説明

新規クラスの洗濯用組成物

本発明は、一般に洗浄に対する、そして特に、生地を害することなく着色した織物を洗浄することに対する、強力かつ新規なアプローチを与える。これは、高いpHレベルでの過酸化水素の化学的漂白と、独特の強力な油-可溶化テルペンとを組み合わせて、極めて驚くべきかつ有効な製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄組成物、特に、着色した生地(fabrics)、織物(textiles)、および硬い表面(hard surfaces)の染み、および油汚れを処理する新規クラスの洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
慣例的に、洗浄組成物、特に市場で入手可能な工業用の洗濯用洗剤および石鹸は、洗浄される織物表面から不純物、汚れ、および染みを物理的に除去する物質として機能する。これらの工業用の洗剤および石鹸は、界面活性剤を含む表面活性物質であり、汚れが存在する織物表面に集中する。洗浄界面活性剤は、洗浄クリーニング液中の界面活性剤のように平衡状態にある。簡単に述べると、これらの界面活性剤は、物理的に、汚れ、油、または染みをそのミセル中に取り込み(溶解)、織物表面から洗浄液のバルクへとそれらを取り去る。
【0003】
市場におけるこれらの工業用の石鹸および洗剤の流行は伝説的であり、織物を物理的に洗浄するそれらの能力は、ほとんどの通常の汚れおよび不純物に適している;しかしながら、これらの洗剤および石鹸は、油汚れおよび/または疎水性の染みを除くには効果が低い。
【0004】
慣例的に、化学的洗浄または漂白の工業的方法は、汚れを除くために用いられる。染みを引き起こす実際の汚れは、洗浄される表面から物理的に除去されない。この汚れは、無色の状態へと漂白、すなわち、化学的変性される。
【0005】
典型的な工業用の漂白剤は次亜塩素酸塩を含む。次亜塩素酸塩は、弱い過酸化水素より一般的に好まれる化学的に強い酸化剤である。次亜塩素酸塩は染みを除去する漂白剤として有効であるが、大きな欠点を有している。すなわち、それは多くの着色物質を無差別に漂白(すなわち、脱色)し、織物の色を攻撃して改変してしまう。かくして、洗濯織物の洗浄では、工業用の次亜塩素酸塩の漂白剤は白い服にしか用いることができない。結果的に、染みの付いた、または油汚れの付いた、着色された織物を洗浄しようとした場合、化学的攻撃性の弱い酸素ベースの漂白剤(例えば、過酸化物およびペルオキソ酸)に頼る必要がある。この結果は、白い織物の次亜塩素酸塩漂白から得られる結果ほどには、滅多に満足できるものではない。次亜塩素酸塩の攻撃的な漂白特性が衣服の生地を弱めることも注意すべきである。かくして、多くの洗浄後には、通常は、処理されたものの耐久性がより弱くなってしまう。
【特許文献1】米国特許第5,602,090号
【特許文献2】米国特許第6,316,399号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一般に洗浄に対する、そして特に、生地を害することなく着色した織物を洗浄することに対する、強力かつ新規なアプローチを与える。これは、高いpHレベルでの過酸化水素の化学的漂白と、独特の強力な油-可溶化テルペンとを組み合わせて、極めて驚くべきかつ有効な製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る新規の洗濯用組成物は、過酸化水素の供給源、および疎水性溶媒、および/または界面活性剤を乾燥形態で含む。困難な疎水性または油をベースとする染みを表面から除くには、疎水性界面活性剤(通常、非イオン性界面活性剤であるが、これに限定されるわけではない)および/または疎水性溶媒の使用が必要である。特定かつ非常に有効なクラスの疎水性溶媒は、テルペン炭化水素、特に、d-リモネンである。
【0008】
本発明の新規調合物は、現行の知識に逆行することから、独特である。テルペン炭化水素は、過酸化水素との併用について示唆されたことがない。化学組成の観点から、テルペン、特にd-リモネンは、過酸化水素の存在下で長時間にわたって安定であるとは予想されない。テルペン炭化水素と過酸化水素とを組み合わせた組成物を安定化し、それらの組み合わせた洗浄特性を得るために、本発明は“乾燥”調合物を用いる。また、この乾燥調合物は、過酸化水素の漂白力を最大化するpHを与えるように設定される。
【0009】
関連技術
1997年2月11日にMelikyanらに交付された米国特許第5,602,090号「SURFACTANTS BASED AQUEOUS COMPOSITIONS WITH D-LIMONENE AND HYDROGEN PEROXIDE AND METHODS USING THE SAME」および2001年11月13日にArman V.Melikyanに交付された米国特許第6,316,399号「SURFACTANTS BASED AQUEOUS COMPOSITIONS WITH D-LIMONENE AND HYDROGEN PEROXIDE AND METHODS USING THE SAME」では、過酸化水素とテルペンの組み合わせを用いることを示唆する組成物が開示されている。これらの開示は、液状組成物中に、過酸化水素と疎水性テルペンを導入する製品に関する。この液状組成物の機能は、織物および生地の洗濯に関するものではない。
【0010】
さらに、この液状組成物は、過酸化水素の漂白効果を増強する9.5を超える高いpHレベルで調合されるものではない。これらの特許は、非常に低いpHレベルを用いる点から、本発明とは逆の教示をしている。このような低いpHレベルは、テルペンと過酸化水素の液状の組み合わせを、溶液において安定化する。
【0011】
本発明では、過酸化水素の化学的洗浄(漂白)能力と、炭化水素テルペン、特にd-リモネンのような疎水性溶媒の物理的洗浄能力とを組み合わせた洗濯洗浄組成物を提供する。当該組成物は、それを適用する織物および生地を漂白する過酸化水素の能力を増大するpHレベルで乾燥調合される。
【0012】
新規クラスの洗濯洗浄組成物を提供することが本発明の課題である。
【0013】
本発明の別の課題は、約9より高いpH、好ましくは約pH10の緩衝粉末状マトリックス中に過酸化物および疎水性溶媒または界面活性剤を含む調合物を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一般的に、本発明は、全てのタイプおよび色の生地に対して改善された洗浄効率を与えると同時に、今日の工業的な洗濯用組成物によって通常処理される染みおよび汚れの範囲およびタイプを広げる、新規かつ独特の組成物に関する。
【0015】
本発明の組成物は、過酸化水素と、d-リモネンのような疎水性溶媒または界面活性剤の両方を乾燥調合物に導入し、ここでpHレベルは、過酸化水素の漂白力を最大化するために約9.0を超える。
【0016】
過酸化物を含有する液状調合物の主な欠点は、その不安定性である。これは、過酸化水素がテルペンと混合される場合の、液状組成物に特に見られる。係る液状の組み合わせは、低いpH、すなわち8未満でのみ調合可能である。しかしながら、過酸化水素の漂白剤としての有効性は、pHレベルが9.5以上から10に高まると劇的に増大する。
【0017】
このような高いpH範囲における漂白剤としての改善された効力は、この高いpHレベルではより広いベースの漂白が行われるという事実によるものと信じられている。過酸化水素は、酸化/還元剤としてだけでなく、ヒドロペルオキシドアニオンを介した強力な求核試薬としても、漂白できる。この求核アニオンは、9.5以上から10のpHレベルで相当量見出された。本発明は、組成物のpHレベルを増加するためにソーダ灰を利用する。
【0018】
本発明に係る調合物の主な利点の一つは、衣類やカーペットのような織物にペースト形態で直接適用される能力である。乾燥調合物を少量の水と混合して前記ペーストを形成し、このペーストを織物表面に穏やかに適用できる。高いpHレベルは、染みに対して優れた漂白作用を提供する。さらに、洗濯織物の油染みの共通の起源を構成する、脂肪酸ベースの染みは、9より高いpHレベルで表面からより容易に除去される。
【0019】
本発明の新規の知見の一つは、過酸化物が、広範囲の温度で長時間にわたって安定のままであるという事実である。これは、あらゆる水分の存在が、過酸化水素源の急速な分解を引き起こしてしまうと予想されることから、特に驚くべきことである。
【0020】
ここに記載する調合物は主として洗濯洗浄に関するものであるが、係る調合物は、タイル、グラウト、セラミクス、磁器、プラスチック、繊維ガラス、カーペット、室内装飾材料、コンクリート、ウッドデッキ等の硬い表面の洗浄剤としてさらに使用できる。
【0021】
さらに驚くべきことは、テルペンの臭い、特にd-リモネンの臭いは、長期経過後も低減すなわち“変性”されない。
【0022】
本発明の別の態様は、カプセル内包された過酸化水素源を含有する組成物の調合である。カプセル内包により、過酸化物とテルペンの両方に大きな安定性を与える。
【0023】
ここに開示されている組成物の他の利点は、その液状の対応物と比べて、本質的に安全な使用、輸送、および貯蔵である。
【0024】
本発明の組成物の他の予期せぬ利点は、別の疎水性溶媒についてこれまで報告されていたよりも低い温度での、テルペンの有効性である。
【0025】
本発明の別の態様は、油やグリース、果物や野菜、例えば草や血液の酵素、並びに粒子をベースとするグレーの泥/土の染みを含む、広範囲の染みのタイプに対する改善された染みの除去である。
【0026】
特定の調合物
実施例1
あらゆる目的の洗浄用添加製品 重量%
ソーダ灰 10−70
過ホウ酸または過炭酸ナトリウム
(それぞれ一水和物または四水和物として) 8−60
テルペン 0.5−20
香料 0.1−2.0
アニオン性界面活性剤 0.5−5.0
非イオン性界面活性剤 0.5−5.0
キレート剤 0.2−5.0
【0027】
実施例2
洗濯用洗剤粉末 重量%
ソーダ灰 1−40
トリポリリン酸ナトリウム 1−20
抗レッドポジション(Anti-Redposition)剤 0−2
メタケイ酸ナトリウム 1−10
生地増白剤 0.1−2.0
テルペン 0.5−20
香料 0.1−2.0
非イオン性界面活性剤 0.5−5.0
アニオン性界面活性剤 0.5−5.0
両性界面活性剤 0.5−5.0
過ホウ酸または過炭酸ナトリウム
(それぞれ一水和物または四水和物として) 8−60
水酸化ナトリウム 1−10.0
キレート剤 0.2−5.0
【0028】
本発明で用いられるテルペンは、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン、α-ピネン、β-ピネン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0029】
特定の実施要件および環境に合うように変更された他の修正および変化は当業者に自明であることから、本発明は、開示目的で選択された実施例に限定されて考えられるべきではなく、本発明の精神および範囲から離れないようなあらゆる変更および修正をカバーする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素源と少なくとも一つのテルペンとを組み合わせて含む乾燥粉末形態の洗浄組成物。
【請求項2】
9.0を超えるpHを有する、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項3】
少なくとも一つのテルペンがd-リモネンを含む、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項4】
過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウム四水和物を含む、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項5】
過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウム一水和物を含む、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項6】
過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウムのカプセル内包形態を含む、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項7】
過酸化水素源が過炭酸ナトリウム一水和物を含む、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項8】
過酸化水素源が過炭酸ナトリウム四水和物を含む、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項9】
過酸化水素源が過炭酸ナトリウムのカプセル内包形態を含む、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項10】
テルペンが、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン、α-ピネン、β-ピネン、およびこれらの組み合わせからなるテルペン群から選択される、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項11】
過酸化水素源が、前記乾燥粉末内にカプセル内包された過硫酸ナトリウムを含む、請求項1記載の洗浄組成物。
【請求項12】
過酸化物源および少なくとも一つのテルペンを組み合わせて有し、当該組み合わせが9.0を超えるpHを有する、乾燥粉末形態の洗浄組成物。
【請求項13】
洗濯用洗浄調合物を含む、請求項12記載の洗浄組成物。
【請求項14】
テルペンがd-リモネンを含む、請求項12記載の洗浄組成物。
【請求項15】
過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウム四水和物を含む、請求項12記載の洗浄組成物。
【請求項16】
過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウム一水和物を含む、請求項12記載の洗浄組成物。
【請求項17】
過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウムのカプセル内包形態を含む、請求項12記載の洗浄組成物。
【請求項18】
過酸化水素源が過炭酸ナトリウム一水和物を含む、請求項12記載の洗浄組成物。
【請求項19】
過酸化水素源が過炭酸ナトリウム四水和物を含む、請求項12記載の洗浄組成物。
【請求項20】
過酸化水素源が過炭酸ナトリウムのカプセル内包形態を含む、請求項12記載の洗浄組成物。
【請求項21】
テルペンが、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン、α-ピネン、β-ピネン、およびこれらの組み合わせからなるテルペン群から選択される、請求項9記載の洗浄組成物。
【請求項22】
過酸化水素源と疎水性溶媒または界面活性剤とを組み合わせて含み、9.0を超えるpHを有する、乾燥粉末形態の洗浄組成物。
【請求項23】
洗濯用洗浄調合物を含む、請求項22記載の洗浄組成物。
【請求項24】
疎水性溶媒がテルペンを含む、請求項22記載の洗浄組成物。
【請求項25】
テルペンがd-リモネンを含む、請求項24記載の洗浄組成物。
【請求項26】
過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウム四水和物を含む、請求項22記載の洗浄組成物。
【請求項27】
過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウム一水和物を含む、請求項22記載の洗浄組成物。
【請求項28】
過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウムのカプセル内包形態を含む、請求項22記載の洗浄組成物。
【請求項29】
過酸化水素源が過炭酸ナトリウム一水和物を含む、請求項22記載の洗浄組成物。
【請求項30】
過酸化水素源が過炭酸ナトリウム四水和物を含む、請求項22記載の洗浄組成物。
【請求項31】
過酸化水素源が過炭酸ナトリウムのカプセル内包形態を含む、請求項22記載の洗浄組成物。
【請求項32】
テルペンが、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン、α-ピネン、β-ピネン、およびこれらの組み合わせからなるテルペン群から選択される、請求項22記載の洗浄組成物。
【請求項33】
重量%で、以下:
ソーダ灰 10−70
過ホウ酸ナトリウムまたは過炭酸ナトリウム 8−60
テルペン 0.5−20
を含む洗浄組成物。
【請求項34】
重量%で、以下:
ソーダ灰 1−40
水軟化剤 1−20
抗レッドポジション剤 0−2
テルペン 0.5−20
過ホウ酸ナトリウムまたは過炭酸ナトリウム 8−60
非イオン性界面活性剤 0.5−5.0
アニオン性界面活性剤 0.5−5.0
を含む粉末状洗剤組成物。

【公表番号】特表2006−508233(P2006−508233A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557467(P2004−557467)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/038231
【国際公開番号】WO2004/050810
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505205432)ダイアモンド・ケミカル・カンパニー・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】