説明

新規な酸塩化物の製造方法

薬学的に活性な化合物の製造における中間体として有用な式(I)の酸ハロゲン化物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ薬学的に活性な化合物の製造における中間体として有用な酸ハロゲン化物の製造方法に関する。
【0002】
一の態様では、本発明は、式(I):
【0003】
【化7】

【0004】
(式中、
は水素であるか、非置換又はC−Cアルコキシ及びC−Cシクロアルキルから選択される1個以上の置換基で置換されている、C−Cアルキル又はC−Cアルケニルであり、
とRは、一緒になって、C−アルキレニル又はC−アルケニレニルを形成する)の化合物の製造方法であって、式(II):
【0005】
【化8】

【0006】
(式中、R、R及びRは、上記の意味を有する)の化合物を、トリ−C−Cアルキルアミンの存在下で、塩化チオニルと反応させることを含む、製造方法を提供する。
【0007】
他の態様では、本発明は、式(I):
【0008】
【化9】

【0009】
(式中、
は、水素であるか、非置換又はC−Cアルコキシ及びC−Cシクロアルキルから選択される1個以上の置換基で置換されている、C−Cアルキル又はC−Cアルケニルであり、
とRは、それらが結合する炭素原子と結合して、C−Cシクロアルキル又はC−Cシクロアルケニルを形成する)の化合物の製造方法であって、式(II):
【0010】
【化10】

【0011】
(式中、R、R及びRは、上記の意味を有する)の化合物を、トリ−C−Cアルキルアミンの存在下で、塩化チオニルと反応させることを含む、製造方法を提供する。
【0012】
式(I)の化合物は、例えば、EP1,020,439に記載されるもののような、有用な医薬化合物の合成の中間体として使用することができる。
【0013】
したがって、別の態様では、本発明は、下記スキーム:
【0014】
【化11】

【0015】
(式中、R、R及びRは、上記のとおりであり、Rは、C−Cアルキルである)に表される合成工程を含む方法を提供する。特に、方法は、式(I)の化合物を、ビス(2−アミノフェニル)ジスルフィドと反応させて、(2−アミノフェニル)ジスルフィドのアミノ基をアシル化して、アミノ基がアシル化されたジスルフィド生成物を、トリフェニルホスフィン、亜鉛又は水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤で還元して、チオール生成物を得て、チオール生成物のチオール基をRC(O)Clでアシル化することを含む。
【0016】
さらなる工程を、例えば、Shinkaiら、J.Med.Chem.43:3566-3572(2000)に記載された手順に従って実施してもよい。
【0017】
−Cアルキルの例は、メチル、エチル、直鎖又は分岐鎖のプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、例えば、CHCH(CHCH、ヘプチル及びオクチルを包含する。Rとしては、C−Cアルキルは、好ましくはCHCH(CHCHである。Rとしては、C−Cアルキルは、好ましくはイソプロピルである。
【0018】
−Cアルケニルの例は、任意の可能な位置で1個以上の二重結合を含む不飽和の炭素鎖、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル及びオクテニルを包含する。
【0019】
−Cシクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを包含する。好ましくは、例えば、シクロヘキシルである。C−Cシクロアルケニルの例は、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル及びシクロオクタジエニルを包含する。好ましくは、シクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロヘプテニルである。
【0020】
用語「トリ−C−Cアルキルアミン」は、式:RN(R)R(式中、R、R及びRは、独立して、C−Cアルキルである)の化合物を指し、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチル−メチルアミン、ジメチル−エチルアミン及びメチルエチルブチルアミンを包含する。
【0021】
方法は、20〜60℃の範囲、例えば、40〜55℃の範囲の温度で実施することができる。
【0022】
方法は、溶媒なしで、又は溶媒の存在下(例えば、芳香族又は塩素化溶媒の存在下、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン又はベンゼン、例えば、トルエンの存在下)で実施することができる。
【0023】
本発明のアシル化工程は、好ましくは塩基の存在下で行う。好ましい塩基は、有機塩基を包含し、ピリジンが好ましい有機塩基である。
【0024】
塩化チオニルの量は、反応混合物中の式(I)の化合物に対して、1.0〜2.0当量の範囲、例えば、1.0〜1.2当量、例えば、1.2当量の塩化チオニルであることができる。
【0025】
トリ−C−Cアルキルアミンの量は、式(I)の化合物の量に対して、5〜0.1モル%、例えば、0.3〜0.5モル%、例えば、0.3モル%の割合であることができる。
【0026】
別の態様では、本発明は、トリ−C−Cアルキルアミンの存在下で、塩化チオニルを連続的に添加して、上記の式(II)の化合物を反応させることを含む、上記の式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0027】
用語「連続的に添加」は、バッチのサイズに依存して、10分から5時間にわたって化合物(I)と場合により溶媒の溶液への塩化チオニルの添加を指す。化合物(I)と場合により溶媒の溶液を、塩化チオニルの添加に先立って、所望の温度に加熱する。この方法は、全ての成分が室温で混合され、混合物を所望の温度に加熱するバッチモードとは相違する。
【0028】
一つの態様では、本発明は、Rが−CHCH(CHCHである、式(I)の化合物の製造方法を提供する。別の態様では、本発明は、トリ−C−Cアルキルアミンがトリエチルアミン又はトリブチルアミンである、式(I)の化合物の製造方法を提供する。もう一つの態様では、本発明は、トリ−C−Cアルキルアミンがトリブチルアミンである、式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0029】
式(II)の化合物は、商業的に入手可能であるか、又は当業者に知られている手順で製造することができる。
【0030】
一般に、本出願において使用される命名法は、IUPACの体系的命名法の作成のためのバイルシュタイン研究所(Beilstein Institute)のコンピュータ化システムである、オートノム(AUTONOM)(商標)v.4.0に基づく。本明細書に示される化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を用いて作成した。本明細書の構造における炭素、酸素又は窒素原子に出現する任意の開いた結合価は、水素の存在を示す。
【0031】
実施例1
触媒の不存在下での1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニルクロリドの調製
【0032】
1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸103.0mmol及びシクロヘキサンカルボン酸38.9mmolの混合物を50℃に温めた。塩化チオニル12.4mL(170.3mmol=1.2当量、両方の酸の合計に対して)を、44〜50℃の温度で、16分間にわたって添加し(吸熱反応)、反応混合物を52〜53℃に保持した。1時間後、反応は完了せず(1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸5.2%及び1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸無水物13.8%)、6時間後でも、完了しなかった(1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸1.9%及び1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸無水物2.8%)。別の塩化チオニル4.0mL(55mmol)を添加し、52〜53℃での3時間で、反応は、ほぼ完了した(1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸0.18%及び1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸無水物0.47%)。揮発成分を、減圧下(60℃浴、3.3〜3.7mbar、次いで120℃浴、9.3〜9.6mbar)で除去した後、残渣20.21gが得られた(分析値1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニルクロリド96.6%、収率82.1%)。
【0033】
実施例2
0.02当量のトリエチルアミンの存在下での1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニルクロリドの調製
【0034】
1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸103.0mmol、シクロヘキサンカルボン酸38.9mmol及びトリエチルアミン396μL(2.84mmol=0.02当量、両方の酸の合計に対して)の混合物を、50℃に温めた。塩化チオニル12.4mL(170.3mmol=1.2当量、両方の酸の合計に対して)を、40〜54℃の温度で、18分間にわたって添加し(吸熱反応、ガスが激しく発生)、反応混合物を54〜55℃に保持した。1時間後、反応は完了した(1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸0.03%及び1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸無水物なし)。揮発成分を、減圧下(60℃浴、3.5〜4.3mbar、次いで120℃浴、10〜11mbar)で除去した後、残渣25.44gが得られた(分析値1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニルクロリド92.9%、収率99.4%)。
【0035】
実施例3
0.005当量のトリエチルアミンの存在下での1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニルクロリドの調製
【0036】
1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸103.0mmol、シクロヘキサンカルボン酸38.9mmol及びトリエチルアミン100μL(0.72mmol=0.005当量、両方の酸の合計に対して)の混合物を、50℃に温めた。塩化チオニル12.4mL(170.3mmol=1.2当量、両方の酸の合計に対して)を、41〜51℃の温度で、22分間にわたって添加し(吸熱反応、ガスが激しく発生)、反応混合物を54〜55℃に保持した。10分後、反応はほぼ完了した(1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸0.13%及び1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸無水物0.13%)。1.5時間後、反応は完了した(1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸0.04%及び1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸無水物なし)。揮発成分を、減圧下(60℃浴、3.5〜4.3mbar、次いで120℃浴、10〜11mbar)で除去した後、残渣26.19gが得られた(分析値1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニルクロリド92.9%、収率100%)。
【0037】
実施例4
0.005当量のトリブチルアミンの存在下での1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニルクロリドの調製
【0038】
1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸103.0mmol、シクロヘキサンカルボン酸38.9mmol及びトリブチルアミン173μL(0.71mmol=0.005当量、両方の酸の合計に対して)の混合物を、50℃に温めた。塩化チオニル12.4mL(170.3mmol=1.2当量、両方の酸の合計に対して)を、44〜51℃の温度で、16分間にわたって添加し(吸熱反応、ガスが激しく発生)、反応混合物を53〜55℃に保持した。15分後、反応は完了した(1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸0.08%及び1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボン酸無水物なし)。揮発成分を、減圧下(60℃浴、2.7〜1.9mbar、次いで120℃浴、8.8〜13mbar)で除去した後、残渣24.86gが得られた(分析値1−(2−エチル−ブチル)−シクロヘキサンカルボニルクロリド95.8%、収率100%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


(式中、
は、水素であるか、非置換又はC−Cアルコキシ及びC−Cシクロアルキルから選択される1個以上の置換基で置換されている、C−Cアルキル又はC−Cアルケニルであり、
とRは、それらが結合する炭素原子と結合して、C−Cシクロアルキル又はC−Cシクロアルケニルを形成する)の化合物の製造方法であって、
式(II):
【化2】


(式中、R、R及びRは、上記の意味を有する)の化合物を、トリ−C−Cアルキルアミンの存在下で、塩化チオニルと反応させることを含む、方法。
【請求項2】
さらに、式(III):
【化3】


の化合物を、式(I)の化合物でアシル化して、式(IV):
【化4】


(式中、R、R及びRは、請求項1記載のとおりである)の化合物を得る工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、式(IV)の化合物を、還元剤で還元して、式(V):
【化5】


(式中、R、R及びRは、請求項1記載のとおりである)の化合物を得る工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに、式(V)の化合物を、RC(O)Clでアシル化して、式(VI):
【化6】


(式中、R、R及びRは、請求項1記載のとおりであり、Rは、C−Cアルキルである)の化合物を得る工程を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
が、イソプロピルである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物に対して、塩化チオニルが、1.0〜2.0当量の塩化チオニルで存在する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
式(I)の化合物の量に対して、トリ−C−Cアルキルアミンの量が、5〜0.1モル%の割合である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
塩化チオニルを連続的に添加する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
式(I)において、RとRが、それらが結合する炭素原子と結合して、C−Cシクロアルキルを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
式(I)において、Rが、CHCH(CHCHであり、RとRが、それらが結合する炭素原子と結合して、シクロヘキシルを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
トリ−C−Cアルキルアミンが、トリエチルアミン又はトリブチルアミンである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
トリ−C−Cアルキルアミンが、トリブチルアミンである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
アシル化工程を、塩基の存在下で実施する、請求項2又は4記載の方法。
【請求項14】
塩基が、有機塩基である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
有機塩基が、ピリジンである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項4に従って製造される、請求項4記載の式(VI)の化合物。
【請求項17】
本明細書に記載された発明。

【公表番号】特表2009−513686(P2009−513686A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538324(P2008−538324)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067570
【国際公開番号】WO2007/051714
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】