説明

新規テルペンアルコール系化合物

【課題】ポリマー材料、光学材料、塗料、洗浄剤、香料等に使用可能な硬化収縮性、耐熱性、吸水性などの性能面を向上し、環境面でも優れた新規テルペンアルコール系化合物を提供する。
【解決手段】テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物をディールズ−アルダー反応させて得られる化合物の誘導体である新規テルペンアルコール系化合物。具体的な、この新規テルペンアルコール系化合物として、式(I)の新規テルペンアルコール系化合物が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なテルペンアルコール系化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的分子量の高いアルコール系化合物は、ビヒクル成分としてのインキ組成物や電気絶縁油、感圧複写材料の染料溶解材料、ウレタン樹脂用希釈剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体や熱可塑性エラストマー用の可塑剤、熱媒体、塗料用溶剤、界面活性剤原料、電子材料用溶剤、金属ペースト、セラミックペースト用溶剤、ペースト用溶剤、ブレーキ用溶剤、フォトレジストの原材料、ポリマー原料、光学材料、塗料、洗浄剤、香料等に使用されてきた。
しかしながら、これらのポリマーは、その用途によっては必ずしも性能を満足していない。例えば、耐熱性、可撓性、耐水性などの物性が、充分満足できる程度のものとなっていない。また、比較的分子量の高い化合物として、芳香族化合物が広く使用されており、環境問題が社会問題になっている今日、それら、芳香族化合物は好ましいものではない。
【特許文献1】特開平9−157189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ビヒクル成分としてのインキ組成物や電気絶縁油、感圧複写材料の染料溶解材料、ウレタン樹脂用希釈剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体や熱可塑性エラストマー用の可塑剤、熱媒体、塗料用溶剤、ペースト用溶剤、ブレーキ用溶剤、フォトレジストの原材料、ポリマー材料、光学材料、塗料、洗浄剤、香料等に使用可能な硬化収縮性、耐熱性、吸水性などの性能面を向上し、環境面でも優れた新規テルペンアルコール系化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物をディールズ−アルダー反応させて得られる化合物の誘導体である新規テルペンアルコール系化合物に関するものである。
ディールズ−アルダー反応後のアルコール化の反応としては、例えば次のような反応がある。
第一の反応は、テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物を反応させ、水素添加させた後、エステル還元して、新規テルペンアルコール系化合物を得る方法である。
第二の反応は、テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物を反応させ、水素添加させた後、新規テルペンアルコール系化合物を得る方法である。
第三の反応は、テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物を反応させ、還元した後、水素添加して新規テルペンアルコール系化合物を得る方法である。
上記3種類の方法で製造される、具体的な、この新規テルペンアルコール系化合物として、式(I)や式(II)の新規テルペンアルコール系化合物が挙げられる。
ただし、本発明は、上記3種類の反応があるが、これらに限定されるものではない。
【0005】
【化3】

【0006】
【化4】

【発明の効果】
【0007】
本発明の新規テルペンアルコール系化合物は、ビヒクル成分としてのインキ組成物や電気絶縁油、感圧複写材料の染料溶解材料、ウレタン樹脂用希釈剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体や熱可塑性エラストマー用の可塑剤、熱媒体、塗料用溶剤、ペースト用溶剤、ブレーキ用溶剤、ポリマー材料、光学材料、塗料、洗浄剤、香料等々として、硬化収縮性、耐熱性、吸水性などの性能面を向上し、環境面でも優れた化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のテルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物をディールズ−アルダー反応させて得られる化合物の誘導体である新規テルペンアルコール系化合物について説明する。
【0009】
ここで、テルペン化合物としては、共役二重結合を有するα−テルピネン、アロオシメン、ミルセン、オシメン、α−ファルネセン、β−ファルネセン、α−フェランドレンが考えられる。
このような共役二重結合を有するテルペン化合物と(メタ)アクリル酸系化合物を、ディールス−アルダー反応した後、本発明の新規(メタ)アクリル酸系化合物を合成することが出来る。
ただし、上記のような共役二重結合を有するテルペン化合物を使用して反応を開始しても良いが、共役二重結合を有しないテルペン化合物(例:α−ピネン、β−ピネン、リモネン)を使用して、これら共役二重結合を有しないテルペン化合物を異性化させ、共役二重結合を有するテルペン化合物にした後、(メタ)アクリル酸系化合物とディールズ−アルダー反応させて本発明を実施することもできる。
異性化を起こす化学反応は多様である。加熱だけでも異性化は起こる。また、酸、アルカリその他の化学的作用によっても異性化は起こる。また、温度、圧力などを変化させて物理的作用を加えることによっても異性化は起こる。本発明では、どのような異性化をい使用してもよい。
また、異性化反応を使用して本発明を実施する場合、テルペン化合物としては、特に制限はなく、単環のテルペン化合物であってもよいし、双環のテルペン化合物であってもよい。例えば、α−ピネン、β−ピネン、カレン、γ−テルピネン、d−リモネン、ジペンテン、ターピノーレン、β−フェランドレン、ピロネン、カンフェンなどを用いることができる。
ここで、共役二重結合を有するテルペン化合物であるα−テルピネン(化5)、アロオシメン(化6)、ミルセン(化7)、オシメン(化8)、α−ファルネセン(化9)、β−ファルネセン(化10)、α−フェランドレン(化11)の化学構造式を化5〜化11に記載する。
【0010】
【化5】

【0011】
【化6】

【0012】
【化7】

【0013】
【化8】

【0014】
【化9】

【0015】
【化10】

【0016】
【化11】

【0017】
本発明の(メタ)アクリル酸系化合物について説明する。
本発明の(メタ)アクリル酸系化合物としては、具体的には、(メタ)アクリル酸、アクロレイン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物の反応について説明する。
本発明のテルペン化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との反応としては、ディールス−アルダー反応と呼ばれる環化付加反応が用いられる。
ディールス−アルダー反応は、一般的な化学書等に記載されている公知の反応であり、共役二重結合(1,3−ジエン)を有する化合物が、オレフィン類と環状付加して、シクロヘキセン骨格を生成する反応である。このようにして得られる化合物は、通常、二重結合を有する環化付加反応物である。
【0019】
本発明のディールス−アルダー反応の反応方式は特に限定されないが、バッチ反応でも連続反応でも反応できる。
なお、テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物との反応は、テルペン化合物1モルに対し、通常、(メタ)アクリル酸系化合物が0.5〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.2モルである。
【0020】
このディールス−アルダー反応の反応温度は、通常、0〜250℃、好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは50〜180℃に加熱することで反応が行なわれる。反応温度が0℃未満では反応速度が極端に遅く、一方、250℃を超えると、重合などの副反応が顕著になり好ましくない。
【0021】
溶媒は使用しなくてもよいが、パラメンタン等の高沸点の二重結合や官能基を有しない溶媒を使用してもよい。
【0022】
このディールス−アルダー反応は、通常、無触媒で行われるが、触媒を用いて行ってもよい。反応触媒としては特に限定されないが、好ましくは、通常、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、活性白土、有機酸などの酸触媒が用いられる。
【0023】
先に記載したように、ディールス−アルダー反応後のアルコール化に導く反応としては、例えば、次のような反応がある。
第一の反応は、テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物を反応させ、水素添加させた後、エステル還元して、新規テルペンアルコール系化合物を得る方法である。
第二の反応は、テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物を反応させ、水素添加させた後、直接、新規テルペンアルコール系化合物を得る方法である。
第三の反応は、テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物を反応させ、還元した後、水素添加して得る方法である。
具体的な、この新規テルペンアルコール系化合物として、式(I)や式(II)の新規テルペンアルコール系化合物が挙げられる。
【0024】
上記記載の第一の反応におけるエステル還元反応について説明する。
このエステルの還元反応は、還元剤を用いてエステル、カルボン酸、またはアルデヒドを還元し、アルコールを得る方法である。
【0025】
また、このエステル還元反応で使用される還元剤は、特に限定されるものではないが、例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化硼素ナトリウム、ナトリウム水素化ビス(2−エトキシメトキシ)アルミニウムなどの還元剤が挙げられる。
【0026】
このエステル還元反応の反応温度は、通常、0〜120℃、好ましくは30〜100℃で反応が行われる。
【0027】
第一の反応にける水添反応について説明する。
水添する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属またはそれらを活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの坦体上に担持したものを触媒として使用して行う方法が挙げられる。
この時、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式にすることも、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式にすることも可能であり、反応形式に特に制限はない。
【0028】
触媒の使用量は、反応がバッチ方式の場合、原料に対し0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜20重量%である。触媒量が0.1重量%未満では、水素化反応速度が遅くなり、一方、50重量%を超えても触媒効果が上がらないので好ましくない。
【0029】
水添の際、反応溶媒は用いなくてもよいが、通常、アルコール類、エーテル類、エステル類、飽和炭化水素類が使用される。
【0030】
水添の際の反応温度は、特に限定されないが、通常20〜250℃、好ましくは、50〜200℃である。反応温度が20℃未満であると、水素化速度が遅くなり、一方、250℃を超えると、水添物の分解が多くなる恐れがある。
【0031】
水添の際の水素圧は、通常10〜200kgf/cm2(9.8×10〜196.0×10Pa)である。好ましくは、20〜50kgf/cm2(19.6×10〜49.0×10Pa)である。
なお、水添することにより、水添する前の化合物に比べて、色相が改善される。
【0032】
また、第二の方法における、直接水素化による還元反応の方法は、触媒を用い水素による接触水素化還元反応により、環化付加反応物の二重結合およびエステル、アルデヒド等を還元してアルコール化合物を得る方法である。
【0033】
その際使用される触媒は、特に限定されるものではなく、通常使用される接触還元触媒が使用できる。例えば、銅−クロム系触媒、銅−鉄−アルミニウム系触媒、パラジウム系、白金系、ルテニウム系などの金属系触媒などが挙げられる。また、温度は、0〜500℃が好ましく、さらに好ましくは100〜300℃である。
また、前記水素化触媒で二重結合を水素添加したのちに、銅−クロム系触媒、銅−鉄−アルミニウム系触媒などの還元触媒で不飽和ジカルボン酸、その酸無水物、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルを還元することもできる。
【0034】
また、第三の方法における、還元及び水素化反応は、第一の反応における還元及び水素化反応と同様である。
【0035】
このようにして生成した新規テルペンアルコール系化合物は、精製することにより高純度の製品として得られる。その精製方法は特に限定されないが、例えば、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0036】
また、本発明の新規テルペンアルコール系化合物は、赤外線吸収スペクトルにより、O−H伸縮に起因する3318cm−1、C−H伸縮に起因する3000〜2800cm−1、C−H変角に起因する1500〜1350cm−1、C−O伸縮に起因する1023cm−1のピークにより確認することができる。
また、1H−NMRチャートにより、ビシクロ環および側鎖に起因する0.77〜1.88ppmのピーク、水酸基に隣接するメチレン基に起因する3.42、3.80ppmのピーク、水酸基に起因する1.96ppmのピークにより確認することができる。
【0037】
さらに、13C−NMRにより、ビシクロ環および側鎖に起因する17.0〜43.2ppmのピーク、水酸基に隣接するメチレン基に起因する64.2および65.4ppmのピークにより確認することができる。
さらに、一般式(II)で表されるジメチロール化合物は、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC−MS)によるチャートよりm/z=196[M]+、m/z=178[M−H20]+、m/z=165[M−CH2OH]+等が観測された。
【実施例】
【0038】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記実施例における分析は、下記の機器を使用した。
赤外吸収装置(IR):島津製作所製、FTIR−8100M
ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC−MS):HEWLETT PACKARD社製、HP6890 GC System、カラム:HP−5MS(Crosslinked 5% Ph Me Siloxane)、30m×0.25mm×0.25μm、イオン化モード:EI
NMR:日本電子(株)社製、JNM−LA400、周波数400MHz(溶媒:CDCL3、内部標準物質:テトラメチルシラン)
【0039】
実施例1
冷却管、温度計、撹拌棒を備えた500ml三つ口フラスコに、α−テルピネン136g(1.0モル)およびブチルアクリレート128g(1モル)を仕込み、撹拌しながら昇温して、150〜170℃で12時間反応した。反応後、反応液を減圧蒸留(2〜4mmHg、150〜180℃)することによりブチルアクリレート化テルピネンを215g(収率81.4%、純度95%)を得た。
【0040】
続いて、電磁撹拌装置を備えた内容500mlのオートクレーブに、上記で得られたフマル化テルピネン200g(0.76モル)、および粉末状の5%パラジウムカーボン触媒2.0gを仕込んだ。次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス50kg/cm2の圧力をかけながら導入した。吸収された水素を補うことで圧力を40〜50kg/cm2に保ちながら3時間、40℃で反応させた。その後、得られた懸濁液をブフナーロートで吸引ろ過を行い、触媒をろ別し、水素化ブチルアクリレート化テルピネンを202g(収率94%、純度95%)を得た。
次に、冷却管、温度計、撹拌棒滴下ロートを備えた2L四つ口フラスコに、窒素気流下、脱水テトラヒドロフランを500ml入れ、水素化リチウムアルミニウム26.1g(0.687モル)を加えた。混合液を、65℃で30分間環流させた後、加熱をやめ、ここに上記のようにして得られた水素化ブチルアクリレート化テルピネン100g(0.38モル)をテトラヒドロフラン300mlに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。混合液を65℃で12時間環流させた後、0℃付近に冷却し、水を26ml、4規定水酸化ナトリウム水溶液を26ml、水80mlを順次加えた。灰色の部分がなくなるまで撹拌し、酢酸エチルを加え、油層と水層に分離した。油層を減圧蒸留にて溶媒を除去し、粗生成物89gを得た。これを減圧蒸留(2〜4mmHg、140〜170℃)で精製することにより、式(I)および(II)で表される新規テルペンアルコール系化合物56.3g(収率76.4%、純度98%)を得た。
【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
得られた化合物の分析結果を図1〜4、表1、2に示す。なお、表1は、式(III)と式(IV)の混合物、表2は式(III)と式(IV)の混合物の示した位置を示す。
・分析結果
1)図1:IRチャート(化合物III、IVの混合物) 3318cm−1:O−H伸縮、3000〜2800cm−1:C−H伸縮、1500〜1350cm−1、:C−H変角、1023cm−1、:C−O伸縮
2)図2:GC−MSチャート(化合物III、IVの混合物) m/z=196[M]+が観測された。
3)図3、表1:1H−NMRチャート(化合物III、IVの混合物)
4)図4、表2:13C−NMRチャート(化合物III、IVの混合物)
【0044】
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
応用例1(光硬化材料への応用)
(化合物IおよびIIのエステル化)
ディーンスターク管、冷却管、温度計、撹拌棒を備えた300ml四つ口フラスコに、実施例1で得られた化合物IおよびII20g(0.102モル)とトルエン100g、アクリル酸12.7g(0.176モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル2.5mg、およびイオン交換樹脂(アンバーリスト15E、ロームアンドハース社製)2.0gを仕込んだ。混合液を減圧下100℃で12時間還流させた後、得られた混合液をろ過して触媒をろ別した。次いで、減圧下80℃でトルエンを留去して、アクリレート化合物a、20.6g(収率70%、純度72%)を得た。
【0049】
(硬化性組成物の製造)
上記アクリレート化合物aを40g、(B)光ラジカル重合開始剤としてベンゾフェノン1gを混合し、混合物をフィルターを通して濾過し、本発明の感光性組成物を得た。
【0050】
(硬化収縮率)
上記感光性組成物を25℃の恒温水槽に放置した後、ピクノメーターを用いて、比重D1を測定した。次に得られる塗膜の厚さが100μmになるようにガラス板に上記感光性組成物を挟み込み、メタルハライドランプで約1J/cm2照射した。JIS−Z8807−1976に準じ、この塗膜の固体比重D2を求め、下記計算式(数1)により硬化収縮率を求めた。
硬化収縮率の測定結果を表1に記載した。
【0051】
【数1】
硬化収縮率(%)=((D2−D1)/D2)×100
【0052】
応用例の比較実験1
エチレングリコールジアクリレート40g、ベンゾフェノン1gを混合し、フィルターを通して濾過し、この濾過した組成物を紫外線硬化させた。
実施例1と同様の方法で、硬化前のモノマーの比重、硬化膜の比重より、硬化収縮率(%)を算出した。硬化収縮率の測定結果を表3に記載した。
【0053】
【表3】

【0054】
応用例2
上記(A)アクリレート化合物aを40g、(B)光ラジカル重合開始剤としてベンゾフェノン1gを混合し、溶剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/ソルベントナフサ(50/50)50gを加え、反応温度70℃で機械攪拌を行い、6時間反応させ、樹脂bを得た。
樹脂bを50g、トリグリシジルイソシアヌレート15g、ベンゾフェノン1g、BYK357(ビッグケミー製消泡剤)1g、BYK054(ビッグケミー製表面平滑剤)1g、フタロシアニングリーン(山陽色素製)1g、タルク20g、硫酸バリウム10gを混合し、ニューロング精密工業社製スクリーン印刷機LS15GXを使用し、表面機械研磨を行った銅張積層板に膜厚40μmになるように塗布した。塗布した基板を70℃の乾燥機中に30分間放置し、平行光露光機で露光パターンフィルムを載せて250mJ/cm2の光量を露光した。露光後、1%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.5kg/cm2のスプレー圧で現像を行った。水洗後、160℃、1時間熱風乾燥機に入れ加熱硬化を行った。
得られた硬化膜を有する試験片について、ガラス転移温度(Tg)測定、吸水率の評価を行った。結果を表4に記載した。
【0055】
応用例2の比較実験2
エチレングリコールジアクリレート40g、ベンゾフェノン1gを混合し、実施例2と同様の方法で処理した後、ガラス転移温度(Tg)測定、吸水率の評価を行った。結果を表2に記載した。
【0056】
試験方法および評価方法は次の通りである。
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
塗膜を1度塗り、または2度塗りした基板から剥離し、JIS−C−6481の試験方法に従って、TMA引っ張り試験により測定を行った。
【0057】
(吸水率測定)
サンプルを120℃乾燥機中で一晩置き、十分乾燥させた後、重量(W0)を測定した。
次にこのサンプルをプレッシャークッカー(121℃、2atm.)に1時間入れた。プレッシャークッカーから取り出した後、流水で3分間冷却し布で水分を拭き取り、2分間放置した後、重量(W1)を測定し、下式(数2)により吸水率を求めた。
【0058】
【数2】
吸水率(%)=((W1−W0)/W0)×100
【0059】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の光硬化材料は、接着性が良好であることからコーティング剤や塗料、インクをはじめ電気絶縁材料などとしても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例で得られたテルペンアルコール系化合物(III)、(IV)混合物のIRスペクトルチャートである。
【図2】実施例で得られたテルペンアルコール系化合物(III)、(IV)混合物のGC−MSスペクトルチャートである。
【図3】実施例で得られたテルペンアルコール系化合物(III)、(IV)混合物の1H−NMRチャートである。
【図4】実施例で得られたテルペンアルコール系化合物(III)、(IV)混合物の13C−NMRチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルペン化合物と、(メタ)アクリル酸系化合物をディールズ−アルダー反応させて得られる化合物の誘導体である新規テルペンアルコール系化合物。
【請求項2】
新規テルペンアルコール系化合物が下記の式(I)および/または式(II)で表される、請求項1記載の新規テルペンアルコール系化合物。
【化1】

【化2】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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