説明

新規二酸化チタン物質およびその塗布方法

本発明は、基材上に塗布するための二酸化チタン材料およびこれを製造する方法に関する。塗布材料は、耐剥離性であり、空気精製目的に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、二酸化チタン結晶、それを製造する方法、二酸化チタン結晶の光触媒塗布材料としての使用、およびそれを塗布する方法に関する。
【0002】
発明の背景
大気中の揮発性有機化合物類(VOCs)は、汚染物質であり、ヒトの健康に有害である。二酸化チタンは、大気中のVOCsの光触媒酸化(PCO)を促進させるための効果的な光触媒物質として知られている。
【0003】
しかしながら、その光触媒活性は満足できるものではない。ほとんどの場合、二酸化チタンは、ロスを防止し、大気に暴露される面積を増すべく固定するために基材上に塗布される。
【0004】
従来の二酸化チタン塗膜は、傷がつきやすく、時間がたつと剥離し、しばしば交換が必要となる。これは、二酸化チタン塗膜が、多くの場合、粘着力の乏しい大きな凝集粒子からなっていることによる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、上述の問題の少なくとも1つを解決するための改善された光触媒物質を提供することである。
【0006】
1つの側面において、本発明は、
a)約3nm〜25nmの結晶サイズと70%を超える結晶化度を有する二酸化チタン結晶約約40±10%w/w、
b)製造工程中に前記結晶サイズを約3〜25nmに維持するように前記二酸化チタンの凝集を防止すべく前記二酸化チタンと相互作用する分散剤約60±10%w/w、
c)水1〜10%w/w
を含む物質を提供する。
【0007】
好ましい態様において、二酸化チタン結晶の結晶サイズは、6〜10nmに渡り、同じサイズが、分散剤を添加することにより、製造工程中に維持される。他の好ましい態様において、二酸化チタン物質は、1〜5%w/wの水を含む。
【0008】
さらに他の好ましい態様において、本物質は、さらに、二酸化チタン上に表面ヒドロキシル基を含む。表面ヒドロキシル基の約90〜100%が、150℃で記録したときの赤外スペクトルにおける3000〜3680cm-1での少なくとも1つの吸収ピークにより特徴付けられる。もっとも好ましい態様において、表面ヒドロキシル基の90〜100%が、150℃で記録したときの赤外スペクトルにおける約3660±20cm-1での1つ吸収ピークおよび3630±20cm-1でのもう1つのピークにより特徴付けられる。
【0009】
さらに他の好ましい態様において、二酸化チタンの表面積は、50m2/gよりも大きい。さらに他の好ましい態様において、二酸化チタンの少なくとも70%がアナターゼである。
【0010】
さらなる好ましい態様において、分散剤は、ヒドロキシル、カルボキシルおよびケトン等のOH基または酸素化官能基を含有するポリマーである。より好ましい態様において、分散剤は、ポリ酸素化およびポリヒドロキシル化ポリマーからなる分の中から選ばれる。さらに好ましい態様において、分散剤は、ポリエチレングリコールである。もっとも好ましい態様において、分散剤は、200〜1000g/モルの分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0011】
他の側面において、本発明は、二酸化チタン物質の製造方法を提供する。この方法は、以下の工程:
a)二酸化チタンゾルを作ること、
b)二酸化チタン:分散剤の比が約2:5ないし7:10となるように該二酸化チタンゾルに分散剤を添加して混合物を作ること、
c)該混合物の水分含有率を10%w/w未満まで減少させること
を含む。
【0012】
好ましい態様において、二酸化チタンゾルは、好ましくはアルコールおよび水の存在下で二酸化チタン前駆体を加水分解し、硝酸を用いて解膠することにより調製される。解膠の目的は、安定なゾルを作ることである。
【0013】
他の好ましい態様において、二酸化チタン:分散剤の比は3:5である。
【0014】
さらに他の好ましい態様において、前記混合物の水分含有率は、5%w/w未満まで減少させる。
【0015】
分散剤は、次の機能:(a)二酸化チタンの結晶サイズを制御すること、(b)二酸化チタン結晶の凝集を防止すること、(c)二酸化チタンの表面ヒドロキシル基の性質を操作すること、(d)二酸化チタン物質の塗布性能を改善することのために、二酸化チタンゾルに添加される。好ましい態様において、分散剤は、ヒドロキシル、カルボキシルおよびケトン等の、OH基または酸素化官能基を含有するポリマーである。より好ましい態様において、分散剤は、ポリ酸素化およびポリヒドロキシル化ポリマーからなる群の中から選ばれる。もっとも好ましい態様において、分散剤は、ポリエチレングリコールである。本発明で用いられる所望のポリマーは、それが大きすぎると、互いに付着する傾向にあるので、ポリエチレングリコールは、好ましくは、200〜1000g/モルの分子量である。
【0016】
さらに他の好ましい態様において、二酸化チタン物質を製造する方法は、工程b)の後で工程c)の前に、マイクロ波処理をさらに含む。より好ましい態様において、マイクロ波処理は、30Wから200Wまでに渡るパワーで約20分間続行される。マイクロ波処理は、迅速な結晶化とクエンチングを可能とし、また良好な結晶サイズ分布を有するアナターゼ−二酸化チタンの生成を促進する。
【0017】
さらに他の側面において、本発明は塗布方法を提供する。その塗布方法は、
a)基材の平方メートル当り1〜10gの該二酸化チタン物質を適用すること、
b)前記物質を前記基材上に均一に拡げて、塗布基材を作ること、および
c)前記塗布基材を焼成すること
を含む。
【0018】
該塗膜は、基材の組織に対し非常に接着性があり、耐スクラッチ性であり、長期間層間剥離することがない。好ましい態様において、基材は、溝付き表面、金属、金属酸化物、セラミック、ガラスまたはポリマー等であるがそれらの限定されないテクスチャー表面を有する。
【0019】
さらに他の側面において、本発明は、自浄性物質を提供する。この自浄性物質は、二酸化チタンの1〜10の単層(monolayer)で塗布された固体表面を含む。二酸化チタン塗膜は、約3〜25nmの結晶サイズおよび70%〜100%の結晶化度を有する二酸化チタン結晶を含む。好ましい態様において、二酸化チタン結晶の結晶サイズは少なくとも1年間3〜25nmの範囲内に留まる。より好ましい態様において、結晶サイズは6〜10nmであり、少なくとも1年この同じ範囲内に留まる。
【0020】
他の好ましい態様において、二酸化チタン塗膜は表面ヒドロキシル基を含む。表面ヒドロキシル基の90%〜100%が、150℃で記録したときの赤外スペクトルにおける3000〜3680cm-1の少なくとも1つの吸収ピークにより特徴付けられる。最も好ましい態様において、表面ヒドロキシル基の90〜100%が、150℃で記録したときの赤外スペクトルにおける約3660±20cm-1での1つ吸収ピークおよび3630±20cm-1でのもう1つのピークにより特徴付けられる。
【0021】
150℃で記録したときの赤外スペクトルにおける3680cm-1以下のOH吸収は、本二酸化チタンの表面におけるヒドロキシル基が酸性であることを示す。酸性表面ヒドロキシル基は、有機化合物の環構造の開環と塩素の除去を促進し、芳香族および塩素化揮発性有機化合物の光触媒酸化に対する向上した全触媒活性をもたらし得る。
【0022】
上記方法を用いて、二酸化チタンの結晶サイズは、少なくとも1年間、3〜25nmの範囲内に留まる。好ましくは、サイズは、6〜10nmに制御され得る。生成した本発明の二酸化チタンの高い結晶性のために、バルクにおける電子−ホール再結合を防止し得るとともに、失活を減少させ得る。二酸化チタンの小さなサイズのために、当該触媒は高い表面積を有し、かくして反応のためのより多い活性サイトを提供する。他方、本発明の二酸化チタン結晶のサイズは好ましくは3nm以上であり、したがってバンドギャップエネルギーにおいて有意なブルーシフトがなく、それ故PCO反応を活性化させるためにより高いエネルギーのUV光は必要でない。
【0023】
詳細な説明
定義
本明細書で用いる二酸化チタンゾルは、水およびアルコールの存在下に二酸化チタン前駆体を加水分解し、ついでそれを酸で解膠することによって得られる非晶質二酸化チタン懸濁液である。
【0024】
単層塗膜とは、1層の粒子を有する塗膜をいう。
【0025】
分散剤とは、二酸化チタン結晶と相互作用して、製造工程中に結晶サイズが約3〜25nmに維持されるように該結晶の凝集を防止する剤をいう。好ましい態様において、分散剤は、OH基またはヒドロキシル、カルボキシルおよびケトン等の酸素化官能基を含有するポリマーである。他の好ましい態様において、分散剤は、ポリ酸素化およびポリヒドロキシル化ポリマーである。
【0026】
本発明の種々の側面によると、二酸化チタン試料は、PEG支持マイクロ波ゾル−ゲル法、その後の二酸化チタンの1〜10の単層の塗膜を達成するための超薄膜塗布法により調整することができる。この方法と材料を用いて、単一単層塗膜が達成できる。そのような塗膜は、VOCの光触媒酸化のために優れた性能を示す。
【0027】
好ましい態様についての以下の詳細な説明は、4つのセクション:(I)二酸化チタン試料の調製;(II)塗布方法;(III)特性決定方法;および(IV)二酸化チタン、塗布試料並びに二酸化チタン塗膜の性能試験の特性決定結果に分けられている。
【0028】
セクション(I)は、以下の方法、すなわち低温結晶化、マイクロ波支援結晶化およびPEG仲介マイクロ波支援結晶化に従いいかに二酸化チタン試料がゾル−ゲル法により調製され、結晶化されたかを記述する。
【0029】
セクション(II)において、ポリマー−二酸化チタンペーストの刷毛塗りに基づくスクラッチ防止性塗布方法が提示されている。二酸化チタン、ポリマー−二酸化チタンおよび市販の異なる液濃度のP25粉末を用いた液切り塗布、浸漬塗布等の他の塗布方法も例示されている。(詳細は例に与えられている)。
【0030】
セクション(III)では、本発明により調製された二酸化チタンおよび塗布二酸化チタンの性質が7つの方法により特性決定された。二酸化チタンの結晶サイズおよび相構造を特性決定するためにX線回折(XRD)を用いた;二酸化チタンのBET表面積を決定するために、窒素物理吸着を用いた;二酸化チタンのモルフォロジーを決定するために、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた;二酸化チタン上の表面ヒドロキシル基の化学的性質を決定するために、FTIRを用いた。塗布二酸化チタン結晶構造(アナターゼまたはルチル等)およびのPEG残渣の存在を決定するために、マイクロ−ラマン分析を用いた;二酸化チタン塗膜の品質を測定するために、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた;二酸化チタン塗膜の表面原子組成を測定するために、X線光電子分光法(XPS)を用いた。
【0031】
セクション(IV)では、特性決定の結果が検討され、塗布二酸化チタン試料の触媒活性を次の2つの方法により試験した:二酸化チタン塗布ステンレス鋼板の触媒反応性を試験するために、流通反応装置中でのイソプロパノールの気相光触媒酸化を用いた;殺菌剤およびVOC分解についての二酸化チタンの性能を試験するために、二酸化チタン塗布ステンレス鋼を組み込んだ試験プロトタイプを組み立てた。
【0032】
セクションI.二酸化チタン試料の調製
図1は、本発明の1つの態様により二酸化チタン試料を製造するための工程を示す概略図である。工程1は、二酸化チタン前駆体(例えば、チタンイソプロポキシド)およびアルコール(例えば、イソプロパノール)の溶液を蒸留脱イオン水に添加することにより、(TiOx(OH)y)X=0.2、Yy=4−2X)懸濁液を作るための二酸化チタン前駆体の加水分解を含む。工程2において、この懸濁液を解膠して安定な二酸化チタンゾル(A)を生成させるために、ある量の硝酸を用いる。工程3において、OH基またはヒドロキシル、カルボキシルおよびケトン等の酸素化官能基を含有するポリマーを加えて、ポリマー−二酸化チタンゾル(B)を調製する。工程4において、アナターゼ二酸化チタン結晶を結晶化し、成長させるために、(B)をマイクロ波により処理し、ついで、液湿分を除去してポリマー−二酸化チタンペースト(C)を得た。工程5において、(C)をさらに焼成してポリマーを除去し、ポリマーフリーのアナターゼ二酸化チタン結晶を作った。工程2に続いて、工程4’〜5’からなる平行手順を開発した。工程4’において、工程2で調製した二酸化チタンゾル(A)を、工程4と等しいが、ポリマーを加えないでマイクロ波および乾燥プロセスにより直接処理して、二酸化チタンゲル(E)を生成させた。(E)を、工程5’においてさらに焼成して二酸化チタン結晶(F)を生成させた。
【0033】
以下の例は、上記各工程の1つの態様を説明するものである。参照の容易さのために、図1に示す生成物に対応する試料には、同じ英字名を与えている。
【0034】
例1:チタン前駆体の加水分解(工程1)
1)イソプロパノール(BDH、99%)中1Mのチタンイソプロポキシド(TIP、ACROS、98%)を調製し、
2)1MのTIP−イソプロパノール溶液28mlを激しく混合しながら水72mlにゆっくり加え、
3)得られた混合物を、チタンイソプロポキシドの完全な加水分解を確実にするために、30℃で1時間攪拌した。(TiOx(OH)y)X=0.2、Yy=4−2X)の白色懸濁液が得られた。
【0035】
例2:加水分解チタン前駆体の解膠(工程2)
1)1Mの硝酸溶液を、工程1で得た加水分解チタン前駆体に加えて、約0.4の[H+]/[Ti4+]を与え、
2)この混合物を70℃で加熱してイソプロパノールを蒸発させ、
3)その混合物を室温に低客氏、安定なゾルが生成するまで十分に混合し続け、
4)二酸化チタンゾルの濃度を0.28Mに調節した。
【0036】
例3:二酸化チタンゾル中へのポリエチレングリコール(PEG)の添加(工程3)
1)400g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)(ACROS)5重量%を、激しい攪拌下、工程2で調製した二酸化チタンゾル(A)に加え、
2)この混合物を、室温で5時間攪拌して、ポリマー−二酸化チタンゾル(B)を得た。
【0037】
例4:ポリマー−二酸化チタンゾルのマイクロ波処理、乾燥、および焼成(工程4および5)
1)50mLのポリマー−二酸化チタンゾル(B)を、100mLのテフロン(登録商標)裏張り熟成容器(MDR−1000/6/100/110)に入れ、封止し、
2)容器をマイクロ波オーブン(MLS−1200 MEGA、MILESTONE)に入れ、90Wで20分間加熱して、二酸化チタンを結晶化し、成長させ、
3)該ゾルをオーブン中65℃で乾燥するか、または室温で真空乾燥することにより、ポリマー−二酸化チタンペースト(C)−90W(HNO3(約5.9wt%)、ポリマー(約53.4%)、二酸化チタン(約32.7%)および微量の水の組成を有する)を得た。該ペーストは、基材の直接塗布のために、または粉末試料を調製するために用いることができた。
【0038】
4)ついで、(C)−90Wを450℃で5時間焼成して、(D)−90W試料を得た。
【0039】
0Wおよび120Wの電力でのマイクロ波処理を用いる同じ手順を試料(C)−0Wおよび(C)−120W、(D)−0Wおよび(D)−120Wを得るために行った。
【0040】
例5:ポリマーフリーの二酸化チタンゾルのマイクロ波処理、乾燥および焼成(工程4‘および5’)
1)50mLの二酸化チタンゾル(A)を、100mLのテフロン裏張り熟成容器(MDR−1000/6/100/110)に入れ、封止し、
2)容器をマイクロ波オーブン(MLS−1200 MEGA、MILESTONE)に入れ、90Wで20分間加熱して、二酸化チタンを結晶化し、成長させ、室温で真空ボックス中で乾燥することにより、二酸化チタンゲル(E)−90Wを得た。(異なるマイクロ波電力で処理した試料を区別するために、90Wマイクロ波で処理した試料を(E)−90Wという。
【0041】
3)ついで、(E)−90W試料を450℃で5時間焼成して、(F)−90Wを得た。
【0042】
0Wおよび120Wの電力でのマイクロ波処理を用いる同じ手順を試料(E)−0Wおよび(E)−120W、(F)−0Wおよび(F)−120Wを得るために行った。
【0043】
セクションII.塗布方法
基材への二酸化チタン塗布のために、本発明において、いくつかの塗布方法を開発し、比較した。塗膜の接着性および厚さを比較した。その結果、ポリマー−二酸化チタンペーストを用いる、スクラッチ防止性塗布とも呼ばれる刷毛塗りが、1〜10の単層を有する二酸化チタン塗膜を生成させることができることがわかった。
【0044】
例6.市販のP25二酸化チタンの液切り塗布(厚さは、二酸化チタン懸濁液またはゾルの量および濃度、および塗布時間により制御する)
1)デグーサからの市販のP25二酸化チタンを粉砕し、篩い分けして、均一な粉末サイズを得た。
【0045】
2)約0.05gの篩い分け二酸化チタンを50mLの蒸留脱イオン水に懸濁させた。
【0046】
3)この懸濁液を室温で30分間超音波処理した。
【0047】
4)超音波処理中に、約0.4mLの硝酸を懸濁液に加えた。
【0048】
5)アルミニウム板(2.5cm×2.5cm平方)を水およびアセトン中でリンスすることにより浄化した。
【0049】
6)アルミニウム板を容器に入れ、10mLの二酸化チタン懸濁液を加えた。
【0050】
7)懸濁液を空気中約65℃でゆっくり乾燥させ、表面に塗膜を形成した。
【0051】
8)ついで、塗布試料を200℃で1時間焼成した。
【0052】
例7.PEGポリマーの添加を伴う市販のP25二酸化チタンの液切り塗布
1)デグーサからの市販のP25二酸化チタンを粉砕し、篩い分けして、均一な粉末サイズを得た。
【0053】
2)約0.1gの篩い分け二酸化チタンを50mLの蒸留脱イオン水に懸濁させた。
【0054】
3)この懸濁液を室温で30分間超音波処理した。
【0055】
4)超音波処理中に、約0.1gのPEG400(ACROS)を添加し、溶液中5wt%のポリマー総濃度を得た。
【0056】
5)アルミニウム板(2.5cm×2.5cm平方)を水およびアセトン中でリンスすることにより浄化した。
【0057】
6)アルミニウム板を容器に入れ、10mLの二酸化チタン懸濁液を加えた。
【0058】
7)懸濁液を空気中約65℃でゆっくり乾燥させ、表面に塗膜を形成した。
【0059】
8)ついで、塗布試料を200℃で1時間焼成して、PEGポリマーを除去した。
【0060】
例8.二酸化チタンゾル(A)の液切り塗布
1)例2で調製した二酸化チタンゾル(A)の濃度を0.28Mに調節した。
【0061】
2)アルミニウム板(2.5cm×2.5cm平方)を水およびアセトン中でリンスすることにより浄化した。
【0062】
3)アルミニウム板を容器に入れ、10mLの二酸化チタンゾル(A)を加えた。
【0063】
4)懸濁液を真空中でゆっくり乾燥させ、表面に塗膜を形成した。
【0064】
5)塗布試料は、乾燥したままで、またはより高い温度で熱処理して用いることができる。
【0065】
例9.ポリマー−二酸化チタンゾル(B)の液切り塗布
1)例3で調製した二酸化チタンゾル(B)の濃度を0.28Mの二酸化チタンに調節することができる。
【0066】
2)アルミニウム板(2.5cm×2.5cm平方)を水およびアセトン中でリンスすることにより浄化した。
【0067】
3)アルミニウム板を容器に入れ、10mLのポリマー−二酸化チタンゾル(B)を加えた。
【0068】
4)懸濁液を真空中でゆっくり乾燥させ、表面に塗膜を形成した。
【0069】
5)塗布試料を空気中、450℃で1時間焼成して、PEGを除去した。
【0070】
例10.市販のP25二酸化チタンの浸漬塗布(厚さは、二酸化チタン懸濁液またはゾルの量および濃度、および接触時間により制御する)
1)デグーサからの市販のP25二酸化チタンを粉砕し、篩い分けして、均一な粉末サイズを得た。
【0071】
2)約0.05gの篩い分け二酸化チタンを50mLの蒸留脱イオン水に懸濁させた。
【0072】
3)この懸濁液を室温で30分間超音波処理した。
【0073】
4)超音波処理中に、約0.4mLの硝酸を懸濁液に加えた。
【0074】
5)アルミニウム板を水およびアセトン中でリンスすることにより浄化した。
【0075】
6)アルミニウム板を、二酸化チタン懸濁液を収容した容器に浸漬した。
【0076】
7)4.5分後に、アルミニウム板を取り出し、過剰の液を切った。
【0077】
8)このプロセスを3回繰り返して、塗膜を得た。
【0078】
9)塗布試料を乾燥し、熱処理した。
【0079】
注:液切り塗布とは異なり、板の両面は、その一方が被覆されない限り、浸漬塗布中に塗布される。
【0080】
例11.PEGポリマーの添加を伴う市販のP25二酸化チタンの浸漬塗布
1)デグーサからの市販のP25二酸化チタンを粉砕し、篩い分けして、均一な粉末サイズを得た。
【0081】
2)約0.1gの篩い分け二酸化チタンを50mLの蒸留脱イオン水に懸濁させた。
【0082】
3)この懸濁液を室温で30分間超音波処理した。
【0083】
4)超音波処理中に、約0.1gのPEG400(ACROS)を添加し、溶液中5wt%のポリマー総濃度を得た。
【0084】
5)アルミニウム板を水およびアセトン中でリンスすることにより浄化した。
【0085】
6)アルミニウム板を、二酸化チタン懸濁液を収容した容器に浸漬した。
【0086】
7)4.5分後に、板を取り出し、過剰の液を切った。
【0087】
8)このプロセスを3回繰り返して、塗膜を得た。
【0088】
9)塗布試料を乾燥し、熱処理した。
【0089】
注:液切り塗布とは異なり、板の両面は、その一方が被覆されない限り、浸漬塗布中に塗布される。
【0090】
例12.二酸化チタンゾル(A)の浸漬塗布
1)例2で調製した二酸化チタンゾル(A)の濃度を0.28Mに調節した。
【0091】
2)アルミニウム板を水およびアセトン中でリンスすることにより浄化した。
【0092】
3)アルミニウム板を、二酸化チタンゾル(A)を収容した容器に浸漬した。
【0093】
4)4.5分後に、板を取り出し、過剰の液を切った。
【0094】
5)塗膜を得るために、このプロセスを3回繰り返すことができる。
【0095】
6)塗布試料を乾燥し、熱処理した。
【0096】
注:液切り塗布とは異なり、板の両面は、その一方が被覆されない限り、浸漬塗布中に塗布される。
【0097】
例13.ポリマー−二酸化チタンゾル(B)の浸漬塗布
1)例3で調製したポリマー−二酸化チタンゾル(B)の濃度を0.28Mに調節した。
【0098】
2)アルミニウム板を水およびアセトン中でリンスすることにより浄化した。
【0099】
3)アルミニウム板を、ポリマー−二酸化チタンゾル(B)を収容した容器に浸漬した。
【0100】
4)4.5分後に、板を取り出し、過剰の液を切った。
【0101】
5)塗膜を得るために、このプロセスを3回繰り返すことができる。
【0102】
6)塗布試料を乾燥し、450℃で1時間熱処理して、PEGを除去した。
【0103】
注:液切り塗布とは異なり、板の両面は、その一方が被覆されない限り、浸漬塗布中に塗布される。
【0104】
例14.PEGポリマーの添加を伴う市販のP25二酸化チタンのスクラッチ防止性塗布
1)デグーサからの市販のP25二酸化チタンを粉砕し、篩い分けして、均一な粉末サイズを得た。
【0105】
2)約0.1gの篩い分け二酸化チタンを50mLの蒸留脱イオン水に懸濁させた。
【0106】
3)この懸濁液を室温で30分間超音波処理した。
【0107】
4)超音波処理中に、約0.1gのPEG400(ACROS)を添加し、溶液中5wt%のポリマー総濃度を得た。
【0108】
5)このポリマーを含有する懸濁液を空気中65℃で乾燥して、液をゆっくりと除去した。
【0109】
6)約40wt%の二酸化チタン、58wt%のPEGおよび微量の水を含有するペーストを得た。
【0110】
7)約4gのペースト(T=25℃、相対湿度=60%)を、塗布すべき表面各1平方メートル当たりに用いた。
【0111】
8)ペーストを表面のトップエッジに沿って薄い均一なラインとして塗布した。
【0112】
9)ペーストの上端に、ブラント刷毛(blunt brush)またはゴムヘラ(scraper)を置いた。
【0113】
10)ブラント刷毛またはゴムヘラを表面の上端から下端へ引いてゆくとき、均一な力を掛けた。
【0114】
11)表面にペーストの均一な膜が形成された。
【0115】
12)この工程を、最初の塗布からの残りのペーストを用いて、反対方向に繰り返した。
【0116】
13)ついで、板を450℃で1時間焼成して、PEGポリマーを除去した。
【0117】
例15.ポリマー−二酸化チタンゾル(B)のスクラッチ防止性塗布
1)例3で調製したポリマー−二酸化チタンゾル(B)を空気中65℃で乾燥して、液をゆっくりと除去した。
【0118】
2)約30wt%の二酸化チタン、56.6wt%のPEGおよび微量の水を含有するペーストを得た。
【0119】
3)約4gのペースト(T=25℃、相対湿度=60%)を、塗布すべき表面各1平方メートル当たりに用いた。
【0120】
4)ペーストを表面のトップエッジに沿って薄い均一なラインとして塗布した。
【0121】
5)ペーストの上端に、ブラント刷毛またはゴムヘラを置いた。
【0122】
6)ブラント刷毛またはゴムヘラを表面の上端から下端へ引いてゆくとき、均一な力を掛けた。
【0123】
7)表面にペーストの均一な膜が形成された。
【0124】
8)この工程を、最初の塗布からの残りのペーストを用いて、反対方向に繰り返した。
【0125】
9)ついで、板を450℃で1時間焼成して、PEGポリマーを除去した。
【0126】
例16.金−TiO2のスクラッチ防止性塗布
1)例2で調製したTiO2ゾル(A)に約6mlのHAuCl4(0.01M)を添加した。
【0127】
2)400g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)(ACROS)5重量%を上記金修飾TiO2ゾルに添加した。
【0128】
3)ポリマー含有金修飾TiO2ゾルを(真空中室温でまたは)空気中約65℃で乾燥して、液をゆっくりと除去した。
【0129】
4)約0.5wt%のAu、30wt%のTiO2、56.6wt%のPEGおよび微量の水を含有するペーストを得た。
【0130】
5)約4gであるが、10g以下のペースト(T=25℃、相対湿度=60%)を、塗布すべき表面各1平方メートル当たりに用いる。
【0131】
6)ペーストを表面のトップエッジに沿って薄い均一なラインとして塗布した。
【0132】
7)ペーストの上端に、ブラント刷毛またはゴムヘラを置いた。
【0133】
8)ブラント刷毛またはゴムヘラを表面の上端から下端へ引いてゆくとき、均一な力を掛けた。
【0134】
9)表面にペーストの均一な膜が形成された。
【0135】
10)この工程を、最初の塗布からの残りのペーストを用いて、反対方向に繰り返すことができる。
【0136】
11)ついで、板を450℃で1時間焼成して、PEGポリマーを除去した。
【0137】
上記プロセスは、他の金属支持二酸化チタンスクラッチ防止性塗布、すなわちAg/二酸化チタン、Cu/二酸化チタン、Pt/二酸化チタン、Pd/二酸化チタンを調製するためにも用いることができる。
【0138】
検討
上記例は、本発明を実施するための最も好ましい態様を記述する。物質、プロセスまたは工程に対して多くの修飾を行うことができる。例えば、例2において、二酸化チタンゾルの濃度は、0.2〜1.0Mに調節することができ;例4および5において、マイクロ波処理の電力を0〜200Wに設定することができ;例6、7、10、11、14において、脱イオン水中に懸濁した篩い分けP25二酸化チタンの量は0.05〜0.3gであり得;例6および10で用いた硝酸は、0.4〜2.4mlであり得;例8および12において、二酸化チタンゾル(A)は、0.05〜0.8Mに調節することができ;例9および13において、ポリマー−二酸化チタンゾル(B)は、0.05〜0.8Mに調節することができる。例10および11、並びに12および13において、基材は、いずれものあらかじめ設定した時間でゾルまたは懸濁液に浸漬することができる。例14および15において、表面上に1〜10の単層塗膜を形成するために用いたペーストの寮は、表面1平方メートル当たり、4g〜10gであり得る。上記例において、用いた機材は、ステンレス鋼または表面を有する他のいずれの基材であってもよい。
【0139】
セクションIII.特性決定方法
1)結晶サイズおよび構造
X線回折分析(フィリップス1830)
1.触媒粉末を粉砕し、シフトさせて微粉末を得た。
【0140】
2.この粉末を、アルミニウムホルダー中に入れ、X線回折計の試料ホルダーに入れた。
【0141】
3.CuKαX線源を用い、X線回折を、増分0.05°でのステップ走査により、20°<2θ<60°について記録した。
【0142】
表1は、純粋なアナターゼの構造を有する二酸化チタン結晶のX線回折データを掲げている(CuKα線源、波長:1.54056Å、1998年JCPDS−回折データに関する国際センター(1998 JCPDS-International Centre for Diffraction Data)から引用)。表2は、純粋なルチルの構造を有する二酸化チタン結晶のX線回折データを掲げている(CuKα線源、波長:1.54056Å、1998年粉末回折標準−回折データについての合同委員会(1998 Joint Committee on Powder Diffraction Standards-International Centre for Diffraction Data)から引用)。
【表1】

【表2】

【0143】
(2)マイクロ−ラマン分析
1.二酸化チタン粉末を、ガラスの顕微鏡スライド上に置いた。スペクトル分解は、ほぼ1.0cm-1に設定し、スポットサイズは直径約2マイクロメートルであった。
【0144】
2.二酸化チタン試料のラマンスペクトルを、オリンパスのBH−2顕微鏡を有するレニショー(Renishaw)の3000マイクロ−ラマン装置を用いて測定した。20×および50×の倍率を有する対物レンズを選んだ。使用した励起源は、25mWの出力を有し、514.5nmで操作されるアルゴンレーザであった。
【0145】
3.結晶サイズは、イイダおよび共同研究者により記述されているラマン線拡幅から測定した(Y.イイダ、M.フルカワ、T.アオキ、T.サカイ、Appl. Spectrosc. 1998、52、673)。
【0146】
それぞれ、アナターゼの特性ピークは、395、511、634、795cm-1に位置し、ルチルの特性ピークは、446および611cm-1に位置する(R.ニキスト(Nyquist)、R.カーゲル(Kagel)、C.プツィヒ(Putzig)、M.ロイジャー(Leugers)、無機化合物および有機塩の赤外およびラマンスペクトルハンドブック(Handbook of Infrared and Raman Spectra of Inorganic Compounds and Organic Salts)、アカデミック・プレス、1996)から引用)。
【0147】
(3)BET表面積
触媒のBET表面積は、窒素物理吸着により測定する。
【0148】
手順:
1.コールターSA310窒素物理吸着装置からの蓋をされた石英チューブ試料ホルダーを秤量した。
【0149】
2.約0.1gの触媒を量り、試料ホルダー中に入れた。
【0150】
3.試料ホルダーをコールターSA310のガス抜きポートに接続した。
【0151】
4.試料を所望の温度で2時間ガス抜きした。
【0152】
5.ガス抜き後、触媒を秤量し、窒素物理吸着を77Kで行った。
【0153】
6.BET表面積を、物理吸着データから算出した。
【0154】
2)二酸化チタンのモルフォロジー
二酸化チタンの高分解画像を、AFMを用いて画像化して、サイズ、モルフォロジーおよび凝集を決定した。
【0155】
手順:
1.マイカを劈開して、新鮮で清浄な基材を作った。
【0156】
2.水に懸濁した二酸化チタン10Lを新たに劈開したマイカの上に置いた。
【0157】
3.この液滴を室温で乾燥させた。
【0158】
4.マイカを試料ホルダーに取り付け、顕微鏡(ナノスコープIIIa、DI)の基底部に置いた。
【0159】
5.新しいナノセンサーチップをカンチレバーホルダーに入れ、顕微鏡中で組み立てた。
【0160】
6.このチップを表面に近接させ、コンピュータを自動的に接近させた。
【0161】
7.表面に付着した試料のデジタル画像を集め、画像分析ソフトウエア(ナノスコープ4.23)(バージョン4.42r2)を用いて分析して、試料のモルフォロジー、サイズおよび凝集を得た。
【0162】
3)二酸化チタン表面化学
フーリエ変換赤外分光分析
1.約10mgの臭化カリウム(参考試料)を、拡散反射赤外フーリエ変換分光(DRIFTS)セルの試料ホルダー上に置いた。
【0163】
2.このセルを、蟷螂型ミラーアセンブリ(Praying Mantis mirror assembly)(ハリック(Harrick))内に配置し、パーキン・エルマー・スペクトラム(Perkin Elmer Spectrum)GX FTIR内に置いた。
【0164】
3.チャンバを、乾燥した二酸化炭素フリーの空気で、信号が15分後に安定化するまで、パージした。
【0165】
4.背景信号を観察するために、FTIRの反射モードを用いた。
【0166】
5.約0.05gの試料を拡散反射赤外フーリエ変換分光(DRIFTS)セルの試料ホルダー上に置いた。
【0167】
6.セルを、蟷螂型ミラーアセンブリ内に配置し、FTIR内に置いた。
【0168】
7.チャンバを、100sccmの乾燥した二酸化炭素フリーの空気で、信号が15分後に安定化するまで、パージした。
【0169】
8.100℃および150℃でスペクトルを記録するために、FTIRの反射モードを用いた。
【0170】
9.試料を、1cm-1の分解度で450cm-1から4000cm-1まで走査し、256の走査を集めた。
【0171】
4)二酸化チタン塗膜の性質
(1)走査型電子顕微鏡
1.塗布試料の表面モルフォロジーをSEM(JEOL、JSM6300F)により分析した。
【0172】
2.塗布試料を小片に切断し、アルミニウムピンスタブ(aluminum pin stub)上に置いた。
【0173】
3.SEM分析に先立って、試料を、スパッタコーター(エドワーズ、Scancoat Six)により金で塗布した。
【0174】
4.試料を高真空下でガス抜きし、10KV電圧をかけて画像化した
(2)マイクロラマン分光分析
1.二酸化チタン塗布板をガラスの顕微鏡スライド上に置いた。スペクトル分解度は、ほぼ1.0cm-1に設定し、スポットサイズは直径約2マイクロメートルであった。
【0175】
2.二酸化チタン試料のラマンスペクトルを、オリンパスのBH−2顕微鏡を有するレニショーの3000マイクロ−ラマン装置を用いて測定した。20×および50×の倍率を有する対物レンズを選んだ。使用した励起源は、25mWの出力を有し、514.5nmで操作されるアルゴンレーザであった。
【0176】
それぞれ、アナターゼの特性ピークは、395、511、634、795cm-1に位置し、ルチルの特性ピークは、446および611cm-1に位置する(R.ニキスト、R.カーゲル、C.プツィヒ、M.ロイジャー、無機化合物および有機塩の赤外およびラマンスペクトルハンドブック、アカデミック・プレス、1996)から引用)。
【0177】
(3)X線光電子分光法
触媒の表面組成および化学を、X線光電子分光法(XPS)により決定した。
【0178】
手順:
1.触媒粉末を、インジウムホイル上に押し付けた。
【0179】
2.このホイルをX線光電子分光装置(Physical Electronics PHI 5600)内に置いた。
【0180】
3.試料を超高真空下でガス抜きした。
【0181】
4.試料を照射するために、45℃の350W単色AlKαX線源を用いた。
【0182】
5.参照としてカーボン1Sを用いて、データを集めた。
【0183】
セクションIV.結果
本発明の例1〜5で調製した試料(A)〜(F)を特性決定するために、いくつかの特性決定方法を用いた。結果を以下に記述する。
【0184】
図2は、例2により調製された二酸化チタンゾル(A)の原子間力顕微鏡画像を示す。ゾルは、形状が球形であり、20nm付近に狭いサイズ分布を有する。粒子の幅には、水和層が含まれる。
【0185】
乾燥させた二酸化チタン族(A)のX線回折を図3に示す。2θ値25°、38°および54°付近の2θ値に特徴的なアナターゼの回折ピークが示されている。31°父君の2シータにおける小さなピーク信号は、二酸化チタンブルックカイト痕跡に帰属される(文献:1998年JCPDS−回折データに関する国際センター)。25°に等しい2θでのピークの半値幅(FWHM)を測定し、シェラー式を用いて二酸化チタンゾル(A)のサイズが3.3nmと算出された。
【0186】
図4は、例3により調製されたポリマー−二酸化チタンゾル(B)の原子間力顕微鏡画像を示す。ポリマー−二酸化チタンゾル(B)は、色が淡青色であった。ポリマー−二酸化チタンゾル(B)のサイズおよび形状は、図2に示す二酸化チタンゾル(A)と同様であった。
【0187】
表3は、特性決定に用いた12個の二酸化チタン試料(No.1〜No.12)を掲げている。試料No.1〜3は、それぞれ、室温、200℃および400℃での後の熱処理を伴って(F)−0Wから調製した。試料No.4〜6は、それぞれ、室温、200℃および400℃での後の熱処理を伴って(F)−90Wから調製した。試料No.7〜9は、それぞれ、室温、200℃および400℃での後の熱処理を伴って(F)−120Wから調製した。試料No.10〜12は、0、90および120Wでのマイクロ波処理、その後の450℃での熱処理を伴ってポリマー−二酸化チタンにより調製した二酸化チタン結晶である。表3は、また、各試料についての粒径、BET表面積、および気孔構造の種類をもまとめている。
【表3】

【0188】
図5は、二酸化チタン試料No.1、2および3のXRDパターンを示す。すべての試料で、特徴的なアナターゼ回折ピークが存在する。より低い温度で熱処理した試料についてのより幅広のピークは、より小さな粒径を示す(表3参照)。すべての試料において、微量のブルッカイトが存在する。
【0189】
表3中の試料No.10〜12(D)は、これらの試料が、二酸化チタンゾル(A)から結晶化された類似の二酸化チタン(F)と比べて、より高い表面積を有することを示している。このことは、PEGポリマーの添加が結晶化および成長中に二酸化チタンの凝集を制限したことを示している。
【0190】
図6は、マイクロ波処理を伴わずに450℃での熱処理によりPEG−二酸化チタンから調製した結晶化二酸化チタン(試料No.10)の赤外スペクトルを示す。この試料は、それぞれ、100℃および150℃でガス抜きし、分析した。図6から、試料において3660および3630cm-1付近の信号が現れることが明らかである。これら2つのバンドは、酸性を有するものと考えられる。より低い周波数での信号は、より酸性の架橋したヒドロキシルに相当する。R.A.バン・サンテン(Van Santen)、P.W.N.M.バン、リュウエン(van, Leeuwen)、J.A.ムールジン(Moulijn)、B.A.アベリル(Averill)、表面科学および触媒反応の研究(Studies in Surface Science and Catalysis)、123、(1999)、463)
図7は、90Wマイクロ波処理およびその後の450℃での熱処理によりPEG−二酸化チタンから調製した結晶化二酸化チタン(試料No.11)の赤外スペクトルを示す。この試料は、それぞれ、100℃および150℃でガス抜きし、分析した。図7から、試料において3660および3630cm-1付近の信号が現れることが明らかである。
【0191】
図8は、120Wマイクロ波処理およびその後の450℃での熱処理によりPEG−二酸化チタンから調製した結晶化二酸化チタン(試料No.11)の赤外スペクトルを示す。この試料は、それぞれ、100℃および150℃でガス抜きし、分析した。図8から、試料において3660および3630cm-1付近の信号が現れることが明らかである。
【0192】
図6、7および8における100℃および150℃で得られたスペクトルの比較は、3630cm-1付近の赤外信号を伴うヒドロキシルは、試料No.12により強く結合し、除去がより困難であることを示した。
【0193】
本FTIRスペクトルの結果は、ポリマー修飾二酸化チタン試料が表面酸性ヒドロキシル基を有するところ、追加のマイクロ波処理工程が得られる二酸化チタン試料の表面酸性ヒドロキシル基の比率を選択的に増加させることを示している。増加した酸性は、光触媒酸化反応の性能に正の効果を有する。
【0194】
ここで用いている酸性は、反応が考慮されている環境に強く依存する相対的な性質である。
【0195】
(2)塗布基材の特性決定結果
(a)市販のP25二酸化チタンの液切り塗布の結果
図9は、例6で説明した方法により調製した二酸化チタン塗布板のSEM写真である。このSEM写真は、市販のP25二酸化チタンの厚い層が板表面上に塗布されたことを示している。この二酸化チタン塗布板のXRDパターンを図10に示す。この図は、アナターゼおよびルチル二酸化チタンに属する両方の特徴的なXRDパターンが、塗布試料に存在することを示す。マイクロラマン分光分析は、アナターゼ二酸化チタンの均一な塗膜の存在を確認した(図11)。しかしながら、塗膜の接着は弱く、層は触ると容易に剥離し得る。
【0196】
(b)ポリマー−二酸化チタンゾル(B)の液切り塗布の結果
図12は、例9に示した方法により調製した二酸化チタン塗布板のSEM写真である。このSEM写真は、10の単層よりも少ない二酸化チタンの薄層で塗布された板を示す。このナノサイズ化された二酸化チタンは、ステンレス鋼板の顕微鏡的溝およびチャンネル内に優先的に付着する。図13および14は、異なる温度で熱処理された試料の対応するXRDおよびマイクロラマン分析である。図13におけるXRDパターンは、基材にのみ属し、二酸化チタンの超薄層が塗布されたというSEMデータを確認している。マイクロラマンは表面により敏感であり、図14は、二酸化チタンアナターゼ相に帰属される400cm-1、500cm-1および630cm-1における特徴的なピークを示す(文献:無機化合物および有機塩の赤外およびラマンスペクトルハンドブック−4巻セット<第2巻>)。800〜1800cm-1領域における幅広ピークは、ポリマーに帰属し、これは塗布試料の高温熱処理で消失する。
【0197】
この方法は、剥離を伴わずに洗浄および通常の使用に耐え得る良好な接着を有する二酸化チタン塗布板を提供し得る。
【0198】
(c)P25粉末の浸漬塗布
市販のP25粉末を、例10および11に掲げたように浸漬塗布法により塗布しようと試みた。P25粉末を用いることは均一な塗布相を形成することが可能であるが、接着は弱く、粉末は穏やかな接触により容易に剥離する。
【0199】
(d)ポリマー−二酸化チタンペーストのスクラッチ防止性塗布
図15は、例15で説明した方法により調製した二酸化チタン塗布板である。このSEM写真は、増加する倍率で塗膜を示している。図15aから、均一な塗膜が得られたことが明らかである。図15bは、二酸化チタンのほとんどが、基材のテクスチャに沿って付着していることを示す。この塗膜は、ナノサイズ化された二酸化チタンの10よりも少ない単層である。マイクロラマン分光分析(図16)は、アナターゼ二酸化チタンを示している。
【0200】
この塗膜は、爪を用いて、耐スクラッチ性であり、二酸化チタンの剥離を伴うことなく、スポンジおよび通常の皿洗い機操作を用いる洗浄に耐え得る。
【0201】
(3)二酸化チタン塗膜性能
(a)流通反応器における二酸化チタン塗布試料(No.10、例15)の光触媒酸化反応
1)図17に示すように、平坦で矩形の光反応器は、578mm×114mmの寸法を有していた。このステンレス鋼反応器は、入口および出口ポート、触媒板のための凹部および2組の機械加工じゃま板を収容した。
【0202】
2)6.25mm厚のパイレックス(登録商標)ガラスカバーが反応器アセンブリを完成した。パイレックスガラス窓およびステンレス鋼反応器は、狭い矩形のチャンネル(深さ2mm×幅112mm)を形成する。
【0203】
3)液体VOCを、シリンジポンプ(kdScientific 1000)を用いて恒温熱交換器に送給し、反応器に入れる前に合成空気と混合した。
【0204】
4)二酸化チタン塗布板(2.5mm×2.5mm、触媒負荷は約0.001g)は、ガス入口から322mm下流に位置した。
【0205】
5)典型的な実験において、計量した量のVOC蒸気(0.01ml/時)を、反応器に入れる前に、流量200ml/分の純粋な合成空気と混合した。反応中、湿度を60±2%に制御した。
【0206】
6)供給物濃度が平衡に達した後、二酸化チタン塗布板を、反応器の窓の7mm上に位置する5つの蛍光ブラックランプ(365nnm)により照射した。
【0207】
7)出口ガスを、HP−Ultra−1キャピラリーカラムを用いて分離し、熱伝導度検出器および水素炎イオン化検出器(flame ionization detector)を備えたガスクロマトグラフ(HP6890)を用いて分析した。このGCに用いたガスは、ヘリウム(UHP,CW)、水素(UHP、HKO)および合成空気(HP、HKSP)であった。
【0208】
(b)プロトタイプPCO−空気精製機150、チャフア・インダストリーズ社(香港)中での二酸化チタン塗布試料(No.10、例15)の光触媒酸化反応
1)周囲温度(20〜30℃)および湿度(60〜80%RH)下でエタノールを用いて、VOC除去および汚染除去を試験した。
【0209】
2)エタノールを蒸発させ、図18に示すPCO−空気精製機モデル150(UVランプの電力:8W、塗布面積:110183mm2、流量:〜121m3/時)の入口に入れる前に、空気と混合した。
【0210】
3)試験に使用したセンサーは、フィガロ(FIGARO)製のVOCガスセンサーモデルタイプD1(#TGS2602)、ハニウェル製の湿度センサーモデルセラミックSIL(HIH−3605−A)およびナショナル・セミコンダクター製の温度センサーモデルDZバージョン(LM35DZ)であった。
【0211】
4)VOCセンサーを、RAE製の光イオン化ガス検出器モデルPGM−30に対して較正し、湿度および温度を、TSI社製のVelociCalc Plus Multi-Parameter Ventilation Model (8386−M-GB)を用いて較正した。
【0212】
5)ブルーエル&クジャエラー(Bruel & Kjaeror)製のデジタルマルチガスモニター(1302)が、出口二酸化炭素レベルを記録する。VOC除去、温度および湿度の変動、並びにCO2発生の連続的な過渡的測定を、各実験8時間で行った。
【0213】
6)一組の湿度および温度センサーを、PCO−空気精製機モデル150の空気の入口および出口領域上に設置した。空気の入口および出口におけるセンサーの正確な位置は、それぞれ、図19aおよび19bに示す通りである。
【0214】
7)PCO−空気精製機モデル150の側部に穴を穿ち、VOCセンサーを、PCPチャンバに対し空気入口および出口近傍に挿入し、配置した。これらの位置は、最も安定なVOC記録を提供した。これらの位置は、図20の概略図に示されている。周囲VOCレベルを測定するために、1つのVOCセンサーを、PCO−空気精製機モデル150の外部にも設置した。
【0215】
8)周囲のCO2レベルは、VOC試験の開始前に、ブルーエル&クジャエラー製のデジタルマルチガスモニター(1302)により測定した。そのとき、デジタルマルチガスモニター(1302)の入口ガスチューブをPCO−空気精製機モデル150の空気出口に接続した。
【0216】
9)VOC、湿度および温度センサーからの過渡的データを、毎秒1データ点測定でPICOソフトウェアを用いてPCにより集めた。
【0217】
(c)例2により調製した二酸化チタンの殺菌性
1)枯草菌、緑膿菌および表皮ブドウ球菌を用いて臨床試験を行った。
【0218】
2)オキソイド(Oxoid)製のトリプティック大豆寒天(tryptic soy agar)を成長基質として用いた。
【0219】
3)円形のろ紙(5mm直径)を、(1)蒸留水(正の対照)、(2)漂白剤溶液(負の対照)、(3)75%アルコール、および(4)異なる濃度の二酸化チタンで飽和させ、各細菌試料上に置き、37℃で24時間インキュベートした。
【0220】
(d)プロトタイプのPCO−空気精製機150、チャフア・インダストリーズ社(香港)中での二酸化チタン塗布試料(No.10、例15)の殺菌性
PCO空気精製機モデル150によるバイオエアロゾルの除去を、ピークの昼食時間中の大学食堂での天然のバイオエアロゾル(すなわち、細菌(bacteria)および真菌(fungi))の減少について試験した。
【0221】
2)その場所は、800コロニー形成単位/m3の平均バイオエアロゾル負荷を有する。見いだされた共通の細菌および真菌種は、ミクロコッカス、表皮ブドウ球菌、クラドスポリウム、ペニシリウムおよび酵母である。
【0222】
3)空気チャンネルを作り、図21に示すようにPCO空気精製機モデル150の空気出口に取り付けた。
【0223】
4)2つのポンプ(モデル1631−107B−G557X)を有する2つのバイオエアロゾル・インパクタ(1段)を実験に用いた。空気中の細菌および真菌をそれぞれ採取するためのTSAおよびMEA板。一方のバイオエアロゾルインパクタをPCO空気精製機モデル150の空気入口近傍に配置し、他方を空気チャンネルの出口に配置した(図21注の上側ドットを参照)。
【0224】
5)入口および出口空気の採取は、28.3L/分の採取率で10分間同時に行った。細菌についての3回の採取操作および真菌についての3回の採取操作を1試験当たりに行った。
【0225】
(1)流通反応装置におけるVOC性能試験
例15に従い調製したナノメートルサイズの二酸化チタン塗布試料の触媒活性を、プローブ分子として気相イソプロパノールを用いて調べた。図22は、照射時間の関数としてイソプロパノールの変換率を示す。塗布触媒は、UV光に40分以上暴露されたとき、その最大変換率12〜14%を達成することがわかり、これを2回試験して、最大変換率が同様であることを確認した。
【0226】
反応試験後、失活した、例15に従い調製した二酸化チタン塗布試料は、水洗およびその後の450℃での焼成により再生させることができた。
【0227】
(2)プロトタイプ中のVOC性能試験
表4は、プロトタイプのVOC分解性能データを示す。組み込まれた例15で調製した二酸化チタン塗布板は、実際の室内操作条件化でVOCの分解能を有することが確認される。
【表4】

【0228】
(3)殺菌効果
枯草菌、緑膿菌および表皮ブドウ球菌についての臨床試験結果を図23に示す。円形のろ紙(5mm直径)を、(1)蒸留水(正の対照)、(2)漂白剤溶液(負の対照)、(3)75%アルコール、および(4)異なる濃度の二酸化チタンで飽和させた。塗布濃度における二酸化チタンは、UV照射なしでさえ、75%アルコールと同様の殺菌効果を有する。
【0229】
例15で調製した二酸化チタン塗布板を、プロトタイプに組み込み、その殺菌性能を大衆食堂で調べた。表5の結果は、それが、それぞれ、約36%の細菌および60%の真菌を減少させ得ることを示している。加えて、塗布試料は、UV照射の不存在下で細菌および真菌を破壊し得、上に示すような非UV条件化で本発明により調製された二酸化チタン材料の殺菌効果を増強させる。
【表5】

【0230】
本発明を具体的な態様を用いて説明してきたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更をすることができ、均等物を置き換えることができることは当業者に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】本発明の1つの態様に従い二酸化チタンを製造する順次工程を示す概略図である。
【図2】ゾル−ゲル方により調製された二酸化チタンゾルのタッピングモードAFM像である。
【図3】例2による二酸化チタン試料のX線回折パターンである。
【図4】ポリマー−二酸化チタンゾル(B)のタッピングモードAFM像である。
【図5】異なる条件、(a)真空ボックス中で乾燥、(b)200℃での焼成、(c)400℃での焼成、で処理後の二酸化チタン試料のX線回折パターンである。
【図6】それぞれ100℃および150℃で記録した試料No.10のFT−IRスペクトルである。
【図7】それぞれ100℃および150℃で記録した試料No.11のFT−IRスペクトルである。
【図8】それぞれ100℃および150℃で記録した試料No.12のFT−IRスペクトルである。
【図9】基材上のP25粉末塗膜のSEM画像である。
【図10】基材上のP25粉末塗膜のSEM画像である。画像中の「*」なる記号は、アナターゼ相の特性ピークを示し、「・」なる記号はルチル相の特性ピークを示す。
【図11】基材上のP25粉末塗膜のラマンスペクトルである。画像中の「*」なる記号はアナターゼ相の特性ピークを示す。
【図12】液切り塗布法による基材上のポリマー−二酸化チタンゾル(B)塗膜のSEM画像である。
【図13】液切り塗布法によるポリマー−二酸化チタンゾル塗膜のX線回折パターンである。
【図14】液切り塗布法により調製されたポリマー二酸化チタンゾル塗膜の、異なる温度、(a)調製されたまま、(b)150℃、(c)350℃、(d)450℃でのアニール後のラマンスペクトルである。
【図15A】スクラッチ防止性塗布法による二酸化チタン塗膜ステンレス鋼試料のSEM画像である。
【図15B】スクラッチ防止性塗布法による二酸化チタン塗膜ステンレス鋼試料のSEM画像である。
【図16】スクラッチ防止性塗布法による二酸化チタン塗膜ステンレス鋼試料のラマンスペクトルである。画像中の「*」なる記号はアナターゼ相の特性ピークを示す。
【図17】光反応器および試験設備の概略図である。
【図18】VOC試験に用いたダクトシステムの概略図である。
【図19A】PCO空気浄化機モデル150の空気入口での湿度センサーおよび温度センサーの位置である。
【図19B】PCO空気浄化機モデル150の空気出口での湿度センサーおよび温度センサーの位置である。
【図20A】PCO空気浄化機モデル150におけるVOCセンサーの位置である。
【図20B】PCO空気浄化機モデル150におけるVOCセンサーの位置である。
【図21】出口に空気流路(air channel)が取り付けられたPCO空気浄化機モデル150の画像である。
【図22】UV照射時間の関数としてのイソプロパノール変換プロファイルである。イソプロパノールの供給濃度は266ppmである。
【図23】枯草菌、緑膿菌および表皮ブドウ球菌についての異なる濃度のナノ−二酸化チタンの殺菌性の臨床試験である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約3nm〜25nmの結晶サイズと70%を超える結晶化度を有する二酸化チタン結晶約約40±10%w/w、
b)製造工程中に前記結晶サイズを約3〜25nmに維持するように前記二酸化チタンの凝集を防止すべく前記二酸化チタンと相互作用する分散剤約60±10%w/w、
c)水1〜10%w/w
を含む物質。
【請求項2】
a)3nm〜25nmの結晶サイズと70%を超える結晶化度を有する二酸化チタン結晶40±10%w/w、
b)製造工程中に前記結晶サイズを3〜25nmに維持するように前記二酸化チタンの凝集を防止すべく前記二酸化チタンと相互作用する分散剤60±10%w/w、
c)水1〜10%w/w
を含み、前記二酸化チタン結晶の結晶サイズが少なくとも1年間3〜25nmの範囲内に留まる請求項1に記載の物質。
【請求項3】
前記二酸化チタン結晶の少なくとも80%が、3〜25nmの範囲内の結晶サイズを有し、2nm以下のサイズ変動を有する請求項2に記載の物質。
【請求項4】
前記二酸化チタン上に表面ヒドロキシル基をさらに含み、前記表面ヒドロキシル基の90%〜100%が、150℃で記録したときの赤外スペクトルにおける3000〜3680cm-1の少なくとも1つの吸収ピークにより特徴付けられる請求項2に記載の物質。
【請求項5】
前記表面ヒドロキシル基の90〜100%が、150℃で記録したときの赤外スペクトルにおける約3660±20cm-1での1つ吸収ピークおよび3630±20cm-1でのもう1つのピークにより特徴付けられる請求項4に記載の物質。
【請求項6】
前記二酸化チタン結晶の表面積が50m2/gより大きく、前記二酸化チタン結晶の少なくとも70%がアナターゼである請求項2に記載の物質。
【請求項7】
前記分散剤が、OH基またはヒドロキシル、カルボキシルまたはケトンのような酸素化官能基を含有するポリマーである請求項2に記載の物質。
【請求項8】
前記分散剤が、ポリエチレングリコールである請求項2に記載の物質。
【請求項9】
前記ポリエチレングリコールが、200〜1000g/モルの分子量を有する請求項8に記載の物質。
【請求項10】
a)約3nm〜25nmの結晶サイズと70%を超える結晶化度を有する二酸化チタン結晶を有する二酸化チタンゾルを作ること、
b)前記二酸化チタンゾルに分散剤を添加して、約2:5ないし7:10の二酸化チタン:分散剤比を有する混合物を作ること、および
c)前記二酸化チタン結晶の結晶サイズを3〜25nmの範囲内に維持しながら、前記混合物の水分含有率を10%w/w未満まで減少させること
を含む二酸化チタン物質の製造方法。
【請求項11】
a)約3nm〜25nmの結晶サイズと70%を超える結晶化度を有する二酸化チタン結晶を有する二酸化チタンゾルを作ること、
b)前記二酸化チタンゾルに分散剤を添加して、約2:5ないし7:10の二酸化チタン:分散剤比を有する混合物を作ること、
c)前記混合物にマイクロ波処理を施すこと、および
d)前記二酸化チタン結晶の結晶サイズを3〜25nmの範囲内に維持しながら、前記混合物の水分含有率を10%w/w未満に減少させること
を含む二酸化チタン物質の製造方法。
【請求項12】
前記二酸化チタンゾルを、アルコールおよび水の存在下で二酸化チタン前駆体を加水分解し、硝酸を用いて解膠することにより調製する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分散剤が、OH基またはヒドロキシル、カルボキシルまたはケトンのような酸素化官能基を含有するポリマーであり、2:5ないし7:10の二酸化チタン:分散剤比を有する請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記分散剤が、ポリエチレングリコールである請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリエチレングリコールが、200〜1000g/モルの分子量を有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記二酸化チタン結晶の少なくとも80%が3〜25nmの範囲内の結晶サイズを有し、2nm以下のサイズ変動を有するように前記二酸化チタン結晶の結晶サイズを制御することをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロ波処理を、30Wから200Wまでの範囲のパワーで約10〜30分間続ける請求項11に記載の方法。
【請求項18】
a)基材の平方メートル当り1〜10gの請求項1に記載の物質を適用すること、
b)前記物質を前記基材上に均一に拡げて、塗布基材を作ること、および
c)前記塗布基材を焼成すること
を含む塗布方法。
【請求項19】
二酸化チタンの1〜10の単層が塗布された固体表面を含み、該二酸化チタン塗膜が約3nm〜25nmの結晶サイズと70%を超える結晶化度を有する二酸化チタン結晶を含む自浄性物質。
【請求項20】
前記二酸化チタン結晶の結晶サイズが少なくとも1年間3〜25nmの範囲内に留まる請求項19に記載の自浄性物質。
【請求項21】
前記二酸化チタン塗膜が表面ヒドロキシル基をさらに含み、前記表面ヒドロキシル基の90%〜100%が、150℃で記録したときの赤外スペクトルにおける3000〜3680cm-1の少なくとも1つの吸収ピークにより特徴付けられる請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記表面ヒドロキシル基の90〜100%が、150℃で記録したときの赤外スペクトルにおける約3660±20cm-1での1つ吸収ピークおよび3630±20cm-1でのもう1つのピークにより特徴付けられる請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2008−506827(P2008−506827A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522001(P2007−522001)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002322
【国際公開番号】WO2006/008434
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(598082547)ザ・ホンコン・ユニバーシティー・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (9)
【氏名又は名称原語表記】The Hong Kong University of Science & Technology
【Fターム(参考)】