説明

新規アラビノミコレート化合物

【課題】癌の治療又は予防剤として有用な、新規アラビノミコレート化合物の提供。
【解決手段】式(1):


〔式中、nは0又は1を表し、R1、R2、R14、R15、R3、R4、R5およびR6は、独立して水素原子等を表す〕で表され、少なくとも1つのミコロイル基を有する、アラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活活性を有する新規なD-アラビノミコレート化合物およびその製造方法に関する。当該化合物は、D-アラビノース化合物とミコバクテリウム・ボビス・ビーシージー(Mycobacterium bovis BCG)菌由来のミコール酸を有機化学的方法により縮合させるか、又は、ミコバクテリウム・ボビス・ビーシージー(Mycobacterium bovis BCG)菌由来の細胞壁骨格成分(Cell Wall Skeleton; 以下CWSと略する場合がある)を部分酸加水分解することによって得ることができる。
【背景技術】
【0002】
Mycobacterium bovis BCG Tokyo172株(以下BCG菌)は、結核菌近縁の分類学的位置づけを有する抗酸菌の一種であるが、これらの抗酸菌細胞壁には種々の免疫活性強化物質が含まれ、「アジュバント物質」として長年注目されてきた。この中には、強力な抗腫瘍性物質や感染制御活性を有する成分が知られているが、これらは元来結核菌の毒性物質(virulence factor)として報告されてきたものが多く、ヒトに免疫療法剤として用いるには不適切なものが多かった。一方で、これらの菌の細胞壁骨格成分(CWS)は、以前より悪性腫瘍の免疫療法剤として、特にヒト肺癌(adenocarcinoma)に有効とされてきた。
CWSはミコール酸とアラビノースがエステル結合したアラビノミコレート骨格を含むペプチドグリカンアラビノガラクタンミコレートコンプレックス(peptidoglycan arabinogalactan mycolate complex)と推定される巨大分子であり、ペプチドグリカンに含まれるムラミルジペプチド(MDP)や、ジアミノピメリン酸(DAP)等が免疫賦活物質として報告されている。しかしながら、その巨大分子構造の中でその他の部分が、免疫賦活活性を有するか否かは明らかにされていなかった。
一方、アラビノミコレートは、抗酸菌細胞壁に含まれる部分構造として知られていたが(非特許文献1を参照)、ミコール酸が天然物由来の高級脂肪酸であり、細胞壁骨格成分からの単離方法は知られていなかった。また、アラビノースが複数グリコシド結合したオリゴ糖の合成方法については報告されていたが(非特許文献2〜5を参照)、ミコール酸でエステル化されたアラビノミコレートの化学合成方法は全く知られていなかった。
【非特許文献1】McNeil MR, Daffe M, Brennan PJら著、J. Biol. Chem., 266(20), 13217-13223(1991).
【非特許文献2】J. Prandiら著、Chem. Commun., 2000, 659-660.
【非特許文献3】J. Prandiら著、Tetrahedron Lett., 2000, 41, 7447-7452.
【非特許文献4】T. L. Lowaryら著、J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 1251-1260.
【非特許文献5】M. K. Gurjarら著、J. Org. Chem., 2001, 66, 4657-4660.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の解決しようとする課題は、TNF−α産生誘導活性等の優れた免疫賦活活性を有する、新規なアラビノミコレート化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、CWSのミコール酸成分をアルカリ水解することによりCWSの抗腫瘍活性や、Th-1サイトカイン誘導能が失われることを見出した。このことから、ミコール酸を含む糖エステル部分に免疫賦活活性の必須構造が存在するのではないかと考えて、CWSを酸性の水溶液と有機溶媒の混合溶液中で限定(部分)加水分解処理することにより得られるCWSの部分構造を含む画分(以下、部分加水分解物と称する場合がある)の構造解析を行った。また、BCG加熱死菌体及び、これを加圧破砕後遠心分画して得られる細胞壁画分から脂質を有機溶媒で可能な限り除去した後の結合脂質(Bound Lipid; BL)画分についても上記と同様の限定分解処理を行い、CWSの部分構造を含む画分の構造解析を行った。その結果、CWSの免疫賦活活性を保持する部分加水分解物が、ミコール酸アラビノースエステル、すなわち本発明の化合物であることがわかった。
一方、本発明者らは、化学合成法による、BCG菌のCWSの部分構造であるアラビノミコレート化合物の調製を試みた。すなわち、BCG菌をアルカリ加水分解することによって得られるミコール酸を原料に用いてアラビノース誘導体と縮合し、本発明のアラビノミコレート化合物を調製すべく鋭意検討を行った。その結果、化学合成法で調製したアラビノミコレート化合物は、TNF-α産生促進活性を示し、免疫賦活活性化合物であることがわかった。
本発明は、上記の知見を元に完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、
【0005】
〔1〕 式(1):
【0006】
【化1】

〔式中、nは0又は1を表し、
1およびR6は、独立して水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基又はミコロイル基を表し、
2は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基又は置換もしくは無置換のアシル基を表し、
14及びR15は、独立して水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
3は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基、置換もしくは無置換のアシル基又は式(2):
【0007】
【化2】

(式中、mは1又は2を表し、R7およびR8は、独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基又は置換もしくは無置換のアシル基を表すか、あるいはR7およびR8はいっしょになってアセタール基又はケタール基を形成していてもよく、R16は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)
で表される基を表すか、あるいはR2およびR3はいっしょになってアセタール基又はケタール基を形成していてもよく、
4およびR5は、独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基、置換もしくは無置換のアシル基又は式(3):
【0008】
【化3】

(式中、R9は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基又は置換もしくは無置換のアシル基を表し、R10は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基又はミコロイル基を表し、R17は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)
で表される基を表す〕
で表され、少なくとも1つのミコロイル基を有する、アラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩;
〔2〕 式(1)において、nが0を表し、R1がミコロイル基を表し、R2およびR3は同一もしくは異なって、水素原子、ベンジル基又はメチル基をあらわすか、あるいはR2およびR3がいっしょになってベンジリデン基もしくはイソプロピリデン基を表し、R6が水素原子、ベンジル基又はメチル基を表す、〔1〕に記載の化合物又はその薬学上許容される塩;
〔3〕 式(1)において、nが1を表し、R1およびR6がミコロイル基を表し、R2およびR3が同一もしくは異なって、水素原子、ベンジル基又はメチル基をあらわすか、あるいはR2およびR3がいっしょになってベンジリデン基もしくはイソプロピリデン基を表し、R4、R5、R14及びR15が同一もしくは異なって、水素原子、メチル基又はベンジル基を表す、〔1〕に記載の化合物又はその薬学上許容される塩;
〔4〕 式(1)において、nが1を表し、R1およびR6が独立して水素原子又はミコロイル基を表し、R2およびR3同一もしくは異なって、水素原子、ベンジル基又はメチル基をあらわすか、あるいはR2およびR3がいっしょになってベンジリデン基もしくはイソプロピリデン基を表し、R4およびR5が式(3)で表される基を表し、式(3)において、R9が水素原子、メチル基又はベンジル基を表し、R10が水素原子、メチル基、ベンジル基又はミコロイル基を表し、R14、R15およびR17は独立して水素原子、メチル基又はベンジル基を表し、R1、R6およびR10の少なくとも一つはミコロイル基を表す、〔1〕に記載の化合物又はその薬学上許容される塩;
〔5〕 ミコロイル基が、ミコバクテリウム−ボビス−ビーシージー菌由来の細胞壁骨格成分を加水分解することによって得られる炭素数70〜90のミコール酸由来のミコロイル基である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩;
〔6〕 分子量が約1200〜7000である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩;
〔7〕 以下の(1)〜(3)の工程:
(1)ミコバクテリウム−ボビス−ビーシージー菌由来の細胞壁骨格成分を酸性水溶液及び有機溶媒との混合液下で部分酸加水分解する工程;
(2)前記(1)の生成物を、疎水性有機溶媒及び極性有機溶媒を移動相とする、順相のクロマトグラフィーで精製する工程;
(3)順相のクロマトグラフィーで、疎水性有機溶媒中の極性有機溶媒濃度1%〜30%において溶出する画分を回収する工程;
を含む方法で得られることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩;
〔8〕 疎水性有機溶媒がクロロホルムであり、極性有機溶媒がメタノールである、〔7〕に記載の化合物又はその薬学上許容される塩;
〔9〕 〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩を有効成分として含有する免疫賦活剤;
〔10〕 〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩を有効成分として含有するTNF−α産生促進剤;
〔11〕 〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩を有効成分として含有する癌治療剤又は予防剤;
〔12〕 〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物;
〔13〕 以下の(1)〜(3)の工程:
(1)ミコバクテリウム−ボビス−ビーシージー菌由来の細胞壁骨格成分を酸性の水溶液及び有機溶媒との混合液下で部分酸加水分解する工程;
(2)前記(1)の生成物を、疎水性有機溶媒及び極性有機溶媒を移動相とする順相のクロマトグラフィーで精製する工程;
(3)順相のカラムクロマトグラフィーで、疎水性有機溶媒中の極性有機溶媒濃度1%〜30%において溶出する画分を回収する工程;
を含むことを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩の製造方法;
〔14〕 疎水性有機溶媒がクロロホルムであり、極性有機溶媒がメタノールである、〔13〕に記載の製造方法;
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、免疫賦活剤として有用なアラビノミコレート化合物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
式(1)で表されるアラビノミコレート化合物における各置換基は詳しくはそれぞれ以下のものを意味する。
【0011】
本明細書において、アセタール基としては、置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキルアセタール基、置換もしくは無置換の6〜10員のアリールアセタール基が挙げられる。ケタール基としては、置換もしくは無置換の炭素数3〜10のジアルキルケタール基、又は置換もしくは無置換の6〜10のアリール基および置換もしくは無置換の炭素数1〜8のアルキル基を有するアリールアルキルケタール基等が挙げられる。
該アルキルアセタール基、アリールアセタール基、ジアルキルケタール基又はアリールアルキルケタール基が置換されている場合の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基が挙げられ、同一もしくは異なる1〜5の置換基で置換されていてもよい。
置換もしくは無置換のアルキルアセタール基として具体的には、メチレンアセタール、エチリデンアセタール、2,2,2−トリクロロエチリデンアセタール、メトキシメチレンアセタール、エトキシメチレンアセタール又は(4−メトキシフェニル)エチリデンアセタール等が挙げられる。
置換もしくは無置換のアリールアセタールとして具体的には、ベンジリデン、4-メトキシベンジリデン、4−クロロベンジリデン又は2-ニトロベンジリデン等が挙げられる。
置換もしくは無置換のジアルキルケタールとして具体的には、イソプロピリデン、1−t−ブチルエチリデンケタール等が挙げられる。
置換もしくは無置換のアリールアルキルケタールとして具体的には、1−フェニルエチリデンケタール等が挙げられる。
【0012】
アルキル基としては、例えば炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチル−1−プロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−メチルブチル、3−メチルブチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、5−メチルヘキシル、オクチル、1,5−ジメチルヘキシル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等が挙げられる。アルキル基として好ましくは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、更に好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖のアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖アルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル、アリル、プロペニル、1−メチルエテニル、ブテニル、1-エチルエテニル、1−メチル−2−プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4−ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等が挙げられる。アルケニル基として好ましくは、炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が挙げられ、更に好ましくは炭素数2〜4の直鎖又は分枝鎖のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば炭素数2〜10の直鎖又は分枝鎖アルケニル基が挙げられ、具体的には、エチニル、プロピニル、2-プロピニル、ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル−2−ブチニル、ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニリル、デシニル等が挙げられる。アルキニル基として好ましくは、炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキニル基が挙げられ、更に好ましくは炭素数2〜4の直鎖又は分枝鎖のアルキニル基が挙げられる。
【0013】
アルコキシ基とは、前記アルキル基が結合したオキシ基を表す。具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、2−ブトキシ、2−メチルプロポキシ、1,1−ジメチルエトキシ、ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、2−メチルブトキシ、1,1−ジメチルプロポキシ、1,2−ジメチルプロポキシ、3−メチルブトキシ、ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、2−メチルペントキシ、3,3−メチルブトキシ等が挙げられる。
アルコキシ基として、好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
【0014】
アルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニル基、およびアルキルスルフィニル基とは、それぞれ上記のアルキル基が結合したチオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルホニル基およびスルフィニル基を意味する。
例えば、アルキルチオ基として好ましくは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ又はブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基が挙げられる。
また、アルキルカルボニル基として好ましくは、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ブタノイル、2−メチルブタノイル、ペンタノイル、ピバロイル又はヘキサノイル等の、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基が挙げられる。
また、アルキルカルボニルオキシ基として好ましくは、アセトキシ、プロパノイルオキシ、2−メチルプロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、2−メチルブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、ピバロイルオキシ又はヘキサノイルオキシ等の、炭素数2〜6のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。
また、アルキルスルホニル基として好ましくは、メタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル、ブタンスルホニル又は2−プロパンスルホニル等の炭素数1〜4のアルキルスルホニル基が挙げられる。
また、アルキルスルフィニル基として好ましくは、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、プロパンスルフィニル、ブタンスルフィニル又は2-プロパンスルフィニル等の炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基が挙げられる。
【0015】
アルコキシカルボニル基とは、上記のアルコキシ基が結合したカルボニル基を意味する。例えば、アルコキシカルボニル基として好ましくは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル又はブトキシカルボニル等の炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0016】
シクロアルキル基としては、3〜6員のシクロアルキル基が挙げられ、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルが挙げられる。
シクロアルキルオキシ基は、前記シクロアルキル基が結合したオキシ基を表し、好ましくは、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ又はシクロヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0017】
アリール基としては、例えば炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が挙げられる。
アリールオキシ基とは、前記アリール基が結合したオキシ基を表し、具体的にはフェノキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。
【0018】
ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表し、好ましくはフッ素又は塩素を表す。
ハロアルキル基とは、1〜5個の同一もしくは異なるハロゲン原子で置換されたアルキル基を表す。具体的には、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−クロロエチル又はペンタフルオロエチル等が挙げられる。ハロアルキル基は、好ましくは、1〜3個のハロゲン原子で置換された炭素数1〜4のアルキル基を表す。
ハロアルコキシ基とは、1〜5個の同一もしくは異なるハロゲン原子で置換されたアルコキシ基を表す。具体的には、トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、2−クロロエトキシル又はペンタフルオロエトキシ等が挙げられる。ハロアルコキシ基は、好ましくは、1〜3個のハロゲン原子で置換された炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0019】
トリアルキルシリル基は、同一もしくは異なる炭素数1〜6のアルキル基で置換されたシリル基を表し、具体的には、t−ブチルジメチルシリル、トリメチルシリル、トリブチルシリル等が挙げられる。
アシル基としては、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基が挙げられる。ここで、アルキルカルボニル基における「アルキル」、アルケニルカルボニル基における「アルケニル」、アルキニルカルボニル基における「アルキニル」、アリールカルボニル基における「アリール」は、それぞれ前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基におけるものと同義である。
【0020】
本明細書において、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が置換されている場合の置換基としては、例えば下記のa)からd)の各群に含まれる任意の基が挙げられ、これらが任意に1又は複数個、好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個置換していてもよい:
a)ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基;
b)アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基
[この群の各基はアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基、シクロアルキル基から選択される、同一もしくは異なる1又は2の基で置換されていてもよい];
c)アリール基、アリールオキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基
[この群の各基は、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる1〜3の基で置換されていてもよい];
d)アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、又はアルキルスルホニル基
[この群の各基は、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基およびアルコキシカルボニル基から選ばれる1〜3の基で置換されていてもよい。]。
【0021】
本明細書において、アリール基が置換されている場合の置換基としては、例えば下記のe)からh)の各群に含まれる任意の基が挙げられ、これらが任意に1又は複数個、好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個置換していてもよい:
e)ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基;
f)アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基
[この群の各基はアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基、シクロアルキル基から選択される、同一もしくは異なる1又は2の基で置換されていてもよい];
g)シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基
[この群の各基は、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる1〜3の基で置換されていてもよい];
h)アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、又はアルキルスルホニル基
[この群の各基は、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基およびアルコキシカルボニル基から選ばれる1〜3の基で置換されていてもよい。]。
本明細書において、アシル基のうちアルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基又はアルキニルカルボニル基が置換されている場合の置換基としては、前記アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の置換基と同じものが挙げられる。アシル基のうちアリールカルボニル基が置換されている場合の置換基としては、前記アリール基の置換基と同じものが挙げられる。
【0022】
本明細書において、シクロアルキル基が置換されている場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基又はアルコキシカルボニル基が挙げられ、これらの1〜3個で置換され得る。
【0023】
2、R3、R4、R5、R7、R8およびR9として好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたベンジル基、アリル基、トリアルキルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基、プロパルギル基等が挙げられる。
14、R15、R16およびR17として好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたベンジル基等が挙げられる。
1、R6およびR10として好ましくは、水素原子、ミコロイル基、メチル基、エチル基、ベンジル基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたベンジル基等が挙げられる。
【0024】
本明細書において、「ミコロイル基」とは、ミコバクテリウム属の細菌細胞壁を構成する高級脂肪酸:ミコール酸由来のアシル基を表し、当該ミコール酸は以下の式(4):
【0025】
【化4】

〔式中、X1、X2およびX3は独立して、炭素数9〜23の直鎖もしくは分枝のアルキレンを表し、X1、X2及びX3の炭素数が合計で40〜60個であり、
1およびY2は独立して、以下の群から選択される2価基:
【0026】
【化5】

を表す。ここで、上記の2価基のうちシクロプロピル環及び二重結合における幾何異性体には特に限定は無く、シス体及びトランス体が含まれる。
Zは炭素数22〜24個のアルキル基を表す。〕
で表される。
【0027】
本明細書において、「ミコール酸」とは、単一化合物のみならず、上記式(4)で表される複数のミコール酸の混合物を包含する概念である。すなわち、本明細書におけるミコール酸としては、ミコバクテリウム属、ノカルディア属、ロドコッカス属、ゴルドーナ属、ツカムレラ属(Tsukamurella)又はコリネバクテリウム属(Corynebacteriaceae)細菌の細胞壁をアルカリ加水分解処理することによって得られるミコール酸が挙げられる。
該ミコバクテリウム属細菌として具体的には、結核菌群細菌のMycobacterium tuberculosis(結核菌)、Mycobacterium bovis[ウシ型結核菌、BCG(カルメット・ゲラン菌;Bacille Calmette Guerin)を含む]、Mycobacterium africanum(アフリカ菌)、Mycobacterium microti(ネズミ型結核菌)、Mycobacterium leprae(ライ菌)、Mycobacterium kansasii、Mycobacterium avium又はMycobacterium phlei等が挙げられる。ノカルディア属細菌として具体的には、ノカルディア・ルブラが挙げられる。中でも好ましいものとして、ミコバクテリウム属ウシ型結核菌の一種であるBCG菌を挙げることができる。
本明細書におけるミコール酸として、更に具体的には、BCG菌東京株の細胞壁骨格成分由来のミコール酸が挙げられる。
【0028】
本発明のアラビノミコレート化合物は、以下に示す有機化学的方法、及び天然物から単離する方法、さらには両方法を組み合わせることによって製造される。以下具体的に説明する。
I.有機化学的方法
以下に示す方法で、それぞれモノアラビノモノミコレート誘導体、トリアラビノジミコレート誘導体、ペンタアラビノジミコレート誘導体及びペンタアラビノテトラミコレート誘導体をそれぞれ製造できる。
モノアラビノモノミコレート誘導体は、下記の反応式−1に従って製造できる。
〔反応式−1〕
【0029】
【化6】

(式中、R11は、ベンジル基のほか、パラメトキシベンジル基、パラニトロベンジル基などの置換ベンジル型の水酸基保護基を表し、R12は、パラトルエンスルホニル基などの置換アリールスルホニル基及びメタンスルホニル基などの置換アルキルスルホニル基を表す。又、「M.A.COOH」はミコール酸を表す。)
【0030】
すなわち、C. P. J. Glaudemansらの方法(J. Am. Chem. Soc., 1965, 87, 4636-4641.)に従ってD−アラビノースより誘導した(III)の5位水酸基に、BCG菌由来のミコール酸(以下、単にミコール酸と称する)を縮合させた後、(III)の水酸基保護基を脱保護することにより調製できる。
ミコール酸と糖水酸基の縮合方法としては、両者を等モル用いてジシクロヘキシルカルボジイミドとジメチルアミノピリジン存在下で反応させる方法、ジエチルアゾジカルボキシラートとトリフェニルホスフィンを用いた光延反応の他、ミコール酸を無水テトラヒドロフラン等の有機溶媒に溶解し、トリエチルアミン等の塩基存在下、塩化2,4,6−トリクロロベンゾイルを加えて約10分〜2時間撹拌した後、5位水酸基遊離の(III)の無水トルエン/テトラヒドロフラン混合溶液とジメチルアミノピリジン等の塩基存在下、約1〜15時間反応させる山口法、更には(III)の遊離水酸基を一旦、塩基存在下、塩化メチレン等の有機溶媒中でトシル基やメシル基等で保護して(IV)へと導いた後、2〜10当量の炭酸セシウムもしくは炭酸水素セシウム塩存在下、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエンなどの有機溶媒中、ミコール酸と60〜75℃で、6〜96時間加熱する方法が挙げられる。得られた、縮合体(V)は、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メタノールなどの有機溶媒中、パラジウム/炭素や水酸化パラジウム/炭素等による接触水素還元を、室温下1〜7日間行うことにより、モノアラビノモノミコレート化合物(VI)へと導くことができる。
【0031】
トリアラビノジミコレート化合物は、下記反応式−2に従って製造できる。
〔反応式−2〕
【0032】
【化7】

(式中、R11及びR12は前記と同義である)

すなわち、J. Prandiらの報告(Chem. Commun., 2000, 659-660.; Tetrahedron Lett., 2000, 41, 7447-7452.)、T. L. Lowaryらの報告(Org. Lett., 2000, 2, 1493-1495.; Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8, 437-442.; J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 1251-1260.)及びM. K. Gurjarらの報告(Org. Lett., 2001, 3, 321-323.; J. Org. Chem., 2001, 66, 4657-4660.)を参考にして新たに誘導したアラビノース3糖誘導体(VII)と、ミコール酸との縮合においては、モノアラビノモノミコレート誘導体(VI)の調製時と同じく、(VII)の遊離水酸基を一旦、塩基存在下、塩化メチレン等の有機溶媒中でトシル基やメシル基等で保護して(VIII)へと導いた後、2〜30当量の炭酸セシウムもしくは炭酸水素セシウム塩存在下、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエンなどの有機溶媒中、ミコール酸と60〜75℃で、1〜7日間加熱する方法が挙げられる。得られた、縮合体(IX)は、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メタノールなどの有機溶媒中、パラジウム/炭素や水酸化パラジウム/炭素等による接触水素還元を、室温下1〜7日間行うことにより、トリアラビノジミコレート化合物(X)へと導くことができる。
【0033】
ペンタアラビノジミコレート化合物は、下記反応式−3及び4に従って製造できる。
〔反応式−3〕
【0034】
【化8】

(式中R11及びR12は前記と同義である)
〔反応式−4〕
【0035】
【化9】

(式中、R11及びR12は前記と同義であり、R13は、t-ブチルジフェニルシリル基のほか、t-ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基などのシリルエーテル型の水酸基保護基を表す)
すなわち、J. Prandiらの報告(Chem. Commun., 2000, 659-660.; Tetrahedron Lett., 2000, 41, 7447-7452.)、T. L. Lowaryらの報告(Org. Lett., 2000, 2, 1493-1495.; Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8, 437-442.; J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 1251-1260.)及びM. K. Gurjarらの報告(Org. Lett., 2001, 3, 321-323.; J. Org. Chem., 2001, 66, 4657-4660.)を参考にして新たに誘導したアラビノース5糖誘導体(XI)と、ミコール酸との縮合においては、トリアラビノジミコレート誘導体(X)の調製時と同じく、2〜30当量の炭酸セシウムもしくは炭酸水素セシウム塩存在下、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエンなどの有機溶媒中、ミコール酸と60〜75℃で、1〜10日間加熱する方法が挙げられる。得られた、縮合体(XII)は、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メタノールなどの有機溶媒中、パラジウム/炭素や水酸化パラジウム/炭素等による接触水素還元を、室温下1〜7日間行うことにより、ペンタアラビノジミコレート化合物(XIII)へと導くことができる。
一方、アラビノース5糖誘導体(XIV)と、ミコール酸との縮合においては、2〜15当量の炭酸セシウムもしくは炭酸水素セシウム塩存在下、2〜20当量の18−crown−6などのクラウンエーテルを加え、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエンなどの有機溶媒中、ミコール酸と60〜75℃で、1〜10日間加熱する方法が挙げられる。得られた縮合体(XV)のシリル系保護基は、酢酸を含むテトラヒドロフラン等の有機溶媒中、テトラブチルアンモニウムフルオリド等の脱シリル化剤で除去することができ、ついで、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メタノールなどの有機溶媒中、パラジウム/炭素や水酸化パラジウム/炭素等による接触水素還元を、室温下1〜7日間行うことにより、ペンタアラビノジミコレート誘導体(XVI)へと導くことができる。
【0036】
ペンタアラビノテトラミコレート化合物は、下記反応式−5に従って製造できる。
〔反応式−5〕
【0037】
【化10】

(式中、R11及びR12は前記と同義である)
すなわち、ペンタアラビノジミコレート化合物調製時に使用したアラビノース5糖誘導体(XI)から2段階で得られるテトラトシレート体あるいはメシレート体(XVII)と、ミコール酸との縮合においては、2〜15当量の炭酸セシウムもしくは炭酸水素セシウム塩存在下、2〜20当量の18−crown−6などのクラウンエーテルを加え、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエンなどの有機溶媒中、ミコール酸と60〜75℃で、1〜10日間加熱する方法が挙げられる。得られた縮合体(XVIII)は、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メタノールなどの有機溶媒中、パラジウム/炭素や水酸化パラジウム/炭素等による接触水素還元を、室温下1〜7日間行うことにより、ペンタアラビノテトラミコレート化合物(XIX)へと導くことができる。
【0038】
本発明のアラビノミコレート化合物を製造するにあたって、製造中間体における活性な基は適当な保護基で保護されていてもよい。アラビノースにおける水酸基の保護基として、具体的には、メチレンアセタール、エチリデンアセタール、2,2,2−トリクロロエチリデンアセタール、メトキシメチレンアセタール、エトキシメチレンアセタール、(4−メトキシフェニル)エチリデンアセタール、ベンジリデン、イソプロピリデン、1−t−ブチルエチリデンケタール、1−フェニルエチリデンケタール等のアセタール類又はケタール類が挙げられる。
また、ジメトキシメチレンオルソエステルもしくは2−オキサシクロペンチリデンオルオエステル等のオルソエステル、ジ−t−ブチルシリレン、1,3−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサニリデンもしくはテトラ−t−ブトキシジシロキサン−1,3−ジイリデンなどのシリレン、又はサイクリックカーボネート等があげられるがこれらに限定されるものではなく、当業者に公知の保護基を適宜用いることができる。好ましくは、テトラヒドロピラニル基やトリアルキルシリル基等の通常の保護基が挙げられる。上記の保護基の導入・除去方法は公知の方法に従って行われる(例えば、Theodora W. Green著、捻rotective Groups in Organic Synthesis・Second Edition,John Wiley & Sons (1991年発行)等を参照)。
また、本発明のアラビノミコレート化合物は、上記反応式−1〜反応式−5に準じる方法や、当業者に公知の糖脂質の合成方法を用いて製造することができる。例えば、Otera, J.著「Esterification: Methods, Reactions, and Applications」(Wiley, Chichester, 2003.)に記載された方法等を用いることができる。
【0039】
II. 天然物からミコール酸を製造する方法
BCG菌等のミコバクテリウム属の細菌の菌体又は細菌細胞壁骨格成分を加水分解し、本発明のアラビノミコレート化合物の製造に用いるミコール酸を製造することができる。以下具体的に説明する。
【0040】
ミコバクテリウム属等の細菌のCWSは、公知の方法で得ることができる〔J. Nat. Cancer Inst., 52, 95-101 (1974)〕。前記のCWSを取り、試料として一定重量のミコバクテリウム属及びノカルディア属等の細菌のCWSを秤量し、溶媒中で、10℃〜溶媒の沸点の範囲内で塩基を反応させることにより、加水分解を行う。ここで用いられる溶媒としては、加水分解を行うに十分な水を含む有機溶媒であれば特に限定されないが、具体的な有機溶媒としては、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール性溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、ジメチルスルホキシド等の親水性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、又はこれらの有機溶媒の任意の溶媒の混合物が挙げられる。
前記有機溶媒として、好ましくは、エタノール等のアルコール系溶媒、あるいは、前記アルコール系溶媒および疎水性有機溶媒の混合物が挙げられ、具体的には、エタノール−トルエン−水混液等が挙げられる。
反応温度は、用いられる有機溶媒の種類によって適当な温度を選択することができるが、好ましくは、室温〜溶媒の沸点で加温するか、あるいは105℃〜135℃でオートクレーブを用いる方法が挙げられる。
加温の場合の反応時間としては、5分〜72時間が挙げられ、高級脂肪酸のパターンを分析する場合の反応時間としては、好ましくは5分〜5時間、高級脂肪酸量を定量的に分析する場合の反応時間としては、好ましくは30分〜5時間が挙げられる。オートクレーブの場合の反応時間としては、5分から8時間が挙げられ、好ましくは、パターンを分析する場合は5分〜3時間、定量的に分析する場合は10分〜5時間が挙げられる。
使用される塩基としては、当業者に知られたものであれば任意の塩基を用いることができるが、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸バリウム、炭酸セシウム等の無機塩基が挙げられる。
ここで、反応効率を上げるために、試料をそのまま一定重量秤量するか、又はトルエン、クロロホルム、ヘプタン及びエタノール等から選択される有機溶媒、又はこれらの溶媒の混液等に懸濁し、必要量を採取し、該有機溶媒を留去した後、加水分解に供することが好ましい。また、原料として抗酸菌の菌体を用いる場合は、水に懸濁した状態で、CWSの場合と同様に加水分解を行うほか、反応効率を上げるために温度を沸点まで上げて5分〜72時間反応させるか、オートクレーブを用いて5分〜8時間反応させることが好ましい。
加水分解反応終了後、酸を加えて反応溶液を酸性とした後、疎水性有機溶媒を用いてミコール酸画分を抽出する。ここで用いられる酸としては、当業者に知られたものであれば任意の酸を用いることができるが、具体的には、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸、スルホン基を有する酸性イオン交換樹脂等を用いることができる。疎水性溶媒は、水層との分離が可能な溶媒であれば特に限定はないが、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、トルエン、クロロホルム等が挙げられる。
上記のように分取・精製したミコール酸は、質量分析等により分子量を確認することができる。
【0041】
III. 天然物から単離する方法
また、BCG菌等のミコバクテリウム属の細菌の菌体又は細菌細胞壁骨格成分を部分的に分解し、本発明のアラビノミコレート化合物を製造することができる。また、得られた天然物由来のアラビノミコレート化合物は適宜化学的修飾を行うことができる。以下具体的に説明する。
1)天然物からアラビノミコレート化合物を単離する方法
以下の(1)〜(3)の工程:
(1)ミコバクテリウム−ボビス−ビーシージー菌由来の細胞壁骨格成分を酸性水溶液及び有機溶媒との混合液下で部分酸加水分解する工程;
(2)前記(1)の生成物を、疎水性有機溶媒及び極性有機溶媒を移動相に用いる順相のクロマトグラフィーで精製する工程;及び
(3)順相のクロマトグラフィーで、疎水性有機溶媒中の極性有機溶媒濃度1%〜30%において溶出する画分を回収する工程;
を含む方法で、本発明のアラビノミコレート化合物を製造することができる。
【0042】
工程(1)
細菌の細胞壁骨格成分(CWS)に疎水性有機溶媒を加えて懸濁し、更に酸性水溶液を加えて、10℃から溶媒の沸点の範囲内で反応させることにより加水分解を行う。ここで用いられる疎水性有機溶媒としては、CWSが均一に懸濁し、かつ水層との分離が可能な溶媒であれば特に限定はないが、具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられる。また、ここで用いられる酸としては、当業者に知られたものであれば任意の酸を用いることができるが、具体的には、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸等を用いることができ、0.01モル/L〜6モル/Lの濃度のものを用いる。好ましくは0.1〜1モル/Lの塩酸を用いることができる。
反応温度は、用いられる有機溶媒の種類によって適当な温度を選択することができるが、好ましくは、室温〜溶媒の沸点で加温する。反応時間としては、5分〜72時間が挙げられる。
BCG加熱死菌体及び、これを加圧破砕後遠心分画して得られる細胞壁画分から脂質を有機溶媒で可能な限り除去した後の結合脂質(Bound Lipid; BL)画分にもCWS又は、類似の細胞壁骨格成分が存在する。従って、前記結合脂質画分を原料に用いて、(1)と同様の限定分解処理を行い本発明のアラビノミコレート化合物の粗生成物を調製することができる。
目的とするアラビノミコレートは、疎水系有機溶媒の層を分液ロート等を用いて分離することにより、粗生成物として得ることができる。
【0043】
工程(2)及び工程(3)
工程(1)で得られる粗生成物は、順相のクロマトグラフィーで精製する。クロマトグラフィーとしては、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等、当業者によく知られた方法を用いることができる。具体的には、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、HPLCの順相クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等により精製できる。
ここで検出方法としては、液体クロマトグラフィーでは、RI(示差屈折計)分析、質量分析、エバポレイティブ光散乱分析等が、薄層クロマトグラフィーでは、硫酸、オルシノール硫酸等による加熱発色、ヨウ素蒸気による発色等が挙げられる。
工程(1)の粗生成物は、好ましくは、順相のシリカゲルを用いたクロマトグラフ法により、疎水系有機溶媒及び極性有機溶媒を組み合わせて、生成したアラビノミコレート化合物を分取・精製することができる。
ここで用いられる疎水性有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、又はこれらの有機溶媒の任意の混合物が挙げられる。
前記極性有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール性溶媒、アセトン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒、又はこれらの有機溶媒の任意の混合物が挙げられる。
前記疎水性有機溶媒及び極性有機溶媒の組み合わせとしては、特に限定はないが、具体的にはクロロホルムとメタノール等が挙げられる。すなわち、クロロホルム−メタノールを移動相に用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにおいて、クロロホルム中のメタノール濃度1〜30%において溶出する画分を回収することによって、本発明のアラビノミコレートを含む画分を製造することができる。
また、工程(1)の粗生成物は、シリカゲルの薄層クロマトグラフィー(TLC)でも、クロロホルムとメタノールと少量の水の混液で分離し、アラビノミコレートを含む画分を掻きとって分取することができる。
また、サイズ排除クロマトグラフィーでは、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、アセトン、ヘキサフロロイソプロパノール等の疎水系有機溶媒で溶出することにより、アラビノミコレート、すなわち、テトラミコレート体、トリミコレート体、ジミコレート体、モノミコレート体に分画できる。
上記のように分取・精製したアラビノミコレートは、質量分析等により分子量を確認することができる。
前記で得られるアラビノミコレート化合物は、下記に示すように、当業者に公知の方法で適宜化学修飾することができる。
【0044】
2)メチルグリコシド化
前記1)で得られるアラビノミコレート化合物(例えばmono-arabino-mono-mycolate等)に塩酸のメタノール液を加えて、10℃から溶媒の沸点の範囲内で、5分〜72時間反応させることにより、アノメリック位水酸基をメチル化する。その後、クロマトグラフ法等の分離方法により、分取・精製し、質量分析及び核磁気共鳴分析によりメチルグリコシド体であることを確認することができる。
分離精製方法としては、液体クロマトグラフ法、薄層クロマトグラフ法等、当業者によく知られた方法を用いることができる。
【0045】
3)アセトナイド化
前記1)で得られるアラビノミコレート化合物(例えばpenta-arabino-tetra-mycolate等)にトルエンを加えて溶かし、無水アセトン(モレキュラーシーブスで乾燥)を加え、更にアセトンジメチルケタール及びトシル酸を加えて、10℃から溶媒の沸点の範囲内で、5分〜72時間反応させることにより、還元末端をアセトナイド化する。その後、クロマトグラフ法等の分離方法により、分取・精製し、質量分析及び核磁気共鳴分析によりアラビノミコレート化合物のアセトナイド体であることを確認する。
分離方法としては、液体クロマトグラフ法、薄層クロマトグラフ法等、当業者によく知られた方法を用いることができる。
【0046】
式(1)で表されるアラビノミコレート化合物のうち、塩を形成しうる官能基を有している化合物の薬学的に許容される塩としては、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、又はグリシン、アラニン、リジンもしくはグルタミン酸等のアミノ酸塩等が挙げられる。これらの塩はアラビノミコレート化合物と酸又は塩基を混合した後、再結晶などの常法により得ることができる。
また、本発明には、式(1)で表されるアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩の水和物、エタノール溶媒和物等の溶媒和物も含まれる。さらに、本発明には、式(1)で表されるアラビノミコレート化合物のあらゆる互変異性体、光学異性体等の存在するあらゆる立体異性体、およびあらゆる態様の結晶形のものも包含している。
【0047】
本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩は、癌治療薬又は予防薬として有用である。対象となる癌の種類に特に限定はないが、肺癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、子宮癌、乳癌、急性骨髄性白血病、舌癌、咽頭癌、卵巣癌、脳腫瘍等が挙げられる。ここで癌治療剤には、癌転移抑制剤としての態様も含まれる。
詳しくは、本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩は、TNF−α産生誘導活性を示す免疫賦活物質であり、免疫賦活剤としての用途も本発明の範疇である。従って、本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩は、免疫療法剤として用いられ、癌患者の治療剤としてのみならず、癌の治療を受けた患者の再発防止剤(予防剤)にも用いられる。
更に本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩は、免疫療法剤として、ウイルス、細菌もしくは真菌等の感染症や、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患の予防又は治療に用いることもできる。
【0048】
また、上記の免疫賦活剤の具体的な態様として、免疫アジュバントとしての用途が挙げられる。具体的には、癌ワクチン、各種感染症に対する予防接種においてアジュバントとして添加することができる。この場合、本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩は、適宜他のアジュバント(細胞壁骨格成分、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、リポアラビノマンナン、リポマンナン、トレハロースジミコレート、リピッドA及びその誘導体、サポニン、水酸化アルミニウムないしリン酸カルシウム等の無機塩、CpG DNA、ムラミルジペプチド及びその誘導体、インフルエンザ抗原蛋白などのウイルス蛋白成分、キトサン、コレラトキシン等のバクテリアトキシン、顆粒球マクロファージコロニー形成因子あるいはインターロイキン12ないしインターロイキン2等のサイトカイン等が挙げられる)と組み合わせて用いることもできる。
【0049】
本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩は、医薬として用いるにあたり、経口的もしくは非経口的に、全身もしくは局所投与することができる。
経口的に投与される場合の投与形態としては、例えば、カプセル、錠剤、散剤、カシェ剤、液剤等が挙げられる。また非経口的に投与される場合の投与形態としては、例えば注射剤、経皮剤、経鼻剤、直腸投与剤等の形で投与することができる。注射剤としては、例えば無菌の溶液又は懸濁液等が挙げられる。経皮剤としては、例えばクリーム、軟膏、ローション、パッチ剤、マトリクス剤等が挙げられる。直腸投与剤としては、坐剤、浣腸(溶液注入)等が挙げられる。経鼻剤としては、エアゾ−ル剤、点鼻剤等が挙げられる。
本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩を局所投与剤として用いる場合の投与方法としては、例えば、皮下投与又は皮内投与等が挙げられる。
本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩は、当業者に汎用されている薬学的に許容される賦形剤、添加剤とともに医薬組成物とすることができる。薬学的に許容される賦形剤、添加剤としては、担体、結合剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
薬学的に許容される担体としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、マンニトール、エリスリトール、低融点ワックス、カカオバター等が挙げられる。本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩は薬学的に許容される賦形剤と共に混合し、又は賦形剤なしにカプセルの中に入れることができる。カシェ剤も同様の方法で製造できる。
注射用液剤としては、溶液、懸濁液、乳剤等が挙げられる。例えば、水溶液、水−グリセロール溶液、水−プロピレングリコール溶液等が挙げられる。液剤は、水を含んでも良い、ポリエチレングリコール又は/及びプロピレングリコールの溶液の形で製造することもできる。免疫アジュバントとして用いられる場合には、通常は、適宜鉱物油ないしスクワランもしくはスクワレン等の油、界面活性剤、賦形剤等とともに水中油型(W/O)エマルション、油中水型(O/W)エマルションとして使用される。
経口投与に適切な液剤は、本発明化合物を水に加え、着色剤、香料、安定化剤、甘味剤、溶解剤、増粘剤等を必要に応じて加え製造することができる。また経口投与に適切な液剤は、本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩を分散剤とともに水に加え、粘重にすることによっても製造できる。増粘剤としては、例えば、薬学的に許容される天然又は合成ガム、レジン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又は公知の懸濁化剤等が挙げられる。
また液剤の場合、水性又は油性の基剤に、一種類又はそれ以上の薬学的に許容される安定剤、懸濁化剤、乳化剤、拡散剤、増粘剤、着色剤、香料等を加えることができる。また、必要に応じて、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、ベンズアルコニウムクロリド等の防腐剤、細菌増殖防止剤を含んでも良い。
【0050】
本発明のアラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩を含む医薬組成物の投与量、投与回数は症状、年齢、体重、投与形態等によって異なるが、経口投与する場合には、通常は成人に対し1日あたり約1〜約1000mgの範囲、好ましくは約5〜約300mgの範囲を1回又は数回に分けて投与することができる。注射剤として投与する場合には、通常は成人に対し1日あたり約0.1〜約300mgの範囲、好ましくは約0.1〜約10mgの範囲を1回又は数回に分けて投与することができる。
また、本発明の化合物又はその薬学上許容される塩をアジュバントとして用いる場合、1日〜4週間おきに1回、注射剤として投与することが好ましい。
【0051】
以下の実施例に本発明を具体的に説明するが、本発明はもとよりこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
メチル5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシドの合成
【0053】
【化11】

参考例1に従って合成したメチル2, 3-O-ジベンジル-α-D-アラビノフラノシド(1-1)118mg (0.343mmol)を乾燥塩化メチレン1mlに溶かし、ピリジン230mg (2.9mmol)及び触媒量の4-ジメチルアミノピリジンを加えた後、氷冷下p-トルエンスルホニルクロリド140mg (0.734mmol)を加え、そのまま室温まで昇温しながら一晩撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を希塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル4:1)で精製し、メチル2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシド(1-2)155mg (0.311mmol)を得た。(収率91%)
1H-NMR (CDCl3) δ : 2.37 (s, 3H), 3.30 (s, 3H), 3.78 (dd, J=2.8, 5.6Hz, 1H), 3.92 (br. d, J=2.8Hz, 1H), 4.10 (br. d, J=5.2Hz, 2H), 4.15 (m, 1H), 4.37〜4.52 (m, 4H), 4.82 (s, 1H), 7.22〜7.33 (m, 12H), 7.73 (d, J=8.0Hz, 2H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 21.6, 55.0, 68.8, 71.8, 72.2, 79.1, 82.7, 87.4, 107.3, 127.7, 127.8, 127.9, 128.3, 129.6, 132.6, 137.1, 137.2, 144.6
MALDI-Tof MS : 521.2 [M+Na]+, found : 521.4 [M+Na]+
【0054】
次に、メチル2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシド6.0mg(1-2)(0.012mmol)とBCG菌由来のミコール酸(以下、単にミコール酸)12mg (0.0097mmol)をジメチルホルムアミド/テトラヒドロフラン(1:5)の混合溶媒1.2mlに溶かし、炭酸水素セシウム10mg (0.052mmol)を加えて70℃で2晩撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を水、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル4:1)で精製し、メチル2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシド(1-3)11.9mg (0.00761mmol)を得た。(収率79%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 3.35 (s, 3H), 3.81 (dd, J=2.8, 6.4Hz, 1H), 3.96 (br. d, J=2.8Hz, 1H), 4.19 (m, 1H), 4.27〜4,28 (m, 2H), 4.45 (d, J=12Hz, 1H), 4.48 (d, J=12Hz, 1H), 4.54 (d, J=12Hz, 1H), 4.56 (d, J=12Hz, 1H), 7.24〜7.33 (m, 10H)
13C -NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 54.9, 63.5, 72.2, 72.4, 79.4, 83.7, 87.8, 107.1, 126.2, 127.8, 127.9, 128.4, 133.0, 137.2
【0055】
続いてメチル 2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシド(1-3)4.0mg (0.0026mg)をn-ヘキサン/酢酸エチル(1:1) 0.5mlに溶かし、20%水酸化パラジウム/炭素2.5mgを加えて水素雰囲気下室温で5日間撹拌した。反応終了後、セライトで濾過をして触媒を取り除き、酢酸エチルでよく洗浄し、ろ液を集めてエバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)で精製して、メチル5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシド2.9mg(1-4)(0.0021mmol)を得た。(収率82%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 3.38 (s, 3H), 3.96 (m, 1H), 4.05 (br. s, 1H), 4.16 (m, 1H), 4.30 (dd, J=4.0, 12Hz, 1H), 4.48 (dd, J=4.4, 12Hz, 1H), 4.87 (s, 1H)
【実施例2】
【0056】
5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース の合成
【0057】
【化12】

参考例4で合成した3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-7)187mg (0.168mmol) を乾燥ジメチルホルムアミド1mlに溶かし、氷冷下60%水素化ナトリウム30mg (0.75mmol)を加えて10分撹拌した後、97%ベンジルブロミド70μl (0.57mmol)をゆっくり滴下し、そのまま室温まで昇温しながら一晩撹拌した。翌日メタノール0.5mlを加え10分撹拌した後、塩化メチレンで希釈した。有機層を合わせて飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル5:1)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-8)81.7mg (0.0632mmol)を得た。(収率38%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 0.99 (s, 9H), 1.00 (s, 9H), 1.29 (s, 3H), 1.47 (s, 3H), 3.56 (dd, J=4.8, 10.8Hz, 1H), 3.70〜3.78 (m, 4H), 3.92 (dd, J=6.4, 10.8Hz, 1H), 4.02〜4.22 (m, 8H), 4.39〜4.52 (m, 9H), 5.02 (s, 1H), 5.14 (s, 1H), 5.82 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.20〜7.35 (m, 32H), 7.59〜7.63 (m, 8H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 19.3, 26.6, 26.9, 27.2, 63.3, 67.0, 71.8, 71.9, 72.1, 72.1, 80.1, 81.9, 82.7, 82.8, 83.0, 83.7, 85.0, 88.5, 105.2, 105.5, 106.1, 112.9, 127.4, 127.5, 127.6, 127.7, 127.8, 128.2, 128.3, 128.4, 129.4, 129.5, 129.6, 133.2, 133.3, 135.5, 135.6, 137.5, 137.7, 137.8
MALDI-Tof MS : 1313.6 [M+Na]+, found : 1313.6 [M+Na]+
【0058】
次に、2, 3-O-ジベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-8)70mg (0.054mmol)をテトラヒドロフラン0.6mlに溶かし、氷冷下テトラブチルアンモニウムフルオリド(1M/THF溶液)0.36ml (0.36mmol)を加え、そのまま室温まで昇温しながら4時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル2:1〜1:2)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-9)36mg (0.044mmol)を得た。(収率82%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.30 (s, 3H), 1.47 (s, 3H), 3.50 (dd, J=6.1, 12.2Hz, 1H), 3.59 (dd, J=5.2, 11.8Hz, 1H), 3.64〜3.68 (m, 3H), 3.73 (dd, J=3.2, 11.8Hz, 1H), 3.80 (dd, J=3.2, 7.2Hz, 1H), 3.82〜3.86 (m, 2H), 3.95〜4.04 (m, 4H), 4.17 (m, 1H), 4.28 (dd, J=1.2, 4.8Hz, 1H), 4.40〜4.51 (m, 9H), 5.02 (s, 1H), 5.09 (s, 1H), 5.76 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.19〜7.31 (m, 20H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 27.0, 27.5, 62.6, 62.7, 65.3, 72.0, 72.2, 72.2, 72.3, 80.2, 82.3, 83.0, 83.2, 86.3, 87.7, 88.3, 104.8, 105.7, 105.8, 113.5, 127.6, 127.7, 127.8, 127.9, 128.3, 128.4, 128.5, 137.1, 137.2, 137.5, 137.5
MALDI-Tof MS : 837.4 [M+Na]+, found : 837.4 [M+Na]+
【0059】
続いて、2, 3-O-ジベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-9)36mg (0.044mmol)を乾燥塩化メチレン0.25mlに溶かし、ピリジン60mg (0.76mmol)及び触媒量の4-ジメチルアミノピリジンを加えた後、氷冷下p-トルエンスルホニルクロリド35mg (0.18mmol)を加え、そのまま室温まで昇温しながら4時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル5:1〜3:1)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-10)33mg (0.029mmol)を得た。(収率67%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.31 (s, 3H), 1.48 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 2.38 (s, 3H), 3.50 (dd, J=5.2, 10.4Hz, 1H), 3.79 (dd, J=5.2, 10.4Hz, 1H), 3.81〜3.84 (m, 2H), 3.94 (dd, J=0.8, 3.2Hz, 1H), 4.00 (dd, J=0.8, 3.2Hz, 1H), 4.02〜4.15 (m, 7H), 4.19〜4.23 (m, 1H), 4.38〜4.51 (m, 9H), 4.93 (s, 1H), 5.01 (s, 1H), 5.78 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.22〜7.35 (m, 24H), 7.71 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.73 (d, J=8.4Hz, 2H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 21.6, 26.6, 27.2, 66.5, 68.6, 68.7, 72.0, 72.1, 72.3, 78.8, 79.4, 80.0, 82.9, 82.9, 83.3, 85.0, 87.8, 87.8, 105.3, 106.1, 113.0, 127.7, 127.8, 127.9, 128.0, 128.3, 128.4, 129.7, 132.6, 132.7, 137.1, 137.2, 137.3, 137.5, 144.6, 144.7
MALDI-Tof MS : 1145.4 [M+Na]+, found : 1145.4 [M+Na]+
【0060】
更に、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-10)6.5mg (0.0058mmol)とミコール酸12mg (0.0097mmol)をジメチルホルムアミド/テトラヒドロフラン(2:3)の混合溶媒1.0mlに溶かし、炭酸水素セシウム30mg (0.15mmol)を加えて70℃で4日間撹拌した。反応終了後、クロロホルムを加えて不溶物を濾別した後、有機層を集めてエバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラム(クロロホルム/メタノール1:1)及びプレパラティブTLC(ヘキサン/酢酸エチル3:1で展開後、掻き取った部分をクロロホルム/メタノール5:1で溶出)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-11)10.3mg (0.00316mmol)を得た。(収率65%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 1.31 (s, 3H), 1.49 (s, 3H), 3.56〜3.60 (m, 1H), 3.85〜3.90 (m, 3H), 3.97 (br. d, J=2.8Hz, 1H), 4.01 (br. d, J=2.8Hz, 1H), 4.09 (m, 1H), 4.15 (m, 1H), 4.20〜4.29 (m, 6H), 4.40 (br. d, J=4.0Hz, 1H), 4.43〜4.54 (m, 8H), 5.02 (br. s, 1H), 5.09 (br. s, 1H), 5.79 (d, J=4.0Hz, 1H)
13C -NMR(糖部分)(CDCl3)δ: 57.7, 62.7, 62.9, 72.1, 72.1, 72.3, 72.4, 79.2, 79.7, 79.9, 83.2, 83.7, 85.2, 85.4, 88.1, 88.1, 105.2, 105.2, 105.9, 113.1, 127.7, 127.8, 127.9, 128.0, 128.3, 128.4, 128.5, 137.1, 137.3, 137.4, 137.5
【0061】
最後に、2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-11)15.9mg (0.00488mmol)をn-ヘキサン/酢酸エチル(1:1) 1mlに溶かし、20%水酸化パラジウム/炭素6mgを加えて水素雰囲気下室温で5日間撹拌した。反応終了後、セライトで濾過をして触媒を取り除き、クロロホルム/メタノール(5:1)で洗浄し、ろ液を集めてエバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)及びプレパラティブTLC(クロロホルム/メタノール10:1で展開後、掻き取った部分をクロロホルム/メタノール5:1で溶出)で精製し、5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1,2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-12)10.2mg (0.00352mmol)を得た。(収率72%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 1.30 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 3.58 (dd, J=7.6, 9.2Hz, 1H), 3.92〜3.95 (m, 2H), 4.00 (m, 1H), 4.08〜4.15 (m, 4H), 4.19 (m, 1H), 4.25〜4.30 (m, 3H), 4.45 (dd, J=3.6, 10.8Hz, 2H), 4.58 (d, J=4.0Hz, 1H), 4.99 (s, 1H), 5.11 (s, 1H), 5.83 (d, J=4.0Hz, 1H)
13C -NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 26.4, 27.2, 63.3, 63.5, 66.9, 78.8, 80.6, 81.0, 81.2, 83.0, 83.1, 83.4, 84.9, 85.4, 105.4, 106.9, 107.5, 113.1
【実施例3】
【0062】
β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-8)
【0063】
【化13】

参考例6で合成した2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-4)62mg (0.041mmol)を乾燥塩化メチレン0.24mlに溶かし、ピリジン70mg (0.88mmol)及び触媒量の4-ジメチルアミノピリジンを加えた後、氷冷下p-トルエンスルホニルクロリド39mg (0.20mmol)を加え、そのまま室温まで昇温しながら一晩撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル20:1)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-6)64.2mg (0.0355mmol)を得た。(収率86%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.29 (s, 3H), 1.47 (s, 3H), 2.31 (s, 3H), 2.33 (s, 3H), 3.46〜3.54 (m, 5H), 3.74 (s, 6H), 3.69〜3.77 (m, 1H), 3.93〜4.23 (m, 18H), 4.31〜4.37 (m, 4H), 4.44 (br. d, J=4.0Hz, 1H), 4.47〜4.66 (m, 12H), 4.86 (br. s, 1H), 4.88 (d, J=4.4Hz, 1H), 4.93 (br. s, 1H), 5.02 (d, J=4.4Hz, 1H), 5.75 (d, J=4.0Hz, 1H), 6.78 (d, J=8.4Hz, 2H), 6.79 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.13〜7.31(m, 38H), 7.69 (d, J=8.4Hz, 2H), 7.72 (d, J=8.8Hz, 2H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 21.6, 26.7, 27.2, 55.2, 66.2, 68.8, 69.0, 71.4, 71.6, 72.1, 72.2, 72.4, 72.4, 72.6, 72.7, 72.7, 79.6, 79.8, 79.9, 80.0, 80.2, 82.5, 82.7, 83.0, 83.4, 83.5, 83.8, 83.9, 85.1, 85.2, 85.7, 100.1, 100.5, 104.8, 105.2, 106.1, 113.1, 113.6, 113.7, 127.5, 127.6, 127.7, 127.8, 127.9, 128.0, 128.1, 128.2, 128.3, 128.4, 128.9, 129.2, 129.6, 129.7, 129.9, 130.0, 132.6, 132.7, 137.5, 137.6, 137.7, 137.9, 138.1, 144.5, 144.6, 159.0, 159.0
MALDI-Tof MS : 1129.7 [M+Na]+, found : 1130.0 [M+Na]+
【0064】
次に2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-6)9.9mg (0.0055mmol)とミコール酸16mg (0.013mmol)をジメチルホルムアミド/テトラヒドロフラン(4:7)の混合溶媒1.1mlに溶かし、炭酸水素セシウム28mg (0.14mmol)を加えて65−70℃で5日間撹拌した。反応終了後、クロロホルムを加えて希釈し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)及びプレパラティブTLC(ヘキサン/酢酸エチル2:1で展開後、掻き取った部分をクロロホルム/メタノール5:1で溶出)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-7)14mg (0.0036mmol)を得た。(収率65%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 1.29 (s, 3H), 1.49 (s, 3H), 3.47〜3.52 (m, 4H), 3.57〜3.62 (m, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.73 (s, 3H), 3.88 (dd, J=5.6, 10.4Hz, 1H), 3.88〜4.11 (m, 9H), 4.17〜4.36 (m, 13H), 4.42〜4.65 (m, 13H), 4.90 (d, J=4.4Hz, 1H), 4.96 (br. s, 1H), 5.02 (d, J=4.4Hz, 1H), 5.03 (br. s, 1H), 5.78 (d, J=3.6Hz, 1H), 6.76 (d, J=8.8Hz, 2H), 6.77 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.11 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.11 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.21〜7.32 (m, 30H)
13C -NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 55.2, 63.1, 68.5, 71.6, 72.0, 72.1, 72.2, 72.3, 72.4, 72.5, 72.6, 72.7, 72.8, 79.9, 79.9, 80.5, 82.7, 82.9, 83.8, 83.9, 84.0, 84.2, 85.1, 85.4, 99.8, 100.2, 104.6, 104.7, 105.2, 113.2, 113.6, 113.7, 127.5, 127.6, 127.7, 127.9, 128.0, 128.2, 128.3, 128.4, 128.5, 129.2, 129.8, 129.9, 137.4, 137.7, 137.8, 138.0, 138.5, 159.0, 159.0
【0065】
続いて2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-7)4.2mg (0.0011mmol)をn-ヘキサン/酢酸エチル(1:1) 1mlに溶かし、20%水酸化パラジウム/炭素3mgを加えて水素雰囲気下室温で2日間撹拌した。2日後、酢酸エチル/メタノール(1:1) 2mlを加えてさらに室温で5時間撹拌した。反応終了後、セライトで濾過をして触媒を取り除き、クロロホルム、メタノール、酢酸エチルで順に洗浄した後、ろ液を集めてエバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)で精製し、β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-8)3.0mg (0.00095mmol)を得た。(収率89%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 1.2〜1.3 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 3.6〜4.6 (br. m, 25H), 5.0〜5.2 (br. m, 4H), 5.8〜5.9 (br. m, 1H)
【実施例4】
【0066】
5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-5)
【0067】
【化14】


参考例6で合成した2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-3)82mg (0.041mmol)を塩化メチレン/水(18:1) 1.3mlに溶かし、98% 2, 3-ジクロロ-5, 6-ジシアノ-1, 4-ベンゾキノン29mg (0.13mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層をアスコルビン酸/クエン酸緩衝液(アスコルビン酸0.7g, クエン酸水和物1.26g, 水酸化ナトリウム0.92g/水100ml)、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル1:1)及びLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-1)51mg (0.030mmol)を得た。(収率72%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.03 (s, 18H), 1.30 (s, 3H), 1.49 (s, 3H), 3.48〜3.81 (m, 9H), 3.90〜4.16 (m, 7H), 4.20〜4.26 (m, 6H), 4.32 (m, 1H), 4.37 (m, 1H), 4.47〜4.73 (m, 13H), 5.00 (br. s, 1H), 5.04 (d, J=4.4Hz, 1H), 5.10 (d, J=4.4Hz, 1H), 5.14 (br. s, 1H), 5.82 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.24〜7.39 (m, 42H), 7.62〜7.66 (m, 8H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 19.3, 26.5, 26.9, 27.2, 63.4, 63.4, 63.5, 63.5, 67.2, 72.0, 72.2, 72.2, 72.4, 72.5, 72.6, 79.9, 80.6, 80.7, 81.5, 81.8, 81.9, 82.4, 82.5, 82.6, 83.3, 83.8, 84.0, 85.0, 85.4, 85.5, 99.6, 99.8, 104.3, 105.4, 105.5, 112.9, 127.4, 127.6, 127.7, 127.8, 127.9, 128.0, 128.2, 128.3, 128.4, 129.5, 129.6, 133.0, 133.1, 133.2, 135.5, 137.4, 137.5, 137.6, 137.7, 137.9, 138.0
MALDI-Tof MS : 1757.8 [M+Na]+, found : 1757.8 [M+Na]+
【0068】
次に2, 3-O-ジベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-1)46mg (0.027mmol)を乾燥塩化メチレン0.16mlに溶かし、ピリジン55mg (0.70mmol)及び触媒量の4-ジメチルアミノピリジンを加えた後、氷冷下p-トルエンスルホニルクロリド25mg (0.13mmol)を加え、そのまま室温まで昇温しながら一晩撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル3:1)及びLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-2)47mg (0.023mmol)を得た。(収率86%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.00 (s, 18H), 1.29 (s, 3H), 1.47 (s, 3H), 2.31 (s, 3H), 2.32 (s, 3H), 3.55 (dd, J=4.4, 5.6Hz, 1H), 3.66〜3.78 (m, 4H), 3.89〜4.26 (m, 19H), 4.39~4.64 (m, 13H), 4.94 (br. s, 1H), 4.96 (d, J=4.0Hz, 1H), 5.04 (d, J=4.4Hz, 1H), 5.05 (br. s, 1H), 5.79 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.12 (br. d, J=8.8Hz, 2H), 7.14 (br. d, J=8.8Hz, 2H), 7.23〜7.37(m, 42H), 7.61〜7.65 (m, 12H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 19.3, 26.6, 26.9, 27.3, 63.5, 63.5, 66.8, 70.1, 70.2, 72.1, 72.2, 72.3, 72.4, 72.5, 78.3, 78.4, 79.9, 82.1, 82.1, 82.3, 83.1, 83.2, 83.3, 83.4, 85.0, 85.9, 86.1, 100.3, 100.4, 104.0, 105.4, 105.6, 113.0, 127.3, 127.4, 127.5, 127.6, 127.7, 127.8, 127.9, 128.1, 128.2, 128.3, 128.4, 129.5, 129.6, 129.7, 132.7 133.1, 133.2, 133.4, 135.5, 135.7, 137.3, 137.4, 137.5, 137.6, 137.9, 138.1
MALDI-Tof MS : 2065.8 [M+Na]+, found : 2066.1 [M+Na]+
【0069】
続いて、フラスコに99% 18-クラウン-6 16mg (0.060mmol)を入れ、トルエンを加えて二回共沸させた後に、ミコール酸16mg (0.013mmol)と炭酸水素セシウム5.0mg (0.026mmol)を加え、さらにトルエンで二回共沸させた。その中に、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-2)11mg (0,0051mmol)のクロロホルム溶液を加え、一度エバポレーターで溶媒を溜去した後に、乾燥トルエン2mlを加え、7日間70℃に加熱しながら撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加えて希釈し、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をプレパラティブTLC(ヘキサン/酢酸エチル12:5で展開後、掻き取った部分をクロロホルム/メタノール5:1で溶出)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-3)9.0mg (0.0022mmol)を得た。(収率42%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 1.2〜1.3 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 3.52〜3.58 (m, 1H), 3.63〜3.77 (m, 4H), 3.90 (dd, J=6.8, 10.8Hz, 1H), 3.95〜4.31 (m, 18H), 4.38〜4.68 (m, 13H), 4.96 (br. s, 1H), 4.96 (d, J=3.6Hz, 1H), 5.05 (br. s, 1H), 5.06 (d, J=4.0Hz, 1H), 5.77 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.22〜7.30 (m, 42H), 7.60〜7.62 (m, 8H)
【0070】
更に2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-3)2.4mg (0.00058mmol)をテトラヒドロフラン0.1mlに溶かし、酢酸0.47μlを加え、氷冷下テトラブチルアンモニウムフルオリド(0.01M/THF溶液)1.2ml (0.012mmol)を加え、室温まで昇温して8日間撹拌した。反応終了後、エバポレーターで溶媒を溜去し、得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-4)1.5mg (0.00041mmol)を得た。(収率71%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 1.32 (s, 3H), 1.50 (s, 3H), 3.47〜3.73 (m, 5H), 3.90 (m, 1H), 3.94〜4.12 (m, 9H), 4.18〜4.28 (m, 8H), 4.34 (br. d, J=4.4Hz, 1H), 4.46〜4.69 (m, 13H), 4.93 (d, J=4.0Hz, 1H), 4.97 (br. s, 1H), 4.99 (d, J=3.6Hz, 1H), 5.05 (br. s, 1H), 5.77 (d, J=4.4Hz, 1H), 7.25〜7.31 (m, 30H)
【0071】
最後に2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-4)5.0mg (0.0014mmol)をn-ヘキサン/酢酸エチル(1:1) 2mlに溶かし、20%水酸化パラジウム/炭素6mgを加えて水素雰囲気下室温で一晩撹拌した。反応終了後、セライトで濾過をして触媒を取り除き、クロロホルム/メタノール(4:1)、クロロホルム、酢酸エチルで順に洗浄した後、ろ液を集めてエバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)で精製し、5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(4-5)4.1mg (0.0013mmol)を得た。(収率96%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 1.2〜1.3 (s, 3H), 1.52 (s, 3H), 3.6〜4.4 (br. m, 24H), 4.61 (br. s, 1H), 4.99 (br. s, 1H), 5.02 (br. s, 1H), 5.09 (br. s, 1H), 5.15 (br. s, 1H), 5.83 (br. s, 1H)
【実施例5】
【0072】
5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(5-4)
【0073】
【化15】

実施例3で合成した2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-6)64mg (0.035mmol)を塩化メチレン/水(18:1) 1.9mlに溶かし、98% 2, 3-ジクロロ-5, 6-ジシアノ-1, 4-ベンゾキノン27mg (0.12mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層をアスコルビン酸/クエン酸緩衝液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/アセトン15:1〜10:1)及びLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(5-1)38mg (0.024mmol)を得た。(収率68%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.29 (s, 3H), 1.47 (s, 3H), 2.35 (s, 3H), 2.36 (s, 3H), 3.50 (dd, J=5.6, 10.4Hz, 1H), 3.49〜3.59 (m, 2H), 3.60〜3.67 (m, 2H), 3.77 (dd, J=5.6, 10.4Hz, 1H), 3.93〜4.13 (m, 11H), 4.15〜4.20 (m, 6H), 4.24 (dd, J=0.9, 3.2Hz, 1H), 4.45 (dd, J=0.6, 4.0Hz, 1H), 4.37〜4.71 (m, 12H), 4.87 (d, J=0.9Hz, 1H), 4.91 (d, J=4.4Hz, 1H), 4.98 (d, J=0.9Hz, 1H), 5.02 (d, J=4.4Hz, 1H), 5.77 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.20〜7.33 (m, 34H), 7.71 (br. d, J=8.4Hz, 2H), 7.73 (br. d, J=8.4Hz, 2H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 21.6, 26.6, 27.2, 63.5, 63.6, 66.6, 68.6, 68.8, 72.2, 72.3, 72.5, 72.6, 72.7, 79.1, 79.9, 79.9, 80.7, 80.8, 81.8, 81.9, 82.8, 82.8, 83.2, 83.9, 84.0, 85.1, 85.7, 100.1, 100.2, 104.9, 105.3, 105.8, 113.1, 127.6, 127.7, 127.8, 127.9, 128.0, 128.3, 128.4, 128.5, 129.7, 129.8, 132.5, 137.4, 137.9, 144.7, 144.8
MALDI-Tof MS: 1589.5 [M+Na]+, found : 1590.3 [M+Na]+
【0074】
次に2, 3-O-ジベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(5-1)34mg (0.021mmol)を乾燥塩化メチレン0.2mlに溶かし、ピリジン44mg (0.56mmol)及び触媒量の4-ジメチルアミノピリジンを加えた後、氷冷下p-トルエンスルホニルクロリド21mg (0.11mmol)を加え、そのまま室温まで昇温しながら一晩撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/アセトン20:1)及びLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(5-2)37mg (0.019mmol)を得た。(収率91%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.23 (s, 3H), 1.39 (s, 3H), 2.26 (s, 3H), 2.27 (s, 3H), 2.29 (s, 3H), 2.30 (s, 3H), 3.39 (dd, J=4.8, 10.4Hz, 1H), 3.68 (dd, J=6.0, 10.4Hz, 1H), 3.87〜4.10 (m, 22H), 4.40 (d, J=4.0Hz, 1H), 4.27〜4.59 (m, 12H), 4.77 (br. s, 1H), 4.81 (d, J=4.0Hz, 1H), 4.87 (br. s, 1H), 4.97 (d, J=4.0Hz, 1H), 5.68 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.10〜7.25 (m, 38H), 7.62〜7.69 (m, 8H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 21.6, 26.7, 27.3, 66.1, 69.0, 69.1, 70.0, 70.3, 71.6, 72.3, 72.3, 72.5, 72.6, 72.6, 78.2, 78.3, 79.8, 79.9, 80.5, 81.5, 81.7, 83.0, 83.3, 83.4, 83.6, 83.6, 85.3, 85.5, 86.1, 100.6, 101.0, 104.7, 105.2, 106.0, 113.2, 127.5, 127.6, 127.7, 127.8, 127.9, 128.0, 128.1, 128.2, 128.3, 128.4, 128.5, 128.6, 128.7, 128.9, 129.6, 129.7, 129.8, 130.8, 130.9, 132.5, 132.6, 137.1, 137.3, 137.4, 137.5, 137.6, 137.7, 144.5, 144.7, 144.8, 144.9
MALDI-Tof MS: 1897.6 [M+Na]+, found : 1898.4 [M+Na]+
【0075】
続いてフラスコに99% 18-クラウン-6 34mg (0.027mmol)を入れ、トルエンを加えて二回共沸させた後に、ミコール酸34mg (0.027mmol)と炭酸水素セシウム12mg (0.062mmol)を加え、さらにトルエンで二回共沸させた。その中に、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-トルエンスルホニル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-p-トルエンスルホニル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(5-2)10mg (0,0055mmol)のクロロホルム溶液を加え、一度エバポレーターで溶媒を溜去した後に、乾燥トルエン2mlを加え、5日間70℃に加熱しながら撹拌した。反応終了後、反応液中に酢酸エチル及び蒸留水を加えて希釈し、酢酸エチル及びクロロホルムで順次抽出した。有機層を合わせて、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール4:1)及びプレパラティブTLC(ヘキサン/酢酸エチル4:1で展開後、掻き取った部分をクロロホルム/メタノール4:1で溶出)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(5-3)9.3mg (0.0015mmol)を得た。(収率28%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 1.30 (s, 3H), 1.50 (s, 3H), 3.55〜3.65 (m, 1H), 3.85〜3.92 (m, 1H), 3.99〜4.30 (m, 22H), 4.47〜4.70 (m, 13H), 4.90 (d, J=3.6Hz, 1H), 4.97 (br. s, 1H), 5.03 (br. s, 1H), 5.03 (d, J=3.6Hz, 1H), 5.77 (d, J=3.6Hz, 1H), 7.22〜7.31 (m, 30H)
【0076】
更に2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(→2)-3-O-ベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(5-3)8.8mg (0.0014mmol)をn-ヘキサン/酢酸エチル(1:1) 4mlに溶かし、20%水酸化パラジウム/炭素5.3mgを加えて水素雰囲気下室温で3日間撹拌した。反応終了後、セライトで濾過をして触媒を取り除き、クロロホルム/メタノール(4:1)で洗浄した後、ろ液を集めてエバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール3:1)で精製し、5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(5-4)7.5mg (0.0013mmol)を得た。(収率94%)
1H-NMR(糖部分)(CDCl3) δ: 1.2〜1.3 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 3.6〜4.4 (br. m, 24H), 4.58 (br. d, J=4.0Hz, 1H), 5.00〜5.02 (br. m, 2H), 5.02 (br. d, J=4.0Hz, 1H), 5.09 (br. s, 1H), 5.83 (br. d, J=4.0Hz, 1H)
【実施例6】
【0077】
天然物(BCG菌東京株由来のCWS)からミコール酸を単離する方法
BCG−CWS(製造方法については、J. Nat. Cancer Inst., 52, 95-101 (1974)に記載されている)約30mgを反応バイアルに量り、水酸化カリウムのエタノール(99.5)/トルエン/水混液(10:10:1)溶液(1→40)2mLを加えた。 回転子を入れ、65℃の恒温槽で3時間、攪拌しながら反応させた。放冷後、2mol/L塩酸を1mL添加し、よく振り混ぜた。ヘキサン2mLを加えてよく振り、ヘキサン層(上層)をとり、サンプル瓶に移した。この操作を更に2回繰り返し、ヘキサン層を集めた。シリンジにろ過用フィルターをつけてろ過したのち、水2mLを加えてよく振り混ぜ、分液した。水層(下層)を除き、ヘキサンを窒素気流下又は遠心型エバポレーターを用いて留去した。
【実施例7】
【0078】
天然物(BCG菌東京株由来のCWS)からアラビノミコレート化合物を単離する方法
ミコバクテリウム属等の細菌のCWS約50mgに対して、トルエン約2.5mLを加えて懸濁し、0.1mol/L塩酸を同量加えて、100℃で1.5時間反応させた。トルエン層を取り、別に用意したシリカゲル(クロマトグラフ用)を充てんしたカラムを用い、カラムクトマトグラフ法により、最初はクロロホルムのみを流し、その後、クロロホルム及びメタノール混液でメタノールの割合を徐々に増やして溶出させ、得られた液を別々の試験管に分取した。その後、溶媒を留去し、次の薄層クロマトグラフ法でRf値を確認した。必要に応じて同薄層クロマトグラフ法により更に精製し、質量分析で得られた分子量、1H−NMRのスペクトルから、実施例1〜5の合成品と物性データを比較し、各アラビノミコレート化合物を同定した。
薄層クロマトグラフ条件:
薄層板:メルク社製シリカゲル60(10cmx10cm)
展開溶媒:クロロホルム/メタノール/水混液(88:12:1)
発色:20%硫酸を噴霧後、加熱
(同定されたアラビノミコレート化合物)

モノ−アラビノ−モノ−ミコレート(5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシド):収率約6%。質量スペクトルデータを図2に示した。

ペンタ−アラビノ−テトラ−ミコレート(5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[5-O-ミコロイル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-5-O-ミコロイル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-β-D-アラビノフラノシド):収率約0.5%。質量スペクトルデータを図3に示した。

ヘプタ−アラビノ−テトラ−ミコレート。質量スペクトルデータを図4に示した。また、ヘキサ−アラビノース−トリ−ミコレート。質量スペクトルデータを図5に示した。

また、上記と同様にして、ジ−アラビノ−ジ−ミコレート、トリ−アラビノ−ジ−ミコレート、テトラ−アラビノ−ジ−ミコレート、ペンタ−アラビノ−ジ−ミコレート、テトラ−アラビノ−トリ−ミコレート、ペンタ−アラビノ−トリ−ミコレート、ペンタ−アラビノ−テトラ−ミコレート、ヘキサ−アラビノ−テトラ−ミコレートを得ることができた。
【実施例8】
【0079】
天然物からモノ−アラビノ−モノ−ミコレート(mono-arabino-mono-mycolate)を単離する方法
ミコバクテリウム属等の細菌のCWS約20mgに対して、2mol/Lトリフルオロ酢酸約2mLを加えて、100℃で4時間反応させた。ヘキサンを加えて抽出し、水を加えて洗浄したのち、溶媒を留去した。その後、実施例1と同様にカラムクロマトグラフ法及び薄層クロマトグラフ法により、分取・精製し、質量分析で得られた分子量及び1H−NMRのスペクトルからアラビノミコレート化合物を同定した。
【実施例9】
【0080】
mono-arabino-mono-mycolateのメチルグリコシド化
得られたmono-arabino-mono-mycolate約3mgに対して、0.5mol/L塩酸のメタノール液(和光純薬工業(株)製)約1mLを加え、65℃で4時間加熱した。放冷後、アンモニア水で中和し、溶媒を留去した。塩を除くために、水及びクロロホルムを加えて、クロロホルム層を得た。次の薄層クロマトグラフ法により更に分取・精製し、質量分析及び核磁気共鳴分析によりmono-arabino-mono-mycolateのメチルグリコシド体であることを確認した。
薄層クロマトグラフ条件:
薄層板:メルク社製シリカゲル60(10cmx10cm)
展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル混液(2:1)
発色:20%硫酸を噴霧後、加熱
【実施例10】
【0081】
penta-arabino-tetra-mycolateのアセトナイド化
得られたpenta-arabino-tetra-mycolateにトルエンを加えて加熱しながら溶媒を留去し、残存する水分を共沸させて除去した。この操作を3回繰り返した。残渣約5mgにトルエン500μLを加えて溶かし、無水アセトン(モレキュラーシーブスで乾燥)5mLを加え、更にアセトンジメチルケタール200μL及びトシル酸2mgを加えて、60℃で1時間反応させた。反応終了後、飽和食塩液を加え、更にエーテルを加えて分液し、その後溶媒を留去した。次の薄層クロマトグラフ法により分取・精製し、質量分析及び核磁気共鳴分析によりpenta-arabino-tetra-mycolateのアセトナイド体であることを確認した。
薄層クロマトグラフ条件:
薄層板:メルク社製シリカゲル60(10cmx10cm)
展開溶媒:クロロホルム/メタノール混液(39:1)
発色:20%硫酸を噴霧後、加熱
【実施例11】
【0082】
ミコバクテリウム属等の細菌からアラビノミコレート化合物を単離する方法
ミコバクテリウム属等の細菌(BCG Tokyo 172株)を取り、クロロホルム/メタノール混液を加えて完全に脱脂した。50%エタノール溶液を加えて加熱還流し、風乾した。次に、超音波を照射し、更に破砕機(フレンチプレス)で細菌を破砕した。再度、50%エタノール溶液を加えて加熱還流したのち、凍結乾燥を行った。この残渣に、10倍量の0.1mol/L塩酸及び同量のトルエンを加えて、100℃で30分間加熱した。クロロホルム/メタノール混液(2:1)を加えて2層に分離し、有機溶媒層を回収し、減圧下で乾燥した。以下、CWSと同様に操作した。
【実施例12】
【0083】
BCG Tokyo 172株加熱死菌体を20倍量の中性溶媒即ちクロロホルム・メタノール(4:1, 3:1及び2:1, v/v)と、有機溶媒に対して、1/10容の蒸留水を加え、懸濁し、EXCEL-AUTO HOMOGENIZER(NIHONSEIKI KAISHA LTD)を用い8000rpmで攪拌し、菌体を破砕するとともに脂質を抽出した。これを分液ロートに移し、完全に2層分配を行い、有機溶媒層を濃縮乾固して抽出脂質を得る一方、水溶層を更に有機溶媒で抽出、これを2度繰り返した後の菌体残渣を結合脂質(BL)としてこれを限定分解に供した。限定分解は以下に述べる2つの方法で行った。
(1)菌体残渣(乾燥重量3g)に対して10倍容の0.1N HCl(30ml)を加え、37℃、72時間スライド式シェイカーで振とうしながら反応を行った。これに対して300mlのクロロホルム:メタノール(2:1, v/v)を加えて2層分配し、糖ミコール酸エステルを抽出した。収量は197.7mg(収率6.59%)。
(2)加圧破砕後の菌体から結合脂質の糖ミコール酸を抽出する場合には、BCG Tokyo 172株から前記の中性有機溶媒(クロロホルム:メタノール, 2:1, v/v)を用いて、完全に脂質を除去した脱脂菌体を、更に50%エタノール還流抽出により両親媒性リポグリカンを抽出した後、遠心により菌体残渣を回収し、凍結乾燥を行った。この残渣300mgに対して、0.1N HCl 3mlと等量のトルエンを加え、ブロックヒーターで100℃ 30分時々攪拌を行いながら水解し、約900mgの残渣より約100mg(収率11.1%)のミコール酸アラビノースエステルを得た。これらのarabinose-mycolateをシリカゲルの薄層クロマトグラフィーにより展開し、硫酸(50%)スプレー後加熱してスポットの位置を発色させ確認した。その後、粗アラビノースミコール酸エステルをLCにかけ分子量差により分画、主要ピーク成分についてMALDI/TOF MASS分析してクラスター状に検出されるpseudomolecular ion [M+Na]+より、アラビノースとミコール酸の比率及び含量を定量した。
【実施例13】
【0084】
BCG Tokyo 172株加熱死菌体を20倍量の中性溶媒即ちクロロホルム・メタノール(4:1, 3:1及び2:1, v/v)と、有機溶媒に対して、1/10容の蒸留水を加え、懸濁し、EXCEL-AUTO HOMOGENIZER(NIHONSEIKI KAISHA LTD)を用い8000rpmで攪拌し、菌体を破砕するとともに脂質を抽出した。これを分液ロートに移し、完全に2層分配を行い、有機溶媒層を濃縮乾固して抽出脂質を得る一方、水溶層を更に有機溶媒で抽出、これを2度繰り返した後の菌体残渣を結合脂質(BL)としてこれを限定分解に供した。限定分解は以下に述べる2つの方法で行った。
(II-A)菌体残渣(乾燥重量3g)に対して10倍容の0.1N HCl(30ml)を加え、37℃、72時間スライド式シェイカーで振とうしながら反応を行った。これに対して300mlのクロロホルム:メタノール(2:1, v/v)を加えて2層分配し、糖ミコール酸エステルを抽出した。収量は197.7mg(収率6.59%)。
(II-B)加圧破砕後の菌体から結合脂質の糖ミコール酸を抽出する場合には、BCG Tokyo 172株から前記の中性有機溶媒(クロロホルム:メタノール, 2:1, v/v)を用いて、完全に脂質を除去した脱脂菌体を、更に50%エタノール還流抽出により両親媒性リポグリカンを抽出した後、遠心により菌体残渣を回収し、凍結乾燥を行った。この残渣300mgに対して、0.1N HCl 3mlと等量のトルエンを加え、ブロックヒーターで100℃ 30分時々攪拌を行いながら水解し、約900mgの残渣より約100mg(収率11.1%)のミコール酸アラビノースエステルを得た。これらのarabinose-mycolateをシリカゲルの薄層クロマトグラフィーにより展開し、硫酸(50%)スプレー後加熱してスポットの位置を発色させ確認した。その後、粗アラビノースミコール酸エステルをLCにかけ分子量差により分画、主要ピーク成分についてMALDI/TOF MASS分析してクラスター状に検出されるpseudomolecular ion [M+Na]+より、アラビノースとミコール酸の比率及び含量を定量した。
【実施例14】
【0085】
参考例1:メチル2,3-ジベンジル-α-D-アラビノフラノース(1-1)の合成
メチルα-D-アラビノフラノース (2.00 g、12.18 mmol)を乾燥ピリジン6.0 mL に溶かし、氷冷下トリi-プロピルシリルクロリド2.00 g (12.18 mmol)を加えて室温で3時間撹拌した。反応を飽和重曹水で停止後、クロロホルムにて抽出、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル50:1〜5:1)で精製し、メチル5-トリi-プロピルシリル-α-D-アラビノフラノース 4.44 g (quant.)を得た。そのまま、メチル5-トリi-プロピルシリル-α-D-アラビノフラノースを乾燥ジメチルホルムアミド5.0 mlに溶かし、氷冷下60%水素化ナトリウム1.46 g (36.5 mmol)を加えた後、ベンジルブロミド3.19 mL (13.0 mmol)を滴下し、室温で12時間撹拌した。トリエチルアミン (ca. 1mL) を加え撹拌後、飽和食塩水を加え、クロロホルムにて抽出後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をそのまま乾燥テトラヒドロフラン20 mLに溶かし、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1 M THF溶液)18.3 mL (18.3 mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターで溶媒を溜去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル50:1〜1:1)で精製し、メチル 2,3-ジベンジル-α-D-アラビノフラノース(1-1) (3.32 g, 9.35 mmol) を得た。(3段階の通算収率73%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 2.00-2.08 (brs, 1 H), 3.32 (s, 3 H), 3.59 (ddd, J = 12.0, 7.2, 3.6, Hz, 1 H), 3.78 (dt, J = 12.0, 3.2 Hz, 2 H), 3.93 (dd, J = 6.0, 2.4 Hz, 1 H), 3.95 (dd, J = 2.4, 0.8 Hz, 1 H), 4.09 (ddd, J = 6.0, 3.6, 2.8 Hz, 1 H), 4.44 (d, J = 11.6 Hz, 1 H), 4.47 (d, J = 12.0 Hz, 1 H), 4.49 (d, J = 12.0 Hz, 1 H), 4.55 (d, J = 11.6 Hz, 1 H), 4.89 (brs, 1 H), 7.25〜7.35 (m, 10 H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 54.9, 62.2, 71.8, 72.3, 82.3, 82.5, 87.7, 107.3, 12.7, 127.8, 127.80, 127.83, 128.3, 128.4, 137.2, 137.6
MALDI-Tof MS: calcd. for C20H24NaO5 ([M+Na]+) 367.15, found : 367.59
【実施例15】
【0086】
参考例2:エチル2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(2-2)
【0087】
【化16】

公知の方法に従ってD-アラビノースより調製したエチル2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(2-1)5.40g (13.9mmol)を乾燥ジメチルホルムアミド30mlに溶かし、イミダゾール2.87g (42.2mmol)と98%t-ブチルジフェニルシリルクロリド5.95g (20.3mmol)を加えて室温で3時間撹拌した。反応終了後、エーテルを加え、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル20:1)で精製し、エチル 2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(2-2)8.63g (13.8mmol)を得た。(収率99%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.01 (s, 9H), 1.32 (t, J=7.6Hz, 3H), 2.71 (m, 2H), 3.82〜3.89 (m, 2H), 4.21 (br. d, J=5.2Hz, 1H), 4.40 (m, 1H), 4.58 (d, J=12Hz, 1H), 4.77 (d, J=12Hz, 1H), 5.43 (dd, J=1.2, 1.6Hz, 1H), 5.47 (br. s, 1H), 7.21〜7.99 (m, 20H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 14.9, 19.4, 25.3, 26.8, 63.1, 72.2, 83.0, 83.0, 83.0, 87.9, 127.5, 127.6, 127.7, 127.8, 128.3, 129.3, 129.5, 129.6, 129.7, 133.2, 134.7, 135.5, 137.5, 165.3
MALDI-Tof MS: 649.2 [M+Na]+, found : 649.0 [M+Na]+
【実施例16】
【0088】
参考例3:1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-5)
【0089】
【化17】

D-アラビノース25.8g (172mmol)をピリジン350mlに溶かし、氷冷下98%t-ブチルジフェニルシリルクロリド53.0g (189mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、ヘキサン40mlを加え生じた沈殿物を濾別した。ろ液を約200mlまで濃縮し、冷却した1N塩酸水溶液150mlを加えた後、200mlの塩化メチレンで二回抽出した。有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール100:1〜5:1)で精製し、5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α/β-D-アラビノフラノース(2-3)46.4g (119mmol)を得た。(収率70%)
【0090】
5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノース
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.05 (s, 9H), 3.68〜3.84 (m, 2H), 4.06 (br. s, 1H), 4.22 (br. s, 1H), 4.27 (m, 1H), 5.43 (s, 1H), 7.38〜7.46 (m, 6H), 7.66〜7.69 (m, 4H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 19.0, 26.7, 64.1, 77.8, 79.1, 86.6, 103.2, 127.8, 129.9, 131.6, 131.8, 135.5
MALDI-Tof MS : 411.2 [M+Na]+, found : 411.4 [M+Na]+
【0091】
5-O-t-ブチルジフェニルシリル-β-D-アラビノフラノース
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.08 (s, 9H), 3.68〜3.84 (m, 2H), 3.92〜3.96 (m, 2H), 4.29 (m, 1H), 5.31 (d, J=3.6Hz, 1H), 7.38〜7.46 (m, 6H), 7.66〜7.69 (m, 4H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 19.1, 26.8, 64.6, 76.2, 77.6, 82.7, 96.5, 127.8, 130.0, 132.2, 132.2, 135.4
MALDI-Tof MS : 411.2 [M+Na]+, found : 411.4 [M+Na]+
【0092】
次に5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α/β-D-アラビノフラノース(2-3)45.0g (116mmol)をアセトン350mlに溶かし、無水硫酸銅52.5g (329mmol)と96%硫酸1.04ml (18.7mmol)を加えて室温で一晩撹拌した。反応終了後、沈殿物を濾別し、酢酸エチルでよく洗浄し、洗浄液とろ液とを合わせ、少量の炭酸カリウムを加えて300mlまで濃縮した。続いて、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル4:1)で精製し、5-O-t-ブチルジフェニルシリル-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-4)42.5g (99.2mmol)を得た。(収率86%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.08 (s, 9H), 1.28 (s, 3H), 1.33 (s, 3H), 2.56 (br. s, 1H), 3.79〜3.88 (m, 2H), 4.07〜4.11 (m, 1H), 4.43 (br. d, J=1.6Hz, 1H), 4.54 (d, J=4.0Hz, 1H), 5.89 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.37〜7.45 (m, 6H), 7.67〜7.69 (m, 4H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 19.2, 26.1, 26.8, 26.8, 63.6, 76.1, 87.0, 87.5, 105.5, 112.3, 127.6, 127.6, 129.6, 129.6, 133.0, 133.1, 135.4, 135.4
MALDI-Tof MS : 451.2 [M+Na]+, found : 451.7 [M+Na]+
【0093】
続いて5-O-t-ブチルジフェニルシリル-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-4)4.07g (9.50mmol)を乾燥テトラヒドロフラン120mlに溶かし、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1M/THF溶液)19ml (19mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターで溶媒を溜去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル2:1〜酢酸エチル)で精製し、1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-5)1.59g (8.36mmol)を得た。(収率88%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.33 (s, 3H), 1.53 (s, 3H), 3.75 (dd, J=5.6, 11.6Hz, 1H), 3.81 (dd, J=6.8, 11.6Hz, 1H), 4.10 (ddd, J=3.2, 5.6, 6.8Hz, 1H), 4.26 (m, 1H), 4.59 (br.d, J=4.0Hz, 1H), 5.94 (d, J=4.0Hz, 1H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 26.2, 27.0, 62.4, 75.9, 87.2, 87.9, 105.5, 112.7
MALDI-Tof MS : 213.1 [M+Na]+, found : 213.0 [M+Na]+
【実施例17】
【0094】
参考例4:3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-7)
【0095】
【化18】

参考例3で合成した1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-5)1.00g (5.26mmol)に、参考例2で合成したエチル2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(2-2)7.91g (12.6mmol)、98% 2, 6-ジ-t-ブチル-4-メチルピリジン5.29g (25.2mmol)、モレキュラーシーブ(4A) 5gを加え、窒素雰囲気下乾燥塩化メチレン75mlを加えた後、0℃に冷却した。氷冷下、トリフルオロメタンスルホン酸メチル2.86ml (25.3mmol)をゆっくり滴下し、そのまま室温まで昇温し一晩撹拌した。翌日トリエチルアミン2.5mlを加えた後、固形物を濾別して塩化メチレンでよく洗浄した。有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル8:1〜3:1)で精製し、2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-6)6.29g (4.77mmol)を得た。(収率91%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 0.94 (s, 9H), 0.97 (s, 9H), 1.30 (s, 3H), 1.50 (s, 3H), 3.71 (dd, J=5.2, 10.8Hz, 1H), 3.72〜3.89 (m, 4H), 3.97 (dd, J=6.4, 10.8Hz, 1H), 4.18 (br. d, J=6.0Hz, 1H), 4.23〜4.30 (m, 4H), 4.38 (br. d, J=3.2Hz, 1H), 4.51 (d, J=12.4Hz, 1H), 4.55 (d, J=12.0Hz, 1H), 4.68 (br. d, J=4.2Hz, 1H), 4.70 (d, J=12.4Hz, 1H), 4.72 (d, J=12.0Hz, 1H), 5.21 (br. s, 1H), 5.32 (br. s, 1H), 5.36 (br. d, J=0.8Hz, 1H), 5.40 (br. d, J=1.2Hz, 1H), 5.91 (d, J=4.2Hz, 1H), 7.15〜7.40 (m, 26H), 7.52〜7.63 (m, 10H), 7.91〜7.96 (m, 4H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 19.3, 19.3, 26.5, 26.8, 26.8, 27.2, 62.6, 62.6, 66.6, 72.0, 72.2, 80.0, 82.2, 82.4, 82.5, 82.6, 83.2, 83.4, 83.7, 85.1, 105.1, 105.5, 106.1, 113.0, 127.4, 127.5, 127.6, 127.7, 127.8, 128.2, 128.3, 129.2, 129.4, 129.5, 129.7, 133.0, 133.2, 133.3, 135.4, 135.5, 137.5, 137.7, 165.1, 165.4
MALDI-Tof MS : 1341.5 [M+Na]+, found : 1341.8 [M+Na]+
【0096】
続いて2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-6)6.39g (4.84mmol)を塩化メチレン20mlに溶かし、氷冷下、ナトリウムメチラート390mg (7.3mmol)のメタノール溶液20mlを加え、0℃で2時間撹拌した。反応終了後、冷却したまま希塩酸を少しずつ加えpHを3付近に調整した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル5:1〜2:1)で精製し、3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-7)5.03g (4.53mmol)を得た。(収率94%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 0.96 (s, 18H), 1.31 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 3.20 (d, J=10Hz, 1H), 3.40 (d, J=10.8Hz, 1H), 3.41〜3.44 (m, 2H), 3.62〜3.70 (m, 3H), 3.90〜3.93 (m, 3H), 4.10〜4.16 (m, 5H), 4.39 (br. d, J=4.0Hz, 1H), 4.41 (d, J=12Hz, 1H), 4.43 (d, J=12Hz, 1H), 4.57 (d, J=12Hz, 1H), 4.59 (d, J=12Hz, 1H), 4.62 (br. d, J=4.0Hz, 1H), 5.05 (br. s, 1H), 5.18 (br. s, 1H), 5.82 (d, J=4.0Hz, 1H), 7.18〜7.39 (m, 22H), 7.51〜7.60 (m, 8H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 19.0, 19.1, 26.7, 26.7, 26.8, 27.3, 63.8, 63.9, 66.4, 71.7, 71.8, 77.2, 77.9, 79.3, 83.0, 83.8, 84.1, 84.5, 84.7, 85.7, 105.1, 107.5, 108.8, 113.1, 127.5, 127.6, 127.7, 127.8, 128.3, 129.7, 129.8, 129.9, 131.9, 132.1, 132.2, 132.4, 135.4, 135.5, 137.6, 137.7
MALDI-Tof MS : 1133.5 [M+Na]+, found : 1133.4 [M+Na]+
【実施例18】
【0097】
参考例5:エチル 2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(3-2)
【0098】
【化19】

エチル2-O-ベンゾイル-3-O-ベンジル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(2-1)5.08g (13.1mmol)を乾燥ジメチルホルムアミド40mlに溶かし、氷冷下60%水素化ナトリウム1.10g (27.5mmol)を加えて20分撹拌した後、ベンジルクロリド1.58ml (13.7mmol)をゆっくり滴下し、0℃で2時間撹拌した。2時間後、氷冷したままメタノール25mlを加えさらに20分撹拌した。反応終了後、塩化メチレン100mlを加え、有機層を水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル6:1〜3:1)で精製し、エチル2, 3-O-ジベンジル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(3-1)3.43g (9.17mmol)を得た。(収率70%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.29 (t, J=7.4Hz, 3H), 2.07 (br. s, 1H), 2.57〜2.75 (m, 2H), 3.67 (dd, J=4.0, 12Hz, 1H), 3.83 (dd, J=2.8, 12Hz, 1H), 3.98〜4.02 (m, 2H), 4.23 (m, 1H), 4.48 (d, J=12Hz, 1H), 4.51 (d, J=12Hz, 1H), 4.57 (d, J=12Hz, 1H), 4.59 (d, J=12Hz, 1H), 5.35 (d, J=2.0Hz, 1H), 7.25〜7.37 (m, 10H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 14.8, 25.3, 61.7, 71.9, 72.3, 81.3, 82.8, 87.4, 88.5, 127.6, 127.7, 127.8, 128.3, 128.3, 137.1, 137.5
MALDI-Tof MS : 397.1 [M+Na]+, found : 396.8 [M+Na]+
【0099】
次いでエチル2, 3-O-ジベンジル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(3-1)3.15g (8.41mmol)を乾燥ジメチルホルムアミド25mlに溶かし、氷冷下60%水素化ナトリウム640mg (16.0mmol)を加えた。0℃で10分撹拌した後、98% p-メトキシベンジルクロリド1.28ml (9.25mmol)をゆっくり滴下し、そのまま室温まで昇温して一晩撹拌した。反応終了後、氷冷下メタノール3.5mlを加え10分撹拌した。反応液に塩化メチレンを加え、有機層を水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル20:1〜15:1)で精製し、エチル 2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(3-2)3.89g (7.86mmol)を得た。(収率94%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.30 (t, J=7.6Hz, 3H), 2.68 (m, 2H), 3.59 (dd, J=4.8, 10.8Hz, 1H), 3.64 (dd, J=3.6, 10.8Hz, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.95〜3.97 (m, 2H), 4.28 (m, 1H), 4.46〜4.62 (m, 6H), 5.37 (d, J=2.0Hz, 1H), 6.84 (br. d, J=8.8Hz, 2H), 7.21〜7.37 (m, 12H)13C-NMR (CDCl3) δ: 14.9, 25.3, 55.3, 68.7, 72.0, 72.2, 73.0, 79.9, 83.6, 87.1, 88.8, 113.6, 127.7, 127.8, 127.9, 128.3, 129.3, 130.1, 137.4, 137.7, 159.0
MALDI-Tof MS : 517.2 [M+Na]+, found : 517.4 [M+Na]+
【実施例19】
【0100】
参考例6:β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-5)
【0101】
【化20】

参考例4で合成した3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(2-7)31.9mg (0.0287mmol)に、参考例5で合成したエチル2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-1-チオ-α-D-アラビノフラノシド(3-2)45.0mg (0.0906mmol)、モレキュラーシーブ(4A) 0.4g、 N-ヨウドスクシンイミド26mg (0.12mmol) を加え、窒素雰囲気下乾燥塩化メチレン1.5mlを加えた後、-78℃に冷却した。15分撹拌後、トリフルオロメタンスルホン酸銀7.4mg (0.029mmol)を乾燥トルエン0.08mlに溶かした溶液をゆっくり滴下し、-78℃で10分撹拌した。その後、-40℃まで昇温して1時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン1mlを加え、固形物を濾別し、酢酸エチルでよく洗浄した。有機層を合わせて、20%チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をLH-20カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール1:1)とプレパラティブTLC(ヘキサン/酢酸エチル2:1で展開後、掻き取った部分をクロロホルム/メタノール4:1で溶出)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-3)32.2mg (0.0163 mmol)を得た。(収率57%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.04 (s, 9H), 1.04 (s, 9H), 1.32 (s, 3H), 1.52 (s, 3H), 3.48〜3.67 (m, 4H), 3.60 (dd, J=4.0, 10.4Hz, 1H), 3.75 (s, 3H), 3.75 (s, 3H), 3.73〜3.83 (m, 4H), 3.96 (dd, J=6.8, 10.4Hz, 1H), 4.02〜4.38 (m, 18H), 4.56 (br. d, J=4.0Hz, 1H), 4.45〜4.69 (m, 12H), 5.01 (d, J=4.4Hz, 1H), 5.02 (br. s, 1H), 5.09 (d, J=4.4Hz, 1H), 5.12 (d, J=0.6Hz, 1H), 5.84 (d, J=4.0Hz, 1H), 6.78 (d, J=8.8Hz, 1H), 6.79 (d, J=8.8Hz, 1H), 7.11 (d, J=8.8Hz, 1H), 7.13 (d, J=8.8Hz, 1H), 7.22〜7.38 (m, 42H), 7.64~7.69 (m, 8H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 19.3, 26.6, 26.9, 27.3, 55.2, 63.5, 66.8, 71.9, 72.0, 72.1, 72.2, 72.3, 72.5, 72.6, 72.7, 77.2, 79.9, 80.0, 82.1, 82.9, 83.0, 83.2, 83.3, 83.5, 83.8, 83.9, 85.0, 85.7, 85.9, 100.0, 100.1, 104.3, 105.4, 105.8, 112.9, 113.5, 113.6, 127.2, 127.4, 127.5, 127.6, 127.8, 128.1, 128.2, 128.3, 129.0, 129.2, 129.5, 129.9, 130.0, 133.1, 133.2, 133.4, 135.5, 137.6, 137.9, 138.0, 138.1, 158.9, 158.9
MALDI-Tof MS: 1997.9 [M+Na]+, found : 1997.4 [M+Na]+
【0102】
次いで2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-5-O-t-ブチルジフェニルシリル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-3)29mg (0.015mmol)をテトラヒドロフラン0.1mlに溶かし、氷冷下テトラブチルアンモニウムフルオリド(1M/THF溶液)30μl (0.030mmol)を加え、室温まで昇温しながら2時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後エバポレーターで溶媒を溜去した。得られた残渣をプレパラティブTLC(ヘキサン/酢酸エチル1:1で展開後、掻き取った部分をクロロホルム/メタノール5:1で溶出)で精製し、2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-4)22mg (0.015mmol)を得た。(収率100%)
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.25 (s, 3H), 1.43 (s, 3H), 3.42〜3.75 (m, 9H), 3.71 (s, 6H), 3.85〜4.07 (m, 11H), 4.15〜4.63 (m, 21H), 4.92 (d, J=4.4Hz, 1H), 4.95 (br. s, 1H), 4.98 (d, J=3.2Hz, 1H), 5.03 (br. s, 1H), 5.76 (d, J=4.0Hz, 1H), 6.76 (d, J=8.4Hz, 4H), 7.11 (d, J=8.4Hz, 4H), 7.20〜7.30 (m, 30H)
13C-NMR (CDCl3) δ: 27.0, 27.5, 55.2, 62.8, 62.8, 65.2, 71.5, 72.1, 72.3, 72.4, 72.4, 72.6, 72.6, 72.7, 72.7, 79.9, 80.0, 82.2, 82.6, 82.7, 83.3, 83.3, 83.4, 83.7, 83.8, 83.9, 85.4, 85.5, 86.3, 100.0, 100.5, 104.8, 105.2, 105.7, 113.5, 113.6, 127.5, 127.6, 128.0, 128.2, 128.4, 129.2, 129.8, 129.9, 137.4, 137.4, 137.7, 137.8, 137.9, 138.0, 159.0, 159.0
MALDI-Tof MS : 1521.6 [M+Na]+, found : 1521.9 [M+Na]+
【0103】
続いて2, 3-O-ジベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[2, 3-O-ベンジル-5-O-p-メトキシベンジル-β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-3-O-ベンジル-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-4)14.2mg (0.0095mmol)を酢酸エチル/メタノール/水(10:5:3) 3.6mlに溶かし、20%水酸化パラジウム/炭素6mgを加えて水素雰囲気下室温で6日間撹拌した。6日目にメタノール/水(1:1) 1mlを加え、20%水酸化パラジウム/炭素1mgを足してさらに一晩接触還元を続けた。反応終了後、セライトで濾過をして触媒を取り除き、メタノール/水(1:1)でよく洗浄した。ろ液を集めて凍結乾燥を行い、β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-α-D-アラビノフラノシル-(1→3)-[β-D-アラビノフラノシル-(1→2)-α-D-アラビノフラノシル-(1→5)]-1, 2-O-イソプロピリデン-β-D-アラビノフラノース(3-5)6.8mg (0.0095mmol)を得た。(収率100%)
1H-NMR (D2O) δ: 1.36 (s, 3H), 1.56 (s, 3H), 3.63〜3.95 (m, 12H), 4.01〜4.06 (m, 4H), 4.09〜4.16 (m, 6H), 4.31〜4.35 (m, 2H), 4.88 (d, J=4.0Hz, 1H), 5.10 (br. d, J=4.8Hz, 2H), 5.12 (br. s, 1H), 5.26 (br. s, 1H), 6.01 (d, J=4.0Hz, 1H)
13C-NMR (D2O) δ: 26.7, 27.4, 61.9, 62.0, 64.4, 64.4, 68.1, 75.5, 75.6, 76.1, 76.2, 77.7, 81.2, 83.4, 83.4, 84.1, 84.5, 85.4, 85.7, 88.5, 88.6, 102.1, 102.2, 106.3, 106.6, 107.0, 115.3
MALDI-Tof MS : 741.2 [M+Na]+, found : 740.9 [M+Na]+
【実施例20】
【0104】
(試験例1)
マウスマクロファージ様細胞株 RAW264.7を用いたTNF-α産生誘導活性の測定
クロロホルムを溶媒として実施例1、2、3、4、5の1 mg/mL溶液を作製し、ヘキサン・エタノール溶液(ヘキサンとエタノールを9:1の割合で混合したもの)で希釈して100、10、1、0.1 mg/mL溶液を調製した。陽性対照としてBCG菌東京株由来のCWSおよびトレハロースジミコレート(TDM)を、陰性対照として溶媒を用いた。これらをポリプロピレン製の96穴プレートのウェルに100μLずつ添加した後、室温に放置して溶媒を揮発除去し、被験物質のみをプレートに貼り付けた。RAW264.7 (American Type Culture Collection, ATCC No. TIB-71)はダルベッコ改変イーグル培地(10% 牛胎児血清、2mM L-グルタミン、50U/mL ペニシリン、50μg/L ストレプトマイシンを含む)で5×106 cells/mLに調製し、ウェルあたり100μL(5×105 cells/well)ずつ細胞を播種した。これを温度 37℃、炭酸ガス濃度 5%に設定したインキュベーターで一昼夜培養し、上清を回収した。上清中のTNF-αはgenzyme/TECHNE社製のELISAキット(AN' ALYZATM Mouse TNF-α Immunoassay System: Cat. No. 10019)を用い、添付の説明書通りに操作して測定した。吸光度測定にはMolecular Devices社製マイクロプレートリーダー(V max kinetic microplate reader)を用い、450nmの波長で測定した。
結果を、図1に示した。測定結果より、実施例1〜5のアラビノミコレート化合物は、TNFα産生促進活性を示し、免疫賦活能力を有していることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、実施例1〜5のアラビノミコレート化合物のTNFα産生促進活性を測定した結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例7で得られたモノ−アラビノ−モノ−ミコレートの質量スペクトルデータを示す図である。横軸は質量を示し、縦軸はスペクトル強度を示す。
【図3】図3は、実施例7で得られたペンタ−アラビノ−テトラ−ミコレートの質量スペクトルデータを示す図である。横軸は質量を示し、縦軸はスペクトル強度を示す。
【図4】図4は、実施例7で得られたヘプタ−アラビノ−テトラ−ミコレートの質量スペクトルデータを示す図である。横軸は質量を示し、縦軸はスペクトル強度を示す。
【図5】図5は、実施例7で得られたヘキサ−アラビノ−トリ−ミコレートの質量スペクトルデータを示す図である。横軸は質量を示し、縦軸はスペクトル強度を示す。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の化合物は、免疫賦活剤、詳しくはTNF-α産生促進剤として癌等の治療剤、予防剤又は進行防止薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

〔式中、nは0又は1を表し、
1およびR6は、独立して水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基又はミコロイル基を表し、
2は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基又は置換もしくは無置換のアシル基を表し、
14及びR15は、独立して水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
3は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基、置換もしくは無置換のアシル基又は式(2):
【化2】

(式中、mは1又は2を表し、R7およびR8は、独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基又は置換もしくは無置換のアシル基を表すか、あるいはR7およびR8はいっしょになってアセタール基又はケタール基を形成していてもよく、R16は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)
で表される基を表すか、あるいはR2およびR3はいっしょになってアセタール基又はケタール基を形成していてもよく、
4およびR5は、独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基、置換もしくは無置換のアシル基又は式(3):
【化3】

(式中、R9は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、トリアルキルシリル基又は置換もしくは無置換のアシル基を表し、R10は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基又はミコロイル基を表し、R17は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。)
で表される基を表す〕
で表され、少なくとも1つのミコロイル基を有する、アラビノミコレート化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項2】
式(1)において、nが0を表し、R1がミコロイル基を表し、R2およびR3は同一もしくは異なって、水素原子、ベンジル基又はメチル基をあらわすか、あるいはR2およびR3がいっしょになってベンジリデン基もしくはイソプロピリデン基を表し、R6が水素原子、ベンジル基又はメチル基を表す、請求項1に記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項3】
式(1)において、nが1を表し、R1およびR6がミコロイル基を表し、R2およびR3が同一もしくは異なって、水素原子、ベンジル基又はメチル基をあらわすか、あるいはR2およびR3がいっしょになってベンジリデン基もしくはイソプロピリデン基を表し、R4、R5、R14及びR15が同一もしくは異なって、水素原子、メチル基又はベンジル基を表す、請求項1に記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項4】
式(1)において、nが1を表し、R1およびR6が独立して水素原子又はミコロイル基を表し、R2およびR3同一もしくは異なって、水素原子、ベンジル基又はメチル基をあらわすか、あるいはR2およびR3がいっしょになってベンジリデン基もしくはイソプロピリデン基を表し、R4およびR5が式(3)で表される基を表し、式(3)において、R9が水素原子、メチル基又はベンジル基を表し、R10が水素原子、メチル基、ベンジル基又はミコロイル基を表し、R14、R15およびR17は独立して水素原子、メチル基又はベンジル基を表し、R1、R6およびR10の少なくとも一つはミコロイル基を表す、請求項1に記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項5】
ミコロイル基が、ミコバクテリウム−ボビス−ビーシージー菌由来の細胞壁骨格成分を加水分解することによって得られる炭素数70〜90のミコール酸由来のミコロイル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項6】
分子量が約1200〜7000である、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項7】
以下の(1)〜(3)の工程:
(1)ミコバクテリウム−ボビス−ビーシージー菌由来の細胞壁骨格成分を酸性水溶液及び有機溶媒との混合液下で部分酸加水分解する工程;
(2)前記(1)の生成物を、疎水性有機溶媒及び極性有機溶媒を移動相とする、順相のクロマトグラフィーで精製する工程;
(3)順相のクロマトグラフィーで、疎水性有機溶媒中の極性有機溶媒濃度1%〜30%において溶出する画分を回収する工程;
を含む方法で得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項8】
疎水性有機溶媒がクロロホルムであり、極性有機溶媒がメタノールである、請求項7に記載の化合物又はその薬学上許容される塩。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩を有効成分として含有する免疫賦活剤。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩を有効成分として含有するTNF−α産生促進剤。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩を有効成分として含有する癌治療剤又は予防剤。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項13】
以下の(1)〜(3)の工程:
(1)ミコバクテリウム−ボビス−ビーシージー菌由来の細胞壁骨格成分を酸性の水溶液及び有機溶媒との混合液下で部分酸加水分解する工程;
(2)前記(1)の生成物を、疎水性有機溶媒及び極性有機溶媒を移動相とする順相のクロマトグラフィーで精製する工程;
(3)順相のカラムクロマトグラフィーで、疎水性有機溶媒中の極性有機溶媒濃度1%〜30%において溶出する画分を回収する工程;
を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の化合物又はその薬学上許容される塩の製造方法。
【請求項14】
疎水性有機溶媒がクロロホルムであり、極性有機溶媒がメタノールである、請求項13に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−312604(P2006−312604A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135840(P2005−135840)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(593192069)日本ビーシージー製造株式会社 (4)
【Fターム(参考)】