説明

新規エピスルフィド化合物、該エピスルフィド化合物を含有する硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】硬化性、透明性等が優れ、特に光学用途に有用な化合物及び該化合物を用いた硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)等で表されるエピスルフィド化合物。(式(I)中、A1及びA2は酸素原子又は硫黄原子を表し(但し、A1及びA2の少なくとも一つは硫黄原子を表す)、Cyは炭素原子数3〜10のシクロアルキル基を示し、X及びZはそれぞれ独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基等を表し、nは0〜10、pは0〜5、rは0〜4の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規エピスルフィド化合物、該エピスルフィド化合物と硬化剤及び/又はエネルギー線感受性カチオン開始剤を含有する硬化性樹脂組成物、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明で高屈折率な硬化物は、レンズ等の光学材料に使用されてきた。特に硬化剤と組み合わせた樹脂硬化物の優れた電気特性、耐熱性、接着性、光学特性等により、電子材料、光学材料の分野において活発な開発がされてきた。例えば、半導体封止材、液晶ディスプレイ等の反射防止膜、カラーフィルターの保護膜、光導波路、カメラ等の光学機器に使用されるレンズ、ミラー及びプリズム等が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、分岐アルキルスルフィド型エピスルフィド化合物、特許文献2には、直鎖アルキルスルフィド型エピスルフィド化合物、特許文献3には、ビスフェノールS型エピスルフィド化合物が報告されている。しかし、これらの化合物は耐熱性に問題があった。また特許文献4には、光学材料として高い耐熱性を有するフルオレン骨格を有するエピスルフィド化合物が報告されている。しかし、希釈剤等への溶解性が悪く、高屈折率を示す硬化物を得るための樹脂組成物が作製できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−071580号公報
【特許文献2】特開平9−110979号公報
【特許文献3】特開平11−12273号公報
【特許文献4】特開2001−288177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、硬化性、透明性等が優れ、特に光学用途に有用な化合物及び該化合物を用いた硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するエピスルフィド化合物が、溶解性に優れ、更に該エピスルフィド化合物を含む硬化性樹脂組成物が保存安定性に優れ、その硬化物が高屈折率であり、透明性に優れることを知見し、これを使用することにより上記課題を解決することを知見した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、本発明の第1の実施形態は、下記一般式(I)又は(II)で表されるエピスルフィド化合物である。
【0008】
【化1】

(式中、A1及びA2は酸素原子又は硫黄原子を表し(但し、A1及びA2の少なくとも一つは硫黄原子を表す)、Cyは炭素原子数3〜10のシクロアルキル基を示し、X及びZはそれぞれ独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数2〜20の複素環基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基又はハロゲン原子を表し、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基の結合部は−O−、−S−又は二重結合で中断されてもよく、また、Zは隣接するZ同士で芳香環を形成してもよい。該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基、シクロアルキル基及び隣接するZ同士で形成される芳香環はハロゲン原子で置換されてもよく、nは0〜10、pは0〜5、rは0〜4の整数を表す。尚、nが0でないときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
【0009】
【化2】

(式中、A1及びA2は酸素原子又は硫黄原子を表し(但し、A1及びA2の少なくとも一つは硫黄原子を表す)、Y1、Y2及びZは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数2〜20の複素環基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基又はハロゲン原子を表し、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基の結合部は−O−、−S−又は二重結合で中断されてもよく、隣接するY1は、互いに結合して環を形成してもよく、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基及びシクロアルキル基はハロゲン原子で置換されてもよく、nは0〜10、qは0〜4、q’は0〜8(但し、q’は(x+y)×2以下である)、rは0〜4、xは0〜4、yは0〜4の整数を表し、xとyの合計は2〜4である。尚、nが0でないときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
【0010】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物と硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物である。
【0011】
本発明の第3の実施形態は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物とエネルギー線感受性カチオン開始剤を含有する硬化性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の第4の実施形態は、第2及び/又は第3の実施形態である硬化性樹脂組成物を加熱及び/又はエネルギー線を照射して得られる硬化物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエピスルフィド化合物は、溶解性に優れ、更に該エピスルフィド化合物を含む硬化性樹脂組成物は硬化性、保存安定性に優れており、高屈折率で透明性に優れた硬化物を与える。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のエピスルフィド化合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物について好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の第1の実施形態であるエピスルフィド化合物は、上記一般式(I)又は(II)で表わされる新規化合物である。
先ず、上記一般式(I)で表わされるエピスルフィド化合物について説明する。
【0015】
上記一般式(I)におけるCy、X及びZで表される炭素原子数3〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)におけるX及びZで表わされる炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−O−で中断された基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−S−で中断された基としては、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が二重結合で中断された基としては、アリル、3−ブテニル等が挙げられる。
【0017】
上記一般式(I)におけるX及びZで表される炭素原子数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、1−フェナントリル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、3−フルオレニル、9−フルオレニル、1−テトラヒドロナフチル、2−テトラヒドロナフチル、1−アセナフテニル、1−インダニル、2−インダニル、ビフェニル等が挙げられ、該アリール基の結合部が−O−で中断された基としてはフェノキシ、1−ナフトキシ、2−ナフトキシ、1−アントリルオキシ、1−フェナントリルオキシ、o−トリルオキシ、m−トリルオキシ、p−トリルオキシ、9−フルオレニルオキシ、1−インダニルオキシ、2−インダニルオキシ等が挙げられ、該アリール基の結合部が−S−で中断された基としてはフェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、1−アントリルチオ、1−フェナントリルチオ、o−トリルチオ、m−トリルチオ、p−トリルチオ、9−フルオレニルチオ、1−テトラヒドロナフチルチオ、2−テトラヒドロナフチルチオ、1−インダニルチオ、2−インダニルチオ等が挙げられ、該アリール基の結合部が二重結合で中断された基としてはスチリル等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(I)におけるX及びZで表される炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル等が挙げられ、該アリールアルキル基中のメチレン基が−O−で中断された基としては、ベンジルオキシ、フェノキシメチル、フェノキシエチル、1−ナフチルメトキシ基、2−ナフチルメトキシ基、1−アントリルメトキシ等が挙げられ、該アリールアルキル基中のメチレン基が−S−で中断された基としては、ベンジルチオ、フェニルチオメチル、フェニルチオエチル等が挙げられ、該アリールアルキル基中のメチレン基が二重結合で中断された基としては、シンナミル等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)におけるX及びZで表される炭素原子数2〜20の複素環基としては、例えば、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ユロリジル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(I)における隣接するZ同士で形成される芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(I)におけるX及びZで表されるハロゲン原子、並びに上記一般式(I)におけるX及びZで表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基、シクロアルキル基及び隣接するZ同士で形成される芳香環を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)におけるX及びZで表わされるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基、シクロアルキル基及びZ同士で形成される芳香環は置換基を有してもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基等が挙げられ、これらの基は更に置換されてもよい。尚、炭素原子を有する置換基で置換される場合は、該置換基を含めた上記一般式(I)におけるX及びZで表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基、シクロヘキシル基及び隣接するZ同士で形成される芳香環の炭素原子数が規定された炭素原子数の範囲を満たすものとする。
【0023】
上記一般式(I)で表わされるエピスルフィド化合物及び後述する上記一般式(II)で表わされるエピスルフィド化合物において、nが0でない時は光学異性体が存在する場合があるが、どの異性体であってもよく、以下の本文中に示す化合物は、特定の光学異性体に制限するものではない。
【0024】
上記一般式(I)で表わされるエピスルフィド化合物としては、例えば、下記の化合物No.1〜No.13に示される化合物が挙げられる。尚、下記化学式中、nは0〜10の数を表す。但し、本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
本発明の上記一般式(I)で表されるエピスルフィド化合物の中でも、上記一般式(I)中、X及びZが炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基であり、p及びrが0〜2であり、nが0〜5である化合物が、保存安定性が良いため好ましく、特に、下記i)〜iii)の化合物は、原料が入手容易であり生産性が良いため更に好ましい。
i)下記一般式(III)で表される化合物。
【化6】

(式中、A1、A2、Z、r及びnは上記一般式(I)と同じである。尚、nが0でないときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
ii)上記一般式(I)中、Xが炭素原子数6〜20のアリール基であり、pが0又は1であり、nが0〜2である化合物。
iii)上記一般式(III)中、nが0〜2である化合物。
【0029】
上記一般式(I)で表わされるエピスルフィド化合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、下記反応式に示すように、エポキシ誘導体(1)とチオ尿素とを反応させることにより、上記一般式(I)で表わされるエピスルフィド化合物を容易に製造することができる。
【0030】
【化7】

【0031】
また、反応に用いるチオ尿素の量や、反応時間を増減することにより原料であるエポキシ誘導体におけるオキシラン環中の酸素原子の硫黄原子へ置換の割合(硫黄置換率)を任意に制御することが可能であり、目的に応じて一部原料であるエポキシ誘導体や、生成物中に未置換のオキシラン環を残したまま本発明のエピスルフィド化合物として用いてもよい。硫黄置換率は高いほど硬化物の屈折率が高くなるため好ましくは50%〜100%であり、更に好ましくは80%〜100%である。
【0032】
次に、上記一般式(II)で表わされるエピスルフィド化合物について説明する。尚、以下の説明において、特に説明しない部分については、上記一般式(I)で表わされるエピスルフィド化合物における説明の内容が適宜適用される。
【0033】
上記一般式(II)におけるY1、Y2及びZで表される炭素原子数1〜10のアルキル基、及び該アルキル基中のメチレン基が−O−、−S−、又は二重結合で中断された基としては、上記一般式(I)の説明で例示した基が挙げられる。
【0034】
上記一般式(II)におけるY1、Y2及びZで表される炭素原子数6〜20のアリール基、及び該アリール基の結合部が−O−、−S−又は二重結合で中断された基としては、上記一般式(I)の説明で例示した基が挙げられる。
【0035】
上記一般式(II)におけるY1、Y2及びZで表される炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、及び該アリールアルキル基中のメチレン基が−O−、−S−又は二重結合で中断された基としては、上記一般式(I)の説明で例示した基が挙げられる。
【0036】
上記一般式(II)におけるY1、Y2及びZで表される炭素原子数2〜20の複素環基としては、上記一般式(I)の説明で例示した基が挙げられる。
【0037】
上記一般式(II)におけるY1、Y2及びZで表される炭素原子数3〜10のシクロアルキル基としては、上記一般式(I)の説明で例示した基が挙げられる。
【0038】
上記一般式(II)における隣接するY1が結合して形成される環構造としては、上記一般式(I)における芳香環として例示したものに加えて、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環、フルオレン環、アセナフテン環、インダン環、テトラリン環等の縮合環が挙げられる。
【0039】
上記一般式(II)におけるY1、Y2及びZで表されるハロゲン原子、並びに上記一般式(II)におけるY1、Y2及びZで表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基、シクロアルキル基及び隣接するY1が結合して形成される環構造を置換してもよいハロゲン原子としては、上記一般式(I)の説明で例示した基が挙げられる。
【0040】
上記一般式(II)に置けるY1、Y2及びZで表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基、シクロアルキル基及び隣接するY1が結合して形成される環構造は置換基を有してもよく、これらの置換基としては、上記一般式(I)の説明で例示した基が挙げられ、これらの基は更に置換されてもよい。尚、炭素原子を有する置換基で置換される場合は、該置換基を含めた上記一般式(II)に置けるY1、Y2及びZで表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基、シクロアルキル基、及び隣接するZ同士で形成される環構造の炭素原子数が規定された炭素原子数の範囲を満たすものとする。
【0041】
上記一般式(II)で表わされるエピスルフィド化合物としては、例えば、下記の化合物No.14〜No.62に示される化合物が挙げられる。尚、下記化学式中、nは0〜10の数を表す。但し、本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
本発明の上記一般式(II)で表されるエピスルフィド化合物の中でも、以下のiv)〜ix)の化合物は、原料が入手容易であり生産性がよく、高屈折率の硬化物が得られるため好ましい。
iv)上記一般式(II)中、xが2又は3であり、yが0であり、Y1が炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は隣接するY1同士で形成した環が芳香環となる基であり、Y2及びZは炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基であり、q及びrが0〜2である化合物。
v)下記一般式(IV)で表される化合物。
【化19】

(式中、Y2’は上記一般式(II)のY2と同じ又は水素原子を表し、x’は1又は2であり、A1及びA2は上記一般式(II)と同じであり、Y1、Z、n、q及びrは上記一般式(II)と同じである。尚、nが0でないときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
vi)上記一般式(II)又は(IV)中、nが0〜5である化合物。
vii)上記一般式(II)又は(IV)中、Y2がフェニル基である化合物。
viii)上記一般式(II)又は(IV)中、qが0又は1であり、qが1の時、Y1が炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基である化合物。
ix)上記一般式(II)中、xは2であり、yは0であり、Y2はフェニル基であり、qは0であり、q’は0であり、qは1であり、rは0であり、nは0〜2である化合物。
【0054】
上記一般式(II)で表わされるエピスルフィド化合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、下記反応式に示すように、エポキシ誘導体(2)とチオ尿素とを反応させることにより、本発明の上記一般式(II)で表わされるエピスルフィド化合物を容易に製造することができる。
【0055】
【化20】

【0056】
本発明の第1の実施形態であるエピスルフィド化合物は、以下に説明する第2又は第3の実施形態である硬化性樹脂組成物、並びに該硬化性樹脂組成物を加熱及び/又はエネルギー線を照射して得られる、第4の実施形態である硬化物としての用途のほか、コンクリート、セメントモルタル、各種金属、皮革、ガラス、ゴム、プラスチック、木、布、紙等に対する塗料或いは接着剤;包装用粘着テープ、粘着ラベル、冷凍食品ラベル、リムーバルラベル、POSラベル、粘着壁紙、粘着床材等の粘着剤;アート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、塗工板紙、カーボンレス複写機、含侵紙等の加工紙;天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の収束剤、ほつれ防止剤、加工剤等の繊維処理剤;シーリング剤、セメント混和剤、防水材等の建築材料;電子・電気機器用封止剤等の広範な用途に使用することができる。
【0057】
次に、本発明の第2の実施形態である硬化性樹脂組成物について説明する。尚、以下の説明において、特に説明しない部分については、第1の実施形態における説明の内容が適宜適用される。
【0058】
本発明の第2の実施形態である硬化性樹脂組成物は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物と硬化剤を含有してなる硬化性樹脂組成物である。該硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等のポリエーテルポリアミン類;1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−3,6−ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノメチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ポリアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ジチオジアニリン等の芳香族ポリアミン類等が挙げられる(以下、ポリアミン類とする)。また、これらのポリアミン類と、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF−グリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類又はカルボン酸のグリシジルエステル類等の各種エポキシ樹脂とを常法によって反応させることによって製造されるポリエポキシ付加変性物;これらのポリアミン類と、フタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸等のカルボン酸類とを常法によって反応させることによって製造されるアミド化変性物;これらのポリアミン類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類及びフェノール、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノール、レゾルシン等の核に少なくとも一個のアルデヒド化反応性部位を有するフェノール類とを常法によって反応させることによって製造されるマンニッヒ化変性物等が挙げられる(以下、ポリアミン類の変性物とする)。更に、ジシアンジアミド、酸無水物、2−エチル−4メチルイミダゾール等のイミダゾール類等の潜在性硬化剤も使用できる。特に、前記のポリアミン類、前記ポリアミン類の変性物及びイミダゾール類が好ましく、イミダゾール類が保存安定性及び硬化性の点で更に好ましい。
【0059】
本発明の第2の実施形態である硬化性樹脂組成物において、上記硬化剤の含有量は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。硬化剤の含有量が0.01重量部未満では、硬化速度が遅かったり、硬化が不十分であり、20重量部超では、硬化物の強度が不十分である。
【0060】
また、本発明の第2の実施形態である硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化触媒;エポキシ化合物、オキセタン化合物、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の、反応性及び/又は非反応性の希釈剤(可塑剤);ガラス繊維、炭素繊維、セルロース、ケイ砂、セメント、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、ベントナイト、タルク、シリカ、微粉末シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、瀝青物質等の充填剤若しくは顔料;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;界面活性剤;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、イボタロウ、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、石油ワックス、脂肪酸ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族エステル、芳香族エーテル等の潤滑剤;増粘剤;チキソトロピック剤;酸化防止剤;光増感剤;光安定剤;紫外線吸収剤;難燃剤;消泡剤;防錆剤;保存安定剤;コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の常用の添加物を含有してもよく、更に、キシレン樹脂、石油樹脂等の粘着性の樹脂類を併用することもできる。本発明の第2の実施形態である硬化性樹脂組成物において、これらの任意の添加物は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物100質量部に対し、好ましくは合計で500質量部以下である。
【0061】
上記反応性及び/又は非反応性の希釈剤(可塑剤)として用いてもよいエポキシ化合物としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられ、反応性及び/又は非反応性の希釈剤(可塑剤)として用いてもよいオキセタン化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3'−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0062】
本発明の第2の実施形態である硬化性樹脂組成物には、溶媒を含有させてもよい。この場合、溶媒の使用量は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物及び上記硬化剤の合計の含有量が、第2の実施形態である硬化性樹脂組成物中、好ましくは5〜90質量%、更に好ましくは10〜50質量%の範囲になるようにするとよい。該溶媒の具体例としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセルソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ−又はn−プロパノール、イソ−又はn−ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられ、中でも、ケトン類或いはセロソルブ系溶媒が好ましい。また、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物を合成する際に用いた溶媒を除去せず、そのまま第2の実施形態である硬化性樹脂組成物に含有させてもよい。
【0063】
本発明の第2の実施形態である硬化性樹脂組成物は加熱処理することにより硬化することができる。加熱処理は、好ましくは100〜300℃の範囲で、10〜240分加熱するとよい。
【0064】
次に、本発明の第3の実施形態である硬化性樹脂組成物について説明する。尚、以下の説明において、特に説明しない部分については、第1及び第2の実施形態における説明の内容が適宜適用される。
【0065】
本発明の第3の実施形態である硬化性樹脂組成物は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物とエネルギー線感受性カチオン重合開始剤を含有してなる硬化性樹脂組成物である。該エネルギー線感受性開始剤は、エネルギー線感受性照射、より具体的には後述するようなエネルギー線の照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能な化合物である。
【0066】
上記エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として特に好ましいものとしては、エネルギー線感受性照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、又はその誘導体が挙げられる。かかる化合物の代表的なものとしては、一般式、[A]y+[B]y-で表される陽イオンと陰イオンとの塩を挙げることができる。
【0067】
ここで、陽イオン[A]y+はオニウムであることが好ましく、その構造は例えば、[(R)xQ]y+で表すことができる。
【0068】
更にここで、Rは炭素数が1〜60であり、炭素以外の原子をいくつ含んでもよい有機基であり、xは1〜5の整数である。x個のRは各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、x個のRのうち少なくとも一つは、芳香族基であることが好ましい。Qは、S、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F及びN=Nからなる群から選ばれる原子或いは原子団である。また、陽イオン[A]y+中のQの原子価をzとしたとき、y=x−zの関係が成り立つことが必要である。
【0069】
また、陰イオン[B]y-は、ハロゲン化物錯体であることが好ましく、その構造は例えば、[LXs]y-で表すことができる。
【0070】
更にここで、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲン原子である。sは3〜7の整数である。また、陰イオン[B]y-中のLの原子価をtとしたとき、y=s−tの関係が成り立つことが重要である。
【0071】
上記一般式の陰イオン[LXs]y-の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4-、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6-、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6-等が挙げられ、好ましくはヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-である。
【0072】
また、陰イオン [B]y-としては、[LXs-1(OH)]y-で表される構造のものも用いることができる。L、X、sは上記と同様である。また、その他用いることができる陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4-、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3-、フルオロスルホン酸イオン(FSO3-、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン等が挙げられる。
【0073】
また、陰イオン[B]y−として、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートも使用できる。
【0074】
本発明では、このようなオニウム塩の中でも、芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。中でも、特開昭50−151997号公報、特開昭50−158680号公報に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号公報、特開昭52−30899号公報、特開昭56−55420号公報、特開昭55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報に記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号公報、特開昭56−149402号公報、特開昭57−192429号公報等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号公報に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4139655号明細書に記載のチオピリリウム塩等が好ましい。
【0075】
これらの芳香族オニウム塩の中でも特に好ましいのは、下記一般式(V)、(VI)又は(VII)
【化21】

(式中、R1〜R14は各々同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子或いは酸素原子又はハロゲン原子を含んでもよい炭化水素基、若しくは置換基がついてもよいアルコキシ基、Arは1以上の水素原子が置換されてもよいフェニル基である。)で表されるスルホニウム陽イオンを有する化合物;(トリクミル)ヨードニウム陽イオンを有する化合物;ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウム陽イオンを有する化合物;トリフェニルスルホニウム陽イオンを有する化合物等が挙げられる。
【0076】
例えば、4−(4−ベンゾイル−フェニルチオ)フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート;4,4’−ビス[ビス((β−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ビス((β−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート;4,4’−ビス[ビス(フルオロフェニル)スルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ビス(フルオロフェニル)スルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート;4,4’−ビス(ジフェニルスルホニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルホニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート;4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニル−ジ−(4−(β−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニル−ジ−(4−(β−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニル−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニル−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−(フェニルチオ)フェニル−ジ−(4−(β−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(フェニルチオ)フェニル−ジ−(4−(β−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−(フェニルチオ)フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(フェニルチオ)フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−(フェニルチオ)フェニル−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(フェニルチオ)フェニル−ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;(トリルクミル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(トリルクミル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート;(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;ビス(ターシャリブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ターシャリブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート;ビス(ターシャリブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;ベンジルジメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−メトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;4−エトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−エトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;α−ナフチルメチルジメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、α−ナフチルメチルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;α−ナフチルメチルテトラヒドロチオフェニウムヘキサフルオロホスフェート、α−ナフチルメチルテトラヒドロチオフェニウムヘキサフルオロアンチモネート;シンナミルジメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、シンナミルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート;シンナミルテトラヒドロチオフェニウムヘキサフルオロホスフェート、シンナミルテトラヒドロチオフェニウムヘキサフルオロアンチモネート;N−(α−フェニルベンジル)シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−(α−フェニルべンジル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート;N−シンナミル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−シンナミル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート;N−(α−ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−(α−ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート;N−べンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−べンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート;(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムテトラキス(3,5−ジフルオロ−4−メトキシフェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0077】
また、その他好ましいものとしては、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)−トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド等の鉄/アレン錯体、アルミニウム錯体/光分解ケイ素化合物系開始剤等も挙げられる。
【0078】
上記エネルギー線感受性カチオン重合開始剤は、1種で又は2種以上混合して使用することができる。また、第2の実施形態で用いた硬化剤も混合して使用することができる。上記エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の使用量又は上記エネルギー線感受性カチオン重合開始剤と硬化剤の合計使用量は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物100質量部に対して0.05〜20質量部である。該使用量が0.05質量部未満であると、硬化性樹脂組成物の硬化が不十分になり、歪みやムラを生じたり、加熱時に亀裂が入るため望ましくない。また該使用量が50質量部を越えると、硬化性樹脂組成物を硬化させて形成した接着層におけるイオン性物質の含有量が増加するために硬化物の吸湿性が高くなり、耐久性能を十分得ることができない。上記エネルギー線感受性カチオン重合開始剤のより好ましい使用量は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物100質量部に対して0.5質量部〜15質量部である。
【0079】
また、本発明の第3の実施形態である硬化性樹脂組成物には、第2の実施形態である硬化性樹脂組成物の説明で例示した任意の添加物を添加してもよい。第3の実施形態である硬化性樹脂組成物において、これらの任意の添加物は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物100質量部に対し、好ましくは合計で500質量部以下である。
【0080】
本発明の第3の実施形態である硬化性樹脂組成物には、溶媒を含有させてもよい。この場合、溶媒の使用量は、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物、上記エネルギー線感受性カチオン重合開始剤及び/又は上記硬化剤の合計の含有量が、第3の実施形態である硬化性樹脂組成物中、好ましくは5〜90質量%、更に好ましくは10〜50質量%の範囲になるようにするとよい。該溶媒の具体例としては、第2の実施形態である硬化性樹脂組成物において例示した溶媒が挙げられ、中でも、ケトン類或いはセロソルブ系溶媒が好ましい。また、第1の実施形態であるエピスルフィド化合物を合成する際に用いた溶媒を除去せず、そのまま第3の実施形態である硬化性樹脂組成物に含有させてもよい。
【0081】
本発明の第3の実施形態である硬化性樹脂組成物は紫外線等のエネルギー線を照射することにより通常は0.1秒〜数分後に指触乾燥状態或いは溶媒不溶性の状態に硬化することができる。適当なエネルギー線としては、カチオン重合開始剤の分解を誘発する限りいかなるものでもよいが、好ましくは、超高、高、中、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、エキシマーレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー、YAGレーザー、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストロームから7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用する。
【0082】
また、本発明の第3の実施形態である硬化性樹脂組成物は加熱処理によっても硬化できる。好ましくは、エネルギー線照射前後に適宜加熱処理をすると品質の良い硬化物が得られる。
【0083】
以上説明した本発明の第2及び3の実施形態である硬化性樹脂組成物は、以下に説明する第4の実施形態である硬化物としての用途のほか、インキ、保護膜、塗料、コーティング剤、接着剤、絶縁材、構造材、光ディスク、シーリング剤、光造形剤としても使用することができる。
【0084】
次に、第4の実施形態である硬化物について説明する。尚、以下の説明において、特に説明しない部分については、第1〜3の実施形態における説明の内容が適宜適用される。
【0085】
本発明の第4の実施形態である硬化物は、第2及び/又は第3の実施形態である硬化性樹脂組成物を加熱及び/又はエネルギー線を照射して得られる硬化物である。加熱及びエネルギー線照射等の条件については先に説明した通りである。
【0086】
本発明の第4の実施形態である硬化物の形状は特に限定されるものでなく、例えば、レンズ状、フィルム上、プリズム状、板状等が挙げられる。更に、他の材料上で硬化させることにより、その材料を被覆又は封止してもよい。
【0087】
本発明の第4の実施形態である硬化物は、光学レンズ、光学フィルム、導光板、導波路、光学素子、光コネクター等の光学部品に有用である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。実施例1−1〜1−3は本発明の第1の実施形態であるエピスルフィド化合物の製造例を示し、実施例2−1〜2−8は、本発明の第2及び第3の実施形態である硬化性樹脂組成物の製造例及び評価例を示し、比較例2−1〜2−7は、比較硬化性樹脂組成物の製造例及び評価例を示す。実施例3−1〜3−3は、本発明の第2の実施形態を硬化させた第4の実施形態である硬化物の製造例及び評価例を示し、比較例3−1は、比較硬化物の製造例及び評価例を示す。実施例4−1及び4−2は、本発明の第3の実施形態を硬化させた第4の実施形態である硬化物の製造例及び評価例を示し、比較例4−1〜4−3は、比較硬化物の製造例及び評価例を示す。
【0089】
[実施例1−1]エピスルフィド化合物A−1の製造
攪拌装置及び温度計を付した三口フラスコに、1,1−ビス(4−(2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニル)−3−フェニルインダンの100.0g、テトラヒドロフラン250g、及びエタノール60.0gを仕込みよく攪拌して溶解させた。これにチオ尿素の44.2gを仕込み、45℃に加熱し18時間攪拌した。この後トルエン300mL、酢酸エチル200mL及び水300mLを加え、分液ろうとで洗浄し、水層を廃棄した。更に有機層を10%食塩水の300mLで2度洗浄した後無水硫酸マグネシウムでよく乾燥させ、脱溶媒を行い粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で分離精製を行い、73.0gの無色粘稠性固体(エピスルフィド化合物(A−1))を収率69%で得た。各種分析の結果、該無色粘稠性固体は本発明のエピスルフィド化合物(化合物No.53におけるn=0の化合物)であることを確認した。元素分析値から求められるオキシラン環のチイラン環への硫黄置換率は98%であった。分析結果を下記に示す。
【0090】
【化22】

【0091】
(分析結果)
(1)1H−NMRのケミカルシフト(DMSO−d6、35℃):(ppm)
2.42−2.45(m:2H)、2.49−2.73(m:3H)、3.15−3.20(m:1H)、3.26−3.37(m:2H)、3.95−4.02(m:2H)、4.07−4.16(m:3H)、6.78(d:1H)、6.86−6.96(m:4H)、7.01−7.07(m:3H)、7.08−7.13(m:2H)、7.15−7.26(m:5H)、7.30−7.35(m:2H)。
(2)元素分析による硫黄含量(ダイアインスルメンツ社製TOX−100による測定含量)
実測値:12.1%、理論値:12.3%。
(3)IR(cm-1
3027、2868、1605、1579、1507、1468、1454、1397、1292、1245、1181、1118、1032、1011、828、779、756、736、701
【0092】
[実施例1−2]エピスルフィド化合物A−2の製造。
攪拌装置及び温度計を付した三口フラスコに、1,1−ビス(4−(2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニル)−3,5−ジフェニルインダンの50.0g、テトラヒドロフラン270g、及びエタノール30.0gを仕込みよく攪拌して溶解させた。これにチオ尿素の14.8gを仕込み、室温で48時間攪拌した。この後トルエン1000mL、と水300mLを加え、分液ろうとで洗浄し、水層を廃棄した。更に有機層を10%食塩水の300mLで2度洗浄し、無水硫酸マグネシウムでよく乾燥させた後、脱溶媒を行い、50.2gの無色固体(エピスルフィド化合物(A−2))を収率95%で得た。各種分析の結果、該無色固体は本発明のエピスルフィド化合物(化合物No.44におけるn=0の化合物)であることを確認した。元素分析値から求められるオキシラン環のチイラン環への硫黄置換率は96%であった。分析結果を下記に示す。
【0093】
【化23】

【0094】
(分析結果)
(1)1H−NMRのケミカルシフト(DMSO−d6、35℃):(ppm)
2.50(d:1H)、2.65(d:1H)、2.68−2.71(m:2H)、2.76−2.82(m:1H)、3.21−3.36(m:3H)、3.80−3.86(m:1H)、4.00−4.03(m:1H)、4.10−4.15(m:1H)、4.18−4.24(m:1H)、4.26−4.31(m:1H)、6.88−6.92(m:4H)、6.98(s:1H)、7.05−7.09(m:2H)、7.14−7.20(m:3H)、7.25−7.41(m:8H)、7.48−7.55(m:3H)
(2)元素分析による硫黄含量(ダイアインスルメンツ社製TOX−100による測定含量)
実測値:10.3%、理論値:10.7%。
(3)IR(cm-1
3027、2925、1604、1579、1508、1475、1298、1245、1181、1035、914、830、763、701
【0095】
[実施例1−3]エピスルフィド化合物A−3の製造。
攪拌装置及び温度計を付した三口フラスコに、ビス[4−(2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニル]シクロヘキシル(4−ビフェニル)メタンの30.0g、1,4−ジオキサン150g、及びエタノール30.0gを仕込みよく攪拌して溶解させた。これにチオ尿素の10.2gを仕込み、50℃で24時間攪拌し、この後トルエン300mL、酢酸エチル200mL及び水300mLを加え、分液ろうとで洗浄し、水層を廃棄した。更に有機層を10%食塩水の300mLで2度洗浄し、無水硫酸マグネシウムでよく乾燥させた後脱溶媒を行い、白色粉末状の結晶を析出させた。この結晶をトルエンとヘキサンで洗浄し、よく乾燥させて22.5gの無色結晶(エピスルフィド化合物(A−3))を収率71%で得た。各種分析の結果、該無色結晶は本発明のエピスルフィド化合物(化合物No.1におけるn=0の化合物)であることを確認した。元素分析値から求められるオキシラン環のチイラン環への硫黄置換率は92%であった。分析結果を下記に示す。
【0096】
【化24】

【0097】
(分析結果)
(1)1H−NMRのケミカルシフト(DMSO−d6、25℃):(ppm)
0.99−1.10(m:3H)、1.30−1.52(m:5H)、2.07(d:2H)、2.30(d:2H)、2.51(d:2H)、3.14−3.22(m:2H)、3.80(dd:2H)、3.86(s:1H)、3.96(dd:2H)、6.61−6.66(m:4H)、6.86−6.92(m:6H)、7.20−7.25(m:1H)、7.31−7.37(m:2H)、7.44(d:2H)、7.57(d:2H)
(2)元素分析による硫黄含量(ダイアインスルメンツ社製TOX−100による測定含量)
実測値:10.1%、理論値:11.0%
(3)IR(cm-1
2929、2845、1606、1508、1236、1181、1032、824、764、763
【0098】
[実施例2−1〜2−8及び比較例2−1〜2−7]硬化性樹脂組成物No.1〜No.8及び比較硬化性樹脂組成物No.9〜No.15の製造
上記製造例1〜3で製造したエピスルフィド化合物(A−1)〜(A−3)及び希釈剤(C−1)又は(C−2)を[表1]の配合比率に従い混合し、100℃に加熱して攪拌溶解させた後、60℃まで降温し、熱硬化剤(D−1)又はカチオン重合開始剤(D−2)を加えて10分撹拌し、それぞれ硬化性樹脂組成物No.1〜No.8を作製した。また、[表2]の配合比率に従い、本発明のエピスルフィド化合物に替えて、下記に示す比較化合物(B−1)〜(B−3)を用いて同様の操作で、比較硬化性樹脂組成物No.9〜No.15を作製した。得られた組成物の溶解性を評価した。結果を[表1]及び[表2]に示す。
(B−1)2,2−ビス(4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル)プロパン
(B−2)9,9−ビス(4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル)フルオレン
(B−3)1,1−ビス(4−(2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニル)−3−フェニルインダン
(C−1)アデカレジンEP−4100E((株)ADEKA製):ビスフェノールA型エポキシ樹脂):希釈剤
(C−2)グリシジルフェニルエーテル:希釈剤
(D−1)2−エチル−4−メチルイミダゾール:熱硬化剤
(D−2)4−(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(アデカオプトマーSP−172、(株)ADEKA製):エネルギー線感受性カチオン重合開始剤
【化25】

【0099】
<溶解性>
得られた硬化性樹脂組成物を60℃で10分撹拌後、室温まで冷却し、溶解性について評価した。尚、評価基準は、室温まで冷却しても析出物が確認されない場合は○、加熱時に溶解するが室温まで冷却後1日で析出物が確認される場合を△、加熱しても溶解しない場合は×とした。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
[表1]及び[表2]から明らかなように、比較化合物(B−2)を用いた組成物では溶解性及び保存安定性が悪いのに対し、本発明のエピスルフィド化合物を用いた実施例2−1〜2−8の組成物では、希釈剤に対する溶解性に優れる。また、比較例2−1及び2−4では溶解しなかったため、また比較例2−7においては室温まで冷却後、結晶が析出してきた為に硬化性樹脂組成物が得られなかった。
【0103】
[実施例3−1〜3−3及び比較例3−1]
得られた硬化性樹脂組成物No.1〜No.3及び比較硬化性樹脂組成物No.10をそれぞれ60℃に加熱し、離形処理を施したガラス基板に塗布した。1.00mmのスペーサーと共にもう一枚のガラスで挟み込んで張り合わせ、100℃で1時間、150℃で1時間加熱し、硬化したものを○、硬化しなかったものを×として硬化性を評価した。また、硬化物として得られたものは、屈折率及び透明性を評価した。結果を[表3]に示す。
【0104】
<屈折率>
得られた硬化物についてアタゴ(株)製アッベ屈折計DR−M2にて、25℃におけるD線及びe線の屈折率nd及びneの測定を行った。
【0105】
【表3】

【0106】
[表3]より、希釈剤と熱硬化剤からなる比較硬化性樹脂組成物No.10(比較例3−1)の硬化物と比較して、本発明のエピスルフィド化合物A−1〜A−3を用いた硬化性樹脂組成物No.1〜No.3(実施例3−1〜3−3)の硬化物は屈折率が高いことが明らかである。
【0107】
[実施例4−1及び4−2並びに比較例4−1〜4−3]
得られた硬化性樹脂組成物No.4及びNo.5並びに比較硬化性樹脂組成物No.11、No、13及びNo.14をそれぞれ60℃に加熱し、離形処理を施したガラス基板に塗布した。1.00mmのスペーサーと共にもう一枚のガラスで挟み込んで張り合わせ、これを高圧水銀灯でガラス片面につき3000mJ/cm2(計6000mJ/cm2)で露光後に、150℃で2時間処理し、室温まで冷却してガラス基板から剥離させた。硬化物として得られたものについて○、硬化していないものは×として、硬化性を評価した。また、硬化物として得られたものは、屈折率及び透明性を評価した。結果を[表4]に示す。
【0108】
<屈折率>
得られた硬化物について、アタゴ(株)製アッベ屈折計DR−M2にて、25℃におけるD線及びe線の屈折率nd及びneの測定を行った。
【0109】
<透明性>
日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH5000にて、得られた硬化物の全光線透過率を測定した。
【0110】
【表4】

【0111】
[表4]より、比較化合物(B−1)を用いた比較硬化性樹脂組成物No.11(比較例4−1)は、溶解性は良好であるが、硬化性が悪く、比較化合物(B−3)を用いた硬化性樹脂組成物No.13(比較例4−2)、及び希釈剤とエネルギー線感受性カチオン重合開始剤からなる比較硬化性樹脂組成物No.14(比較例4−3)は、硬化性は良好であるが、屈折率及び透明性が劣る。
これに対して、本発明のエピスルフィド化合物A−1を用いた硬化性樹脂組成物No.4及び5(実施例4−4及び4−5)は、硬化性、屈折率及び透明性に優れることは明らかである。
【0112】
以上より、本発明のエピスルフィド化合物は溶解性に優れ、且つこれらの化合物を含有させることを特徴とする本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性及び透明性に優れた高屈折率を有する硬化物を与え、光学材料用途に有用なことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるエピスルフィド化合物。
【化1】

(式中、A1及びA2は酸素原子又は硫黄原子を表し(但し、A1及びA2の少なくとも一つは硫黄原子を表す)、Cyは炭素原子数3〜10のシクロアルキル基を示し、X及びZはそれぞれ独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数2〜20の複素環基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基又はハロゲン原子を表し、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基の結合部は−O−、−S−又は二重結合で中断されてもよく、また、Zは隣接するZ同士で芳香環を形成してもよい。該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基、シクロアルキル基及び隣接するZ同士で形成される芳香環はハロゲン原子で置換されてもよく、nは0〜10、pは0〜5、rは0〜4の整数を表す。尚、nが0でないときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
【請求項2】
下記一般式(II)で表されるエピスルフィド化合物。
【化2】

(式中、A1及びA2は酸素原子又は硫黄原子を表し(但し、A1及びA2の少なくとも一つは硫黄原子を表す)、Y1、Y2及びZは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数2〜20の複素環基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基又はハロゲン原子を表し、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基の結合部は−O−、−S−又は二重結合で中断されてもよく、隣接するY1は、互いに結合して環を形成してもよく、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、複素環基及びシクロアルキル基はハロゲン原子で置換されてもよく、nは0〜10、qは0〜4、q’は0〜8(但し、q’は(x+y)×2以下である)、rは0〜4、xは0〜4、yは0〜4の整数を表し、xとyの合計は2〜4である。尚、nが0でないときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
【請求項3】
下記一般式(III)で表される、請求項1に記載のエピスルフィド化合物。
【化3】

(式中、A1、A2、Z、n及びrは上記一般式(I)と同じである。尚、nが0でないときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
【請求項4】
下記一般式(IV)で表される、請求項2に記載のエピスルフィド化合物。
【化4】

(式中、Y2’は上記一般式(II)のY2と同じ又は水素原子を表し、x’は1又は2であり、A1及びA2は上記一般式(II)と同じであり、Y1、Z、n、q及びrは上記一般式(II)と同じである。尚、nが0でないときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
【請求項5】
上記一般式(IV)のx’が1である請求項4に記載のエピスルフィド化合物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のエピスルフィド化合物と硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載のエピスルフィド化合物とエネルギー線感受性カチオン重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6又は7の何れかに記載の硬化性樹脂組成物を加熱して得られる硬化物。
【請求項9】
請求項7に記載の硬化性樹脂組成物にエネルギー線を照射して得られる硬化物。

【公開番号】特開2011−63776(P2011−63776A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217987(P2009−217987)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】