説明

新規ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オンシンナメート化合物、それらの製造方法、およびそれらを含有する医薬組成物

【課題】抗腫瘍活性を有する新規化合物の提供。
【解決手段】式(I):


〔式中、XおよびYは水素等を表し、Zは酸素原子等を表し、Arはアリール等を表し、R1はアルキル基等を表し、R2はアルコキシ基等を表し、R3およびR4は水素原子またはアルキル基を表し、R5はヒドロキシ基等を表す〕の化合物、それらの異性体、および薬学的に許容しうる酸または塩基とのそれらの付加塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾ〔b〕ピラノ〔3,2−h〕アクリジン −7−オンシンナメート化合物、それらの製造方法、およびそれらを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の化合物は、抗腫瘍性を有することが実験モデルで証明されているアルカロイドである、アクロナイシンの誘導体である(J. Pharm. Sci., 1966, 55(8), 758-768)。しかしながら、非常に広い活性スペクトルを有するにもかかわらず、アクロナイシンは効力が低く、活性は中程度である。化合物の溶解性もまた低いため、そのバイオアベイラビリティは制限され、また静脈ルートによる投与用の医薬組成物におけるその使用も制限されている。
【0003】
その分子については種々の修飾がなされており、例えば、J. Med. Chem., 1996, 39, 4762-4766、EP1 042 326号明細書、EP1 061 081号明細書、またはEP1 297 835号明細書に記載のものでは、生成物の効力、抗腫瘍効果および溶解性において有意な改善が見られている。それにもかかわらず、抗癌治療においては、より活性であると同時により許容度のある医薬を得る目的で、常に新規な抗腫瘍剤の開発が求められている。より具体的には、現存化合物に対する本来的なおよび/または後天的な耐性の故に、固形腫瘍は、抗癌化学治療の主要な問題となっている。したがって、腫瘍による障害を全体として最も効果的に処置するようにするためには、強力な細胞毒性を示す最も広い可能な範囲の化合物にアクセスすることが最も重要なことである。
【0004】
本発明の化合物は、新規であるということに加えて、これまでに観察されたものに比べて、驚くほどより強力なインビボおよびインビトロ活性を有する。したがって、本出願人により発見された化合物は、抗腫瘍特性を有しているため、癌の処置に特に有用である。本発明の化合物により処置できる癌の種類としては、限定するものではないが、腺癌および上皮癌、肉腫、神経膠腫、ならびに白血病を挙げることができる。
【0005】
より詳細には、本発明は式(I):
【化21】


〔式中、
・XおよびYは、同一または異なっていてもよく、互いに独立に、
−水素およびハロゲン原子、
−ヒドロキシ、直鎖または分岐(C1〜C6)アルコキシ、ニトロ、シアノ、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル(ヒドロキシおよびハロゲンから選択される1以上の基で場合により置換されている)、および直鎖または分岐(C2〜C6)アルケニル基、ならびに
−式:−NRab
(式中、RaおよびRbは、同一または異なっていてもよく、互いに独立に、水素原子および直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基から選択される基であるか、
または、RaおよびRbは、それらを有している窒素原子と共に、酸素および窒素から選択される第二のヘテロ原子を環系内に場合により含む単環の5〜7員の複素環を形成している)の基、
から選択される基を表し、置換基XおよびYは、互いに独立に、2つの隣接するベンゼン環のいずれに存在していてもよいと理解され、
・Zは、酸素原子またはNRc(ここで、Rcは、水素原子、直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基、アリール基およびアリール(C1〜C6)アルキル基(ここで、アルキル部分は、直鎖もしくは分岐である)から選択される基を表す)を表し、
・Arは、アリールまたはヘテロアリール基を表し、
・R1は、水素原子または直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基を表し、
・R2は、水素原子、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基、−ORaおよび−NRab(ここで、RaおよびRbは、前記に定義したとおりである)から選択される基を表し、
・R3およびR4は、同一または異なっていてもよく、互いに独立に、水素原子または直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基を表し、
・R5は、
1)水素原子、
2)ORcおよびNRcd
(式中、Rcは、前記に定義したとおりであり、Rdは、Rcについて定義したとおりである)、
3)W1−C(W2)−U−V
{式中、
α)W1は、酸素原子またはNRc(ここで、Rcは、前記に定義したとおりである)を表し、
β)W2は、酸素原子を表し、
γ)Uは、単結合または直鎖もしくは分岐(C1〜C8)アルキレン鎖または直鎖もしくは分岐(C2〜C8)アルケニレン鎖を表し、
δ)Vは、
−水素原子、
−アリールおよびヘテロアリール基、
−ORc、CO2c、CORc、CONR′aR′b、NR′aR′b、N(Rc)−CO2R′c、およびN(Rc)−COR′c基(ここで、Rcは、前記に定義したとおりであり、R′cは、Rcについて定義したとおりであり、R′aおよびR′bは、同一または異なっていてもよく、互いに独立に、水素原子、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基、アリール基およびアリール−(C1〜C6)アルキル基(ここで、アルキル部分は、直鎖または分岐である)から選択される基を表すか、あるいはR′aおよびR′bは、それらを有している窒素原子と共に、酸素および窒素から選択される第二のヘテロ原子を環系内に場合により含む単環の5〜7員の複素環を形成している)
から選択される基を表す}、
4)W1−C(W2)−W3−T1
{式中、
α)W1およびW2は、前記に定義したとおりであり、
β)W3は、酸素原子またはNRc(ここで、Rcは、前記に定義したとおりである)を表し、
γ)T1は、
−水素原子、
−直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル、
−直鎖または分岐(C2〜C6)アルケニル、
−アリール、アリール−(C1〜C6)アルキル(ここで、アルキル部分は、直鎖または分岐である)、
−直鎖または分岐(C1〜C6)アルキレン鎖および直鎖または分岐(C2〜C6)アルケニレン鎖(これらは各々、ORc基(ここで、Rcは、前記に定義したとおりである)により、またはNR′aR′b(ここで、R′aおよびR′bは、前記に定義したとおりである)により置換されている)
から選択される基を表す}、
5)Z−CO−CH=CHAr(ここで、ZおよびArは、前記に定義したとおりである)、
から選択される基を表し、
アリールは、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基(1つ以上のヒドロキシまたはハロゲン基で場合により置換されている)、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシ、ニトロ、アミノ、直鎖または分岐モノ(C1〜C6)アルキルアミノ、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ(ここで、各アルキル部分は、直鎖または分岐である)、直鎖または分岐(C1〜C6)アルコキシ、直鎖または分岐(C1〜C6)アシル、および直鎖または分岐(C1〜C6)アルキルカルボニルオキシから選択される1つ以上の同一または異なる置換基を場合により含む、フェニルまたはナフチル基を意味すると理解され、
ヘテロアリールは、単環で芳香族であるかまたは少なくとも一つの環は芳香族性のものである二環であり、酸素、窒素および硫黄から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含む5〜12員の基を意味し、ヘテロアリール基は、ハロゲン原子、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基(1つ以上のヒドロキシまたはハロゲン基で場合により置換されている)、ヒドロキシ基、直鎖または分岐(C1〜C6)アルコキシ基、およびアミノ基(1つまたは2つの直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基で場合により置換されている)から選択される1つ以上の同一または異なる原子または基で場合により置換されていると理解される。〕
の化合物、存在する場合にはそれらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびに、薬学的に許容しうる酸または塩基とそれらとの付加塩、ならびにそれらの水和物およびそれらの溶媒和物に関する。
【0006】
ヘテロアリール基としては、限定するものではないが、チエニル、ピリジル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、キノリル、イソキノリルおよびピリミジニル基を挙げることができる。
【0007】
酸素および窒素から選択される第二のヘテロ原子を環系内に場合により含む単環の5〜7員の複素環としては、限定するものではないが、ピロリジニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジル、オキサジナニル、モルホリニル、ヘキサヒドロピリダジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、ピペラジニル、アゼパニル、オキサゼパニルおよびジアゼパニル基を挙げることができる。
【0008】
薬学的に許容しうる酸としては、限定するものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ホスホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ショウノウ酸、リシンなどを挙げることができる。
【0009】
薬学的に許容しうる塩基としては、限定するものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、tert−ブチルアミンなどを挙げることができる。
【0010】
置換基XおよびYとしては、本発明に従えば、好ましくは、水素原子である。
【0011】
置換基R1、R3およびR4としては、本発明に従えば、好ましくは、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基である。
【0012】
置換基R2としては、本発明に従えば、好ましくは、−ORa(ここで、Raは、式(I)について定義したとおりである)である。
【0013】
置換基R5としては、本発明に従えば、好ましくは、基−ORc(ここで、Rcは、式(I)について定義したとおりである)および基W1−C(W2)−U−V(ここで、W1、W2、UおよびVは、式(I)について定義したとおりである)である。
【0014】
置換基R5としては、本発明に従えば、さらにより好ましくは、基−ORc(ここで、Rcは、水素原子を表す)および基W1−C(W2)−U−V(ここで、W1およびW2は、各々酸素原子を表し、Uは、直鎖または分岐(C1〜C8)アルキレン鎖を表し、Vは、水素原子を表す)である。
【0015】
置換基Zとしては、本発明に従えば、好ましくは、酸素原子である。
【0016】
置換基Arとしては、本発明に従えば、好ましくは、場合により置換されているフェニル基である。
【0017】
特に有利な様式において、好ましい本発明の化合物は、
(±)−シス−2−シンナモイルオキシ−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−シンナモイルオキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(4−クロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(4−クロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(2−クロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(2−クロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(3−クロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(2,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(2,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(3,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(3,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(4−ブロモシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(4−ブロモシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(4−メトキシシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(4−ニトロシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−6−メトキシ−2−(4−ニトロシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
である。
【0018】
本発明は出発物質として、式(II):
【化22】


(式中、X、Y、R3およびR4は前記に定義したとおりであり、Rが、水素原子、ヒドロキシ基、または直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基を表す)
の化合物を用い、
式(II)の化合物の窒素原子は、置換されるか、またはされず、非プロトン性極性溶媒中または相間移動条件下で、脱プロトン化剤の存在下に、ハロゲン化アルキルまたは硫酸ジアルキルの作用により、式(III):
【化23】


(式中、X、Y、R、R3およびR4は、前記に定義したとおりであり、R′1は、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基を表す)
の化合物が得られ、
式(III)のその化合物を、有機合成の慣用条件下にアルキル化剤の作用に付して、式(IV):
【化24】


(式中、X、Y、R′1、R3およびR4は、前記に定義したとおりであり、R′2は、OR′a(ここで、R′aは、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基を表す)から選択される基を表す)の化合物を得、
R′2がアルコキシ基を表す場合に、式(IV)のその化合物を、式(V):
【化25】


(式中、RaおよびRbは、式(I)について定義したとおりである)
の化合物で処理して、式(VI):
【化26】


(式中、X、Y、R′1、R3、R4、RaおよびRbは、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(II)、(III)、(IV)および(VI)の化合物は全体として、式(VII):
【化27】


(式中、X、Y、R1、R2、R3およびR4は、式(I)について定義したとおりである)
の化合物を形成し、
式(VII)のその化合物を、
a)極性媒体中で、4−メチルモルホリンN−オキシドの存在下に、四酸化オスミウムの作用に付して、式(VIII/a):
【化28】


(式中、X、Y、R1、R2、R3およびR4は、前記に定義したとおりである)
の化合物を得るか、
b)または、極性媒体中で過マンガン酸カリウムの作用、次いでNaBH4の存在下に還元条件に付して、式(VIII/b):
【化29】


(式中、X、Y、R1、R2、R3およびR4は、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(VIII/a)および(VIII/b)の化合物の全体は、二つのアルコール基がお互いにシスまたはトランス配置である式(VIII):
【化30】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、およびR4は、式(I)について定義したとおりである)
の化合物を形成し、
式(VIII)のその化合物を、1もしくは2当量の式(IX)の無水物または式(X)の酸塩化物:
【化31】


(式中、Arは、式(I)について定義したとおりである)
の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である、式(1/a1)または(I/a2):
【化32】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4およびArは、前記に定義したとおりである)
の化合物を得るか、
c)または、過酸化水素の存在下に、NaN3の作用に付し、その後、還元工程に付して、式(XI):
【化33】


(式中、X、Y、R1、R2、R3およびR4は、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(XI)のその化合物を、式(VIII)の化合物についてと同じ条件下に、前記に定義されたと同様の式(IX)または(X)の化合物の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である、式(1/b1)または(I/b2):
【化34】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4およびArは、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(1/b1)または(I/b2)のその化合物を、場合により、式(XII):
【化35】


(式中、Halは、ハロゲンを表し、R′cは、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル、アリール基、およびアリール−(C1〜C6)アルキル(ここで、アルキル部分は、直鎖または分岐である)から選択される基を表す)
の化合物の作用に付して、式(1/c1)または(I/c2):
【化36】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4、R′cおよびArは、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(1/a1)、(I/b1)および(I/c1)、ならびに(1/a2)、(I/b2)および(I/c2)の化合物の全体は、それぞれ、(1/d1)および(I/d2):
【化37】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4、YおよびArは、式(I)について定義したとおりであり、R5aは、ヒドロキシ基、NH2またはNHR′c(ここで、R′cは、前記に定義したとおりである)を表す)
の化合物を形成し、
式(I/d1)のその化合物を、場合により、
a)アルキル化剤の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である、式(1/e):
【化38】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4、YおよびArは、前記に定義したとおりであり、R5bは、基ORcまたはNRcd(ここで、RcおよびRdは、式(I)について定義したとおりである)を表す)
の化合物を得るか、
b)または、式(XIII)の無水物または式(XIV)の酸塩化物:
【化39】


(式中、R10は、式:C(W2)−U−VまたはC(W2)−W3−T1(ここで、W2、W3、U、VおよびT1は、式(I)について定義したとおりである)の基を表す)
の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である、式(1/f):
【化40】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4、Y、ArおよびR10は、前記に定義したとおりであり、W1は、式(I)について定義したとおりである)
の化合物を得、
化合物(I/a)〜(I/f)は本発明の化合物の全体を構成し、それらを、必要に応じて、慣用の精製法に従って精製し、それを、所望により、慣用の分離法に従ってそれらの異なる異性体に分離し、また、それらを、所望により、薬学的に許容しうる酸または塩基とのそれらの付加塩に変換する、
ことを特徴とする、式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0019】
式(II)、(V)、(IX)、(X)、(XII)、(XIII)および(XIV)の化合物は市販品であるか、または、当業者に周知の慣用的な有機合成法に従って得られる。
【0020】
式(I)の化合物は、特に価値ある抗腫瘍特性を有する。それらは、細胞周期の特異的遮断により、ネズミおよびヒト腫瘍起源の細胞系に関して優れたインビトロでの細胞毒性を示し、移植可能なネズミおよびヒト腫瘍に関して、マウスにおいてインビボで活性である。これらの化合物の特徴的な特性により、抗腫瘍剤としてそれらを治療的に使用できる。
【0021】
本発明はまた、有効成分として、少なくとも1種の式(I)の化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオ異性体、あるいは、薬学的に許容しうる酸または塩基との付加塩を、単独で、または、1種以上の不活性で無毒性の薬学的に許容しうる賦形剤または担体と組み合わせて含む、医薬組成物に関する。
【0022】
本発明に係る医薬組成物としては、より具体的には、経口、非経口(静脈内、筋肉内、または皮下)、経皮、膣内、経直腸、経鼻腔、舌下、頬側、眼内、または気道投与に適したものを挙げることができる。
【0023】
本発明に係る非経口注射用の医薬組成物としては、特に、水性および非水性の無菌液剤、分散剤、懸濁剤、または乳濁剤、ならびに注射可能な液剤または分散剤を再現するための無菌粉末が含まれる。
【0024】
本発明に係る固体の経口投与用の医薬組成物としては、特に、錠剤または糖衣錠、舌下錠、サシェ剤、ゼラチンカプセル剤および顆粒剤が含まれ、液状の経口、経鼻腔、頬側または眼内投与用には、特に、乳濁剤、液剤、懸濁剤、液滴剤、シロップ剤およびエアゾール剤が含まれる。
【0025】
経直腸または膣内投与用の医薬組成物は、好ましくは坐剤であり、経皮投与用のものには特に、散剤、エアゾール剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤およびパッチ剤が含まれる。
【0026】
前記した医薬組成物は本発明を説明するものであるが、いかなる形でも限定するものではない。
【0027】
不活性で無毒性で薬学的に許容しうる賦形剤または担体としては、非限定的な例として、希釈剤、溶媒、保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散化剤、結合剤、膨潤剤、崩壊剤、遅延剤、潤滑剤、吸収剤、懸濁化剤、着色剤、芳香剤などを挙げることができる。
【0028】
有用な用量は、患者の年齢および体重、投与経路、使用する医薬組成物、疾患の性質および重篤度、ならびにすべての併用処置の投与に応じて変化する。用量の範囲は1日あたり0.1mgから1000mgであり、これを1回以上で投与する。
【0029】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、いかなる形でも限定するものではない。
【0030】
使用する出発物質は、既知であるか、既知の操作手順に従って調製される製品である。種々の調製例により、本発明の化合物の調製に有用な合成中間体が得られる。
【0031】
実施例および調製例に記載した化合物の構造は、通常の分光測光技術(赤外、核磁気共鳴、質量分析など)に従って決定した。
【0032】
融点は、コフラー(Kofler)ホットプレートまたは顕微鏡下でのホットプレートのいずれかを使用して決定した。化合物が塩の形態である場合には、示した融点は塩形態の化合物のものを意味する。
【0033】
調製例1:塩化4−クロロシンナモイル
塩化チオニル7mlを、無水ジクロロメタン40ml中の4−クロロケイ皮酸1.75gの懸濁液に、43℃で攪拌しながら滴下した。3時間の反応後、反応しなかった過剰の酸が溶解せずに残り、デカンテーションにより除去した。ろ液を蒸発乾固して、塩化4−クロロシンナモイルを得た。
【0034】
調製例2:塩化2−クロロシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに2−クロロケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0035】
調製例3:塩化3−クロロシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに3−クロロケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0036】
調製例4:塩化2,4−ジクロロシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに2,4−ジクロロケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0037】
調製例5:塩化3,4−ジクロロシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに3,4−ジクロロケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0038】
調製例6:塩化4−ブロモシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに4−ブロモケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0039】
調製例7:塩化4−メトキシシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに4−メトキシケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0040】
調製例8:塩化4−ニトロシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに4−ニトロケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0041】
調製例9:塩化4−フルオロシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに4−フルオロケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0042】
調製例10:塩化3,4−ジメトキシシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに3,4−ジメトキシケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0043】
調製例11:塩化3−トリフルオロメチルシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに3−トリフルオロメチルケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0044】
調製例12:塩化3−ブロモシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに3−ブロモケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0045】
調製例13:塩化4−トリフルオロメチルシンナモイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに4−トリフルオロメチルケイ皮酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0046】
調製例14:塩化3−(1−ナフチル)アクリロイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに3−(1−ナフチル)アクリル酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0047】
調製例15:塩化3−(2−ナフチル)アクリロイル
4−クロロケイ皮酸の代わりに3−(2−ナフチル)アクリル酸を用い、調製例1の方法に従って、生成物を得た。
【0048】
実施例1:(±)−シス−2−シンナモイルオキシ−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイル619mgを、無水ピリジン15ml中の(±)−シス−1,2−ジヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−2,3,7,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−6−オン(EP1042326号明細書)520mgの溶液に加えた。20℃で48時間攪拌後、溶媒を、減圧下に、20℃を超えない温度で蒸発して、乾固させた。シリカゲル上でのクロマトグラフィー(ジクロロメタン、次いで0.2〜1%のメタノールグラジエント)とその後のエタノールからの析出により、期待した生成物233mgを単離した。
質量スペクトル(DIC/NH3):m/z=536〔MH〕+
【0049】
実施例2:(±)−シス−1−アセトキシ−2−シンナモイルオキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
無水酢酸3mlと4−ジメチルアミノピリジン7mgを、無水ピリジン5ml中の実施例1の化合物170mgの溶液に加えた。反応混合物を室温で5時間攪拌し、次いで、氷水20mlに注いだ。得られた析出物をろ別し、水洗し、減圧下に五酸化リンで乾燥して、期待した生成物130mgを単離した。
質量スペクトル(ES+):m/z=578〔MH〕+
【0050】
実施例3:(±)−シス−2−(4−クロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例1の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=569および571〔MH〕+
【0051】
実施例4:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(4−クロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例3の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=612および614〔MH〕+
【0052】
実施例5:(±)−シス−2−(2−クロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例2の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=570および572〔MH〕+
【0053】
実施例6:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(2−クロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例5の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=612および614〔MH〕+
【0054】
実施例7:(±)−シス−2−(3−クロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例3の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=570および572〔MH〕+
【0055】
実施例8:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(3−クロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例7の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=612および614〔MH〕+
【0056】
実施例9:(±)−シス−2−(2,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例4の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=604、606および608〔MH〕+
【0057】
実施例10:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(2,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例9の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=646、648および650〔MH〕+
【0058】
実施例11:(±)−シス−2−(3,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例5の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=604、606および608〔MH〕+
【0059】
実施例12:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(3,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例11の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=646、648および650〔MH〕+
【0060】
実施例13:(±)−シス−2−(4−ブロモシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例6の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=614および616〔MH〕+
【0061】
実施例14:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(4−ブロモシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例13の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=656および658〔MH〕+
【0062】
実施例15:(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(4−メトキシシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例7の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=566〔MH〕+
【0063】
実施例16:(±)−シス−1−アセトキシ−6−メトキシ−2−(4−メトキシシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例15の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=608〔MH〕+
【0064】
実施例17:(±)−シス−6−メトキシ−1,2−ジ−(4−メトキシシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例15に記載の方法の過程で、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=726〔MH〕+
【0065】
実施例18:(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(4−ニトロシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例8の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=581〔MH〕+
【0066】
実施例19:(±)−シス−1−アセトキシ−6−メトキシ−2−(4−ニトロシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例18の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=623〔MH〕+
【0067】
実施例20:(±)−シス−1,2−ジ−(4−フルオロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例9の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=703〔MH〕+
【0068】
実施例21:(±)−シス−2−(3,4−ジメトキシシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例10の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=596〔MH〕+
【0069】
実施例22:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(3,4−ジメトキシシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例21の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=638〔MH〕+
【0070】
実施例23:(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(3−トリフルオロメチルシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例11の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=604、605〔MH〕+
【0071】
実施例24:(±)−シス−1−アセトキシ−6−メトキシ−2−(3−トリフルオロメチルシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例23の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=646、647〔MH〕+
【0072】
実施例25:(±)−シス−2−(3−ブロモシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例12の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=614、616〔MH〕+;636、638〔MNa〕+
【0073】
実施例26:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(3−ブロモシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例25の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=656、658〔MH〕+
【0074】
実施例27:(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(4−トリフルオロメチルシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例13の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=604、605〔MH〕+
【0075】
実施例28:(±)−シス−1−アセトキシ−6−メトキシ−2−(4−トリフルオロメチルシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例27の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=646、647〔MH〕+
【0076】
実施例29:(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(3−(1−ナフチル)−アクリロイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例14の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=586〔MH〕+
【0077】
実施例30:(±)−シス−1−アセトキシ−6−メトキシ−2−(3−1−ナフチルアクリロイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
実施例29の化合物を用い、実施例2の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=628〔MH〕+
【0078】
実施例31:(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(3−(2−ナフチル)−アクリロイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
塩化シンナモイルの代わりに調製例15の化合物を用い、実施例1の方法に従って、生成物を得た。
質量スペクトル(ES+):m/z=586〔MH〕+
【0079】
実施例32:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(3,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン(エナンチオマーα)
実施例12の化合物のαエナンチオマーを、キラルカラムchiralcel oc分離により得た。
【0080】
実施例33:(±)−シス−1−アセトキシ−2−(3,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン(エナンチオマーβ)
実施例12の化合物のβエナンチオマーを、キラルカラムchiralcel oc分離により得た。
【0081】
本発明化合物の薬理試験
実施例A:インビトロでの細胞毒性
以下の2つの細胞系を使用した:
−1つのネズミ白血病:L1210、
−1つのヒト上皮癌:KB−3−1、
【0082】
細胞を、10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、50単位/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシンおよび10mMのHepesを含むRPMI1640完全培養培地(pH=7.4)中で培養した。細胞をマイクロプレートに播き、細胞毒性化合物に暴露した。その後、細胞を2日間(L1210)または4日間(KB−3−1)インキュベートした。その後、生存細胞数を、比色アッセイであるマイクロカルチャーテトラゾリウムアッセイ(Cancer Res.1987、47、939-942)により定量した。
結果をIC50(処理細胞の増殖を50%阻害する細胞毒性剤の濃度)で表現した。例えば、実施例2の化合物は、L1210に関して、0.59μMのIC50、KB−3−1に関して、0.151μMのIC50を示した。
【0083】
実施例B:インビボでの活性
結腸のC38腺癌に関する抗腫瘍活性
約30mgの重量の結腸のC38腺癌の腫瘍断片を、B6D2F1マウス(Iffa Credo、フランス)の皮膚下に0日目にインプラントした。
腫瘍の増殖後、マウスを対照群(18匹)および処置群(6または7匹)に分けたが、これらは腫瘍サイズに関しては均一であった。生成物を、その最大耐用量(MTD)、MTD/2およびMTD/4で、3週間、週に1回づつ(10、17および24日目)、静脈内経路により投与した。
腫瘍は1週間に2回測定し、腫瘍容量を、以下の式に従って計算した:容量(mm3)=長さ(mm)×広さ(mm2)/2。抗腫瘍活性はT/C%として表現する:
【0084】
【数1】

【0085】
〔式中、V0およびVtは、それぞれ、腫瘍の初期容量、および測定時間tにおけるその容量である〕。
【0086】
最適用量は、毒性(早期死亡または20%を超える体重の減少)を示さずに最低のT/C値を示す用量である。
例えば、実施例33の化合物は、4mg/kgの最適用量で50%の抗腫瘍活性を示すが、アクロナイシンは、100mg/kgの最適用量で27%抗腫瘍活性を示し、これにより、それらの強力な治療効力が実証された。
【0087】
実施例C:医薬組成物
各々10mgの活性成分を含む1000錠の錠剤の調製用の処方
実施例2の化合物・・・・・・・・・・・・・10g
ヒドロキシプロピルセルロース・・・・・・・・2g
小麦澱粉・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
ラクトース・・・・・・・・・・・・・・・100g
ステアリン酸マグネシウム・・・・・・・・・・3g
タルク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


〔式中、
・XおよびYは、同一または異なっていてもよく、互いに独立に、
−水素およびハロゲン原子、
−ヒドロキシ、直鎖または分岐(C1〜C6)アルコキシ、ニトロ、シアノ、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル(ヒドロキシおよびハロゲンから選択される1以上の基で場合により置換されている)、および直鎖または分岐(C2〜C6)アルケニル基、ならびに
−式:−NRab
(式中、RaおよびRbは、同一または異なっていてもよく、互いに独立に、水素原子および直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基から選択される基であるか、
または、RaおよびRbは、それらを有している窒素原子と共に、酸素および窒素から選択される第二のヘテロ原子を環系内に場合により含む単環の5〜7員の複素環を形成している)の基、
から選択される基を表し、置換基XおよびYは、互いに独立に、2つの隣接するベンゼン環のいずれに存在していてもよいと理解され、
・Zは、酸素原子またはNRc(ここで、Rcは、水素原子、直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基、アリール基およびアリール(C1〜C6)アルキル基(ここで、アルキル部分は、直鎖もしくは分岐である)から選択される基を表す)を表し、
・Arは、アリールまたはヘテロアリール基を表し、
・R1は、水素原子または直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基を表し、
・R2は、水素原子、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基、−ORaおよび−NRab(ここで、RaおよびRbは、前記に定義したとおりである)から選択される基を表し、
・R3およびR4は、同一または異なっていてもよく、互いに独立に、水素原子または直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基を表し、
・R5は、
1)水素原子、
2)ORcおよびNRcd
(式中、Rcは、前記に定義したとおりであり、Rdは、Rcについて定義したとおりである)、
3)W1−C(W2)−U−V
{式中、
α)W1は、酸素原子またはNRc(ここで、Rcは、前記に定義したとおりである)を表し、
β)W2は、酸素原子を表し、
γ)Uは、単結合または直鎖もしくは分岐(C1〜C8)アルキレン鎖または直鎖もしくは分岐(C2〜C8)アルケニレン鎖を表し、
δ)Vは、
−水素原子、
−アリールおよびヘテロアリール基、
−ORc、CO2c、CORc、CONR′aR′b、NR′aR′b、N(Rc)−CO2R′c、およびN(Rc)−COR′c基(ここで、Rcは、前記に定義したとおりであり、R′cは、Rcについて定義したとおりであり、R′aおよびR′bは、同一または異なっていてもよく、互いに独立に、水素原子、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基、アリール基およびアリール−(C1〜C6)アルキル基(ここで、アルキル部分は、直鎖または分岐である)から選択される基を表すか、あるいはR′aおよびR′bは、それらを有している窒素原子と共に、酸素および窒素から選択される第二のヘテロ原子を環系内に場合により含む単環の5〜7員の複素環を形成している)
から選択される基を表す}、
4)W1−C(W2)−W3−T1
{式中、
α)W1およびW2は、前記に定義したとおりであり、
β)W3は、酸素原子またはNRc(ここで、Rcは、前記に定義したとおりである)を表し、
γ)T1は、
−水素原子、
−直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル、
−直鎖または分岐(C2〜C6)アルケニル、
−アリール、アリール−(C1〜C6)アルキル(ここで、アルキル部分は、直鎖または分岐である)、
−直鎖または分岐(C1〜C6)アルキレン鎖および直鎖または分岐(C2〜C6)アルケニレン鎖(これらは各々、ORc基(ここで、Rcは、前記に定義したとおりである)により、またはNR′aR′b(ここで、R′aおよびR′bは、前記に定義したとおりである)により置換されている)
から選択される基を表す}、
5)Z−CO−CH=CHAr(ここで、ZおよびArは、前記に定義したとおりである)、
から選択される基を表し、
アリールは、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基(1つ以上のヒドロキシまたはハロゲン基で場合により置換されている)、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシ、ニトロ、アミノ、直鎖または分岐モノ(C1〜C6)アルキルアミノ、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ(ここで、各アルキル部分は、直鎖または分岐である)、直鎖または分岐(C1〜C6)アルコキシ、直鎖または分岐(C1〜C6)アシル、および直鎖または分岐(C1〜C6)アルキルカルボニルオキシから選択される1つ以上の同一または異なる置換基を場合により含む、フェニルまたはナフチル基を意味すると理解され、
ヘテロアリールは、単環で芳香族であるかまたは少なくとも一つの環は芳香族性のものである二環であり、酸素、窒素および硫黄から選択される1、2または3個のヘテロ原子を含む5〜12員の基を意味し、ヘテロアリール基は、ハロゲン原子、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基(1つ以上のヒドロキシまたはハロゲン基で場合により置換されている)、ヒドロキシ基、直鎖または分岐(C1〜C6)アルコキシ基、およびアミノ基(1つまたは2つの直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基で場合により置換されている)から選択される1つ以上の同一または異なる原子または基で場合により置換されていると理解される。〕
の化合物、存在する場合にはそれらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびに、薬学的に許容しうる酸または塩基とそれらとの付加塩、ならびにそれらの水和物およびそれらの溶媒和物。
【請求項2】
XおよびYが、水素原子を表すことを特徴とする、請求項1に記載の式(I)の化合物、それらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびにそれらの薬学的に許容しうる酸または塩基との付加塩。
【請求項3】
1、R3およびR4が、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基を表すことを特徴とする、請求項1または2に記載の式(I)の化合物、それらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびにそれらの薬学的に許容しうる酸または塩基との付加塩。
【請求項4】
2が、基−ORa(ここで、Raは、式(I)について定義したとおりである)を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、それらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびにそれらの薬学的に許容しうる酸または塩基との付加塩。
【請求項5】
5が、基−ORcまたはW1−C(W2)−U−V(ここで、Rc、W1、W2、UおよびVは、式(I)について定義したとおりである)を表すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、それらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびにそれらの薬学的に許容しうる酸または塩基との付加塩。
【請求項6】
5が、基−ORc(ここで、Rcは、水素原子を表す)を表すか、またはR5が、W1−C(W2)−U−V(ここで、W1およびW2が、各々酸素原子を表し、Uが、直鎖または分岐(C1〜C8)アルキレン鎖を表し、Vが、水素原子を表すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、それらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびにそれらの薬学的に許容しうる酸または塩基との付加塩。
【請求項7】
Zが、酸素原子を表すことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、それらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびにそれらの薬学的に許容しうる酸または塩基との付加塩。
【請求項8】
Arが、場合により置換されているフェニル基を表すことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、それらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびにそれらの薬学的に許容しうる酸または塩基との付加塩。
【請求項9】
(±)−シス−2−シンナモイルオキシ−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−シンナモイルオキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(4−クロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(4−クロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(2−クロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(2−クロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(3−クロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(2,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(2,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(3,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(3,4−ジクロロシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−2−(4−ブロモシンナモイルオキシ)−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−2−(4−ブロモシンナモイルオキシ)−6−メトキシ−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(4−メトキシシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−ヒドロキシ−6−メトキシ−2−(4−ニトロシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン、
(±)−シス−1−アセトキシ−6−メトキシ−2−(4−ニトロシンナモイルオキシ)−3,3,14−トリメチル−1,2,3,14−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]ピラノ[3,2−h]アクリジン−7−オン
である、請求項1に記載の化合物、それらのエナンチオマーおよびジアステレオ異性体、ならびにそれらの薬学的に許容しうる酸または塩基との付加塩。
【請求項10】
出発物質として、式(II):
【化2】


(式中、X、Y、R3およびR4は、前記に定義したとおりであり、Rは、水素原子、ヒドロキシ基、または直鎖もしくは分岐(C1〜C6)アルキル基を表す)
の化合物を用い、
式(II)の化合物の窒素原子は、置換されるか、またはされず、非プロトン性極性溶媒中または相間移動条件下で、脱プロトン化剤の存在下に、ハロゲン化アルキルまたは硫酸ジアルキルの作用により、式(III):
【化3】


(式中、X、Y、R、R3およびR4は、前記に定義したとおりであり、R′1は、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基を表す)
の化合物が得られ、
式(III)のその化合物を、有機合成の慣用条件下にアルキル化剤の作用に付して、式(IV):
【化4】


(式中、X、Y、R′1、R3およびR4は、前記に定義したとおりであり、R′2は、OR′a(ここで、R′aは、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル基を表す)から選択される基を表す)の化合物を得、
R′2がアルコキシ基を表す場合に、式(IV)のその化合物を、式(V):
【化5】


(式中、RaおよびRbは、式(I)について定義したとおりである)
の化合物で処理して、式(VI):
【化6】


(式中、X、Y、R′1、R3、R4、RaおよびRbは、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(II)、(III)、(IV)および(VI)の化合物は全体として、式(VII):
【化7】


(式中、X、Y、R1、R2、R3およびR4は、式(I)について定義したとおりである)
の化合物を形成し、
式(VII)のその化合物を、
a)極性媒体中で、4−メチルモルホリンN−オキシドの存在下に、四酸化オスミウムの作用に付して、式(VIII/a):
【化8】


(式中、X、Y、R1、R2、R3およびR4は、前記に定義したとおりである)
の化合物を得るか、
b)または、極性媒体中で過マンガン酸カリウムの作用、次いでNaBH4の存在下に還元条件に付して、式(VIII/b):
【化9】


(式中、X、Y、R1、R2、R3およびR4は、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(VIII/a)および(VIII/b)の化合物の全体は、二つのアルコール基がお互いにシスまたはトランス配置である式(VIII):
【化10】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、およびR4は、式(I)について定義したとおりである)
の化合物を形成し、
式(VIII)のその化合物を、1もしくは2当量の式(IX)の無水物または式(X)の酸塩化物:
【化11】


(式中、Arは、式(I)について定義したとおりである)
の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である、式(1/a1)または(I/a2):
【化12】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4およびArは、前記に定義したとおりである)
の化合物を得るか、
c)または、過酸化水素の存在下に、NaN3の作用に付し、その後、還元工程に付して、式(XI):
【化13】


(式中、X、Y、R1、R2、R3およびR4は、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(XI)のその化合物を、式(VIII)の化合物についてと同じ条件下に、前記に定義されたと同様の式(IX)または(X)の化合物の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である、式(1/b1)または(I/b2):
【化14】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4およびArは、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(1/b1)または(I/b2)のその化合物を、場合により、式(XII):
【化15】


(式中、Halは、ハロゲンを表し、R′cは、直鎖または分岐(C1〜C6)アルキル、アリール基、およびアリール−(C1〜C6)アルキル(ここで、アルキル部分は、直鎖または分岐である)から選択される基を表す)
の化合物の作用に付して、式(1/c1)または(I/c2):
【化16】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4、R′cおよびArは、前記に定義したとおりである)
の化合物を得、
式(1/a1)、(I/b1)および(I/c1)、ならびに(1/a2)、(I/b2)および(I/c2)の化合物の全体は、それぞれ、(1/d1)および(I/d2):
【化17】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4、YおよびArは、式(I)について定義したとおりであり、R5aは、ヒドロキシ基、NH2またはNHR′c(ここで、R′cは、前記に定義したとおりである)を表す)
の化合物を形成し、
式(I/d1)のその化合物を、場合により、
a)アルキル化剤の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である、式(1/e):
【化18】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4、YおよびArは、前記に定義したとおりであり、R5bは、基ORcまたはNRcd(ここで、RcおよびRdは、式(I)について定義したとおりである)を表す)
の化合物を得るか、
b)または、式(XIII)の無水物または式(XIV)の酸塩化物:
【化19】


(式中、R10は、式:C(W2)−U−VまたはC(W2)−W3−T1(ここで、W2、W3、U、VおよびT1は、式(I)について定義したとおりである)の基を表す)
の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である、式(1/f):
【化20】


(式中、X、Y、R1、R2、R3、R4、Y、ArおよびR10は、前記に定義したとおりであり、W1は、式(I)について定義したとおりである)
の化合物を得、
化合物(I/a)〜(I/f)は本発明の化合物の全体を構成し、それらを、必要に応じて、慣用の精製法に従って精製し、それを、所望により、慣用の分離法に従ってそれらの異なる異性体に分離し、また、それらを、所望により、薬学的に許容しうる酸または塩基とのそれらの付加塩に変換する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項11】
有効成分として、請求項1〜9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物を、1種以上の不活性で無毒性の薬学的に許容しうる賦形剤または担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項12】
癌の処置における医薬として使用するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の活性成分を含む、請求項11に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2006−176525(P2006−176525A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−369129(P2005−369129)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【出願人】(594131887)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィク−シーエヌアールエス (4)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE−CNRS
【出願人】(500283125)ユニヴェルシテ ルネ デカルト−パリ ヴェ (8)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE RENE DESCARTES − PARIS V
【住所又は居所原語表記】12,rue de l’Ecole de Medecine,F−75006 Paris FRANCE
【Fターム(参考)】