新規ビフェニル化合物
【課題】タカサゴシロアリに由来する新規ビフェニル化合物、その製造方法、該化合物を有効成分とする医薬を提供する。
【解決手段】式(1)で示されるビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩。
【効果】新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物は、単独または他の抗癌剤やホルモン療法剤と組み合わせてヒト等の哺乳動物を対象とした癌の予防及び治療に利用できる。
【解決手段】式(1)で示されるビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩。
【効果】新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物は、単独または他の抗癌剤やホルモン療法剤と組み合わせてヒト等の哺乳動物を対象とした癌の予防及び治療に利用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ビフェニル化合物、その製造方法および該ビフェニル化合物を有効成分として含有する医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は日本において1980年頃から死因のトップになり、三大疾患として重要な位置を占めるようになった。その死亡者数は年間約30万人であり、年間死亡者数の約30%に相当する。さらに癌はヒトだけでなく動物に対しても重篤な病気となりうる。
【0003】
このような背景から癌の研究は重要度を増し、数多くの研究が行われてきている。癌の治療においては、外科治療の他に、免疫療法、放射線療法、化学療法等が行われている。化学療法に用いられる抗癌剤は様々なメカニズムにより癌細胞を破壊し、DNA複製・修復機構、テロメアおよびアポトーシスなどが分子標的とされている。特にアポトーシスは、「生理的な細胞死」と言われ、アポトーシスに関連する物質は抗癌剤として注目され、様々な研究が進められてきた(非特許文献1)。
【0004】
従来より、ビフェニル環に各種置換基を有するビフェニル誘導体の中に、抗癌作用を有する化合物が存在することが知られている。非特許文献2および3には、3,5位の水酸基を必須とするビフェニル化合物がアポトーシスの促進および細胞周期の制御による抗癌活性を有することが記載されている。また、特許文献1〜4には、3箇所に水酸基が置換したビフェニル化合物が記載されている。
【0005】
昆虫は全生物種の8割を占めるほど多様化し、様々な環境に適応しており、未知の有用物質の宝庫であると考えられている。これまで様々な昆虫種から抗菌物質や抗癌物質が単離されてきた(特許文献5、非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/066060号
【特許文献2】国際公開第2005/063222号
【特許文献3】国際公開第2002/096867号
【特許文献4】中国特許出願公開第101152251A号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第111516A号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】鶴尾 隆、2004年、最先端の癌研究と治療の新展開、実験医学、22:56−61
【非特許文献2】Pizzirani D,Roberti M,Cavalli A,Grimaudo S,Di Cristina A,Pipitone RM,Gebbia N,Tolomeo M,Recanatini M.Chem Med Chem(2008),3(2),345−355
【非特許文献3】Pizzirani D,Roberti M,Grimaudo S,Di Cristina A,Pipitone RM,Tolomeo M,Recanatini M.J Med Chem.2009;52(21):6936−40
【非特許文献4】Papo,N and Shai,Y.(2005),Cell.Mol.Life.Sci.,62:784−790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、現在臨床使用されている抗癌剤は非特異的なものが多く、正常細胞にも癌細胞と同様に傷害を与えるなど治療効果も限られており、効き方に個人差があることも分かってきた。さらに、副作用や薬剤耐性の問題もあり、新たな観点から、安全性、溶解性、吸収性、生体内安定性などに優れた抗癌剤を開発することが望まれている。
【0009】
昆虫には、これまでに発見されていない生体防御因子を有する可能性があり、新たな抗癌活性物質を探索することにより医療分野や農業分野への応用に結びつけることができる可能性がある。
【0010】
したがって、本発明は、昆虫に由来する新規ビフェニル化合物、その製造方法、該化合物を有効成分として含有する医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、昆虫由来の物質から抗癌活性を有する新規物質を見出すべく鋭意検討した。その結果、タカサゴシロアリの抽出物中にきわめて高い抗癌活性と正常細胞に比べ癌細胞に対する優れた選択性を有し、且つアポトーシス促進作用を有しないことを特徴とする成分が認められ、該成分が式(1)で示されるビフェニル化合物であり、ヒト等の哺乳動物(例、ヒト、ウマ、ウシ、犬、猫、ラット、マウス、ウサギ、ブタおよびサル等)に対する抗癌剤としての有用性をもつことを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.式(1)で示されるビフェニル化合物またはその塩。
【0013】
【化1】
【0014】
2.前項1に記載のビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明の新規ビフェニル化合物は新規の構造を有する抗癌活性物質であり、正常細胞に比べ癌細胞に対する優れた選択性を有し、且つアポトーシス促進作用を有しないことを特徴とするヒト等の哺乳動物に対する抗癌剤として癌の予防および治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】タカサゴシロアリ粗精製画分の各培養細胞(癌細胞と正常細胞)に対する細胞増殖抑制活性を示す図である。
【図2】HPLCによる精製と各フラクションの活性を示す図である。
【図3】FT−ICR−MSによる分子量測定を行った結果を示す図である。
【図4】1H−NMRの結果を示す図である。
【図5】13C−NMRの結果を示す図である。
【図6】HMBCの結果を示す図である。
【図7】HMBCの結果を示す図である。
【図8】HMQCの結果を示す図である。
【図9】COSYの結果を示す図である。
【図10】NOESYスペクトルの結果を示す図である。
【図11】1H−NMRの結果を示す図である。
【図12】MS(ESI)分析の結果を示す図である。
【図13】本発明のビフェニル化合物による、マウス由来繊維芽細胞に対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図14】本発明のビフェニル化合物による、ヒト由来白血病細胞Jurkatに対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図15】本発明のビフェニル化合物による、マウス由来骨髄腫細胞P3−X63に対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図16】本発明のビフェニル化合物による、ヒト由来肺扁平上皮がん細胞RERFに対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図17】本発明のビフェニル化合物による、ヒト由来肺がん細胞VA−13に対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図18】本発明のビフェニル化合物の構造類似化合物による、ヒト由来白血病細胞Jurkatに対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図19】アポトーシス検定実験(電気泳動)の結果を示す図である。
【図20】Caspase阻害剤を用いた解析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明は、タカサゴシロアリより見出した新規ビフェニル化合物に関する。
【0019】
本発明の新規ビフェニル化合物は、以下の工程(1)および(2)を含む方法によりタカサゴシロアリから精製することができる。
(1)タカサゴシロアリの粉砕混合物を得る粉砕工程
(2)タカサゴシロアリの粉砕混合物から本発明の新規ビフェニル化合物を分離する分離工程
以下、工程毎に詳述する。
【0020】
(1)タカサゴシロアリの粉砕混合物を得る粉砕工程
工程(1)は、タカサゴシロアリからタカサゴシロアリの粉砕混合物を得る工程である。まず、タカサゴシロアリをホモジナイザーにより粉砕してタカサゴシロアリの粉砕混合物を得る。タカサゴシロアリの粉砕に用いるホモジナイザーとしては、市販のものを用いることができる。ホモジナイザーの回転数および粉砕時間等は粉砕処理するタカサゴシロアリの量により適宜調整することができる。
【0021】
次いで、タカサゴシロアリの粉砕混合物を遠心分離して不溶画分を沈殿させた後、上清を回収する。遠心分離は、通常7,000gが好ましく、遠心時間は通常10〜30分が好ましく、遠心分離の温度は通常4℃〜室温が好ましい。
【0022】
(2)タカサゴシロアリの粉砕混合物から本発明の新規ビフェニル化合物を精製する精製工程
工程(2)は、工程(1)で得られたタカサゴシロアリの粉砕混合物の上清を必要に応じて、酸(例えば、塩酸、酢酸およびギ酸等)を添加した後、逆相カラムクロマトグラフィーにかけて粗精製した後、高速液体クロマトグラフィーにかけて活性成分を単一成分とする画分を得る工程である。
【0023】
酸としては、特に制限はなく、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)が挙げられる。逆相カラムクロマトグラフィーとしては、例えば、Sep−Pak(登録商標) C18カートリッジ(Waters社製)が挙げられる。
【0024】
逆相カラムクロマトグラフィーの溶出溶媒としては、特に制限はなく、非極性溶媒および極性溶媒並びにこれらの組み合わせを使用することができる。本発明においては、例えば、アセトニトリル、メタノールおよび2−プロパノールが好適に挙げられる。
【0025】
溶出フラクション数、各フラクションの液量については特に制限はないが、抗癌活性または抗癌剤感受性増強活性の高い画分が1フラクションにまとまるような条件、例えば、全体を8フラクション程度に分ける条件が効率的に優れ、好ましい。
【0026】
より高純度の比活性の高い抗癌活性画分または抗癌剤感受性増強活性画分を単離する場合、得られた画分を再度カラムクロマトにかけ精製する操作を加えてもよい。この場合もフラクションの分画数、および液量については特に制限はなく、目的とする抗癌活性または抗癌剤感受性増強活性を有する化合物が高純度かつ収率よく分画できる条件を適宜選択すればよい。
【0027】
逆相カラムクロマトグラフィーにより得られた画分は、室温で減圧または常圧下で濃縮し溶媒を留去し、滅菌精製水等に溶解させて粗抽出画分を得る。
【0028】
次に、逆相カラムクロマトグラフィーにより分画した粗抽出画分を高速液体クロマトグラフィーにかけ、活性成分を単一成分とする画分を得る。用いる担体は、順相および逆相、並びに両方を組み合わせてもよい。また、充填カラムの種類、カラム長、展開溶媒の組成、展開溶媒の流速、圧力および温度等の条件については、目的に適ったものであればよく適宜調整することができる。
【0029】
高速液体クロマトグラフィーに用いる担体としては、例えば、ODS、C4およびC6H5等が挙げられる。充填カラムとしては、例えば、Pegasil ODS、Pegasil C4((株)センシュー科学)等が挙げられる。展開溶媒としては、例えば、アセトニトリル、メタノール、2−プロパノール等が挙げられる。展開溶媒の流速は通常0.5〜5ml/minが好ましく、圧力は通常20〜400barが好ましく、温度は、室温〜40℃が好ましい。
【0030】
本発明の方法の具体例としては、例えば、次の方法である。約4500頭のタカサゴシロアリを、ホモジナイザー(POLYTRON(登録商標)、KINEMATICA社)を用いて粉砕して粉砕混合物を得る。粉砕する温度は4℃〜室温が好ましい。粉砕混合物を遠心分離して不溶画分を沈殿させた後、上清を回収する。遠心分離は、7,000gで行うことが好ましく、時間は30分が好ましく、温度は4℃〜室温が好ましい。上清に酸を最終濃度0.05容量%となるように加え、タカサゴシロアリ粉砕混合物とする。酸としては、逆相カラムクロマトグラフィーによる粗精製工程において使用する溶出液に添加する酸を好適に用いることができ、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いることができる。
【0031】
0.05容量%TFAを含む蒸留水で平衡化したSep−Pak(登録商標) C18カートリッジ(Waters)にタカサゴシロアリ粉砕混合物を吸着させ、0.05容量%TFAを含むアセトニトリル水溶液を用い、アセトニトリル濃度30容量%で溶出する。得られた溶出画分から遠心エバポレーターを用いて溶媒のアセトニトリルを蒸発させた後、45mlの滅菌蒸留水(タカサゴシロアリ1匹あたり10μl)に溶解させて粗抽出画分とする。
【0032】
20容量%アセトニトリル、0.05容量%TFA流速1ml/分で平衡化したPegasilODS((株)センシュー科学)に粗抽出画分をかけ、20分間でアセトニトリル濃度を40容量%まで上昇させ、その後4分間はアセトニトリル濃度40容量%とするグラジエント溶出を行い、フラクションを30秒ごとに収集する。
【0033】
本発明の方法によって、タカサゴシロアリから精製分離される抗癌活性を有する新規ビフェニル化合物は、種々の物理化学的測定(FT−ICR−MSによる分子量測定、1H−NMR、13C−NMR、NOESY、COSY、HMBCおよびHMQCスペクトル等の化学構造分析方法等)により解析することができ、式(1)で示される構造の1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオールである。
【0034】
【化2】
【0035】
本発明の新規ビフェニル化合物は、後述の実施例に示すように下記工程(i)および(ii)を含む一般的な慣用の公知の方法により合成することもできる。
(i)3,3’,4−トリメトキシビフェニルを合成する工程
(ii)3,3’,4−トリメトキシビフェニルから、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を得る工程
以下、工程毎に詳述する。
【0036】
(i)工程(i)は、下記反応式に示すように、パラジウム金属触媒の存在下、ボロン酸誘導体(2)と3−ブロモアニソール(3)を反応させることにより、3,3’,4−トリメトキシビフェニル(4)を合成する工程である。
【化3】
【0037】
アルゴンガス存在下、一般的な慣用の公知の方法に従い、上記ボロン酸誘導体、3−ブロモアニソールおよびリン酸カリウムのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)混合物に、触媒量のPd(PPh3)4を添加する。
【0038】
当該反応混合物を好ましくは70〜100℃まで昇温させて、反応させる。放冷後、反応混合物を水で希釈した後、有機溶媒を添加して分液抽出する。用いる有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、ヘプタンおよびこれらの混合溶液が好適に挙げられる。有機層を水および食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させ、乾燥剤を吸引濾過する。濾液の濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで、3,3’,4−トリメトキシビフェニル(4)を得る。
【0039】
(ii)工程(ii)は、下記反応式に示すように、工程(i)で得られた3,3’,4−トリメトキシビフェニル(4)と三臭化ホウ素(BBr3)を反応させて、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を得る工程である。
【0040】
【化4】
【0041】
一般的な慣用の公知の方法に従い、三臭化ホウ素(BBr3)のジクロロメタン(DCM)溶液に、工程(i)で得られた3,3’,4−トリメトキシビフェニルのジクロロメタン溶液を氷冷下で添加し、3,3’,4−トリメトキシビフェニルのメトキシ基を脱メチル化する。当該反応混合物を氷水に投入し、析出した固体を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を得る。
【0042】
得られた本発明の化合物(1)は、公知の慣用の方法によって目的とする塩に変換することができる。
【0043】
本発明の新規ビフェニル化合物は、後述の実施例に示すように抗癌活性を有しており、例えば、抗癌剤として用いる医薬の有効成分として有用である。後述の実施例に示すように本発明の新規ビフェニル化合物は、白血病細胞(Jurkat細胞等)、骨髄腫細胞(PS−X63細胞等)、肺扁平上皮がん細胞(HT1080細胞等)および肺がん細胞(VA−13細胞等)の細胞増殖を抑制する抗癌活性を示すことが好ましく、特に白血病細胞、骨髄腫細胞および肺扁平上皮癌細胞の細胞増殖を抑制する抗癌活性を示すことが好ましい。
【0044】
本発明の新規ビフェニル化合物は適当な塩基との塩の形で用いることができる。塩基との塩としては、特に制限はないが、ヒト等の哺乳動物の抗癌剤として用いるときは、薬理学的に使用可能なものであれば特に制限はない。好適な例としては、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0045】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物は、ヒト等の哺乳動物の抗癌剤として用いることができる。適用する癌種としては、例えば、白血病、骨肉腫、乳癌、卵巣癌、胃癌、大腸癌、肺癌および頭頚部癌等が挙げられる。
【0046】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物は、癌に対する安全な予防または治療剤として単独またはこれらの癌に有効な他剤を含有または併用して用いることができ、癌の予防または治療目的に応じて、各種の製剤によって投与される。
【0047】
癌に有効な他剤として、例えば、他の抗癌剤(化学療法剤、免疫療法剤および細胞増殖因子並びにその受容体の作用を阻害する薬剤等)またはホルモン療法剤(抗エストロゲン、L H−R H アゴニストおよび抗アンドロゲン等)等を含有または併用してもよい。
【0048】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物を手術等の前または後に使用することによって、薬剤耐性発現の阻止、無病期の延長、癌転移あるいは再発の抑制、延命等の予防及び治療効果が得られる。
【0049】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物の製剤化は一般的な慣用の公知の方法により可能である。
【0050】
剤形としては、各種の形態が癌の予防または治療目的に応じて選択でき、固形製剤としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤およびカプセル剤等が挙げられる。液剤としては、例えば、溶液としての注射剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤および坐剤等が挙げられる。
【0051】
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤および滑沢剤等を使用することができる。
【0052】
賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプンおよび結晶セルロース等が挙げられる。
【0053】
結合剤としては、例えば、水、アルコール類、単シロップ、デンプン液、ゼラチン溶液、メチルセルロース溶液およびヒドロキシプロピルセルロース溶液等が挙げられる。
【0054】
崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸、カカオバターおよび水素添加油等が挙げられる。
【0055】
吸収促進剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩基およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0056】
保湿剤としては、例えば、グリセリンおよびデンプン等が挙げられる。
【0057】
吸着剤としては、例えば、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸、結晶性セルロースおよび軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0058】
滑沢剤としては、タルクおよびステアリン酸塩等が挙げられる。
【0059】
さらに錠剤の場合、必要に応じて、通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠およびフィルムコーティング錠、二層錠ならびに多層錠とすることができる。
【0060】
カプセル剤は、常法に従い、通常本発明のビフェニル化合物を上記で例示した各種の担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。
【0061】
注射剤として調製する場合、液剤、乳剤および懸濁剤の形態に成形するに際しては、希釈剤として、例えば、水、アルコール類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類および植物油類等を使用してもよい。
【0062】
さらに、本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩に水を加え、適切な界面活性剤の存在下に、懸濁性水溶液、さらにはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO−60)等の界面活性剤等を用いた乳濁液として使用してもよい。
【0063】
なお、食塩、ブドウ糖またはグリセリンを医薬製剤中に含有させてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤および無痛化剤等を添加してもよい。
【0064】
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチンおよび半合成グリセライド等を使用してもよい。
【0065】
さらに必要に応じて、着色剤、保存剤、香料、風味剤および甘味剤等の添加剤や他の医薬品を医薬製剤中に含有させることもできる。
【0066】
投与方法には特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、疾患の程度に応じた方法で投与することが好ましい。通常1日〜1ヶ月の間に1〜数回投与され、これを繰り返し実施することもできる。
【0067】
また、投与量は用法、患者の年齢、性別、その他の条件、疾患の程度に応じて適宜考慮されるが、成人1回あたり有効成分の含有量は1〜1000mgとすることが好ましい。
【0068】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩の副作用は、ヒト等の哺乳類の抗癌剤として用いることが可能なレベルである。
【0069】
また、本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を化学試験用の試薬として使用する場合には、一般的に使用される有機溶剤または含水有機溶剤に溶解して用いることができ、例えば、各種癌細胞の培養細胞系へ直接投与すると抗癌活性を示す。
【0070】
使用可能な有機溶剤としては、例えば、メタノールおよびジメチルスルホキシド等を挙げることができる。剤型としては、例えば、粉末、固形剤および有機溶剤または含水有機溶剤に溶解した液体剤などが挙げられる。
【0071】
通常、本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分とする試薬に抗癌活性を発揮させるための効果的な使用量は、0.1〜100μg/mlであるが、適切な使用量は培養癌細胞系の種類や使用目的により異なり、適宜選択することができる。また必要により上記範囲外の量を用いることもできる。
【実施例】
【0072】
[実施例1]タカサゴシロアリからの抗癌活性物質の精製
(1)試料
沖縄県石垣島においてゴキブリ目シロアリ科テングシロアリ亜科のタカサゴシロアリ(Nasutitermes takasagoensis)を採集した。タカサゴシロアリの粉砕混合物を得るため、ホモジナイザー(POLYTRON(登録商標)、KINEMATICA社)を用いて、4℃〜室温にて昆虫の全体を粉砕し、粉砕混合物を得た。粉砕混合物を遠心(7000g、30分、4℃〜室温)し、不溶画分を沈殿させて上清を回収した。上清にトリフルオロ酢酸(TFA)を最終濃度0.05容量%となるように加えて、トリフルオロ酢酸(TFA)含有上清液を得た。
【0073】
0.05容量%TFAを含む蒸留水で平衡化したSep−Pak(登録商標) C18カートリッジ(Waters社製)にタカサゴシロアリの前記トリフルオロ酢酸(TFA)含有上清液を吸着させ、0.05容量%TFAを含むアセトニトリル水溶液を用い、アセトニトリル濃度0容量%、10容量%、20容量%、30容量%、40容量%、50容量%、60容量%、100容量%で溶出した。
【0074】
得られた各溶出画分から、遠心エバポレーターを用いて溶媒のアセトニトリルを蒸発させた後、タカサゴシロアリ一頭当たり10μlになるように45mlの滅菌蒸留水を加えて溶解させた。
【0075】
(2)供試細胞
ヒト由来白血病細胞Jurkat(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、ヒト由来繊維肉腫HT1080(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、マウス由来骨髄腫細胞P3−X63(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、ヒト由来肺癌細胞VA−13(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、ヒト由来肺偏平上皮癌細胞RERF(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、ヒト由来肝臓癌細胞HepG2(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、アフリカミドリザル由来腎臓癌細胞Cos−1(RIKEN独立行政法人理化学研究所)を供試培養細胞として用いた。NIH−3T3(RIKEN独立行政法人理化学研究所)はマウス由来繊維芽細胞であり、正常細胞として癌細胞に対するコントロールとして用いた。
【0076】
Jurkat細胞とP3−X63細胞、HepG2細胞の培養にはRPMI1640培地(Wako和光純薬工業株式会社)を、NIH−3T3細胞、Cos−1細胞の培養にはD−MEM培地(Wako和光純薬工業株式会社)、HT1080細胞とRERFの培養にはMEM培地(Wako和光純薬工業株式会社)、VA−13細胞の培養にはMEM−α培地(Wako和光純薬工業株式会社)を使用した。
【0077】
(3)抗癌活性試験
抗癌活性の測定は滅菌96穴プレート(TPP)を用いて行った。各培養細胞(癌細胞と正常細胞)を8×103細胞/ウェルの濃度になるように各培地に懸濁し、細胞懸濁液90μlと各画分10μlを各ウェルで混合した。37℃のCO2インキュベータ内で24時間インキュベートした後、Cell Counting Kit−8(DOJINDO社)を加え、さらに4時間インキュベートした。
【0078】
その後、マイクロプレートリーダー(APPLISKAN、ThermoScientific)で450nmの吸光度を測定し、細胞の生存率を測定した。コントロールは37℃で24時間インキュベートした後、Cell Counting Kit−8を用いて生細胞由来のホルマザンを発色させ、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定し、その値から培地からの発色の吸光度を引いた値を測定値とした。Cell ViabilityはControlを100%としたときの各フラクションの比較値とした。
【0079】
(4)タカサゴシロアリ粗精製画分の各癌細胞に対する細胞増殖抑制試験
タカサゴシロアリの全体をホモジナイザーで攪拌した後に遠心して、その上清をSep−Pakに吸着させてアセトニトリル濃度0容量%、10容量%、20容量%、30容量%、40容量%、50容量%、60容量%、100容量%の8溶出画分に分けた。各画分を用いて各培養細胞(癌細胞及び正常細胞)に対する細胞増殖抑制活性を調べた結果を図1に示す。
【0080】
図1に示すように、30容量%の画分が正常細胞として用いたマウス由来繊維芽細胞NIH−3T3に対して細胞増殖を抑制しないことが明らかになった。一方、この30容量%画分はマウス由来骨髄腫細胞P3−X63、ヒト由来肺癌細胞VA13細胞に対してそれぞれ100%細胞増殖を抑制する活性を示し、特にヒト由来白血病細胞Jurkatとヒト由来繊維肉腫HT1080に対してそれぞれ100%と98%の細胞増殖を抑制する活性を示した。
【0081】
(5)タカサゴシロアリ由来抗癌活性物質の単離
Sep−pak(登録商標) C18カートリッジ(Waters社)による30容量%アセトニトリル溶出画分についてHPLCを用いた精製を行った。PegasilODS(センシュー科学)を20容量%アセトニトリル、0.05容量%TFA流速1ml/分で平衡化し、20分間でアセトニトリル濃度を40容量%まで上昇させ、その後4分間はアセトニトリル濃度40容量%とするグラジエント溶出を行った。フラクションは30秒ごとに収集した。各フラクションについて、Jurkat細胞を用いた抗癌活性試験を行った。その結果を図2に示す。
【0082】
図2に示すように、フラクション24に活性が見られ、このフラクションは220nmでモニターしたときの一つのピークと一致しており、抗癌活性化合物が単離されたことが分かった。
【0083】
(6)タカサゴシロアリ由来抗癌活性物質の構造解析
得られた抗癌活性物質の質量分析およびNMRスペクトルによる構造解析を行った。FT−ICR−MSによる分子量測定を行った結果を図3に示す。図3に示すように、m/z=201.0558にイオンが検出された。
【0084】
試料を重水に溶解し、1H−NMR、13CNMR、HMBC、HMQC、COSYおよびNOESYスペクトルの測定を行った。1H−NMRの結果を図4に、13CNMRの結果を図5に、HMBCの結果を図6および7に、HMQCの結果を図8に、COSYの結果を図9に、NOESYスペクトルの結果を図10に示す。
【0085】
これらの結果から、得られた抗癌活性物質を、下式(1)で示される構造を有する1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオールと同定した。1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)はこれまでに報告のない新規化合物であった。
【0086】
【化5】
【0087】
[実施例2]1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)の合成
ボロン酸誘導体(2)(30.03g、165.0mmol)、3−ブロモアニソール(20.06g、150.0mmol)およびリン酸カリウム(35.02g、165.0mmol)のDMF溶液(300ml)にアルゴンガスを3分間吹き込んだ。この溶液にPd(PPh3)4(3.47g、3.00mmol)を添加し、アルゴンガスを3分間吹き込んだ。
【0088】
反応混合物を80℃まで昇温させ、1時間攪拌した。放冷後、反応混合物を水(450ml)で希釈した後、酢酸エチル/ヘプタン(容量比1:1、200ml)を添加し、同じ混合有機溶媒にて2回抽出した。抽出した有機層を水(200ml、2回洗浄)および食塩水(100ml、1回洗浄)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤を吸引濾別した。濾液の濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製(溶出溶媒:5%メタノール/クロロホルム)することで、15.44gの3,3’,4−トリメトキシビフェニルを得た。収率は42%であった。
【0089】
次に、三臭化ホウ素(157.9g、596mmol)のジクロロメタン溶液(340ml)に、前記の3,3’,4−トリメトキシビフェニル(15.4g、63.0mmol)のジクロロメタン溶液(150ml)を氷冷下添加した。0℃で3時間攪拌した後、反応混合物を氷水に投入した。
【0090】
析出した固体を濾取し、濾液から水層を分離した。水層を1/5量まで減圧濃縮し、析出した固体を濾取した。先の固体と混合し、メタノールに再溶解させた後、減圧濃縮した。この操作を3回繰り返した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製(溶出溶媒:5%メタノール/クロロホルム)することで、10.95gの化合物を得た。収率は86%であった。
【0091】
得られた化合物を下記条件による1H−NMRおよびMS(ESI)分析により解析した結果、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオールであることが分かった。1H−NMRの結果を図11に、MS(ESI)分析の結果を図12に示す。また、HPLC分析(254nm)の結果、得られた1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)の純度は98%であった。以下の実施例には本実施例の方法により合成した1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を用いた。
【0092】
HPLC分析条件:
カラム:XBridge RP18(Φ4.6×150、3.5μm)
カラム温度:40℃
移動相:40%アセトニトリル/水(0.1% TFA)
流量:0.5ml/min
検出波長:254nm
【0093】
[実施例3]1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)の抗癌活性
ヒト由来白血病細胞(Jurkat)、マウス由来骨髄腫細胞(P3−X63)、ヒト由来肺扁平上皮癌細胞(RERF)、ヒト由来肺癌細胞(VA−13)および対照としてマウス由来繊維芽細胞(NIH−3T3)を各々8×103細胞/ウェルの濃度になるように各培地に懸濁し、異なる濃度(10μM、20μM、40μM、50μM、100μM、200μM、400μM、800μM、1600μM)(最終容量100μl)の1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)の存在下で96穴プレートを用い、5%CO2存在下、37℃にて、24時間培養した。
【0094】
その後、生細胞を染色するため10μlのCell counting kit−8(Dojindo)反応液を加えさらに4時間培養した。450nmの波長で無処理のものと1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を加えたものの吸光度を測定することにより細胞の50%増殖抑制濃度(IC50)を決定した。その結果を表1および図13〜17に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1および図13〜17に示すように、本発明の新規ビフェニル化合物は、正常細胞に比べ癌細胞の増殖を特異的に抑制し、特に、白血病細胞、骨髄腫細胞、上皮癌細胞の増殖を抑えることが分かった。
【0097】
[実施例4]構造類似ビフェニル化合物の抗癌活性
1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)に代えて1,1’−ビフェニル−2−オール、1,1’−ビフェニル−4−オール、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、1,1’−ビフェニルを用いた以外は、実施例3と同様の手順でヒト由来白血病細胞(Jurkat)を用いて、細胞の50%増殖抑制濃度(IC50)を決定した。その結果を図18に示す。
【0098】
図18に示すように、本発明の新規ビフェニル化合物の構造類似ビフェニル化合物である1,1’−ビフェニル−2−オール、1,1’−ビフェニル−4−オール、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、1,1’−ビフェニルは、ヒト由来白血病細胞(Jurkat)に対し、抗癌活性を示さなかった。この結果から、本発明の新規ビフェニル化合物の抗癌活性は、本発明の新規ビフェニル化合物特有の構造によるものであることが分かった。
【0099】
[実施例5]アポトーシスについての解析
(1)アポトーシス検定実験(電気泳動)
i)800μlの培養液で5%CO2存在下、3時間、37℃にて培養した3×106細胞/ウェルのヒト由来白血病細胞Jurkat、ii)を10μMのアポトーシス誘導剤(Actinomycin D)を含む800μlの培養液で3時間、37℃にて培養した3×106細胞/ウェルのヒト由来白血病細胞Jurkat、iii)50μMの1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を含む800μlの培養液で3時間、37℃にて培養した3×106細胞/ウェルのヒト由来白血病細胞Jurkat、を調製した。その後、i)、ii)、iii)の細胞からDNAを抽出し、アガロース電気泳動でDNAの断片化を調べた。その結果を図19に示す。
【0100】
図19に示すように、Actinomycin D存在下ではDNAの断片化が起こり、アポトーシスが確認された。一方、本発明の新規ビフェニル化合物の存在下では無処理の場合と同様に、DNA断片化は確認されなかった。この結果から、本発明の新規ビフェニル化合物はアポトーシスを引き起こさないことが示唆され、本発明の新規ビフェニル化合物による抗癌活性は、アポトーシス促進作用によるものではないことが分かった。
【0101】
(2)Caspase阻害剤を用いた解析
アポトーシスにはCaspaseという酵素が関与することが知られているが、その阻害剤であるZ−VAD−FMKを用いて本発明の新規ビフェニル化合物が引き起こす癌細胞(ヒト由来白血病細胞、Jurkat)の増殖阻害に与える影響を調べた。
【0102】
まず、8×103細胞/ウェルのヒト由来白血病細胞(Jurkat)を100μlの培養液で、5%CO2存在下、24時間、37℃にて培養した。次に同じ条件で50μMのZ−VAD−FMK存在下で培養した。同様に、Actinomycin D(10μM)のみを加えたもの、あるいはActinomycin D(10μM)とZ−VAD−FMK(50μM)を同時に加えたものを同じ条件で培養した。また、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)(50μM)のみを加えたもの、あるいは1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)(50μM)とZ−VAD−FMK(50μM)を同時に加えたものを同じ条件で培養した。24時間後、抗癌活性の項目で述べた方法で生細胞数(%)を決定した。その結果を図20に示す。
【0103】
図20に示すように、Actinomycin DはCaspase阻害剤(Z−VAD−FMK)の強い影響を受けたが、本発明の新規ビフェニル化合物はその影響を全く受けないことが明らかとなった。
【0104】
したがって、図19および図20に示す結果から、本発明の新規ビフェニル化合物はアポトーシスを引き起こさないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物は、単独または他の抗癌剤やホルモン療法剤と組み合わせてヒト等の哺乳動物を対象とした癌の予防及び治療に利用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ビフェニル化合物、その製造方法および該ビフェニル化合物を有効成分として含有する医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は日本において1980年頃から死因のトップになり、三大疾患として重要な位置を占めるようになった。その死亡者数は年間約30万人であり、年間死亡者数の約30%に相当する。さらに癌はヒトだけでなく動物に対しても重篤な病気となりうる。
【0003】
このような背景から癌の研究は重要度を増し、数多くの研究が行われてきている。癌の治療においては、外科治療の他に、免疫療法、放射線療法、化学療法等が行われている。化学療法に用いられる抗癌剤は様々なメカニズムにより癌細胞を破壊し、DNA複製・修復機構、テロメアおよびアポトーシスなどが分子標的とされている。特にアポトーシスは、「生理的な細胞死」と言われ、アポトーシスに関連する物質は抗癌剤として注目され、様々な研究が進められてきた(非特許文献1)。
【0004】
従来より、ビフェニル環に各種置換基を有するビフェニル誘導体の中に、抗癌作用を有する化合物が存在することが知られている。非特許文献2および3には、3,5位の水酸基を必須とするビフェニル化合物がアポトーシスの促進および細胞周期の制御による抗癌活性を有することが記載されている。また、特許文献1〜4には、3箇所に水酸基が置換したビフェニル化合物が記載されている。
【0005】
昆虫は全生物種の8割を占めるほど多様化し、様々な環境に適応しており、未知の有用物質の宝庫であると考えられている。これまで様々な昆虫種から抗菌物質や抗癌物質が単離されてきた(特許文献5、非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/066060号
【特許文献2】国際公開第2005/063222号
【特許文献3】国際公開第2002/096867号
【特許文献4】中国特許出願公開第101152251A号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第111516A号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】鶴尾 隆、2004年、最先端の癌研究と治療の新展開、実験医学、22:56−61
【非特許文献2】Pizzirani D,Roberti M,Cavalli A,Grimaudo S,Di Cristina A,Pipitone RM,Gebbia N,Tolomeo M,Recanatini M.Chem Med Chem(2008),3(2),345−355
【非特許文献3】Pizzirani D,Roberti M,Grimaudo S,Di Cristina A,Pipitone RM,Tolomeo M,Recanatini M.J Med Chem.2009;52(21):6936−40
【非特許文献4】Papo,N and Shai,Y.(2005),Cell.Mol.Life.Sci.,62:784−790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、現在臨床使用されている抗癌剤は非特異的なものが多く、正常細胞にも癌細胞と同様に傷害を与えるなど治療効果も限られており、効き方に個人差があることも分かってきた。さらに、副作用や薬剤耐性の問題もあり、新たな観点から、安全性、溶解性、吸収性、生体内安定性などに優れた抗癌剤を開発することが望まれている。
【0009】
昆虫には、これまでに発見されていない生体防御因子を有する可能性があり、新たな抗癌活性物質を探索することにより医療分野や農業分野への応用に結びつけることができる可能性がある。
【0010】
したがって、本発明は、昆虫に由来する新規ビフェニル化合物、その製造方法、該化合物を有効成分として含有する医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、昆虫由来の物質から抗癌活性を有する新規物質を見出すべく鋭意検討した。その結果、タカサゴシロアリの抽出物中にきわめて高い抗癌活性と正常細胞に比べ癌細胞に対する優れた選択性を有し、且つアポトーシス促進作用を有しないことを特徴とする成分が認められ、該成分が式(1)で示されるビフェニル化合物であり、ヒト等の哺乳動物(例、ヒト、ウマ、ウシ、犬、猫、ラット、マウス、ウサギ、ブタおよびサル等)に対する抗癌剤としての有用性をもつことを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.式(1)で示されるビフェニル化合物またはその塩。
【0013】
【化1】
【0014】
2.前項1に記載のビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明の新規ビフェニル化合物は新規の構造を有する抗癌活性物質であり、正常細胞に比べ癌細胞に対する優れた選択性を有し、且つアポトーシス促進作用を有しないことを特徴とするヒト等の哺乳動物に対する抗癌剤として癌の予防および治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】タカサゴシロアリ粗精製画分の各培養細胞(癌細胞と正常細胞)に対する細胞増殖抑制活性を示す図である。
【図2】HPLCによる精製と各フラクションの活性を示す図である。
【図3】FT−ICR−MSによる分子量測定を行った結果を示す図である。
【図4】1H−NMRの結果を示す図である。
【図5】13C−NMRの結果を示す図である。
【図6】HMBCの結果を示す図である。
【図7】HMBCの結果を示す図である。
【図8】HMQCの結果を示す図である。
【図9】COSYの結果を示す図である。
【図10】NOESYスペクトルの結果を示す図である。
【図11】1H−NMRの結果を示す図である。
【図12】MS(ESI)分析の結果を示す図である。
【図13】本発明のビフェニル化合物による、マウス由来繊維芽細胞に対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図14】本発明のビフェニル化合物による、ヒト由来白血病細胞Jurkatに対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図15】本発明のビフェニル化合物による、マウス由来骨髄腫細胞P3−X63に対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図16】本発明のビフェニル化合物による、ヒト由来肺扁平上皮がん細胞RERFに対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図17】本発明のビフェニル化合物による、ヒト由来肺がん細胞VA−13に対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図18】本発明のビフェニル化合物の構造類似化合物による、ヒト由来白血病細胞Jurkatに対する50%増殖抑制濃度(IC50)を解析した図である。
【図19】アポトーシス検定実験(電気泳動)の結果を示す図である。
【図20】Caspase阻害剤を用いた解析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明は、タカサゴシロアリより見出した新規ビフェニル化合物に関する。
【0019】
本発明の新規ビフェニル化合物は、以下の工程(1)および(2)を含む方法によりタカサゴシロアリから精製することができる。
(1)タカサゴシロアリの粉砕混合物を得る粉砕工程
(2)タカサゴシロアリの粉砕混合物から本発明の新規ビフェニル化合物を分離する分離工程
以下、工程毎に詳述する。
【0020】
(1)タカサゴシロアリの粉砕混合物を得る粉砕工程
工程(1)は、タカサゴシロアリからタカサゴシロアリの粉砕混合物を得る工程である。まず、タカサゴシロアリをホモジナイザーにより粉砕してタカサゴシロアリの粉砕混合物を得る。タカサゴシロアリの粉砕に用いるホモジナイザーとしては、市販のものを用いることができる。ホモジナイザーの回転数および粉砕時間等は粉砕処理するタカサゴシロアリの量により適宜調整することができる。
【0021】
次いで、タカサゴシロアリの粉砕混合物を遠心分離して不溶画分を沈殿させた後、上清を回収する。遠心分離は、通常7,000gが好ましく、遠心時間は通常10〜30分が好ましく、遠心分離の温度は通常4℃〜室温が好ましい。
【0022】
(2)タカサゴシロアリの粉砕混合物から本発明の新規ビフェニル化合物を精製する精製工程
工程(2)は、工程(1)で得られたタカサゴシロアリの粉砕混合物の上清を必要に応じて、酸(例えば、塩酸、酢酸およびギ酸等)を添加した後、逆相カラムクロマトグラフィーにかけて粗精製した後、高速液体クロマトグラフィーにかけて活性成分を単一成分とする画分を得る工程である。
【0023】
酸としては、特に制限はなく、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)が挙げられる。逆相カラムクロマトグラフィーとしては、例えば、Sep−Pak(登録商標) C18カートリッジ(Waters社製)が挙げられる。
【0024】
逆相カラムクロマトグラフィーの溶出溶媒としては、特に制限はなく、非極性溶媒および極性溶媒並びにこれらの組み合わせを使用することができる。本発明においては、例えば、アセトニトリル、メタノールおよび2−プロパノールが好適に挙げられる。
【0025】
溶出フラクション数、各フラクションの液量については特に制限はないが、抗癌活性または抗癌剤感受性増強活性の高い画分が1フラクションにまとまるような条件、例えば、全体を8フラクション程度に分ける条件が効率的に優れ、好ましい。
【0026】
より高純度の比活性の高い抗癌活性画分または抗癌剤感受性増強活性画分を単離する場合、得られた画分を再度カラムクロマトにかけ精製する操作を加えてもよい。この場合もフラクションの分画数、および液量については特に制限はなく、目的とする抗癌活性または抗癌剤感受性増強活性を有する化合物が高純度かつ収率よく分画できる条件を適宜選択すればよい。
【0027】
逆相カラムクロマトグラフィーにより得られた画分は、室温で減圧または常圧下で濃縮し溶媒を留去し、滅菌精製水等に溶解させて粗抽出画分を得る。
【0028】
次に、逆相カラムクロマトグラフィーにより分画した粗抽出画分を高速液体クロマトグラフィーにかけ、活性成分を単一成分とする画分を得る。用いる担体は、順相および逆相、並びに両方を組み合わせてもよい。また、充填カラムの種類、カラム長、展開溶媒の組成、展開溶媒の流速、圧力および温度等の条件については、目的に適ったものであればよく適宜調整することができる。
【0029】
高速液体クロマトグラフィーに用いる担体としては、例えば、ODS、C4およびC6H5等が挙げられる。充填カラムとしては、例えば、Pegasil ODS、Pegasil C4((株)センシュー科学)等が挙げられる。展開溶媒としては、例えば、アセトニトリル、メタノール、2−プロパノール等が挙げられる。展開溶媒の流速は通常0.5〜5ml/minが好ましく、圧力は通常20〜400barが好ましく、温度は、室温〜40℃が好ましい。
【0030】
本発明の方法の具体例としては、例えば、次の方法である。約4500頭のタカサゴシロアリを、ホモジナイザー(POLYTRON(登録商標)、KINEMATICA社)を用いて粉砕して粉砕混合物を得る。粉砕する温度は4℃〜室温が好ましい。粉砕混合物を遠心分離して不溶画分を沈殿させた後、上清を回収する。遠心分離は、7,000gで行うことが好ましく、時間は30分が好ましく、温度は4℃〜室温が好ましい。上清に酸を最終濃度0.05容量%となるように加え、タカサゴシロアリ粉砕混合物とする。酸としては、逆相カラムクロマトグラフィーによる粗精製工程において使用する溶出液に添加する酸を好適に用いることができ、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いることができる。
【0031】
0.05容量%TFAを含む蒸留水で平衡化したSep−Pak(登録商標) C18カートリッジ(Waters)にタカサゴシロアリ粉砕混合物を吸着させ、0.05容量%TFAを含むアセトニトリル水溶液を用い、アセトニトリル濃度30容量%で溶出する。得られた溶出画分から遠心エバポレーターを用いて溶媒のアセトニトリルを蒸発させた後、45mlの滅菌蒸留水(タカサゴシロアリ1匹あたり10μl)に溶解させて粗抽出画分とする。
【0032】
20容量%アセトニトリル、0.05容量%TFA流速1ml/分で平衡化したPegasilODS((株)センシュー科学)に粗抽出画分をかけ、20分間でアセトニトリル濃度を40容量%まで上昇させ、その後4分間はアセトニトリル濃度40容量%とするグラジエント溶出を行い、フラクションを30秒ごとに収集する。
【0033】
本発明の方法によって、タカサゴシロアリから精製分離される抗癌活性を有する新規ビフェニル化合物は、種々の物理化学的測定(FT−ICR−MSによる分子量測定、1H−NMR、13C−NMR、NOESY、COSY、HMBCおよびHMQCスペクトル等の化学構造分析方法等)により解析することができ、式(1)で示される構造の1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオールである。
【0034】
【化2】
【0035】
本発明の新規ビフェニル化合物は、後述の実施例に示すように下記工程(i)および(ii)を含む一般的な慣用の公知の方法により合成することもできる。
(i)3,3’,4−トリメトキシビフェニルを合成する工程
(ii)3,3’,4−トリメトキシビフェニルから、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を得る工程
以下、工程毎に詳述する。
【0036】
(i)工程(i)は、下記反応式に示すように、パラジウム金属触媒の存在下、ボロン酸誘導体(2)と3−ブロモアニソール(3)を反応させることにより、3,3’,4−トリメトキシビフェニル(4)を合成する工程である。
【化3】
【0037】
アルゴンガス存在下、一般的な慣用の公知の方法に従い、上記ボロン酸誘導体、3−ブロモアニソールおよびリン酸カリウムのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)混合物に、触媒量のPd(PPh3)4を添加する。
【0038】
当該反応混合物を好ましくは70〜100℃まで昇温させて、反応させる。放冷後、反応混合物を水で希釈した後、有機溶媒を添加して分液抽出する。用いる有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、ヘプタンおよびこれらの混合溶液が好適に挙げられる。有機層を水および食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させ、乾燥剤を吸引濾過する。濾液の濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで、3,3’,4−トリメトキシビフェニル(4)を得る。
【0039】
(ii)工程(ii)は、下記反応式に示すように、工程(i)で得られた3,3’,4−トリメトキシビフェニル(4)と三臭化ホウ素(BBr3)を反応させて、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を得る工程である。
【0040】
【化4】
【0041】
一般的な慣用の公知の方法に従い、三臭化ホウ素(BBr3)のジクロロメタン(DCM)溶液に、工程(i)で得られた3,3’,4−トリメトキシビフェニルのジクロロメタン溶液を氷冷下で添加し、3,3’,4−トリメトキシビフェニルのメトキシ基を脱メチル化する。当該反応混合物を氷水に投入し、析出した固体を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することで、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を得る。
【0042】
得られた本発明の化合物(1)は、公知の慣用の方法によって目的とする塩に変換することができる。
【0043】
本発明の新規ビフェニル化合物は、後述の実施例に示すように抗癌活性を有しており、例えば、抗癌剤として用いる医薬の有効成分として有用である。後述の実施例に示すように本発明の新規ビフェニル化合物は、白血病細胞(Jurkat細胞等)、骨髄腫細胞(PS−X63細胞等)、肺扁平上皮がん細胞(HT1080細胞等)および肺がん細胞(VA−13細胞等)の細胞増殖を抑制する抗癌活性を示すことが好ましく、特に白血病細胞、骨髄腫細胞および肺扁平上皮癌細胞の細胞増殖を抑制する抗癌活性を示すことが好ましい。
【0044】
本発明の新規ビフェニル化合物は適当な塩基との塩の形で用いることができる。塩基との塩としては、特に制限はないが、ヒト等の哺乳動物の抗癌剤として用いるときは、薬理学的に使用可能なものであれば特に制限はない。好適な例としては、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0045】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物は、ヒト等の哺乳動物の抗癌剤として用いることができる。適用する癌種としては、例えば、白血病、骨肉腫、乳癌、卵巣癌、胃癌、大腸癌、肺癌および頭頚部癌等が挙げられる。
【0046】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物は、癌に対する安全な予防または治療剤として単独またはこれらの癌に有効な他剤を含有または併用して用いることができ、癌の予防または治療目的に応じて、各種の製剤によって投与される。
【0047】
癌に有効な他剤として、例えば、他の抗癌剤(化学療法剤、免疫療法剤および細胞増殖因子並びにその受容体の作用を阻害する薬剤等)またはホルモン療法剤(抗エストロゲン、L H−R H アゴニストおよび抗アンドロゲン等)等を含有または併用してもよい。
【0048】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物を手術等の前または後に使用することによって、薬剤耐性発現の阻止、無病期の延長、癌転移あるいは再発の抑制、延命等の予防及び治療効果が得られる。
【0049】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を含有する医薬組成物の製剤化は一般的な慣用の公知の方法により可能である。
【0050】
剤形としては、各種の形態が癌の予防または治療目的に応じて選択でき、固形製剤としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤およびカプセル剤等が挙げられる。液剤としては、例えば、溶液としての注射剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤および坐剤等が挙げられる。
【0051】
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤および滑沢剤等を使用することができる。
【0052】
賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプンおよび結晶セルロース等が挙げられる。
【0053】
結合剤としては、例えば、水、アルコール類、単シロップ、デンプン液、ゼラチン溶液、メチルセルロース溶液およびヒドロキシプロピルセルロース溶液等が挙げられる。
【0054】
崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸、カカオバターおよび水素添加油等が挙げられる。
【0055】
吸収促進剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩基およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0056】
保湿剤としては、例えば、グリセリンおよびデンプン等が挙げられる。
【0057】
吸着剤としては、例えば、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸、結晶性セルロースおよび軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0058】
滑沢剤としては、タルクおよびステアリン酸塩等が挙げられる。
【0059】
さらに錠剤の場合、必要に応じて、通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠およびフィルムコーティング錠、二層錠ならびに多層錠とすることができる。
【0060】
カプセル剤は、常法に従い、通常本発明のビフェニル化合物を上記で例示した各種の担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。
【0061】
注射剤として調製する場合、液剤、乳剤および懸濁剤の形態に成形するに際しては、希釈剤として、例えば、水、アルコール類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類および植物油類等を使用してもよい。
【0062】
さらに、本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩に水を加え、適切な界面活性剤の存在下に、懸濁性水溶液、さらにはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO−60)等の界面活性剤等を用いた乳濁液として使用してもよい。
【0063】
なお、食塩、ブドウ糖またはグリセリンを医薬製剤中に含有させてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤および無痛化剤等を添加してもよい。
【0064】
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチンおよび半合成グリセライド等を使用してもよい。
【0065】
さらに必要に応じて、着色剤、保存剤、香料、風味剤および甘味剤等の添加剤や他の医薬品を医薬製剤中に含有させることもできる。
【0066】
投与方法には特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、疾患の程度に応じた方法で投与することが好ましい。通常1日〜1ヶ月の間に1〜数回投与され、これを繰り返し実施することもできる。
【0067】
また、投与量は用法、患者の年齢、性別、その他の条件、疾患の程度に応じて適宜考慮されるが、成人1回あたり有効成分の含有量は1〜1000mgとすることが好ましい。
【0068】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩の副作用は、ヒト等の哺乳類の抗癌剤として用いることが可能なレベルである。
【0069】
また、本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を化学試験用の試薬として使用する場合には、一般的に使用される有機溶剤または含水有機溶剤に溶解して用いることができ、例えば、各種癌細胞の培養細胞系へ直接投与すると抗癌活性を示す。
【0070】
使用可能な有機溶剤としては、例えば、メタノールおよびジメチルスルホキシド等を挙げることができる。剤型としては、例えば、粉末、固形剤および有機溶剤または含水有機溶剤に溶解した液体剤などが挙げられる。
【0071】
通常、本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分とする試薬に抗癌活性を発揮させるための効果的な使用量は、0.1〜100μg/mlであるが、適切な使用量は培養癌細胞系の種類や使用目的により異なり、適宜選択することができる。また必要により上記範囲外の量を用いることもできる。
【実施例】
【0072】
[実施例1]タカサゴシロアリからの抗癌活性物質の精製
(1)試料
沖縄県石垣島においてゴキブリ目シロアリ科テングシロアリ亜科のタカサゴシロアリ(Nasutitermes takasagoensis)を採集した。タカサゴシロアリの粉砕混合物を得るため、ホモジナイザー(POLYTRON(登録商標)、KINEMATICA社)を用いて、4℃〜室温にて昆虫の全体を粉砕し、粉砕混合物を得た。粉砕混合物を遠心(7000g、30分、4℃〜室温)し、不溶画分を沈殿させて上清を回収した。上清にトリフルオロ酢酸(TFA)を最終濃度0.05容量%となるように加えて、トリフルオロ酢酸(TFA)含有上清液を得た。
【0073】
0.05容量%TFAを含む蒸留水で平衡化したSep−Pak(登録商標) C18カートリッジ(Waters社製)にタカサゴシロアリの前記トリフルオロ酢酸(TFA)含有上清液を吸着させ、0.05容量%TFAを含むアセトニトリル水溶液を用い、アセトニトリル濃度0容量%、10容量%、20容量%、30容量%、40容量%、50容量%、60容量%、100容量%で溶出した。
【0074】
得られた各溶出画分から、遠心エバポレーターを用いて溶媒のアセトニトリルを蒸発させた後、タカサゴシロアリ一頭当たり10μlになるように45mlの滅菌蒸留水を加えて溶解させた。
【0075】
(2)供試細胞
ヒト由来白血病細胞Jurkat(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、ヒト由来繊維肉腫HT1080(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、マウス由来骨髄腫細胞P3−X63(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、ヒト由来肺癌細胞VA−13(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、ヒト由来肺偏平上皮癌細胞RERF(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、ヒト由来肝臓癌細胞HepG2(RIKEN独立行政法人理化学研究所)、アフリカミドリザル由来腎臓癌細胞Cos−1(RIKEN独立行政法人理化学研究所)を供試培養細胞として用いた。NIH−3T3(RIKEN独立行政法人理化学研究所)はマウス由来繊維芽細胞であり、正常細胞として癌細胞に対するコントロールとして用いた。
【0076】
Jurkat細胞とP3−X63細胞、HepG2細胞の培養にはRPMI1640培地(Wako和光純薬工業株式会社)を、NIH−3T3細胞、Cos−1細胞の培養にはD−MEM培地(Wako和光純薬工業株式会社)、HT1080細胞とRERFの培養にはMEM培地(Wako和光純薬工業株式会社)、VA−13細胞の培養にはMEM−α培地(Wako和光純薬工業株式会社)を使用した。
【0077】
(3)抗癌活性試験
抗癌活性の測定は滅菌96穴プレート(TPP)を用いて行った。各培養細胞(癌細胞と正常細胞)を8×103細胞/ウェルの濃度になるように各培地に懸濁し、細胞懸濁液90μlと各画分10μlを各ウェルで混合した。37℃のCO2インキュベータ内で24時間インキュベートした後、Cell Counting Kit−8(DOJINDO社)を加え、さらに4時間インキュベートした。
【0078】
その後、マイクロプレートリーダー(APPLISKAN、ThermoScientific)で450nmの吸光度を測定し、細胞の生存率を測定した。コントロールは37℃で24時間インキュベートした後、Cell Counting Kit−8を用いて生細胞由来のホルマザンを発色させ、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定し、その値から培地からの発色の吸光度を引いた値を測定値とした。Cell ViabilityはControlを100%としたときの各フラクションの比較値とした。
【0079】
(4)タカサゴシロアリ粗精製画分の各癌細胞に対する細胞増殖抑制試験
タカサゴシロアリの全体をホモジナイザーで攪拌した後に遠心して、その上清をSep−Pakに吸着させてアセトニトリル濃度0容量%、10容量%、20容量%、30容量%、40容量%、50容量%、60容量%、100容量%の8溶出画分に分けた。各画分を用いて各培養細胞(癌細胞及び正常細胞)に対する細胞増殖抑制活性を調べた結果を図1に示す。
【0080】
図1に示すように、30容量%の画分が正常細胞として用いたマウス由来繊維芽細胞NIH−3T3に対して細胞増殖を抑制しないことが明らかになった。一方、この30容量%画分はマウス由来骨髄腫細胞P3−X63、ヒト由来肺癌細胞VA13細胞に対してそれぞれ100%細胞増殖を抑制する活性を示し、特にヒト由来白血病細胞Jurkatとヒト由来繊維肉腫HT1080に対してそれぞれ100%と98%の細胞増殖を抑制する活性を示した。
【0081】
(5)タカサゴシロアリ由来抗癌活性物質の単離
Sep−pak(登録商標) C18カートリッジ(Waters社)による30容量%アセトニトリル溶出画分についてHPLCを用いた精製を行った。PegasilODS(センシュー科学)を20容量%アセトニトリル、0.05容量%TFA流速1ml/分で平衡化し、20分間でアセトニトリル濃度を40容量%まで上昇させ、その後4分間はアセトニトリル濃度40容量%とするグラジエント溶出を行った。フラクションは30秒ごとに収集した。各フラクションについて、Jurkat細胞を用いた抗癌活性試験を行った。その結果を図2に示す。
【0082】
図2に示すように、フラクション24に活性が見られ、このフラクションは220nmでモニターしたときの一つのピークと一致しており、抗癌活性化合物が単離されたことが分かった。
【0083】
(6)タカサゴシロアリ由来抗癌活性物質の構造解析
得られた抗癌活性物質の質量分析およびNMRスペクトルによる構造解析を行った。FT−ICR−MSによる分子量測定を行った結果を図3に示す。図3に示すように、m/z=201.0558にイオンが検出された。
【0084】
試料を重水に溶解し、1H−NMR、13CNMR、HMBC、HMQC、COSYおよびNOESYスペクトルの測定を行った。1H−NMRの結果を図4に、13CNMRの結果を図5に、HMBCの結果を図6および7に、HMQCの結果を図8に、COSYの結果を図9に、NOESYスペクトルの結果を図10に示す。
【0085】
これらの結果から、得られた抗癌活性物質を、下式(1)で示される構造を有する1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオールと同定した。1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)はこれまでに報告のない新規化合物であった。
【0086】
【化5】
【0087】
[実施例2]1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)の合成
ボロン酸誘導体(2)(30.03g、165.0mmol)、3−ブロモアニソール(20.06g、150.0mmol)およびリン酸カリウム(35.02g、165.0mmol)のDMF溶液(300ml)にアルゴンガスを3分間吹き込んだ。この溶液にPd(PPh3)4(3.47g、3.00mmol)を添加し、アルゴンガスを3分間吹き込んだ。
【0088】
反応混合物を80℃まで昇温させ、1時間攪拌した。放冷後、反応混合物を水(450ml)で希釈した後、酢酸エチル/ヘプタン(容量比1:1、200ml)を添加し、同じ混合有機溶媒にて2回抽出した。抽出した有機層を水(200ml、2回洗浄)および食塩水(100ml、1回洗浄)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥剤を吸引濾別した。濾液の濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製(溶出溶媒:5%メタノール/クロロホルム)することで、15.44gの3,3’,4−トリメトキシビフェニルを得た。収率は42%であった。
【0089】
次に、三臭化ホウ素(157.9g、596mmol)のジクロロメタン溶液(340ml)に、前記の3,3’,4−トリメトキシビフェニル(15.4g、63.0mmol)のジクロロメタン溶液(150ml)を氷冷下添加した。0℃で3時間攪拌した後、反応混合物を氷水に投入した。
【0090】
析出した固体を濾取し、濾液から水層を分離した。水層を1/5量まで減圧濃縮し、析出した固体を濾取した。先の固体と混合し、メタノールに再溶解させた後、減圧濃縮した。この操作を3回繰り返した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製(溶出溶媒:5%メタノール/クロロホルム)することで、10.95gの化合物を得た。収率は86%であった。
【0091】
得られた化合物を下記条件による1H−NMRおよびMS(ESI)分析により解析した結果、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオールであることが分かった。1H−NMRの結果を図11に、MS(ESI)分析の結果を図12に示す。また、HPLC分析(254nm)の結果、得られた1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)の純度は98%であった。以下の実施例には本実施例の方法により合成した1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を用いた。
【0092】
HPLC分析条件:
カラム:XBridge RP18(Φ4.6×150、3.5μm)
カラム温度:40℃
移動相:40%アセトニトリル/水(0.1% TFA)
流量:0.5ml/min
検出波長:254nm
【0093】
[実施例3]1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)の抗癌活性
ヒト由来白血病細胞(Jurkat)、マウス由来骨髄腫細胞(P3−X63)、ヒト由来肺扁平上皮癌細胞(RERF)、ヒト由来肺癌細胞(VA−13)および対照としてマウス由来繊維芽細胞(NIH−3T3)を各々8×103細胞/ウェルの濃度になるように各培地に懸濁し、異なる濃度(10μM、20μM、40μM、50μM、100μM、200μM、400μM、800μM、1600μM)(最終容量100μl)の1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)の存在下で96穴プレートを用い、5%CO2存在下、37℃にて、24時間培養した。
【0094】
その後、生細胞を染色するため10μlのCell counting kit−8(Dojindo)反応液を加えさらに4時間培養した。450nmの波長で無処理のものと1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を加えたものの吸光度を測定することにより細胞の50%増殖抑制濃度(IC50)を決定した。その結果を表1および図13〜17に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1および図13〜17に示すように、本発明の新規ビフェニル化合物は、正常細胞に比べ癌細胞の増殖を特異的に抑制し、特に、白血病細胞、骨髄腫細胞、上皮癌細胞の増殖を抑えることが分かった。
【0097】
[実施例4]構造類似ビフェニル化合物の抗癌活性
1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)に代えて1,1’−ビフェニル−2−オール、1,1’−ビフェニル−4−オール、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、1,1’−ビフェニルを用いた以外は、実施例3と同様の手順でヒト由来白血病細胞(Jurkat)を用いて、細胞の50%増殖抑制濃度(IC50)を決定した。その結果を図18に示す。
【0098】
図18に示すように、本発明の新規ビフェニル化合物の構造類似ビフェニル化合物である1,1’−ビフェニル−2−オール、1,1’−ビフェニル−4−オール、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール、1,1’−ビフェニルは、ヒト由来白血病細胞(Jurkat)に対し、抗癌活性を示さなかった。この結果から、本発明の新規ビフェニル化合物の抗癌活性は、本発明の新規ビフェニル化合物特有の構造によるものであることが分かった。
【0099】
[実施例5]アポトーシスについての解析
(1)アポトーシス検定実験(電気泳動)
i)800μlの培養液で5%CO2存在下、3時間、37℃にて培養した3×106細胞/ウェルのヒト由来白血病細胞Jurkat、ii)を10μMのアポトーシス誘導剤(Actinomycin D)を含む800μlの培養液で3時間、37℃にて培養した3×106細胞/ウェルのヒト由来白血病細胞Jurkat、iii)50μMの1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)を含む800μlの培養液で3時間、37℃にて培養した3×106細胞/ウェルのヒト由来白血病細胞Jurkat、を調製した。その後、i)、ii)、iii)の細胞からDNAを抽出し、アガロース電気泳動でDNAの断片化を調べた。その結果を図19に示す。
【0100】
図19に示すように、Actinomycin D存在下ではDNAの断片化が起こり、アポトーシスが確認された。一方、本発明の新規ビフェニル化合物の存在下では無処理の場合と同様に、DNA断片化は確認されなかった。この結果から、本発明の新規ビフェニル化合物はアポトーシスを引き起こさないことが示唆され、本発明の新規ビフェニル化合物による抗癌活性は、アポトーシス促進作用によるものではないことが分かった。
【0101】
(2)Caspase阻害剤を用いた解析
アポトーシスにはCaspaseという酵素が関与することが知られているが、その阻害剤であるZ−VAD−FMKを用いて本発明の新規ビフェニル化合物が引き起こす癌細胞(ヒト由来白血病細胞、Jurkat)の増殖阻害に与える影響を調べた。
【0102】
まず、8×103細胞/ウェルのヒト由来白血病細胞(Jurkat)を100μlの培養液で、5%CO2存在下、24時間、37℃にて培養した。次に同じ条件で50μMのZ−VAD−FMK存在下で培養した。同様に、Actinomycin D(10μM)のみを加えたもの、あるいはActinomycin D(10μM)とZ−VAD−FMK(50μM)を同時に加えたものを同じ条件で培養した。また、1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)(50μM)のみを加えたもの、あるいは1,1’−ビフェニル−3,3’,4−トリオール(1)(50μM)とZ−VAD−FMK(50μM)を同時に加えたものを同じ条件で培養した。24時間後、抗癌活性の項目で述べた方法で生細胞数(%)を決定した。その結果を図20に示す。
【0103】
図20に示すように、Actinomycin DはCaspase阻害剤(Z−VAD−FMK)の強い影響を受けたが、本発明の新規ビフェニル化合物はその影響を全く受けないことが明らかとなった。
【0104】
したがって、図19および図20に示す結果から、本発明の新規ビフェニル化合物はアポトーシスを引き起こさないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の新規ビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物は、単独または他の抗癌剤やホルモン療法剤と組み合わせてヒト等の哺乳動物を対象とした癌の予防及び治療に利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるビフェニル化合物またはその塩。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載のビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤。
【請求項1】
式(1)で示されるビフェニル化合物またはその塩。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載のビフェニル化合物または薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−25686(P2012−25686A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164384(P2010−164384)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔研究集会名〕 平成21年度 国立大学法人筑波大学生物資源科学農林生物学領域修士論文発表会 〔主催者名〕 国立大学法人筑波大学生物資源科学専攻長 〔開催日〕 平成22年1月22日
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔研究集会名〕 平成21年度 国立大学法人筑波大学生物資源科学農林生物学領域修士論文発表会 〔主催者名〕 国立大学法人筑波大学生物資源科学専攻長 〔開催日〕 平成22年1月22日
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【Fターム(参考)】
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