説明

新規な化合物およびそれを用いた有機発光素子

本発明は新規な化合物およびそれを用いた有機発光素子に関する。本発明に係る新規な化合物を用いた有機発光素子は駆動電圧、光効率および寿命特性の面に優れた特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子の寿命、効率、電気化学的安定性および熱的安定性を大きく向上できる新規な化合物および前記化合物が有機化合物層に含まれている有機発光素子に関する。
【0002】
本出願は2006年12月1日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2006−0120557号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
有機発光現象は特定有機分子の内部プロセスによって電流が可視光に転換される例の1つである。有機発光現象の原理は次の通りである。正極と負極との間に有機物層を位置させた時、2つの電極の間に電圧を印加すれば、負極と正極から各々電子と正孔が出て有機物層に注入される。有機物層に注入された電子と正孔は再結合してエキシトン(exciton)を形成し、このエキシトンが再び基底状態に落ちる時に光が出る。このような原理を用いる有機発光素子は、一般的に負極と正極およびその間に位置した有機物層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を含む有機物層で構成することができる。
【0004】
有機発光素子に用いられる物質としては純粋有機物質または有機物質と金属が錯体をなす錯化合物が大半を占めており、用途により、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などに区分することができる。ここで、正孔注入物質や正孔輸送物質としては、p−タイプの性質を有する有機物質、すなわち酸化し易く、酸化時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に用いられている。一方、電子注入物質や電子輸送物質としては、n−タイプの性質を有する有機物質、すなわち還元し易く、還元時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に用いられている。発光層物質としては、p−タイプの性質とn−タイプの性質を同時に有した物質、すなわち酸化と還元状態において全て安定した形態を有する物質が好ましく、エキシトンが形成された時にこれを光に転換する発光効率の高い物質が好ましい。
【0005】
上記にて言及したことの他に、有機発光素子に用いられる物質は次のような性質をさらに有することが好ましい。
【0006】
第1に、有機発光素子に用いられる物質は熱的安定性に優れていることが好ましい。有機発光素子内においては電荷の移動によるジュール熱(joule heating)が発生するためである。現在、正孔輸送層物質として主に用いられるNPB(N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N−ジフェニル−ベンジジン)は、ガラス転移温度が100℃以下の値を有するため、高い電流を必要とする有機発光素子においては使用し難い問題がある。
【0007】
第2に、低電圧駆動が可能な高効率の有機発光素子を得るためには、有機発光素子内に注入された正孔または電子が円滑に発光層に伝達されると同時に、注入された正孔と電子が発光層の外へ抜け出ないようにするべきである。このために、有機発光素子に用いられる物質は、適切なバンドギャップ(band gap)とHOMO(highest occupied molecular orbital)またはLUMO(lowest unoccupied molecular orbital)エネルギー準位を有しなければならない。現在、溶液塗布法により製造される有機発光素子において、正孔輸送物質として用いられるPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)):PSS(ポリ(スチレンスルホネート))の場合、発光層物質として用いられる有機物のLUMOエネルギー準位に比べてLUMOエネルギー準位が低いために高効率および長寿命の有機発光素子の製造が困難である。
【0008】
その他に、有機発光素子に用いられる物質は化学的安定性、電荷移動度、電極や隣接した層との界面特性などに優れていなければならない。すなわち、有機発光素子に用いられる物質は水分や酸素による物質の変形が小さなければならない。また、適切な正孔または電子移動度を有することにより、有機発光素子の発光層において正孔と電子の密度が均衡をなすようにしてエキシトンの形成を極大化するべきである。また、素子の安定性のために金属または金属酸化物を含む電極との界面を良くすることができるべきである。
【0009】
よって、当技術分野においては前記のような要件を満たせる有機物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2006−0120557号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、有機発光素子に用いることのできる物質に求められる条件、例えば、適切なエネルギー準位、電気化学的安定性および熱的安定性などを満たすことができ、置換基により有機発光素子に求められる様々な役割を果たすことのできる化学構造を有する新規な化合物およびそれを含む有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は下記化学式1で示される新規な化合物を提供する。
【化1】

前記化学式1において、
XはCまたはSiであり、
Yは互いに同じであるか異なり、各々独立に、直接結合;2価の芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された2価の芳香族炭化水素;2価の複素環基;またはニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された2価の複素環基であり、
R1〜R11は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアリールアミン基、置換もしくは非置換の複素環基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基、またはエステル基であり、ここで、これらは互いに隣接する基と脂肪族、芳香族またはヘテロの縮合環を形成することができ、
R12およびR13は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の複素環基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基またはエステル基であり、ここで、これらは互いに隣接する基と脂肪族、芳香族またはヘテロの縮合環を形成することができ、
R7およびR8は直接連結されるか、O、S、NR、PR、C=O、CRR’およびSiRR’からなる群から選択される基と共に縮合環を形成することができ、ここで、RおよびR’は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアリールアミン基、置換もしくは非置換の複素環基、ニトリル基、アミド基またはエステル基であり、ここで、RおよびR’は縮合環を形成してスピロ化合物を形成することができ、
pおよびqは各々独立に1〜5の整数であり、但し、pが2以上の整数であれば、qは1であり、qが2以上の整数であれば、pは1であり、
Aは下式:
【化2】

であり、
Bは下式:
【化3】

であり、
aおよびbは各々独立に0〜10の整数であり、
Y1〜Y4は互いに同じであるか異なり、各々独立に、2価の芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された2価の芳香族炭化水素;2価の複素環基;またはニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された2価の複素環基であり、
Z1〜Z8は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素;炭素数1〜20の脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素および複素環基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された芳香族炭化水素;芳香族炭化水素で置換されたケイ素基;複素環基;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素および複素環基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された複素環基;炭素数1〜20の脂肪族炭化水素または炭素数6〜20の芳香族炭化水素で置換されたチオフェン基;または芳香族炭化水素で置換されたホウ素基である。
【0013】
また、本発明は、第1電極、1層以上の有機物層および第2電極を積層した形態で含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が本発明の化学式1で示される化合物を含む有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物は、有機発光素子において、有機物層物質、特に正孔注入物質および/または正孔輸送物質として用いることができ、この化合物を有機発光素子に用いる場合、素子の駆動電圧を下げ、光効率を向上させつつ、化合物の熱的安定性によって素子の寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基板1、正極2、発光層3、負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
【図2】基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下にて本発明をより詳細に説明する。
前記化学式1の置換基を詳細に説明すれば次の通りである。
【0017】
前記化学式1のYおよびY1〜Y4において、2価の芳香族炭化水素の例としてはフェニレン、ビフェニレン、テルフェニレンなどの単環式芳香族環、およびナフチレン、アントラセニレン、ピレニレン、ペリレニレンなどの多環式芳香族環などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
前記化学式1のYおよびY1〜Y4において、2価の複素環基の例としてはチオフェニレン、フリレン、ピロリレン、イミダゾリレン、チアゾリレン、オキサゾリレン、オキサジアゾリレン、チアジアゾリレン、トリアゾリレン、ピリジレン、ピリダジレン、ピラジニレン、キノリレン、イソキノリレンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0018】
前記化学式1のZ1〜Z8において、芳香族炭化水素の例としてはフェニル、ビフェニル、テルフェニルなどの単環式芳香族環、およびナフチル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニルなどの多環式芳香族環などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0019】
前記化学式1のZ1〜Z8において、複素環基の例としてはチオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピリジル、ピリダジル、ピラジン、キノリン、イソキノリンなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0020】
前記化学式1のZ1〜Z8において、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素は、直鎖脂肪族炭化水素と分枝鎖脂肪族炭化水素、飽和脂肪族炭化水素と不飽和脂肪族炭化水素を全て含む。これらの例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;スチリルのような二重結合を有するアルケニル基;およびアセチレン基のような三重結合を有するアルキニル基が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0021】
前記化学式1のR1〜R13において、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましい。
化合物中に含まれているアルキル基の長さは化合物の共役長には影響を及ぼさないが、付随的に化合物の有機発光素子への適用方法、例えば真空蒸着法または溶液塗布法の適用には影響を及ぼし得る。
前記化学式1のR1〜R13において、アリール基の例としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベンなどの単環式芳香族、およびナフチル基、アントラセニル基、フェナントレン基、ピレニル基、ペリレニル基などの多環式芳香族環などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
前記化学式1のR1〜R11において、アリールアミン基の例としてはジフェニルアミン基、ジナフチルアミン基、ジビフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、フェニルジフェニルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、カルバゾール基、トリフェニルアミン基などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
前記化学式1のR1〜R13において、複素環基の例としてはチオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ピラダジン基、キノリニル基、イソキノリン基、アクリジル基などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
前記化学式1のR1〜R13において、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールアミン基、および複素環基が他の置換基を有する場合には、その置換基は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素、アルコキシ基、アリールアミン基、アリール基、複素環基、ニトリル基、アセチレン基などであり得る。
前記例の他に、前記化学式1のR1〜R13において、アルケニル基、アリール基、アリールアミン基、複素環基の具体的な例としては下記化学式で示された例が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0022】
【化4】

【0023】
前記化学式において、Zは水素、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素、アルコキシ基、アリールアミン基、アリール基、複素環基、ニトリル基、アセチレン基などからなる群から選択される基である。前記Z中、アリールアミン基、アリール基、複素環基の具体的な例としては前述したR1〜R13の置換基に記載した例が挙げられる。
【0024】
本発明の好ましい一実施状態において、前記化学式1中のXはCであり、R7とR8は直接連結されるか、O、S、NR、PR、C=O、CRR’およびSiRR’(ここで、RおよびR’は化学式1で定義した通りである)からなる群から選択される基と共に縮合環を形成することができる。
また、本発明の好ましい他の一実施状態において、前記化学式1中のXはSiであり、R7とR8は直接連結されるか、O、S、NR、PR、CRR’およびSiRR’(ここで、RおよびR’は化学式1で定義した通りである)からなる群から選択される基と共に縮合環を形成することができる。
【0025】
また、本発明の好ましいまた他の一実施状態において、前記化学式1の化合物は下記化学式5〜化学式10のうちのいずれか1つの化学式で表すことができる。
【0026】
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【0027】
前記化学式5〜化学式10において、X、R1〜R11、AおよびBは化学式1で定義したのと同一である。
【0028】
化学式1のAおよびB基として、好ましくは下記の基が挙げられるが、これらだけに限定されない。化学式5〜化学式10と下記の基との組み合わせによって色々な種類の誘導体を形成することができる。
【0029】
【化11A】

【化11B】

【化11C】

【化11D】

【化11E】

【化11F】

【化11G】

【化11H】

【化11I】

【化11J】

【化11K】

【化11L】

【化11M】

【化11N】

【化11O】

【化11P】

【化11Q】

【化11R】

【化11S】

【化11T】

【化11U】

【化11V】

【化11W】

【化11X】

【化11Y】

【化11Z】

【化12A】

【化12B】

【化12C】

【化12D】

【化12E】

【化12F】

【化12G】

【化12H】

【化12I】

【0030】
前記化学式1の化合物は、前記化学式1に示されたコア構造、すなわち、アクリジン基とカルバゾール基が融合した構造にベンゾフェノン基が開かれたスピロ構造で結合されたコア構造に様々な置換体を導入することにより、有機発光素子に用いられる有機物層として用いるのに適した特性を有することができる。具体的に説明すれば次の通りである。
【0031】
前記化学式1の化合物のコアの立体構造は下記の図のようにIとII部分に分けて説明することができる。
【化13】

前記化学式1の化合物のコアにおいて、Xを中心に空間的に平面Iと平面IIは完全に直角をなす閉じられたスピロ構造とは異なり、直角に近いより平面的な角度をなす立体構造を有し、ここで、Xを中心にIとII部分間のコンジュゲーションは起こらない。また、I平面において窒素原子1つが3つのアリール基の間に位置することにより、I平面内にコンジュゲーションを制限する役割をする。
【0032】
化合物の共役長とエネルギーバンドギャップは密接な関わりがある。具体的には、化合物の共役長が長いほどエネルギーバンドギャップが小さくなる。前述したように、前記化学式1の化合物のコアは制限されたコンジュゲーションを含んでおり、これは、エネルギーバンドギャップが大きい性質を有する。
【0033】
本発明においては、上記のようにエネルギーバンドギャップの大きいコア構造のR1〜R13およびZ1〜Z8位置に様々な置換基を導入することにより、様々なエネルギーバンドギャップを有する化合物を合成することができる。通常、エネルギーバンドギャップの大きいコア構造に置換基を導入してエネルギーバンドギャップを調節することは容易であるが、コア構造のエネルギーバンドギャップが小さい場合には置換基を導入してエネルギーバンドギャップを大きく調節し難い。また、本発明においては、前記のような構造のコア構造のR1〜R13およびZ1〜Z8位置に様々な置換基を導入することにより、化合物のHOMOおよびLUMOエネルギー準位も調節することができる。
【0034】
また、前記のような構造のコア構造に様々な置換基を導入することにより、導入された置換基の固有特性を有する化合物を合成することができる。例えば、有機発光素子の製造時に用いられる正孔注入層物質、正孔輸送層物質、発光層物質、電子輸送層物質に主に用いられる置換基を前記コア構造に導入することにより、各有機物層に求められる条件を充足させる物質を合成することができる。例えば、前記化学式1の化合物はコア構造にアリールアミン構造を含んでいるため、有機発光素子において、正孔注入および/または正孔輸送物質としての適切なエネルギー準位を有することができる。本発明においては、前記化学式1の化合物中、置換基に応じて適切なエネルギー準位を有する化合物を選択して有機発光素子に用いることにより、駆動電圧が低く、光効率の高い素子を実現することができる。
【0035】
また、前記コア構造に様々な置換基を対称(置換基Aと置換基Bをコア構造の両側に固定)に導入することによってエネルギーバンドギャップを微細に調節することができ、一方では、有機物間の界面における特性を向上させ、物質の用途を多様にすることができる。
【0036】
また、置換基Aおよび置換基Bに含まれたアミン数を2つ以上(AおよびB置換基に各々アミン数を1つ以上)に調節することにより、HOMO、LUMOエネルギー準位およびエネルギーバンドギャップを微細に調節することができ、一方では、有機物間の界面における特性を向上させ、物質の用途を多様にすることができる。
【0037】
また、前記化学式1の化合物は開かれたスピロ結合による空間的構造に様々な置換基を導入して有機物の3次元構造を調節することにより、有機物内のπ−π相互作用を最小化する構造を有するようにしてエキシマ(excimer)の形成を抑制することもできる。
【0038】
エネルギーバンドギャップおよびエネルギー準位と関連し、具体的な例を挙げれば、下記に記載されている本発明の実施例1の化学式2−1−1の化合物は、通常、化学式1の構造に正孔輸送物質や正孔注入物質に導入されるアリールアミンが導入された化合物であって、HOMOが5.22eVであるため、正孔注入層や正孔輸送層として用い易いエネルギー準位を有する。一方、実施例1の化学式2−1−1の化合物のバンドギャップは相変らず2.89eVであって、通常、正孔輸送層物質として用いられるNPBのバンドギャップに比べて非常に大きく、これにより、この化合物のLUMO値も約2.33eVで非常に高い。このように高いLUMO値を有する化合物を正孔輸送層として用いる場合、これは、発光層として用いられる物質のLUMOとのエネルギー壁を高くすることにより、電子が発光層から正孔輸送層に流入されることを防止することができる。したがって、このような化合物は既に用いられたNPB(HOMO5.4eV、LUMO2.3eV、エネルギーギャップ3.1eV)などに比べて有機発光素子の発光効率を向上させることができる。本発明において、エネルギーバンドギャップはUV−VISスペクトルによって計算する一般的な方法を用いて計算した。
【0039】
また、前記化学式1の化合物は安定した酸化還元特性を示す。酸化還元に対する安定性はCV(cyclovoltammetry)方法を利用して確認することができる。具体的な例として、実施例1の化学式2−1−1の化合物は数回繰り返して酸化電圧を加えた時、同一電圧において酸化が起こり、同一電流量を示しており、これは、前記化合物が酸化に対する安定性に優れていることを示す。
【0040】
一方、前記化学式1の化合物はガラス転移温度Tgが高くて熱的安定性に優れる。例えば、本発明の実施例1の化学式2−1−1の化合物はガラス転移温度が172℃であって、従来に一般的に用いられたNPB(Tg:96℃)に比べて顕著に高いことが分かる。このような熱的安定性の増加は素子に駆動安定性を提供する重要な要因となる。
【0041】
また、前記化学式1の化合物は、有機発光素子を製造する時、真空蒸着法だけでなく、溶液塗布法によって有機物層として形成することができる。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらだけに限定されない。
【0042】
本発明の化合物は、リチオ化(lithiation)したアリール基とケト基を反応させて得た3次アルコールを酸触媒下で加熱すれば、水が抜けて六角形の環構造を形成する方法を利用して製造することができる。このような製造方法は当技術分野によく知られている方法であって、当業者は前記製造方法の条件を変更して前記化学式1の化合物を製造することができる。具体的な製造方法は後述する製造例に記載した。
【0043】
また、本発明は、第1電極、1層以上の有機物層および第2電極を積層した形態で含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が本発明の化学式1で示される化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0044】
本発明の有機発光素子は、有機物層のうちの1層以上が本発明の化合物、すなわち前記化学式1の化合物を含むことを除いては、当技術分野に知られている材料と方法によって製造することができる。
【0045】
本発明の有機発光素子の有機物層は単層構造であってもよく、2層以上の有機物層が積層された多層構造であってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有し得る。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、さらに少ない数の有機物層を含むことができる。
【0046】
本発明に係る有機発光素子が多層構造の有機物層を有する場合、前記化学式1の化合物は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入と正孔輸送を同時に行う層、発光層、正孔輸送層などに含まれ得る。本発明において、前記化学式1の化合物は、特に、正孔注入層、正孔輸送層、または正孔注入と正孔輸送を同時に行う層に含まれることが好ましい。
【0047】
また、本発明の有機発光素子は、例えば、基板上に第1電極、有機物層および第2電極を順次積層することによって製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸着法(e−beam evaporation)のようなPVD(Physical Vapor Deposition)方法などを用いることができるが、これらの方法だけに限定されない。
【実施例】
【0048】
前記化学式1の化合物の製造方法およびそれを用いた有機発光素子の製造は以下の製造例および実施例で具体的に説明する。但し、下記製造例および実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらによって限定さるものではない。
前記化学式1で示される化合物を合成するために下記化学式a〜bの化合物を出発物質として用いることができる。
【化14】

【0049】
<製造例1>化学式aで示される出発物質の製造
カルバゾール(carbazole、1.672g、10mmol)、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(1−bromo−2−iodobenzene、1.5mL、12mmol)、炭酸カリウム(KCO、2.7646g、20mmol)、ヨウ化銅(CuI、95mg、0.5mmol)およびキシレン25mLを窒素雰囲気下で還流(reflux)した。常温に冷却した後に生成物をエチルアセテートで抽出し、無水硫酸マグネシウム(MgSO)で水分を除去した後に減圧下で溶媒を除去した。ヘキサン溶媒を用いてシリカゲルカラムを通過させて化合物を得た後、溶媒を減圧下で除去し、真空乾燥し、所望の白色固体の化学式aの化合物(800mg、25%収率)を得た。
MS:[M+H]=323。
【0050】
<製造例2>化学式bで示される出発物質の製造
化学式aで示される出発物質(6.96g、21.6mmol)を精製THF(tetrahydrofuran)300mlに溶かした後、−78℃に冷却した後、n−BuLi(2.5M in hexane、8.64ml、21.6mmol)を徐々に滴加した。同一温度で30分間攪拌した後、4,4’−ジブロモベンゾフェノン(4,4’−dibromobenzophenone、6.12g、18.0mmol)を加えた。同一温度で40分間攪拌した後に常温に温度を上げ、3時間さらに攪拌した。塩化アンモニウム(NHCl)水溶液で反応を終了した後、エチルエーテルで抽出した。有機物層から無水硫酸マグネシウム(MgSO)で水を除去した後、有機溶媒も除去した。得られた固体をエタノールに分散させ、1日間攪拌した後に濾過し、真空乾燥して、10.12g(96.4%収率)の中間物質を得た。得られた固体を10mlの酢酸に分散させた後、濃い硫酸10滴を加えて4時間還流した。得られた固体を濾過し、エタノールで洗浄した後に真空乾燥し、9.49g(96.8%収率)の化学式bの化合物を得た。
MS:[M+H]=565。
【0051】
<実施例1>下記化学式2−1−1で示される化合物の製造
【化15】

1)前記化学式2−1−1で示される化合物を製造するためのアリールアミンの合成(4−(N−フェニル−N−フェニルアミノ)フェニル−1−フェニルアミン)。
4−ブロモフェニル−N−フェニル−N−フェニルアミン13.5g(41.6mmol)とアニリン3.98ml(43.7mmol)をトルエン120mlに溶解させ、ナトリウム−Tert−ブトキシド10.00g(104.1mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.48g(0.83mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.58ml(1.25mmol)を添加した後、窒素気流下で2時間還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、アリールアミン連結基(9.6g、収率69%)を得た。
MS:[M+H]=336。
2)化学式b 3.0g(5.3mmol)と4−(N−フェニル−N−フェニルアミノ)フェニル−1−フェニルアミン4.12g(12.3mmol)をトルエン80mlに溶解させ、ナトリウム−Tert−ブトキシド1.54g(16.0mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.06g(0.11mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.06ml(0.16mmol)を添加した後、窒素気流下で2時間還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=4/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式2−1−1の化合物(2.7g、収率47%)を得た。
MS:[M+H]=1076。
【0052】
<実施例2>下記化学式2−2−2で示される化合物の製造
【化16】

1)前記化学式2−2−2で示される化合物を製造するためのアリールアミンの合成(4−(N−フェニル−N−フェニルアミノ)フェニル−1−ナフチルアミン)
4−ブロモフェニル−N−フェニル−N−フェニルアミン15.0g(46.3mmol)と1−ナフチルアミン7.29g(50.9mmol)をトルエン200mlに溶解させ、ナトリウム−Tert−ブトキシド13.34g(138.8mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.53g(0.93mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.56ml(1.39mmol)を添加した後、窒素気流下で2時間還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、アリールアミン連結基(13g、収率73%)を得た。
MS:[M+H]=386。
2)化学式b 5.00g(8.88mmol)と4−(N−フェニル−N−フェニルアミノ)フェニル−1−ナフチルアミン7.90g(20.4mmol)をトルエン120mlに溶解させ、ナトリウム−Tert−ブトキシド5.89g(61.3mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(0)0.24g(0.41mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.25ml(0.61mmol)を添加した後、窒素気流下で2時間還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=4/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式2−2−2の化合物(5.2g、収率50%)を得た。
MS:[M+H]=1176。
【0053】
<実施例3>下記化学式2−4−4で示される化合物の製造
【化17】

1)前記化学式2−4−4で示される化合物を製造するためのアリールアミンの合成(4−(N−フェニル−N−フェニルアミノ)フェニル−1−ビフェニルアミン)
4−ブロモフェニル−N−フェニル−N−フェニルアミン17.4g(53.7mmol)と4−アミノビフェニル9.99g(59.0mmol)をトルエン250mlに溶解させ、ナトリウム−Tert−ブトキシド17.02g(177.1mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.68g(1.2mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.72ml(1.8mmol)を添加した後、窒素気流下で2時間還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、アリールアミン連結基(16g、収率73%)を得た。
MS:[M+H]=412。
2)化学式b 4.7g(8.3mmol)と4−(N−フェニル−N−フェニルアミノ)フェニル−1−ビフェニルアミン7.9g(19.2mmol)をトルエン150mlに溶解させ、ナトリウム−Tert−ブトキシド5.53g(57.5mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.22g(0.38mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.23ml(0.58mmol)を添加した後、窒素気流下で2時間還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=4/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式2−4−4の化合物(4.9g、収率48%)を得た。
MS:[M+H]=1227。
【0054】
<実施例4>下記化学式2−18−18で示される化合物の製造
【化18】

1)前記化学式2−18−18で示される化合物を製造するためのアリールアミンの合成(4−(N−フェニル−N−ナフチルアミノ)フェニル−1−フェニルアミン)
4−ブロモフェニル−N−フェニル−N−ナフチルアミン7.00g(18.7mmol)とアニリン2.56ml(28.1mmol)をトルエン100mlに溶解させ、ナトリウム−Tert−ブトキシド5.40g(56.1mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.22g(0.37mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.28ml(0.37mmol)を添加した後、窒素気流下で2時間還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、アリールアミン連結基(5.1g、収率70%)を得た。
MS:[M+H]=386。
2)化学式b 2.5g(4.4mmol)と4−(N−フェニル−N−ナフチルアミノ)フェニル−1−フェニルアミン3.86g(10.0mmol)をトルエン50mlに溶解させ、ナトリウム−Tert−ブトキシド1.26g(13.2mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(0)0.08g(0.08mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.04ml(0.13mmol)を添加した後、窒素気流下で2時間還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=4/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式2−18−18の化合物(2.5g、収率49%)を得た。
MS:[M+H]=1175。
【0055】
<実施例5>下記化学式2−19−19で示される化合物の製造
【化19】

1)前記化学式2−19−19で示される化合物を製造するためのアリールアミンの合成(4−(N−フェニル−N−ナフチルアミノ)フェニル−1−ナフチルアミン)
4−ブロモフェニル−N−フェニル−N−ナフチルアミン14.0g(37.4mmol)と1−ナフチルアミン6.43g(44.9mmol)をトルエン200mlに溶解させた後、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.645g(1.12mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.74ml(1.5mmol)、およびナトリウム−Tert−ブトキシド8.99g(93.5mmol)を添加した。窒素気流下で2時間還流した後、反応溶液に蒸留水を入れ、反応を終結させた。有機層を抽出してノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1展開溶媒でカラム分離し、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、アリールアミン連結基(8.53g、収率52.2%)を得た。
MS:[M+H]=437。
2)化学式b 5.00g(8.88mmol)と4−(N−フェニル−N−ナフチルアミノ)フェニル−1−ナフチルアミン8.53g(19.5mmol)をトルエン50mlに溶解させた後、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.204g(0.360mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.31ml(0.62mmol)、およびナトリウム−Tert−ブトキシド4.69g(48.8mmol)を添加した。窒素気流下で2時間還流した後、反応溶液に蒸留水を入れ、反応を終結させた。有機層を抽出してノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=8/1展開溶媒でカラム分離し、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式2−19−19の化合物(5.60g、収率49.5%)を得た。
MS:[M+H]=1229。
【0056】
<実施例6>下記化学式2−21−21で示される化合物の製造
【化20】

1)前記化学式2−21−21で示される化合物を製造するためのアリールアミンの合成(4−(N−フェニル−N−ナフチルアミノ)フェニル−1−ビフェニルアミン)
4−ブロモフェニル−N−フェニル−N−ナフチルアミン14.0g(37.4mmol)と4−アミノビフェニル6.96g(41.2mmol)をトルエン200mlに溶解させた後、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.47g(0.82mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.50ml(1.2mmol)、およびナトリウム−Tert−ブトキシド11.86g(123.4mmol)を添加した。窒素気流下で2時間還流した後、反応溶液に蒸留水を入れ、反応を終結させた。有機層を抽出してノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1展開溶媒でカラム分離し、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、アリールアミン連結基(7.5g、収率43%)を得た。
MS:[M+H]=462。
2)化学式b 3.3g(5.8mmol)と4−(N−フェニル−N−ナフチルアミノ)フェニル−1−ビフェニルアミン5.90g(12.8mmol)をトルエン70mlに溶解させた後、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.15g(0.26mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.16ml(0.38mmol)、およびナトリウム−Tert−ブトキシド3.68g(38.3mmol)を添加した。窒素気流下で2時間還流した後、反応溶液に蒸留水を入れ、反応を終結させた。有機層を抽出してノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=8/1展開溶媒でカラム分離し、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式2−21−21の化合物(3.9g、収率51%)を得た。
MS:[M+H]=1229。
【0057】
<実施例7>下記化学式2−256−256で示される化合物の製造
【化21】

1)前記化学式2−256−256で示される化合物を製造するためのアリールアミンの合成(4−(N,N−ジフェニルアミノ)−ビフェニル−アニリン)
4−クロロビフェニル−N,N−ジフェニルアミン4.00g(11.2mmol)とアニリン1.13ml(12.4mmol)をトルエン100mlに溶解させた後、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.129g(0.225mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.17ml(0.34mmol)、およびナトリウム−Tert−ブトキシド2.70g(28.1mmol)を添加した。窒素気流下で5時間還流した後、反応溶液に蒸留水を入れ、反応を終結させた。有機層を抽出してノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=10/1展開溶媒でカラム分離し、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、アミン誘導体アリールアミン連結基(3.77g、収率81.3%)を得た。
MS:[M+H]=413。
2)化学式b 2.30g(4.08mmol)と4−(N,N−ジフェニルアミノ)−ビフェニル−アニリン3.70g(8.97mmol)をトルエン30mlに溶解させた後、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.094g(0.16mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.14ml(0.29mmol)、およびナトリウム−Tert−ブトキシド2.16g(22.4mmol)を添加した。窒素気流下で2時間還流した後、反応溶液に蒸留水を入れ、反応を終結させた。有機層を抽出してノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=8/1展開溶媒でカラム分離し、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式2−256−256の化合物(2.7g、収率54%)を得た。
MS:[M+H]=1229。
【0058】
<実施例8>下記化学式3−2−2で示される化合物の製造
【化22】

1)前記化学式3−2−2で示される化合物を製造するためのアリールアミンの合成(4−(N−フェニル−N−フェニルアミノ)フェニル−1−ナフチルアミン)
前記化学式2−2−2で示される化合物のアリールアミン連結基の合成法と同一である。
2)化学式bで示される出発物質(10.0g、17.8mmol)をTHF 200mlに完全に溶かし、4−クロロ−フェニルボロン酸(4−chloro−phenylboronic acid)(8.30g、53.3mmol)、炭酸カリウム(potassium carbonate)2M溶液、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0)(0.62g、0.53mmol)、エタノール10mlを入れて24時間還流した。反応が終わった後、常温に冷却して濾過した。水とエタノール(ethanol)で数回洗浄した。エタノールで再結晶化し、真空乾燥して、化合物(9.5g、85%収率)を得た。
MS:[M+H]=627。
上記の反応によって得られた化合物5.00g(7.98mmol)と4−(N−フェニル−N−フェニルアミノ)フェニル−1−ナフチルアミン7.09g(18.4mmol)をトルエン120mlに溶解させ、ナトリウム−Tert−ブトキシド5.29g(55.0mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(0)0.21g(0.37mmol)、50wt%トリ−tert−ブチルホスフィントルエン溶液0.22ml(0.55mmol)を添加した後、窒素気流下で2時間還流した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させ、有機層を抽出した。ノルマルヘキサン/テトラヒドロフラン=4/1溶媒でカラム分離した後、石油エーテルに攪拌した後、真空乾燥して、化学式3−2−2の化合物(5.6g、収率53%)を得た。
MS:[M+H]=1327。
【0059】
<実験例1>有機発光素子の製造
ITO(indium tin oxide)が1,000Å厚さで薄膜コーティングされたガラス基板(corning 7059 glass)を、洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波で洗浄した。この時、洗剤としてはFischer Co.の製品を使用し、蒸留水としてはMillipore Co.の製品のフィルタ(Filter)で2回フィルターリングした蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間行った。蒸留水による洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄を行い、乾燥した後にプラズマ洗浄機に移送した。また、酸素プラズマを利用して前記基板を5分間乾式洗浄した後、真空蒸着機に基板を移送した。
上記のように準備したITO透明電極上に下記化学式の化合物であるヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(hexanitrile hexaazatriphenylene:以下、HATという)を80Å厚さで熱真空蒸着してITO導電層およびN型有機物を有する正極を形成した。この正極によって基板と正孔注入層との間の界面特性を向上させることができる。その次、前記薄膜上に前記化学式2−1−1の化合物を800Å厚さで蒸着して正孔注入層を形成した。
【化23】

前記層上にNPBを300Å厚さで蒸着して正孔輸送層を形成した後、この上にAlqを300Å厚さで蒸着して発光層を形成した。前記発光層上に下記化学式の電子輸送層物質を200Å厚さで蒸着して電子輸送層を形成した。
【化24】

前記電子輸送層上に12Å厚さのフッ化リチウム(LiF)と2,000Å厚さのアルミニウムを順次蒸着して負極を形成した。
前記の過程において、有機物の蒸着速度は0.3〜0.8Å/secを維持した。また、負極のフッ化リチウムは0.3Å/sec、アルミニウムは1.5〜2.5Å/secの蒸着速度を維持した。蒸着時における真空度は1〜3×10−7を維持した。
製造された素子は順方向電流密度100mA/cmにおいて8.78Vの電界を示し、2.01lm/Wの光効率を示すスペクトルが観察された。このように、素子が前記駆動電圧で作動して発光するということは、前記基板上に形成した薄膜と正孔輸送層との間に層を形成した前記化学式2−1−1の化合物が正孔注入の役割をするということを示す。
【0060】
<実験例2>有機発光素子の製造
前記実験例1において、正孔注入層として用いた化学式2−1−1の化合物の代わりに化学式2−2−2の化合物を用いたことを除いては同じ素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度100mA/cmにおいて8.75Vの電界を示し、2.01lm/Wの光効率を示すスペクトルが観察された。
【0061】
<実験例3>有機発光素子の製造
前記実験例1において、正孔注入層として用いた化学式2−1−1の化合物の代わりに化学式2−4−4の化合物を用いたことを除いては同じ素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度100mA/cmにおいて7.36Vの電界を示し、2.12lm/Wの光効率を示すスペクトルが観察された。
【0062】
<実験例4>有機発光素子の製造
前記実験例1において、正孔注入層として用いた化学式2−1−1の化合物の代わりに化学式2−18−18の化合物を用いたことを除いては同じ素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度100mA/cmにおいて8.58Vの電界を示し、1.97lm/Wの光効率を示すスペクトルが観察された。
【0063】
<実験例5>有機発光素子の製造
前記実験例1において、正孔注入層として用いた化学式2−1−1の化合物の代わりに化学式2−19−19の化合物を用いたことを除いては同じ素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度100mA/cmにおいて9.20Vの電界を示し、2.36lm/Wの光効率を示すスペクトルが観察された。
【0064】
<実験例6>有機発光素子の製造
前記実験例1において、正孔注入層として用いた化学式2−1−1の化合物の代わりに化学式2−21−21の化合物を用いたことを除いては同じ素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度100mA/cmにおいて8.18Vの電界を示し、2.67lm/Wの光効率を示すスペクトルが観察された。
【0065】
<実験例7>有機発光素子の製造
前記実験例1において、正孔注入層として用いた化学式2−1−1の化合物の代わりに化学式2−256−256の化合物を用いたことを除いては同じ素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度100mA/cmにおいて6.79Vの電界を示し、1.83lm/Wの光効率を示すスペクトルが観察された。
【0066】
<実施例8>有機発光素子の製造
前記実施例1において、正孔注入層として用いた化学式2−1−1の化合物の代わりに化学式3−2−2の化合物を用いたことを除いては同じ素子を製作した。
製造された素子は、順方向電流密度100mA/cmにおいて8.91Vの電界を示し、2.08lm/Wの光効率を示すスペクトルが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1:
【化1】

[前記化学式1において、
XはCまたはSiであり、
Yは互いに同じであるか異なり、各々独立に、直接結合;2価の芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された2価の芳香族炭化水素;2価の複素環基;またはニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された2価の複素環基であり、
R1〜R11は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアリールアミン基、置換もしくは非置換の複素環基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基、またはエステル基であり、ここで、これらは互いに隣接する基と脂肪族、芳香族またはヘテロの縮合環を形成することができ、
R12およびR13は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の複素環基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン基、アミド基またはエステル基であり、ここで、これらは互いに隣接する基と脂肪族、芳香族またはヘテロの縮合環を形成することができ、
R7およびR8は直接連結されるか、O、S、NR、PR、C=O、CRR’およびSiRR’からなる群から選択される基と共に縮合環を形成することができ、ここで、RおよびR’は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアリールアミン基、置換もしくは非置換の複素環基、ニトリル基、アミド基またはエステル基であり、ここで、RおよびR’は縮合環を形成してスピロ化合物を形成することができ、
pおよびqは各々独立に1〜5の整数であり、但し、pが2以上の整数であれば、qは1であり、qが2以上の整数であれば、pは1であり、
Aは下式:
【化2】

であり、
Bは下式:
【化3】

であり、
aおよびbは各々独立に0〜10の整数であり、
Y1〜Y4は互いに同じであるか異なり、各々独立に、2価の芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された2価の芳香族炭化水素;2価の複素環基;またはニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基およびアミノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された2価の複素環基であり、
Z1〜Z8は互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素;炭素数1〜20の脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素および複素環基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された芳香族炭化水素;芳香族炭化水素で置換されたケイ素基;複素環基;ニトロ、ニトリル、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素および複素環基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換された複素環基;炭素数1〜20の脂肪族炭化水素または炭素数6〜20の芳香族炭化水素で置換されたチオフェン基;または芳香族炭化水素で置換されたホウ素基である]
で示される化合物。
【請求項2】
前記化学式1のYおよびY1〜Y4の2価の芳香族炭化水素が、フェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、ピレニレン、およびペリレニレンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化学式1のYおよびY1〜Y4の2価の複素環基が、チオフェニレン、フリレン、ピロリレン、イミダゾリレン、チアゾリレン、オキサゾリレン、オキサジアゾリレン、チアジアゾリレン、トリアゾリレン、ピリジレン、ピリダジレン、ピラジニレン、キノリレンおよびイソキノリレンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化学式1のZ1〜Z8の芳香族炭化水素が、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、およびペリレニルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化学式1のZ1〜Z8の複素環基が、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピリジル、ピリダジル、ピラジン、キノリン、およびイソキノリンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化学式1のZ1〜Z8の炭素数1〜20の脂肪族炭化水素は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、スチリル、およびアセチレン基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記化学式1のR1〜R13のアリール基は、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベン、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレン基、ピレニル基、およびペリレニル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化学式1のR1〜R11のアリールアミン基は、ジフェニルアミン基、ジナフチルアミン基、ジビフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、フェニルジフェニルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、カルバゾール基、およびトリフェニルアミン基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記化学式1のR1〜R13の複素環基は、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ピラダジン基、キノリニル基、イソキノリン基、およびアクリジル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記化学式1のR1〜R13のアルケニル基、アリール基、アリールアミン基および複素環基は、下記化学式からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物:
【化4】

前記化学式において、Zは水素、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素、アルコキシ基、アリールアミン基、アリール基、複素環基、ニトリル基、およびアセチレン基からなる群から選択される基である。
【請求項11】
前記化学式1が下記化学式5〜化学式10:
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

[前記化学式2〜化学式7において、
X、R1〜R11、AおよびBは化学式1で定義したのと同一である]
のうちのいずれか1つで示されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記化学式1において、AおよびBは各々独立に下記の基:
【化11A】

【化11B】

【化11C】

【化11D】

【化11E】

【化11F】

【化11G】

【化11H】

【化11I】

【化11J】

【化11K】

【化11L】

【化11M】

【化11N】

【化11O】

【化11P】

【化11Q】

【化11R】

【化11S】

【化11T】

【化11U】

【化11V】

【化11W】

【化11X】

【化11Y】

【化11Z】

【化12A】

【化12B】

【化12C】

【化12D】

【化12E】

【化12F】

【化12G】

【化12H】

【化12I】

からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
第1電極、1層以上の有機物層および第2電極を積層した形態で含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上が請求項1〜12のうちのいずれか一項の化合物を含むことを特徴とする有機発光素子。
【請求項14】
前記有機物層は正孔輸送層を含み、該正孔輸送層が請求項1〜12のうちのいずれか一項の化合物を含むことを特徴とする、請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記有機物層は正孔注入層を含み、該正孔注入層が請求項1〜12のうちのいずれか一項の化合物を含むことを特徴とする、請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記有機物層は正孔注入と正孔輸送を同時に行う層を含み、該層が請求項1〜12のうちのいずれか一項の化合物を含むことを特徴とする、請求項13に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−511606(P2010−511606A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539191(P2009−539191)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006178
【国際公開番号】WO2008/066358
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】