I.Reactive Green 8及び19
・C.I.Reactive Violet 2,4,6,8,21,22及び25
・C.I.Reactive Black 5,8,31及び39
が含まれる。
【0151】
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキに適した塩基性染料には:
・C.I.Basic Yellow 11,14,21及び32
・C.I.Basic Red 1,2,9,12及び13
・C.I.Basic Violet 3,7及び14
・C.I.Basic Blue 3,9,24及び25
が含まれる。
【0152】
染料は、適した範囲のpH値においてのみ理想的な色を表現することができる。従って放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、好ましくはpH緩衝剤、例えば水酸化カリウム(KOH)をさらに含んでなる。
抑制剤
適した重合抑制剤にはフェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、蛍リン光体型酸化防止剤、(メタ)アクリレートモノマーにおいて通常用いられるヒドロキノンモノメチルエーテルが含まれ、そしてヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロールも用いることができる。これらの中で、分子中にアクリル酸から誘導される二重結合を有するフェノール化合物は、それが閉鎖された酸素を含有しない環境において加熱されても重合−抑制効果を有するために特に好ましい。適した抑制剤は例えばSumitomo Chemical Co.,Ltdにより製造されるSumilizerTM GA−80、SumilizerTM GM及びSumilizerTM GS;RAHNから入手可能なGenoradTM 16である。
【0153】
これらの重合抑制剤の過剰の添加はインキの硬化への感度を低下させるので、重合を予防できる量を配合の前に決定するのが好ましい。重合抑制剤の量は一般にインキ全重量の200〜20,000ppmである。
樹脂
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキはさらに、インキ−ジェットインキ中の顔料の安定な分散液を得るために、顔料安定剤又は分散剤とも呼ばれる樹脂を含有することができる。
【0154】
分散剤を含んでなる分散液として顔料を放射線硬化可能なインキ−ジェットインキに加えることができる。
【0155】
適した樹脂:石油型樹脂(例えばスチレン型、アクリル型、ポリエステル、ポリウレタン型、フェノール型、ブチラール型、セルロース型及びロジン);ならびに熱可塑性樹脂(例えば塩化ビニル、酢酸ビニル型)。これらの樹脂の具体的な例にはアクリレートコポリマー、スチレン−アクリレートコポリマー、アセタール化され且つ不完全にけん化されたポリビニルアルコール及び酢酸ビニルコポリマーが含まれる。市販の樹脂はAVECIAから入手可能なSolsperseTM 32000及びSolsperseTM 39000、EFKA CHEMICALS BVから入手可能なEFKATM 4046、BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDisperbykTM 168の商品名の下に既知である。
【0156】
非−ポリマー性ならびにいくつかのポリマー性分散剤の詳細なリストは、MC CUTCHEON.Functional Materials,North American Edition,Glen Rock,N.J.:Manufacturing Confectioner Publishing Co.,1990年,p.110−129に開示されている。
【0157】
典型的に、樹脂は顔料の2.5重量%〜200重量%、より好ましくは50重量%〜150重量%で導入される。
界面活性剤
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、少なくとも1種の界面活性剤を含有することができる。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非−イオン性又は両性イオン性であることができ、通常インキ全重量に基づいて20重量%未満の合計量で、そして特にインキ全重量に基づいて10重量%未満の合計量で加えられる。
【0158】
界面活性剤としてフッ素化もしくはシリコーン化合物を用いることができるが、可能な欠点は、界面活性剤が架橋されない故の、インキ−ジェット食品包装材料からの食品による抽出である。従って表面−活性効果を有する共重合可能なモノマー、例えばシリコーン−改質アクリレート、シリコーン改質メタクリレート、フッ素化アクリレート及びフッ素化メタクリレートを用いるのが好ましい。
溶媒
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは溶媒として水及び/又は有機溶媒、例えばアルコール、フッ素化溶媒及び双極性非プロトン性溶媒を含有することができ、溶媒は好ましくはそれぞれ放射線硬化可能なインキ−ジェットインキの全重量に基づいて10〜80重量%、特に好ましくは20〜50重量%の濃度で存在する。
【0159】
しかしながら、放射線硬化可能なインキ−ジェットインキは、好ましくは蒸発可能な成分を含有しないが、いくつかの場合には、UV硬化の後にインキ−受容体表面上への付着を向上させるために、非常に少量の有機溶媒をそのようなインキ中に導入するのが有利であり得る。この場合、加えられる溶媒は溶媒抵抗性及びVOCの問題を引き起こさない範囲内のいずれの量であることもでき、好ましくはそれぞれ放射線硬化可能なインキ−ジェットインキの全重量に基づいて0.1〜5.0重量%、そして特に好ましくは0.1〜3.0重量%である。
【0160】
適した有機溶媒にはアルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブ、高級脂肪酸エステルが含まれる。適したアルコールにはメタノール、エタノール、プロパノール及び1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t.−ブタノールが含まれる。適した芳香族炭化水素にはトルエン及びキシレンが含まれる。適したケトンにはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサフルオロアセトンが含まれる。グリコール、グリコールエーテル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドも用いることができる。
殺生物剤
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキに適した殺生物剤にはデヒドロ酢酸ナトリウム、2−フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチル及び1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びそれらの塩が含まれる。放射線硬化可能なインキ−ジェットインキのために好ましい殺生物剤はZENECA COLOURSから入手可能なProxelTM GXLである。
【0161】
殺生物剤は、好ましくはそれぞれ放射線硬化可能なインキ−ジェットインキに基づいて0.001〜3重量%、より好ましくは0.01〜1.00重量%の量で加えられる。
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキの調製
放射線硬化可能なインキ−ジェットインキにおいて用いるための着色剤の分散液は、着色剤及び樹脂の混合、磨砕及び分散により調製することができる。混合装置には加圧混練機、開放混練機、遊星型ミキサー、溶解機及びDalton Universal Mixerが含まれ得る。適した磨砕及び分散装置はコロイドミル、高速分散機、ダブルローラー(double rollers)、ビーズミル、ペイントコンディショナー(paint conditioner)及びトリプルローラー(triple rollers)である。超音波エネルギーを用いて分散液を調製することもできる。
【0162】
混合、磨砕及び分散の方法において、各方法は、熱の蓄積を予防するために冷却しながら且つ可能な限りUV−光が実質的に排除された光条件下で行なわれる。
【0163】
各着色剤のための個別の分散液を用いて放射線硬化可能なインキ−ジェットインキを調製することができるか、あるいはまたいくつかの顔料を混合し、分散液の調製において共−磨砕することができる。
[実施例]
【0164】
ここで下記の実施例により本発明を詳細に記述する。
測定法
1.硬化速度
硬化速度の尺度としてランプの最大出力のパーセンテージを採用し、数値が低いほど硬化速度が高い。試料は、Q−チップを用いるスクラッチングが可視の損傷を引き起こさない時点に完全に硬化したと考えられた。
2.粘度
放射線硬化可能な組成物の粘度は、Brookfield DV−II+粘度計を用い、25℃及び3RPMのせん断速度で測定された。
材料
以下の実施例で用いられるすべての材料は、他にことわらなければ、Aldrich Chemical Co.(Belgium)から容易に入手可能であった。実施例で用いられる「水」は脱イオン水であった。以下の材料が用いられた:
DPGDATMはUCBから入手可能な二官能基性アクリレートモノマーである。
SartomerTM SR351はBASFから入手可能な三官能基性アクリレートモノマーである。
RAHN AGから入手可能なQuantacureTM EHA。
高分枝ポリグリシドールPG17、PG33、PG83及びPG179はHYPERPOLYMERS GMBH,Freiburg,Germanyから入手可能である。
PERSTORPから入手可能なBoltornTM H20。
PETはポリ(エチレン)テレフタレートに関する略語である。裏側に帯電防止性を有する粘着防止層を有する下塗りされないPET基質はAGFA−GEVAERTからP125C PLAIN/ABASとして入手可能である。
【実施例1】
【0165】
この実施例は、ベンゾフェノン及びピペリジンを用いて誘導体化される高分枝ポリグリシドールコアの合成を示す。
【0166】
光反応性ポリマーIS−1〜IS−4を製造し、それを一般式IS−Aにより示すことができる。
一般式IS−A:
【0167】
【化5】

【0168】
式中、
・PGは高分枝ポリグリシドールコアを示し、
・xは出発ポリグリシドール中の末端ヒドロキシル基の平均数を示す。
【0169】
この実施例のために選ばれた高分枝ポリグリシドールは種々の分子量を有した:
・PG17:平均で17個のヒドロキシル基を有する高分枝ポリグリシドール;
・PG33:平均で33個のヒドロキシル基を有する高分枝ポリグリシドール;
・PG83:平均で83個のヒドロキシル基を有する高分枝ポリグリシドール;及び
・PG179:平均で179個のヒドロキシル基を有する高分枝ポリグリシドール;
IS−1〜IS−4の合成を以下の反応スキームにより示すことができる:
【0170】
【化6】

【0171】
光反応性ポリマーIS−1〜IS−4を表10に従って製造し、表10は各出発ポリグリシドール上にアシル化される種々の基の比率を挙げる。
【0172】
【表17】

【0173】
ポリマー、PG17BP4.3PPA4.6MEEA8.1に関して合成を例示する:
2.05g(1.69ミリモル)のPG17(M=1214g/モル−1,M/M=1.6)、2.21g(8.57ミリモル)のp−ベンゾフェノキシ酢酸(BP)、1.35g(8.57ミリモル)の1−ピペリジンプロピオン酸(PPA)、1.77ml(11.4ミリモル)の2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEA)及び2.18g(11.4ミリモル)のp−トルエンスルホン酸一水和物を、Dean−Stark及びコンデンサーが備えられた100mlの1つ口フラスコ中に加えた。次いで40mlのトルエンを加えた。水を共沸的に除去しながら、混合物を136℃に2時間加熱した。次いで0.88ml(5.7ミリモル)の余分のMEEAを加えた。混合物をさらに追加の4時間還流させた。減圧下で溶媒を除去した後、残留物をクロロホルム中に溶解した。混合物を10%のNaOH水溶液で2回及びNaCl水溶液でpH=7まで数回洗浄した。減圧下で溶媒を除去した後、残留水をトルエンとの共沸蒸留により除去した。溶液を濾過し、減圧下でトルエンを除去した。残留物をさらに40℃で真空中において乾燥した。
H NMR(CDCl):d=0.77,1.32(PGのTMPコア);1.14−1.64(ピペリジン環中のβ及びγCH);1.98(CHCOO−);2.13−2.66(ピペリジン環中のαCH,−NCHCHCOO−);2.98−5.42(PG及びMEEA部分のプロトン,−OCHCOO−);6.62−8.05(BP部分の芳香環のプロトン)。
【0174】
合成された光反応性ポリマーは、表11により開示される性質を示した。
【0175】
【表18】

【実施例2】
【0176】
この実施例は、放射線硬化可能な組成物における光反応性ポリマーの有効性を示す。
【0177】
光反応性ポリマーの硬化効率を低分子量相乗剤及び光開始剤の組み合わせと比較した。相乗剤及び光開始剤のモル比は、ポリマー及び低分子量比較の両方に関して一定に保たれた。開始剤は光反応性ポリマーと同じUV−VIS吸収スペクトルを有した。
【0178】
比較の放射線硬化可能な組成物COMP−1ならびに本発明の放射線硬化可能な組成物INV−1及びINV−2を表12に従って調製した。重量%(wt%)は放射線硬化可能な組成物の全重量に基づいた。
【0179】
【表19】

【0180】
【化7】

【0181】
比較の放射線硬化可能な組成物ならびに本発明の放射線硬化可能な組成物INV−1及びINV−2を、下塗りされない100μmのPET基質上に、バーコーター及び10μmのワイアバー(wired bar)を用いてコーティングした。Fusion VPS/1600ランプ(D−バルブ)が備えられたFusion DRSE−120コンベアを用いて各コーティングされた層を硬化させ、コンベアは試料を20m/分の速度で、コンベアベルト上のUV−ランプの下を輸送した。比較の放射線硬化可能な組成物COMP−1ならびに本発明の放射線硬化可能な組成物INV−1及びINV−2に関して硬化速度を決定した。結果を表13にまとめる。
【0182】
【表20】

【0183】
表13は、本発明の放射線硬化可能な組成物INV−1及びINV−2が、技術の現状の市販の低分子量の開始剤及び共−開始剤を有する比較の放射線硬化可能な組成物COMP−1と比較して、より高い硬化速度を有することを示す。ランプの最大出力の100%より大きいパーセンテージは、ランプの最大出力で試料を完全に硬化させるために、コンベアベルトの速度を低下させねばならないことを意味する。パーセンテージが高いほど、ベルトをより遅くしなければならない。160%の感度は、ランプの最大出力における12.5m/秒のベルト速度を意味する。
【実施例3】
【0184】
この実施例は、ベンゾフェノン及び4−ジメチルアミノ安息香酸を用いて誘導体化される高分枝ポリグリシドールコアの合成を示す。
【0185】
光反応性ポリマーIS−5及びIS−6を製造し、それを一般式IS−Bにより示すことができる。
【0186】
【化8】

【0187】
式中、
・PGは高分枝ポリグリシドールコアを示し、
・xは出発ポリグリシドール中の末端ヒドロキシル基の平均数を示す。
【0188】
この実施例のために選ばれた高分枝ポリグリシドールは種々の分子量を有した:
・PG17:平均で17個のヒドロキシル基を有する高分枝ポリグリシドール;及び
・PG33:平均で33個のヒドロキシル基を有する高分枝ポリグリシドール。
【0189】
IS−5及びIS−6の合成を以下の反応スキームにより示すことができる:
【0190】
【化9】

【0191】
光反応性ポリマーIS−5及びIS−6を表14に従って製造し、表14は各出発ポリグリシドール上にアシル化される種々の基の比率を挙げる。
【0192】
【表21】

【0193】
ポリマー、PG17BP4.8DB4.8MEEA7.4に関して合成を例示する:
20mlのTHF中の1.67g(10.0ミリモル)の4−ジメチルアミノ安息香酸(DMBA)及び1.63(10.0ミリモル)の1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)の溶液を3時間還流させた。次いで1.44g(1.19ミリモル)のPG17を含有するフラスコにそれを加え、攪拌しながら混合物を終夜還流させた。20mlのTHF中の2.07g(8.0ミリモル)のp−ベンゾフェノキシ酢酸、1.23ml(8.0ミリモル)のMEEA及び2.61g(16.0ミリモル)のCDIの溶液を室温で1時間攪拌し、次いでDB部分的改質PGの冷却された溶液に加えた。混合物を室温で終夜攪拌した。水を加えて残留CDI及びCDI活性化酸を破壊した。減圧下で溶媒を除去した後、残留物をクロロホルム中に溶解した。混合物を2NのHCl水溶液で2回、脱イオン水で3回、10%のNaOH水溶液で2回及びNaCl水溶液でpH=7まで数回洗浄した。減圧下で溶媒を除去した後、残留水をトルエンとの共沸蒸留により除去した。濾過の後、トルエンを減圧下で除去し、残留物を40℃で真空中に終夜保った。
H NMR(CDCl):d=0.77,1.32(PGのTMPコア);1.14−1.64(ピペリジン環中のβ及びγCH);1.98(CHCOO−);2.13−2.66(ピペリジン環中のαCH,−NCHCHCOO−);2.98−5.42(PG及びMEEA部分のプロトン,−OCHCOO−);6.62−8.05(BP部分の芳香環のプロトン)。
【実施例4】
【0194】
この実施例では、放射線硬化可能な組成物における光反応性ポリマーIS−5及びIS−6の硬化効率を、低分子量相乗剤及び光開始剤の組み合わせと比較する。相乗剤及び光開始剤のモル比は、ポリマー及び低分子量比較の両方に関して一定に保たれた。開始剤は光反応性ポリマーと同じUV−VIS吸収スペクトルを有した。
【0195】
比較の放射線硬化可能な組成物COMP−2及びCOMP−3ならびに本発明の放射線硬化可能な組成物INV−3及びINV−4を表15に従って調製した。重量%(wt%)は放射線硬化可能な組成物の全重量に基づいた。
【0196】
【表22】

【0197】
比較の放射線硬化可能な組成物COMP−2及びCOMP−3ならびに本発明の放射線硬化可能な組成物INV−3及びINV−4を、下塗りされない100μmのPET基質上に、バーコーター及び10μmのワイアバーを用いてコーティングした。下塗りされない100μmのPET基質でコーティングを覆い、Fusion VPS/1600ランプ(D−バルブ)が備えられたFusion DRSE−120コンベアを用いて硬化させ、コンベアは試料を20m/分の速度で、コンベアベルト上のUV−ランプの下を輸送した。試料の硬化に必要なランプの最大出力のパーセンテージとして硬化速度を定義した。結果を表16にまとめる。
【0198】
【表23】

【0199】
表16から、ポリマー性開始剤はそれらの低分子量の相手と同じに有効であったが、調製物の粘度は噴射可能な領域内に留まったと結論することができる。
【実施例5】
【0200】
この実施例は、UV−硬化可能な組成物のための光反応性ポリマーとしてのBoltornTM H20誘導体の合成を示す。
【0201】
光反応性ポリマーIS−7を製造し、それを一般式IS−Cにより示すことができる。
【0202】
【化10】

【0203】
式中、
・BH16は、16の官能価及び2100のMw(GPC)を有するBoltornTM H20を示す。
【0204】
光反応性ポリマーIS−7の合成を以下の反応スキームにより示すことができる:
【0205】
【化11】

【0206】
4gのBoltornTM H20、2.08ml(15ミリモル)のトリエチルアミン及び0.46g(3.47ミリモル)のジメチルアミノピリジンを40mlのTHF中に溶解した。2.74g(15ミリモル)の4−ジメチルアミノベンゾイルクロリドを加え、溶液を30分間還流させた。混合物を室温に冷ました。3.79g(15ミリモル)の4−ベンゾフェノキシ酢酸を20mlのTHF中に溶解し、2.43g(15ミリモル)のCDIを加え、反応を室温で1時間続けさせた。この溶液をBoltornTM H20溶液に加え、混合物を6時間還流させた。混合物を室温に冷ました。2.31g(15ミリモル)のメキシエトキシエトキシ酢酸を20mlのTHF中に溶解し、2.43g(15ミリモル)のCDIを加えた。反応を室温で1時間続けさせ、この溶液をBoltornTM H20の溶液に加えた。反応混合物を20時間還流させた。2mlの水を加え、溶媒を減圧下で除去した。残留物を100mlのクロロホルム中に再溶解し、2N HClで2回、水で3回、10%のNaOHで2回及びブラインでpH=7まで数回抽出した。クロロホルムをMgSO上で乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。残留物を真空下に40℃で乾燥した。
【0207】
光反応性ポリマーIS−7を表17に従って製造し、表17はBoltornTM H20コア上にアシル化される種々の基の比率を挙げている。
【0208】
【表24】

【0209】
合成された光反応性ポリマーIS−7は、表18により開示される性質を示した。
【0210】
【表25】

【実施例6】
【0211】
この実施例では、光反応性ポリマーIS−7を放射線硬化可能な組成物中で評価した。
【0212】
光反応性ポリマーIS−7の硬化効率を、低分子量光開始剤及び低分子量相乗剤の組み合わせと比較した。相乗剤及び光開始剤のモル比は、ポリマー及び低分子量比較の両方に関して一定に保たれた。開始剤は光反応性ポリマーと同じUV−VIS吸収スペクトルを有した。
【0213】
比較の放射線硬化可能な組成物COMP−4ならびに本発明の放射線硬化可能な組成物INV−5を表19に従って調製した。重量%(wt%)は放射線硬化可能な組成物の全重量に基づいた。
【0214】
【表26】

【0215】
【化12】

【0216】
比較の放射線硬化可能な組成物COMP−4及び本発明の放射線硬化可能な組成物INV−5を、下塗りされない100μmのPET基質上に、バーコーター及び10μmのワイアバーを用いてコーティングした。下塗りされない100μmのPET基質でコーティングを覆い、Fusion VPS/1600ランプ(D−バルブ)が備えられたFusion DRSE−120コンベアを用いて硬化させ、コンベアは試料を20m/分の速度で、コンベアベルト上のUV−ランプの下を輸送した。試料の硬化に必要なランプの最大出力のパーセンテージとして硬化速度を定義した。結果を表20にまとめる。
【0217】
【表27】

【0218】
表20は、光反応性ポリマーIS−7が低分子量の参照と同等の感度及びインキ−ジェット印刷に適した粘度を有することを示す。
【実施例7】
【0219】
この実施例は、カルボキシチオキサントン及び4−ジメチルアミノ安息香酸を用いて誘導体化される高分枝ポリグリシドールコアの合成を示す。
【0220】
光反応性ポリマーIS−8を表21に従って製造し、それを一般式IS−Dにより示すことができる。
【0221】
【化13】

【0222】
光反応性ポリマーIS−8の合成を以下の反応スキームにより示すことができる:
【0223】
【化14】

【0224】
1.67g(10ミリモル)の4−ジメチル安息香酸を20mlのTHF中に溶解した。1.63g(10ミリモル)のCDIを加え、混合物を3時間還流させた。1.44gのPG33を加え、混合物を攪拌しながら終夜還流させた。2.31g(8ミリモル)のカルボキシチオキサントン及び1.23ml(8ミリモル)のメトキシエトキシエトキシ酢酸を20mlのTHF中に溶解した。2.61g(16ミリモル)のCDIを加え、室温で1時間反応を続けさせた。この混合物をPG33溶液に加え、反応を室温で終夜続けさせた。2mlの水を加え、減圧下で溶媒を除去した。残留物を50mlのクロロホルム中に再溶解し、2N HClで2回、水で3回、10%のNaOHで2回及びブラインでpH=7まで数回抽出した。クロロホルムをMgSO上で乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。残留物を真空下に40℃で乾燥した。
【0225】
【表28】

【0226】
合成された光反応性ポリマーIS−8は、表22により開示される性質を示した。
【0227】
【表29】

【実施例8】
【0228】
この実施例では、光反応性ポリマーIS−8の硬化効率を放射線硬化可能な組成物中で評価した。本発明の放射線硬化可能な組成物INV−6を表23に従って調製した。重量%(wt%)は放射線硬化可能な組成物の全重量に基づいた。
【0229】
【表30】

【0230】
本発明の放射線硬化可能な組成物INV−6を、下塗りされない100μmのPET基質上に、バーコーター及び10μmのワイアバーを用いてコーティングした。下塗りされない100μmのPET基質でコーティングを覆い、Fusion VPS/1600ランプ(D−バルブ)が備えられたFusion DRSE−120コンベアを用いて硬化させ、コンベアは試料を20m/分の速度で、コンベアベルト上のUV−ランプの下を輸送した。試料の硬化に必要なランプの最大出力のパーセンテージとして硬化速度を定義した。結果を表24にまとめる。
【0231】
【表31】

【0232】
表24は、光反応性ポリマーIS−8が優れた感度及びインキ−ジェット印刷に適した粘度を有することを示す。
【実施例9】
【0233】
この実施例は、2種の開始官能基及び1種の共−開始官能基で誘導体化される高分枝ポリグリシドールコアの合成を示す。
【0234】
光反応性ポリマーIS−9〜IS−12を表25に従って製造し、それらを一般式IS−Eにより示すことができる。
【0235】
【化15】

【0236】
【表32】

【0237】
合成をPG17TA2.1BP2.2PPAMEEA7.7に関して例示する。2.05gのPG17、1.1g(4.29ミリモル)の4−ベンゾフェノキシ酢酸、1.35g(8.57ミリモル)の2−ピペリジノプロピオン酸、1.23(4.29)の2−チオキサントノ酢酸及び2.18g(11.4ミリモル)のp.−トルエンスルホン酸の混合物を40mlのトルエン中に溶解した。共沸的に水を除去しながら混合物を2時間還流させた。2時間後、2.65ml(17.1ミリモル)のメトキシエトキシエトキシ酢酸を加え、水をさらに4時間共沸的に除去した。減圧下で溶媒を除去し、残留物を100mlのクロロホルム中に再溶解した。混合物を10%のNaOHで2回及びブラインでpH=7まで数回抽出した。クロロホルムをMgSO上で乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。残留物を真空下に40℃で乾燥した。類似のスキームに従って他のポリマーを製造した。収率及び分子量を表26に示す。
【0238】
【表33】

【実施例10】
【0239】
光反応性ポリマーIS−9及びIS−10の硬化効率を放射線硬化可能な組成物中で評価した。本発明の放射線硬化可能な調製物INV−7及びINV−8を表27に従って調製した。重量%(wt%)は放射線硬化可能な組成物の全重量に基づいた。
【0240】
【表34】

【0241】
放射線硬化可能な組成物を、下塗りされない100μmのPET基質上に、バーコーター及び10μmのワイアバーを用いてコーティングした。下塗りされない100μmのPET基質でコーティングを覆い、Fusion VPS/1600ランプ(D−バルブ)が備えられたFusion DRSE−120コンベアを用いて硬化させ、コンベアは試料を20m/分の速度で、コンベアベルト上のUV−ランプの下を輸送した。試料の硬化に必要なランプの最大出力のパーセンテージとして硬化速度を定義した。結果を表28にまとめる。
【0242】
【表35】

【0243】
表28は、本発明の放射線硬化可能な組成物INV−7及びINV−8が優れた感度及びインキ−ジェット印刷に適した粘度を示すことを示す。
【実施例11】
【0244】
この実施例では、高分枝光反応性ポリマーに関する粘度への分子量の影響を示す。光反応性ポリマーIS−1〜IS−4を、表29に従って本発明の放射線硬化可能な組成物INV−9〜INV−12に調製した。
【0245】
【表36】

【0246】
本発明の放射線硬化可能な組成物INV−9〜INV−12を、下塗りされない100μmのPET基質上に、バーコーター及び10μmのワイアバーを用いてコーティングした。下塗りされない100μmのPET基質でコーティングを覆い、Fusion VPS/1600ランプ(D−バルブ)が備えられたFusion DRSE−120コンベアを用いて硬化させ、コンベアは試料を20m/分の速度で、コンベアベルト上のUV−ランプの下を輸送した。試料の硬化に必要なランプの最大出力のパーセンテージとして硬化速度を定義した。結果を表30にまとめる。
【0247】
【表37】

【0248】
表30から、非常に高い官能基性の高分枝光反応性ポリマーでさえ、非常に高い程度まで調製物の粘度に影響することなく、それらの光反応性を保持することが明らかである。
【0249】
本発明の好ましい態様を詳細に記載してきたが、ここで前記の特許請求の範囲において定義された本発明の範囲から逸脱することなく、その中で多くの修正を成し得ることが当該技術分野における熟練者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の開始官能基及び少なくとも1個の共−開始官能基を有する樹枝状ポリマーコアを含んでなる光反応性ポリマー。
【請求項2】
該少なくとも1個の共−開始官能基が脂肪族アミン、芳香族アミン及びチオールより成る群から選ばれる共−開始官能基である請求項1に従う光反応性ポリマー。
【請求項3】
該少なくとも1個の共−開始官能基が第3級アミン、複素環式チオールならびに4−ジアルキルアミノ−安息香酸及び4−ジアルキルアミノ−安息香酸誘導体より成る群から選ばれる共−開始官能基である請求項1に従う光反応性ポリマー。
【請求項4】
該少なくとも1個の開始官能基がベンゾフェノン類、チオキサントン類、1,2−ジケトン類及びアントラキノン類より成る群から選ばれる請求項1〜3のいずれかに従う光反応性ポリマー。
【請求項5】
該光反応性ポリマーが樹枝状ポリマーコアの上に少なくとも3個の共−開始官能基を有する請求項1〜4のいずれかに従う光反応性ポリマー。
【請求項6】
該光反応性ポリマーが樹枝状ポリマーコアの上に少なくとも3個の開始官能基を有する請求項1〜5のいずれかに従う光反応性ポリマー。
【請求項7】
該樹枝状ポリマーコアが少なくとも1個の他の官能基を有する請求項1〜6のいずれかに従う光反応性ポリマー。
【請求項8】
該少なくとも1個の他の官能基が放射線硬化可能な組成物との光反応性ポリマーの適合性を増進させるための適合化基である請求項1〜7のいずれかに従う光反応性ポリマー。
【請求項9】
該樹枝状ポリマーコアが高分枝ポリマーコアである請求項1〜8のいずれかに従う光反応性ポリマー。
【請求項10】
該高分枝ポリマーコアが3より小さい多分散性M/Mを有する請求項9に従う光反応性ポリマー。
【請求項11】
該高分枝ポリマーコアがポリグリシドールである請求項9又は10に従う光反応性ポリマー。
【請求項12】
a)樹枝状ポリマーコアを準備し、そして
b)少なくとも1個の共−開始剤又は共−開始剤誘導体を該樹枝状ポリマーコアに結合させ、そして
c)少なくとも1個の開始剤又は開始剤誘導体を該樹枝状ポリマーコアに結合させる
段階を含んでなる光反応性ポリマーの製造方法。
【請求項13】
該樹枝状ポリマーコアが高分枝ポリマーコアである請求項12に従う光反応性ポリマーの製造方法。
【請求項14】
該高分枝ポリマーコアが3より小さい多分散性M/Mを有する請求項13に従う光反応性ポリマーの製造方法。
【請求項15】
該高分枝ポリマーコアがポリグリシドールである請求項13又は14に従う光反応性ポリマーの製造方法。
【請求項16】
a)共−開始剤が樹枝状ポリマーコアの一部である樹枝状ポリマーコアを準備し、そして
b)少なくとも1個の開始剤又は開始剤誘導体を該樹枝状ポリマーコアに結合させる
段階を含んでなる光反応性ポリマーの製造方法。
【請求項17】
該樹枝状ポリマーコアが高分枝ポリマーコアである請求項16に従う光反応性ポリマーの製造方法。
【請求項18】
該高分枝ポリマーコアが3より小さい多分散性M/Mを有する請求項17に従う光反応性ポリマーの製造方法。

【公開番号】特開2006−28518(P2006−28518A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207208(P2005−207208)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(593194476)アグフア−ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (50)
【Fターム(参考)】