説明

新規オリゴクローナル抗体の製造方法

冠動脈プラーク試料由来の、抗体またはその断片をコードするDNA配列、を含む原核性宿主細胞を用いる抗体またはその断片の製造方法を提供する。該抗体を含む組成物も提供する。該抗体に対するリガンドおよび該リガンドを含む組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規オリゴクローナル抗体の製造方法、該抗体自体およびその断片、およびそれらの使用、ならびにその抗原およびリガンドに関する。特に、本発明は、冠動脈プラークにみいだされる可能性がある抗原に対する抗体またはその断片を含む。さらに、本発明は、該抗体をコードするヌクレオチド配列、およびイムノアッセイに用いるための抗体またはその断片のアミノ酸配列、ならびに該抗体またはその断片のリガンドに関する。さらに、本発明は、該抗体またはその断片、またはそれらのリガンドの使用に関連する診断的および治療的適用を含む。
【背景技術】
【0002】
急性冠動脈症候群(略してACSともいう)は、冠動脈におけるプラーク破裂の症状である。アテローム性動脈硬化性プラークの破裂または浸食、次いで動脈の血栓および閉塞の形成は、心筋梗塞と不安定狭心症を引き起こすことがある(一般的参考文献として、「New insights into atherosclerotic plaque rupture」 D.M. Braganza and M.R. Bennett、Postgrad. Med. J. 2001;77;94-98参照)。
【0003】
アテローム性動脈硬化症の発生は、非狭窄性脂肪線条を形成する脂質含有単球由来泡沫細胞および関連T細胞の内皮下蓄積として始まる。進行するにつれ、病変は平滑筋細胞(VMSC)および炎症性細胞(マクロファージおよびTリンパ球の両方)を含む内皮化繊維状キャップにより結合したコレステロールエステルの無細胞コアの形をとる。進行した病変には新生血管も存在し、また進行した病変にはカルシウムヒドロキシアパタイトの沈着もみられることがある。(一般的参考文献として、「Coronary disease: Atherogenesis: current understanding of the causes of atheroma」、Peter L. Weissberg、Heart 2000;83;247-252参照)。
【0004】
該プラークの細胞外脂質コアは、動脈壁に浸潤した脂質由来、または死んだ泡沫細胞由来の遊離コレステロール、コレステロール結晶、およびコレステロールエステルからなる。該脂質コアは、該プラークの肩領域にストレスを生じることにより該プラークに影響を及ぼすことがあり、さらに該脂質コアはプロトロンビン酸化脂質を含み、さらに該脂質コアはマクロファージ由来の組織因子で充満し、脂質コア物質は循環血液に暴露すると血栓形成性が非常に高い(例えば、「Mechanism of Plaque Vulnerability and Rupture」 Prediman K. Shah、Journal of the American College of Cardiology 2003参照)。
【0005】
該プラークの安定性は、該プラークの内容物である血管平滑筋細胞(SMC)にも依存するが、それはSMCが構造的に重要なI型およびIII型コラーゲンを合成することができるからである。これに対して、マクロファージおよび他の炎症性細胞は、コラーゲンおよび細胞外マトリックスを分解し、該プラークを弱くする可能性があるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を放出することがある。(「New insights into atherosclerotic plaque rupture」 D.M. Braganza and M.R. Bennett、Postgrad. Med. J. 2001;77;94-98参照)。
【0006】
繊維状キャップの構造成分は、SMC由来のマトリックス成分、例えばコラーゲン、エラスチン、およびプロテオグリカンを含む。該繊維状キャップは、該プラークのより深部の成分が循環血と接触するのを防ぎ、破裂周辺部ではまばらになることが観察されている。(例えば、「Mechanism of Plaque Vulnerability and Rupture」 Prediman K. Shah、Journal of the American College of Cardiology 2003参照)。
【0007】
破裂したプラークは、完全なプラークに対して種々の組織学的特徴を有することが示されている。したがって、そのような特徴が存在すれば、プラーク破裂に対する脆弱化を示すと考えられる(例えば、「Mechanism of Plaque Vulnerability and Rupture」 Prediman K. Shah、Journal of the American College of Cardiology 2003参照)。
【0008】
プラーク形成に固有の考えられる原因の一つは、4つの「主要」危険因子:喫煙、高血圧、糖尿病、および高脂血症(高LDLレベルおよび低HDLレベル)に起因する内皮に対する反復される損傷により引き起こされると考えられる。さらに、損傷後の内皮の機能障害は、プラークの開始にきわめて重大な役割を果たすが、それは脂質が血流から内膜内により簡単に通過するかもしれないからである。
【0009】
脆弱なプラークの破裂は、自然に、すなわち如何なる上記きっかけも生じることなく、または特定の事象、例えば極端な身体的活動、重度の心的外傷および異なる性質のストレス、または急性感染症後に生じうる。
【0010】
プラークの破裂は、しばしば、ACSの臨床的発現を伴う血栓症を引き起こす。プラークの破裂に対する血栓の反応は、プラーク上の暴露された成分の血栓形成性によって制御されるようであり、一般的には、プラークの破裂は壊死したコア、およびそれを覆う炎症性細胞が顕著に浸潤した薄い繊維状キャップを有する病変に発現する。さらに、内腔の血栓は、血小板と壊死したコアの物理的接触により生じる(例えば、「Pathologic assessment of the vulnerable human coronary plaque」 F.D. Kolodgie et al. Heart 2004;90;1385-1391参照)。
【0011】
繊維状キャップの破裂または浸食は、高度に血栓形成性のコラーゲン様マトリックスおよび脂質コアを循環に暴露し、必然的に血小板の蓄積と活性化をもたらす。次いで、これはフィブリンの沈着と血栓形成をもたらし、血管閉塞に至るかもしれないが、後者は例えば無症候性の症状発現の場合は必ず生じるわけではない(例えば、「Coronary disease: Atherogenesis: current understanding of the causes of atheroma」 Peter L. Weissberg、Heart 2000;83;247-252参照)。
【0012】
最近まで、アテローム性動脈硬化症は、血流に対する機械的作用により症状が生じる変性性の徐々に進行する疾患であると考えられていたが、現在は、きわめて修正可能な活動的な炎症プロセスであると理解されている。アテローム性動脈硬化症の発現と進行の基礎にある細胞的および分子的事象に関する最近の研究は、該疾患の転帰を決定するプラーク成分間の動的相互作用に注目が集まっている(一般的参考文献として、「Coronary disease: Atherogenesis: current understanding of the causes of atheroma」 Peter L. Weissberg、Heart 2000;83;247-252参照)。
【0013】
冠動脈症候群と評価すべき種々の病原体の関係に関する対照的なデータがある。
前向きな研究(例えば、「Impact of viral and bacterial infectious burden on long term prognosis in patients with coronary artery disease」 Rupprecht H.J. et al.、Circulation 2001、Jul 3;104(1): 25-31参照)において、1018人の患者の群で卒中と8種の異なる病原体(Herpes simplex virus 1-2、Epstein-Barr、Cytomegalovirus、Haemophilus influenzae、Mycoplasma pneumoniae、Helicobacter pylori、およびChlamydia pneumoniae)との関係について記載され、6〜8種の病原体の血清陽性に関連するそれぞれ7%および12.6%の死亡率の増加がみられた。
【0014】
De Palmaと彼のグループ(「Patients with Acute Coronary Syndrome Show Oligoclonal T-Cell Recruitment Within Unstable Plaque」 De Palma et al. Circulation 2006,113: 640-646)は、急性冠動脈症候群の患者の血液試料から回収し、また冠動脈プラークからも直接回収したT細胞レパートリーに対する研究を行った。
抗体の構造
【0015】
以下の5種類の抗体(免疫グロブリンともいう)が存在する:IgG、IgA、IgD、IgM、およびIgE。図1に示すIgGの構造は、分子量約23KDaの2本の軽鎖と約53〜70KDaの2本の重鎖を含む。ジスルフィドにより互いに結合している4本の鎖は「Y」の形に結合している。
【0016】
重鎖は、γ、η、α、δ、およびεに分類され、それらにはサブクラスがあり、軽鎖はκまたはλに分類される。各重鎖は、定常領域と可変領域を含み、後者は長さ約100アミノ酸の免疫グロブリン分子のN末端に位置する。
【0017】
特に、免疫グロブリン(Ig)重鎖および軽鎖の最も可変的な部分は、V-D-J遺伝子断片間の接合により形成される短アミノ酸配列である第3の相補性決定領域(CDR3)である。CDR3は、抗原と相補性である抗原レセプター(例えば免疫グロブリンおよびT細胞レセプター)タンパク質の可変ドメイン中にある。
【0018】
CDR3部分の可変性は、産生された、あらゆる抗原に特異的な抗体の数の増加に起因し、該可変性は、成熟B細胞の発生中に骨髄で生じるV、D、およびJミニ遺伝子の再編成により決定される。
【0019】
この最初の再編成が起きた後で、成熟B細胞が抗原に出会うと、さらに超突然変異的事象が特定の抗原に対する抗体の親和性の増大に関与する。
【0020】
「系統樹(Lineage treesまたはdendrograms)」は、免疫グロブリン可変領域遺伝子の体超突然変異による多様性を示すためにしばしば引用されてきた。より詳細には、胚中心におけるB細胞突然変異体の系統関係を可視化するための系統樹の生成は、従来、体超突然変異および親和性成熟の場所としての胚中心の役割を確認するために用いられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明に含まれる目的の例
以下は、本発明の目的の具体例であり、本明細書の全体的開示からより明らかであろう。
【0022】
本発明の第1の目的は、該抗体の重鎖をコードし、奇数配列番号1〜51、65〜105、191〜209、253〜295、345〜349、371〜383、および395〜427に対応する単離されたポリヌクレオチド配列を含む。
【0023】
本発明の第2の目的は、該抗体の重鎖をコードし、偶数配列番号2〜52、66〜106、192〜210、254〜296、346〜350、372〜384、および396〜428に対応するアミノ酸配列で示される。
【0024】
本発明の第3の目的は、該抗体の軽鎖をコードし、奇数配列番号53〜63、107〜189、211〜251、297〜343、351〜369、385〜389、および429〜453に対応する単離されたポリヌクレオチド分子である。
本発明の第4の目的は、該抗体の軽鎖をコードし、偶数配列番号54〜64、108〜190、212〜252、298〜344、352〜370、386〜390、および430〜454に対応するアミノ酸配列で示される
【0025】
本発明の第5の目的は、偶数配列番号2〜390および396〜454に対応するアミノ酸配列およびそのホモローガスな配列をコードする、1またはそれ以上の単離されたポリヌクレオチド分子およびその相補配列を含む発現ベクターを含む。
【0026】
本発明のさらなる目的は、1またはそれ以上の本発明の単離された発現ベクターと適切な宿主細胞を含む発現系を含む。
【0027】
本発明のさらなる目的は、本発明の1またはそれ以上の発現ベクターを含む宿主細胞を提供することである。
【0028】
本発明のさらなる目的は、奇数配列番号1〜389、および395〜453を含む1またはそれ以上の単離されたポリヌクレオチド分子およびその相補性配列およびホモローガスな配列を含む本発明の発現系の使用を含む組み換え抗体またはその断片の製造方法を含む。
【0029】
本発明のさらなる目的は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞により産生された単離された組み換え抗体またはその断片を含む。
【0030】
本発明の別の目的は、偶数配列番号2〜390、および396〜454に対応する、1またはそれ以上のアミノ酸配列およびそのホモローガスな配列の使用を含むイムノアッセイである。
【0031】
本発明のさらなる態様では、本発明の抗体またはそのあらゆる断片、およびそれと結合した治療的部分を含む治療用組成物を提供する。
【0032】
本発明のさらなる態様では、診断的部分と結合した本発明の抗体またはその断片を含む診断用組成物を提供する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1の本発明の抗体、またはそのあらゆる断片と特異的に結合するリガンドである。
【0034】
本発明のさらなる目的は、本発明の抗体またはそのあらゆる断片と最も高い結合親和性を有する分子を同定するための分子のスクリーニング方法である。
【0035】
本発明のさらなる態様には、本発明に従って同定されたリガンドの使用を含むイムノアッセイがある。
【0036】
本発明のさらなる態様は、治療薬または診断的部分もしくはエンティティーと共有結合するかまたは機能的に結合した治療用または診断用組成物を開示する。
【0037】
本発明のさらなる態様は、冠動脈疾患、例えば急性冠動脈症候群、または免疫関連病状を治療するための医薬組成物を製造するための免疫抑制剤、免疫修飾物質、または抗感染薬の使用で示される。
【0038】
本発明のさらなる態様において、免疫関連病状の発現に関与する病因物質の同定方法を提供する。
【0039】
本発明のさらなる態様は、冠動脈プラークにみられる可能性がある推定リガンドのアミノ酸コンセンサス配列である。
【0040】
本発明のさらなる態様は、該コンセンサス配列を示す4つのペプチドを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】IgG抗体分子およびそのFab断片の構造の模式図である。
【図2】抗体を製造するための組み換えパターンを示す。
【図3】ヒト免疫グロブリン遺伝子座中の機能的遺伝子断片数を示す。
【図4】本発明に従った抗体またはその断片の製造方法の模式図である。
【図5】冠動脈プラーク試料の重鎖のVDJおよびVJ遺伝子の分析を示す。
【図6a】冠動脈プラーク試料と比較した末梢血試料の軽鎖の相同性パーセンテージを示すグラフである。
【図6b】冠動脈プラーク試料と比較した末梢血試料の重鎖の相同性パーセンテージを示すグラフである。
【図7】プラークからの重鎖の2つのクローン変異体のヌクレオチド配列アラインメントを示す(#8 e #24)。
【図8】プラークからの軽鎖の2つのクローン変異体のアミノ酸配列アラインメントを示す(#8 e #15)。
【図9】β-グロビン(内部コントロールとして)および標準β-グロビンL48931のアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図10】本発明に従って用いたプライマーの配列を示す。A:K軽鎖の可変領域の5’とアニーリングするプライマー;B:K軽鎖の定常領域の3’とアニーリングするプライマー;C:重鎖の可変領域の5’とアニーリングするプライマー;D:定常領域の3’とアニーリングするプライマー。
【図11】系統樹の模式図である。
【図12】軽鎖のクローン関連グループの突然変異系統樹である。
【図13】重鎖のクローン関連グループの突然変異系統樹である。
【図14】Hep-2細胞溶解物を用いるFab24に対するELISAの結果を示す。
【図15】合成リガンドを用いるFab24に対するELISAの結果を示す。
【0042】
(定義)
本発明では特記しない限り、用語「単離されたポリヌクレオチド」または「単離されたヌクレオチド」は、それぞれポリヌクレオチディックおよびヌクレオチディック、ならびにポリヌクレオチドおよびヌクレオチドが代替的に同じ意味で用いられ、通常、天然環境に存在するか、天然環境でそれと相互作用するあらゆる他の細胞物質または成分、例えば、他のヌクレオチディックもしくはポリヌクレオチディック配列、タンパク質、または他の細胞成分の断片、を実質的に含まないポリヌクレオチド分子を表す。
【0043】
特記しない限り、「相補性配列」は、ストリンジェント条件下で目的配列とハイブリダイズし、それぞれアデニン残基とチミジン残基の間に形成される2つの水素結合、またはシトシン残基とグアニジン残基の間に形成される3つの水素結合を生じる配列とハイブリダイズする配列、および縮重コドン置換もしくはサイレント置換、すなわち、遺伝子コードの縮重によりコードされた同じアミノ酸を生じる1または2または3連続ヌクレオチドの置換を有するその保存的類似体を表す。
【0044】
本発明の意味内にある単離されたポリヌクレオチドは、例えば、遺伝子もしくは遺伝子断片、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、プラスミド、ベクター、単離されたDNA、プローブ、およびプライマーを含む。
【0045】
特記しない限り、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、上記の特定のものに加えて、それらに相補的な配列も含む。
【0046】
「cDNA」は、アミノ酸配列を連続的にコードする、すなわち、その配列がイントロンを含まない、レトロ転写技術により単離されたmRNAから合成することができる、一本鎖および二本鎖の相補性DNA配列およびそれとホモローガスなあらゆる配列、ならびにそのあらゆる断片を表す。
【0047】
本発明の意味内で「ホモローガスな配列」は、目的配列と部分的にまたはほとんど同一なあらゆる配列を表し、したがって、2またはそれ以上の配列の「相同性」または「同一性」は、同じ位置を占めるヌクレオチド/アミノ酸配列を構成する総単位の内の同じ単位ヌクレオチドまたはアミノ酸の数を実際に測定して得られる。例えば、90%相同性は、2つの配列を最大に適合するよう一列に並べたときに、配列を構成する各100単位のうち90単位が同一であることを意味する。本発明の範囲内で、ホモローガスな配列は、少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%、およびさらにより好ましくは少なくとも99.5%の同一性を有する。
【0048】
アミノ酸の「保存的置換」は、ペプチドの全体を特徴付ける特性や機能に影響を与えないように、あるアミノ酸を同じ特性を持った別のアミノ酸で置換することを意図する。
【0049】
そのような保存的置換の例には、以下のように、あるアミノ酸を同じ群に属する別のアミノ酸で置換することが含まれる:
(i)グルタミンおよびアスパラギン酸、リジン、アルギニン、およびヒスチジンを含む荷電した基を含むアミノ酸;
(ii)リジン、アルギニン、およびヒスチジンを含む正に荷電した基を保持するアミノ酸;
(iii)グルタミンおよびアスパラギン酸を含む負に荷電した基を含むアミノ酸;
(iv)フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンを含む芳香族基を保持するアミノ酸;
(v)ヒスチジンおよびトリプトファンを含む窒素環基を保持するアミノ酸;
(vi)バリン、ロイシン、およびイソロイシンを含む大脂肪族非極性基を保持するアミノ酸;
(vii)メチオニンおよびシステインを含むわずかに極性の基を保持するアミノ酸;
(viii)セリン、トレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシン、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、およびプロリンを含む小残基を保持するアミノ酸;
(ix)バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、およびシステインを含む脂肪族基を保持するアミノ酸;
(x)セリンおよびトレオニンを含む小ヒドロキシル基を保持するアミノ酸。
【0050】
以下の開示において、短い配列である「CDR3」は、抗体をコードするV-D-J遺伝子(重鎖中)またはV-J遺伝子(軽鎖中)断片間の接合により形成される相補性決定領域を表す。
【0051】
「単一クローン」は、抗体/エピトープと特異的に結合することができる抗体のCDR3領域をコードする配列を表す。同じCDR3を示す配列は、同じクローンにより生じるとみなされる。
【0052】
「クローン変異体」は、同一のVDJまたはVJ遺伝子を使用し、同一のDおよびJ長を有する生殖細胞系に比べて同一の突然変異を有するV領域の存在下で1またはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸が異なるあらゆる配列を意図する。
【0053】
「置換突然変異」は、別のアミノ酸がコードされるようになるヌクレオチドの突然変異を意図する。
【0054】
「サイレント突然変異」は、DNAの縮重によりコードされるアミノ酸の変化を生じないヌクレオチド突然変異を意図する。
【0055】
「発現ベクター」は、遺伝子情報を伝達するのに用いるあらゆるヌクレオチド分子を意図する。
【0056】
「単離された発現系」は、アミノ酸分子の発現系を意図し、本発明の1またはそれ以上のアミノ酸分子をコードするヌクレオチド配列を含む1またはそれ以上の発現ベクター、および1またはそれ以上のベクターがトランスフェクトされる適切な宿主細胞を含む。
【0057】
本発明において「宿主細胞」は、例えばその表面に発現させることにより、対応するコードされたアミノ酸配列(単数または複数)またはあらゆるその断片を産生することができる、本発明の1またはそれ以上の発現ベクターを含む細胞を意図する。
【0058】
本発明において「抗体」および「抗体断片」は、IgG、IgA、IgD、IgM、またはIgEのいずれかのタイプの免疫グロブリンとも呼ばれる全抗体およびそのあらゆる断片、例えばタンパク質分解断片および/または組み換え断片、例えばFab断片(Igをパパインで消化して製造する)、F(ab’)(免疫グロブリンをペプシンで消化して製造する)、Fab’、Fv、一本鎖抗体(scFv)、および抗体の一本鎖、例えば重または軽一本鎖を含むことを意図する。
【0059】
本発明の範囲内の「リガンド」は、本発明の抗体の認識された機能領域またはそのあらゆる断片と結合するあらゆる物質を意図する。
【0060】
本発明によれば「オリゴヌクレオチド」は、50個以下のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列である。
【0061】
以下の説明において、特記しない限り、「生殖細胞系」配列は、抗体/免疫グロブリンをコードする配列または突然変異を除いたそのあらゆる断片を意図し、したがって、相同性のパーセンテージは、あらゆるタイプの重鎖部分が抗原と接触した後に受ける突然変異事象の目安を表し、より具体的には、該突然変異は、抗体/免疫グロブリンのCDR3部分またはそのあらゆる断片を含む。
【0062】
「R:S突然変異」比は、抗体/免疫グロブリンコーディング配列のFRまたはCDR3部分に生じる置換(R)およびサイレント(S)突然変異の割合を表す。
【0063】
CDR3は抗原の構造に適合するためより数多くの突然変異事象を受けるので、該割合はFR配列よりCDR3配列の方が高い。反対に、FRは一般的により保存的な配列である。
p-値
【0064】
「P-値」は、突然変異事象の有意性を表す。特に、再配列されたV断片の体細胞超変異およびより高親和性の突然変異体の抗原選択のプロセスは、抗原に対する結合特性が改善された抗体を産生するための親和性成熟を可能にする。このプロセスは、抗原の結合に直接関与するCDR領域の置換突然変異(R)の蓄積をもたらす。反対に、サイレント突然変異(S)は、抗体の構造を維持するための、通常、より保存的な配列であるFR領域に蓄積する。抗原選択がないと、ランダムな突然変異プロセスは、抗体の重鎖および軽鎖両方の配列中にRおよびS突然変異のランダムな分布をもたらす。しかしながら、選択プロセス中のCDR3のR:S突然変異比は、通常、FR配列より高い。したがって、突然変異の過剰(CDRについて)または欠乏(FRについて)が偶然に生じた多項分布モデルにより計算されるp-値は、抗原選択プロセスの確率に関連する。低p-値は、対応する生殖細胞系配列と比較した重鎖および軽鎖の変動性が、抗体の抗原由来親和性成熟による確率が高いことを示す。有意なp-値は5%以下であることを意図する。
【0065】
「系統樹」は、クローン関連細胞により発現された抗体遺伝子の分子分析によるB細胞分化経路における体細胞超突然変異を試験するのに有用なアプローチである。
【0066】
系統樹は、ノード(node)がB細胞レセプター遺伝子配列に対応する根のある(rooted)樹として図で定義される(図11)。2つのノードaおよびbについて、bに対応する配列が、少なくとも1の突然変異だけbと異なる、最初の生殖細胞系遺伝子にはないbよりさらに1つの突然変異があるaに対応する配列の突然変異体である場合に、bはaの子供であるという。同一のレセプターを有する2つのB細胞は同じノードに対応する。該樹中のノードは、根ノード、葉(終末点配列)、または内部ノードのいずれかであり得、分割ノード(分岐点)またはパススルーノードのいずれかであり得る。根は最初のB細胞を表すことを意図する。
【0067】
葉は、サンプリング時で生存していた、観察時に子孫を持たない突然変異体B細胞を表す。
【0068】
内部分割ノードは、成熟プロセス中に産生された2以上の子孫を有するB細胞を意図する。
【0069】
内部パススルーノードは、厳密に1つの子供を有するB細胞を表す。
【0070】
幹(trunk)は、根と最初の分割ノードとの距離を表す。
【0071】
その第1の態様において、本発明は、奇数配列番号1〜389、および395〜453に対応する配列およびそれと相補性およびホモローガスな配列のいずれかを含むポリヌクレオチド分子に関する。
【0072】
本発明のポリヌクレオチド配列は、冠動脈プラークに存在する可能性がある抗原またはそのあらゆる断片と結合する抗体またはそのあらゆる断片のアミノ酸配列をコードする。好ましくは、本発明の範囲内において、上記最初の態様の単離されたポリヌクレオチドはcDNA分子である。cDNAは、当該分野でよく知られた方法に従ってmRNA分子からレトロ転写により得られる。
【0073】
本発明の第1の目的によれば、偶数配列番号2〜390、および396〜454に対応するアミノ酸配列、およびそのホモローガスな配列、ならびに保存置換を有するあらゆる配列およびその断片も提供される。
【0074】
示したこれらの定義は、アミノ酸配列の場合は、少なくとも1またはそれ以上のアミノ酸が、誘導体、例えば対応するD異性体、もしくは例えば対応する硫酸化、グリコシル化、もしくはメチル化アミノ酸で置換されているか、または、1またはそれ以上および配列を構成する全アミノ酸の10%以下のアミノ酸がその誘導体で置換されうる(例えば、システインはホモシステインで置換されうる)配列を含むように類似配列を含むことを意図する。保存置換を有する配列も含まれる。
【0075】
本発明によれば、本発明の第1の態様の抗体もしくはそのあらゆる断片をコードする、ImMunoGeneTicsで利用可能なデータベース(ウェブサイトhttp://imgt.cines.frで利用可能)を用いると、生殖細胞系と比べて少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも97%の相同性を有する、ポリヌクレオチド配列も含まれる。
【0076】
さらに、本発明の第1の目的には、超突然変異したアミノ酸配列も含まれる。
【0077】
したがって、CDR3部分のρ値が以下5%、好ましくは以下2%、より好ましくは以下1%、さらにより好ましくは以下1‰(パーミル)のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列、およびそのコードされたアミノ酸配列も含まれる。
【0078】
先に記載したように、本発明には、患者の活動性冠動脈プラークの適切な試料から単離したmRNAから行われるcDNA分子の合成が含まれる。
【0079】
本発明の目的において、活動性冠動脈プラークの該適切な試料には、梗塞が起こった直後に得られた冠動脈プラーク試料、すなわち、いわゆる「新鮮試料」を含むか、または、試料を得、その組織学的特性を弱めたり変化させたりしないように適切な期間、液体窒素下で保存し、さらに分析することができよう。
【0080】
本発明の目的において、入院から48時間以内に典型的な胸痛を経験するか、ECGの変化が心筋損傷を示唆する急性冠動脈症候群(ACS)の患者を選択した。考えられる紛らわしい要因を排除するため、最近の感染性疾患、免疫性疾患、免疫抑制療法、または腫瘍性疾患を有する患者を除外した。
【0081】
上記適切な試料、すなわち、冠動脈プラークおよび末梢血の両方からのmRNA分子の単離は、よく知られた方法に従って行う。一般的参考文献については、例えば、Molecular cloning. Sambrook and Russell. Cold Spring Harbor Laboratory Press Cold Spring Harbor、New York. 第3版、2001参照のこと。
【0082】
第2の態様では、本発明の発現ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、YAC、ウイルス粒子、またはファージを含む群から選ばれ、1またはそれ以上の、本発明の第1の態様のポリヌクレオチド配列を含み、好ましい局面では、該発現ベクターは、1またはそれ以上の、本発明の第1の態様のポリヌクレオチド配列を含むプラスミドである。
【0083】
本発明の最も好ましい態様において、該発現ベクター、すなわちプラスミドは、奇数配列番号1〜389および395〜453を含む群から選ばれる、1またはそれ以上の、本発明のポリヌクレオチド配列を含む。
【0084】
通常、発現ベクターは、作動可能に連結された、すなわち、細胞内に導入されると核酸配列を発現させるように連結された複製起点、コーディング配列の上流に位置するプロモーター、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写配列も含む。当業者は、適切な発現ベクター、例えば、宿主生物によって認識されるプロモーターを選択することにより、選択した宿主細胞に対するあらゆる適切な発現ベクターを構築することができる。
【0085】
より好ましい態様において、本発明の発現ベクターは、Burioni et al. (Human Antibodies 2001;10 (3-4): 149-54)に記載のベクターに代表される。本発明の第3の態様によれば、単離された発現系は、本発明のポリヌクレオチド配列のいずれかの1またはそれ以上を含む単一の発現ベクターを含むかもしれない。
【0086】
あるいはまた、上記発現系は、それぞれ、本発明のポリヌクレオチド分子のいずれかの1またはそれ以上を含む、2またはそれ以上の発現ベクターを含みうる。
【0087】
例えば、発現ベクターは、抗体の軽鎖またはその断片をコードする本発明のポリヌクレオチド分子を含むことがあり、第2発現ベクターは、抗体の重鎖またはその断片をコードする本発明のポリヌクレオチド分子を含むことがある。
【0088】
本発明の態様において、該発現系は、偶数配列番号2〜390および396〜454に対応するアミノ酸配列およびあらゆるそれとホモローガスな配列をコードする、奇数配列番号1〜389および395〜453を含む、ポリヌクレオチド分子の1またはそれ以上を含む単一の発現ベクターを含む。
【0089】
本発明の好ましい態様において、該発現系は、奇数配列番号53〜63、107〜189、211〜251、297〜343、351〜369、385〜389、および429〜453に対応する配列から選ばれる、軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列、および奇数配列番号1〜51、65〜105、191〜209、253〜295、345〜349、371〜383、および395〜427に対応する配列から選ばれる、重鎖をコードする第2ポリヌクレオチド配列を含む1つの発現ベクターを含む。
【0090】
本発明の最も好ましい態様において、該発現系は、配列番号53に記載の軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクター、およびそれぞれ配列番号21、37、43、および51で示される重鎖をコードするポリヌクレオチド配列のいずれかを含む第2ベクターを含む。
【0091】
本発明の発現系内に含まれる発現ベクターの製造法には、一般的には、当該分野でよく知られた方法に従って、1またはそれ以上のシグナル配列、複製起点、1またはそれ以上のマーカー遺伝子または配列、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終止配列を含む、適切な核酸分子(単数または複数)の、1またはそれ以上のベクター(単数または複数)内への挿入が含まれる。該方法の一般的参考文献については、例えば、Phage display、Cold Spring Harbor Laboratory Press. Cold Spring Harbor、New Yorkを参照のこと。例えば、本発明の重鎖をコードする配列を、容易に検出できるようにFlagまたは6ヒスチジンテールを含む発現ベクター内に挿入する。
【0092】
本発明の第四の態様の宿主細胞は、例えば原核細胞または真核細胞でありうる。
【0093】
適切な原核細胞には、グラム陰性菌およびグラム陽性菌が含まれ、例えば、Enterobacteriaceae、例えば、Escherichia、例えば、E. coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratiam、例えば、Serratia marcescans、およびShigella、例えば、Bacilli、例えば、B. subtilisおよびB. licheniformis、Pseudomonas、例えば、P. aeruginosa、ならびにStreptomycesが含まれうる。例えば、用いることができる公に利用可能な菌株には、例えば、E. coli K12 MM294 (ATCC 31,446);E. coli X1776 (ATCC 31,537);E. coli W3110 (ATCC 27,325)、およびK5 772 (ATCC 53,635)、またはE. coli XL1-Blueがあり、これらが好ましいE. coli株である。
【0094】
原核細胞に加えて、真核性微生物、例えば、糸状菌または酵母が適切な宿主細胞である。一般的パン酵母としても知られているSaccharomyces cerevisiaeが通常用いられ、他の酵母には、例えば、Saccharomyces、Pichia pastoris、またはKluyveromyces、例えば、K. lactis、K. fragilis、K. bulgaricus、K. wickeramii、K. waltii、K. drosophilarum、K. thermotolerans、およびK. marxianus、Schizosaccharomyces、例えば、Schizosaccharomyces pombe、yarrowia、Hansenula、Trichoderma reesia、Neurospora crassa、Schwanniomyces、例えば、Schwanniomyces occidentalis、Neurospora、Penicillium、Tolypociadium、Aspergillus、例えば、A. nidulans、Candida、Torulopsis、およびRhodotorulaが挙げられる。
【0095】
さらに、発現系の製造に用いられる適切な真核細胞は、多細胞生物、例えば、無脊椎動物もしくは植物細胞由来であってもよい。植物細胞には、例えば、Agrobacterium tumefaciens、およびNicotiana tabacumが含まれる。さらに、昆虫細胞を用いることができ、これには、例えば、Drosophila S2およびSpodoptera Sf9が含まれる。反対に、哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)およびCOS細胞が含まれる。より具体的な例には、さらにSV40で形質転換したサル腎臓CVI系(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓系、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR、マウスセルトリ細胞、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);およびマウス乳癌細胞(MMT 060562、ATCC CCL51)が含まれる。
【0096】
適切な宿主細胞の選択は、当業者の知識の範囲内であると考えられる。すなわち、抗体断片、例えばFabを製造するには原核細胞を用いることができ、全抗体、例えばIgGを製造するには酵母のような真核細胞を用いることができる。上記発現系を含む上記宿主細胞を製造するための細胞のトランスフェクション法および形質転換法は、用いる宿主細胞に依存し、当業者に知られている。例えばカルシウムによる処置またはエレクトロポレーションは一般的に原核生物に用いられるがAgrobacterium tumefaciensによる感染はある種の植物細胞の形質転換に用いられる。哺乳動物細胞には、リン酸カルシウム沈殿法をGraham and van der編、Virology、52:456-457 (1978)に従って用いることができる。しかしながら、ポリヌクレオチド配列を細胞内に導入するための他の方法、例えば核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、完全細胞と細菌の融合、またはポリカチオンを用いることもできよう。
【0097】
さらに、宿主細胞は、ヒト化抗体もしくはその断片を製造するのに有用なトランスジェニック非ヒト動物を製造するために動物内に移植することもできよう。好ましい非ヒト動物には、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターが含まれる。本発明の第5の態様において、組み換え抗体およびその断片の製造は、当該分野で知られた方法に従って行われ、本発明の単離されたポリヌクレオチド配列の使用が含まれる。
【0098】
特に、該方法には、以下の工程が含まれる:
a)冠動脈プラークの適切な試料からmRNAを単離し、
b)逆転写を行って、対応するcDNAを得、
c)工程b)から得られた1またはそれ以上のcDNA分子(単数または複数)および上記適切な宿主細胞のいずれかを含む発現系を製造し、
d)適切な増殖条件下で宿主細胞を培養し、
e)産生された抗体またはそのあらゆる断片を回収し、
f)該抗体またはそのあらゆる断片を精製する。
【0099】
特に、工程a)〜f)は、以下の実施例から明らかなように、当該分野で知られた方法に従って実施される。
【0100】
統計的に生じる突然変異または冠動脈プラークのB細胞の成熟に関与するものと異なる他のメカニズムによって得られる結果に対する影響を評価するために、保存領域を有する遺伝子の小部分を用いて、クローニングおよびシーケンシングも行う。したがって、内部基準としてβ-グロビン遺伝子を選択し、特に標準β-グロビンL48931を用いる。
【0101】
したがって、本発明のさらなる目的において、本発明の宿主細胞および上記方法にしたがって製造された単離された組み換え抗体およびその断片には、IgG型の免疫グロブリン(略してIgという)を含むが、「その断片」は好ましくはIgGのFab断片を含む。
【0102】
好ましくは、本発明のIgGの単離された組み換え抗体断片は、配列番号54に記載のアミノ酸配列、または、配列番号22、44、52、および38に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む。
【0103】
本発明によれば、ImMunoGeneTics (ウェブサイトhttp://imgt.cines.frから利用可能)で利用可能なデータベースを用いると、生殖細胞系に比べて、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、およびさらにより好ましくは少なくとも97%の相同性を有する、上記方法に従って製造することができる抗体またはそのあらゆる断片をコードするアミノ酸配列も含む。さらに、CDR3部分のρ値が以下5%、好ましくは以下2%、より好ましくは以下1%、さらにより好ましくは以下1‰であるアミノ酸配列も含む。本発明の別の目的によれば、本発明に従って製造される抗体またはそのあらゆる断片の使用を含むイムノアッセイを提供する。
【0104】
イムノアッセイは、抗原/抗体複合体の形成に基づく試験であり、競合的または非競合的でありうる。
【0105】
競合的イムノアッセイは、抗体との結合について別の標識抗体と競合する特定の抗原を含む未知の試料を試験することを含み、すなわち、反応は未知の試料中の抗原濃度と反比例する。
【0106】
反対に、非競合イムノアッセイ(「サンドイッチアッセイ」とも呼ばれる)は、抗原が結合する固定化抗体を使用し、標識抗体が標的とする複合体を形成することを含み、したがって、該方法の結果は、抗原濃度に正比例する。
【0107】
広範に用いられるイムノアッセイには、実験室で常套的に用いられる、例えば、RIA (ラジオイムノアッセイ)、ウエスタンブロット、ELISA (酵素免疫測定法)、免疫染色法、免疫沈降法、免疫電気泳動法、免疫蛍光法、発光イムノアッセイ(LIA)、免疫組織化学が含まれる。
【0108】
本発明の好ましいイムノアッセイは、ELISA試験である。ELISAは、試料中の生物分子、例えば抗体もしくはその断片、抗原、タンパク質、ホルモン、および他の有機分子の検出とさらなる定量を可能にするよく確立された生化学的技術であり、好ましくは、本発明において上記ELISA試験は特定抗原の検出に用いられる。
【0109】
詳細には、ELISA試験は2つの抗体の使用を含むことがあり、その1つの第1抗体は目的とする分子、すなわち、抗原に対して選択的であり、ELISAプレート上に固定化される。目的分子を含む可能性がある混合物を加え、適切で十分な時間インキュベーションし、次いで最初の洗浄を行って結合していない物質を除去する。目的分子と第1抗体の間に第1抗体の間に形成された複合体に特異的な、酵素と結合した第2抗体をさらに加える。次いで、ELISAプレートを洗浄し、発色基質を加える第2工程を行う。生じる色の変化を分光光度法で評価するが、該変化は、比色分析の標準曲線により、形成された複合体の量、すなわち、試料中に存在する目的分子の濃度と直接関連する。
【0110】
本発明の上記イムノアッセイにより試験する試料は、例えば、梗塞が起こった直後の患者から得た不安定冠動脈プラークの試料、すなわち、いわゆる先に記載の「新鮮」試料、または得た後に液体窒素に保存している試料であり、また、全血または血清の試料からなりうる。
【0111】
本発明のイムノアッセイ試験は、急性冠動脈症候群(ACS)または他の冠動脈疾患のリスクがあるか、またはそれらが発現していない集団をスクリーニングするためのプログラムに含めると、有効な診断手段である。
【0112】
本発明のさらなる態様に関して、本発明の抗体またはそのあらゆる断片およびそれと共有結合する治療的部分を含む治療用組成物を開示する。該治療用組成物は、冠動脈プラーク部位に治療薬を選択的に標的化することができる。
【0113】
該標的化組成物のよく知られた利点には、とりわけ、投与する活性本質の量を減らす可能性、すなわち、考えられるその副作用を減らす可能性が含まれる。
【0114】
該目的ために、治療的部分には、非限定的例として、放射性核種、薬剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、レセプターアンタゴニスト、酵素、または他の物質により活性化されるプロ酵素、オートクリンもしくはサイトカイン、抗菌剤が含まれることがあり、毒素を用いることもできる。
【0115】
薬剤およびプロドラッグも含まれる。
【0116】
本発明のさらなる態様は、冠動脈プラーク部位を可視化するための診断的部分と結合した本発明の抗体またはそのあらゆる断片を含む診断用組成物に関する。本発明の診断用組成物には、冠動脈プラーク部位を選択的に標的化し、その局在を可能にする少なくとも1の診断的部分と共有結合した本発明にしたがって製造された抗体もしくはそのあらゆる断片を含む。
【0117】
したがって、冠動脈プラークが発現した部位を正しく特定し、ベイズ(vase)に対する生じた病変の程度をさらによく理解することができるだろう。さらに、これは外科手術によりプラークを除去する前の非常に有用な手段である。
【0118】
診断的部分は、医薬の分薬で用いる可視化技術、例えば、MRI(磁気共鳴画像法)、CT (コンピュータ断層撮影法)、超音波、エコグラフィー、x線、および当業者の知識の範囲内にある他の診断技術により検出を可能にする。
【0119】
診断的部分の種類は、用いる診断技術に応じて選択されるだろう。
【0120】
本発明のさらなる目的では、リガンド、すなわち、抗体またはそのあらゆる断片と選択的に結合する部分を提供する。
【0121】
本発明のリガンド(単数または複数)は、あらゆる表面もしくは内部配列または構造ドメインまたは標的抗体またはその断片のあらゆる他の部分と結合する物質であってもよい。したがって、本発明の「リガンド」は、目的の標的と結合する能力を超える(beyond)見掛けの生物学的作用を持たないかもしれない物質を含む。
【0122】
したがって、上記定義の範囲には、限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、多糖、糖タンパク質、ホルモン、レセプター、細胞表面抗原、抗体またはその断片、例えば、Fab断片、F(ab’)2、Fab’、Fvおよび、一本鎖抗体(scFv)、または抗イデオタイプ抗体、毒素、ウイルス、基質、代謝物、遷移状態類似体、補酵素、阻害剤、薬剤、染料、栄養素、成長因子なども含まれる。好ましい態様において、本発明のリガンドは、上記のオリゴペプチドであり、好ましくは4〜12アミノ酸を含むペプチド、より好ましくは4〜10アミノ酸を含むペプチド、さらにより好ましくは6〜8アミノ酸を含むペプチドである。
【0123】
リガンドの同定は、化合物ライブラリーに対するスクリーニング試験により行うことができよう。特に、本発明によれば、該同定には本発明により提供される抗体またはそのあらゆる断片の使用が含まれる。
【0124】
したがって、本明細書の開示する抗体またはそのあらゆる断片に対するリガンドの同定方法は、本発明のさらなる目的である。
【0125】
例えば、該方法は、該抗体またはその断片を固相上に、例えばストレプトアビジン-ビオチン結合により結合させ、次いでそのように調製した固相を被験分子と接触させ、次いでそれらを相補性抗体と結合させ、次いで洗浄して非結合物質を除去し、最後に結合の程度を種々の方法、例えばELISA試験により測定することができる。
【0126】
好ましくは、該ELISA試験は、本発明のものから選択した第1抗体またはその断片を、例えばビオチン/ストレプトアビジン結合により固相と結合させ、次いで、被験分子を含む混合物を加え、適切な時間インキュベーションし、次いで洗浄して非結合物質を除去する。次に、第2抗体を混合し、再度インキュベーションする。本発明の抗体またはそのあらゆる断片に最も高い親和性を示す分子を、単離、同定し、よく知られた方法、例えば比色測定法により定量する。
【0127】
あるいはまた、本発明のさらなる態様において、本発明に従って同定したリガンド使用を含むイムノアッセイを提供する。
【0128】
該イムノアッセイは、本発明の第2の目的についてすでに上記したイムノアッセイのいずれかでありうる。
【0129】
例えば、本発明の酵素免疫試験は、実施例10に詳述した免疫組織学的アッセイでありうる。上記免疫組織学的アッセイは、上記態様にしたがって本発明において同定および開示されたリガンドのプラークの内側の存在を観察するために行うことができる。
【0130】
本発明のさらなる態様において、本発明の上記方法により同定された、治療的部分と共有結合したリガンドを含む治療用組成物を開示する。該目的のための治療的部分はすでに上記したもののいずれかでありうる。
【0131】
特に、そのように提供される治療用組成物は、治療薬を冠動脈プラーク部位に選択的に標的化することができよう。
【0132】
本発明の上記方法により同定された、診断的部分と共有結合したリガンドを含む診断用組成物も開示する。
【0133】
該目的のための診断的部分は、すでに上記したもののいずれかでありうる。
【0134】
本発明のさらなる態様において、冠動脈疾患、例えば、急性冠動脈症候群(ACS)または免疫関連病状を治療するための医薬組成物を製造するための免疫抑制化合物の使用をクレームする。
【0135】
免疫関連病状には、免疫反応を引き起こし、制御する生理学的メカニズムを変化させる病状が含まれる。
【0136】
免疫抑制化合物には、限定されるものではないが、グルココルチコイド、アルキル化剤、抗代謝物、メトトレキセート、アザチオプリンおよびメルカプトプリン、細胞毒性抗生物質、例えば、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミソラマイシン、シクロスポリン、インターフェロン、オピオイド、TNF結合タンパク質、マイコフェノレート、小生物因子を含む群から選ぶことができ、さらにモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が含まれる。
【0137】
さらなる態様において、本発明は、免疫系の局所抗原特異的な抗原性刺激の同定法、証明法、および特徴付け法を提供し、病因の同定、標的の定義付け、免疫療法および免疫学的予防法の設計に用いることができる有用な詳細を提供する。特に、該方法は、冠動脈疾患の発現に関与する可能性がある病因因子に対する本発明の抗体またはそのあらゆる断片の親和性を試験する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0138】
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を示すが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0139】
試料の収集
1a)アテローム性動脈硬化性冠動脈(アテローム性)プラークのサンプリング
冠動脈アテローム切除術を受けた急性冠動脈症候群の患者のアテローム性プラークから十分な量の組織を得、液体窒素中に保存する。
1b)末梢血のサンプリング
【0140】
実施例1aの組織を得る同じ患者から同時に末梢血5mLを採取し、EDTA処理したチューブに保存する。
【実施例2】
【0141】
mRNA抽出
2a)冠動脈プラークからのmRNA抽出
実施例1aで得たプラークをホモゲナイズし、総mRNAを、市販のmRNA抽出キット(Rneasyキット、Qiagen、Germany)を使用説明書に従って用いる常套的方法に従って抽出する。
2b)末梢血液試料からのmRNA抽出
【0142】
実施例1bに従って回収した末梢血5mLを、37℃の等量のPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で希釈し、15mlのHistopaque-1077 (Sigma-Aldrich、St Louis、Missouri)上に重層し、室温で300gにて30分間遠心する。界面のリンパ球をパスツールピペットを用いて回収し、15mlのPBSで希釈し、さらに300gで遠心する。得られたペレットを15mlのPBSに再浮遊し、小部分標本をとり、血球計算板(Burker)を用いて細胞を数えた。最後に、細胞浮遊液を300gで遠心し、上記手順に従って得られたペレットについてmRNA抽出を行う。
【実施例3】
【0143】
mRNAのレトロ転写
3a)冠動脈プラーク試料からのmRNAのレトロ転写
実施例2aから得られた冠動脈プラーク試料からのmRNAの逆転写は、市販のmRNAのレトロ転写キット、Superscript III RT (Sigma-Aldrich、St Louis、Missouri)を使用説明書に従って使用して行う。cDNA合成は、オリゴ(dT)でプライムした総mRNAから標準的手順に従って行う。
3b)末梢血試料からのmRNAのレトロ転写
【0144】
実施例3aと同じ手順を実施例2bに従って得られたmRNAについて行う。
【実施例4】
【0145】
cDNA配列の増幅
4a)冠動脈プラーク試料からのcDNA配列の増幅
実施例3aから得たcDNA 1μlをポリメラーゼ連鎖反応にかける。それぞれ重鎖および軽鎖の定常領域をコードする配列の断片をアニールするためにリバースプライマーを設計する(それぞれ軽鎖および重鎖について図10BおよびD)。フォワードプライマーは、「ファミリー特異的」であり、第1フレームワーク領域の重鎖および軽鎖遺伝子の5’末端に対応するよう設計される(それぞれ軽鎖および重鎖について図10AおよびC)。参考文献として、Phage display、Cold Spring Harbor Laboratory Press. Cold Spring Harbor、New York. 第3版、2001を参照のこと。重鎖にはIgG1およびIgG2アイソタイプに特異的なプライマーを用いるが、軽鎖にはKアイソタイプに特異的なプライマーを用いる。1回の増幅は、以下の温度プロフィールで行う:94℃15秒間、52℃1分間、および72℃90秒間。反応は35サイクル行う。陰性コントロール(DNAなしの同じ混合物)および陽性コントロール(既知配列を挿入する)を各反応に含める。PCR生成物をエチジウムブロミドを含む2%アガロースゲルを用いる電気泳動により分析する。反応は、軽鎖に対応する≒650bpのバンドおよび重鎖に対応する700bpのバンドをもたらす。アンプリコン、すなわち、PRCプロセスの生成物を、市販のDNA抽出キット(QIAquickゲル抽出キット;Qiagen、Germany)を使用説明書に従って用いてゲルから抽出する。最後に、PCR産物を標準的方法により回収する。
4b)末梢血試料からのcDNA配列の増幅
【0146】
末梢血試料からのcDNA配列(実施例3bから得たcDNA)の増幅は、実施例4aと同じ手順を用いて行う。
【実施例5】
【0147】
シーケンシング
先の実施例に従って得られた配列を定量および定性分析のためにシーケンシングする。
5.1)重鎖および軽鎖試料のプロセシング
【0148】
それぞれ実施例4aおよび4bに従って得られる冠動脈プラーク試料と末梢血試料から得られる重鎖および軽鎖のクローンの試料を得、Big Dye化学によりシーケンシングし、ABI PRISM 3100シーケンサーにより分析する。
【0149】
得られる配列を、個々に、ImMunoGeneTicsで利用可能なデータベース(ウェブサイトhttp://imgt.cines.frから利用可能)を用いて生殖細胞系断片と一列に並べ、それぞれ重鎖および軽鎖についてV、D、J、およびV遺伝子、ならびにJ遺伝子の反復(recurrence)、生殖細胞系との相同性レベル、および体細胞突然変異の程度を確認する。CDR3配列の同一性を用いてクローンを同定する。上記のように同じCDR3を有する配列は、同じクローンに由来するとみなす。
【0150】
重鎖について上記実施例4aに従って得られた冠動脈プラーク試料由来ポリヌクレオチド配列は、奇数配列番号1〜51、65〜105、191〜209、253〜295、345〜349、371〜383、および395〜427に対応し、偶数配列番号2〜52、66〜106、192〜210、254〜296、346〜350、372〜384、および396〜428に対応するアミノ酸配列をコードする。
【0151】
軽鎖について上記実施例4aに従って得られた冠動脈プラーク試料由来ポリヌクレオチド配列は、奇数配列番号53〜63、107〜189、211〜251、297〜343、351〜369、385〜389、および429〜453に対応し、偶数配列番号54〜64、108〜190、212〜252、298〜344、352〜370、386〜390、および430〜454に対応するアミノ酸配列をコードする。
5.2)Β−グロビン配列:内部基準
【0152】
5クローンの分析は、得られるβグロビン配列がデータベースに示す配列と同一であることを示し(標準β-グロビンL48931とのアラインメントの一つを報告する図9参照)、突然変異事象がプロセスの変動性によるものではないことを示す。
5.3)冠動脈プラーク試料由来の軽鎖
【0153】
実施例4aに従って冠動脈プラーク試料から得られるクローンのシーケンシングの結果を以下の表Iに示す。各クローンV、D、およびJ遺伝子欄は、それぞれ、重鎖のV、D、およびJ可変部分をコードすることが解った配列の種類を示す。相同性パーセンテージは、冠動脈プラーク試料からクローンした配列の一つ一つと上記の対応する生殖細胞系配列の配列間の相同性のパーセンテージを表す。
表I
【表1】

5.4)冠動脈プラーク試料由来の重鎖
【0154】
軽鎖の配列の分析に採用した同じ手順を実施例4aに従って得られる重鎖の配列について繰り返す。結果を以下の表IIに示す。
表II
【表2】

5.5)末梢血試料由来の軽鎖
【0155】
上記の軽鎖の分析に適用したのと同じ手順を実施例4bに従って得られる末梢血試料から得られる軽鎖の配列について繰り返す。結果を以下の表IIIに示す。
表III
【表3】

5.6)末梢血試料由来の重鎖
【0156】
同じ手順を末梢血試料由来の重鎖の配列について繰り返し、結果を表IVに示す。
表IV
【表4】

【0157】
したがって、該プラークから増幅した配列のクローン11、9、13、および20が生殖細胞系配列からの最も高い相違を示すので、それらを、軽鎖8と一緒に発現させるために選択する。
5.7)結果
【0158】
上記データは、冠動脈プラーク試料由来の重鎖および軽鎖がいずれもオリゴクローナルなパターンおよび特徴的なVDJおよびVJ遺伝子パターンを持つことを示す。
【0159】
さらに、CDR3部分の体細胞超突然変異は、末梢血試料に比べて冠動脈プラーク試料の重鎖および軽鎖でより頻繁であり、さらに、冠動脈プラーク試料由来の軽鎖および重鎖の配列により多数の突然変異事象が生じた。
5.8)突然変異系統樹
【0160】
系統樹は、免疫グロブリンのクローン関連グループ内の免疫グロブリン可変領域(IGV)の体細胞超突然変異による多様性を示すために、先の実施例によって得られる配列について描かれた。
5.8.1)系統樹の生成
【0161】
生殖細胞系遺伝子を実施例5に従って同定する。樹の分岐を、樹の根に生殖細胞系配列を用いてMega3ソフトウエア(http://www.megasoftware.net/)に組み入れた進化のnjアルゴリズムおよびpモデルを用いることにより確認する。手動で訂正し、配列の目視検査によりトポロジーを最適化する。
5.8.2)結果
【0162】
結果を図12および図13に示す。
【実施例6】
【0163】
冠動脈プラーク試料由来の配列を用いる発現系の作製と宿主細胞の形質転換
次に、クローンまたは軽鎖および重鎖をトランスフェクションのために選択する。特に冠動脈プラーク試料の軽鎖のクローン8(配列番号53に対応する)および重鎖のクローン11、9、13、および20(各配列番号21、43、51、および37に対応する)を、以下の手順に従って可溶性Fab断片を製造するために発現ベクター内にトランスフェクトするために選択する。
【0164】
上記実施例6に従って選ばれる軽鎖をコードする、配列番号53に対応する遺伝子を、Burioni et al. Hum. Antibodies. 2001;10(3-4):149-54に記載の手順に従って、発現ベクターpRB/expr内に導入する。
配列番号53
GAGCTCACGCAGTCTCCAGCCACCGTGTCTGTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTATTAGTTTCCACTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGTCTCCTCATCTACGGAACATCCACCAGGGCCACTGGTATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGAGTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGTCTGAAGATTCTGCGGTTTATTACTGTCAGCAGTATCATAACTGGCCTCCCCTCACTTTCGGCGGAGGGACC
【0165】
選択した軽鎖をコードする遺伝子(実施例5から選ばれるクローン8)を含む発現ベクターに、Burioni et al. Hum Antibodies. 2001;10(3-4):149-54に記載の手順に従って、クローン11に対応する重鎖をコードする遺伝子(配列番号21に対応する)を導入する。
配列番号21
CTCGAGTCTGGGGGAGGCTTGGGACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTTACCTTTAGCAGCTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCAGCTATTAGTGATAGGGGGGAGAGCACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGGGACAATTCTAAGAACACGCTGTATGTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCCTATATTTCTGCGCGAAAGATCAATTTCTATGGTTCGGGGAGTCAACAGCGGGTGATGCTTTTGATATCTGGGGCCAAGGGACA
【0166】
該発現ベクターをE.coli XL-1 Blue内に導入し、可溶性Fabを発現させる。
【0167】
詳細には、アンピシリン(100 ng/ml、Sigma-Aldrich、St Louis、Missouri)およびテトラサイクリン(10 ng/ml、Sigma-Aldrich、St Louis、Missouri)を含む10mlのSB (Super Broth、Becton、Dickinson、New Jersey)に、新鮮プレート由来の単一細菌コロニーを接種し、オービタルシェーカー中、37℃で一夜インキュベーションした。次に、この培養液2.5mlを5Lフラスコ中の1LのSB/amp-tet(SB、アンピシリン、およびテトラサイクリンの上記混合物)に接種し、光学密度(OD600)が約1.0になるまで増殖させる。次に、IPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド;Biorad、California)を最終濃度が1mMになるまで加え、細菌培養液をオービタルシェーカー中、30℃で一夜インキュベーションする。次に、細菌を4℃で3000rpm、20分間遠心し、ペレットを10ml PBSに再浮遊させる。次に、50μl PMSF (100mMのストック溶液から)を加えてプロテアーゼを阻害し、細菌を氷中、1回3分間で3回超音波処理する。細菌培養液を4℃で18000rpm、45分間遠心し、次いで、上清を0.22μm(直径)膜(Millipore(登録商標))で注意深く濾過する。その間、カラムを10容量のPBSで洗浄し、次に、濾過した上清をカラムに徐々に加える。少なくとも30容量のPBSで洗浄した後、Fabを100mM グリシン/HCl pH2.5で溶出する。10分画を回収し(それぞれ約1ml)、Tris 1M pH9で速やかに中和する。
【0168】
精製したFabを非還元条件下SDS-PAGEゲルで試験すると、約50kDaの単一バンドを示す。
【0169】
Fabを、BSAの少なくとも2の異なる標準濃度の相対バンドと比較して定量する。
【実施例7】
【0170】
アテローム性プラーク試料由来の配列を含む発現系の調製および宿主細胞の形質転換
実施例6に記載の同じ手順を、実施例5に従って選択したクローン8の軽鎖をコードする遺伝子を含む発現ベクター内に、クローン9の重鎖をコードする配列(配列番号43に対応する)を導入することにより繰り返す。
配列番号43
CTCGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTCAAGCCTGGAGGGTCCCTGAGGCTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTGACTACTACATGAGTTGGATCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAATTTATATCATACATTAGTAGTGGTGGTGACACCATACACCACGCAGACTCTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGGGACAACGCCAAGAAGTCACTGTATCTCCAAATGAACAGCCTGAGAGTCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGTGCCGTGGGGTCTGGGGCCAGGGAACC
【実施例8】
【0171】
アテローム性プラーク試料由来の配列を含む発現系の調製および宿主細胞の形質転換
実施例6に記載の手順を、実施例5に従って選択したクローン8の軽鎖をコードする遺伝子を含む発現ベクター内に、クローン13の重鎖をコードする配列(配列番号51に対応する)を導入することにより繰り返す。
配列番号51
CTCGAGTCGGGCCCAGGACTGGTGAAGCCTTCACAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCTCCATCAGCAGTGGTTACTACTGGACCTGGATCCGCCAGTACCCAGGGAGGGGCCTGGAGTGGATTGGATACATCTCTTACAGGGGGAGCACCTACTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGAGTTACAATATCACTAGACACGTCTAAGAACCAGTTTTTCTTGAACCTGACCTCTGTGACTGCCGCGGACACGGCCGTGTATTTCTGTGCGAGAGATCGGAGTAGAGCAACATCTGGTATTCTTGACTACTGGGGCCAGGGAACC
【実施例9】
【0172】
アテローム性プラーク試料由来の配列を含む発現系の調製および宿主細胞の形質転換
実施例6に記載の手順を、実施例5に従って選択したクローン8の軽鎖をコードする遺伝子を含む発現ベクター内に、クローン20の重鎖をコードする配列(配列番号37に対応する)を導入することにより繰り返す。
配列番号37
CTCGAGTCGGGGGGAGGCTTCGTACAGCCTGGGGGGTCTCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGGGACTATGCCATGGGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCCGGAGTGGGTCTCAATTATTAGTGCTAGTGGTGGTTCCATATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACACACTGTATCTGCAAATGAACAGTCTCAGAGCCGACGACACGGCTGTATACTACTGTGCAAGACAGACCAGCAGCAGATGGTATGATTGGTTCGACCCCTGGGGCCAGGGAACC
【実施例10】
【0173】
免疫組織学的アッセイ
新鮮プラーク試料を液体窒素中で凍結し、クリオスタットで切片にする。5μm厚の切片を氷冷アセトンで固定し、室温で1時間、血清ブロッキング溶液(2%血清、1%BSA、0.1% Triton X-100、0.05% Tween 20)でブロックする。固定した切片を、適切な希釈の、本発明に従って製造し同定したFabでプローブし、室温で2時間インキュベーションする。切片をPBSで5回洗浄し、適切な希釈のFITC (フルオレセインイソチオシアネート)結合第2抗ヒトFab (Sigma-Aldrich、St Louis、Missouri)を加える。室温で30分後、切片を再度洗浄し、形成されたリガンド/抗体複合体を蛍光顕微鏡で検出する。
【実施例11】
【0174】
ファージライブラリーの抗体によるスクリーニング
線状ファージM13のcpIIIコートタンパク質のN末端にドデカペプチドを発現するランダムファージ表現ペプチドライブラリー(Ph.D.-12TMファージ表現ペプチドライブラリーキット、カタログ#E8110S、New England Biolabs、Beverly、Massachusetts)のパンニングを、使用説明書に従って、Fabコートした高結合96ウェルELISAプレート(Costar 96w ポリスチレン1/2面積平底HI結合平底、cat #3690)を用いて行う。
【0175】
抗体保存領域と結合するファージを除去するため、2回目のパンニングから、増幅したファージと25μgのヒト標準IgGプール(Endobulin、A.T.C J06BA02、Baxter S.p.A.)を37℃で1時間混合することにより負の選択を行う。
【0176】
4回の選択を上記のごとく行い、増幅したファージを本発明に従って製造および同定したFabおよび負の選択に用いた標準IgGの同じプールについてパンニングする。
【実施例12】
【0177】
ペプチドのスクリーニングおよびDNA配列分析
実施例11から得られるすべてのファージを用いてE.coli ER2537株を感染させ、無作為に選んだ単一プラークを、本発明に従って製造および同定したFabおよび標準IgGプールを用いて酵素免疫測定法でスクリーニングした。
【0178】
抗原をコートしたプレート(Costar 96wポリスチレン1/2面積平底HI結合平底、cat #3690)を洗浄し、PBS/BSA 1%溶液で37℃で1時間ブロックし、50μlの108ファージ/mlを加え、37℃で2時間インキュベーションする。
【0179】
プレートをPBS(0.1% Tween-20;Sigma-Aldrich、St Louis、Missouri)で10回洗浄し、次いで50μlのPBSで1:3000に希釈したHRP結合抗M13抗体(GE Healthcare 27-9411-01)を加える。
【0180】
37℃で2時間後、プレートをPBS(0.5% Tween-20;Sigma-Aldrich、St Louis、Missouri)で洗浄し、特異的に結合したファージを、100μlの基質(Sigma-Aldrich、St Louis、Missouri)を加えて検出し、室温で30分後、プレートの450nmの吸光度を測定する。本発明のFabがOD450nm値>1およびIgGプールのOD450nm値が<0.3を示す陽性クローンを、陽性とスコア付けし、ソフトウエアPepitope http://pepitope.tau.ac.il/index.htmlを用いる配列分析により評価する。ペプチド配列分析から、保存されたアミノ酸位置を同定し、その配列に存在するコンセンサス残基の量に基づいて4つのペプチドを選ぶ。
【0181】
4つのペプチドについて、配列番号391〜394に対応する関連配列を同定した。
【実施例13】
【0182】
酵素免疫測定法
Hep-2 (ATCC CCL-23)細胞を、抗生物質/抗真菌剤溶液(Invitrogen、Antibiotic/Antimycotic Solution、液体、15240-062)および10%FBSを添加したE-Mem (Invitrogen 0820234DJ)中で増殖させる。細胞は5日毎に規則的に1:10に分割する。5 x 106個の細胞をPBSで洗浄し、RIPA緩衝液(50mM Tris HCL ph8+ 150mM NaCl + 1% NP-40+ 0.5% NAデオシコレート(deossicolate)+ 0.1%SDS)を用いて溶解する。
【0183】
ELISAプレート(Costar 96wポリスチレン1/2面積平底HI結合平底、cat #3690)を、4℃で一夜、Hep-2溶解物の連続希釈液(PBS中、1000ng、200ng、40ng、および8ng)でコートする。37℃で2時間、PBS+BSA3%でブロックした後、Fab24の連続希釈液 (20μg/ml、10μg/ml、5μg/ml、2.5μg/ml)を、37℃で1時間、コートした抗原とインキュベーションする。PBS +Tween20 0.1% (SIGMA cod. PL379)で洗浄した後、プレートを抗ヒトIgGパーオキシダーゼ(SIGMA cod. A2290)と37℃で30分間インキュベーションする。PBS +Tween 0.1%で洗浄した後、TMB基質をウェル (PIERCE TMBパーオキシダーゼ用基質キット、cod. SK 4400)に加えた。ELISAプレートを450nmの分光高度計で分析する。結果を図14に示す。
【実施例14】
【0184】
ペプチドの合成
14.1)概要
化学試薬、化学構造部分、および技術の略号:
AA−アミノ酸、AcOH−酢酸、ACN−アセトニトリル、API−ES−大気圧イオン化エレクトロスプレー、Btn−ビオチン、Boc−tert−ブチルオキシカルボニル、DCM−ジクロロメタン、DIC−N,N−ジイソプロピルカルボジイミド、DIEA−N,N−ジイソプロピルエチルアミン、DMF−N,N−ジメチルホルムアミド、EtO−ジエチルエーテル、Fmoc−9−フルオレニルメトキシカルボニル、Adoa−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸、HFIP−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、HOBt−N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、MeOH−メタノール、Neg.イオン−陰イオン、NHS−N−ヒドロキシスクシンイミド、NMP−N−メチルピロリドン、Pip−ピペリジン、Pos.イオン−陽イオン、HBTU−O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、PyBOP−ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、t−保持時間(分間)、試薬B(88:5:5:2−TFA:HO:フェノール:TIPS−v/v/wt/v)、Su−スクシンイミジル、TFA−トリフルオロ酢酸、TIPS−トリイソプロピルシラン、HO−水。
【0185】
種々のペプチド合成に用いるアミンおよび非天然アミノ酸に用いる名前、構造、および略号は表Vに示す。
【0186】
反応、クロマトグラフィ精製、およびHPLC分析用の溶媒は、VWR Corporation (West Chester、PA)のE. Merck Omniグレード溶液である。NMPおよびDMFは、Pharmco Products Inc. (Brookfield、CT)から購入し、ペプチド合成グレードまたは低水/アミン不含Biotechグレード品質である。ピペリジン(シーケンシンググレード、再蒸留99+%)およびTFA(分光光度法グレードまたはシーケンシンググレード)は、Sigma-Aldrich Corporation (Milwaukee、WI)またはFluka Chemical Division of Sigma-Alrich Corporationから購入する。フェノール(99%)、DIEA、DIC、およびTIPSは、Sigma-Aldrich Corporationから購入する。使用するFmoc保護アミノ酸、PyBop、およびHOBtは、Nova-Biochem (San Diego、CA、USA)、Advanced ChemTech (Louisville、KY、USA)、Chem-Impex International (Wood Dale Ill、USA)、およびMultiple Peptide Systems (San Diego、CA、USA)から購入する。Fmoc-AdoaおよびBtn-Adoa-Adoa-OHは、NeoMPS Corp (San Diego、CA)から得る。
【0187】
分析的HPLCデータは、一般的に、Waters X-Terra(登録商標)MS-C18 (5.0μ、50 × 4.6 mm;ポアサイズ120Å)またはWaters Sunfire(登録商標)OBD-C8 (4.6 × 50 mm 3.5μ、ポアサイズ120Å)カラムを用いるShimadzu LC-10AT VPデュアルポンプ勾配系、および溶離剤AにH2O (0.1% TFA)を、溶離剤BにACN (0.1% TFA)を用いる勾配または等張溶出系を用いて得られる。化合物の検出は、220および/または230nmのUVを用いて達成される。
【0188】
プレパラティブHPLCは、プレパラティブフローセルを取り付け、SPD-10AV UV検出器を備えたShimadzu LC-8Aデュアルポンプ勾配系を用いて行う。一般的には、粗ペプチドを含む溶液を、プレパラティブShimadzu LC-8Aデュアルポンプ勾配系に取り付けた第3ポンプを用い、逆相Waters Sunfire(登録商標)OBD C8 (50 × 250 mm;粒子サイズ:10.0μ、ポササイズ120Å)カラムにロードする。粗生成物混合物の溶液をプレパラティブHPLCカラムに適用した後、溶離剤として用いた反応溶媒および溶媒、例えばDMFまたはDMSOを、低有機相組成のカラムから溶出する。次に、目的とする生成物を、溶離剤Aに溶離剤Bを加える勾配溶出を用いて溶出する。生成物を含有する分画を、分析的HPLCおよび質量分析により決定した純度に基づいて混合する。混合した分画を凍結乾燥し、目的とする生成物を得る。
【0189】
質量分析データは、社内のAgilent LC-MSD 1100質量分析器を用いて得る。生成物の分画選択および特徴付けのために、質量分析値は、通常、陽イオンモードのAPI-ESを用いて得られる。一般的には、標的ペプチドの分子量は〜2000であり、マススペクトルは、通常、弱い[M+H]+より強い2重または3重に正荷電したイオン質量値を示した。これらは、一般的にHPLC精製から純粋なペプチドを得るための収集および混合するための分画の選択に用いられる。
14.2) 固相ペプチド合成(SPPS)の一般的方法。
14.2.1) 線状ペプチドを、Fmoc-Pal-Peg-PS樹脂(0.2mmol/g)および/または適切なプレロードした樹脂、Fmoc保護アミノ酸、およびDMF中のPyBop介在エステル活性化を用い、Rainin PTI Symphony(登録商標)ペプチド合成装置(12ペプチド配列/合成)を用いる確立された自動化プロトコールにより合成する。残りのペプチド配列を、SPPS法により段階的に、典型的には0.2mmolスケールでFmoc-Pal-Peg-PSおよび/または他の樹脂にロードする。DMF中のPyBop-DIEA試薬により活性化した4倍過剰の各アミノ酸でアミノ酸カップリングを行う。4倍過剰のBtn-NHSエステルを用いて該ペプチドのN末端にビオチンを結合させる。
14.2.2)プレロードしたトリチル樹脂上ジアミンを用いる時は、最終アセチル化後、完全に保護されたペプチド鎖を、8:1:1-DCM:AcOH:HFIPで樹脂から開裂させ、揮発物を蒸発させた後、最終Btn-Adoa-Adoaを溶液中、該アミンのC末端と結合させる。粗完全保護ペプチドを、溶液中の1.0等量の予め形成されたBtn-Adoa-Adoa-NHSエステルにて室温で16時間処理する(総容量5.0mL/g粗重量)。
【0190】
特定のアミノ酸の典型的なカップリングプロセスにおいて、0.8mmolのアミノ酸を含むDMF溶液6.0mL、次いでPyBOP(0.8 mmol、DMF溶液、1.25mL)、およびDIEA(0.8 mmol、DMF溶液、1.25 mL)を、樹脂(0.2mmol)を含む反応容器(RV)に自動化プロトコールにより連続的に加え、次いで樹脂を反復して窒素を泡立たせることにより撹拌する。1時間後、樹脂をDMF(4.5mL、6×)で完全に洗浄し、Fmoc基の開裂を、DMF(4.5mL)中の25% Pipを用いて10分間行い、次いで10分間同じ試薬で第2処理し、確実に完全に脱保護させる。再度、樹脂をDMF(5mL/g、6×)で完全に洗浄し、DMF洗浄の間にDCM(10mL/g)洗浄を行って、樹脂が残存Pipを含まないことを保証する。ペプチド合成が完結した後、完全に保護されたペプチドを保持する樹脂を試薬B(10.0mL/g樹脂または10.0mL/g粗保護ペプチド)で4時間開裂させた。揮発性物質を真空下で除去してペーストを得る。得られたペーストをEt2Oでトリチュレートして固体を得、これを遠心してペレットとし、次いでEt2O洗浄とペレット化をさらに3サイクル行う。得られた固体を真空乾燥し、粗ペプチドを得る。MW〜2000のペプチドの200μmol規模の合成により、粗ペプチド200〜300mg(理論値の90〜110%)を得た。理論収量より多いのは湿度と残存溶媒によると思われる。
14.3)ペプチドの精製−一般的手順
「Symphony」機器を用いるMW〜2000のペプチドの200μmol規模の合成は、各反応容器(RV)から〜200−300mgの粗ペプチドをもたらした。粗ペプチド(〜200−500mg)を逆相HPLCに1回流して精製する。ACN(10mL)に溶解した粗ペプチド(〜200mg)をH2Oで最終容量50mLに希釈し、溶液を濾過する。濾過した溶液を、H2O中の10%ACN(0.1%TFA)で予め平衡化したプレパラティブHPLCカラム(Waters、Sunfire(登録商標)Prep C8、50 × 250mm 10μ、120Å)にロードする。カラムに溶液を適用中は、プレパラティブHPLCシステムからの平衡化溶離剤の流出は停止する。溶液をカラムに適用した後、勾配HPLCシステムからの平衡化溶離剤の流出を再開し、次いで溶離剤の組成物を10.0分間かけて20% ACN-H2O (0.1%TFA)まで勾配させ、次いで、H2O(0.1%TFA)にACN(0.1%TFA)を0.5%/minの速度で直線勾配を開始し、60分間維持する。分画(15mL)を、生成物溶出の指標として220nmのUVを用いて回収する。回収した分画を、分析的逆相C8カラム(Waters Sunfire(登録商標)OBD-C8、4.6 × 50 mm、5μ、120Å)で分析し、純度>95%の生成物含有分画を混合し、凍結乾燥して対応するペプチドを得る。単離した後、該ペプチドをHPLCおよび質量分析で分析し、同一性と純度を確認する。ペプチドのデータを、表VI(配列、樹脂のローディング、および収量)、表VII(HPLCおよび質量分析)、および表VIII(ペプチドの構造)に示す。
【実施例15】
【0191】
酵素免疫測定法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)
ELISAプレート(Costar 96wポリスチレン1/2面積平底HI結合平底、cat #3690)を、PBSに再懸濁した100ngのペプチドで4℃、一夜コーティングする。37℃で2時間、PBS+BSA3%でブロッキングした後、Fab24(20μg/ml)を37℃で1時間、コートした抗原とインキュベーションする。PBS+Tween20 0.1% (SIGMA cod:PL379)で洗浄した後、プレートを抗ヒトIgGパーオキシダーゼ(SIGMA cod: A2290)で37℃、30分間インキュベーションする。PBS+Tween 0.1%で洗浄した後、TMB基質をウェル(PIERCE TMBパーオキシダーゼ用基質キット:SK 4400)に加える。ELISAプレートを450nmの分光高度計で分析する。結果を図15に示す。
表V:略号および構造
【0192】
【表5】

表VI:ペプチド配列、樹脂ローディング、および収量
【0193】
【表6】

表VII:ペプチドのHPLCおよび質量分析
【0194】
【表7−1】

【表7−2】

表VIII:ペプチドの構造
化合物1
【0195】
【化1】

化合物2
【0196】
【化2】

化合物3
【0197】
【化3】

化合物4
【0198】
【化4】

化合物5
【0199】
【化5】

化合物6
【0200】
【化6】

化合物7
【0201】
【化7】

化合物8
【0202】
【化8】

化合物9
【0203】
【化9】

化合物10
【0204】
【化10】

化合物11
【0205】
【化11】

化合物12
【0206】
【化12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偶数配列番号2〜390および396〜454のいずれかを含むアミノ酸配列またはそのあらゆる断片をコードする、奇数配列番号1〜389および395〜453のいずれかを含む単離されたポリヌクレオチド分子またはそのあらゆる断片。
【請求項2】
偶数配列番号2〜390および396〜454のいずれかを含むアミノ酸配列、またはあらゆるホモローガスな配列、または冠動脈プラーク中にみいだされる可能性がある抗原と結合する保存的置換を有するあらゆる配列、またはそのあらゆる断片。
【請求項3】
配列番号22、38、44、52、および54に対応する請求項2に記載の単離されたアミノ酸配列。
【請求項4】
少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも97%の生殖細胞系相同性を有する請求項2記載のアミノ酸配列、またはそのあらゆる断片。
【請求項5】
CDR3部分のρ値が5%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、およびさらにより好ましくは1‰以下である請求項2または3記載のアミノ酸配列またはそのあらゆる断片。
【請求項6】
請求項1のポリヌクレオチド分子をコードする請求項2〜5のいずれかに記載のアミノ酸配列、またはそのあらゆる断片。
【請求項7】
1またはそれ以上の請求項1記載の単離されたポリヌクレオチド分子を含む、発現ベクター。
【請求項8】
配列番号53、および所望により配列番号21、37、43、および51に記載の配列のいずれかを含む請求項7記載の発現ベクター。
【請求項9】
プラスミド、コスミド、YAC、ウイルス粒子、またはファージを含む群から選ばれる請求項7または8記載の発現ベクター。
【請求項10】
請求項7記載の1またはそれ以上の発現ベクターを含む発現系。
【請求項11】
請求項10の発現系を含む単離された組み換え宿主細胞。
【請求項12】
以下の原核性組み換え単離細胞を含む群から選ばれる請求項11記載の単離された組み換え宿主細胞:例えば、Enterobacter、Escherichia、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、Serratia、Shigella、Bacilli、Pseudomonas、およびStrepromyces;好ましくは該原核性組み換え単離細胞は、E. coli、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Pseudomonas aeruginosaを含む群から選ばれ、さらにより好ましくは該原核性組み換え単離宿主細胞はE. coli XL1-Blueである;酵母組み換え宿主細胞、例えば、Saccharomyces、Pichia pastoris、Kluyveromyces、例えば、K. lactis、K. fragilis、K. bulgaricus、K. wickeramii、K. waltii、K. drosophilarum、K. thermotolerans、K. marxianus、Schizosaccharomyces、例えば、Schizosaccharomyces pombe、yarrowia、Hansenula、Trichoderma reesia、Neurospora crassa、Schwanniomyces、例えば、Schwanniomyces occidentalis、Neurospora、Penicillium、Tolypociadium、Aspergillus、例えば、A. nidulans、Candida、Torulopsis、およびRhodotorula;好ましくは該酵母組み換え宿主細胞はSaccharomyces cerevisiaeである;ヒト組み換え単離宿主細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)、SV40で形質転換したサル腎臓CVI系(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎臓系、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR、マウスセルトリ細胞、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);およびマウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);単離された植物組み換え宿主細胞、例えばAgrobacterium tumefaciensおよびNicotiana tabacum;昆虫組み換え単離細胞、例えばDrosophila S2およびSpodoptera Sf9。
【請求項13】
以下の工程を含む組み換え抗体またはそのあらゆる断片の製造方法:
a)請求項1記載のポリヌクレオチド配列のいずれかに対応する1またはそれ以上のポリヌクレオチド分子を含む発現ベクター、および該発現ベクターを含む宿主細胞を含む発現系を製造し、
b)適切な増殖条件下で該宿主細胞を培養し、
c)そのようにして製造された該抗体またはそのあらゆる断片を回収し、
d)該抗体またはそのあらゆる断片を精製する。
【請求項14】
工程a)の1またはそれ以上のポリヌクレオチド分子が配列番号1〜389および395〜453の奇数配列であるか、またはそれから選ばれる請求項13記載の方法。
【請求項15】
該組み換え単離宿主細胞が、E. coli、B. subtilis、S. Cerevisiae、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)を含む群から選ばれる請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
IgG抗体またはそのあらゆる断片を製造するための請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
IgG抗体のFab断片を製造するための請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
請求項13〜15のいずれかに記載の方法に従って製造された組み換え単離抗体またはそのあらゆる断片。
【請求項19】
請求項13〜15のいずれかに記載の方法に従って製造された組み換えIgG抗体またはそのあらゆる断片。
【請求項20】
請求項13〜15のいずれかに記載の方法に従って製造された組み換えIgG Fab断片。
【請求項21】
請求項13〜16のいずれかに記載の方法に従って製造される、配列番号22、38、44、52、および54に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む組み換え単離IgG Fab断片。
【請求項22】
さらに請求項13〜16のいずれかに記載の方法に従って製造される、請求項21記載の組み換え単離IgG Fab断片。
【請求項23】
冠動脈プラークに存在する可能性がある抗原と結合する請求項21記載の組み換え単離IgG Fab断片。
【請求項24】
請求項18〜23のいずれかに記載の組み換え抗体またはそのあらゆる断片、および所望により治療的部分を含む治療用組成物。
【請求項25】
該治療的部分が、放射性核種、薬物およびプロドラッグ、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、レセプターアンタゴニスト、酵素または別の物質により活性化されるプロ酵素、オートクリンまたはサイトカイン、抗菌剤、および毒素を含む群から選ばれる請求項24記載の治療用組成物。
【請求項26】
請求項18〜23のいずれかに記載の組み換え抗体またはそのあらゆる断片、および診断的部分を含む治療的組成物。
【請求項27】
急性冠動脈症候群(ACS)を治療するための請求項24または25記載の治療用組成物。
【請求項28】
急性冠動脈症候群(ACS)を診断するための請求項26記載の診断用組成物。
【請求項29】
請求項2〜6のいずれかに記載のアミノ酸配列と結合するリガンド。
【請求項30】
請求項18〜23のいずれかに記載の組み換え抗体またはそのあらゆる断片と結合するリガンド。
【請求項31】
請求項18〜23のいずれかに記載の組み換え抗体またはその断片と結合するアミノ酸コンセンサス配列を含むペプチド。
【請求項32】
配列番号391〜394に対応するアミノ酸配列を有する請求項31記載のペプチド。
【請求項33】
請求項2〜6の単離されたアミノ酸配列の使用を含む方法により選択される請求項29記載のリガンド。
【請求項34】
請求項18〜23のいずれかに記載の組み換え抗体の使用を含む方法により選択される請求項30記載のリガンド。
【請求項35】
以下の工程を含む請求項18〜23のいずれかに記載の組み換え抗体またはそのあらゆる断片と結合するリガンドの同定方法:
a)該抗体またはそのあらゆる断片を固相上に結合させ、
b)1またはそれ以上の洗浄工程により非結合物質を除去し、
c)候補分子を工程a)で調製した固相と接触させて、該候補分子と該固相を適切な時間インキュベーションし、
d)1またはそれ以上の洗浄工程により非結合物質を除去し、
e)工程a)の抗体とそれと結合した候補分子との複合体に特異的な二次抗体を加え、
f)工程a)の抗体に結合した分子を同定する。
【請求項36】
工程a)の抗体またはその断片が請求項18〜23に記載の抗体またはその断片である請求項35記載の方法。
【請求項37】
以下の工程を含む請求項2〜6のいずれかに記載のアミノ酸配列またはそのあらゆる断片と結合するリガンドの同定方法:
a)該アミノ酸配列またはそのあらゆる断片を固相上に結合させ、
b)1またはそれ以上の洗浄工程により非結合物質を除去し、
c)候補分子を工程a)で調製した固相と接触させて、該候補分子と該固相を適切な時間インキュベーションし、
d)1またはそれ以上の洗浄工程により非結合物質を除去し、
e)工程a)のアミノ酸配列とそれと結合した候補分子との複合体に特異的な二次抗体を加え、
f)工程a)の抗体に結合した分子を同定する。
【請求項38】
工程a)のアミノ酸配列またはそのあらゆる断片が請求項2〜6のアミノ酸配列またはそのあらゆる断片である請求項36記載の方法。
【請求項39】
全血、血清、および冠動脈プラーク断片を含む群から選ばれる試料を請求項19〜23のいずれかに記載の抗体またはそのあらゆる断片と接触させる工程を含むex-vivoまたはin vitro診断方法。
【請求項40】
患者の急性冠動脈症候群(ACS)を診断するための請求項39記載のex-vivoまたはin vitro診断方法。
【請求項41】
急性冠動脈症候群(ACS)のリスクがある個体群をスクリーニングするための請求項39記載のex-vivoまたはin vitro診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−538667(P2010−538667A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525341(P2010−525341)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062408
【国際公開番号】WO2009/037297
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(504448162)ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
【Fターム(参考)】