説明

新規の組成物及びアジュバント

本発明は、先天性及び/又は特異的免疫応答を生じさせるアジュバントを対象とする。アジュバントは、Lip、Lipフラグメント又はLip変異型等の少なくとも一つのリポタンパク質を含有し、このリポタンパク質は少なくとも一つの五量体単位及び少なくとも一つの脂質部分を含む。リポタンパク質が重量/体積比でアジュバントの少なくとも10%を構成するアジュバントが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先天性及び/又は特異的免疫反応を生じさせるアジュバントを対象とする。
【背景技術】
【0002】
多くの抗原、より具体的には可溶性タンパク質で免疫化すると、応答の低下又はB細胞及び/若しくはT細胞の寛容が誘導されるが、これに対してアジュバントと混合した可溶性タンパク質で免疫化すると免疫が得られる傾向がある。多くのアジュバントは、免疫調節特性を有することが知られている微生物生産物を含有する。CFA中に存在する熱殺菌マイコバクテリウム、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、並びに百日咳毒素、コレラ毒素及び大腸菌(E. Coli)腸毒素等の細菌毒素はこのような特性を有する。細菌ポリンは、免疫調節特性を有する別のクラスの細菌成分であり、この特定の場合にはToll様受容体2 (TLR2)を介したNF-κB経路の活性化を経由する。
【0003】
髄膜炎菌性Lipタンパク質の淋菌性ホモログは、上皮細胞においてToll様受容体2に依存してサイトカインの放出及びNF-κBの活性化を刺激することが示されている。Fisetteら、2003、JBC、第47巻、46252ページ。具体的には、Fisetteらは、LipペプチドF62とも称される、トリアシル化されたLipペプチドPam3Cys-GGEKAAEAPAAEAS (配列番号1)が炎症性サイトカインの産生を刺激できることを実証した。炎症誘発性サイトカインの産生は、抗原の免疫原性を改善するアジュバントの能力に関連している。炎症誘発性サイトカインは、微生物感染した部分における局所的炎症反応を促進し、内皮組織への白血球の付着、及び接着分子P-セレクチン、E-セレクチン、ICAMS、VCAMSの上方調節による白血球の遊走に介在することが示されている(Hendersonら、1996、Microbiol Rev. 60: 316〜341に総説がある)。局所的な炎症部分におけるTNF-α及びIL-1 (及び他の炎症性メディエーター)に対する曝露は、樹状細胞が成熟し、リンパ組織のT細胞領域へ移動し、抗原を提示する能力にも影響を及ぼし得る。最もよく知られる炎症誘発性サイトカインの一つであるTNF-αはIL-1の産生を誘導することができ、IL-1は、順に、生体内におけるT細胞依存性の抗体反応を促進し、免疫寛容を排除し、IL-2受容体の発現を誘導し、CD4+ T細胞クローンの増殖を増大させることができる。IL-1はまた、粘膜バリアの透過性を増加させることもできるであろう(Coyneら、2002、Mol. Bio. Cell (9) 3218〜3234)。一般的に、炎症誘発性サイトカインはT及びBリンパ球を活性化することができ、IL-1は造血を刺激する効力が高い(Dinarello、1994、Adv Pharmacol.、25: 21〜51)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Fisetteら、2003、JBC、第47巻、46252ページ
【非特許文献2】Hendersonら、1996、Microbiol Rev. 60: 316〜341
【非特許文献3】Coyneら、2002、Mol. Bio. Cell (9) 3218〜3234
【非特許文献4】Dinarello、1994、Adv Pharmacol.、25: 21〜51
【発明の概要】
【0005】
いくつかのアジュバント候補が安全性の点から過去何年にもわたって評価されているが、承認されてヒトに対して使用できるのはそのうち少数のみであり、したがって、先天性免疫を増強しワクチンの効力を増強するための、効力が高く安全な新しいアジュバント及び免疫賦活性組成物が依然として必要とされている。したがって、本発明は、新しい組成物、アジュバント、免疫原性組成物、及びワクチンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の三つの異なるプロテオソーム調製物(V1プロテオソーム、V2プロテオソーム、及びプロトリン(Protollin))において髄膜炎菌性(8047株) Lipタンパク質が存在することを示すウェスタンイムノブロッティングを示す。
【図2】精製された髄膜炎菌性(8047株) Lipタンパク質のSDS-PAGE及び銀染色分析を示す。
【図3】プロテオソームアジュバント及びLipペプチドである脂質付加されたMC58 (配列番号9)が主としてTLR1及び2作動薬であることを示す、生体外におけるNF-κBアッセイの結果を示す。
【図4】Lipペプチドである脂質付加されたMC58 (配列番号9)によるNF-κB経路の活性化におけるTLR2の関与を確認する阻害アッセイの結果を示す。
【図5】精製されたLipタンパク質調製物(配列番号12)によるNF-κB経路の用量反応性の活性化を示す。
【図6】C57BL/6マウスにおいて、合成Lipペプチドである脂質付加されたMC58 (配列番号9) 10μgと組み合わせたSFV (A/抗ニューカレドニア型H1N1) 3μgを鼻に点滴注入した後の、インフルエンザに特異的な血清IgG応答を示す。
【図7】野生型C57BL/6マウスにおいて、精製されたLipタンパク質(配列番号12)調製物(調製物番号1)の用量を増加させて同時に点滴注入した場合の、SFV (3μg)の免疫原性を示す。
【図8】野生型C57BL/6マウスにおいて、精製されたLipタンパク質(配列番号12)調製物(調製物番号2)の用量を増加させて同時に点滴注入した場合の、SFV (3μg)の免疫原性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一実施形態において、少なくとも一つのリポタンパク質を含むアジュバントであって、上記リポタンパク質が少なくとも一つの第1の五量体単位を含み、上記リポタンパク質が重量/体積比で上記アジュバントの少なくとも10%を構成するアジュバントが提供される。
【0008】
別の実施形態において、少なくとも一つのLipのフラグメント及び/又は変異型を含む組成物であって、上記Lipのフラグメント及び/又は変異型が、少なくとも一つの第1の五量体単位及び少なくとも一つの脂質部分を含むリポタンパク質である組成物が提供される。
【0009】
また、少なくとも一つのアジュバントと少なくとも一つの抗原とを含む免疫原性組成物であって、上記少なくとも一つのアジュバントが少なくとも一つのリポタンパク質を含み、上記リポタンパク質が少なくとも一つの第1の五量体単位を含み、上記リポタンパク質が重量/体積比で上記アジュバントの少なくとも10%を構成する免疫原性組成物が記載される。
【0010】
本明細書において、本明細書に記載のアジュバント、組成物及び免疫原性組成物を製造し、これらを使用するための方法も提供され、ワクチンを製造し、これを使用する方法、及びヒトを含む哺乳動物において免疫性の応答を誘導する方法も含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
本明細書において使用される「免疫原性組成物」は、細胞性(T細胞)又は体液性(B細胞)、又はそれらの組み合わせであってもよい適応(特異的)免疫反応をプライミング(priming)し、その薬効を相乗的に増強し、活性化し、引き起こし、刺激し、強化し、増強し、増幅し、又は増大させることができる一つ又は複数の任意の化合物又は薬剤又は免疫原を指す。好ましくは、適応免疫反応は防御的であり、ウイルスの中和(ウイルスの感染性の低減、又は除去)又は他の型の免疫機能活性の中和を含んでもよい。
【0012】
「抗原」は、単独で、又は別の物質との組み合わせ、若しくは結合、若しくは融合により、細胞性及び/又は体液性免疫反応を引き起こすことができる化合物又は組成物を指す。抗原は、少なくともアミノ酸約5個からなるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、10アミノ酸長のペプチド、15アミノ酸長のフラグメント、20アミノ酸長又はこれより長いフラグメントであり得る。タンパク質の抗原性フラグメントは、総タンパク質から単離することができる、又は合成によって及び/若しくは組換えによって製造することができる。抗原は、「担体」ポリペプチド及びハプテン、例えば融合タンパク質又は別の組成物(以下に記載される)に融合若しくは(化学的に又は他の方法で)結合した担体ポリペプチドを含むことができる。抗原は組換えによって免疫化ベクター中に発現させることができ、免疫化ベクターは、抗原のコード配列をプロモーターに機能的に連結させたものを含む単純なネイキッドDNA、例えば単純な発現カセットであり得る。
【0013】
本明細書において使用される「微生物」は、自然界に存在する任意の細菌、ウイルス、寄生体、又はプリオンを含むが、これらに限定されない。抗原は、微生物の一部又は全体のいずれかに由来するものであり得る。例えば、微生物に由来する抗原としては、微生物の外側に存在するポリペプチドも含まれうる、これに限定されない。上記微生物に由来するポリペプチドは第2のポリペプチドと遺伝学的に又は化学的に融合させてもよく、第2のポリペプチドは上記微生物にとって内因性又は外因性であってもよい。
【0014】
本明細書において使用される「アレルゲン」は、ヒトを含む哺乳動物においてアレルギー反応を引き起こすことができる任意の免疫原性の化合物又は生物、又はその誘導体、変異型、若しくはフラグメントを意味する。アレルゲンの例は、室内塵ダニ、草花粉、ブタクサの花粉、ネコ、樹木、カビ、及び食物に由来する抗原を含むが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書において使用される「リポタンパク質」は、少なくとも一つのタンパク質及び少なくとも一つの脂質を含む任意の組成物を指す。脂質又はその誘導体は、タンパク質と共有結合的に又は非共有結合的に結合していてもよい。リポタンパク質の例は、髄膜炎菌を含むがこれに限定されない細菌の多様な株から単離されたものであってもよいLipタンパク質である。
【0016】
本明細書において使用される「脂質」は、水に不溶であるが非極性の有機溶媒に可溶であり、触れた感じが油っぽく、炭水化物及びタンパク質と一緒になって生細胞の主要な構造材料を構成する、脂肪、油、ワックス、ステロール、及びトリグリセリドを含む有機化合物の群のうち任意のものを指す。本発明の脂質は、パルミトイル、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリコール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びカルジオリピン(CL)を含むが、これらに限定されない。「脂質付加された」は、少なくとも一つの脂質が結合したタンパク質又はポリペプチド等の化合物を指す。脂質は、ポリペプチド又はタンパク質と共有結合的に又は非共有結合的に結合していてもよい。
【0017】
本明細書において使用される「アジュバント」は、免疫賦活剤又は免疫調節剤として作用することができる任意の組成物を指す。本発明のアジュバントは抗原と共に投与された場合に先天性免疫を誘導し、これによってこの抗原に対するTh1型及び/又はTh2型反応の適応免疫反応が開始する。Th1細胞は、典型的にはIFN-γ、IL-2、及びTNF-αを産生し、多数の病原体、特に細胞内の病原体に対する細胞性免疫に介在する(McGuirk P及びMills KH. Trends Immunol 2002: 23 (9): 450〜5)。Th2細胞は、一般的にIL-4、IL-5、及びIL-13を産生し、体液性反応に有利であり、蠕虫感染及び多くの細胞外の細菌に対して効果的な免疫反応を展開する際に非常に重要である(Whary MT及びFox JG.、Curr Top Med Chem 2004: 4 (5): 531〜8)。本発明のアジュバントは、先天性免疫応答又は適応反応を引き起こしてもよく、後者は哺乳動物に投与された場合に少なくとも一つの特異抗原に対して作用する。
【0018】
本明細書において使用される「先天性免疫応答(反応)」は、宿主が免疫細胞を産生する応答、及び/又は他の生物による感染から非特異的に宿主を保護する機構を指す。先天性免疫応答において、先天性の系の細胞は病原体を包括的に認識してこれに応答するが、適応免疫系とは異なり、長く持続する防御免疫又は免疫記憶を宿主に与えることは通常はない。先天性免疫応答は、感染に対して迅速な保護をもたらし、あらゆる種類の植物及び動物において見いだされる。
【0019】
本明細書において使用される「重量/体積」は、所与の体積の組成物に対する、組成物の成分の比率を指す。
【0020】
「プロテオソーム」とも称される、外膜タンパク質に基づく免疫賦活性組成物が過去に記載されている(例えば、Lowellら、J. Exp. Med. 167: 658、1988; Lowellら、Science 240: 800、1988; Lynchら、Biophys. J. 45: 104、1984: Lowell、出典:“New Generation Vaccines"2nd ed.、Marcel Dekker、Inc.、New York、Basil、Hong Kong、193ページ、1997;米国特許第5,726,292号;米国特許第4,707,543号を参照)。プロテオソームは、例えば先行技術において報告されているように調製されてもよい(例えば、米国特許第5,726,292号又は米国特許第5,985,284号を参照。これらは参照により本明細書に組み込まれる)。プロテオソームに基づく免疫賦活性組成物は、タンパク質、LPS、及びペプチド等の多様な種類の抗原と共に点滴注入(通常鼻腔内に)することもできるし、又はこれらと共に配合することもできる。プロテオソームに基づく免疫賦活性組成物は、インフルエンザウイルス(Planteら、Vaccine、2001; 20 (1-2): 218〜25)、呼吸器合胞体ウイルス(Cyrら、Vaccine、2007; 25 (29): 5378〜89; Cyrら、Vaccine、2007; 25 (16): 3228〜32)、及びネズミの実験モデルにおいて麻疹(Chabotら、Vaccine、2005: 23 (11): 1374〜83)に対する防御免疫を誘導する効力が非常に高いことが示されている。ヒトにおいて、プロテオソーム-シゲラLPSワクチンの状況で、プロテオソーム運搬機構は抗LPS抗体反応を促進する効力が非常に高かった。プロテオソーム及びサブユニットインフルエンザワクチンから作成された鼻腔内用ワクチンを使用した、ヒトに対する実験的なインフルエンザウイルス感染においても、強い防御免疫が引き起こされた(Langleyら、Vaccine、2006: 24 (10): 1601〜1608; Treanor Jら、Vaccine、2006: 24 (3): 254〜262)。また、プロテオソームを配合したバキュロウイルス由来のインフルエンザのヘマグルチニン(HA)をマウスの鼻腔内に投与すると、抗原を単独で投与したマウスと比較して、HAに特異的なIgG2aがより高いレベルで引き起こされ、IL-5レベルが著しく低減される(Jonesら、Vaccine、2003: 21 (25-26): 3706〜12)。
【0021】
プロテオソームに基づくアジュバントは主に、化学的に抽出された髄膜炎菌由来の外膜タンパク質(OMP) (主としてポリンA及びB、並びに4型OMP)を界面活性剤によって溶解状態に維持したものから構成される(Lowell GH. Proteosomes for Improved Nasal, Oral, or Injectable Vaccines、出典: Levine MM、Woodrow GC、Kaper JB、Cobon GS編、New Generation Vaccines、New York: Marcel Dekker、Inc. 1997: 193〜206)。プロテオソームは、ウイルス性又は細菌性の供給源に由来し、透析ろ過(diafiltration)又は慣習的な透析方法を用いて得られた精製又は組換えタンパク質等の多様な抗原と共に配合することができる。プロテオソームに基づくアジュバントは先行技術中に記載されるように調製されてもよい(例えば、米国特許第5,726,292号又は米国特許第5,985,284号を参照)。
【0022】
本明細書において使用される「LPS又はプロトリンを含むプロテオソーム」は、少なくとも1種のリポ糖と(例えば、外因的な添加によって)混合され、プロテオソーム-LPS組成物(免疫賦活性組成物として作用することができる)を提供するプロテオソーム調製物を指す。したがって、プロテオソーム-LPS組成物は、(1)髄膜炎菌等のグラム陰性細菌から調製されたプロテオソームの外膜タンパク質調製物及び(2)一つ又は複数のリポ糖の調製物を含む、プロトリンの二つの塩基性成分から構成されたものであり得る。
【0023】
本明細書において使用される「リポ糖」は、天然(単離された又は天然構造と合成することによって調製された)又は修飾されたリポ多糖又はリポオリゴ糖を指す。リポ糖は、第1の細菌にとって内因性のものであってもよく、あるいはフレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)若しくはプレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)等の第2のグラム陰性細菌、又は他のグラム陰性細菌(アルカリゲネス属(Alcaligenes)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrellia)、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クラミジア属(Chlamydia)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワードシエラ属(Edwardsiella)、エーリキア属(Ehrlicha)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、フランシセラ属(Francisella)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、ガードネレラ属(Gardnerella)、ヘモフィルス属(Hemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)(レプトスピラ・インターロガンス(Leptospira interrogans)を含む)、モラクセラ属(Moraxella)、モルガネラ属(Morganella)、ナイセリア属(Neiserria)、パスツレラ属(Pasteurella)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、他のプレシオモナス属(Plesiomonas)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas)(ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)を含む)、プレボテラ属(Prevotella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、他のシゲラ属(Shigella)、スピリルム属(Spirllum)、ベイヨネラ属(Veillonella)、ビブリオ属(Vibrio)、又はエルシニア属(Yersinia)の各菌を含む)に由来するものであってもよい。リポ糖の定義には、当技術分野において10個又はそれより少ない単糖サブユニットからなるグリカン鎖を有するリポ糖を意味するとされるリポオリゴ糖(LOS)、及び当技術分野において10個より多くの単糖サブユニットを含むグリカン鎖を有するリポ糖を意味するとされるリポ多糖(LPS)の両方が含まれる。したがって、LOS及びLPSは、内因性又は外因性であってもよい。リポ糖は、無毒化された形態(すなわち、リピドAコアが除去された形態)であってもよいし、又は無毒化されていない形態であってもよい。例えば、P.ジンジバリスLPS等の複数のリピドA種を含有するLPSを、本明細書に記載の組成物において使用してもよい(例えば、Darveauら、Infect. Immun. 72: 5041〜51 (2004)を参照)。リポ糖は、例えば米国特許出願公開第2003/0044425号中に記載されるように調製されてもよい。
【0024】
また、プロトリンは、脂質、糖脂質、糖タンパク質、又は小分子等、及びそれらの組み合わせを任意選択で含むとも理解されたい。「プロテオソーム: LPS又はプロトリン」は、例えば米国特許出願公開第2003/0044425号中に記載されるように調製されてもよく、これは参照により本明細書に組み込まれる。プロトリンとして知られているプロテオソーム-フレクスナー赤痢菌2a LPS複合体は、第I及び第II相臨床試験において100人を超える志願者に対し赤痢に対するワクチンとして投与されており、安全で毒性がないことが見いだされた(Friesら、Infect Immun 2001: 69 (7): 4545〜53)。プロトリンはLPSの用量を上限1.5mgとして鼻腔経由で運搬され、有害事象を伴うことはなかった(Friesら、Infect Immun、2001: 69 (7): 4545〜53); Jonesら、Vaccine、2004: 22 (27-28): 3691〜7)。プロトリンを組換え型の疫病抗原F1-V (それぞれ、莢膜タンパク質、及び毒性関連タンパク質)と組み合わせたものでマウスを免疫化することによってTNF-αの放出が増大し、これと並行して、F1-V単独の場合と比較して調節性サイトカインIL-10の分泌が抑制された(Jonesら、Vaccine、2005)。最後に、麻疹ウイルス成分抗原と共にプロトリンを投与すると、IgG1/IgG2aの比率がTh1型に偏った反応となる傾向がある(Chabotら、Vaccine、2005: 23 (11): 1374〜83)。
【0025】
本明細書において使用される「五量体単位」は、連続する任意のアミノ酸5個を指す。五量体単位は、より大きなポリペプチドの一部を形成してもよい。より具体的には、五量体単位は、Xが任意のアミノ酸であり得るAAEAX (配列番号7)等の連続するアミノ酸5個を含むが、これに限定されない。したがって、五量体単位は、下記配列の任意のもの又はすべてを含んでもよい: AAEAS (配列番号4)、AAEAA (配列番号5)、及びAAEAP (配列番号6)。
【0026】
本明細書において使用される「神経疾患又は障害」は、神経の異常を伴う任意の病状を指し、神経変性疾患又は障害を含むが、これらに限定されない。例えば、神経変性疾患及び障害は、選択性ニューロン及び/又はミエリン群の破壊又は変質を特徴とする神経疾患である。例示的な神経変性疾患は、脳卒中(虚血性又は出血性)、外傷性脳損傷及び脊髄損傷等の急性疾患、並びにアルツハイマー病、前頭側頭葉痴呆(タウオパチー)、末梢神経障害、パーキンソン病(PD)等のパーキンソン症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、プリオン病、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、ハンチントン病、封入体筋炎、及び軽度認知機能障害(MCI)を含む慢性疾患を含むが、これらに限定されない。神経変性疾患は進行性の神経系機能不全を伴い、多くの場合は、患部である中枢又は末梢神経系の構造の萎縮をもたらす。
【0027】
アルツハイマー病(AD)はβ-アミロイド関連疾患であり、65歳より上の人における痴呆を主として引き起こす進行性の神経変性障害である。ADは、特定の脳領域において相当量の神経細胞が失われること、及びAD患者の脳においてタンパク質性物質が蓄積されることを特徴とする。この蓄積物は神経原繊維錯綜及びβ-アミロイド斑を含有する。β-アミロイド斑の主要なタンパク質成分はAβである。Aβの蓄積の増加は、実質的にADの病因に大きく寄与すると仮定されており、本明細書において「β-アミロイド関連疾患」とも称される、パーキンソン病、ダウン症候群、びまん性レビー小体病、進行性核上性麻痺、及びオランダ型のアミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)、及び軽度認知機能障害(MCI)等の多様な他のアミロイドーシス及び神経障害にも関連する。
【0028】
本発明は、ナイセリア属菌から精製されたLipタンパク質及びナイセリア属菌に由来するリポペプチドが強い先天性免疫活性化剤として作用し、その作用は特異的なToll様受容体を介したものであることを実証する。精製されたLipタンパク質と共にインフルエンザウイルス成分ワクチン(SFV; A/ニューカレドニア型/20/99 (H1N1))を鼻腔内に点滴注入することによって免疫化すると、インフルエンザに特異的な血清IgGレベルがSFV単独の場合より有意に高く引き起こされることが示された(C57BL/6マウスにおいて)。
【0029】
したがって、本発明は、少なくとも一つのリポタンパク質を含むアジュバントであって、上記リポタンパク質が少なくとも一つの第1の五量体単位を含み、上記リポタンパク質が重量/体積比で上記アジュバントの少なくとも10%を構成するアジュバントを提供する。いくつかの態様において、リポタンパク質は、Lipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型である。Lipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型は、トリアシル化されたリポペプチドフラグメント(Pam3CysLip)及び/又はジアシル化されたリポペプチドフラグメント(Pam2CysLip)、並びにナイセリア属菌供給源に由来する他のリポペプチドフラグメントであり得る。Lipは髄膜炎菌又は他のナイセリア属菌から単離することができる。ナイセリア属菌株は、淋菌(N. ginorrhoeae)、髄膜炎菌、N.ラクタミカ(N. lactamica)、及びN.シネレア(N. cinerea)からなる種から選択されたものであってもよい。ナイセリア・ポリサッカレア(N. polysaccharea)等であるがこれに限定されない他のナイセリア属菌を使用することもできる。いくつかの態様において、Lipタンパク質は髄膜炎菌から単離される。髄膜炎菌は、B株であってもよい。いくつかの態様において、Lipは、髄膜炎菌の8047株から単離されたものであってもよい。本発明のLipタンパク質は、配列番号11を含むポリヌクレオチドによってコードされるものであってもよい。本発明のLipタンパク質は、配列番号12を含んでもよい。本発明のLipタンパク質のフラグメントは、配列番号13を含んでもよい。
【0030】
当技術分野においては、本発明のLipタンパク質は、本明細書に記載の多様な細菌又は細菌のホモログのうち任意のものから単離された野生型タンパク質であってもよいと理解される。また、本発明のLipタンパク質は、組換えによって作製されたものであってもよいし、及び/又は宿主細胞において過剰発現させたものであってもよい。組換えによって発現させたLipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型は、当業者に既知の方法によって、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から調製されてもよい。したがって、更なる態様において、本発明は、本発明の一つ又は複数のポリヌクレオチドを含む発現系、上記発現系によって遺伝子操作された宿主細胞、及び組換え技術による本発明のポリペプチドの作製に関する。
【0031】
本発明のポリペプチドを組換えによって作製する際には、宿主細胞を遺伝子操作することによって本発明の発現系若しくはその一部又はポリヌクレオチドを組み込むことができる。ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入は、Davisら、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、(1986)、及びSambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、2nd Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y. (1989)等の多くの標準的な実験マニュアル中に記載される方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、バリスティック導入(ballistic introduction)、及び感染等によって行うことができる。
【0032】
適切な宿主の代表的な例は、連鎖球菌(streptococcus)、ブドウ球菌(staphylococcus)、腸球菌(enterococcus)、大腸菌(E. coli)、ストレプトミセス属(Streptomyces)菌、シアノバクテリア(cyanobacteria)、枯草菌(Bacillus subtilis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、及び髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の細胞等であるがこれらに限定されない細菌性細胞、酵母、クリベロマイセス属(Kluveromyces)菌、サッカロミセス属(Saccharomyces)菌、担子菌、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及びアスペルギルス属(Aspergillus)菌の細胞等の真菌細胞、ショウジョウバエS2及びスポドプテラSf9の細胞等の昆虫細胞、CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293、CV-1、及びボウズ・メラノーマ(Bowes melanoma)細胞等の動物細胞、並びに裸子植物又は被子植物の細胞等の植物細胞を含む。
【0033】
本発明のポリペプチドを作製するためには多様な発現系を使用することができる。このようなベクターは、とりわけ、染色体、エピソーム、及びウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体因子由来、例えばバキュロウイルス、SV40等のパポーバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルス、及びアルファウイルス等のウイルス由来のベクター、並びにそれらの組み合わせに由来するベクター、例えばプラスミド及びバクテリオファージ遺伝因子に由来するベクター、例えばコスミド及びファージミドを含む。発現系の構造は、発現を調節し及び発生させる制御領域を含有してもよい。一般的には、ポリヌクレオチドを保持、伸長、若しくは発現させる際、及び/又は宿主においてポリペプチドを発現させる際に適切な任意の系又はベクターを、この場合の発現に使用してもよい。例えばSambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL中に記載される技術等の、既知であり常套的な多様な技術のうち任意の技術によって、適切なDNA配列を発現系に挿入してもよい。
【0034】
本発明の更に別の態様において、リポタンパク質はLipのフラグメントである。一態様において、LipのフラグメントはH.8ペプチドを含む(Woods JP、Aho EL、Barritt DS、Black JR、Connell TD、Kawula TH、Spinola SM、Cannon JG. 1987、The H8 antigen of pathogenic Neisseriae. Antonie Van Leeuwenhoek、1987; 53 (6): 533〜6: Fisetteら、2003)。当技術分野においては、淋菌の外膜抗原は、以下のアミノ酸88個からなる配列(配列番号2)によって記載することができ、配列中で下線を施したH.8エピトープ(CGGEKAAEAPAAEAS配列番号3)を含有することが理解される。
【0035】

更に、当技術分野においては、H.8エピトープを含むLipタンパク質のフラグメントはナイセリア属菌において高度に保存されていることが理解される。配列番号2のN末端は、配列番号2のアミノ酸1〜50又はアミノ酸1〜40又はアミノ酸1〜35であると考えることができる。本発明の別の実施形態において、Lipのフラグメントは、上記H.8ペプチドのN末端又はC末端に少なくとも一つの更なるアミノ酸を含んでもよい。
【0036】
本発明の一態様において、リポタンパク質は少なくとも一つの脂質を含む。本発明のリポタンパク質は、パルミトイル、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリコール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びカルジオリピン(CL)からなる群から選択される(がこれらに限定されない)少なくとも一つの脂質部分を含んでもよい。
【0037】
本発明の別の態様において、リポタンパク質は第1の五量体単位を含む。この第1の五量体単位は、AAEAS (配列番号4)、AAEAA (配列番号5)、及びAAEAP (配列番号6)からなる群から選択されたものであってもよい。別の態様において、リポタンパク質は、第2の五量体単位を更に含む。第2の五量体単位は、AAEAS (配列番号4)、AAEAA (配列番号5)、及びAAEAP (配列番号6)からなる群から選択されたものであってもよい。いくつかの態様において、第2の五量体単位は、上記第1の五量体単位と同一である。更に別の態様において、第2の五量体単位は、上記第1の五量体単位とは異なる。五量体単位は、リポタンパク質のアミノ酸配列中において連続していてもよい、又は一つ若しくは複数のアミノ酸によって分離されていてもよい。本発明のアジュバントは、組換えタンパク質である少なくとも一つのリポタンパク質を含んでもよい。更に、本発明のアジュバントは、合成された少なくとも一つのリポタンパク質を含んでもよい。
【0038】
別の態様において、本発明のアジュバントは、TLRファミリーの受容体等の先天性免疫受容体を介して作用することができる。いくつかの態様において、本発明のアジュバントは、哺乳動物に投与された場合に先天性免疫応答を誘導する。哺乳動物はヒトであってもよい。
【0039】
いくつかの態様において、アジュバントは少なくとも一つの抗原を更に含む。いくつかの態様において、抗原は、がん抗原、インフルエンザウイルス、ナイセリア属菌、マラリア原虫、HIV、カバノキ花粉、DerP1、草花粉、RSV、少なくとも一つのβ-アミロイド抗原、少なくとも一つのミエリン抗原、及び結核からなる群に由来するフラグメント及び/又は変異型及び/又はハイブリッド抗原を含む。より具体的には、抗原は、髄膜炎菌由来の少なくとも一つの抗原を含んでもよいが、これに限定されない。
【0040】
本発明のアジュバントは、筋肉内、静脈内、粘膜内、脳内、脊髄内経路皮下、舌下、経皮、及び吸入から選択される経路によって投与することができる。粘膜経路は、経鼻、直腸内、中咽頭内、眼内、又は尿生殖器粘膜内であってもよい。本発明のアジュバントは、少なくとも一つの賦形剤及び/又は薬学的に許容される担体を更に含んでもよい。
【0041】
本発明は更に、少なくとも一つのLipのフラグメント及び/又は変異型を含む組成物であって、上記Lipのフラグメント及び/又は変異型が、少なくとも一つの第1の五量体単位及び少なくとも一つの脂質部分を含むリポタンパク質である組成物を提供する。これらの組成物の少なくとも一つの脂質部分は、パルミトイル、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリコール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びカルジオリピン(CL)からなる群から選択されたものであってもよい。リポタンパク質は、組換えタンパク質又は合成されたものであってもよい。本発明の組成物は、配列番号11を含むポリヌクレオチドによってコードされたLipタンパク質又は配列番号12を含むLipタンパク質を含んでもよい。更に、本発明の組成物は、配列番号8を含んでもよい。
【0042】
本発明の組成物のリポタンパク質の第1の五量体単位は、Xが任意のアミノ酸であり得るAAEAX (配列番号7)からなる群から選択されたものであってもよい。いくつかの態様において、第1の五量体単位は、AAEAS (配列番号4)、AAEAA (配列番号5)、及びAAEAP (配列番号6)からなる群から選択される。別の態様において、組成物のリポタンパク質は、第2の五量体単位を更に含む。第2の五量体単位は、Xが任意のアミノ酸であり得るAAEAXからなる群から選択されたものであってもよい。いくつかの態様において、第2の五量体単位は、AAEAS (配列番号4)、AAEAA (配列番号5)、及びAAEAP (配列番号6)からなる群から選択される。いくつかの態様において、第2の五量体単位は、上記第1の五量体単位と同一である。いくつかの態様において、第2の五量体単位は、第1のペナトメリック(penatmeric)単位とは異なる。本発明の組成物は、アジュバントとして作用する能力を有し得る。アジュバントとして作用する場合、本発明の組成物は、先天性免疫受容体を介して作用してもよく、また、哺乳動物に投与された場合に免疫応答を誘導してもよい。本発明の組成物は、TLR1及び/又はTLR2及び/又はTLR4作動薬として作用してもよい。
【0043】
本発明の組成物は、少なくとも一つの抗原を含んでもよい。抗原は、がん抗原、インフルエンザウイルス、ナイセリア属菌、マラリア原虫、HIV、カバノキ花粉、DerP1、草花粉、RSV、少なくとも一つのβ-アミロイド抗原、少なくとも一つのミエリン抗原、及び結核からなる群に由来するフラグメント及び/又は変異型及び/又はハイブリッド抗原を含んでもよい。本発明の組成物は、β-アミロイド並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型及び/若しくは融合物をも含んでもよい。より具体的には、抗原は、少なくとも一つの髄膜炎菌由来の抗原を含んでもよいが、これに限定されない。組成物は、筋肉内、静脈内、粘膜内、脳内、脊髄内、皮下、舌下、経皮、及び吸入から選択される経路によって投与することができる。粘膜経路は、経鼻、直腸内、中咽頭内、眼内、又は尿生殖器粘膜内であってもよい。本発明の組成物は、少なくとも一つの賦形剤又は薬学的に許容される担体を含んでもよい。
【0044】
本発明は、神経疾患又は障害に罹患しているヒトを治療する方法であって、本発明のアジュバント、組成物、免疫原性組成物、及びワクチンの任意の一つを、単独で又は組み合わせによって投与するステップを含む方法を更に提供する。場合によっては、神経疾患は、β-アミロイド関連疾患であってもよい。β-アミロイド関連疾患はアルツハイマー病を含んでもよいが、これに限定されない。別の態様において、本発明のアジュバント及び組成物は、少なくとも一つのミエリン抗原と組み合わせてもよい。場合によっては、組成物は、脊髄再生又は多発性硬化症の治療又はβ-アミロイドによる免疫化を促進するために使用してもよい。
【0045】
本発明は、少なくとも一つのアジュバント及び少なくとも一つの抗原を含む免疫原性組成物であって、少なくとも一つのアジュバントが少なくとも一つのリポタンパク質を含み、上記リポタンパク質が少なくとも一つの第1の五量体単位を含み、上記リポタンパク質が重量/体積比で上記アジュバントの少なくとも10%を構成する免疫原性組成物を更に提供する。いくつかの態様において、少なくとも一つの抗原は、がん抗原、インフルエンザウイルス、ナイセリア属菌、マラリア原虫、HIV、カバノキ花粉、DerP1、草花粉、RSV、少なくとも一つのβ-アミロイド抗原、少なくとも一つのミエリン抗原、及び結核からなる群に由来するフラグメント及び/又は変異型及び/又はハイブリッド抗原を含む。本発明のワクチンは、筋肉内、静脈内、脳内、脊髄内、粘膜内、皮下、舌下、経皮、及び吸入から選択される経路によって投与することができる。粘膜経路は、経鼻、直腸内、中咽頭内、眼内、又は尿生殖器粘膜内であってもよい。
【0046】
アジュバントを製造する方法であって、
任意選択で、少なくとも一つのLip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型を含む少なくとも一つの細胞を培養するステップ、
任意選択で、上記少なくとも一つの細胞を加熱によって殺し、細胞ペーストを形成するステップ、
少なくとも一つの細胞から、上記少なくとも一つの細胞に由来する少なくとも一つのLip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型を含む組成物を放出させるステップであって、上記少なくとも一つの上記細胞を、少なくとも一つの脂質を可溶化することができる少なくとも一つの薬剤及び任意選択で浸透圧剤(osmolalic agent)と接触させ、上記Lip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型と細胞片とを含む混合物を形成することを含むステップ、
上記細胞片を上記Lip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型から分離することができる薬剤を添加するステップ、
上記分離された細胞片を上記混合物から分離するステップ、
少なくとも一つの脂質を可溶化することができる上記少なくとも一つの薬剤と、上記Lip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型とを除去するステップであって、上記少なくとも一つのLip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型は可溶性のままであるステップ、並びに
上記Lip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型を少なくとも一つの交換カラムによって更に精製するステップ
を含む方法が更に提供される。
【0047】
本発明の方法は、上記Lip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型を切断して、上記Lip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型の第1の断片及び第2の断片を形成するステップを更に含んでもよい。また、本発明の方法は、少なくとも一つの賦形剤及び/又は医薬担体を上記アジュバントに添加するステップを更に含んでもよい。培養物は、動物由来成分を含まない培地中において生育させてもよい。
【0048】
本発明の更に別の態様において、ワクチン又は免疫原性組成物を製造する方法であって、本発明のアジュバントを少なくとも一つの抗原と混合するステップを含む方法が提供される。
【0049】
別の実施形態において、ヒトにおいて免疫反応を引き起こすための方法であって、少なくとも一つの本発明の組成物を投与するステップを含む方法が提供される。一態様において、組成物は少なくとも一つのリポタンパク質を含むアジュバントであり、上記リポタンパク質が少なくとも一つの第1の五量体単位を含み、上記リポタンパク質が重量/体積比で上記アジュバントの少なくとも10%を構成する。別の態様において、組成物は少なくとも一つのリポタンパク質を含み、上記リポタンパク質が少なくとも一つの第1の五量体単位を含み、上記リポタンパク質が重量/体積比で上記アジュバントの少なくとも10%を構成する。免疫反応は、自然反応又は適応反応であってもよい。アジュバント及び/又は組成物は、抗原を更に含んでもよい。
【0050】
別の態様において、配列番号11を含むポリヌクレオチドによってコードされたLipタンパク質及び配列番号12を含むLipタンパク質が提供される。別の態様において、脂質付加された配列番号13を含むリポタンパク質が提供される。
【0051】
ワクチン調製物は一般的に、New Trends and Developments in Vaccines、Vollerら編、University Park Press、Baltimore、Md.、米国1978に記載されている。リポソーム中への封入は、例えばFullertonによる米国特許第4,235,877号に記載されている。タンパク質の巨大分子への結合は、例えば、Likhiteによる米国特許第4,372,945号及びArmorらによる米国特許第4,474,757号中に開示される。
【0052】
ワクチンの1回分用量中におけるタンパク質量は、典型的なワクチンにおいて重大で有害な副作用を伴うことなく免疫防御反応を誘導する量が選択される。この量は、使用される特異的な免疫原及びそれがどのように提示されるかに応じて変動するであろう。一般的に、1回分用量はタンパク質1〜1000μg、好ましくは2〜100μg、最も好ましくは4〜40μgを含むことになると予期される。特定のワクチンの最適量は、対象における適切な免疫反応の観察を伴う標準的な研究によって確かめることができる。対象は、初回のワクチン接種に続いて、1回又は数回の追加免疫を適切な間隔をあけて受けてもよい。
【0053】
本発明の配合物は、予防的及び治療的目的の両方において使用されてもよい。したがってある態様において、本発明は、本発明のワクチンの有効量を患者に投与するステップを含む治療方法を提供する。
【0054】
以下の例は本発明の多様な態様を例示する。これらの例は添付の特許請求の範囲項によって定義される本発明の範囲を制限するものではない。
【0055】
(実施例)
【実施例1】
【0056】
髄膜炎菌性Lipタンパク質プロテオソーム調製物の検出
髄膜炎菌性Lipタンパク質の存在を三つの異なるプロテオソーム調製物においてウェスタンイムノブロッティングにより評価した。簡潔には、プロテオソーム調製物をSDS-PAGE (BisTris 4〜12%連続勾配、200Vにおいて35分間の泳動)によって分離し、続いて高速トランスファーシステムiBlot (invitrogen)を使用して7分間かけてニトロセルロース膜上に転写した。Lipタンパク質の免疫検出を、mAb 2-1-CA2 (W. Zollingerにより提供)を一次抗体として使用して使用して実行した。アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウス抗体を二次抗体として使用した。イムノブロッティングをアルカリホスファターゼ基質NBT/BCIPによって室温で1分間発色させた。図1に示すように、試験したプロテオソーム(V1及びV2プロテオソームと呼ぶ)及びプロトリン(LPSを含むプロテオソーム)調製物の両方において、髄膜炎菌性Lipタンパク質のみかけの分子量範囲である19〜20kDaにおいてタンパク質のバンド(2本)が明瞭に検出された。
【実施例2】
【0057】
V2プロテオソーム調製物
Lipタンパク質を髄膜炎菌(8047株)から以下の方法を用いて精製した。プロテオソームは、本明細書において以下のステップによって調製することができ、V2プロテオソームと称する。
【0058】
双性イオン性界面活性剤による全細胞からのOMPの抽出
熱死させた髄膜炎菌に由来する外膜タンパク質を、双性イオン性界面活性剤を使用して可溶化した。髄膜炎菌(8047株)細胞ペースト二百五十(250)グラムを2〜8℃で12〜24時間かけて解凍し、pH5.0の1M酢酸ナトリウム緩衝液中に懸濁した。次いで、希釈した細胞ペーストを、IKAウルトラトゥラックス(Ultra Turrax)ホモジナイザーを使用して氷上で20〜30分間にわたって機械的にホモジナイズした。次いで、ホモジナイズした溶液を1.5倍容量のMilli-Q水で更に希釈し、室温で20〜30分間ホモジナイズした。続いて、1懸濁液体積の1M CaCl2/6%LDB緩衝液を添加し、懸濁液を更に60分間にわたって室温においてホモジナイズした。得られる細胞ペーストを次のエタノール沈殿ステップにおいて使用した。
【0059】
20%エタノール沈殿
最初に細胞ペーストを可溶化した後、4℃のエタノールを最終濃度が20%v/vエタノールとなるまでホモジナイズしながらゆっくりと添加した。このステップについて、懸濁液中においてエタノールが局所的に高濃度となり、目的とするタンパク質を沈殿させることのないように、高効率で混合しながらエタノールを低流速で添加した。エタノールを添加した後、懸濁液を室温で更に14〜16分間ホモジナイズした。次いで、使い捨てでスケール変更の可能な二つの0.1m2 PODデプスフィルター(Millipore、カタログ番号MCOHC01FS1)を使用して、ポンプによって混合物を流量100LMHで注入することによって、懸濁液を清澄化した。このろ過ステップによって、エタノールによっていずれも沈殿している細胞片(高分子量タンパク質)及び核酸が保持される。次いで、フィルターを、自家調製した等しい体積の追跡緩衝液(Chase buffer) (0.08M酢酸ナトリウム、0.4M CaCl2、20%EtOH、及び0.1%LDBを使用して速やかに追跡(chase)した。
【0060】
10倍濃縮
OMP-ろ液を、Pellicon Mini 0.1m2、30kDa限外ろ過カセット(Millipore、カタログ番号P2C030C01)を用いて流速330ml/分において、TMPを10〜11psiに手動で調整しながら10倍に濃縮した。後に、10倍濃縮物に対してmicro-BCAアッセイ(MTDV-0036、Rev. 2)を実行し、懸濁液を2〜8℃で一晩インキュベートする。
【0061】
[LDB] < 200ppmまで透析ろ過
(10倍濃縮後) 2日目に、LDB界面活性剤(6.3±0.1%)によって溶液を高濃度に濃縮したところ、溶液はエタノール、酢酸ナトリウム及び塩化カルシウム等の望ましくない不純物を含有していた。1)界面活性剤濃度を低減し、2)望ましくない不純物を減少させ、3)低分子量タンパク質を除去し、最終的に4) OMP及びLOSを溶解状態とし、ヒトに注射するための最終のPBS緩衝液中に存するように、10倍濃縮液に対して透析ろ過を実行した。
【0062】
別の30kDa限外ろ過カセット(Millipore、カタログ番号P2C030C01)を使用して透析ろ過を実行し、二つの異なる緩衝液を使用して全体を一定体積にて透析ろ過した。第1の緩衝液としてpH8.0で1倍のTEN緩衝液(50mM TrisBase、10mM EDTA、及び150mM NaCl)を用い、これに対して懸濁液を20DV分だけ透析ろ過した。生成物を更に、pH7.4のPBS緩衝液(Gibco、カタログ番号70011-044)に対して透析ろ過し、オンラインHPLC法(MTDV-0042)によって決定されるLDB濃度を200ppm未満とした。この透析ろ過ステップにおいては、まず最初にTEN緩衝液に対して透析ろ過することにより、カルシウムがPBSと接触する前に濃縮液からカルシウムを除去することが重要であった。このステップによって、PBS緩衝液中のリン酸塩と塩化カルシウム緩衝液に由来するカルシウムとの間で起こり得る沈殿の形成を回避した。
【0063】
4.5mg/mlへの濃縮、及び必要であれば[LDB] < 300ppmへの透析ろ過
LDBが200ppm未満である懸濁液を、同様の限外ろ過カセットを使用して濃縮し、また、濃縮液を10倍濃縮した後で得たmicro-BCAアッセイの結果を用い、50%の減少を考慮して4.5mg/mlとした。濃縮した後、LDB濃度を測定した。LDB濃度が300ppmより高い場合には、PBS緩衝液を追加して懸濁液を透析ろ過した。LDB濃度が300ppmより低い場合には、追加のPBS緩衝液を通すことはしなかった。
【0064】
滅菌ろ過
最終生成物を、バイオハザード対策用キャビネット中において、圧力を50psiで一定とし、滅菌グレードの使い捨て用0.22 Millipk-60フィルターユニット(Millipore、カタログ番号MPGL066H2)二つによって滅菌ろ過した。この滅菌ろ過したろ液からLipタンパク質を精製した。
【実施例3】
【0065】
Lipタンパク質の精製
実施例2のプロテオソーム調製物から以下に記載されるようにLipタンパク質を精製した。
【0066】
Lipの精製
1.滅菌ろ過したろ液をHAIIローディングバッファー(pH7.0の20mMリン酸ナトリウム、1mM EDTA、1%Empigen BB)中に10倍希釈した。
得られる溶液を、HAIIローディングバッファーで前もって平衡としておいたヒドロキシルアパタイトII型カラム(Bio-Rad)上に載せた。不純物のみがカラムに結合し、Lipタンパク質は素通り画分中に見いだされた。素通り画分を回収し、第2のステップにおいてカラムに適用した。
SDS-PAGEの銀染色及びウェスタンブロットを実行することによって陽性画分を同定した。
【0067】
2. Lipタンパク質を含有するHAII素通り画分をQローディングバッファー(pH8,5の20mM Tris、1mM EDTA、1%Empigen BB)中に2フォールドに希釈した。Tris濃度をTris塩基粉末によって20mMとなるよう調節し、pHを8.5となるよう調整する。
得られる溶液を、Qローディングバッファーで前もって平衡としておいたQセファロースHPカラム(GE Healthcare)に適用した。塩濃度をNaCl 0〜500mMで増加させた勾配によってカラム容量の8倍だけ溶出させ、続いてNaCl 500mM〜1Mの勾配によってカラム容量の2倍だけ溶出させた。Lipタンパク質はNaCl約200mMにおいてカラムから溶出され、SDS-PAGEの銀染色及びウェスタンブロットによって同定した。
【0068】
3. Lipタンパク質の陽性画分を集め、得られる溶液をcentricon (Millipore)により濃縮して体積9mlとすることによって、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分離が最適となるようにした。
濃縮したQ溶出液を、SEC緩衝液(pH8.5の20mM Tris、1mM EDTA、150mM NaCl、1%Empigen BB)で前もって平衡としておいたSuperdex75 2660 Hi load column (GE Healthcare)に適用し、高分子量の混入物を除去した。
このステップにおいてEmpigen BBを高い濃度に維持し、Lipタンパク質と混入物との凝集を妨げた。
SDS-PAGEの銀染色及びウェスタンブロットにより同定した後に、純粋なLipタンパク質を含有する画分を集めた。
【0069】
4. Empigen BB濃度を、QセファロースFFクロマトグラフィーによって低減した。Lip陽性SEC画分をプールしたものをQローディングバッファー(pH8.5の20mM Tris、1mM EDTA、1%Empigen BB)中に10倍希釈した。
得られる溶液を、Qローディングバッファーで前もって平衡としておいたQセファロースFFカラム(GE Healthcare)に添加した。Lipタンパク質の結合後に、0.1%Empigen BBを含有する同様の緩衝液でカラムを洗浄した。0.1%Empigen BB中の200mM NaClによるステップによってLipタンパク質を溶出させた。
陽性画分を集め、-20℃に維持した。最終のLipタンパク質調製物をSDS-PAGEによって展開し、続いて図2中に示すように、SilverXpressキット(invitrogen)中に記載される通りに銀染色した。また、2-1-CA2抗-Lipタンパク質抗体を使用するウェスタンイムノブロッティングによってタンパク質の同定も行った。抽出したOMPをネガティブモード(不純物のみが結合する)においてヒドロキシアパタイトII型(HAII)カラムに通した後、Qsepharose HP陰イオン交換カラムで精製した。高分子量の混入物を除去するために、superdex75によるサイズ排除精製ステップを使用した。
【実施例4】
【0070】
淋菌(F62株)に由来するLipペプチドフラグメントのアミノ酸配列
上記のように、H8ペプチドは、当技術分野において淋菌F62株の外膜抗原の一部であると理解され、以下のアミノ酸88個からなる配列(配列番号2)によって記載することができ、配列中で下線を施したH.8エピトープ(CGGEKAAEAPAAEAS配列番号3)を含有し得る。
【0071】

淋菌(F62)由来のH.8エピトープは、以下に示すように、脂質付加されたもの又は脂質付加されていないものであり得る。
【0072】

【実施例5】
【0073】
Lipタンパク質及びフラグメント-髄膜炎菌から合成されたペプチドの配列
髄膜炎菌MC58株(NCBI Genbank番号: NP_274531)に由来する対応するポリペプチドを単離し、以下に配列番号8として示す。
【0074】

髄膜炎菌MC58株(NCBI Genbank番号:脂質付加されていないNP_274531)に由来する対応するH.8ポリペプチドを合成し、以下に配列番号9及び10 (脂質付加されたMC58及び脂質付加されていない(NL) MC58)として示す。この配列は、脂質付加された形態又は脂質付加されていない形態のいずれでも示すことができる。
【0075】

【実施例6】
【0076】
髄膜炎菌(8047株)から単離されたLipタンパク質
髄膜炎菌(8047株)由来のDNA配列の塩基配列を決定し、以下に配列番号11として示す。髄膜炎菌(8047株)由来のLipのDNA配列(コード鎖):

髄膜炎菌(8047株)に由来する対応するLipタンパク質の配列を以下に配列番号12として示す。

配列番号12において三つの五量体単位に下線を施す。
【0077】
髄膜炎菌8047株に由来する対応するH8ポリペプチドを単離し、以下に配列番号13及び14として示し、これらは脂質付加された形態及び脂質付加されていない形態を表す。
【0078】

【実施例7】
【0079】
プロテオソームに基づくアジュバント及び脂質付加されたMC58 (配列番号9)はTLR1+2作動薬である
プロテオソームに基づくアジュバントは、先行技術において報告されているように調製されてもよい(例えば、米国特許第5,726,292号又は米国特許第5,985,284号を参照(本明細書においてV1プロテオソームと称される)。LPSを含むプロテオソームに基づくアジュバント組成物は、例えば米国特許出願公開第2003/0044425号に記載の通りに調製されてもよい(本明細書においてプロトリンと称される)。リポペプチドは多種多様な微生物中に存在し、TLR1/2又はTLR2/6ヘテロダイマーを介して免疫反応を刺激する。リポペプチドに対する主要な受容体はTLR2であり、TLR1との組み合わせで、トリアシル化されたリポペプチド(Pam3Cysが脂質付加されたペプチド等)を認識する、又はTLR6との組み合わせで、ジアシル化されたリポペプチド(Pam2Cysが脂質付加されたペプチド等)を認識する(Doyle及びO'Neill、2006)。Toll様受容体作動薬等の先天性免疫経路の構成要素は、NF-kBの移動を活性化し、これによってNF-kB結合要素を含有するプロモーターを活性化することが知られている(Janeway、CA、P Travers、M Walport、MJ Shlomchik. Immunobiology、Book. New York: Garland Publishing、2005、Akira、2006、TLR signaling. Curr Top Microbiol Immunol. 2006; 311: 1〜16. Janeway CA Jr、Medzhitov R. 2002. Innate immune recognition. Annu Rev Immunol. 20: 197〜216)。このTLR細胞に基づくアッセイは、NF-kBプロモーターエレメントを用いたレポーター構築物でトランスフェクトしたTLR発現細胞株からなり、これによりこのような活性について細胞培地を選別する。こうしたレポーター細胞株に、NF-kBが活性化された結果である分泌型アルカリホスファターゼ又は「SEAP」レポーター遺伝子を発現するプラスミドをトランスフェクトした。手順は本明細書に記載されている。ヒトTLR1及び2又はTLR4/MD2/CD14 (Invivogen、San Diego、CA)を安定的に発現するHEK293細胞を、5%CO2のインキュベーターを用いて24ウェルプレート中で、熱失活させたFBS10%を添加したDMEM500μl/ウェル(DMEM培地)中において培養した。80%のコンフルエントに達すると、培養物に、培地中のリポフェクタミン2000 (Invitrogen、Carlsbad、CA)の存在下、500ng/mlのSEAP (分泌型のヒト胚性アルカリホスファターゼ)レポータープラスミド(pNifty2-Seap) (Invivogen)を一過性にトランスフェクトした。プラスミドDNA及びリポフェクタミンを無血清培地中において別個に希釈し、室温で5分間インキュベートした。インキュベート後、リポフェクタミン-DMEM溶液で希釈したDNAを混合し、混合物を室温で20分間インキュベートした。DNA/リポフェクタミン混合物から、500ngのプラスミドDNA及びリポフェクタミンを含有する100μlのアリコートを、細胞培養プレートの各ウェルのDMEM培地400μlの上に加え、16時間にわたって培養を継続した。トランスフェクト後、培地を、血清を含まない新しいDMEM培地で置き換え、培養物にアジュバントを添加し、5時間にわたって培養を継続した。トランスフェクトした細胞を、プロテオソーム、Lipタンパク質、Lipペプチド、及び適切な対照のいずれかに対して5時間にわたって曝露した。
【0080】
多様な作動薬による処理の最後に、各処理物から培養上清50μlを採取し、製造元のプロトコール(Invivogen)に従うSEAPアッセイに使用した。簡潔には、培養上清をQUANTI-Blueリン酸塩基質(Invivogen)と共にインキュベートし、発生した紫色をプレートリーダーによって650nmにおいて測定した。データを650nmにおける相対的な光学濃度指標として示し、これはNF-κB活性を表す。
【0081】
TLR1/2又はTLR2/6を発現する細胞株において、NF-kB活性化に対してプロテオソーム、LipペプチドMC58 (配列番号9)、及びLipタンパク質(配列番号12)が及ぼす効果を試験した。それぞれ0μg、0.01μg、0.1μg、及び1.0μg濃度のプロテオソーム又はLipペプチドMC58 (配列番号9)に対して細胞を曝露した。この研究の結果を図3中に示す。NF-κBの活性化は、LipペプチドMC58 (配列番号9)及びプロテオソームがTLR1及びTLR2作動薬として濃度依存的に作用したことを示した(図3を参照)。この結果は、生体外における配列番号9によるTLRの関与を示し、Lipペプチド及びLipタンパク質が先天性免疫応答の活性化に関与することを示唆する。
【0082】
中和性の抗TLR2抗体の過剰量によってTLR2を特異的に阻害すると、MC58Lipペプチドの、TLR2依存性のNF-kB活性化を刺激する能力は消失した(図4)。また、TLR2を含有しない対照細胞は応答せず、このことは、TLR2がMC58Lipペプチドの標的とされる受容体であることを示した。図5中に示すように、TLR1/2を発現する細胞における、精製されたLipタンパク質によるNF-kBの活性化において、濃度依存性の応答が観察された。その一方、TLR4/MD2/CD14を発現する細胞株においてはNF-κBの活性化における有意な増加は観察されず、このことは、Lipタンパク質がTLR1/2作動薬であってTLR4作動薬ではないことを示唆した。図5の精製されたLipタンパク質調製物(配列番号12)によるNF-κB経路の用量反応性の活性化を参照のこと。
【実施例8】
【0083】
マウスにおける脂質付加されたMC58 (配列番号9)のアジュバント特性、SFVをモデル抗原として使用
C57BL/6マウスの群に、SFV (A/ニューカレドニア型/20/99) 3μgを、単独で又は合成LipペプチドMC58 (配列番号9) 10μgとの組み合わせで、軽度のイソフルラン麻酔下において0日目及び14日目に経鼻的に点滴注入した(鼻孔に12.5μLずつ)。28日目にマウスを安楽死させ、心臓穿刺によって全採血した。インフルエンザに特異的なIgGレベルを、採取した血清中において、28日目に(A/ニューカレドニア/20/99) SFVを固相化抗原として使用するELISAによって測定した。SFVを合成LipペプチドMC58 (配列番号9) 10μgと組み合わせたもので経鼻的に免疫化したマウスは、血清中におけるインフルエンザに特異的なIgGレベルが統計的に有意に高くなっていたことが示された(図6を参照)。この結果は、経鼻経路によって投与された場合の合成LipペプチドMC58 (配列番号9)のアジュバント特性を明瞭に実証する。
【実施例9】
【0084】
SFVをモデル抗原として使用した、マウスにおけるLipタンパク質のアジュバント能力(配列番号12)の評価(抗原特異的な抗体反応)
併用投与した抗原の免疫原性を増加させる、髄膜炎菌OMP調製物から単離されたLipタンパク質の能力を、SFVをモデル抗原として使用してマウスにおいて評価した。C57BL/6マウスの群に、インフルエンザ成分ワクチン(SFV) 3μg単独、又は精製されたLipタンパク質(配列番号12) 0.35μg若しくは1.0μgとSFVとを混合したものを、0日目及び14日目に(軽度の麻酔下において)経鼻的に点滴注入した。マウスを28日目に安楽死させた。心臓穿刺による安楽死によって血液を採取し、試験準備ができるまで血清試料を-80℃で凍結させた。二つの異なるLipタンパク質調製物(バッチ1及びバッチ2と称する)を使用して二つの類似する研究を実施した。
【0085】
抗原特異的な抗体のレベルを、相同SFVを固相化抗原として使用するELISAによって測定した。行った研究のいずれにおいても(図7及び図8)、試験したいずれかの用量のLipタンパク質(配列番号12)とSFVとを混合したものを点滴注入したマウスから採取された血清中において、統計的に有意に(p < 0.001及びp < 0.01)高いレベルの抗原特異的なIgGが測定された。この結果から、C57BL/6マウスにおいて抗体反応を引き起こす、精製されたLipタンパク質調製物のアジュバント特性が実証された。Lipタンパク質は特異的なTLRシグナル伝達を誘導することができ、このことは、Lipタンパク質又はそのフラグメントを含む組成物と共に配合されたワクチンを粘膜の免疫化及びワクチン接種に使用できることを示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのリポタンパク質を含むアジュバントであって、前記リポタンパク質が少なくとも一つの第1の五量体単位を含み、前記リポタンパク質が重量/体積比で前記アジュバントの少なくとも10%を構成する前記アジュバント。
【請求項2】
前記リポタンパク質がLipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型である、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項3】
前記Lipタンパク質がナイセリア属菌又はナイセリア属菌の任意のホモログから単離されたものである、請求項2に記載のアジュバント。
【請求項4】
前記ナイセリア属菌が、淋菌(N. gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N. meningitidis)、N.ラクタミカ(N. lactamica)、及びN.シネレア(N. cinereas)からなる種から選択される、請求項3に記載のアジュバント。
【請求項5】
前記ナイセリア属菌が髄膜炎菌である、請求項4に記載のアジュバント。
【請求項6】
前記髄膜炎菌がB株である、請求項5に記載のアジュバント。
【請求項7】
前記髄膜炎菌が8047株である、請求項6に記載のアジュバント。
【請求項8】
Lipタンパク質が、配列番号11を含むポリヌクレオチドによってコードされる、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項9】
Lipタンパク質が配列番号12を含む、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項10】
前記リポタンパク質がLipタンパク質のフラグメントである、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項11】
前記Lipタンパク質のフラグメントがH8ペプチドを含む、請求項10に記載のアジュバント。
【請求項12】
前記Lipタンパク質のフラグメントが前記H8ペプチドのC末端に少なくとも一つの更なるアミノ酸を含む、請求項11に記載のアジュバント。
【請求項13】
前記リポタンパク質が少なくとも一つのパルミトイル又は他の脂質修飾を含む、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項14】
前記リポタンパク質が、パルミトイル、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリコール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びカルジオリピン(CL)からなる群から選択される少なくとも一つの脂質部分を含む、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項15】
前記第1の五量体単位が、AAEAS (配列番号4)、AAEAA (配列番号5)、及びAAEAP (配列番号6)からなる群から選択される、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項16】
第2の五量体単位を更に含む、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項17】
前記第2の五量体単位が、AAEAS (配列番号4)、AAEAA (配列番号5)、及びAAEAP (配列番号6)からなる群から選択される、請求項16に記載のアジュバント。
【請求項18】
前記第2の五量体単位が前記第1の五量体単位と同一のものである、請求項17に記載のアジュバント。
【請求項19】
前記第2の五量体単位が前記第1のペナトメリック単位とは異なるものである、請求項17に記載のアジュバント。
【請求項20】
先天性免疫受容体を介して作用する能力を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のアジュバント。
【請求項21】
TLR1及び/又はTLR2及び/又はTLR4作動薬として作用する、請求項1から20のいずれか一項に記載のアジュバント。
【請求項22】
少なくとも一つの抗原を更に含む、請求項1から21のいずれか一項に記載のアジュバント。
【請求項23】
前記抗原が、がん抗原、インフルエンザウイルス、ナイセリア属菌、マラリア原虫、HIV、カバノキ花粉、DerP1、草花粉、RSV、少なくとも一つのβ-アミロイド抗原、少なくとも一つのミエリン抗原、及び結核からなる群に由来するフラグメント及び/又は変異型及び/又はハイブリッド抗原を含む、請求項22に記載のアジュバント。
【請求項24】
直腸内、筋肉内、静脈内、腹腔内、粘膜内、経腸、非経口、舌下、経皮、脳内、脊髄内、及び吸入から選択される経路によって投与することができる、請求項1から23のいずれか一項に記載のアジュバント。
【請求項25】
粘膜経路が経鼻、中咽頭内、眼内、又は尿生殖器粘膜内である、請求項24に記載のアジュバント。
【請求項26】
少なくとも一つの賦形剤及び/又は薬学的に許容される担体を更に含む、請求項1から25のいずれか一項に記載のアジュバント。
【請求項27】
ヒトに投与された場合に免疫反応を誘導する、請求項1から26のいずれか一項に記載のアジュバント。
【請求項28】
ヒトに投与された場合に先天性免疫応答を誘導する、請求項27に記載のアジュバント。
【請求項29】
前記少なくとも一つのリポタンパク質が組換えタンパク質である、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項30】
前記少なくとも一つのリポタンパク質が合成されたものである、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項31】
前記少なくとも一つのリポタンパク質が、配列番号1、配列番号2、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13からなる群から選択される、請求項1に記載のアジュバント。
【請求項32】
ヒトにおいて免疫反応を引き起こす方法であって、前記ヒトに請求項1から31のいずれか一項に記載のアジュバントを投与するステップを含む方法。
【請求項33】
少なくとも一つのLipタンパク質のフラグメント及び/又は変異型を含む組成物であって、前記Lipタンパク質のフラグメント及び/又は変異型が少なくとも一つの第1の五量体単位及び少なくとも一つの脂質部分を含むリポタンパク質である組成物。
【請求項34】
少なくとも一つの脂質部分が、パルミトイル、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリコール(PG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びカルジオリピン(CL)からなる群から選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記少なくとも少なくとも一つの脂質部分がパルミトイルである、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
前記第1の五量体単位が、Xが任意のアミノ酸であり得るAAEAXからなる群から選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
前記第1の五量体単位が、AAEAS (配列番号4)、AAEAA (配列番号5)、及びAAEAP (配列番号6)からなる群から選択される、請求項33に記載の組成物。
【請求項38】
前記少なくとも一つのLipのフラグメント及び/又は変異型、前記Lipタンパク質のフラグメント及び/又は変異型が第2の五量体単位を更に含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項39】
前記第2の五量体単位が、Xが任意のアミノ酸であり得るAAEAXからなる群から選択される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記第2の五量体単位が、AAEAS (配列番号4)、AAEAA (配列番号5)、及びAAEAP (配列番号6)からなる群から選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記第2の五量体単位が前記第1の五量体単位と同一である、請求項38に記載の組成物。
【請求項42】
前記第2の五量体単位が前記第1の五量体単位とは異なる、請求項38に記載の組成物。
【請求項43】
アジュバントとして作用する能力を有する、請求項33から42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記アジュバントが先天性免疫受容体を介して作用する、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
組成物がTLR1及び/又はTLR2及び/又はTLR4作動薬として作用することができる、請求項33に記載の組成物。
【請求項46】
少なくとも一つの抗原を更に含む、請求項33から45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記抗原が、がん抗原、インフルエンザウイルス、ナイセリア属菌、マラリア原虫、HIV、カバノキ花粉、DerP1、草花粉、RSV、少なくとも一つのβ-アミロイド抗原、少なくとも一つのミエリン抗原、及び結核からなる群に由来するフラグメント及び/又は変異型及び/又はハイブリッド抗原を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
直腸内、筋肉内、脳内、脊髄内経路、腹腔内、粘膜内、経腸、非経口、舌下、経皮、及び吸入から選択される経路によって投与することができる、請求項33から47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
粘膜経路が経鼻、中咽頭内、眼内、又は尿生殖器粘膜内である、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
少なくとも一つの賦形剤又は薬学的に許容される担体を更に含む、請求項33から49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
哺乳動物に投与された場合に先天性免疫応答を誘導する、請求項33から50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記少なくとも一つのリポタンパク質が組換えタンパク質である、請求項33に記載の組成物。
【請求項53】
前記少なくとも一つのリポタンパク質が合成されたものである、請求項33に記載の組成物。
【請求項54】
Lipタンパク質が配列番号11を含むポリヌクレオチドによってコードされる、請求項33に記載の組成物。
【請求項55】
Lipが配列番号12を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項56】
Lipタンパク質の前記フラグメントが配列番号13である、請求項33に記載の組成物。
【請求項57】
神経疾患に罹患しているヒトを治療する方法であって、前記ヒトに請求項33から56のいずれか一項に記載の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項58】
前記神経疾患がβ-アミロイド関連疾患である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記β-アミロイド関連疾患がアルツハイマー病である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
少なくとも一つのリポタンパク質を含む少なくとも一つのアジュバント及び少なくとも一つの抗原を含む免疫原性組成物であって、前記リポタンパク質が少なくとも一つの第1の五量体単位を含み、前記リポタンパク質が重量/体積比で前記アジュバントの少なくとも10%を構成する前記免疫原性組成物。
【請求項61】
前記少なくとも一つの抗原が、がん抗原、インフルエンザウイルス、ナイセリア属菌、マラリア原虫、HIV、カバノキ花粉、DerP1、草花粉、RSV、少なくとも一つのβ-アミロイド抗原、少なくとも一つのミエリン抗原、及び結核からなる群に由来するフラグメント及び/又は変異型及び/又はハイブリッド抗原を含む、請求項60に記載の免疫原性組成物。
【請求項62】
直腸内、筋肉内、静脈内、脳内、脊髄内、腹腔内、粘膜内、経腸、非経口、舌下、経皮、及び吸入から選択される経路によって投与することができる、請求項60に記載の免疫原性組成物。
【請求項63】
前記リポタンパク質が、髄膜炎菌8047株由来のLipタンパク質又はそのフラグメントである、請求項60に記載の免疫原性組成物。
【請求項64】
リポタンパク質が、髄膜炎菌株F62由来のLipタンパク質又はそのフラグメントである、請求項60に記載の免疫原性組成物。
【請求項65】
リポタンパク質が、髄膜炎菌株MC58由来のLipタンパク質又はそのフラグメントである、請求項60に記載の免疫原性組成物。
【請求項66】
前記組成物が脂質付加された配列番号1、配列番号2、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13を含む、請求項60に記載の免疫原性組成物。
【請求項67】
請求項60から66のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を含むワクチン。
【請求項68】
哺乳動物において免疫反応を引き起こす方法であって、前記哺乳動物に請求項60から67のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項69】
前記哺乳動物がヒトである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記免疫反応が先天性免疫応答である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
アジュバントを製造する方法であって、
任意選択で、少なくとも一つのLip並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型を含む少なくとも一つの細胞を培養するステップ、
任意選択で、前記少なくとも一つの細胞を加熱によって死滅させ、細胞ペーストを形成するステップ、
少なくとも一つの細胞から、前記少なくとも一つの細胞に由来する少なくとも一つのLipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型を含む組成物を放出させるステップであって、前記少なくとも一つの前記細胞を、少なくとも一つの脂質を可溶化することができる少なくとも一つの薬剤及び任意選択で浸透圧剤と接触させて、前記Lipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型と細胞片とを含む混合物を形成することを含むステップ、
前記細胞片を前記Lipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型から分離することができる薬剤を添加するステップ、
前記分離された細胞片を前記混合物から分離するステップ、
少なくとも一つの脂質を可溶化することができる前記少なくとも一つの薬剤と、前記Lipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型とを除去するステップであって、前記少なくとも一つのLipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型は可溶性のままであるステップ、並びに
前記Lipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型を少なくとも一つの交換カラムによって更に精製するステップ
を含む方法。
【請求項72】
前記Lipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型を切断して、前記Lipタンパク質並びに/又はそのフラグメント及び/若しくは変異型の第1の断片及び第2の断片を形成するステップを更に含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記アジュバントに少なくとも一つの賦形剤及び/又は医薬担体を添加するステップを更に含む、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記培養物を動物由来成分を含まない培地中において生育させる、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
免疫原性組成物を製造する方法であって、請求項71に記載のアジュバントを少なくとも一つの抗原と混合するステップを含む前記方法。
【請求項76】
配列番号11を含むポリヌクレオチドによってコードされるLipタンパク質。
【請求項77】
配列番号12を含むLipタンパク質。
【請求項78】
脂質付加された配列番号12を含むリポタンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−502054(P2012−502054A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526228(P2011−526228)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/056041
【国際公開番号】WO2010/028246
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(507026338)アイ ディー バイオメディカル コーポレーション オブ ケベック (1)
【Fターム(参考)】